福 岡 オオクチバスの季節的食性の変化
オオ クチバ スの季節的食性 の変化
奈 良 県桜 井市 ・別 所 谷 池 と大 和 川 ・大 西 地 区 を事 例 と して
福 岡 崇 史*
Seasonalchangeintheeatinghabitantof・Micropterussal〃zoides
‑ThecaseofBesshodanipond
,Sakuraicity,NaraPrefecture andYamatogawariveronishiarea一
TakashiFukuoka
旨
北 米 を原 産 とす る オ オ クチ バ ス は本 国 に お い て 、 ニ ッチ が 大 変 広 くそ の 生 態 が 在 来 生 態 系 に 与 え る 影 響 は大 変 に大 きい と考 え られ て い る。 しか し、 そ の 生 態 に関 す る多 くの 研 究 事 例 は あ るが 、不 鮮 明 な 生 態 も多 くそ の 解 明が 急 が れ て い る。 本 研 究 で は河 川(開 放 水域)と 閉 鎖 水 域(池)と い う全 く違 う環 境 下 にお け る オ オ ク チ バ ス の 食 性 調 査 を季 節 ご とに行 い 、 在 来 生 態 系 保 護 の 一 助 とす る 目的 で行 っ た 。 調 査 は釣 獲 で 行 い 、そ の結 果 、開 放 水域 で は 年 間 を通 して コ イ科 魚 類 を中心 とす る魚 食 性 の食 性 で あ っ た 。
しか し、 閉 鎖 水 域 で は フ サ カ科 幼 虫 や ユ ス リカ類 幼 虫 な ど水 生 昆 虫 を中 心 とす る 食性 で あ っ た 。 開放 水 域 よ り閉 鎖 水 域 で は捕 食対 象 とな りう る魚 類 は退 避 す る場 所 が 少 な く、 絶 滅 に至 っ て し ま っ た可 能性 が 極 め て 高 い と考 え ら れ る 。 今 後 へ の 課 題 と して教 育 や シ ンポ ジ ウム を中 心 と した啓 発 活 動 や 池 の水 抜 き
な どの 対 策 が 必 要 で あ る と考 え る。
は じめ に
J
近 年 、 生 態 系 を取 り巻 く環 境 は大 き く変 化 して い る 。公 害 問題 をは じめ 、 ゴ ミ問 題 や さ ま ざ ま な 問 題 が 山積 して い る とい え る。 特 に近 年 で は外 来種 問題 が大 き く注 目が さ れ て い る 。 外 来種 問 題 は 国連 機 関 に よ る条 約 の 締 結 を は じめ 、 国 内 で も国会 や 環 境 省 ・地方 公 共 団体 やNPOま で 及 ぶ 地 球 規模 の 問題 に まで 発 展 して お り、 早 急 に対 応 を迫 られ て い る 問題 の 一 つ で あ る 。そ の 中 で も、特 に外 来 魚 問 題 は た いへ ん に深 刻 で あ り、大 規 模 な湖 沼(例 え ば 、琵 琶湖 や霞 ヶ 浦)に 限 らず 地 方 の 小 規 模 河 川 や 農 業 用 の 貯 水 池 に お い て も オ オ ク チ バ ス(micropterus salmoides)や ブ ル ー ギ ル(Lepomismacrochirus)に よる 問題 が深 刻 であ る。 オ オ ク チ バ ス が 主 平 成20年9月26日 受 理*文 学研 究 科 地 理 学 専 攻
奈 良 大 学 大 学 院研 究 年 報 第14号(2009年)
な原 因 と考 え られ る 被 害 と して は 高 橋(2002)が 報 告 した 宮 城 県 ・伊 豆 沼 、 内 沼 の ゼ ニ タナ ゴ (Acheilo8nathustypus)絶 滅 の 事 例 や 杉 山(2005)の 秋 田 県 横 手 市 に お け る シ ナ イ モ ツ ゴ (Pseudorasborapumilapumila)の 絶 滅 の事 例 が あ る 。 オ オ ク チ バ ス や ブ ル ー ギ ル は大 変 に繁殖 力 が 強 く、 一 度 増 え て しま う と大 きな環 境 変 化 、 つ ま り生 活 空 間 で あ る湖 沼 の水 抜 きや 農 薬 な ど の 外 部 的 な影 響 に よ る水 質 の大 幅 な変 化 が な い 限 り根 絶 は困 難 で あ る。 オ オ ク チ バ ス は 完 全 な 肉 食 性 の 魚 で あ り、 高 橋(2002)は オ オ クチ バ ス の 駆 除 や 貴 重 な魚 の 保 護 策 を検 討 す る 必 要 が あ る と指 摘 して い る。2002年 に は 日本 一 の 面積 を ほ こ る琵 琶 湖 を有 す る滋 賀 県 で 「琵 琶 湖 の レジ ャー 利 用 の 適 正 化 に 関 す る条 例 」(以 下 、 リ リ ー ス 禁 止 条 例)が 制 定 され た 。 こ の 法律 で は琵 琶 湖 で 釣 れ た オ オ クチ バ ス や ブ ル ー ギ ル の再 放 流 禁 止 が 明 文 化 され て い る。 外 来 魚 は外 来魚 回 収 ボ ック ス に入 れ る よ う に湖 岸 に外 来 魚 回収 ボ ッ クス が 設 置 され て い る。 しか し、 リ リー ス に 際 し罰則 は 設 け られ て い な い 。2005年 に は 「特 定 外 来種 に よ る生 態 系 等 に係 る被 害 防 止 に関 す る 法律 」(以 下 、 外 来 生 物 法)が 制 定 さ れ た 。 外 来 生 物 法 で は特 定 外 来生 物 に指 定 さ れ た 生 物 の飼 育 や 繁殖 、 野 外 に放 つ な どの 禁 止 と、 違 反 者 にす る罰 則 も明 文化 され 、 日本 国 内 で は初 の罰 則 付 きの法 律 と な った 。 また 、 飼 育 や 繁 殖 に 関 して は都 道府 県 知事 の 許 可 が 必 要 と明 記 され て い る。 そ の後 、外 来 生 物 法 の施 行 に伴 い 、 多 くの 都 道 府 県 で漁 業 規 則 や 外 来生 物 に関 す る条 例 が 制 定 され て い る 。 現 在 、外 来 生 物 問 題 に対 す る国 民 の 注 目度 はお お い に増 してい る とい え る。 つ ま り、濁 川(2007) も指摘 す る よ う に大 き な環 境 問 題 で あ る と同 時 に社 会 問 題 で あ る と位 置付 け る こ とが で きる。 し か し、 この外 来種 問 題 に対 し池 田(2005)や 水 口(2003)は 著書 の 中 で 法 律 と関 係 省 庁 の利 権 を 巡 る政 治 的 問 題 で あ る と指 摘 す る。 こ れ らか ら も外 来生 物 問題 に関 して 様 々 な意 見 や 考 えが 交 錯
して い る の が現 実 で あ る 。
外 来 生 物 問 題 は 決 して 日本 国 内 だ け の 問題 で は な い 。 当 然 の こ とな が ら世 界 各 国 で も大 きな問 題 と な って い る。 例 えば 日本 国 内 に お い て 「白 す ず き」 とい う名前 で ア フ リ カか ら食 用 と して輸 入 され て い る ナ イ ル パ ー チ(Latesniloticus)は ア フ リカ で は重 要 な 漁 業 資 源 で あ り、 蛋 白源 で もあ る。 ア フ リ カ最 大 の 湖 で あ る ヴ ィク トリア湖 に1960年 代 に食 用 と して 放 流 され 、1980年 代 に 爆 発 的 に増 加 し、 湖 内 の350種 を越 す 在 来 の 固有 種 の 魚(例 え ば シ ク リ ッ ド)を 絶 滅 に追 い 込 ん で い る(DECO,2006)。 また 、 オ オ クチ バ ス の 原 産 国 で あ る アメ リ カ合 衆 国 で も、 オ オ クチ バ ス が 本 来 生 息 しな い水 域 に放 流 さ れ在 来 種 の生 態 に大 きな 影響 を与 え て い る とい う報 告 が あ る。 海 外 で は そ う した外 来種 の 生 物 に対 して、 い ち早 く法 律 に よる対 策 を講 じて い る(表 一1・2)。 日 本 も外 来 生物 の 影響 を受 けて い る だ け で な く外 来生 物 輸 出 国 と して の 一 面 もあ る。 キ ヒ トデ が 貨 物 船 の バ ラス ト水 で 日本 か ら オ ー ス トラ リア に運 ば れ 、 ホ タテ ガ イ な どの 養 殖 貝 類 を食 害 し甚 大 な水 産被 害 を発 生 させ て い る。 こ うい っ た外 来種 問題 に た い して 、 ニ ュ ー ジー ラ ン ドで は1953年 か ら 、 ア メ リ カ 合 衆 国 で も1974年 か ら 法 律 が 制 定 さ れ 対 策 が 講 じ ら れ て き た 。 ま た 、 InternationalUnionforConservationofNatUreandNatUralResources(自 然 お よ び天 然 資 源 の 保
護 に関 す る国 際 連 合:以 下IUCN)の 「種 の 保 全 委 員 会 」 は2000年 にr世 界 の侵 略 的 外 来種 ワ ー ス ト100」(1000ftheWorld'sInvasiveAlianSpecies)を 定 め 、 警 鐘 を鳴 ら して い る。 しか し、
我 が 国 にお い て は2002年 に入 っ て か ら外 来種 規 制 に 関 す る初 の条 例 が 制 定 され て お り、 周 辺 各 国 に比 べ て も対 策 が た いへ ん 遅 い 。
福 岡 オオ クチバスの季節的食性の変化 外来種に関する各国の規制(検疫制 を除く) 羅 霧難1
ニュージーランド
H●z●rdou8Sob8tanoo8 8ndN●wO叩ni8m8
Actof1996
新 生 物(N●w Or88幡m)の 輸 入 、
開 免 に関 す る制 限
生物(微生物を含む、
自己複製可能な遣伝 子組織 、生殖細胞含
む)
環境リスク管理局(ERMA)が 、斬生物の輸入 、導入方法や輸送に ついて、評価や許謹可を実施。許可申請者のリスク評価責任の明
確化
Biosour比yActof1993
検疫等の水際規鯛、
進入生物の躯除、害 性鳥獣 ・害虫管理戦
略の作成
生物(微生物を含む、
自己複製可能な遺伝 子組織 、生殖細胞含
む)
情報の収集、記録、提供。船舶・航空機等の入国時の登録。品 物・簾客の梼ち出し許可。制隈地填 、管理地域の宣言。土地所有
者に書性鳥獣・書虫管理の突施を要請
Con8●rv醐onAct1987 淡水急集水域聞での
移動の制限 淡水魚 傑全大臣による移動の許可制
R●80uro●3M8n●80m●r嘘 A◎tfbr1991
沿岸生態系や海域生 態系への特別な管理
の適用 外来性の植物 沿岸海域への外来性植物種の導入規制
wi矧 静bAnimdCon圃 Actfbr1953
国内に侵入した有書
生物の対簾 在来希少鳥顛楳護のためのポッサムの駆除
オ ース トラリア
Environm●r幽I Prot●cぜon●nd
8iodiv●r8ity Coの8●rv●thionActof
指定種の輸入規鯛、
州問も含む取引規 制、生物多様性のモ
ニタリング
r生物 多棟性に影響を 与える在来でない租」
のリストに掲げられた 種
外来種に醐係したり影響を及ぼす行動の規制または禁止。規制 に違反して輸入、飼青された生物の押収と殺処分。外来種が在 来
種に与える脅威の管理董務の規定。
Fi8h● 南8Actof1979 水生の外来種に対す
る許認可
在来生物または法令・
条例でリスト化された 種以外
導入の蒙止
アメリカ合衆■
Lac●yActof1998 有害な外来生物の輸
入、移動の蒙止
人の健康、農粟、野生 生物に膚窟な脅椎動 物、軟体動物、甲殻
顛、櫨物鉢
採取、所梼、輸送、売買を含む貿易の禁止
F●d●rd縄oxiou8w● ●d Actof1974
外来櫨物の■入、販 発の葉止
リスト化された外来植
物 外来植物の輸入、売 買の葉止
N面o㎜lh》 ●8i》●
Sp●oi●8Aotof1996 有書水生生物の規鯛
バラスト水によって導 入される有書水生生
物
包括的な予防と敢り締まり方簾を規定。遣郵の政府機関聞の機 動部隊を設立
R●8崩嚇㎝8 海洋における舛来生
物の導入の蒙止
外来性の植物、無脊 椎動物、煮類、両生
頬、哺乳頻
国立海洋 自然傑獲区への外来生物の導入や敏逐の禁止
U.SPr●8id● 而d Ex●c画v●Ordbron
勘w掴 》●Sp●oi●8(3 F●bru●ry1999)
侵入種対繁について の迎邦敢府の対簾整 爾や事務分配
侵入種(経済、環境、
人の健康を書するお それのある外来種)
迎郵敢府のおこなうべ妻施繁の方向性の提示。侵入種艀議会の 設立。国家侵入種管理計画の繁定.
台湾 w甜d縛bC㎝ …8㎞L酬 of1989,1994
翰入前の影響騨価藩 準の膿務化、輸入後
の鯛査 や豊視
外来野生生物 申請者は対象種の全情報(在来動櫨物に与える影響)を日家管 理局に拠出。輸入生物が負の影響を灰ぽす場合、所有者や使用
者は一定期闇内での防除や復帰計画の繁定の職務
アルゼンチン
Prot●c廿 ㎝●nd Con8●rv8ti㎝ofWigd
FouoaAcU981
外来水生生物につい
ての翰入餅可 害があるとリストされ
た外来水生生物 環境や生崖システムに影響を与える場合には国家漁粟養殖局が 輸入 申請を釦下
州の岡の移動を管 理、事前の環境影響
評価の韓務化
他国から導入される 外来動物
国内で翫待、移動、売買する前の種の証明の●務化、輸入前の 環境影響騨価の案施と導入される州の公式同意の取得鵜務
外来動植物の輸入や 設置の静可鯛
経済活動などに影響 する可龍性のある外 来動植物の(生体)篠 本 、精子、胚 、卵、幼
虫
国家管轄省庁が、影●があるものは許可を却下。
全ての傑護地填にお
ける規鯛 外来租 外来租の導入、輪送 、繁殖の葉止
甫アフリカ
Phnthpm》 ●m●otAot㎡
1976
植物および植物鰻晶 の輸出入の規鯛
植物および植物の一 郁
酋木崖桑、増殖桑、簡桑 日的の繁殖桑、輸出入に闘係する機闘 に豊録を藤務化
C㎝3●rv醐onof A8瞬oo㎞lR●80㎜
Actof1983
雑草散布の規鯛 雑草 雑草散布の規鯛
豪1=外 来 種 に関 す る海 外 の 規 制 DECO編(2006):r外 来生物 事典 」の資料を基に作成
奈良大学大学院研究年報 第14号(2009年) ヨーロッパ諸国の外来種 に関する法令
ドイツ
F●d●mlN8tur℃
Con8● 鴨 価onAGtσ 「 1987
外来動植物の 自然下 への敏出と導入の欝 可鯛(農林粟に係る
ものを除く)
外来動植物 在来動植物の汚染または当骸種 定着の可能性が緋除できない場 合、外来種の放出や設置の許可申請を却下
イギ リス
Wildl挿●andCour嘘ry8幡 ● Ac亀1980
外来動物租について
の翰入の餅可制 外来動物租 許可のない外来動物種の輸入禁止。
1叩orotofUV●
Fi8h(En巾ndand W●1●8)Act,1980
外来熱の放流や所持
の無許可での蒙止 外来負 在来種及びその生息環境の條護と、河川や湖沼の動植物の多様 性の保全
ポ ーランド
AαtonN●tu●r Protoctionof1991
外来種の環境への導
入や移動の蒙止 外来種 外来種の導入や移動の禁止
Ex●cu輔v●Aoton Prinoipl●80f80t8nicd andZoolo60alGard●n
Prot●otionof1980
植物■や動物■の土 地利用や植物藏培の
蜜更の禁止
公■内の外来種 研究または管■運営上必饗と舘められた場合以外の禁止事項を 規定
ハ ンガ り一 Natur●Co論8●rv曲nAct σ臼996
外来生物の導入の許
可制 GMOも 含む外来生物 外来急顛租の自然または近自然水填の敏出や、養殖場から湿地 への移動を葉止 。
EU全 体の 法令 一
CouncilR●8」b廿 ㎝ 3条2項(d)にて、在来租に影響を与える種の輸入を禁止。
No2087/2001 2001年 動植物 輸入 ア カミミガメ(rrctUrysscriρteθ ノegens)と
【EU法令338/97】 ウシ ガエル(Renec8te8beiene)が リスト化され ている。
H●bh』tDir●oU》 ● 16条1項(d)にて、貴■な在来種の■体数増加 、冨導入のための
(Dir●oゼv● 観究、敏宵を進め、人偽的な生息地改変を含めた生息地の條全・
92/43/匪C)【 動植 1992年 在来種 再導入 條護 の 健進 。22条(a)に て 、生 物 租 の再 導 入 の 際に は 自然 、地 填
物の生息地傑全に 住艮への十分な注意をはかること、および在来の生物租を他の地
関する規定】 域に移動、導入する際にも審議を重ねることが定められている。
8ird8D㎞G伽 ● (Dir●c面vo 79/409/EEC)傷 生 鳥獺 傑 全 に鯛 す
1979年 外来鳥頻 輸 入 ・導 入 11条 に より、廉 則としてヨ・一ロッパ 地 域 にとって外 来 の 鳥 頬の 輸 入 ・導 入 を禁 じている.
る規定】
B●mC㎝v● 醐on
【ベル ン条 約】 1979年 在来種
外来種
再導入 輸入
11条2項(8》 にて、原 崖(n●tiv●)動植 物 の菖 導 入 の 推進 を定 め て いる。11条2項(b)に て、外 来種(n㎝‑鳩 蜘 ●)の厳 正な 管 理を
突 施す る。
表2:外 来 種 に関 す る ヨ ー ロ ッパ の 規 制 DECO編(2006):r外 来生物事典』の資料 を基 に作成
そ こで 筆 者 は 近 年特 に注 目 され てお り、 早 急 な対 策 が 望 まれ るオ オ クチ バ ス の 生 態 、 特 に四 季 を 通 した 食性 の 変化 に つ い て の 調 査 を行 っ た。 オ オ ク チ バ ス の研 究 で は 分類 ・分布 ・資 源 量 に関 して 様 々 な研 究 事 例 が あ る(例 え ば尾 崎 ら(2006)や 水 野 ら(2001)な ど)。 しか し、 問 題 の 根 源 で あ る オ オ ク チバ ス の 生態 や行 動 、 食 性 に関 して は特 定 地域 に お け る研 究事 例 が あ るが 、 全 国 各 地 で研 究 が行 わ れ て い な い た め 、 オ オ クチ バ ス の食 性 の研 究 は い まだ に十 分 とは い え ない 。 多 くの漁 業 協 同組 合 管 理 河 川 や湖 沼 で オ オ クチ バ ス に よる と思 わ れ る食 害 が頻 発 して い る に も関 わ らず 今 日現 在 、 生 態 解 明 に繋 が る 手掛 か りは 少 ない 。 食 性 に関 す る研 究 は永 野 ・梶 山(2000)な どが あ るが 、 特 に年 間 を通 して食 性 を考 察 した研 究 事 例 は皆 無 で あ る。 被 害 の実 情(例 え ば大 浜 (2002)な ど)を 考 え る と最 優 先 で 生 態 や 食 性 の 研 究 を行 わ な け れ ば な らな い 。 本 研 究 で は 池 (閉鎖 水 域)と 河 川(開 放 水 域)で の 食 性 と在 来 生 物 群 集 の生 息状 況 を季 節 ご と に比 較 ・考 察 し、
福 岡:オ オ クチ バ ス の 季 節 的 食 性 の変 化
今 後 の在 来生 物 保 護 ・生 態 研 究 の一 助 と した い 。
オ オ ク チ バ ス の分 類 と概 要
オ オ ク チバ ス(Micropterussalmoides)は ス ズ キ 目サ ン フ ィ ッシ ュ科 に分 類 され る肉 食 性 の 淡 水 魚 で あ る。 分 類 学 的 に は オ オ ク チ バ ス属9種 類 に分 類 され て い る。(表 一3)。 バ ス また は ブ ラ ックバ ス とい う呼 び名 は オ オ クチ バ ス属 の総 称 で あ り、具 体 的 な種 を示 して い な い(杉 山,2005)。
学 名 で あ るmicropterusは 小 さな鰭 、salmoidesは サ ケ の よ う な形 を した とい う意 味 で あ る 。 遊 泳 に適 した体 型 で 小 回 りが き き、エ サ を食べ た り、敵 か ら逃 げ た りす る の に都 合 が 良 い 体 型 で あ る 。 原 産 国 にお い て も分 布 域 は たい へ ん に広 い(図 一1)。
オ オ ク チ バ ス は世 界 各 国 に移 植 され 定 着 して い る(図 一2)。 分 布 国 は ヨ ー ロ ッパ 諸 国 で は10 力国 。 ア ジ ア にお い て は 日本 を は じめ14力 国。 中南 米 や オ セ ア ニ ア で は14力 国 で あ る。
日本 にお い て は 、 カ リ フ ォ ル ニ ア州 ・サ ン タ ロ ー ザ 産 の 本 種(オ オ ク チ バ ス)と コ クチ バ ス (micropterusdolomieu)が1925年 実 業 家 で あ っ た 赤 星 鉄 馬 氏 に よ って 、遊 魚 ・食 料 目的 で神 奈 川 県 ・芦 ノ湖 に放 流 され た。 しか し、瀬 能(2002)は 実 際 に どの よ う な種 が 放流 され た の か に つ い て は標 本 や 写 真 な ど再 検 証 で きる資 料 が残 され て い ない た め 不 明 で あ る と して い る。 コ ク チバ ス は1953年 に同 湖 で 採 取 され た標 本 で は確 認 され て お らず 、 す べ て オオ ク チ バ ス に同 定 さ れ て い る(瀬 能,2002)。 そ の た め淀(2002)は 定 着 しな か った よ うで あ る と して い る 。 また 、 芦 ノ湖 と い う放 流 水 域 は 分 布 拡 大 な ど を考 慮 して 当 時 と して は か な り慎 重 に行 わ れ た よ うで あ る と淀 (2002)は 指 摘 して い る。 そ の後 オ オ ク チ バ ス は 長 崎 県 白雲 の 池(1930)や 群 馬 県 田 代 湖(1935) な どに 移 入 さ れ た公 式 記 録 が 残 っ て い る(表 一4)。 さ ら に オ オ ク チバ ス は釣 り人 や 釣 具 業 界 関 係 者 の密 放 流 に よっ て 国 内 で の分 布 が拡 大 した(瀬 能,2002)。 現 在 で は北 は北 海 道 か ら南 は沖 縄
まで 日本 全 国 に分 布 す る よ う に な っ て い る。
分 布 拡 大 の大 きな要 因 と して 、他 の魚 種 に比 べ 圧 倒 的 に高 い繁 殖 力 にあ る。 産 卵 は水 温16℃ 〜 20℃ の 春 か ら初 夏 に か け て 、 オ ス が作 った す り鉢 状 の 巣(以 下 、 産 卵 床)で 行 わ れ る。 産 卵 の 適 地 は水 温 が 比 較 的 安 定 し、 水 通 しの よい場 所 にあ る砂礫 や 障 害 物 の 周 辺 で行 わ れ る。 産 卵 床 は利 用 で き る もの(例 え ば沈 ん だ船 な ど)を すべ て 利 用 して い る よ うで あ る。艀 化 後 は オス が 稚 魚 を 保 護 す る(淀,2002)。 日本 の在 来魚 種 の 一 部 は オ オ クチ バ ス 同様 に受 精卵 の保 護 を行 うが 、 オ オ クチ バ ス の 様 に艀 化 後 の 稚 魚 を保 護 す る行 動 を と らな い 。 淀(2002)も 指 摘 す る よ う に、 オ オ ク チ バ ス の 雌 は一 年 間 に複 数 回 産 卵 を行 え る こ と と、雄 が卵 だ け で な く稚 魚 を保 護 す る行 動 が 爆 発 的分 布 拡 大 の 大 き な要 因 と考 え られ る。 ま た 、生 殖 腺 の 成熟 様 式 に お い て も 日本 在 来 の 淡 水 魚 に 見 られ な い 特徴 が あ る と淀(2002)は 指 摘 して い る。 稚 魚 の 間 は プ ラ ンク トンを食 べ 、 成 長 と と もに魚 類 、 甲 殻類 、 昆 虫類 等 を捕 食 す る。 ま た 、 モ グ ラ科 の 哺乳 類 を捕 食 して い た事 例 も報 告 さ れ て い る(中 野 ・西 原,2005)。 オ オ クチ バ ス の知 覚 知 能 は 高 く、物 体 の動 きを側 線 で捉 え る こ と が で きる 。 また物 体 の 形 を覚 え る こ とが で き る。 釣 り用 語 に 「ス レる」 とい う言 葉 が あ りオ オ ク チ バ ス に よ く使 わ れ る が 、 これ は魚 が餌 や ル ア ーの 形 を覚 え て しま いエ サ に食 い つ か な くな る状 況 を表 した言 葉 で あ る。
奈 良 大 学 大 学 院研 究 年 報 第14号(2009年)
叢鑛灘鐵
グアダル ープバ ス GuadalupeBass 〃ノorqρごθ〆〃5オθ1o〃〃
一ぜ 舘
テキサ ス州 中央 部 のサ ン・アントニオ 川、グァダルー プ 川 、コロラド川 、ブラゾス川 に分 布 。コクチ バスが 移植 され本 種 との雑 種 が 多く出現 し、純粋 の もの の 生息 地
が 隈定 され てきて いる。
レッドアイバ ス
■
RedeyeBass 〃ozqρ ホθr粥60058θ アラバ マ州 、ジョー ジア州 、サ ウスカロライナ 州 、テネ シー 各州 の 一部 の 河川 に生 息
アラバ マスポッテッドバス
■
AlabamaspottedBasε 〃ozqρ ホθ渚粥6ρ. ミシシッピ、アラバ マ、ジョー ジアの 各 州を流れ るアラ バ マ川 に生息 してお り、比較 的 大 型に なる。
ショー ル バス ShoalBass 〃6mρ 加 削308煮 〃 ∂08甜 θ
フロリダ、アラバ マ、ジョー ジア各 州の 一 部 河川 に生 息 する。涜 れ の速 い大 河川 を好 むが 、埋 め立 てや水
質 汚渦 で減 少 している。
スワニー バス Swam●oBa8s 〃ノo1qρホθr粥 〃of1μ8
フロリダ 州とジョー ジア 州を滅 れ るスワニー 川 水 系が 分 布 域で 、オオクチ バスの 仲 間で分 布 域 が最 も狭 く、
最も原始 的 と考 えられてい る。成長 が 遅 く小型 であ る。
スポッテッドバス Spo廿edBass 〃omρ ホ郡 μ3ρ〃70加 ノ話 μ3
オ ハ イオ州 か らメキ シコ湾 岸 、オハ イオ 川 、ミシ シッピ 川 、フロリダ州 西部 に分 布 。オオクチバ スや コクチバ
スに比 べ 小型 である。
覧
フロリダバ ス FloridaBass 〃o御 ρfθ1侭〃o〃 吻 伽5
以 前 はオオクチバス の亜 種 と考えて られ ており、フロ リダラージマウ スバスの 名 前が ある。フロリダ半 島に 分 布している。オオ クチバ スより大 型にな ることからア メリカ国 内でも各地 に移 植 が行 われ てい る。フロリダ バ スとオオクチバスとは審 易に 雑種 をつくることが知 ら
れ ている。
コクチバス SmallmouthBass 〃61q砿 θ錫30bノ α〃ノθ〃
北 米の 東北 部 、五 大湖 か らミシ シッピ川 水 系 、アパラ チア山 脈の 西 部 、カナダ ・ケベック州の 爾 部 まで 広く分 布。上顎 の後 端 は眼 に遣 するが 、通 常 はそれ を超え ない。頬 に3〜4本 の暗 褐色 の バンドが あり、オ オクチ バスに くらべ茉 色 掛か った色 であ る。比較 的 大 型化 す
る。
オオクチバス LargemouthBass 〃 ρfqρ掬 川5ε8ノ ㎝1db8
天然 分布 は メキ シコ東 北郁 か らアメリカの東 北 部 に分 布 し、ミシシッピ川 のほ とんど、オ ンタリオ州 とカナダ ・
ケベ ック州南 部 。しか し、スペ リオ ル湖 と大 西 洋 の北 東 部に は分 布せ ず 、サ ウスカロライナ州 大 西洋 岸 北
部か ら爾 央郁 に は分 布 している。
豪3:オ オ ク チ バ ス 属 の 種 類
杉 山秀 樹(2005)rオ オ ク チバ ス駆 除 最 前線 」pp.14〜pp.19を 基 に一 部 加 筆 し作 成
福 岡:オ オ クチ バ ス の 季 節 的 食 性 の 変化
図 一1=原 産 国 ア メ リカ合 衆 国 に お け る オ オ クチ バ スの 天 然分 布 図 杉 山(2005):rオ オ クチバス駆 除最前線」 よ り引用
図 一2:オ オ クチ バ スの 世 界 分 右 状 況 の概 略 図
杉 山(2005):rオ オクチバ ス駆 除最前 線」p.20の文章 を元 に、筆者が加筆 し国際 地学協会のみ んなで使お う世界 白地 図に加筆 し作 成
奈 良 大 学 大 学 院研 究 年 報 第14号(2009年)
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1925年 ・実業 家 の赤 星鉄 馬 氏が 東大 の協 力で 米国 ・カリフォル ニア産 のオオ クチバ スを移 送 し禅 奈 川県 の芦 ノ湖 に放 流 、コクチバ スも 移 送 された が定 着 しな かった とされ ている。
1930年 代 ・各地 の水 産 試験 場などにより、長 崎 県 ・白雲湖 、山梨 県 ・山 中湖 、群 馬県 ・田代湖 兵庫 県 ・峰 山貯 水池 などに試験 放 流 1945年 〜 ・紳 奈 川県 ・津 久井 湖 、相模 湖 に分布 拡 大。進駐 軍 の兵 士 が密 放流 したとの説 あり。
1960年 ・皇太 子 がシカゴ市長 よりブルー ギル が贈 られ 、淡 水 区水 産試 験 場 に下賜 。・鹿児 島 県中原 池 に鹿児 島 大学 水産 学部 が バスを 放 流
1963年 〜 ・淡水 区水 産試 験 場が 淡水 真珠 の幼 生 の寄 生 魚としてブル ーギ ルに着 目し、繁 殖させ た1400匹 を滋 賀 県水産 試 験場 に分 与
1964年 ・オ オクチバ スの 分布 は5県 に広 がる。
1965年 ・ブルーギ ルが 大 阪府 淡水 試 に譲渡 され各 水試 、養殖 業者 に配 布 。・琵 琶 湖(西 の 湖)付 近 でブルーギ ル初 確 認 1966年 ・淡水 区水 産 研が ブルーギ ル をはじめて 自然 水域 へ放 流(静 岡 県・一 碧湖)
1969年 ・オオクチバス の分 布 は11府 県 に広が る。
1970年 代 ・日本 にお ける第 一次 ルアー釣 りブーム。愛 好家 や 団体 、釣 り桑者 などによるオオ クチバ スの無 許可 放流(密 放流)が 始 まる。
1971年 ・千 葉県 、雄 蛇ヶ池に才才 クチバ スの 密放 流 。同 時期 にブルー ギル も放流 され る。
1972年 ・米 国、ペンシル バニアか らオオ クチバス の稚 熱が 榊 奈川 県 、芦ノ湖 に移植 。一部 が関 西 に運ば れ 、兵庫 県 、東条 湖 や愛 媛 県 石手 川 ダムに密 放 流され る。
1973年 ・千 葉 県、雄蛇 ヶ池 から金 山ダム や薦 原市 周 辺の ため池 にオオ クチバ スの密 放 流。山梨 県 ・河 ロ湖でオオ クチバ スを初 確認 。
■ 士五 湖でもこの時 潮 に密敏 瀦 がおこな われ る。また静 岡県 ・一 響湖 でもオオ クチバスを初確 認 される。
1974年 ・オ オクチバ スの分 布 は23郁 府 県。・琵蟹 湖でオオ クチバ スを初確 認 。・愛 媛 県石 手川 ダムか ら面 河ダム にオオクチバ スが 密 敏 流 される。
1975年
・山梨 県、河 ロ湖 でオ オクチバ スによる漁 業敏 害(ワ カサ ギ)の 訴え 。・兵 庫 県の 生野 銀 山湖 にオ オクチバ スが密 放 流され る。・
奈 良県 、池 原 ・七色 ダムにオオクチバス の密放 流 。・茨城 県 、藤 井ダム 、霞ヶ浦 、牛久 沼 でオオ クチバ スを初確 認 。各 地 で漁 業 被 害 が深 刻 化しバ スの密 放 流 は違 法行 為との 認 臓が 広まる。
1976年 ・栃木 県でオオ クチバ スを初 確 認(渡 良瀬湧 水 池)、関 東 、関西 にバ スが広 がる 1977年 ・奈 良 県 、池原 ダムでバ ス釣 リブー ム ・千葉 県 、印旛 沼 に密放 涜
1979年 ・オ オクチバ スの分 布が40郵 府 県に。ブ ルーギ ル は9府 県に。・琵琶 湖 での漁 桑被 害 が深 刻化 する。
1980年 頃 ・東 北地 方 にもオオ クチバ スが密 放流 され る。
1983年 ・秋 田県 、八 郎潟 でオオ クチバス初 確 甥 。
1984年 ・琵琶 湖 の漁 民 、外来 種の 駆 除に乗 り出 す。釣り愛 好家 か ら非難 が殺 到 。 1985年 ・山 梨県 、河 口湖 を中心 に賞金 制 のトー ナメントが開 催され る。第 二次 ルアー 釣 りブーム へ突 入
1986年 ・(株)つり人社 が バス釣 り専門 雑 誌『バサ ー』を創 刊
1988年 ・オオクチ バスの 分布 が45都 府 県 に。・奈良 県池 原 ダムにフロリダバ スを放 流す る。
1989年 ・山梨 県が 河 ロ湖漁 協 に対 し、オオクチバスを漁 薬権 急積 として免許
・篁一 回琵 慧湖 バ ス会謹
1991年 ・長野 県 、野尻 湖 でコクチバ スを初確 認 。
1992年 ・バス 、ギル の生 息拡 大防 止 をは かる、木 崎湖 ・青 木 湖 ・検原 湖 ・小 野川 湖 ・秋 元湖な どでもコクチバスが 確 認され る。
1995年 ・中 禅寺 湖でもコクチバ スを確認 。漁 協 が躯 除 に乗 り出 す。
1996年 ・バ ス釣 リブー ムの肥 大 化。バス釣 り(桑界)へ の 批判 報 道が 始まる。・池原 ダムの フロリダ系続 のバ ス釣 りブー ム 1997年 ・コクチバ スの分 布 が8纏 県 に、山梨 県全域 でコクチバス の持ち 出し禁止 。キ ャッチ&リ リー ス蒙止 の原 型 となる.
1999年 日釣振 内に「ブラックバ ス等対 彙婁 員 会」ができる。秋 田県 が外 来種 駆 瞭の 姿勢 を明 確 にす る。
2000年 ・省庁菖 編 で環 境 省が でさる。・富 山県 警にブラックバスを密 放涜 した男性 が 摘兜 され 、書 頻送 検 2001年 ・日本熱頻学会内に自然傑護委員会を設量。北海道も漁桑調整規則を改定し、全国で外来急の密放流が禁止される。
2002年 ・滋 賀 県議会 「リリー ス蒙止 条例 」を全 会一 致で可 決 。日本 バ スプロ協 会 が中 国 ・五口 湖にバ ス・ヘラブナ を放 流 。 2003年 ・滋 賀 県で官 民 一体 の外 来魚 ●陰 釣 り大 会 が開 かれ る。・官城 県、伊豆 沼でバ ス屡 除人 工産 卵床 の關 兜 に成功 したとの報 告 2004年 ・r外来 生物 法」の原 案 ・パブリックコメントが 行わ れ る。麻生 太郎 総 務大 臣 が 日釣 擾 の会 長を辞任
2005年 ・外来 生物 法が 施 行され る。全国 ブラックバ ス防 醸市 民ネ ットワークが兜 足する。
2006年 ・自然を考える釣 り人の会 がNPO法 人 となる。・全 国ブラックバス 防除 ウイーク開催 。
濁 川(2007)
表4:オ オ ク チ バ ス 関 連 年 表
「ブ ラ ックバ ス 問題 の真 相 」 牧 歌 社 、pp.204.227を 元 に抜 粋 して 作成
福 岡:オ オ クチ バ ス の 季 節 的 食 性 の変 化
オ オ クチ バ ス の 基 本 的 生 活 サ イ クル
オ オ ク チ バ ス の 成 熟 個 体 を例 に とる と、 春 季 に は生 物 に と って の 最 大 の イベ ン トで あ る 産卵 が 行 わ れ る 。 筆 者 の観 察 に よ る と産 卵 は3月 下 旬 か ら5月 の 下 旬 に掛 け て比 較 的 長 期 間 行 わ れ る。
夏 季 は水 温 上 昇 が 著 し くな り、 オ オ クチ バ ス の行 動 は冬 と は逆 に早 朝 と 日没 間 際 の 比 較 的 水 温 が 下 が る時 間帯 に捕 食 行 動 が 見 られ る。 夏 季 は魚 類 や 甲殻 類 に加 え て テ レス トリ アル(陸 生 昆 虫 を 含 む虫 と定 義 され る もの)を 捕 食 す る こ と もあ る。 秋 季 に入 る と水 温 が 適水 温 に入 る こ とで活 動 時 間が ほ ぼ 日中全 て に な り、 冬季 に向 け て盛 ん に捕 食 行 動 を行 な う。 秋季 は捕 食効 率 を上 げ る た め か、 群 れ を形 成 しや す い 魚 類 が 捕 食 され て い る こ とが 多 く、 魚 類 に限 らず 甲殻 類 な ど利 用 で き る生 物 を全 て捕 食 す る とい う傾 向 が 見 られ る。 冬 季 は シー ズ ンの 中 で も長期 間 にお よび 、 い わ ゆ る冬 眠状 態 に な る。 しか し、 完 全 に冬 眠 を行 うの で は な く日中 の水 温 が 上昇 す る 時 間帯 に は捕 食 行 動 を行 な う。 他 の季 節 に比 べ て 行 動 時 間 は僅 か で あ り、 多 くの 個 体 は水 温 の安 定 しや す い 最 深 部 に群 れ で越 冬 を行 う。 水 深 の 浅 い ため 池 や 沼 で は水 温 が安 定 す る泥 の 中 に腹 部 を埋 め た 状 態 で 越 冬 す る こ と もあ る(筆 者 私 信)。 そ の た め 、 冬 季 に捕 獲 され る個 体 は腹 部 に 泥 が付 い た状 態 で あ る こ と も多 い 。 食性 はお も に プ ラ ン ク トン類 や 甲殻 類 等 の比 較 的 動 きの遅 い もの を捕 食 して い る こ とが 多 い。 冬 季 に は春 季 の 産卵 に 向 け た準 備 が始 ま り、 淀(2002)24)は11月 に は か な りの 卵 細 胞 が 黄 身 を蓄 積 し始 め て生 殖 腺 重 量 指 数(GSI)も 上 昇 し、 オス の 生 殖 細胞 も成 熟 す る と示 し て い る。 生 殖 形 態 か ら も在 来魚 種 とか な り異 な る生 態 の一 部 が伺 い知 れ る。
調査地の概要
閉 鎖 水 域 の調 査 地 を選 定 す る条件 にあ た って は、 排 水 施 設 が な く存 在 して も池 に生 息 す る生 物 が 排 出 さ れ な い よ うな場 所 で あ り、 出 来 る だ け 人 為 的 影 響 が 少 な い こ とを考 慮 した。 人 為 的 影響 と は オ オ クチ バ ス を釣 りに来 る 人 が少 な い とい う こ とや 農 薬 等 の 薬 品が 池 に流 入 しない とい う こ とで あ る。 今 回 選 定 した場 所 は、 奈 良 県 桜 井 市 茅 原 に位 置 す る。1/2500桜 井 市 都 市 計 画 図 に お い て 別 所 谷 池(写 真1〜4)と 呼 ば れ る 場 所 で あ る(地 図 一1)。 別 所 谷 池 は大 三輪 町 史 に示 さ
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写 翼1:別 斯 谷 池 ・全 景 写 翼 (2007年4月22日 筆 者撮 影)
写 真2=別 所 谷 池 西側 排 水 ロ付 近 (2007年11月13日 筆者撮 影)
奈 良大 学 大 学 院研 究 年 報 第14号(2009年)
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写 真3:別 所 谷 池 北 側 (2007年11月13日 筆 者 撮 影)
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写 真4:別 所 谷 池 東N (2007年11月13日 筆 者 撮 影)
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地 図 一1=閉 鎖 水 域 の,査 地(別 所 谷 池)
国土地理 院1/25㎜ 地形 図閲覧システム 「ウォッちず」 よ り作成 http:〃watchizu.gsi.go.jp/watchizu.aspx?id=51356605(2007,IXOI印刷)
れ た 山麓 や谷 あ い を堰 き止 め た不 規 則 な形 の 池 の 一 つ で あ る 。 また 別 所 谷 池 の よ うに水 源 と な る 池 は三 輪 周 辺 の 山 間 部 に 多 く見 られ る(地 図 一2)。 周 辺 は歴 史 的風 土 保 存 地 区 に も指 定 され て い る(桜 井 市,2007)。 地 質 は粗 粒 閃 雲 花 尚 岩 で あ る(大 三 輪 町 史,1959)別 所 谷 池 は大 神 神 社 の 御 神 体 とな っ て い る 笠 置 山 地 の 一 つ で あ る 三輪 山(標 高467,1m)の 麓 に位 置 し、 周 辺 は竹 林 ・蜜
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福 岡 オオクチバ スの季節 的食性 の変化
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地 図 一2:ArcGISを 用 い た桜 井 市 周 辺 の池 の分 布状 況
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奈良大学大学院研究年報 第14号(2009年)
柑 畑 ・柿 畑 に囲 まれ て い る。 周 辺 道路 もた いへ ん に狭 く、 一 部 は未 舗 装 で対 向 が で きな い 農作 業 用 道路 だ け で あ る。 一 部 の釣 り人 も訪 れ る が 、 人 数 が 限 られ て い る た め本 調 査 に は 影響 が な い も の と考 え られ る。 多 くの釣 り人 は キ ャ ッチ ・ア ン ド ・リ リー ス を行 い 、 濁 川(2007)は 再 放流 で は10%程 度 の 魚 は死 ぬ と して い る が 、 別所 谷 池 で は 訪 れ る 釣 り人 の 少 な さ か ら して も影響 が 少 な い と考 え られ る か らで あ る。
別 所 谷 池 の 築 造 時 期 は古 く、奈 良県 耕 地 課 が発 行 す るrた め 池 管 理 台 帳 』 に よれ ば 明 治期 で あ る 。 水 系 は 大 和 川 水 系 に分 類 さ れ 放 水 さ れ た 水 は纏 向 川 を経 て 大 和 川 に 注 ぐ。 た め 池 面 積 は 0.650haで 貯 水 量 は5100m3で あ る 。 池 の 管 理 は茅 原 地 区 長 が 一 年 毎 の 任 期 制 で行 って い る。 用 途 は 農業 用 と され て い る が 、 放水 口付 近 は吉 野 川 分 水 の分 水 口(写 真 一5,6)が あ り、池 の水 が 現 在 も農 業 用 水 と して の 利 用 され て い る の か は桜 井 市 役 所 ・商 工 農 林 課 にお け る 聞 き取 り調 査 に お い て も不 明 で あ っ た。 実 際 に農 家 の恒 例 行 事 で あ る冬季 の水 抜 きは 過 去 数 十 年 間行 わ れ て い な い 。 また 、調 査 地 周 辺 は 山 間部 で あ る た め イ ノ シ シ や シ カ とい った 野 生 動 物 も生 息 して お り、春 季 に は別 所 谷 池 の 泥 地 に イ ノ シ シ用 の捕 獲 椎 が設 置 され て い た 。
輝 夢 癌 鴨
詠 ぴよ・ 〜 驚
写 翼5:別 所 谷 池 下 ・吉 野 川 分 水 の 分 水 口 (2007年8月27日 筆者撮影)
〆
鶴 礎
鍵:㌧
冗盤うヂ
触 際 零 、.悔
写 翼6:別 所 谷 池 下 ・吉 野 川 分 水 の 分 水 ロ (2007年8月27日 筆 者 撮 影)
この 池 の 水 質 は酸 性 に近 く、 藻類 の優 先 順 位 は季 節 ご と に変 化 す る。 冬季 か ら春 季 に か け て は ヤ ナ ギ モ(Potamo8etonoxyphyllus)が 優 先 藻 類 と な り、 春 季 後 半 か ら夏 季 ま で は イ トモ
(Potamogetonpusillus)が 優 先 し夏 季 中期 か ら秋 季 まで は ミジ ン コ ウ キ ク サ(Spirodelapolyr‑
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開放 水 域 の調 査 地 は 桜 井 市 北 部 に位 置 す る大 和 川 の 大 西 地 区(地 図 一3)に 設 定 した(写 真 一 7〜10)。 本 調 査 の 開 放 水 域 の 定 義 は 、水 位 の 増 減 が激 し く水 自体 が 盛 ん に 入 れ 替 わ りを行 う場 所 とい うこ とに あ る 。 この 定 義 に よ り、 大 和 川 を選 定 した。 しか し、大 和 川 全 体 を調査 で き ない た め 、比 較 的 閉 鎖 水 域 と関連 す る典 型 的 な ア シや 杭 とい っ た障 害 物 が あ る エ リア を探 しそ の結 果 、 大 西 地 区 を選 定 した 。 大和 川 大 酉 地 区 は川 幅 が 広 くな る布 留 川 南 流 と真 面 堂 川 との合 流 点 か ら約 3.5㎞ 上 流 に位 置 し、大 き く蛇 行 す る。 河 川 の両 端 はiン ク リ ー トで 護 岸 され てお り、一 部 の場 所 で は護 岸 か ら1m程 度 の 所 に ア シ(Phra8mitescommunis)が 生 えて お り様 々 な抽 水 植 物 が 見
福 岡:オ オ クチ バ スの 季 節 的 食 性 の変 化
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地 図 一3=閉 鎖 水 域 の 調 査 地(大 和 川 ・大 西 地 区) 国 土 地 理 院1/25000地 形 図 閲 覧 シ ス テ ム 「ウ ォ ッ ち ず 」 よ り作 成 http:〃watchizu.gs1.go.jp/watchizu.aspx?id=51356605(2007112101印 刷)
られ る。河 川 の 両 端 は道 路 もあ り比 較 的 交 通 量 も多 い 。桜 井 市 史 に よれ ば周 辺 一 帯 は低 地 で あ り、
隣 の江 包 地 区 か ら大 西 地 区 にか け て大 和 川 は天 井 川 に な っ て お り水 害 を防 ぐ 目的 で の 受堤 防 もい くつ か見 られ る 。 また 水 田 が 多 く見 られ 米 作 りが 盛 ん で あ る。 そ の た め 隣 の江 包 地 区 に は桜 井 市 の カ ン トリー エ レベ ー ター が 設 置 さ れ てい る。 古 くは茶 の栽 培 も盛 ん で あ っ た た め 、 そ の 名残 に 茶 園 橋 とい う橋 が 残 っ て い る が 、現 在 は衰 退 し栽 培 は行 わ れ て い な い 。
大 和 川 は笠 置 山 地 南 部 を水 源 とす る一 級 河 川 で桜 井 市 北 東 部 に位 置 す る貝 ヶ平 山(標 高882m)
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写 真7=大 和 川 ・千 代 井 堰 フ7ブ リダ ム (2007年8月15日 筆者撮影)
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写 真8=大 和 川 ・大 酉 地 区 上 流 (2007年8月15日 筆 者 撮 影)
奈 良 大 学 大 学 院 研 究 年 報 第14号(2009年)
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写 真91大 和 川 ・瑞 穂 橋 (2007年9月17日 茶 園橋 か ら筆 者 撮 影)
写 真10=大 和 川 ・茶 園 橋 (2007年9月17日 筆 者撮 影)
近辺 か ら流 れ 出 て い る。 初 瀬 ダ ム に一 度 貯 水 さ れ た後 に蛇 行 しな が ら奈 良 盆 地 を見 なが ら南 西 に 流 れ る 。 途 中 に奈 良 市 内 か ら来 る佐 保 川 や地 す べ り地帯 で有 名 な 亀 の 瀬 、 大 阪 府 の 石 川 な ど と合 流 して堺 市 で大 阪 湾 に注 ぐ。 ま た、 大 和 川 は 日本 の 一 級 河 川 の 中 で もワ ー ス ト3に 入 る水 質 汚 濁 河 川 で あ るが 、 上 流 域 で あ る本 調 査 地 の 大 西 地 区 も例 外 で は な く見 た 目に も綺 麗 と は言 え な い 。 水 量 が比 較 的 少 な く滞 留 しや す い冬 季 か ら春 季 の初 め に か け て は 泥 ま じ りの 苔 状 の もの が 水 面 に 浮上 す る。 周 辺 に水 田 が 多 く、 そ の排 水 が大 和 川 に流 れ 込 む た め 苗代 の 時期 に は よ く濁 る。
調査方法
ベ ン トス類 の採 集 場 所 は調 査 地 の底 質 の違 い に応 じて選 定 した 。 別所 谷 池 で は 池 の 底 に沈 殿 す る 落 ち葉 や泥 質域 や水 草 で あ る ヤ ナ ギ モ生 え たの 場 所 で採 集 を行 っ た 。 しか し、 季 節 に よ り優 先 順 位 が 変 わ る た め 、 季 節 で 一 番 多 く見 られ る ルゆな き
羅講 騰 灘
トス は バ ッ トに藻 類 や 泥 と と も に移 し、 ピ ン セ ッ トを用 い て ベ ン トス 類 を標 本 ビ ン(マ ル エ ム 製)に 入 れ 、 ホ ル マ リ ン で 固 定 し大 学 に 持 ち帰 り同定 を行 っ た 。
オ オ クチ バ ス の 捕 食 対 象 魚 類 の 調 査 は ベ ン トス類 と 同様 に 手 網 で の採 捕 と籠 型 網(以 下 、 もん ど り)に よ る 採 集 を併 用 し た。 も ん ど り (OEM製)は ア コー デ ィ オ ン状 の 網 で 両 端 が 入 り口 に な っ て お り、 内 部 に は 練 りエ サ(マ ル キ ュ ー 製 サ ナ ギ 粉)を 用 い た 。 使 用 した 場
写 翼11=採 捕 に 便 用 し た 網 (2007年11月24日)
福 岡:オ オ ク チバ スの 季 節 的 食 性 の変 化
所 は前 述 の 手 網 で は採 捕 を行 え な い場 所 で あ る。 別 所 谷 池 で は池 の 中央 部 で行 い 、大 和 川 で は 水 深 の 比 較 的 深 い 場 所 で使 用 した 。 調査 努 力 を一 定 にす る ため に、 前 日の夜10時 か ら翌 日の 午 前10 時 まで 漬 け て採 集 を行 っ た。
オ オ クチ バ ス の 採 捕 は釣 獲 に て行 った 。 他 の採 捕 方 法 と して は底 引 き網 や 刺 し網 、投 網 、 電気 シ ョッ ク等 が あ るが 、 底 引 き網 や刺 し網 は船 舶 が 必 要 と な り比 較 的 小 規 模 な河 川 や池 で は使 用 で き ない 。 投 網 も底 に倒 木 、廃 品 が あ るた め コス トの 面 か ら考 えて も効 率 が 悪 い た め使 用 しな か っ た 。 電 気 シ ョ ック に よる採 集 は奈 良 県 漁 業 調整 規則 に触 れ 、 なお か つ 使 用 時 に は県 知 事 の 許 可 が 必 要 に な るた め 、 低 コ ス トか つ 短 時 間 で 出 来 る釣 獲 にて の 採 捕 を行 っ た。 釣 獲 採 捕 は尾 崎 ・梶 山 (2006)を は じめ 多 くの研 究 で 用 い られ て お り適 当 と判 断 した。 採 捕 に関 して は ル アー(疑 似 餌) 釣 りと餌 釣 りに よ る方 法 が あ る が 、 ル アー 釣 りを選 択 した 。 本研 究 で は オ オ クチ バ ス の食 性 を調 査 す るの が 目的 で あ り、餌 釣 りの場 合 で は 多 くが オ オ クチ バ ス の 掛 か っ た瞬 間 に餌 は オ オ ク チ バ ス の 口腔 外 に排 出 さ れ る が 、僅 か な確 率 で 口 内 に入 って しま うた め デ ー タの 確 か さを考 慮 して ル ア ー釣 りを行 っ た。 ル ア ー釣 りの場 合 は 疑 似餌 で あ るた め 、 口内 に誤 って 入 っ て しま っ た場 合 で も容 易 に生 食 生 物 との判 別 が付 くとい う利 点 もあ る。 特 にル アー の 指 定 は行 わず 、状 況 に応 じた もの を使 用 した。 釣 獲 した オ オ クチ バ ス は全 長 を測 定 後 、腹 部 を メス で 切 開 し、 胃及 び腸 を取 り 出 し内 容 物 を ホ ル マ リ ンで 固 定 し標 本 ビ ン に入 れ た 後 、 大 学 に持 ち帰 り捕 食 個 体 数 と種 類 の 同 定 を行 っ た。 ま た、 捕 食 生 物 が大 型 で あ りなお か つ標 本 ビ ン に入 らず 持 ち帰 りが 不 可 能 と判 断 した 場 合 は、 採 取 後 に写 真 撮 影 を し、 同 定 を したが 正確 な同 定 は不 可 能 で あ る た め多 くは科 名 の み に と どめ た。 オ オ クチ バ ス の採 捕 時 間 も調 査 努 力 を一 定 にす る た め に午 後3時 か ら午 後6時 まで の 3時 間 に統 一 した 。 オ オ ク チバ ス の 胃 内 容 物 消 化 は 水 温 に よ り変 化 が生 じる が 、 杉 山(2005)に よ れ ば、 お よそ17.5時 間 で 消 化 で きる た め 、約1日 前 か らの捕 食 生 物 を保存 で き る。 つ ま り調 査 時 刻 と胃内 容 物 の消 化 に は あ ま り影 響 が ない と考 え られ る。 ま た オ オ クチ バ ス の サ イ ズ に よる調 査 の影 響 は釣 獲 の た め 選 ん だ サ イズ を採 捕 で き ない 、 従 っ てサ イズ に 関係 な くラ ンダ ム に採 捕 を お こ な っ たが 、 エ リア の 大 き さや 生 息 生 物 の状 況 を考 慮 にい れ て も食 性 に対 す る差 異 は 少 な い と 考 え られ る。
結果と考察
第1節 季 節 ご との ベ ン トス 類 の 採集 結 果 1‑1冬 季
別所 谷 池 に お け る 冬 季(2月 ・3月)の 水 温 変 化 は10℃ 〜15℃ で あ っ た(グ ラ フ ー1)。 ベ ン トス 類 は ユ ス リ カ 類 幼 虫(Cbironomusyosbimatsui)が 最 も優 占 し、 続 い て サ カ マ キ ガ イ (Physaacuta)、 コ カ ゲ ロ ウ科 とな っ て い る 。 ユ ス リ カ類 は ヤ ナ ギ モ の枝 葉 に 隠 れ る よ う に付 着 して い た 。冬 季 はサ カ マ キ ガ イ の 産卵 シ ー ズ ンに あ た り、 交尾 中 の もの も多 く採 集 され た。 サ カ マ キ ガ イ は ヨー ロ ッパ 産 の外 来 種 で あ り、 昭和 初 期 に観 賞 魚 や水 生 植 物 と共 に移 入 され た と考 え られ て い る(増 田,2002)。 ア メ リ カザ リガ ニ(Procambarusclarkii)は 幼 稚 体 が ほ と ん どで あ り、 成 熟 個 体 は確 認 出来 な か っ た 。 コ カゲ ロ ウ科 は腹 部 の 細 い タ イ プが 多 か った が 、 種 類 が 多 く
奈 良 大 学 大 学 院研 究年 報 第14号(2009年)
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グ ラ フ ー1=別 所 谷 池 に お け る 冬 季 ベ ン トス 類 採 捕 結 果
藻 類 は少 な く、 多 く は底 部 に沈 殿 す る葉 や 泥 で の 採 捕 を主 に行 っ た 。 ユ ス リカ類 幼 虫 が 多 く 採 捕 され 、 サ カ マ キ ガ イや イ トミ ミズ 等 の 酸 素 が 少 な く 、水 質 汚 濁 が 進 ん で い る水 域 に 見 ら れ る生 物 が採 捕 され た 。 その 他 と して ア メ リカザ リガニ や ヒル 類 な ど、 底 付 近 を生 息 域 に し て い る生 物 が 採 捕 され た。
未 だ に分 類 され て い ない 種 も あ り、 コ カ ゲ ロ ウ科 に統 一 した。 そ の他 、冬季 の オ オ クチ バ ス の餌 とな っ て い た フサ カ科 幼 虫 も採 集 され た 。
一 方、大 和 川 は で は減 水 が激 し く、抽 水 植 物 帯 が干 上 が っ て い た の で採 集 は で きな か った 。
1‑2春 季
別 所 谷 池 で の 春 季(4月 〜6月)の 水 温 変 化 は9℃ 〜20℃ で あ っ た 。水 温 の上 昇 と共 に様 々 な ベ ン トス類 が確 認 で きた(グ ラ フ ー2)。4月 の段 階 で は冬季 と大 き く変 化 せ ず 、 ア メ リ カザ リガ
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ノア 凶 ゲ 伊 メ/〆 暁!!
グ ラ フ ー2=別 所 谷 池 に お け る 春 季 ベ ン トス 類 採 捕 結 果
春 季 の 初 め は サ カ マ キ ガ イ の産 卵 シ ー ズ ンに もあ た る ため 、 サ カマ キ ガ イ が 多 く採 捕 され た。
続 い て ユ ス リカ類 幼 虫 や コ カ ゲ ロ ウ科 幼 虫等 の水 温 上 昇 と共 に 見 られ る生 物 も採 捕 され た 。 冬 季 の オ オ ク チ バ スの エ サ とな って い た ブサ カ科 幼 虫 も採 捕 され 、 様 々 な生 き物 が 水温 上 昇
と共 に 行 動 を は じめ て い る の が わ か る 。
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福 岡:オ オ ク チ バ ス の季 節 的食 性 の変 化
二 とユ ス リ カ類 で あ っ た が 、水 温 上 昇 と共 に、 コ カゲ ロ ウ科 幼 虫 や ゲ ンゴ ロ ウ科 幼 虫 が 冬 季 よ り 多 く見 ら れ た 。5月 に は水 温 も さ らに 上 昇 し、 イ ト トン ボ科 ヤ ゴが 出 現 し始 め た。 多 くは キ イ ト トン ボ緑 色 型 や セ ス ジ イ ト トンボ で あ っ たが 、 保 存 時 に分 類 項 目の一 つ で あ る尾 肢 の破 損 な ど も 見 られ た た め 、 イ ト トン ボ科 に統 一 した 。5月 中旬 に は オ オ ク チ バ ス 当 歳 魚 も採 捕 で きた 。 大 き さか ら推 測 す る と、 艀 化 後 約1ヶ 月以 内 の もの と考 え られ た。 さ らに マ ツ モ ム シ等 の水 生 昆 虫 も 採 集 で きた 。5月 下旬 には水 温 が さ らに上 昇 した た め、 流 水 性 で あ るヤ ナ ギ モ が 消 滅 しは じめ た 。
大 和 川 で は春 季 の水 温 変 化 は13℃ 〜22℃ で あ っ た。4月 初 期 は ア メ リ カザ リ ガ ニ幼 稚 体 や フ タ オ カ ゲ ロ ウ科 幼 虫 が 見 られ た(グ ラ フ ー3)。 水 温 上 昇 が 激 し く、 別 所 谷 池 よ り早 くイ ト トン ボ 科 ヤ ゴ も見 られ た 。4月 半 ば か ら5月 に な る と、 フ タオ カ ゲ ロ ウ科 幼 虫 な どの 水 生 昆 虫 が 少 な く な り魚 類 で あ るハ ゼ 科 の カ ワ ヨ シ ノ ボ リ(Rhinogobius.fZumineus)や フ ナ類 稚 魚 、 ム ギ ツ ク (Pun8tungiaherzi)稚 魚 が 採 捕 で きた。6月 に は魚 類 に混 じ り、 マ ツ モ ム シ や コカ ゲ ロ ウ科幼 虫 が 採 集 で き た。
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〆 ♂ レ.ノ ノ!〆,!〆
グ ラ フ ー‑3=大 和 川 に お け る 春 季 ベ ン トス 類 採 捕 結 果
魚 類 は フナ 類 が最 も多 く採 捕 され 続 い て ム ギ ツ ク が 多 か った 。 フ ナ類 、 ム ギ ツ ク共 に稚 魚 が 多 く今 春 に艀 化 した もの や 、 生 後 一 年 未 満 の もの が ほ とん ど全 て を 占 め て い た 。 水 生 昆 虫 類 は フ タオ カゲ ロ ウ科 の 幼 虫 や イ ト トン ボ科 ヤ ゴ等 の河 川 で 一 般 的 に 見 られ る生 物 が 採 捕 され た 。 ミ ジ ンコ類 は 群 れ で 採 捕 され た た め 数 が 大 変 多 い 。
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鰯戸
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鳳〆■ 声
1‑3夏 季
別 所 谷 池 に お け る夏 季 の水 温 変 化 は26℃ 〜31℃ で あ っ た。 採 捕 さ れ たの はユ ス リカ類 幼 虫 とイ トミ ミズ の2種 の で あ っ た(グ ラ フ ー4)。 水 温 が 高 くオ オ クチ バ ス を含 め 、多 くの 生 物 が 不 活 発 で あ っ た と思 わ れ る 。 しか し、 採 捕 した オ オ クチ バ ス の 胃内 容 物 か らは フサ カ科 幼 虫 な どが 採 取 され てい る た め 、一 部 で は 生 息 して い た と考 え られ る。水 面 に は ミジ ン コ ウ キ クサ が 群 生 して い ため に池 の 内 部 は確 認 で きな か っ た。
一 方、 大 和 川 で の水 温 変化 は26℃ 〜33℃ で あ っ た。 魚 類 調 査 で は オ イ カ ワ稚 魚 が 一 番 多 く、 続 い て カ ワ ヨ シ ノボ リ で あ っ た(グ ラ フ ー5)。 魚 類 は こ の 時期 に は 大 き く群 れ を な して 沿 岸 周 辺 を回 遊 して い る姿 を た び た び 見 か け た 。 ベ ン トス類 はユ ス リ カ類 幼 虫 、 ス ジエ ビ、 イ ト トン ボ等