熊本地震から見えてきた九州中央部の地質構造論
Geotectonic movement in Central Kyushu, which has been visible from Kumamoto earthquake
田中 均
Hitoshi Tanaka
熊本県博物館ネットワークセンターミュージアムパートナーズクラブ会員
Museum Partner club of Kumamoto Prefecture Museum Network Center
[要約] 2016 年4月の熊本地震では,特に布田川断層帯に沿う地震断層(最大約2m の右横ずれ断層)がよく知られている. その一方で,布田川断層を挟んで南北に約75cm 開くとともにその北側に位置する熊本市や城南町はそれぞれ約19cm 沈降 していることはあまり知られていない.この南北に開いた事実から布田川断層が活動し始める約3〜2.6Ma 前の地帯構造 とそれ以降の構造運動を熊本県北(玉名–菊池地区)と県南(御船–八代地区)の古期地質体の分布をもとに議論した.結 論として県北や県南に分布する古期地質体が南北に開きながら沈降し,そこに火山活動が活性化して金峰山火山の噴火や 海が浸入しその後,陸化することによって熊本平野等が形成された.さらに,天草地方に分布する主に第四系佐伊津層と 島原に分布する口之津層群大屋層との堆積環境や構造運動についても議論した.天草の佐伊津層や島原の大屋層は淡水成 層であり,天草上島北岸沿に大きな湖の存在が示唆され,それが南北に分断されて有明海が形成されたと考えている. [キーワード] 熊本県,玉名–菊池地区,御船–八代地区,天草地方,島原地方,布田川断層,地震断層,構造運動 I.はじめに 2016年4月に熊本地方を襲った大地震(「平成28年(2016 年)熊本地震」気象庁による命名)は,未曾有の被害をも たらした.熊本県上益城郡益城町では,4 月 14 日午後 9 時26 分のマグニチュード(M)6.5 の地震と 4 月 16 日午 前1 時25 分のM7.3 の地震で,震度7の大きな揺れが2度 発生した(図1).熊本地震が特異なのは,28 時間後に同じ 場所で震度7の揺れを2度観測されたことであり,日本の 地震観測史上初めてである.日本列島周辺では,震度7程 度の地震は年間1〜2 回発生しているが,内陸部で M7.3 の地震は1995 年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災), 2000 年鳥取県西部地震以来である. 図1 調査位置図 熊本地震は九州中央部の布田川断層帯および日奈久断 層帯の一部で発生した(地震調査研究推進本部・地震調査 委員会 (2016.5.13 の評価)).この地震では,地表に大きな ずれ(地震断層)が出現した.布田川断層帯に沿う益城町 東域の堂園地域,下陣地域,嘉島町北甘木地区および日奈久 断層帯に沿う御船町高木地区,平成音楽大地区で地震断層 と見られ断裂や変位に起因する地表面の変形・破壊を複数 の地点で見出した.これらの事象は,右横ずれ断層や左横 ずれ断層を示すものが多いが,正断層系の変位を示すもの も認められる. 図2 4 月16 日のM7.3 の地震に伴う地殻変動(水平成分 (上図)および上下成分(下図)) 国土地理院が作成した平成28 年(2016 年)熊本地震(4 月16 日 M7.3)前後の観測データの地殻変動(水平)は,
講演
布田川断層帯を挟んだ熊本や長陽でそれぞれ東北東約 76cm, 南西方向に約 98cm の右横ずれ変位を示すものの布 田川断層帯を挟んだ県北の菊池の変位は北方へ約45cm, 県央の矢部Aや泉ではそれぞれ約30cm, 約26cm南方へ変 位している(図2). 一方,上下変動については,長陽および菊池がそれぞれ約 24cm, 約5cm 隆起したのに対して熊本および城南でそれ ぞれ約19cm 沈降している.一般的に布田川断層帯を挟ん だ地区の北側近傍では沈降し,南側で隆起している(図2). なお, 既往資料からも九州中央部が開いていることは知 られていた(多田,1985).しかし,どこからどのような形 態で開いているのか不明であった(図3). 熊本地震が発生して重要な知見の一つは,布田川断層帯 を挟んで南北の地質体が開いていることが明らかになっ たことである.本論では,この南北に開く前の約3〜2.6Ma 前から現在に至る構造運動について議論する. 図3 フリー網平均法により計算された1891-1982 年の約 90 年間の地殻水平変異ベクトル図(多田,1985) さらに,天草地方に分布する主に第四系佐伊津層と島原 に分布する口之津層群大屋層との層序関係や堆積環境お よび構造運動についても議論する.天草の佐伊津層や島原 の大屋層は淡水成層であり,そこには一つの大きな湖の存 在が示唆されるとともにそれが南北に分断・開口して徐々 に海水が流入することによって口之津層群を構成する累 層が下位から上位へ淡水〜汽水〜浅海へと堆積環境の変 化をもたらしている.また,そこが徐々に開き,海水が流 入することによって有明海が形成されたと考えている. Ⅱ.広域地質概要 1.玉名–菊池地区と御船–八代地区 布田川断層帯を挟んだ古期地質体が南北に開いたとす れば,図4に示すようにその中央部には新しい地質体が分 布することになる.また,布田川断層帯を境にそれぞれ北 方と南方に移動した古期地質体には連続的な類似した岩 体が分布していると考えられる. なお,布田川断層帯活動開始時期を佐伊津層の堆積年代 とほぼ同じと考えて約3〜2.6Ma 前(津留・高嶌・田中, 2017)とし,それより新しい地質体を熊本中央新期地質体, 一方それより古い地質体をそれぞれ玉名—菊池地区古期 地質体と御船—八代地区古期地質体して取り扱う. 図4 地帯構造概念図 地帯構造概念図(図4),実際の地質図(図5)および 図6は約3〜2.6Ma 以前の玉名—菊池地区(県北)と御船 —八代地区(県南)のそれぞれの古期地質帯の位置関係図 示す. 図5 熊本県の地質概略図
図6 約3〜2.6Ma 以前の古期地質体の位置関係 一方,新期地質体に相当するのが,金峰山火山,阿蘇火 山および熊本市内外の沖積平野等である.図4の古期地質 体A に対応するのが,県北の変斑れい岩と県南の木山変成 岩である. また,古期地質体B に対応するのが木の葉地域 の変成岩類(県北)と肥後変成岩類(県南)である.さら に,古期地質帯C が不動岩礫岩(県北)と雁回山層(県南) にそれぞれ対応させている.このように,北と南のそれぞ れの古期地質体には,類似性が高い岩体が分布する. 2.天草の佐伊津層と島原の口之津層群 大塚(1970)は,佐伊津層を再定義し,本層から産出し た花粉化石や植物化石により島原地域に分布する口之津 層群下部層に対比し,その堆積年代が更新統前期であると した. また,首藤(1958)の研究に基づき,大分–熊本構 造線が大矢野島北西まで延びることを推定し,佐伊津層を 含む口之津層群が構造線と関連して形成されたとした.ま た,Horie(1986)は,佐伊津層上部層から採取した凝灰岩の フィッション・トラック年代 (以下 FT 年代と記す) (3.0±0.3Ma)を鮮新世後期と報告した.最近,新たに御領凝 灰岩のFT年代値2.6±0.4Maが報告された(長谷ほか, 2017) さらに,熊本から天草地域にかけてのブ−ゲ−異常が地震 調査研究推進本部事務局(2013)から公表され,布田川断層 帯の西端を宇土市からさらに西側の宇土半島北岸を経由 し大屋野島北西部の野釜島付近まで延長した(図7). 図7 布田川断層帯の重力ブ−ゲ−異常(基図は,Yamamoto et al., 2011(9)に基づき中部大学工藤 健教授作成) しかしながら,そのブ−ゲ−異常は,さらに天草上島北岸に 沿い本渡市に至る海底にも認められる.このブ−ゲ−異常を 根拠に布田川断層帯が宇土半島北岸沿に野釜島付近まで 延長された経緯を考慮すれば本渡に至るブ−ゲ−異常も布 田川断層帯の延長の可能性が高く,熊本平野のように南北 に開く構造運動を反映していると考えている. III. 地質各論 1. 玉名–菊池地区と御船–八代地区の古期地質体 県北と県南の古期地質体の類似性が高いと思われるそ れぞれの地質体について地質概要を以下に簡潔に記す. a.変斑れい岩と木山変成岩 (a) 変斑れい岩 [矢野ほか (1991)] (分布・構造)熊本県北縁部から福岡県境を越え,その北 側にかけて広く分布する.この岩体は三郡変成岩類の上に 低角断層でのっており,全体としては大きなクリッペを形 作っている. (岩相)肉眼的には,数mm 程度の白色と濃緑色の鉱物が まだら模様をなして最も普通に見られる. (絶対年代)306Ma および 477Ma の放射年代が報告され (柴田・西村,1989),これらは三郡帯の三郡−蓮華帯およ びその延長部と考えられる地域の変斑れい岩の放射年代 と一致する. (b) 木山変成岩 [山本 (1964)] (命名者)広川(1976)命名 (分布)熊本市東方約10km の益城町津森から金山川ぞい の東西約3km・南北約1km の範囲に露出する. (岩相)主に塩基性片岩からなり,砂質・泥質片岩の薄層 を,とくに上部にはさむ. (変成年代)木山変成岩の放射性年代は300Ma より古く (Miller et al, (1963), 植田・大貫 (1968),石坂 (1972),早瀬・ 石坂 (1967))地帯構造上どの構造体にあたるのか定説はな い.しかしながら,唐木田ほか(1969)は年代値や岩相から 三郡帯の変成岩に属すると考えた. b. 木の葉地域の変成岩と肥後変成岩 (a) 木の葉地域の変成岩 [Hashimoto et.al. (1962)] (分布)玉名市東方の木の葉山周辺に分布する. (岩相)この地域の変成岩は主に,砂質〜泥質岩源の雲母 片岩・片麻岩・結晶質石灰岩からなり,角閃岩・石英片岩 の薄層を伴う. (周囲の地質体体との構造関係)本変成岩の特徴の一つで ある結晶質石灰岩の存在は,熊本県北部の三郡帯にはほと んど見られず,後述の肥後変成岩中に多く分布することか ら,山下,(1957),藤元・橋本(1960)は,この付近の変
成岩類が古くから領家帯の九州における延長の問題と関 連することを指摘している. (b) 肥後変成岩 [Yamamoto, H. (1962)] (命名者)山本(1962)命名 (分布)美里町砥用地域を中心に東西約25km, 南北約5 km の狭長な分布を示す.西方延長は八代海の大築島・小 築島と天草の姫戸町・龍ヶ岳町に認められる. (岩相)本変成岩は変成泥岩および砂岩・結晶質石灰岩・ 変成苦鉄質岩・変成珪質岩・変成超苦鉄質岩からなる. (周囲の地質体との層序・構造関係)本変成し岩はその分 布域の南限において花崗岩に貫入される.天草では上部白 亜系姫浦層群に不整合に覆われる.東西方向の高角断層に よるスライス化し,その近傍の岩石はカタクレーサイト化 している. (変成作用)前期白亜紀の高温低圧型肥後変成作用で生じ た変成岩で,泥質変成岩に高温低圧型変成作用を特徴づけ る紅柱石・珪線石・菫青石が生じている. (変成年代)黒雲母のK-Ar 年代は70Ma (植田・大貫, 1969),106±11, 108±9Ma, (Shibata and Yamamoto, 1965), Rb-Sr 年代値は104Ma (早瀬・石坂,1967). これらはいずれも白 亜紀で,領家帯の変成岩類の年代とほぼ同じである.しか し,金雲母(K-Ar 年代377Ma)のように,デボン紀を示すも のもある(植田・大貫,1969). 領家帯に分布する. c. 不動岩礫岩と雁回山層 (a) 不動岩礫岩 [島田ほか(1999)] (命名者)島田ほか(1999)命名 (分布)山鹿市東部の三玉地域に分布する. (岩相)厚い赤紫色の礫岩層からなり,粗粒砂岩の薄層を 狭在する.礫岩層は淘汰不良で,円磨度は亜円礫〜円礫の ものが多く,礫径は最大径50cm 以上の巨礫を含み10〜 20cm 径を示す礫が多くみられる.礫種は,変斑れい岩, 結晶片岩類が大部分で,花崗岩,砂岩を含む.三郡帯に分 布する. (地質年代)化石を産しないため詳細は不明である.従来, 古第三紀層との考えもあったが,この礫岩の礫種構成,特 に花崗岩礫の検討などから,熊本市南の雁回山層に対比さ れ,白亜紀後期の堆積物であるとされている(島田ほか, 1999). (b) 雁回山層 [田村・田代(1966)] (命名者)田村・田代 (1966) 命名 (分布)熊本市と宇土市にまたがる雁回山(314m)を中 心に,その南に位置する花園山付近に分布する. (岩相)赤紫色の礫岩層が多くみられ,赤色頁岩または赤 色砂質頁岩を含む.淡緑色から灰色砂岩を少量伴う.礫岩 層は淘汰不良で,円磨度は亜角礫〜円礫のものが多く,礫 径は最大径40cm 以上の巨礫を含み10〜20cm 径を示す礫 が多くみられる.礫種は,花崗岩,淡緑色変成岩,結晶片 岩類が大部分で,砂岩を含む.層厚約950m. (地質年代)雁回山層上部の灰色砂岩層から,Inoceramus amakusaensisやGaudryceras sp.を産し,サントニアンを示 す.化石の産出から姫浦層群下部亜層群樋之島層下部層に 対比されるが,岩相が大きく異なり,本層は礫層などの著 しい粗粒堆積物からなる.島田ほか(1999)は,礫組成の 検討から山鹿市の不動岩礫岩に対比している.肥後帯に分 布する. 2.天草の佐伊津層と島原の口之津層群 a. 佐伊津層 (命名者)大塚 (1966)によって命名. (分布)天草下島北東部(本渡市北部〜五和町)にかけて 分布し,苓北町志岐にも一部分布する. (岩相・層序)佐伊津層は,層厚約200m の累層である. 新生代古第三系坂瀬川層を傾斜不整合に覆い,中位の層準 に厚さ4〜5m の黒灰色軽石凝灰岩(御領凝灰岩)を一層 挟み,これにより下部,上部層に分けられる.両部層を通 じて砂礫層・シルト層および凝灰岩を主とした地層群によ って構成されており,一部ではこれらの上位を阿蘇溶結凝 灰岩が不整合に覆っている. (地質年代・対比)大塚(1970)は,天草の佐伊津層から 産出した植物化石等により長崎県島原地域に分布する口 之津層群大屋層に対比するとともに,その堆積年代が更新 統前期(約2.0Ma 前)であるとした. Horie (1986)は,佐 伊津層上部層から採取した凝灰岩のフィッション・トラッ ク年代を3.0±0.3Ma と報告した.最近,新たに御領凝灰岩 のFT 年代値2.6±0.4Ma が報告された(長谷ほか, 2017). したがって,佐伊津層の堆積年代や布田川断層帯の活動年 代は3.0〜2.6Ma と考えている. 表1. 天草下島佐伊津層および関連地域の層序表 (渡辺・益田(1983)引用加筆)
b. 口之津層群 鮮新〜前記更新世の淡水から浅海成層堆積物から構成 されている.本層群は下位から上位に向かって岩相層序に 基づき大屋層, 加津佐層, 南串山層, 西正寺層, 北有馬層 に区分される.それら累層についての概要を以下に記す. (a)大屋層 岩相はシルト層,砂層,礫層を主体 とし向けて,河川堆積物.中部に挟まれる岩相によって上部 層と下部層に分けられ,下部層に挟まれる向小屋凝灰角礫 岩に含まれる安山岩のFT 年代は1.89±0.16Ma(岡口・大 塚, 1980),上部層を構成する大屋火砕流堆積物のFT 年代 は1.76±0.22Ma を示す. (b) 加津佐層 岩相は礫層,砂層,シルト層の互層. 本層には角閃石安山岩質の凝灰岩を含む.また,層中には津 波見脊椎動物化石群と称される化石を産する. (c) 南串山層 主に安山岩質の溶岩と火砕岩からなる 堆積物.噴出年代は2.50〜1.50Ma 前.本層の大部分は安 山岩質の凝灰角礫岩(土石流堆積物)で構成され,最上部 には安山岩質の溶岩流(国崎安山岩)が分布している. (d) 西正寺層 岩相は礫層,砂層,青灰色シルト層の互層 からなる堆積物.礫層の礫種は,下部は南串山層起源の安山 岩を含み,上位ほどチャートや砂岩が卓越する.岩相やシル ト質の砂層から砂菅が認められることから浅海〜汽水成 層と考えられている. (e) 北有馬層 岩相はシルト〜細粒砂の互層が主体の 堆積物.海生の貝・有孔虫の化石を多産する. 図8 天草と島原地域の鮮新統〜更新統の堆積物 IV. 構造運動論 1. 玉名–菊池および御船–八代地域の古期岩類に基づい た構造運動論 約3〜2.6Ma 以降の新しい地質体である金峰火山, 阿 蘇火山および熊本平野の第四系堆積物を取り除いて,玉名– 菊池地区と御船–八代地区のそれぞれの古期岩類を近づけ 接合したものである(図7). 図9は玉名–菊池地区の不動岩を約 30km 南に位置する 御船–八代地区の雁回山に近づけ,さらに玉名–菊池地区の 図9 約3〜2.6Ma 以前の古期地質体の分布図 古期岩類を反時計回りに28°回転させたものである.その結 果,変斑れい岩の分布の延長に木山変成岩が位置するとと もに木の葉地域の変成岩と肥後変成岩が極めて密接な関 係があることが明らかになった. 熊本地震で明らかになった九州中央部開いたことを考 慮すれば木の葉地域の変成岩の帰属問題など領家帯の九 州における延長の問題を解決する手がかりが得られたこ とになる. 2.天草と島原地域の第四系の構造運動論 天草上島の北岸に沿ってブ−ゲ−異常(図7)が認められ, それは布田川断層の延長と考えられる.天草の佐伊津層(林, 1960),島原の口之津層群大屋層(大塚,1966)および大矢野 島の諏訪原層(渡辺・益田,1983)は佐伊津層上部層に対 比され(表1)河成堆積物を含む湖成層であったことが報 告されている.島原の大屋層は,現在大矢野島北岸から約 20km 北北西に位置しているが,これを移動前(約 2.0〜 1.5Ma 前)の天草上島北岸に戻すと,そこに東北東に伸びた 大きな淡水湖の存在が浮かび上がってくる(図10). 図10 天草—島原の第四系の復元図 なお,島原の第四系は,大屋層の淡水成層から火砕岩や 溶岩を含む南串山層を経て,汽水〜浅海成層の西正寺層,そ して浅海成層の北有馬層と堆積環境が変化している.これ は,湖が徐々に開いて海水が流入してきた過程を示してい ると考えている.
V. おわりに 熊本地震で明らかになったことの一つに,布田川断 層が南北に開いたことがあげられる.これを基に考察すれ ば,玉名–菊池地区(県北)と御船–八代地区(県南)の古期 岩類は連続していたと思われる. 県北の変斑れい岩,木の葉変成岩および不動岩と県南の 木山変成岩,肥後変成岩および雁回山とがそれぞれ密接に 関連していることが明らかになった. 天草と島原の第四系は天草上島の北岸に沿うブ−ゲ−異 常(布田川断層の延長?)を境に南北に開いたと考えれば, 佐伊津層や口之津層群大屋層および大矢野島の諏訪原層 は,約 2.0〜1.5Ma 以前には一つの大きな淡水湖を形成して いたと思われる. 最後に,なぜ九州中央部ではこのように南北に開く応力 場が生じるのかという課題については,沖縄トラフが大き く関与していると考えている. 文 献 藤本雅太郎・橋本光男(1960):熊本県の葉山および国見山を中心 とする地域の深成岩および変成岩(予報).地質雑,66,27-34. 長谷義隆・北村栄一・鵜飼宏明・廣瀬浩司・壇原 徹・岩野英樹 (2017):熊本県天草下島北部佐伊津層のフィッション・トラ ック年代.御所浦白亜紀資料館報,第18 号,1-4. 早瀬一一・石坂恭一(1967):Rb-Sr 法による地質年令 −西南日本 −. 岩鉱,58,201–212.
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