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地域住民に対する尿失禁予防・対処活動継続のためのカレンダー表の実施率と評価

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地域住民に対する尿失禁予防・対処活動継続のための

カレンダー表の実施率と評価

要 旨 本研究の目的は, 地域住民に対して, 尿失禁予防・対処活動を継続するためのカレンダー表を配布し, その 記載と活動の実施状況, その評価を明らかにすることである. 対象は A 市開催の介護予防講座の尿失禁予防 講演会に参加した住民 100人とした. 方法は, 第一段階として, 講演会参加者に対して骨盤底筋体操, 水 摂 取の工夫, 秘予防の 3カ条を 1ヶ月間実践してもらうカレンダー表を渡し, 郵送返信してもらった. つぎに, 第二段階として, 第一段階のカレンダー返信者に対して, 骨盤底筋体操実施の有無だけを記載する 3ヶ月間の カレンダーを郵送した.結果,第一段階での返信者は 20人であり,1ヶ月間 (30日間)3カ条すべてを実施した 日数の割合は 30日間の 61.8±29.8%を占めた.また,排尿症状をもつ者でそれが改善した者が 4人いた.第二 段階での返信者は 10人であり, 3ヶ月間における実施した日数の割合は 90日間の 78.7±17.0%であり, 排尿 症状をもつ者での改善者は 5人いた. 以上のことから, 予防活動継続のためには目的と活動の項目を った カレンダー表の戦略が有効である.(Kitakanto Med J 2010;60:227∼233) キーワード:尿失禁, カレンダー, アウトカム, 評価, 骨盤底筋体操 緒 言 排泄の問題は生活自立に大きく影響する. 内田は在宅 ケア利用者の生活動作自立に有効なケアは, 尿失禁のア セスメントや排尿生活指導等の排泄自立へのケアである と報告している. 現在, わが国では介護保険制度が始動 し要介護高齢者は増加の一途をたどり, 平成 20年度で は 7.2兆円という介護保険に係る費用が報告されてい る. したがって, できるだけ長く生涯に渡って排泄自立 が継続できるよう尿失禁予防策を実施することは, 本人 の自立を高め, 生活の質を保証すると共に介護費用の軽 減に結びつくことになる. 2005年の介護保険制度改正では介護予防に重点が置 かれた. 現在, 介護予防のエビデンスとして明確にされ ているのは運動器の機能向上, 栄養改善, 口腔機能向上 であり, 介護予防の包括的高齢者運動トレーニングに代 表する予防活動継続プログラムが開発されている. しか しながら, 介護予防の尿失禁予防活動に関しては明確な プログラム案やアウトカム評価はなく, 今後の研究課題 といえる. 内田ら は 2008年に老人クラブ主催で尿失禁予防講 演会を行い, 地域在住高齢者 320人に対する調査では, 約 20%から 40%にわたって頻尿や 尿 失 禁 の 可 能 性 を 持っていることを明らかにした. また, 秘のある者や 水 摂取が少ない者, 体重が重い者に頻尿・尿失禁をも つ者の割合が有意に高いことも報告した. このことか ら, 地域住民に対して運動や水 摂取の工夫も含めた尿 失禁予防・対処策を普及させ, 継続できるよう啓発し支 援していく必要がある. しかしながら, その活動が住民 一人ひとりの生活に定着化し, 継続させていくには困難 が伴う. 竹田 は介護予防の一環として認知症予防活動を地域 で活発に行っている.彼らは「脳いきいき 12カ条」を設 定し, カレンダーにて各自がその実施状況を記載するこ とで予防活動が生活に定着できると述べている. 単に講 演会を開催するだけでなく, その後の予防活動継続フォ 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 平成22年4月23日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 内田陽子

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ローアップに, カレンダー表導入は効果的な方法と え た. 本研究の目的は, 地域住民に対する尿失禁予防・対処 活動を継続するためのカレンダー表における実施状況と その評価を明らかにすることである. 以上により, 地域 住民に介護予防活動継続のための効果的な戦略を検討す ることとした. 対 象 と 方 法 1.対象 B県 A 市発行の広報誌 (目的, 時間, 内容, 講師, 対象, 申込方法記載) 等の呼びかけで 2009 年 10月に開催され た介護予防講演会に参加した A 市の住民で, 調査に協力 が得られた 100人とした. なお, この講演会は介護予防 の知識と啓発を目的とし, 市町村の介護予防事業の一環 で行われた. 講演会のテーマは「トイレに悩まない介護 予防」とし,尿失禁予防活動に関する内容 (排尿のしくみ, 頻尿と尿失禁のタイプとその症状,予防・対処活動法,オ ムツと尿とりパッド等の上手な い方) についてパンフ レットを用い, 実演とともに説明を行った. 特に骨盤底 筋体操については講師の実演と声かけにより, 参加者も その場で体操を行った. 2.調査方法と内容 1)第一段階:予防策3カ条を1ヶ月間(30日間)実 施するカレンダー表 調査の依頼は講演会後半に時間を設定して行い, 対象 者に対して予防・対処活動継続のためのカレンダー表を 配布した.そして,講演会のなかで説明した予防・対処活 動 3カ条として, ①運動 (骨盤底筋体操・リラックス体 操), ②水 摂取の工夫 (必要な水 補給とカフェインの 少ないほうじ茶等の工夫), ③ 秘予防 (水 , 繊維の多 い食事の摂取)を実施し,3カ条すべてに実施したら○の 記載, 1から 2カ条の実施は△, できなかったは×をカレ ンダー表に記入するよう依頼した. カレンダー表は 11 月 (30日間) のカレンダーに加え, 対象者の背景, 現在 の排尿症状と 1ヶ月後のアウトカム評価を記載する各表 を A 3一枚のなかに設定した. カレンダーには予防活動 が実施されたかどうかチェックできる欄を設けた. 対象 の背景は, 年齢,性別,通院の有無,既往歴とした.現在の 排尿症状と 1ヶ月後のアウトカム評価については, 内田 ら が先行研究で作成した頻尿・尿失禁の可能性に関す る質問項目を 用した.その項目は,昼間頻尿,夜間頻尿, 腹圧性尿失禁, 切迫性尿失禁, 流性尿失禁, 機能性尿失 禁の可能性が疑われる症状 10項目であり, 該当するも のにチェックしてもらった. なお, 具体的な質問項目は 表 1に示した. アウトカム評価については, カレンダー 表を活用し 1ヶ月後の各排尿症状について自己評価し, 「改善,変化なし,悪化」のうち自 にあてはまるものに 回答してもらった. なお, 返信は切手が貼ってある封筒 を利用し, 各自記入後に投函してもらうように対象者に 依頼した. 2)第二段階:予防策1カ条を3ヶ月間(90日間)実 施するカレンダー表 第一段階でカレンダー表に記載し, 研究者に返信して くれた対象者に対して, さらに継続するためのカレン ダー表を郵送した. 第二段階のカレンダー表では骨盤底 筋体操の 1カ条のみ実施するもので, 2010年 1月から 3 表1 1ヶ月間 (30日間) 3カ条カレンダー表実施前の対象者の排尿症状 n=20 頻尿・尿失禁の可能性 質問項目 回答 n % 頻尿の可能性 昼間 8回以上トイレに行く (昼間頻尿) は い 5 25.0 いいえ 15 75.0 寝ている間に 2回以上トイレに行く (夜間頻尿) は い 7 35.0 いいえ 13 65.0 腹圧性尿失禁の可能性 咳やくしゃみ, 笑い・運動した時に尿が漏れそうになる は い 7 35.0 いいえ 13 65.0 切迫性尿失禁の可能性 おしっこをしたいと思ったらトイレまで間に合わず漏れそうになる は い 4 20.0 いいえ 16 80.0 水で手を洗ったり寒いところに出ると尿が漏れそうになる は い 2 10.0 いいえ 18 90.0 流性尿失禁の可能性 お腹に力をかけないと尿が出にくい は い 0 0.0 いいえ 20 100.0 尿がだらだらと常に漏れている は い 0 0.0 いいえ 20 100.0 眠っている間に漏れることがある は い 0 0.0 いいえ 20 100.0 前立腺肥大症といわれたことがある は い 0 0.0 いいえ 20 100.0 機能性尿失禁の可能性 手足が不自由で思うように体が動かずトイレに間に合わない は い 1 5.0 いいえ 19 95.0

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月の 3ヶ月間 (90日間)の記載を求めた.記載は実施した では○, しない×を記入してもらった. 1カ条のみにした のは, 骨盤底筋体操は 1ヶ月間だけでは効果が得られな いことを 慮し継続の必要性があるためである. このカ レンダー表は 3ヶ月 のカレンダーに加え, 排尿症状の アウトカム評価については対象者の負担を 慮し, 2項 目に り込んだ.それは,「1.トイレが近い (頻尿の可能 性), 尿が我慢できず漏れてしまう (切迫性尿失禁の可能 性) 」, 「2. 咳・くしゃみ・笑い・運動したときに尿が漏 れそうになる (腹圧性尿失禁の可能性)」であり, 改善の 有無のアウトカム評価を求めた. なお, カレンダー表の 返信は, 切手がすでに貼ってある封筒を同封し, 各自記 載して投函してもらうよう説明文を加え対象者に依頼し た. 3. 析方法 カレンダー表のデータは数値に変換し, 統計ソフト SPSSver15.0 で 析を行った. 4.倫理的配慮 調査にあたっては事前に A 市社会福祉協議会 B支所 に調査の許可を得て行い, 研究発表, 論文化においても 許可を得た. 調査の対象者に対しては講演会後半に研究 の実施についてお願いを行い, 調査の目的, 方法, 本調査 の結果は研究で 用すること, プライバシー保護につい て, 口頭にて説明を行い, 同意を得た. 調査票であるカレ ンダー表は対象者の負担を 慮し, 回答しやすいように 文字を大きくし, 図やイラストを加え, カラー版で A 3 一枚に収まるように設定した. また, 個人名や住所等は カレンダー表には記載せず, 第二段階の調査に協力でき る対象者のみ返信用封筒裏側に住所, 氏名を記入しても らった. その住所, 氏名に関しては 析終了後までは鍵 のかかる保管庫に管理し, 析終了後すみやかにシュ レッダーにて処理した. カレンダー表には調査のお願い とプライバシーの保護, 研究に 用することの説明の記 載を行い, 別に, 調査の目的, 方法等を書いた説明文を同 封した. 調査の同意は各自のカレンダー表の郵送をもっ て確認を得た. 成 績 1.対象の背景と排尿症状 (表 1・2) カレンダー表の返信者は対象者 100人のうち 20人で あった (回答率20%). この対象20人の平 年齢は72.6± 6.1歳であり, 女性が 16人で男性は 4人であった. 通院 している者としていない者は各 10人であった (表 2). 対 象者がもつ排尿症状 (頻尿・尿失禁の可能性がある症状) で一番該当者が多かった質問項目は, 寝ている間に 2 回以上トイレに行く (夜間頻尿の可能性)」, 咳やくしゃ み時に尿が漏れそうになる (腹圧性尿失禁の可能性)」が 各 7人, 昼間 8回以上トイレに行く」(昼間頻尿の可能 性) 5人, おしっこをしたいと思ったらトイレまで間に 合わず漏れそうになる (切迫性尿失禁の可能性)」4人の 順であった. なお, 流性尿失禁に該当する者はいな かった (表 1). 2.第一段階:予防策3カ条を1ヶ月間(30日間)実施 するカレンダー表の結果 (表 2) 対象者 20人の各事例別の実施状況とアウトカム評価 をまとめたものが表 2である. 1ヶ月間 (30日間) で 3カ 条すべてを実施した○記載の日数は平 値 18.6±8.9 日 (61.8±29.8%), 1から 2カ条の実施を示す△記載の日数 は平 値 9.4±6.4日 (31.3±21.2%), ○と△の合計日数 は平 値 28.0±3.7日 (93.2±12.4%) となった. カレン ダー記載前の対象者の排尿症状では 15人が頻尿・尿失禁 の可能性としての症状をもち, 症状のない者は 5人で あった. カレンダー記載による 1カ月後のアウトカム評 価では 20人中 4人について頻尿や切迫性尿失禁の症状 が改善したと評価した. 3.第二段階:予防策1カ条を3ヶ月間(90日間)実施 するカレンダー表の結果 (表 3) 第一段階でカレンダー表を返信し同意を得た対象者 20人に対して, 第二段階のカレンダー表を郵送した結 果, 半数の 10人の返信を得た. その 10人の返信者の 3ヶ 月間 (90日間) 実施した○の日数の平 値は 70.8±15.3 日 (78.7±17.0%) であった. 排尿症状が改善した者は 10 人中 5人であり, 改善した症状は頻尿・切迫性尿失禁に 加え腹圧性尿失禁であった. 改善者と非改善者の実施日 数の比較では有意な差はみられなかった. 察 1.カレンダー表による予防策継続を高める戦略 本研究では返信者数が少なかったためにカレンダーの 有効性を検証するには限界があった. しかしながら, 今 後の予防・対処活動継続のためのいくつかの知見が得ら れたので, それについて述べる. 講演会参加において住民はその時には予防・対処法の 必要性は感じていても実際に継続する者は少なかった. 本研究では第一段階でカレンダー表の返信者は 20人で あり返信率は約 2割であった. トランス・セオレティカ ル・モデル (変化のステージモデル)によれば,講演会に 参加する行動は行動変容過程の第 2ステップの関心期で あり, つぎの準備期は 1か月以内に行動を変える気があ る時期とされている. したがって, 今回, 1ヵ月用のカレ

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表 2 1ヶ月間 (1 1 月の 30 日間 ) のカレンダー返信対象者の状況 背景条件 カレンダー記載 (3 0 日間 ) 1 か月の評価 事例番号 性別 年齢 通院の有無 既往歴 排尿症状 (頻尿・尿失禁の可能性 についての該当項目 ) ○の日数 % △の日数 % ○△の 合計日数 % アウトカム評価 改善された症状 1 男 67 なし 大腸疾患 昼間頻尿 26 86 .7 4 13 .3 30 10 0. 0 変化なし ― 2 女 73 なし なし なし 10 33 .3 13 43 .3 23 76 .7 変化なし ― 3 男 79 あり なし 夜間頻尿 19 63 .3 11 36 .7 30 10 0. 0 変化なし ― 4 女 60 なし なし 腹圧性尿失禁 16 53 .3 13 43 .3 29 96 .7 変化なし ― 5 男 78 あり 糖尿病 なし 30 10 0. 0 0 0. 0 30 10 0. 0 変化なし ― 6 女 80 なし なし 昼間頻尿・腹圧性尿 失禁・切迫性尿失禁 23 76 .7 7 23 .3 30 10 0. 0 変化なし ― 7 女 75 あり 脳血管性疾患 ・泌尿器疾患 切迫性尿失禁 26 86 .7 4 13 .3 30 10 0. 0 変化なし ― 8 女 72 なし なし なし 23 76 .7 7 23 .3 30 10 0. 0 変化なし ― 9 女 65 あり 高血圧 昼間頻尿・切迫性尿 失禁・機能性尿失禁 30 10 0. 0 0 0. 0 30 10 0. 0 改 善 昼間頻尿・切 迫性尿失禁 10 女 71 あり 子宮筋腫 夜間頻尿 3 10 .0 17 56 .7 20 66 .7 改 善 夜間頻尿 11 女 77 あり 高血圧 昼間頻尿・夜間頻 尿・腹圧性尿失禁 ・切迫性尿失禁 25 83 .3 5 16 .7 30 10 0. 0 改 善 昼間頻尿・夜間頻 尿・切迫性尿失禁 12 女 74 なし なし なし 28 93 .3 2 6. 7 30 10 0. 0 変化なし ― 13 女 72 あり 大腸疾患 夜間頻尿・腹圧性尿失禁 20 66 .7 10 33 .3 30 10 0. 0 変化なし ― 14 女 83 あり 高血圧・ 高脂血症 夜間頻尿 18 60 .0 12 40 .0 30 10 0. 0 変化なし ― 15 女 69 なし なし 腹圧性尿失禁・ 切迫性尿失禁 17 56 .7 11 36 .7 28 93 .3 変化なし ― 16 女 74 あり 高脂血症 昼間頻尿・夜間頻尿 6 20 .0 20 66 .7 26 86 .7 改 善 昼間頻尿・夜間頻尿 17 女 76 なし なし 腹圧性尿失禁 27 90 .0 3 10 .0 30 10 0. 0 変化なし ― 18 男 76 なし なし 夜間頻尿・切迫性尿失禁 15 50 .0 12 40 .0 27 90 .0 変化なし ― 19 女 61 なし なし 腹圧性尿失禁 7 23 .3 22 73 .3 29 96 .7 変化なし ― 20 女 69 あり なし なし 2 6. 7 15 50 .0 17 56 .7 変化なし ― 平値 72 .6 ±6. 1 18 .6 ±8. 9 61 .8 ±29 .8 9. 4± 6. 4 31 .3 ±21 .2 28 .0 ±3. 7 93 .2 ±12 .4

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ンダー表を配布した時期は準備期であり, 行動を促すよ いタイミングであった. しかし今回, 3カ条という複数の 事項を設定したことで実施の困難性が高まり, 返信した 者が少なかったのではないかと える. スモール・ス テップ法では, 小さいステップに けて行動を一つずつ 達成することが行動変容のコツであるとしている. 対象 者のほとんどが高齢者であることを えれば, 3カ条で なくそのなかの一つに ってカレンダー表に って実施 すれば, 実施率は高まったと える. 竹田はカレンダー 表を いながらも振り返りの報告会を開催している. つ まり, 単にカレンダー表を送るだけでなく, 人と対面し ながら評価を確認しあう場を組み入れることが実施率を 高める方法といえる. とはいえ, 排泄に関する事項を 慮するとプライバシーへの配慮が必要となる. 振り返り や確認作業を小集団でおこなうか, 個別的に行うべきか, 対象者の特性をみて判断する必要がある. 今回, 返信者はわずか 20人ではあったものの, その対 象者のカレンダー表における実施率 (○と△の合計日数 の記入率) は高値であった. したがって, 返信対象者は予 防策への意識だけでなく実行力も高い対象者といえる. 第一段階の対象者に対しての第二段階の返信者は 20人 中 10人であり,一度カレンダー表に従って予防・対処策 を実施した者は, その後も継続できる可能性が高いとい える. また, 第二段階では 3ヶ月という長期での実行を求 めてはいるが 1カ条と項目を限定しており, 骨盤底体操 という具体的で明確な実行項目であったために継続しや すかったといえる.以上,カレンダー表による予防・対処 活動継続のためには目的と活動項目の選定項目数, 対象 者の排尿症状にあった振り返りの場を設けることが必要 といえる. 2.排尿症状を改善・予防するための効果的な戦略 第一段階での対象者 20人のうち腹圧性尿失禁の可能 性のある者は 7人と多かったが, 1ヶ月間の実施では改 善できるものはいなかった. 骨盤底筋体操の効果は研究 によってまちまであるが, 短期間 (6週間) の骨盤底筋訓 練プログラムによる腹圧性尿失禁の完治, あるいは改善 率は 65から 75%との研究もある. また, 高齢者排尿管 理マニュアルによると骨盤底筋体操は毎日行うことが重 要であり, 目安は 2ヶ月間継続することとある. した がって, 第一段階での 1カ月間だけは効果は期待できな いといえる. しかしながら, 第二段階で骨盤底筋体操に 的をしぼり, 3ヶ月間実施してもらった結果, 腹圧性尿失 禁の改善者は 2人みられた. 骨盤底筋体操の効果は専門 家がきちんと関わる必要があり, パンフレットを渡すだ けでは効果は得られないといわれている. 江本は外来 患者 79 人を対象にしてアセスメント, 指導, フィード バック, 評価の一連のプログラムを作成し, 長期的な効 果として 16.2%改善率のアウトカムを報告している. 今後, 地域住民に対する尿失禁予防活動の効果を得るに は, 講演会終了後も専門家がきちんと正しく実践できて いるか確認したり, 評価したりする継続システムの構築 を行政とともに行う必要がある. 第一段階で改善した 4人の排尿症状は頻尿, 切迫性尿 失禁であった. 尿量は水 摂取量と関連があり, 夜間頻 尿の者に対しては水 摂取の時間帯を調整 (日中にシフ トし寝る前には控える) することで軽減できる. また, コーヒーや紅茶のカフェイン飲料, アルコールは利尿作 用があるので摂取を控えるか量を減らすことで失禁のコ ントロールができるとしている. 今回, コーヒー, 緑茶 よりもカフェインの含まない番茶やほうじ茶の摂取の工 夫等を説明したが, 頻尿・切迫性尿失禁の症状緩和に効 果的であり, 骨盤底筋体操と違ってすぐに効果が得られ るといえる. したがって, 対象者の排尿アセスメントに もとづいて, なにを実施させるか明確にし, 効果が出現 する期間も 慮してのカレンダー表による戦略が必要で ある. また, アセスメントの結果, 医師の診察の必要性を 判断し, 早期受診につなげるように働きかけることも重 要である. 表3 3ヶ月間 (1月から 3月までの 90日間)用カレンダー表にて記載した骨盤底体操実施した日数とアウトカム評価 事例 実施した日数 (○記載) % アウトカム評価 改善した排尿症状 A 51 56.7 改 善 頻 尿 B 83 92.2 変化なし ― C 64 71.1 改 善 頻尿・切迫性尿失禁 D 79 87.8 改 善 頻尿・腹圧性尿失禁 E 88 97.8 改 善 頻尿・切迫性尿失禁 F 70 77.8 改 善 腹圧性尿失禁 G 79 87.8 変化なし ― H 49 54.4 変化なし ― I 90 100.0 変化なし ― J 55 61.1 変化なし ― 平 値 70.8±15.3 78.7±17.0 注 : 事例は第一段階の対象者のなかの第二段階調査の同意を得られた者で住所氏名不明のため A から Jと表示

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3.今後の課題 本研究の対象者が少なかったことの限界性をふまえ, 今後, 対象者を増やしての研究が必要である. また, 察 から得られた知見をいかし, 地域住民に対して排尿アセ スメントにもとづいた少人数制, 個別指導, 継続システ ム構築による介入研究をすることが課題である. また, 客観的・定量的な指標によるアウトカム評価が必要であ り, OABSS (過活動膀胱チェックシート) や排尿日誌の 評価への導入等の検討を行うこと, 特に切迫性尿失禁は, 泌尿器科医との連携を行い, 薬物療法併用の可能性につ いての探索的な研究が必要である. 謝 辞 調査にご協力いただいた対象者の皆様, A 市社会福祉 協議会 B支所の職員の皆様, 上山真美先生に深く感謝い たします. 文 献 1. 内田陽子 : 在宅ケア利用者の要介護レベル別 ADL 変化 からみた費用の効率的な 用法. お茶の水医学雑誌 2002; 50(4): 1-12. 2. 厚生統計協会. 国民衛生の動向. 2009 ; 56(9): 245. 3. 奥野茂代, 大西和子. 老年看護学―概念と看護の実践―. 東京 : ヌーベルヒロカワ, 2009 ; 224. 4. 大渕修一 : 介護予防包括的高齢者運動トレーニング. 東 京 : 康と良い友だち社, 2005. 5. 内田陽子, 上山真美, 小泉美佐子. 地域在住高齢者におけ る頻尿・尿失禁の可能性と背景条件との関連―介護予防 講習会の参加者の自己評価から―. 日本在宅ケア学会誌 2008; 12(1): 44-52. 6. 竹田伸也, 田治米佳世. 認知症予防への扉. 東京 : コープ 出版, 2008; 162-184, 190-192. 7. 矢富直美, 杉山美香, 宮前 子. 認知症予防のすすめ方 ―行動変容とソーシャルマーケテイング―. 東京 : 真興 易医書出版部, 2007; 47-54. 8. Cooper J. Monga A : 腹圧性尿失禁 クリニカルエビデ ンス日本語版 (日本語クリニカルエビデンス編集委員 会). 東京 : 日経 BP社, 2001; 1260-1264. 9. 大見賢治,後藤百万ら.高齢者排尿管理マニュアル―尿失 禁・排尿困難―. 2001; 46. 10. 福井準之助 : プライマリケアのための高齢者尿失禁のマ ネジメント. 大阪 : 医薬ジャーナル, 2004; 40. 11. 江本厚子 : 女性の腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋運動の 長期成績とその関連要因に関する研究. お茶の水医学雑 誌 2002; 50(1): 19-34. 12. 髙木永子, 礒岩壽満子, 市村久美子ら. 看護過程に った 対症看護―病態生理と看護のポイント―. 東京 : 学研, 1990; 203. 13. プリシラ・エバーソール,パトリシア・ヘス,アン・シュ ミレット・ルゲン.ヘルシーエイジング.東京 : エルゼビ ア・ジャパン株式会社, 2007; 1(1): 292.

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Implementation and Evaluation of an Exercise

Calendar Program to Prevent and Cope

with Urinary Incontinence in Community Residents

Yoko Uchida

1 School of Health Sciences, Gunma University Faculty of Medicine, 3-39-22 Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, Japan

The purpose of this study was to describe the implementation and evaluation of an exercise calendar program for community residents to prevent and cope with urinary incontinence. The subjects of the study were 100 residents who attended a presentation on urinary incontinence prevention in A city. In the first stage,one-month exercise calendars were distributed to the participants to perform three activities (pelvic floor exercise, fluid intake, and prevention of constipation), and were returned by mail. In the second stage,3-month exercise calendars for pelvic floor exercise were mailed to the respondents. There were 20 respondents in the first stage, and all the three activities of the one-month program were completed in 61.8±29.8% of the 30 days. Four persons improved their urinary symptoms after the first stage. There were 10 respondents in the second stage,and the three-month program was implemented in 78.7±17.0% of the 90 days. Urinary symptoms were improved in five participants after the second stage. These results suggest that focused objectives and strategies with a limited number of activities are effective for continuation of the urinary incontinence prevention program.(Kitakanto Med J 2010;60:227∼233)

表 2 1ヶ月間(11月の30日間)のカレンダー返信対象者の状況 背景条件カレンダー記載 (30日間)1か月の評価 事例番号性別年齢通院の有無既往歴排尿症状 ( 頻尿・尿失禁の可能性 についての該当項目 )○の日数%△の日数%○△の 合計日数%アウトカム評価改善された症状 1男67なし大腸疾患昼間頻尿26 86.7 4 13.3 30 100.0変化なし― 2女73なしなしなし10 33.3 13 43.3 23 76.7変化なし― 3男79ありなし夜間頻尿19 63.3 11 36.7 30 100.0変

参照

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