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日本人女子大学生に見られるBeliefs about Talk

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日本人女子大学生に見られるBeliefs about Talk

著者

笠原 正秀

雑誌名

椙山女学園大学研究論集 社会科学篇

34

ページ

91-101

発行年

2003

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00001398/

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日本人女子大学生に見られる Beliefs about Talk

1)

笠 原 正 秀

Beliefs about Talk among Japanese Female University Students

Masahide K

ASAHARA

The purpose of this research is reporting the present conditions of the Beliefs about Talk (BaT) among Japanese female university students. The respondents for this research are from the department of English. In this article, two hypotheses and three research questions are examined. Based upon the result of this research, the correlation between the BaT and Communication Apprehension (CA) is established as an interesting feature of further research.

はじめに 「文化」と「ことば」は相互に関連しており,「文化」は「ことば」に影響を及ぼし,「こ とば」の使われ方が,その「文化」の反映でもある(Yule, 1997)。また,「ことば」と「文 化」とを2つの用語に分ける代わりに,“languaculture” とすべきとする提言もある(Ager, 1994)。それほどまでに「文化」と「ことば」には,密接な関係が認められるのである。 「ことば」に対する価値観に関しては,これまでさまざまな研究がなされてきた(Bradac, 1990 ; Giles, Hewstone, Ryan, & Johnson, 1987)。また,「文化」という視点から,西洋文 化あるいは東洋文化における「ことば」に対する価値観についての研究も数多くみられる (Bond, 1985 ; Kalmar, young, & Hong, 1987 ; Pierson, 1987)。しかし,これまでの社会的 相互作用としての「話すこと」そのものに対する価値観の研究には,実証的なものがなかっ たといえよう(Giles, Coupland, & Wiemann, 1992)。

本稿の鍵概念でもある ‘Beliefs about Talk’(以下,BaT と記す)は,「話すこと」と「沈 黙」の機能に対する評価である(Wiemann, Chen, & Giles, 1986)。言語行動としての「話 すこと」に対する価値観にはさまざまなものがあるが,特に「文化」という視座から概観 してみるとその差は大きいといえる。 日本人のことばの使い方や言語コミュニケーションとして,「話す」ということについて は,ステレオタイプ的に「あいまい性」というものが多くの異文化コミュニケーションに 関する概論書の類には指摘されている。しかし,こうした日本人の言語表現にみられるあ いまい性は,日本人の他者に対する過剰配慮の表れであり,これが日本人の対人恐怖的心

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理の一因であるという指摘もある(中山, 1985)。 このように日本人の対人関係は,他者との心理的距離,上下関係,タテマエ,ホンネな どさまざまな文化的要素に規制されており,その結果として「察し」2)という独特のコミュ ニケーション能力が求められ,他者にあわせる「あわせ(adjustive)」3)のコミュニケーショ ン心理が形成されていると考えられる。 片山(2002)は,ことばに関することわざを 504選び出し,肯定的意味あい,意味的中 立,否定的意味あいの3つに分類し,相互に関連する類例を配列し,帰納的に7つの枠組 みを作った。そして,各枠組みから日本人の言語観を概観し,議論している。これらの枠 組みに一貫して見られる傾向として,できるだけ発言を差し控えようとする心的態度など, 口頭でのことばの使用に対する否定的な価値観をうかがい知ることができる。 また,人間関係が親密になればなるほど,ことばの使用が省略される傾向がみられ,他 者の身振りや表情などから意図を「察する」ことが求められてくるのである。徳性という 視点からは,話すことに非常に熟達した者が好意的に解釈されるのは例外的で,寡黙で実 行力のある人こそが真に尊敬を集める人とされている。逆に,口数の多い人は信用できな いという考え方が反映されたものが多い。古来より「ことあげ」することは禁忌とされて きた古代の言霊信仰から脈々と流れる日本人の言語観,特に話すことに対する価値観をう かがうことができる。

Wiemann, Chen, & Giles(1986)は,ヨーロッパ系アメリカ人,中国系アメリカ人,中 国人の3点比較を行い,次の4点について明らかにした。 1)ヨーロッパ系アメリカ人は中国系アメリカ人や中国人よりも話すことを楽しみ,重 要なことであると考えている。 2)ヨーロッパ系アメリカ人は,中国系アメリカ人や中国人よりも,機会があれば会話 の主導権を握ることが重要でかつ楽しみなこととしてとらえている。 3)この傾向は中国人よりも中国系アメリカ人の方が強く見られる。 4)ヨーロッパ系アメリカ人は,話すことは社会的コントロールを得ることと考えてい るのに対し,中国人は,沈黙を社会的コントロールと考えている。 こうした相違は,「個人主義(的文化)―集団主義(的文化)」4)の指標とも合致している。 Giles, Coupland, & Wiemann(1992, p. 11)によれば,“the collectivists do not have to go out of their way and exert themselves to be accepted,” “the individualists often speak More, try to control the situation verbally, and do not value silence.” と記している。つまり,集団主義的文化にお いて「話すこと」は,他者との関係性を発展させるための重要なものという見方はされて いないのである。 上述の集団主義的文化のように,「沈黙」をコミュニケーションの重要な要素と考えてい る文化もあれば,個人主義的文化のように,沈黙に対しては寛容度が低く,会話における 沈黙は何か埋めるべき空白というとらえ方をしている文化もある。また,集団主義的文化 では,「沈黙」をコミュニケーションの重要な一部として考え,逆に話すこと,それ自体の 方が危険であるという見方もある。 本稿では,上述のような文化における「話すこと」に対する価値観の相違を踏まえ,日 本人女子大学生に見られる BaT の現状を把握,報告することに主眼をおくものである。

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1.予測と調査上解明されるべき疑問点 既述してきたような言語観,特に「話すこと」に関するこれまでの先行研究を踏まえる と,次のような予測が導き出される。 先行研究より導かれる予測;「日本人の BaT は比較的低値を示すであろう」。 その根拠として,以下に示す2点をあげることができる。 理由1;日本人は集団主義的文化の一員とされている(Triandis, 1986 ; Hofstede, 1980, 1991)。 理由2;日本人は会話において沈黙を多用するとされている(Nishida, 1996; Gudykunst, 1998)。 これら2点から,容易に上記の予測は導き出されるが,日々の生活にみられる日本人女子 大学生のコミュニケーション行動を考えると,この予測に対しては懐疑的にならざるをえ ない。 そこで,次のような調査により解明されるべき疑問点が提示される。 疑問点1;沈黙や寡黙ということを問う質問項目に対して,どのような価値基準を示す であろうか? 疑問点2;話すことを問う質問項目に対して,どのような価値基準を示すであろうか? 疑問点3;日本人女子大学生の BaT は本当に低値を示すのであろうか? 本調査の前提条件として,対象が女性のみの調査であるということを明言しなければなら ない。女性のコミュニケーションに対する考え方は,男性のそれとはまったく異なってお り,特に言語コミュニケーションとして話すことに「親和」を求める女性と,情報伝達の 「道具」としてとらえている男性とでは,「話す」ということに対するとらえ方が自ずと異 なってくる(Tannen, 1987, 1991 ; Gray, 1993)。まさに,男性文化と女性文化におけるこ とばに対する価値観の相違である。しかし,本調査ではそうした性差による差異は考慮せ ず,女子大学生の話すことに対する価値観という視点からの調査報告をするものである。 2.調査方法 2.1 調査協力者 本調査に協力してくれたのは,174名の文学部英語英米文学科の学生である。年齢幅は 18才から26 才であった(M=20.02, SD=1.15, Me=20, Mo=20)。協力者は全員,自主 的な協力であり,強制力を持つような条件は一切もうけていない。つまり,提出を条件に 点数を与えるなどの報酬も一切与えていない。協力者は,調査用紙への回答から提出に至 るまでをすべて自主的に行った。また,調査者の説明責任として,全体としてどのような 数値が示され,回答者本人はどれ位の数値を示したかについては,希望があれば個別にお 教えするということにした。 2.2 調査手順 2.1で指摘したように,調査は文学部英語英米文学科の学生を対象に行った。授業担当者 の許可を得,1学年から4学年の必修科目の授業で528部の調査用紙を配布した(2002/07/31

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現在)。しかし,実際には,学期末に配布したこともあり,授業スケジュールの関係から, 配布できなかった授業もあった。そのような場合は,各学年内での横のつながり(友人関 係)を利用し,いわゆる口コミの形で互いに連絡をとってもらい,調査用紙を自主的に取 りに来た者には依頼をするようにした。そのため,連絡が届かなかった者や取りに来てい ない者に対しては,配布されていない。 回収率は32.95%であった(2002/07/31現在)。本調査の結果は,文学部英語英米文学科の 学生の持つ BaT 値として見るに十分な結果を提供してくれるものと考えられる。 2.3 調査用紙

本調査では,Assessing Your BaT(Gudykunst, 1998)を翻訳したものを利用した。Assessing Your BaT(Gudykunst, 1998)は,10項目からなる自己報告による測定票で,コミュニケー ション方法としての「話すこと」に対する考え方に関する質問に,「まったくあてはまる」 から「まったくあてはまらない」までの5段階で回答するリカート式のものである。

Assessing Your Beliefs about Talk

1. I enjoy talking when I find myself in social situations. 2. I do not enjoy small talk.

3. I try to break the ice by talking when I first meet others. 4. I view people who are reticent positively.

5. I could talk for hours at a time. 6. I do not enjoy talking with others. 7. I think that untalkative people are boring. 8. I do not trust the words people use when they talk. 9. I judge people by how well they speak.

10. I do not talk when I have nothing important to say.

(Gudykunst, 1998, p. 176) これら10項目からなる質問に対する回答を合計することにより,BaT 値が求められる。 しかしその前に,偶数番の質問項目に対する回答を逆転数値(具体的には,1と回答した 場合は5,2と回答した場合は4,3と回答した場合はそのまま,4と回答した場合は2, 5と回答した場合は1とする)にしなければならない。その後,10項目すべての回答を合 計する。合計点の幅は 10から50までである。この数値が高ければ高いほど,コミュニケー ションとして話すことに価値を見出していると見ることができる。 3.調査結果 各質問項目に対する調査協力者の回答は次の通りであった(下記に示される数値は逆転 数にする前段階のもの)。 項目1:M=3.88, SD=0.89, Me=4, Mo=4 項目2:M=2.00, SD=0.73, Me=2, Mo=1

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項目3:M=3.36, SD=0.96, Me=3, Mo=3 項目4:M=3.01, SD=0.96, Me=3, Mo=3 項目5:M=3.38, SD=1.33, Me=4, Mo=4 項目6:M=1.45, SD=0.64, Me=1, Mo=1 項目7:M=2.83, SD=1.05, Me=3, Mo=2 項目8:M=2.34, SD=0.82, Me=2, Mo=2 項目9:M=2.21, SD=1.01, Me=3, Mo=2 項目10:M=2.35, SD=1.07, Me=2, Mo=2 これら10項目のうち奇数番のものは,どの程度「話すこと」に対して肯定的な価値基準 を持っているかを示すものであり,逆に偶数番のものは,どの程度「話すこと」よりも「沈 黙」に対し,肯定的な価値基準を持っているかを示すものである。つまり,奇数番項目に ついては,数値が大きければ大きいほど,「話すこと」に対して肯定的な価値を持っている ことを示し,偶数番項目については,数値が大きければ大きいほど,「話すこと」よりも 「沈黙」に対して肯定的な価値基準を持っていることを示していることになる。 このことを踏まえ,それぞれの回答を集計すると,次のような結果が得られた。 奇数番項目:M=3.13, SD=1.20, Me=3, Mo=4 偶数番項目:M=2.17, SD=1.02, Me=2, Mo=2 ともに分散の程度は小さく,同様の回答に集中していることがわかる。また,奇数番項目 に対する回答は,中程度の3をやや超えており,偶数番項目においても,中程度の3をや や下回っている。つまり,「話すこと」に対して中程度以上の肯定的な価値基準を持ってい ることを示している。 これら10項目を合計した結果である BaT 値は,次のような数値となった。 BaT値 : M=34.81, SD=4.35, Me=35, Mo=38

グラフ1 BaT 値分散状況

既述のように BaT 値幅は 10から50までであり,30が中央値である。このことから,回 答者集団は「話すこと」に対して,中程度以上の肯定的価値基準を持っているといえる。 また,分散幅もあまり大きくなく,ほぼ同程度の数値に集中していることがわかる。ただ,

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最頻値と平均値との間に差が見られるが,グラフ2に見られるように BaT 値 35以上の分布 状況に比べ,35 以下の分布が広く裾野を伸ばしていることがわかる。 各項目別の回答状況を見てみると,概して「話すこと」に対して肯定的な評価をしてい る回答状況が見られるが,項目7,項目9については他の項目とはまったく異なる回答状 況が見られる。 項目7については,回答が2と4に頂点が分かれている。これは,「話すこと」に対して 比較的肯定的な見方と「沈黙」に対して比 較的肯定的な見方の双方が同程度に存在し ていることを示している。また,項目7で 問われているのは,あまり口数の多くない 人に対する評価であるが,このことはそう した人に対して寛容な姿勢を持っている者 が依然多いことを示しており,一概に日本 人の「話すこと」に対する価値基準が個人 主義的文化に近づいてきたと見ることは避 けるべきと思われる。 項目9は,話の上手/下手によるその人 の評価についてであるが,回答は圧倒的に 1もしくは2に集中しており,単に話すこ とに熟達した人を高く評価するような価値 基準を持っていないことがわかる。どちら かといえばあまり話の上手くない人に対し ても寛容な姿勢を持っていることを示して いると見ることができる。 また,回答状況の不規則な形状のグラフ として,項目5,項目10があげられる。 グラフ2 BaT 値分布状況 グラフ3 項目7に対する回答状況 グラフ4 項目9に対する回答状況

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項目5の場合,多くの回答が4もしくは 5に集中しており,話をすることに対して 相当積極的な姿勢を読み取ることができる が,回答2を頂点とした3以下の分布も見 過ごせないものと考える。つまり,話をす ることに対して積極的な姿勢を示す者もい る反面,話をすることに対して消極的な姿 勢を示している者も相当程度いるというこ とである。 項目 10は,4と5に回答がほぼ集中して いる。これは伝えるべき何かがないと話さ ないということである。ステレオタイプ的 に先行研究より導き出された予測には沿う 結果となっているが,女性はコミュニケー ションに「親和」を求める(Tannen, 1987, 1991 ; Gray, 1993)とする性差による言語 コミュニケーション観に反する結果でもあ る。 回答パターンとしては規則的な形状をし ているが,得点としてその両極に集中する のではなく,3を頂点とした中立的回答が 集中したものとして,項目4があげられ る。 項目4は寡黙な人に対する価値基準であ り,グラフの形状からは,寡黙な人に対し て中立的であり肯定的価値基準も否定的価 値基準も持っていないと考えられるが,数 値からはやや肯定的に見る寛容さが認めら れる。 4.議 論 本項では,調査結果で示された数値,グラフ等をもとに,本稿で提示した予測および調 査上解明されるべき疑問点に応える形で議論を進める。 まず,本調査における最も重要な発見は,数多くの先行研究からステレオタイプ的に導 き出された予測に対して,矛盾した結果が示されたことである。またこの結果は,疑問点 3に対する回答とも重なるものである。分散の程度が35を中心としたその周辺部分に房状 に集中している(SD=4.35)(既出グラフ1参照)。こうした数値だけを一見すると,日本 人の言語コミュニケーションに対する価値観や話すことに対する価値基準が変容してきて いると考えられそうであるが,はたしてそのような判断を下してよい結果であろうか。こ グラフ5 項目5に対する回答状況 グラフ6 項目 10に対する回答状況 グラフ7 項目4に対する回答状況

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の結論を導く前に,前項の疑問点1および疑問点2を検証する。 疑問点1の沈黙や寡黙に対する姿勢を問う質問項目に対して,調査協力者からは,調査 結果にも示されているように,概して寛容な姿勢を示す回答がなされている。これはある 意味で,先行研究からステレオタイプ的に導き出された仮説に相当程度即している結果と いえる。 次に疑問点2を検証してみると,前項の調査結果にも示されているように,「話すこと」 に対する価値基準を問う質問項目に対して,ほとんどの項目において相当な高値で肯定的 な価値基準を示す回答がなされている。しかし,日本人のコミュニケーションを考えた場 合,本稿の導入部分でも述べたように,日本人の対人関係は,他者との心理的距離,上下 関係,タテマエとホンネなど,さまざまな文化的要素に規制されているため,誰とどのよ うな状況で会話を交わすのかというコンテキスト部分が非常に日本人のコミュニケーショ ンには大きく影響をおよぼしている。しかしながら,本調査で用いた調査用紙の質問項目 には,そうしたコンテキストに関係するような制限がなく,いわゆる context-independent なものとなっている。反面,一般的なレベルでの回答を得るには十分なものである。こう したことが原因で,現実のコミュニケーション場面とは異なった結果が導き出されている ことも考えられる。特に高コンテキスト文化の場合は,十分に想定できる問題点である。 これら3つの疑問点に対する答えを重ね合わせてみると,表層的にはこれまでステレオ タイプ的にいわれてきたことに矛盾するようであるが,「話すこと」に対して比較的肯定的 な価値基準を示すように変容してきていると考えられる。しかし,「話すこと」とは対極に ある「沈黙」や「寡黙」といった概念も相当肯定的に受け入れており,深層部分において はややステレオタイプ的とも思われる日本人が文化的に古くから持っている言語観の反映 とも思われる部分がうかがえる。また,既述のように質問項目そのものに欠如していると 思われるような点も見出されており,この点については,回答者とのインタビューを通し て,次のような回答を得ている。 1)BaT の質問項目は,「1対1」の対人場面を想像させるものであった。 2)BaT の質問項目は,一般的な表現であったため相手の顔がよく見えなかった。その ため,内集団(ingroup)内の人とのコミュニケーション場面を想像した。 3)BaT の質問項目は,具体的なコンテキストが見えなかった。 こうしたことが今回のような測定結果になった一因ではないかと考えられる。 おわりに 本調査において,次の2点について明らかになった。 1)日本人女子大学生の BaT 値は比較的高値を示した。 2)日本人女子大学生は,沈黙や寡黙であることに対して比較的寛容な肯定的姿勢を示 した。 これら2点と本稿で提示した2つの予測と3つの疑問点を重ね合わせ,議論し,次のよ うな結論を導き出した。 現代の日本人女子大学生は,「話すこと」に対して,比較的肯定的な姿勢を持っていると いえる。それはこれまでステレオタイプ的にいわれてきた仮説に対して矛盾する内容であ

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るが,それは表層的な部分において見られる変化であり,これに相反する「沈黙」や「寡 黙」といった,「話すこと」とは対極にある概念に対しても相当に許容度があり,肯定的に 受け入れていることがわかった。

今後の研究課題として,対人状況におけるコミュニケーション不安(Communication Apprehension,以下 CA と記す)を測定する PRCA5)を用いた先行研究において,日本人が 高い CA 値を示すことは多くの先行研究(Klopf & Cambra, 1979 ; 西田, 1988)で指摘され ているが,こうした先行研究を踏まえ,BaT と CA との間にどのような相関がみられるの か興味の持たれるところである。この点に関しては,本調査と同一の対象者に調査を行い, その相関を測定し,次の機会に報告を行う予定である。 注 1)文字通りの意味では,「話すことに関する信念」ということであるが,本稿では「話すことに 対する価値基準」という言い方をしている。また本稿タイトルでは,日本語に訳すと簡潔な表 現が見当たらないため,英語のまま表記した。 2)日本人の「察し─遠慮」コミュニケーションのメカニズムは,Ishii(1984)により示された もの。 3)Okabe(1983)は,アメリカ人に見られるような道具的性質の言語コミュニケーション・ス タイルを「エラビ(selective)」とし,日本人に見られるような情的-直感的性質の言語コミュ ニケーション・スタイルを「アワセ(adjustive)」とした。

4)Triandis(1986),Hofstede(1980, 1991)らにより提唱された文化次元。Hall(1976)の Low-and High- Context Cultureとの相関も示されている。

5)Personal Report of Communication Apprehension のこと。McCroskey(1970, 1978, 1982)により 作成,改訂が重ねられ,現在 24項目からなる質問紙として完成している。

引用文献

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付録

(文学部 英語英米文学科) 項目1に対する回答状況 項目2に対する回答状況

項目3に対する回答状況 項目6に対する回答状況

参照

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