時変パラメータVARモデルによる原油価格が株式市
場に与える影響について
著者
下大屋 良将
2015年度 修士論文要旨
時変パラメータ
VAR
モデルによる
原油価格が株式市場に与える影響について
関西学院大学大学院 理工学研究科 数理科学専攻 森本研究室 下大屋良将1
はじめに
日本は原油などのエネルギーをほぼすべて海外からの輸入に頼っているので、原油 価格が上昇することにより、日本経済に悪影響を与えると言われている。原油価格と 株価の因果関係を分析した論文として、Apergis and Miller (2009),Barsky and Kil-ian(2002,2004),Killian(2008)といったものがあり、分析手法としてVAR(Vector AutoRegressive)モデルを用いている。ここで、日々変化している株価において、パラメータ が時間を通じて一定であるVARモデルでは、推定値にバイアスが生じるのではないか と考えた。そこで、係数と構造ショックの分散を時間によって変動する時変パラメータ VAR モデルの先行研究として、Primiceri(2005)、中島, 渡部(2012) があり、時変パラ メータVAR モデルを用いることによって、株価の変動をうまく捉えることができるので はないかと考え、この研究を始めようと考えた。
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時変パラメータ
VAR
モデル
Primiceri(2005) によって提案された時変パラメータ VAR(TVP-VAR;time-varyingparameter VAR)モデルを説明する。中島,渡部(2012)によると、時変パラメータVAR
モデルはVARモデルの係数と構造ショックの同時相関パラメータを時変にしたモデルで ある。 ここでは、k 個の変数をyt = (y1t,· · · , ykt)′ として、次のラグ次数 sの時変パラメータ VARモデルを考える。 yt = ct+ s ∑ m=1 Bmtyt−m+ ϵt ϵt ∼ N(0, Ωt), t = s + 1,· · · , n 1
というモデルである。ct は(k× 2)の時変定数項ベクトル、Bit は(k× k)の時変係数行 列(i = 1, 2,· · · , s)、ut は(k× 1)の撹乱項ut は平均0、時変共分散行列Ωt のk変量正 規分布に従うと仮定する。
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時変パラメータ
VAR
モデルのベイズ推定
At は対角成分がすべて1の(k × k)の下三角行列、Σt は(k × k)の対角行列とする。 At の下三角行列を行ごとに1列に並べたベクトルをat = (a21t, a31t, a32t,· · · , ak,k−1,t)′ とおき、Σt の対角成分を hit = logσit2 と変換したうえで 1 列に並べたベクトルを ht = (h1t,· · · , hkt)′ と定義する。時変パラメータVARモデルにおける時変パラメータ は(βt, at, ht)であり y ={yt}nt=1, β ={βt}nt=s+1, a ={at}t=s+1n , h ={ht}nt=s+1, ω = (Σβ, Σa, Σh)と定義する。データyが得られたときの時変パラメータVARモデルにおけ る同時事後確率密度関数π(β, a, h, ω | y)からの確率標本は、MCMC法によるステップ によって得ることができる。4
まとめ
時変パラメータVARモデルを用いて、原油価格、日経平均株価、GDPギャップのデー タから分析を行った。参考文献
(1) 中島上智・渡部敏明(2012) 「時変ベクトル自己回帰モデル: サーベイと日本のマクロデー タへの応用」 経済研究、第63巻、第3号、pp.193-208 (2) 沖本竜義(2010)経済・ファイナンスデータの計量時系列分析(統計ライブラリー)、朝倉書店(3) Nicholas Apergis(2009) Do structural oil-market shocks affect stock prices? ,Energy Economics, 31, Pages 569-575
(4) Giorgio E. Primiceri (2005) Time Varying Structural Vector Autoregressions and Monetary Policy
(5) R.B. Barsky, L. Kilian (2002) Do we really know that oil caused the great stagflation? A monetary alternative NBER Macroeconomics Annual, pp. 137-183
(6) R.B. Barsky, L. Kilian (2004) Oil and the macroeconomy since the 1970s Journal of Economic Perspectives, pp. 115-134
(7) L. Kilian, C. Park (2007) The impact of oil price shocks on the U.S. stock market CPER Discussion Paper 61-66