サンドトレイと箱庭療法
著者
田畑 光司
雑誌名
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇
巻
12
ページ
159-168
発行年
2012-12-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1354/00000377/
屋などのさまざまなミニチュアを自由に配置 して盆栽のように世界を作るものである。ト レイの大きさには規格があり、世界中で同じ サイズなので比較もしやすい。治療的意味合 いに重点をおくときには箱庭療法(サンドプ レイ・セラピー)ということもある(Turner, 2005)。 初めて箱庭を作った感想を学生に聞くと、 はじめは何を作ろうか、あいまいだったが、 制作中にどんどん創造意欲が向上して作りた いものがはっきりして、楽しくなった、など 好意的なものが多い。また、研究室の箱庭用 具(図1)を見て興味を示す学生も多い。こ のように、箱庭療法は心理臨床的技法の中で は、いっけん魅力的で手軽に取り組めるよう な広がりをもっているが、実はその理論を理 解することがなかなか難しい。 はじめに 臨床心理士である筆者は「心理検査」をテー マにしてゼミを行っている。対象は、保育士 養成校の3年生である。知能検査(田中ビネー 式知能検査、WISC-Ⅲ知能検査)、描画法検 査(統合型HTP法)、投影法心理検査(ロー ルシャッハ法)と風景構成法、箱庭療法(サ ンドプレイ・セラピー)などを体験させてい る。授業は通年1コマであるので、この程度 では現場で実際に使用できるようなレベルま で習得することは不可能である。心理検査の 実際的な手法や基礎理論を学ぶことで、自己 理解と子ども理解を深めることができれば、 と考えている。 箱庭(サンドプレイ)とは、砂の入ってい る長方形の砂箱(トレイ)に人、動植物、家 キーワード : サンドトレイ、箱庭療法 Key words : sandtray, sandplay therapy
Sandtray and Sandplay Therapy
田 畑 光 司
TABATA, Koji
In Japan, sandplay therapy has been widely used as an expressive and projective mode of nonverbal psychotherapy. It is a Jungian approach stemming from Kalff’s work. However, in addition to the well publicized sandplay methods, there is sandtray, which is based on play therapy, The purpose of this paper is to explain about sandtray, since currently there are limited published reports about this method. Research based on internet searches and published books suggest that there are differences between the two methods. Sandtray can be used with a variety of shapes and sizes of sand trays, and with individuals, groups, couples, and families, It is regarded as more flexible than sandplay.
ピストもいる。なじめないと感じても、繰り 返しているうちに、なじみを感じてくること もあるのが、こころの面白さと不思議さなの だろう。だが、こころはひとつの理論では全 てを説明できず、相互に補完することも時に は必要になってくるので、偏ることなく、い ろいろな人間理解の立場を学ぶことはかかせ ない。箱庭療法も、ユング心理学だけでなく、 さまざまな立場から理解することができない だろうか。 目 的 箱庭療法には、ユング流にこだわらない、「 サンドトレイ」という立場がある(DeDomenico, 1995 ; Armstrong, 2008 ; Homeyer,ら2011など)。 この言葉の邦訳はまだ見当たらない。サンド プレイという言葉には、セラピストの目の前 でクライアントが砂を使ってプレイをするこ と、そしてそのプレイをどう考えてゆくのか、 という意味がある。サンドトレイという言葉 では、プレイでなく、プレイの舞台であるト レイに意味がある。目の前のクライアントの プレイを理解することだけでなく、クライア ントがプレイを表現するために、セラピスト がどう具体的に働きかけるのか、などに重さ があるとえいるのだろう。 サンドトレイでは、サンドプレイと異なり トレイの規格にはこだわらない。いろいろな 形のものをクライアントに応じて用いたり、 ポータブルなトレイを持参して病棟や家庭に 出向いて箱庭を作ることもする。トレイに入 れる砂の素材も違うことがある。対象者も個 人にとどまらず、家族や夫婦といった集団で 箱庭を作ることもする。行動療法などいろい ろな心理臨床のセラピー技法を取り込むこと もある。 1939年にイギリスの小児科医ローエンフェ ルトが子どものための心理療法として考案し た「ワールドテスト」を、スイスの心理療法 家であるカルフが、ユング心理学を取り入れ て、1970年代に成人にも応用できるように発 展させたものが「サンドプレイ」である。本 来は「砂遊び」の意であるサンドプレイを、 我が国の伝統文化である「盆栽」「盆景」「箱 庭」と同様の構造を見抜いて、枠を強調する 意味も含む「箱庭」という言葉をあてはめた ことは、我が国にサンドプレイを紹介した河 合隼雄の卓見のおかげであった(岡田、2002)。 心理学的な人間理解の方法は多数あるが、 サンドプレイの背景には、ユング心理学や象 徴解釈理論がある。行動療法などと比較して、 ユング心理学では、どちらかといえば論理的 な推論理解というよりも形而上学的な洞察セ ンスが要求される。科学的・論理的であるよ りも、直観的・了解的なスタイルを主流にし ているからだ。遊園地のように無邪気そうに も見える箱庭作品だが、背景となるユング心 理学の諸概念(集合的無意識とか夢分析とか シンクロニシティなどなど)の理解はかなり 大変な作業になる。こういった考え方に、な じめるクライアントもあればなじめないセラ 図1 箱庭用具の様子
「Sandplay therapy」 で は263件、「Sandtray therapy」では293件、それぞれヒットした(検 索はいずれも2012年7月から9月の間に行っ た)。これらの結果から、我が国では「サン ドプレイ」よりも「箱庭療法」という言葉で 使用されることが殆どであること、「サンドト レイ」は箱庭療法と関連して使用されること はないことが分かった。また、Barns&Noble とYouTubeの結果は、米国ではサンドトレイ という言葉がタイトルとして使用されている 書籍があること、動画サイトのアップ数が多 かった。このことは、サンドトレイの活動家 が、積極的に動画サイトを活用していること が考えられる。米国と比較して、我が国では サンドトレイという言葉がまだ知られていな い、と言えるのだろう。 2 サンドトレイの定義 サンドプレイという言葉は今では世界中に 広まっている(山中ら、2000)が、ローエン フェルトに学んだ様々な臨床家が、自分たち の臨床的ニーズに対してそれぞれ適用を考え、 新しいやり方を試みるのは自然なことであろ う。図2はそのチャートを整理したものであ る(DeDomenico, 1995より一部改変)。ユン グ流の象徴的アプローチが広く実践される一 方で、無意識という精神状態における深さに 注目するよりも、箱庭を制作するクライアン トの経験が、無意識に直接作用し、クライア ントの癒しや成長を促進することに注目した 立場があった。いろいろな大きさや形の砂箱 を使ったサンドプレイを観察した結果、クラ イアントにはいろいろな内面の変化が生じ, 当人にとっての意味が生まれる(meaning making) と い う 考 え 方 で あ る(Boikら、 2000)。そうして、サンドトレイ-ワールドプ サンドトレイはサンドプレイよりやや遅れ て始まったが、今では米国にはサンドトレイ のネットワークもある。ユング的解釈にこだ わらないというのであれば、どのような解釈 をするのだろうか。そもそもどうして生まれ たものなのだろうか。サンドプレイと違いが あるとすれば、どこに、どんなふうにあるの だろうか。箱庭療法をより深く理解するため にも、本研究はサンドトレイを紹介しつつ、 サンドプレイと比較・検討することを目的と した。 方 法 サンドプレイとサンドトレイに関する内外 の成書・論文およびインターネットなどから その理論や方法などを比較・検討する。 結果と考察 1 サンドプレイとサンドトレイの普及度 日本語で出版されている箱庭療法の書籍 (木村、1985;三木、1991;岡田ら2007など) や文献(中川、2002;小野、2002)など)に は、「サンドプレイ」 は紹介されていない。そ こで、インターネットによる検索を行った。 論文データーベースである、国立情報学研 究所データーベース(CINII)で検索すると、 「箱庭療法」では299件が、「サンドプレイ」で は13件がヒットした。「サンドトレイ」では 0件であった。書籍について、amazonで検 索すると、「サンドプレイ」でも「サンドトレ イ」でも0件であった。「箱庭療法」では235 件がヒットした。Barns&Nobleではbooksの カテゴリーで「sandplay」が47件、「sandtray」 は7件、それぞれヒットした。動画サイトの You tubeでは、「箱庭療法」で検索すると38件 が、「 サ ン ド ト レ イ 」 で は 0 件 で あった。
3 日本における箱庭療法 我が国では、スイスのユング研究所に留学 しユング派分析家の資格をとり帰国した河合 隼雄が、1965年に箱庭療法とタイトルをつけ た論文を京都市カウンセリングセンター紀要 に発表したことが最初である。その後、河合 は高橋史郎、三木アヤらと経験を重ね、1969 年に 「箱庭療法入門」、1972年に「カルフ箱 庭療法、」1982年には「箱庭療法研究1」を 出版し箱庭療法普及の基礎を作った。1987年 には日本箱庭療法学会が設立されて現在に 至っている。(1992年にカリフォルニアで開 催された「箱庭と魂と象徴」国際会議での河 合隼雄の、ジョークを交えた名スピーチに最 も感銘をうけたことをHong(2007)は自著 の中で紹介している。) このように我が国ではユング派の学者が中 心になって箱庭を紹介したためか、その他の 論文(山中、2002;樋口、2002など)でも、 サンドトレイについての記述は見当たらない。 4 二つの箱庭療法の比較 基本的に大きな差はないといえるだろう。 しいていえばサンドプレイは方法論が統一さ れているが、サンドトレイでは、自由度が大 きい傾向がある。たとえば、トレイのサイズ にこだわらない、対象者が集団でも実施する、 他の心理療法も併用することなどである。以 下、具体的にいくつかの点について比較して ゆく。 1)砂について 箱庭において、砂は重要な意味を持つ(小 野、2002)。砂は、掘ることや積み上げるな どによって立体的に形を変えることができ、 イメージを具体化しやすい。さらに、砂の感 レイが生まれた(DeDomenico, 1995)。1987 年に、米国ではサンドトレイというタイトル をつけた書籍が出版され、1997年からは米国 サンドトレイ協会(www.sandtray.org)から ニュースレター、ジャーナルが発行されてい る。さらには、人間的アプローチ(humanistic approach) と い う 立 場 の サ ン ド プ レ イ (Armstrong, 2008)や、アドラー学派のいう ライフスタイルから理解しようとするもの (Sweendey, ら2003)などもある。 サンドトレイは、次のように定義されてい る。 サンドトレイセラピーとは、非言語的媒介 によるコミュニケーションとして、トレイに いろいろなミニチュアを置くやり方で個人内 あるいは個人間の問題を扱おうとする、表現 法あるいは投影法に属する非言語的心理療法 であり、熟達した治療者の下で、クライアン トにより導かれるものである。スイスのユン グ派分析家ドラ・カルフによるサンドプレイ とは、ユング流のアプローチを中心にしてト レイやミニチュアを治療的に使用するもので あり、治療的サンドトレイによるアプローチ のことである(Homeyer, ら2011)。 図2 箱庭の流れ ウェルズ フロアーゲーム、1911 新精神分析派 メイヤー、1957 ワールドテクニックローエンフェルト1928 ローエンフェルトのセミナー 精神分析派:アルビノ、1954 参加者:トレイル、1950∼ エリカ法:ブラット、1933 ワールドテスト& アセスメントツール ビューラー、1934 ユング流 サンドプレイ カルフ、1950∼ イタリア アリーテ、1977 河合隼雄、1969日本 スルウォルド、1971USA クライン派:クレッグ、1981 解釈学派:ドメニコ、1986 (DeDomenico(1995)より一部引用)
まであるが、高さを17cmにしたものを武野 俊弥が、安渓真一が直径72cmの「円形箱」 を(いずれもユング派精神科医)提案したこ とを紹介している。枠強調箱は、クライアン トの守りの薄さを枠を強調することで補うこ とをねらいとしており、通常の箱と一緒に2 つおいておくと統合失調症者はこれを必ず選 ぶという。また、円形箱は母子双方に同時に 共同制作ができることをねらいにしたが、再 試するものがなく廃れてしまったという。山 中は、これらを画期的な発展的活用であると 好意的な評価をしている。だが、その後トレ イへの工夫をした報告は、山上ら(2010)の 「ざる箱庭遊び」まで見当たらない。 サンドトレイでも、標準的な規格のトレイ がいちばん優れている(Homeyer, ら2011) として、形とサイズはサンドプレイで使用す るものと同じものである。しかし、形は正方 形や長方形、円形、八角形などを用いても構 わない。クライアントの状態に応じて柔軟に 選択して対応してよい。ただし、箱庭療法の 基本である、「自由で保護された空間」 である ためにはサイズが小さすぎると表現できない し、大きすぎれば圧倒されてしまうというこ とから、サイズは重要であることが指摘され ている(DeDomenico, 1995)。そして、クラ イアントとセラピストが一緒に見ることので きる大きさがよいこと、形については、円形 では空間を分割しないですむことや、曼荼羅 様に世界を表現することができるなどの特徴 があるといわれている。またポータブルサイ ズのトレイを使用することもある。サンドプ レイは一定の部屋で箱庭の制作を行うことを 基本とするが、サンドトレイでは、ポータブ ルなスタイルでも可とされ、クライアントの 部屋や学校の教室などでの箱庭制作をするこ 触がクライアントの原始的心性を喚起すると いわれている。砂には、灰色や白色に限らず、 暖色系や寒色系などのいろいろな砂色がある ので、トレイが複数個用意できるる場合には、 色の違った砂を用意しておくと、クライアン トは内面を表現しやすくなるだろう。水を 使って砂を湿らせることも箱庭ではよくある が、程度を考えないと制作の後、掃除などが 大変なことがある。乾湿と色砂など、トレイ を目的別に複数個備えるためには、部屋の広 さ(棚の面積)や掃除などの管理上の問題も でてくる(筆者はクライアントに色砂を混ぜ られてしまったり、湿った砂を部屋じゅうに ばらまかれた経験がある。)ので、それぞれ の事情に合わせて設置すればよいだろう。 サンドトレイでは砂の代わりに、シリアル、 米、大豆なども使用することがある。それぞ れ独自の感触と色あいがあるので、クライア ントの選択肢が広がる。発達に問題がある子 ども、障害のある子ども、幼児の場合には砂 よりもふさわしいこともあるし、トレイから あふれても掃除が楽という利点もある。 2)トレイについて 使用する箱は、長方形であり、そのサイズ は統一されている。内法57×72×7cm。こ の大きさは、箱が制作者の腰の高さのあたり に置かれたときに、その人の視野にすっぽり 入る程度という点からローエンフェルトが考 えたとされている。内側は“水”の感じを出 すために青色に塗ってある。我が国ではこの サイズが標準になっている(例えば、西村 (1973)、木村(1985)など)。 トレイの形については、サンドプレイの立 場からも検討されたことがある。山中ら (2000)は、「枠強調箱」として内法はそのま
大きさにこだわらず用意する。いろいろな玩 具を用意することで、多彩な表現を引き出そ うとするからである(河合、1969)。しかし、 たくさんあればいいというわけでもない。あ まりに多すぎれば、クライアントは圧倒され て表現できないこともある。ミニチュアの質 ともある。 3)ミニチュア 表1は、研究者ごとにミニチュア分類一覧 を示したものである。ミニチュアについては、 特に指定はない。できるだけ多くの種類を、 表1 箱庭用具 名称 1:サンドプレイ 2:サンドプレイ 3:サンドプレイ 4:サンドプレイ 5:サンドトレイ 6:サンドトレイ 研究者 河合隼雄(1969) 秋山達子(1970) Weinrib(2004) Boik(2000) Homeyer(2011) De Domenico(1995) トレイ 57×72×7cm 57×72×7cm 28.5×19.5×3inches 30×20×3inches 30×20×3inches
円、正方形、八角形も19.5×21.5×4inches目的により様々 人 (兵隊、インディ アン、警官、楽 隊、男女、老若、 乗 り 物 に 乗 る 人) 人間(男女子ども、 楽 隊、 イ ン ディアン、カ ウボーイ、い ろ い ろ な 職 業 人間 い ろ い ろ な 人種、年齢、 職業 人間 普通の人、活動中、 職業人、歴史、ファ ンタジー、神話、 魔術、戦闘、奴隷、 死体、宗教、人種、 身体の一部 人間 家 族、 花 嫁、 花 婿、 職 業、 趣味、スポー ツ、老若男女、 歴史上の人物 人間 大小各種、身体の 一部も。歴史上の 人 物、 ア ニ メ や ヒーローも、貴族、 民族 動物(野獣、家畜、鳥、 貝、 魚、 へ び、 かえる、 動物 野 生・家 畜、 両 生 動 物、 恐竜 動物 野 生・家 畜、 鳥、魚、貝 動物 野生(陸上、海中、空)、家畜、絶滅種、 神話上、ファンタ ジー、骨、貝、羽、 動物の棲家 動物 恐竜(古代)、 野 生( 動 物 園)、家畜(牧 場)、鳥、昆虫、 海の生物 動物 野生・家畜、昆虫、 巣など棲家、貝、 改装、海の生物、 多 頭 の 怪 物 骨 や 歯、化石、ファン タジーな生き物 分類 木 植物 大木、若木、 枯 木、 果 実 のある木 植物 植物 自然・栽培、若芽 から老木まで 植物 樹木、花、サボテン、垣根 植物 樹木、老木、若木、花、果実、果物、 葉っぱ、ドライフ ラワー 花 花 草花、芝生 樹木、 花 鉱物 岩石、ガラス片、宝石 宗教 仏像、キリスト、 マリア像、天使、 十字架 宗教 教会、寺院 宗教 東 西 の 宗 教、 神秘的なもの 宗教 キリストとヨゼフなど組合わせ。宗 教のシンボルも。 乗り 物 自動車、消防、救急車、汽車、 飛行機、戦車、 軍艦、船 乗り 物 自転車、オートバイ、船、 飛 行 機、 汽 車 乗り 物 車、 電 車、船 舶、 飛 行 機 乗り 物 陸上、海上、空の乗り物、救急車、 軍用車 乗り 物 自 動 車、 トラック、飛ぶ もの、船舶 乗り 物 陸上、海上、空中のもの、児童用の もの 建築 物 ガソリンスタンド、和風洋風の 家、神社、仏閣、 教会、城 建物 建物 建築 建物 家、ビル、宗 教、遺跡、 建物 家 具( 古 い も のも)、家、公園や 校庭にあるもの 橋 橋 橋 橋 橋 橋 柵 堀、石垣 柵 柵 柵 、 標識囲い、フェンス、バリケー ド、門、交通 標識 標識 信号、踏切、鉄道 ・道路標識 石 タイル、ビーズ タイ ル 鉱物 岩石、宝石、ビーズ 自然のも の 海草、貝、岩 石、化石、宝 石 自然 のも の いろいろな種類の もの 怪獣 ウルトラマン 怪獣 ウ ル ト ラ マ ン、 カ ネ ゴ ン、ゴジラ その 他 星 や 天 体 の 象 徴物、きらきらした もの、医療用品、 アロマ製品、携帯 やパソコン、収納 箱、食物 ファ ンタ ジー 魔 法、 妖 精、 モ ン ス ター、 民話、アニメ、 映画のキャラ クター マ ジッ ク 魔女、小道具、呪 いの用品 家具 素材 色画用紙、粘土、 布切れ、糊、建築 材料 生活 用品家 具、 食 器、食べ物、 素材 紐、粘土、わら、布、木片、反射するも の 積木 工芸 品 景観 地 形、 洞 窟、記念碑、井戸、景観 山、洞窟、トンネル、門、天体、太 陽 金属 片 その他 医療用品、アルコール、 その他 電話、アンテナ、ラジオ
サンドトレイでは、トレイにこだわりがな いため、大きな机にミニチュアを配置して(こ のとき、象徴性がポジティブかネガティブか で分けて置くとよい)、箱庭を制作すること もある。クライアントの自宅や学校の教室に トレイを持ち込んで(組み立てタイプのトレ イもある)、ミニチュアを収納したポータブ ルな道具箱を使って制作をすることもある。 6)誘い方 子どもの場合、ほとんど説明は不要である。 棚にあるミニチュアが自然と視野に入るよう にして、本人からの自発的な活動を待でばよ い。大人も同様であるが、躊躇した場合には、 「これでなんでもいいから作ってみませんか」 など心的な負荷を与えぬように誘って見る。 サンドトレイでは、認知行動療法や問題解 決志向などの立場からの言葉かけをすること もある。Homeyerら(2011)による例を紹介 する。理性感情行動療法では「あなたを怒ら せたその出来事について、この箱庭で作って みませんか」「その怒りがどんなものなのか、 この箱庭に示して見ませんか」などの声掛け がある。尺度化の質問として、「ふたつの箱庭 を作ってください。カウンセリングに最初に 来たときの気分と、今の気分のもの、それぞ れです」「落ち込んでいる気分を1から10ま での間で表現したらいくつになるでしょう。 今、どんな風に落ち込んでいるのか、その感 じを箱庭に表現できるでしょうか」などの声 掛けがある。認知療法における恣意的推論と して、父親が仕事の都合で息子のサッカー試 合にこれず、相互のわだかまりになっている ケースがあったとする。そこでは、「二人とも がっかりしていますね。もし二人で箱庭を 作ったら、どんなになるのでしょう。このこ は、カテゴリーと同様に象徴的な意味を引き 出すためには重要である(Armstrong, 2008)。 盆景材料は、日本人にはなじみやすいが、米 国で使用されている人形には人種や民族ごと に用意されているなど、国や文化などによる 相違がある。最近では異文化交流も活発化し ているので、さまざまなミニチュアをそろえ る必要も出てくるかもしれない。セラピスト の個人的な感覚によって収集されることが多 いので、カテゴリーや質が偏向することのな いように心がける必要性がある。 表1から、サンドトレイのミニチュアを比 較すると、スピリチュアルなものやファンタ ジーなものを象徴するものと医療用品などが 含まれている。多彩な表現を引き出そうとす る立場の反映なのだろうが、背景には我が国 と米国との箱庭療法で扱う問題の違いがある ことも考えられる。 4)対象者 子どもから老人まで、幅広い年齢層に適応 できる。知的障害や精神障害のある場合、重 篤なものは適応外とされる。サンドトレイで は個人も含めて、夫婦や家族といった集団で 制作することも視野にいれる。 5)部屋について(図1) 専用の部屋があれば充分な準備ができるが、 必ずしも用意する必要はない。快適な雰囲気 であればかまわない。プレイルームの片隅に トレイとミニチュアの置かれた棚があること も多い。学校で使用することもある(Schaefer, ら 2001)。ミニチュアを置く棚は、刺激的す ぎないように配慮する。それぞれをカテゴ リー別に配置しておくとクライアントにとっ ては制作しやすくなる。
マ、象徴的意味がある(木村、1985)。さらに、 クライアントの発達や主訴、症状、セラピス トとの関係性などさまざまな変数が加わるの で、実際にはクックブックのようにはいかな い。同じ絵画を見ても、感動するものと無感 動なものがいるように、ミニチュアの象徴性 理解も、個人差がある。セラピストの力量が 試されるときである。ヘタな解釈などせずに、 クライアントと作品を眺めるだけの方がか えってよいかもしれない。 9)片付けについて 完成した箱庭は、次のクライアントのため にも元に戻さなければならない。目の前で片 付けるか、クライアントが帰ってから片付け るか。クライアントと一緒にミニチュアの意 味を振り返りつつ片付けることもあれば、セ ラピストが一人で、クライアントの内面を遡 行しつつ片付けることもある。いずれも、治 療的意味合いがあるので、それぞれの必要性 に応じて対処してゆく。サンドプレイでも (Turner, 2005)、サンドトレイでも(Homeyer, ら2011)、片付けには重要な意味のあること を指摘している。 10)他の心理療法との併合 サンドトレイにおいては、いろいろな心理 療法を併用することがある。遊戯療法、認知 行動療法、家族療法、ロールプレイ、集団療 法など。箱庭それ自身に、構造化された技法 を適応する多様な可能性があると考えるから である。 11)研究と評価 事実を演繹し、その中から普遍性を見出す 研究方法は、心理臨床の事例ではなじまない とをテーマに考えて作ってみてください」な ど。 7)質問 サンドプレイでもサンドトレイでも、箱庭 が制作された後で、その作品に対してセラピ ストが理解を深め、クライアントにとっては 新たな気づきや振り返りのために、質問をす ることがある。しかし、その場の雰囲気を理 解して、注意深く行う。制作中はあまり言葉 を挟まず、質問も漠然としたものでよい。ク ライアントの創造する世界に、共感している というサインを伝える程度で充分である。制 作の後、「何を作ったのですか」、「これは何で すか」、といった程度の質問で充分に共感を 深められる。作品そのものがクライアントの 表現であるから、言葉は慎重に選んで使うよ うにする。しかし、サンドプレイでは、箱庭 の物語性に注目して積極的にクライアントの 語りを捕らえ、解釈を進める立場もある (Turner, ら2011)。 8)解釈 サンドプレイでもサンドトレイでも解釈を マニュアル化することはかなり難しい。マ ニュアル化することで、イメージとか感性と いった非言語的な重要なとらえ方がなくなり、 形式的な理解になってしまう恐れがある。空 間象徴理論を機械的に解釈することには意味 がないことと同じである。本来、箱庭はカウ ンセリングなどの経過に応じて繰り返して制 作されることが多いので、1回の作品だけを 理解するというよりは、繰り返される作品の 変化と発展を見守る、系列的理解も重要に なってくる。 解釈の基本として、統合性、空間配置、テー
生活現場にサンドトレイを持ち込んで、セラ ピストとラポートをとる契機として利用でき ることも考えられる。箱庭療法は、何か作れ ばたちどころに問題をいいあてるような魔法 の療法ではない。作品を解釈するためには、 深い人間洞察力が必要である。サンドプレイ でも、サンドトレイでも、これらの箱庭療法 がいっそう発展することを期待する。 引用・参考文献 秋山達子(1970). サンド・プレイ・テクニック(箱 庭療法)について(1). 幼児の教育、69,18-25.
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謝辞 論文を執筆するにあたり、サンドトレイ派である Homeyerとサンドプレイ派であるTurnerに意見を求 めた。二人とも,それぞれのセラピーの長短を理解 しており、どうすればクライアントを援助できるの か、そのために臨床家が研鑽を惜しまないこと、と いう助言をもらった。Homeyerからは以下のような コメントがあった。 「日本ではカルフに指導を受けた人たちが、先駆 者となり啓蒙した結果、ユング流のサンドプレイと して今日がある。自分たちはユングにこだわらず、 より広い立場から砂やミニチュアを使うことを考え た。これは、フレシキブルであり臨床的に非常に力 を持つものであった。どちらの方法でも、訓練を受 けた力量のある臨床家が使うことでその実力を発揮 するだろう。」今後の臨床活動において大事な指針 をいただいたと考えている。お二人の助言に心から 感謝したいと思う。 創元社. 三木アヤ、光元和憲、田中千穂子(1991). 体験 箱庭療法―箱庭療法の基礎と実際―. 山王出 版. 中川純子(2002). 箱庭療法の可能性. 精神療法. 第28巻、141-147. 西村洲衛男(1973). 箱庭療法. 小嶋謙四郎、秋 山誠一郎、空井健三.(著)小児の臨床心理検 査法. 医学書院. pp258-289. 岡田康伸、皆藤章、田中康裕(編)(2007). 京大 心理臨床シリーズ4 箱庭療法の事例と展開. 創元社 岡田康伸(2002). 現代のエスプリ別冊. 箱庭療 法シリーズⅡ 箱庭療法の本質と周辺. 至文 堂. 小野けい子(2002). 箱庭療法と治癒力. 精神療法. 第28巻、171-175.
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