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保育者にとっての絵本体験の重要性(Ⅱ) : 絵本ノートを活用した読み聞かせの取り組み

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Academic year: 2021

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1.問題と目的 平成 30 年度から「幼稚園教育要領」の領域「言 葉」では、「経験したことや考えたことを自分な りの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうと する意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言 葉で表現する力を養う」ことを内容としている。 また、同「ねらい」には、「幼児が絵本や物 語に親しみ興味を持って聞き、想像する楽しさ を味わう。」とある。 さらに、「内容の取り扱い」に関しては、「絵 本や物語などで、その内容と自分の経験とを結 びつけたり、想像を巡らせたりする等、楽しみ を十分に味わうことによって、次第に豊かなイ メージをもち、言葉に対する感覚が養われるよ うにする」こととある。 幼児は、絵本の世界での体験を自分の実体験と 照合し再認識したり、未知の体験を絵本の世界で 体験することで自らの想像力を豊かにしたりして いく。幼児の知的・情緒的発達にとって、絵本の 読み聞かせは大変重要な活動であると言える。 幼児が絵本の読み聞かせを体験する場として は、家庭という私的な場と、幼稚園や保育所な どの公の場とがある。 [ 伊勢・吉村(2017)] では幼稚園や保育所 などの公の場で直接幼児と携わるこれから保育 者になる学生の、絵本体験や家庭での環境 体 験の違い等、興味感心の違いを調べ影響してい るのか考えてきた。 授業の中で自分が興味関心を持って読んだ絵 本、他の学生が選んだ絵本などに接し(・著者・ 出版社・あらすじ・感じたこと・保育に生かす こと)項目を作り 1 冊のフアイル(ノート) にまとめることで保育に携わる学生の絵本体験 の重要性を探り絵本体験を豊かにして保育に生 かしていけるようにと考えた。 その結果学生自身のそれぞれの環境によって 大きく異なり、興味の度合いによってノートの まとめ方、絵本の選び方、に差が見られた。内 容をまとめ「保育に生かすには」の項目が優れ ている学生に共通することは ①幼少期の絵本環境(特に家庭)が豊か。 ②家庭で絵本に関する要求に応えてもらう機会が多い。 ③好きだった絵本が明確で思い出が深く残っている。 以上の結果から、今年度は絵本体験の少ない 学生が取り組みやすくまとめやすいように、今 後保育現場で生かしていけるよう方法を探っ た。また他の学生の選んだ絵本の読み聞かせを 体験してより印象に残った絵本や読み聞かせの 方法、遊びへのつながりなどの興味から、多く の種類の絵本に気付き、遊びや行事、活動など 保育現場で生かしていけるように「保育に生か すには」の項目を取り上げ、実践する。 2.進め方 興味の持ちにくい学生が取り組みやすい方法として 昨年度の反省から ①授業前半と後半で絵本の関心について実態調 査としてアンケートを取り比較する。

保育者にとっての絵本体験の重要性(Ⅱ)

絵本ノートを活用した読み聞かせの取り組み 伊勢 明子

The Importance of Reading Picture Books For Childcare Workers(Ⅱ) - Effort of Reading to Children by Making use of Picture Book Notebooks -

Akiko ISE

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②絵本ノートのシートを改善する 題名、著者(文、訳、絵)、出版社、あらすじ 感想の項目を印刷、絵本の特徴を捉えた絵は手 書き、またコピーでもよいことを指示。 ③授業中、学生に好きな絵本を 1 冊選書させ、 順に読みきかせをしているが、同時に他の学生 が絵本ノートに記入できる時間を確保する。他 の学生の読み方や興味を持ったことを記入する。 ④絵本ノートの中間報告会を設け、互いに刺激 を受合う機会とし、絵本ノート作成のモチベー ションを高める。 ⑤入学前課題として、推薦合格者に対し絵本 ノート作成を課す。 ⑥絵本ノートの「保育に生かすには」の項目か ら実践してみる。 3.絵本に関してのアンケート 授業開始時期に授業の方向を示しながら自己紹 介、実習への抱負をまじえて学生の家庭、集団生活 の場において絵本環境や絵本の興味、関心、好きな 絵本の傾向を把握するためアンケートを取った。 ・29 年度授業開始時(名、項目重複あり) ○好きな絵本、思い出の絵本は ①クラス 29 名 ②クラス 30 名 ③クラス 34 名 ④クラス 33 名 ○幼少期の絵本環境 (4クラス合計人数129名) (家庭では)       (集団生活の場、幼稚園、保育所では)

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※家庭での絵本環境は様々であるが、絵本を 家庭で読んでもらわなかった、あまり読まな かった学生が 3 分の 1 いることがわかった。 よく読んでもらっていた学生の中には父母、祖 父母、兄姉に就寝前に読んでもらう、また小さ いころから図書館を利用している。家庭環境に 差が見られた。 ・授業後半時(全員が 読み聞かせをおえて) ○授業の中で他の学生が読み聞かせをした 絵本で、あなたが興味を持った絵本は ①クラス ②クラス ③クラス ④クラス ○お互いに読み聞かせをして心に残った絵本に ついて選んだ理由は(③クラスを抽出) 1.次の展開を期待してわくわくする、面 白い。   絶対にそうならないはずのものがなる 意外性。 2.言葉遊びが楽しめる、参加型で楽しい、 5 歳児が言葉の変化に興味を持って楽 しみながら聞き入れそう。 3.自分が見えている一つの物から様々な 想像を膨らますことができる。 4.歌が付いていて楽しみながら聞ける、 子どもたちと問答しながら参加型で面 白い、リズム感があり頭の中に歌とリ ズムが流れている、自分でも読み子ど もの反応が見たい。 5.~のふりをした と言う所で子どもの 反応がありそうで読んでみたい。 6.どうなるかわくわくした、繰り返しが 面白い。 ○読み聞かせの方法や導入、遊びへの方向づけ が印象にのこった人は A さん   *読み手が楽しそうに読み、聞いている側も たのしくなる。はっきりと聞きやすい。歌 が入り印象的。 *主人公が本当に歌っているように読み絵本 の世界に引き込まれた。反応を見ながら進 めていた。 *ページの持ち方を工夫していた。

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B さん *話し方が主人公に優しく問いかけているとこ ろ *聞き手への問いかけ、雰囲気、声のトーンが 聴き取りやすい *落ち着いていて安心感がある *その後の展開を子どもたちと考えるような遊 びの方向づけがあった ○実習中に読み聞かせの場がありましたか、ど んな絵本を読みましたか  ※読み聞かせの実践活動を一人一回終え、各 自振り返りとして印象に残った絵本、読み聞か せ方の気づきを回答してもらった。A さん B さ んの選ばれた理由として共通していたのは 落ち着いている、聴き取りやすい、優しく問い かける、読み方であった。また双方とも参加型 の絵本を選んでいた。実習中に読み聞かせた絵 本についてみると、授業中お互いに読み聞かせ で実践し印象に残った絵本を選んでいた。 読み聞かせが後半にいくと他の学生の刺激を 受け緊張しやすい学生も、持ち味を出るように なり落ち着いて臨むようになった。 また自主的に、自分の選書した絵本の絵本 ノートを事前に作成して読み聞かせの時に掲示 し他の学生に「作者、感想、遊びにつなげるに は」の項目をわかりやすく紹介する姿があり、 積極性が見られた。 実習中に読み聞かせの場があったと答えた学 生はほとんどで、条件は様々ではあるが保育実 習の大切な活動の場になっている。実習で多く 選ばれた絵本は授業中に読み聞かせて面白かっ た、印象に残った絵本とも一致している。体験 した絵本を自分で読み聞かせたいという意欲が 実習にも生かされている。 3.絵本ノートのシート改善について 絵を描くことが苦手で絵本ノートに取り組め ない学生が、多くの絵本に触れ親しめるように、 項目(題名、著者、出版社、あらすじ、感想、 保育に生かすには)を A4 の用紙に印刷、本の 特徴を捉えた絵はコピー、手書きでもよいと指 示した。   ・印刷された用紙を利用   94%    ・特徴の絵はコピー     2% ○用紙を利用し特徴ある絵をコピーしたノート ○自分で構成し作成したノート ほとんどの学生が印刷された用紙を利用し、 50 冊を目標に取り組むことができた。 絵本の特徴ある絵については、手書きするこ とで絵本の印象をはっきりわからせる効果があ り、ノート作成の充実感がみられるためか、手 書き作成のものが多くみられた。 4.読み聞かせた絵本をノート記入作成する為 の時間確保について 毎回授業の中で4~ 5 人が選書した絵本を 読み聞かせ選書理由、作者、出版社、保育に生 かすには、の項目を発表している。その時間で

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他の学生が同時にノート記入する時間を設定し たが、大まかな記録はできるものの絵本の内容 や、感想を細かく記入できる時間の確保は難し かった。また記入する作業が優先してしまう学 生がいて、時間の配分に問題が生じた。 5.絵本ノート中間報告会について 作成の進み具合に差があり一堂に会して時間 をとる事ができなかった。後半で自分が読み聞 かせ発表時に絵本ノートを事前に作成し読み聞 かせの前に掲示した。掲示したことで表現、構 成が他の学生に刺激になり、より印象に残った。 また作者、出版社、などの項目が掲示されるこ とで記入しやすくなった。 6.「保育に生かすには」からの実践 ○ 5 歳児の作品を読みとる 作者が実際に保育現場で(幼稚園)5 歳児が 制作した絵本を持参し見せた。文字を書き始め たばかりの 2 年保育年長女児の作品を読ませ てみて発想の面白さを体験する。 ・幼児の作品 1(絵本) 幼児の作品2(紙芝居) 幼児の作品1は文字を書き始めたばかりであ るが書けることが喜びで、絵本にして友達や担 任に渡していた。本屋さんごっこの様子、もう すぐ就学する期待など年長児の背景を伝えた。 正しく記載されていない文字や書けない文字を 数字に置き換えていて、幼児なりに考えている。 学生は読み取れない表現も多く、説明すると幼 児の発想に驚いていた。 幼児の作品2は絵本が大好きな幼児で絵を描 いて自分で創作話を作って楽しむ 5 歳児であ る。絵を見ながら文字は書かれていないが続き 話を作って紙芝居として友達に聞かせていた。 学生は保育実習体験後であった為か、幼児の発 達状況を捉えながら即興でストーリーを考え発 表していた。幼児の発想の自由さや生活の中の 体験が描かれていることに気付くことができた。 実際に幼児が生活の中で、また遊びの中で制 作した物やエピソード、遊びの背景を説明する ことで、子どもの気持ちになってよみきかせに 取り組むことができたように考える。 ○色々な種類の絵本に触れ読み聞かせの実践後、 絵本作りを体験した。 1枚の紙に切り込みを入れ、折たたんで作る8コ マ絵本。幼児でも作って楽しめる簡単絵本である。 授業時間内で作成できるので取り組ませてみた。 絵本を作る ・A3 用紙を折り半分に折って切り込みを入れる

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・開いて横に折り両側から押すようにして折り たたむ ・学生の作品 (表紙)  1 冊を展開すると ※特徴、工夫されている点 出来上がった作品を各自読み聞かせて、読み 終わった作品を黒板に掲示した。小さい絵本な ので全員分の作品をお互いに見ることができ る。絵本の特徴も様々であった。 ・絵本の表現特性として視覚表現、言語表現、 字のない絵本、オノマトペ絵本、仕掛け絵本と 様々あるが、絵本ノート作成にあたって多くの 絵本を選んだり、読んだり他の学生の読み聞か せを聞く中で、色々な種類の絵本があることに 気付いている。その経験が小さな創作絵本作り の中に見えてきている。たとえば、「ころころ」 「もこもこ」「おおきい」のような音の響きと絵 で表現されているもの、2 ページ通して描かれ ていて穴をあけて次のページにつながる仕掛け 絵本、「どうぶつのおやこ」ブルーナの絵本の ように字のない絵本、「スイミー」のような描 画的に特徴がある絵本など。 学生の作品は読んだ作品に影響されていて 様々な表現方法がみられた事は絵本体験の積み 重ねといえよう。 7.まとめと今後の課題 本研究は、昨年度「保育内容研究(言葉)」 の授業において作成を課した「絵本ノート」か ら保育者にとって絵本体験の重要性について考 えてきた。始めに「保育に生かす」項目に関す る記載が優れた学生の取り巻く環境、体験を調 べた。絵本ノートを課した目的は「保育の中で 読み聞かせに適した本の選び方を知る」読んだ 記録をまとめることで保育実践の場ですぐに活 用できる」ことである。 実際保育現場では、各園によって作成されて いる年間指導計画に沿って保育がなされている が、教材活用、選択、環境設定はそれぞれ保育 者に任されていることが多い。1 日の保育の中 で絵本を読み聞かせる場面はどこの保育施設で もあり幼児の体験に大きく影響している。保育 者の経験や体験によっても絵本の選び方、保育 への生かし方は異なってくる。次年度すぐに保 育現場に行くであろう学生にとって、多くの体 験の積み重ねが必要となってくる。 そこで今年度は昨年度の課題を基に、改善し 絵本体験の少ない学生や興味が少ない学生が多 くの絵本に触れ親しめるようにした。 ①ノートの作成は規定用紙利用で書きやすく なった。 ②絵本の特徴を捉えた絵はコピーも可とし、着 色は自由にして内容を重視したが、雰囲気や構 成を楽しむために手書きが多かった。 ③読んだ記録が一つの作品となり積み重ねが見 え励みになった。「今後も続けていきたい。実 習に役立てる」の声が聞かれた。 ④絵本ノートの中間報告会や授業内で記入時間 を作ることは授業の進み方によっても、絵本の 裏面にも描かれている

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内容の長さによっても変化するので時間設定が 難しかった。事前に読み聞かせる絵本のノート を 1 枚作成し読み聞かせの場で発表したこと で他の学生への刺激になったので次年度は授業 開始時に徹底させていきたい。 ⑤入学前課題として今年度は絵本ノート作成 15 冊を課している。次年度 2 年生はそこへプ ラスされていくので時間的に余裕が持てるであ ろう。そこでより実践に役立てるように、目次 をいれる、種類別に集める、季節ごとや行事別、 目的別、といった目安をつくり整理して作成す ることでより活用しやすい工夫ができるのでは ないかと考える。 ⑥「保育に生かすには」の実践として 5 歳児 が作った絵本や紙芝居を学生が読み聞かせた り、実際に子どもの気持ちになって絵本作りを 体験したりしたが、次年度は学生が選書し考え た「保育に生かすには」の項目を取り上げ、遊 びに生かす実践を行いたい。自分で考えた「絵 本から遊びにつなげる」保育をすることでより 絵本の面白さや影響、体験の大切さが解るので はないか。 現在保育現場では絵本を保育者が生活の中、 遊びの中で教材活用している。多くの絵本が出 版されている中から、選書して読み聞かせをし ていくには、保育者となる学生自身が豊かな感 性を持つことが大切である。絵本を通して子ど もたちの豊かな感性や想像力を育むための観点 を日頃から持って選んでいくことが必要であ る。絵本ノート作成することで記録しながら絵 本体験を積み重ね、保育に生かしていけるよう に指導を行っていきたい。 〔参考文献〕 ・伊勢明子、吉村真理子 「保育者にとっての絵本体験の重要性」 千葉敬愛短期大学紀要第 39 号(3)2017 年 3 月 P449 ~ 455 ・2018 年度改定文部科学省 幼稚園教育要領 ・文部科学省 幼稚園教育要領解説 フレーベ ル館 2008 年

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