介護 に関わ る環 境 が与 える
老人入 院診 療費 へ の影響
岡山大 学医学 部衛 生学 講座(指 導:青 山英康 教授)
岩
浅
祐
二
郎
(平 成12年3月14日 受 理) Key words:老 人 入 院 診 療 費,本 人 の 要 因,家 庭 の 要 因,地 域 環 境 の 要 因 緒 言 国 際 的 に 他 に 例 を見 な い 急 速 な 少 子 ・高 齢 化 社 会 を迎 え て い る 我 が 国 で は,増 大 す る 老 人 医 療 費 の 負 担 が 社 会 的 に 重 大 な 問 題 とな ってい る1). な か で も国 民 総 医 療 費 を 国 民 全 体 で 負 担 す る 国 民 皆保 険 制 度2)を 基 盤 と し て い る 我 が 国 で は,西 高 東 低 と言 わ れ る医 療 費 の 地 域 格 差3)が あ り,平 成7年 度 の1人 当 た り老 人 医 療 費 の 都 道 府 県 格 差 は 「平 成7年 度 老 人 医 療 事 業 年 報 」(厚 生 省 老 人保 健 福 祉 局)に よ る と最 高 の 北 海 道 と最 低 の 長 野 県 で1.86倍 の 開 きが あ る. 今 日,老 人 医 療 を考 え る 上 で,高 齢 者 に 見 ら れ る疾 患 は慢 性 的 な病 態 を特 色 と して い る ため, 在 宅 サ ー ビ ス に お け る 「キ ュ ア 」 よ り 「ケ ア 」 へ の 転 換 が 必 要 と され て い る4).老人 医 療 費 の 増 大 に 大 き く影 響 して い る と考 え ら れ て い る 入 院 診 療 費 に 関 して,治 療 以 外 の 目的 で 入 院 す る社 会 的 入 院 の 影 響 が 問 題 と して 取 り上 げ られ て お り,一 因 と して 家 庭 の 介 護 力 の 不 足 が 指 摘 さ れ て い る5,6).国 家 的 に は 高 齢 者 介 護 対 策 の 充 実 と 保 健 福 祉 サ ー ビ ス を充 実 させ る施 策 と して 新 ゴ ー ル ドプ ラ ン が 策 定 さ れ,平 成7年 度 よ り取 り 組 まれ て き た7).介護 を 必 要 とす る高 齢 者 が 平 成 37年 に は520万 人 に 急 増 す る こ とや 少 子 化 と核 家 族 化 の 中 で 介 護 を 担 う家 族 の 負 担 が 社 会 問 題 と な っ て い る8)こ と よ り,介 護 サ ー ビ ス を社 会 的 に 整 備 す る こ と を 目指 した 介 護 保 険 制 度 が 平 成12 年 度 よ り施 行 され よ う と して い る9). 老 人 介 護 に 関 わ る環 境 が 老 人 入 院 診 療 費 に 影 響 を与 え る 可 能 性 が あ る に もか か わ らず,こ れ ま で 医 療 費 の 地 域 格 差 に つ い て 医 師 数 や 病 床 数 な ど 医療 供 給 の観 点 か ら分 析 さ れ た研 究 は 多 く 見 られ る10)が,高 齢 者 の 介 護 に 関 わ る環 境 か ら分 析 さ れ た研 究 は 少 な い11,12).本研 究 は,高 齢 者 の 介 護 に 関 わ る環 境 の う ち,本 人 の 要 因,家 庭 の 要 因,地 域 環 境 の 要 因 が 都 道 府 県 に お け る老 人 入 院 診 療 費 の 格 差 へ 与 え る影 響 を明 らか に す る こ と を 目的 と し た. 対 象 と 方 法 本 研 究 で は 老 人 の 診 療 費 の 指 標 を 「平 成7年 度 老 人 医 療 事 業 年 報 」(厚 生 省 老 人 保 健 福 祉 局) を 資料 と し て選 定 し た.老 人 医療 費 は,診 療 費 と そ の 他 の 費 用 に分 け ら れ,診 療 費 は 入 院 診 療 費,入 院 外 診 療 費,歯 科 診療 費 に 分 け られ て 算 定 さ れ て い る.各 診 療 費 は1日 当 た り診 療 費 と 1人 当 た り診 療 実 日数 の 積 で 表 す こ とが で きる. 老 人 の 入 院 診 療 費 と老 人 医 療 費 との 関 連 を検 討 す る ため,診 療 費 の82.1%13)を 占め る入 院 診 療 費 お よ び 入 院 外 診 療 費 につ い て の1人 当 た り費 用, 1人 当 た り診 療 実 日数,1日 当 た り診 療 費 用 と 1人 当 た り老 人 医 療 費 の 相 関 係 数 を算 出 した. な お1人 当 た り診 療 実 日数 は 入 院,入 院 外 日数 の 年 間 総 実 日数 を老 人 医 療 受 給 対 象 者 数 で 除 し て 算 出 され て い る.各 医 療 費 の 指 標 の 統 計 量 は 表1に 示 し た. 高 齢 者 の 介 護 に 関 わ る 環 境 に つ い て は,本 人 の 要 因,家 庭 の要 因,地 域 環 境 の 要 因 に分 類 し 選 定 す る こ と に し た.各 要 因 の 指 標 は 「社 会 生 6566
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表1 老 人 人 院 診療 費 の 各指 標 と1人 当 た り老 人 医 療 費 の指 標 統 計 量 表2 介 護 要 因の 各 指標資料
平成7年 度老人医療事業年報(厚生省老人保健福祉局)
活統 計指 標1998」(総務 庁統 計局),「国勢 調査 報
告」(総 務 庁統 計 局),「 住 宅統 計調査 」(総 務 庁
統計 局),「老 人保健 事 業報告 」(厚生 省大 臣官 房
統 計情報 部),「 平 成8年 度 版老 人保健 福 祉 マ ッ
プ」(長 寿社会 開発 セン ター)よ り表2に 示す 如
く,本人 の要 因 としては高 齢者 自身 の経 済状 況,
人 口割 合,平 均余 命 を,家 庭 の要 因 と して は高
齢者 に関 わ る家族 構成 と住 環境 を,地 域 環境 の
要 因 と して は高齢 者 に対す る政 策 の中 で施設 入
所 を示 す指 標 と在 宅 を支 え る指 標 を選 定 した.
介護 に関 わ る環 境 を示 す各指 標 の統 計量 は表3
に示 した.介 護 に関わ る環境 を示す 各指 標 と老
人入院 診療 費 を示 す指標 との間 の相 関係 数 を算
出 し,統 計 学 的 な有意性 の有 無 を検 討 した.
介護 に関 わ る指標 の老 人 入院 診療 費へ の影 響
の 強 さ を検 討す るため,老 人入 院診療 費 の指 標
を 目的 変数 と し,介 護 に関 わ る指 標 を説 明変 数
とす る重 回帰分析 をス テ ップ ワイ ズ法 に よ り行
った.説 明変 数 を選択 す るに 当た って は,介 護
に 関わ る各指 標 か ら老 人入院 診療 費 の指 標 と有
意 な相 関性 を持つ指 標 を用 い,多 重共 線性14)を
考
慮 し,指 標 間で の相 関性 を検 討す るため,各 指
標 間 の相 関係 数 を求め,相 関係数 が0.7以 上15)あ
資料 (1)(8)(10);国勢調査報告(総 務庁統計局) (11);住宅統 計調査(総 務庁統計局) (12)∼(15);平成8年 度版老 人保健福祉 マ ップ(長 寿社 会 開発 センター) (18);老人保健事 業報告(厚 生省大 臣官房統計情報部) その 他;社 会 生 活 統 計 指 標-都 道 府 県 の 指 標-1998(総 務庁 統計局) 以後,各 指標 は夫々(1)高齢就業,(2)生活保護,(3)老年割 合,(4)男性余命,(5)女性余命,(6)死別 男性,(7)死別女性, (8)単独世帯,(9)親族世帯,(10)有配偶率,(11)持家比率(12) 特養定員,(13)老健定員,(14)軽費定員,(15)デイ事業,(16)ヘ ルパー,(17)保健 婦数,(18)健診受 診 と略す. る指 標 に つ い て は 老 人 入 院 診 療 費 の 指 標 との 相 関 が よ り高 い 指 標 を優 先 し た. こ れ らの 統 計 解 析 に は 統 計 パ ッケ ー ジSPSS 7.5J Windows版 を使 用 し た. 結 果 1人 当 た り老 人 医 療 費 に 対 す る入 院 及 び 入 院 外 診 療 費 を示 す 各 指 標 との 関 連 は,表4に 示 す 如 く1人 当 た り入 院 診 療 費 と最 も高 い 相 関 が 認 め られ た の で,老 人 医 療 費 の 指 標 と し て1人 当 た り入 院 診 療 費 は 指 標 と し て の 代 表 性 を持 っ て い る と 認 め られ る. 介 護 に 関 わ る各 要 因 の指 標 と1人 当 た り入 院表3 介護 要 因の指 標 統 計 量 (N=47) 資料 (1)(8)(10);国勢 調査 報 告(総 務 庁 統 計 局) (11);住宅 統 計 調 査(総 務 庁 統 計 局) (12)∼(15);平成8年 度 版 老 人保 健 福 祉 マ ップ(長 寿 社 会 開 発 セ ン ター) (18);老 人保 健 事 業 報 告(厚 生 省 大 臣 官房 統 計 情 報 部) そ の他:社 会 生 活 統 計 指 標-都 道 府 県 の指 標-1998(総 務 庁 統 計 局) 表4 老 人 医療 費 と入 院 診療 費 (N=47) 資料 平成7年 度老人医療事業年 報(厚生 省老 人保健 福祉局)
診療 費 との 間の相 関係数 は表5に 示 す如 く,1
人 当た り入院 診療 費 に対 して有 意水 準0.05以 下
の相 関 を認め た指 標 を老 人の入 院 診療 費に関 連
す る指 標 と して,以 下 の分析 に用 い るこ とに し
た.介 護 に関 わ る全18指 標 中,1人
当 た り入 院
診療 費に統 計学 的 に有 意 な関連 を持 つ指 標 は以
下 に記 す10指 標 であ った.す なわ ち,本 人の 要
因 では,65歳 以上 の者 の就業 率 が有 意 な負の相
関 を示 し,生 活保護 被保 護老 人数(月 平均65歳
以上 人 口千人 当 た り)と 平均 余命(65歳
・女)
が有 意 な正の相 関 を認 め た.家 庭 の要 因で は,
死別 者割合(60歳 以上 ・女)と 高齢 単独世 帯 の
割合(65歳 以上)が 有 意 な正 の相 関 を示 し,70
歳以上 の 有配偶 率 と持 ち家 比率 は有 意 な負 の相
関 を認め た.地 域 環境 の要 因 では特 別養 護老 人
ホー ム定 員数 と老 人保健 施 設定 員数 が有 意 な正
の相 関 を示 し,基 本健康 診査 受 診率 は有 意 な負
の相 関 を認め た.
選 択 され た指標 につ い ての各 要 因の 内部相 関
を検 討 した結 果 は表6に 示 す如 く,本 人 の要 因
内 では生 活保 護被保 護 老 人数(月 平 均65歳 以上
人 口千 人当 た り)が65歳 以上 の者 の就 業率 と有
意 な負 の相関 を認 め た.家 庭 の要 因 内で は死別
者割合(60歳 以上 ・女)が70歳 以 上の 有 配偶率
と有 意 な負 の相関 を認 め,持 ち家 比率 と有 意 な
正 の相 関 を認 め た.高 齢 単独世 帯 の割合(65歳
以上)は70歳 以上 の有 配偶 率 と持 ち家 比率 に有
***: P<0 .001**:P<0.Ol*:P<0.0568
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意 な 負 の 相 関 を 認 め た.地 域 環 境 の 要 因 内 で は 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 定 員 数 が 老 人 保 健 施 設 定 員 数 と有 意 な正 の相 関 を認 め た.本 人 の要 因 内, 家 庭 の 要 因 内 及 び 地 域 環 境 の 要 因 内 で は,相 関 係 数0.7以 上 の 内 部 相 関 は 認 め ら れ なか っ た. 表5 1人 当た り入 院診 療 費 と介 護 要 因 との間 の 相 関 係 数 (N=47) ***: P<0 .001 **: P<0.01 *: P<0.05 選 択 し た各 指 標 間 の 相 関 係 数 は,生 活 保 護 被 保 護 老 人 数(月 平 均65歳 以 上 人 口 千 人 当 た り) と高 齢 単 独 世 帯 の 割 合(65歳 以 上)で0.7以 上 の 高 い 相 関 係 数 が 得 られ た ため,1人 当 た り入 院 診 療 費 に 対 し て相 関 の よ り高 い生 活 保 護 被 保 護 老 人 数(月 平 均65歳 以 上 人 口 千 人 当 た り)を 選 択 し た.他 の 指 標 間 に は0.7以 上 の 相 関 係 数 は 認 め られ な か っ た. 選 択 さ れ た9指 標 を 説 明 変 数 と して,1人 当 た り入 院 診 療 費 に 対 す る重 回 帰 分 析 を ス テ ッ プ ワ イ ズ 法 に よ っ て 行 っ た 結 果,表7に 示 す 如 く 死 別 者 割 合(60歳 以 上 ・女)と 持 ち家 比 率 と特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 定 員 数 の3指 標 が 抽 出 され, こ れ ら3指 標 で1人 当 た り入 院 診 療 費 へ の 影 響 が67.8%説 明 可 能 で あ っ た.こ れ ら3指 標 の う ち1人 当 た り入 院 診 療 費 に 対 して,最 も影 響 を 与 え て い た指 標 は 家 庭 の 要 因 の 持 ち家 比 率 で あ っ た. 表7 1人 当た り入 院診 療 費 を 目的変 数 とす る 重 回帰 分 析 (N=47) 調 整済 み 決 定係 数 0.678 表6 各 要 因 間 の相 関 係数 (N=47) ***: P<0 .001 **: P<0.01 *: P<0.05考
察
老 人 医療 費 と老人 の入 院診療 費 との関連
先行 研 究 では入 院診療 費が老 人 医療 費 と最 も
高 い相 関 を示 し,入 院 診療 費 と外 来 診療 費の相
関 も認 め ちれて いる16).本
研 究 で も老人 医療 費に
最 も影 響 を与 え てい たの は1人 当 た り入 院診療
費 であ った こ とか ら,1人
当 た り入 院診 療費 は
都 道府 県別 の 老人 医療 費 の要 因解 析 の指 標 とし
て用 い る妥 当性 を認め得 た.
介護 に関 わ る環 境 と老 人入 院診療 費 の関 連
社会 的要 因に よ る医療 に関 わ る影響 は,医 師
数,病 床数 との関連 で検 討 した研 究15∼29)が
多 く,
中 で も,医 師数,病 床数 が老 人 医療 費の指 標 と
強 い正 の 関連 を示 す こ とか ら 「
供 給 が需要 をつ
くる」 と考 え られ て きた15∼17)が,本
研 究 では介
護 に関わ る環境 と して本 人 と家庭,地 域環 境 の
要 因に分 けて,18指 標 を選定 した.社 会 的,文
化 的,経 済的指 標 と1人 当た り老 人 医療 費 との
関連 を検 討 した森 ら30)の
研 究 によると被 生 活保 護
者指数,男 性 の非就 業者 率 が1人 当 た り老 人 医
療 費 と正 の相 関 を示 して いたが,本 研 究 で も生
活保護被 保 護老 人数(月 平均65歳 以上 人 口千 人
当 た り)が 高齢単 独世 帯 の割合(65歳 以上)と
有 意 な高 い正 の相 関 を示 し,70歳 以上 の有 配偶
率や 持 ち家 比率 と有 意 な負の相 関 を認 めてお り,
生 活保護 を受 け て い る高 齢者 は配偶 者 が いな い
1人 暮 ら しの家庭 であ り,持 ち家 を持 っ てい な
い可能性 が推 察 され る こ とか ら経 済力 の低 い状
態 に あ ると考 え られ る.高 齢者 を家庭 内 に抱 え
るだけ の経 済力 に乏 しい世 帯 が 多い地城 では,
なん らかの疾 患 を持つ 高齢 者 を医療 機 関へ収 容
せ ざるを得 ない場合 が必然 的に 多 くなる30)と
言わ
れ てい る こ とか らも,生 活保 護 を受 け て いる高
齢者 の経 済力 の低 さや 家族 内 の介護 者 の不足 が
在 宅 での 生活 を困難 に し,1人
当 た り入 院診療
費の 高 さに繋 が った と考 え られ,社 会 的 入院 の
一 因 となって い る可能性 が あ る
.
家庭 の要 因 では一 世帯 当た り人員 と1人 当た
り入院 診療 費は 負の相 関が認 め られ てい る16)が,
本研 究 で は世 帯 人員 の構 成 を指標 とした高齢単
独世 帯 の割合(65歳 以上)や 死別 者 割合(60歳
以上 ・女)な ど配 偶者 の不 在 を意 味す る指標 と
70歳 以上 の有 配偶率 で1人 当 た り入院 診療 費 に
そ れぞれ 正 と負の 関連 を認め た.高 齢者 を巡 る
家族構 成 の 中で世 帯人 員数 の みな らず,配 偶 者
の有 無 に よる家庭 の介護 に関 わ る環 境 が老 人入
院診療 費 と関 与 して い る と考 え られ る.
地域 環 境の要 因では特 別養 護 老人 ホー ム定 員
数 や老 人保 健施 設定 員数 な ど施 設入 所 を示す 指
標 が1人 当 た り入 院診療 費 と有 意 な正 の 関連 を
認め,在 宅 を支 え る指標 と1人 当 た り入 院診療
費 とは基本健 康 診査 受 診率 が負 の相 関 を認め た
のみ で,他 の指 標 の関与 は認 め られ なか った.
1人 当た り入院 診療 費 と有意 な相 関 が認 め られ
なか った在 宅 を支 え る指 標 につ いて は,今 後 増
加 が見 込 まれ れば老 人 の入院 診療 費へ の影 響 が
強 まる可能性 が あ ろ う.
本研 究 で選 択 した介護 に関 わ る環境 を示 す指
標 につ い て,各 指 標 の相 関関係 を検 討 した結果
か ら相 関 係数0.7以 上 の高 い関 連 性 を持 つ指 標
は,生 活保護 被保 護 老人 数(月 平均65歳 以上 人
口千人 当 た り)と 高 齢単独 世 帯 の割合(65歳 以
上)の み であ り,選 択 され た介護 に関 わ る3指
標 に よ る重 回帰分 析 の結 果か ら,1人
当 た り入
院 診療 費 に対 す る67.8%の 説 明が 可能 で あ った
こ とは,指 標 選定 の 妥 当性 を示 して い る と考 え
られ る.
1人 当た り入院 診療 費 を 目的 変数 とす る
重 回帰分 析
1人 当 た り入院 診療 費 に対 す る重 回帰分析 の
結果 よ り,死 別者 割合(60歳 以上 ・女)に 最 も
強 く正 の関連 が認 め られ たが,死 別 者 割合(60
歳 以上 ・
男)と は相関 を認 め なか っ た.こ れ は,
男性 よ り女性 の平 均余 命 が長 く,配 偶 者 と死別
す る高齢 者 は女性 とな る率 が 「
社会 生 活統 計指
数1998」(総 務 庁 統計 局)の 平 成7年 度 の全 国平
均 によ ると男性 の場 合に 比 し4.3倍 高い こ とか ら
も,死 別 者割 合(60歳 以 上 ・女)で 配偶 者 と死
別 した高 齢者 の状況 を示 してい る と考 え られ る.
「
国民生 活基 礎調 査 」(厚生省 大 臣官房 統 計情 報
部,平 成7年 度)に よる と,要 介 護 の高 齢者 の
い る世帯 は夫 婦 のみ の世 帯 であ る率 が35 .8%と
最 も多 い こ とか ら,配 偶 者 の死 は家 族 内の介 護
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者 の 不 足 を もた らす 可 能 性 が あ り,介 護 に お け るマ ンパ ワー31)が十 分 確 保 され な い環 境 が 在 宅 で の 生 活 を 困 難 に し,1人 当 た り入 院 診 療 費 の 高 さ に影 響 し て い る と考 え られ る. 逆 に,持 ち 家 比 率 が1人 当 た り入 院 診 療 費 に 対 す る重 回 帰 分 析 に よ っ て最 も高 い 負 の 相 関 を 持 っ て お り,持 ち 家 比 率 は 高 齢 単 独 世 帯 の 割 合 (65歳 以 上)や 生 活 保 護 被 保 護 老 人数(月 平 均 65歳 以 上 人 口 千 人 当 た り)と 有 意 な 負 の 相 関 を 認 め て い た こ と は 介 護 を支 え る 家 族 内 の 介 護 者 の 充 実 を 表 して い る と推 察 され,介 護 に 関 わ る 環 境 の 良 さ を 示 して い る と考 え られ る.介 護 に 関 わ る環 境 の 良 さ が1人 当 た り入 院 診 療 費 の 低 下 を も た らす 可 能 性 が 考 え られ る. 本 研 究 で は,介 護 に 関 わ る指 標 間 の 相 関 係 数 が0.7以 上 の相 関 性 を持 つ 指 標 の うち生 活 保 護 被 保 護 老 人 数(月 平 均65歳 以 上 人 口千 人 当 た り) を 重 回 帰 分 析 の 説 明 変 数 に 選 択 して ス テ ップ ワ イ ズ法 に よ り分 析 した が,強 制 投 入 法 を選 択 し た 場 合 は,異 な る結 果 が で る 可 能 性 もあ る が3 指 標 で67.8%の 関 連 が 説 明 で き た こ とか ら敢 え て行 わ な か っ た. 社 会 的 要 因 の 中 で も経 済 的,文 化 的 要 因 の 医 療 費 へ の 影 響 は 先 行 研 究15∼17,22,30,32,33)が多 く,住 居 や 高 齢 者 ケ ア の 担 い 手 で あ る家 族 な ど の社 会 的 要 因 が 高 齢 者 の 入 院 に 関 わ る とい う指 摘16)がな さ れ て い る が,本 研 究 で も,重 回 帰 分 析 の 結 果 か ら,僅 か 三 つ の 指 標 で1人 当 た り入 院 診 療 費 へ の 影 響 の67.8%が 説 明 さ れ た こ とに よ り,高 齢 者 の 介 護 に 関 わ る要 因 と1人 当 た り入 院 診 療 費 との 関 連 性 は 明 らか に さ れ た と考 え られ る. 岐 阜 県 の 市 町 村 別 デ ー タ を用 い た 研 究 で 「在 宅 福 祉 の 補 助 金 」 が 入 院 外 診 療 費 と負 の 相 関 を 認 め て お り,福 祉 と 医 療 の 代 替 性 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る17)ことか ら も,重 回 帰 分 析 の 結 果 で 最 も 強 い 正 の 関 連 を認 め て い た 配 偶 者 に 死 別 した 高 齢 女 性 に対 す る政 策 が1人 当 た り入 院 診 療 費 へ の 影 響 を考 え る 上 で 重 要 と考 え ら れ る. 平 成12年 度 か ら施 行 さ れ る 介 護 保 険 制 度 に お い て も在 宅 サ ー ビ ス に つ い て は,要 介 護 状 態 に あ るか ど うか で 給 付 され る9)こ とに な って い るが, 本 研 究 の 結 果 か ら1人 当 た り入 院 診 療 費 に 強 い 関 連 が 認 め ら れ た持 ち家 比 率 や 死 別 者 割 合(60 歳 以 上 ・女)な ど に つ い て の 考 慮 が な さ れ て い な い た め,家 庭 の 介 護 者 の 不 足 に 対 す る適 正 な マ ン パ ワー の 提 供 が 望 め な い 可 能 性 が あ る.家 族 構 成 や 居 住 環 境 な ど の介 護 に 関 わ る 要 因 を 反 映 し た判 定 基 準 を加 味 し,配 偶 者 に 死 別 し た 高 齢 女 性 や 持 ち 家 を持 た な い 高 齢 者 に マ ンパ ワ ー を確 保 す る介 護 サ ー ビ ス を提 供 す る こ とが 望 ま れ る.本 研 究 で 選 択 し た介 護 に 関 わ る 環 境 の 指 標 は,最 近 急 激 に 増 加 す る もの と減 少 す る も の が あ る と思 わ れ,こ の 点 は 今 後 の 継 続 的 研 究 の 必 要 性 を 指 摘 す るに 止 ど ま る が,傾 向 と して は 老 人 保 険 関 連 施 設 の 増 加 に よ っ て,老 人 入 院 診 療 費 は 減 少 し,近 年 高 齢 化 に よ っ て 増 大 す る医 療 費 の 削 減 が 可 能 と考 え る. 結 論 今 回 の 研 究 で 目的 変 数 と し て選 定 し た1人 当 た り入 院 診 療 費 は1人 当 た り老 人 医療 費 と最 も 高 い相 関 を認 め,都 道 府 県 別 の 老 人 医 療 費 へ の 要 因 解 析 の 指 標 と して 妥 当性 を 認 め た. 介 護 に 関 わ る 要 因 と して,死 別 者 割 合(60歳 以 上 ・女),持 ち 家 比 率,特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 定 員 数 の 三 つ の 指 標 が 抽 出 さ れ,こ れ ら三 つ の 指 標 で1人 当 た り入 院 診 療 費 へ の影 響 の67.8%が 説 明 で き た. 1人 当 た り入 院 診 療 費 に 対 し て,介 護 に 関 わ る最 も強 い正 の 相 関 を示 し た 指 標 は,家 庭 の 要 因 の 死 別 者 割 合(60歳 以 上 ・女)で あ り,最 も 強 い 負 の 相 関 を 示 した 指 標 は,持 ち家 比 率 で あ っ た. 1人 当 た り入 院 診 療 費 に 対 して,正 の 相 関 を示 した 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 定 員 数 は い ま だ こ れ ら 二 つ の 指 標 よ りは 関 連 が 小 さ か っ たが,今 後 新 ゴー ル ドプ ラ ン の 達 成 で 影 響 は 高 ま る こ とが 推 察 され る. 謝 辞 稿 を終 え るに あ た り,終 始 懇 切 な御 指 導,御 校 閲 を賜 った恩 師岡 山 大 学 医学 部衛 生 学教 室 青 山 英康 教 授 に深 甚 の 謝 意 を表 し ます.ま た本 研 究 に ご協 力 く だ さい ま した 国立 公 衆衛 生 院古 市 圭 治 前 院長,九 州 大 学 健康 科 学 セ ン タ一 馬場 園明 助 教 授 に 感謝 いた し ます.文
献
1) 青 山 英 康:医 療 制 度 の 課 題 と将 来.週 刊 社 会 保 障 (1996) 50, 102-105. 2) 青 山 英 康:最 近 の 保 険 医 療 の 動 向 と そ の 対 応.香 川 県 立 中 央 病 院 医 学 誌 (1996) 15, 1-6. 3) 稲 垣 誠 一:都 道 府 県 別 医 療 費 に つ い て.厚 生 の 指 標 (1989) 36, 36-42. 4) 青 山 英 康:介 護 医 療 と そ の あ り方.総 合 臨 床 (1998) 47, 3203-3204. 5) 青 山 英 康:地 域 保 健 法 の ね ら い と体 制 づ く り.都 市 問 題 (1995) 86, 3-14. 6) 青 山 英 康:地 域 保 健 法 の 制 定 の 背 景 と今 後 の 課 題.日 衛 誌 (1996) 50, 1026-1035. 7) 厚 生 統 計 協 会:国 民 の 福 祉 の 動 向.厚 生 の 指 標 (1997) pp. 193-203. 8) 厚 生 統 計 協 会:国 民 の 福 祉 の 動 向.厚 生 の 指 標 (1997) pp. 92. 9) 厚 生 統 計 協 会:保 険 と年 金 の 動 向.厚 生 の 指 標 (1999) pp. 185-188. 10) 藤 原 佳 典,星 旦 二:高 齢 者 入 院 医 療 費 の 都 道 府 県 地 域 格 差 に 関 す る研 究 我 が 国 に お け る先 行 研 究 の 文 献 的 総 括.日 本 公 衛 誌 (1998) 45, 1050-1058. 11) 青 山 英 康:市 町 村 に お け る 医 療 費 の 背 景 要 因 に 関 す る報 告 書;市 町 村 に お け る医 療 費 の 背 景 要 因 に 関 す る 研 究 会,平 成9年 度 研 究 報 告 書 (1997) pp. 12-63. 12) 岩 浅 祐 二 郎,大 津 忠 弘,高 尾 総 司,青 山 英 康,馬 場 園 明:老 人 医 療 費 に影 響 を 与 え る 背 景 要 因.日 衛 誌 (1998) 53, 332. 13) 大 津 忠 弘,岩 浅 祐 二 郎,青 山 英 康,馬 場 園 明:老 人 医 療 費 の 都 道 府 県 格 差 に つ い て.日 衛 誌 (1998) 53, 333. 14) 石 村 貞 夫:す ぐわ か る 多 変 量 解 析.東 京 図 書 (1992) pp. 29-31. 15) 谷 原 真 一,張 拓 紅,尾 島 俊 之,中 村 好 一,柳 川 洋,小 林 雅 興:二 次 医 療 圏 毎 に 見 た 医 療 供 給 と 受 療 行 動 の 関 連 及 び 地 域 格 差.日 本 公 衛 誌 (1997) 44, 688-693. 16) 山 下 真 宏:老 人 医 療 費 の3要 素 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に 関 す る研 究.日 本 公 衛 誌 (1998) 45, 225-237. 17) 石 井 敏 弘,清 水 弘 之,西 村 周 三,梅 村 貞 子:入 院 ・入 院 外 老 人 医 療 費 と社 会 ・経 済,医 療 供 給,福 祉,保 険 事 業 との 関 連.日 本 公 衛 誌 (1993) 40, 159-169. 18) 小 野 昭 雄:高 齢 化 社 会 と今 後 の 医 療.鳥 取 医 学 雑 誌 (1989) 17, 1-5.19) Levit KR: Personal health care expenditures by State: 1966-82.
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