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Academic year: 2022

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癌の臨床

食道および噴門部癌のX線診断

東京女子医科大学付属消化器病センター

講師小林誠一郎

     コ  パヤシ  セイ  イチ  ロウ

(受付 昭和41年12月21日)

Roentgenographi¢al Diagnosis of Cancer ef the Esophagus and

       Cardiac Portion of the Stomach

      Seiichiro KOBAYASHI, M.D.

Tokyo Women s Medical College. lnstitute of Gastroenterology,

  Routine method of roentgenological diagnosis of the esophagus and cardia in our clinic is mentioned.

In roentgenological diagnosis of the esophagus, double contrast of the esophagus in the multiple directions is useful to reveal fine morphological changes of the esophagus. ln diagnosis of the cardiac portion of the

stomach, several special technics are required to detect lesions in the cardia and upper portions of the stomach. Among them, diagnosis under fluorescopic examination is most useful. Several interesting x−ray films of cancer of the esophagus and cardiac portion of the stomach were shown.

 最近このような食道癌,早期食道癌を経験いた しました,右後壁に小さい陰影欠損を見ます.右

が切除標本であります.

 次の症例は,第二斜位ですが,左後壁寄りに低 いギザギザした,もり上りが見えております.右

が切除標本であります.

 いずれも2cmぐらいの大きさで,もり上り:方も 大きくありません,二人ともはっきりした通過障 害はなく,ただ何となく食道がおかしい,つかえ るような気がするという訴えで来院し,X線検査 で所見が得られ,内視鏡など綜合診断で癌と診断 されました.

 このような変化を捉え,診断の手がかりをつか むという点で,x一線検査は今日なお重要な役割を

占める検査法であります.

 これから述べます事は,早期癌の診断という事 ではなくして,とにかく所見を捉えるために,日 常私共が行なっております食道の.X線検査法と

いう事であります.

 食道と申しましても,頚部から下部食道噴門部 に至るまで,それぞれ隠微があり,したがって検 査の手順も異ります.共通の点は,胃と異り圧迫 操作ができないという事でありますので,透視撮 影の方向とタイミングが重要なポイントとなりま す.造影剤は,普通市販のBa懸独液をそのま ま,又は粉末を溶して使用する場合はやや濃いめ に溶して用いております.希薄なBaですと,食 道内通過が早く,特に噴門部ではC・ntrast不良 で,透視上不便で,小さい変化が見えない場合が ありますので,特別な目的以外には使用いたしま せん.ロー杯に含ませたBaを一気にのみ込ま せ,頚部,上中部,下部噴門,と各区間に分けて 通過状態,食道壁が膨らんで収縮し,次いで空気 が入って再び膨らむ状態を各方向から観察する訳 であります.

 先ず頚部でありますが,ここではBaの通過は

一一X1

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瞬間的で,かっ嚥下運動が加わりますのでタイミ ングがむずかしい所であります.通常立位で,正 面および横から充盈像を撮影し,壁不正の有無を 確認いたします.左スライドは正常例,右は頚部 食道癌であります.特に術式の選定上,首だけで 済むか,開胸を要するかの問題がありますので,

浸潤の下界の,確実な描写が必要となります.

 胸部上中食道については,通常第一,第二斜

位,正面の各方向で,充満像とD・uble c・ntrast

像を撮影します.スライドに示しますように,細 かい変化は一方向のみでは判然とせず,見落され る可能性があります.この例では第二斜位のダブ ルコントラスト像が明確に病変部を示しておりま

す.

 レリーフ像を撮る場合もありますが,食道のそ れは,細かい2〜3条の線でありますので,細か い部分の描写という点でやや難点があります.ス ライドの2例とも中部食道癌でありますが,中央 のダブルコントラスト像における描写がすぐれて

おります.Double contrastの利点は,充満像では

得られない透視方向に対する前後の病変を明らか にし,かっ病変部の上下界を明確に描写する点で あります.Double contrast縁のとり方は,通常 ロー杯含ませたBaを一気にのみ込ませると, Ba 通過後一緒に入った空気が,壁を押し広げなが

ら通過するので,その時をすかさず狙撃撮影いた します.臥位の造影は,Baの通過がおそくなる

かわりに,壁のたるみが診断の邪摩をするので,

Varix等特別の病変の疑われる時以外は用いてお

りません.

 日常食道X線検査を施行するに際して,次のよ うな三つの点に留意い泥しております.すなわち 解剖学的事項に留意する事,合併疾患に気を付け

る事,食道だけの検査は原則として平しむ事,等 であります.

 衆知の如く,生理的狭窄部として知られており ます部分でも,時に極端に圧迫される場合があり ますので,できたFilmとにらみ合わせて,機能 的なものと器質的なものとを区別する必要があり

ます.

 第二に合併疾患に気をつける事であります.す なわち一つの病変を見つけて他の重大な病変を見 落す事のないよう注意すべきであります.ここに 示します例は,49才の男性,30年来の嚥下障害が

あり,最近やせて来たとの訴えを有するもので,

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良く見ますと,大動脈弓上部に陰影欠損が見られ ます.右はその部を中心として撮影したものであ

り,上部食道癌の合併例であります.これは中部 食道癌例でありますが,胃充満像で胃角上部に小

さい陰影欠損が見られ,精査の結果,胃癌の共存

が確かめられた例であります.

 CardiosPasmusにおける食道癌の合併は4〜7

%とされていますが,千葉大中山外科で扱った 230例中7例3%に見ており,同じ嚥下困難を主 訴とする点,注意を要します.また最近1力年半に 入院した胸部上中部食道癌症例中,約8%に胃疾 患の併存が見られておりますので,癌年令の人に 良性疾患を見つけた場合,特に注意して見る必要

があります.第三に食道症状を訴える場合でも,

必ず胃まで精査する事であります.これは54才の 男性で,1ヵ月来,食道の異常感を覚えて来院,

食事済みという事で食道のみ検査して,著変なし として帰宅.4ヵ月後には,はっきりした下部食 道噴門癌の状態を見せております。食道だけでも

という安易な気持ちが敵であります.

 鑑別診断でありますが,問題は癌でありますの

で,癌と類似疾患との鑑別という事になります.

悪性腫瘍で癌の他には肉腫がありますが,稀なも のとされています.多くは単発性ですが,時に多 発性,x線像上の特徴は少なく,癌との区別はつ

けにくいようでありますが,粘膜下のものですと,

半球状の欠損,時に潰瘍形成,右の例は黒色肉腫

ですが,蜂窩苛め特異的な像を呈しています.

 良性腫瘍は,比較的稀な疾患とされております が,Fibrom, Myom, Polyp等あらゆるものの存

在が知られております.特徴は単発性,多くは:丸

い辺縁,平滑な陰影欠損,造影剤は腫瘍のまわり を囲むように流れ,周囲レリーフは正常で,壁硬 化がない事等であります.この症例は食道嚢腫で

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ありましたが,前に述べましたように,陰影欠損

は小さくとも癌の事が多いものでありますから,

必ず内視鏡との綜合診断が必要であります.

 周囲からの圧迫が,食道の陰影欠損として現わ

れる事は,生理的tlこは大動脈弓,気管分岐部の狭

窄として知られ,いずれも癌好発部位とされてい ます.ただこれらは前壁への圧迫であり,同部 で後壁への圧迫欠損のある場合は注意を要します が,適切な透視と辺縁の明らかな描写をする事で X線的に鑑別可能であります.

 稀ですが,血管のAnomalieにより食道が外

部から圧迫される事があります.これは右A・Sub−

claviaの異常,およびright Aortic Archによる 圧迫でありますが,いずれも辺縁はスムースで,

よく収縮いたします.

 次の症例は,左は胸部大動脈による圧迫,右は 同じ位置に発生した食道癌でありますが,ダブル コントラスト像による辺縁の描写が,明らかに良

悪の区別を示しております.

 気管分岐部付近は,リンパ節による圧迫が起こ り易いとされています、この症例は充満像,レリ

ーフ像,いずれにおいても,狭窄を呈しますが,

同部の収縮は良く,レリーフも乱れておりませ ん.右の胸部写真の示す如く,右下野の肺癌リン パ節転移による圧迫であります.手術適応決定の 問題と合わせまして胸部写真の吟味が大切であり

ます.

 食道憩室は小さいものは殆んど無症状で,偶然 発見されるものが多いのですが,単発性,多発

性,いずれも診断上困難ではありません.

 むしろこのように癌による狭窄上部の突出を良 性疾患として取扱う事のないよう,留意すべきで

あります.

 食道静脈瘤は,特徴あるレリーフ像と脾腫,腹 水等,付随する症状で診断は容易であります.背 臥位,Valsalva−MUIIer法の併用によりょく描写 されるとされますが,右スライドに示しますよう に弛緩期に撮影しませんと,いわゆるレリーフ像 では消失し診断できません.この事は逆に癌との

鑑別点とも言えましよう.

 食道癌手術適応に関する診断上の要点について 述べて見ますと,私共は従来X線像を,スライド

のように偏則性陰影欠損を有する鋸歯形(右端),

全周にskirrh6sに浸潤するロート型(左端),そ の中間型の螺旋型(中央)の三型に分類しており ますが,遠隔成績を見ますと,鋸歯型が最も良 く,次いで螺施型,ロート型では浸潤の長さが小

さくとも予後は不良という事であります.

 また陰影欠損の長さと遠隔成績との関係を見ま すと,私共は通常,第一斜位,焦点フィルム問距 離70c皿,ダブルコントラスト像で計測いたします が,6C皿以内ですと,5年生存20%近くを示して おりますが,6C皿以上になりますと予後は不良と なっておりますので,6cm以内の症例を見逃さな

いよう,気をつける必要がありましよう.

 次いで下部食道から噴門部に関するX線診断に ついて述べます.同部は,解剖学的にネジレ屈 曲,あるいは横隔膜運動等が加わり,見にくい 上,かつ鑑別すべき疾患が多く在存し,X線診断 上最も困難を感ずる部分であります.たとえば,

日常しばしば経験するCardiospasmUSは,嚥下困 難を主訴として下部食道の狭窄があり,噴門部癌

との鑑別を要します.通常このように食道の拡張 迂曲と筆尖状の狭窄が証明され,比較的容易に診 断されますが,時に失敗をいたします.先に申し ましたように,中部食道癌を合併するような場合 もあり,内容を引吸除去し,背臥位の透視を加 え,トレンデレンブルグ位による玉垂部の描写も 必要でありますCardiospasmusの場合は,胃泡 が,膨らんでおらない事が一つの特徴であります ので,弩隆部の癌と間違えたり,また逆に同国の 癌を良性のものと誤ったりする事がありますの で,必ず胃内に空気を注入して見る事でありま す.この症例は66才の男性で,1年来の嚥下困難 を訴えておりますが,左スライドのように極め て,Cardiospasmus類似の像であります.胃隆部 に空気を入れて見ますと,壁硬直,陰影欠損およ

び胃泡内の腫瘤陰影とが見られます.

 また逆にこのスライドのように癌との区別がっ けにくい時も,空気を入れて見ますと,spasmus

一一 93 一

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の診断を得られます.

 食道潰瘍は比較的しばしば見られますが,X線 診断のみでは癌との区別が困難で,特に小さいも のでは食道鏡検査の領域に属すると思われる場合 が多々あります.ただこの2例のように,短食道 を合併する場合が多いので,狭窄部に続いて,胸 腔内に持ち上げられた,胃の太いレリーフを証明 すれぽ,診断し得られますが,癌との鑑別には最

も慎重を要する疾患であります.

 次の問題は入口部から胃上部病変の診断であり ます.胃上部から下部食道にかかる病変は透視さ え慎重に行なえば比較的発見は容易ではありませ んが,入口部に近接して存在し,やがては食道に 及ぶであろうというような病変は,小さいもので

は,X線検査上,時に見落される危険があります.

私共は次に述べますようなルーチンの方法を行な っておりますので,症例を供覧しながら,噴門部 X線診断の手順を述べて見ます.先ずBaを一 口(30〜50cc)を含ませ服用させ,食道にひき 続き入口部の第一斜位の観察をいたします.病変 があれば,正面から次第に第一斜位に転位してや りますとBaの流れの異常が見られます.変化が あれぽ直ちに狙撃撮影いたします.次いで腹臥位

とし,空気150〜『200ccを注入しますと,前壁の Doublecontrastが得られます.そのままひつくり 返して背臥位とし,徐々に起こして45〜60。半立 位にしますと,上部後壁のDonble Contrastが得

られます.立位としてBaを更に1口のませ,上 部から脊隆部の撮影をいたします.圧迫その他,

幽門側の検査が終りましたら,充盈像を撮りま すが,食道を含めて胃充満像を撮影しますと,高 位小車側の変化を捉えられます.肥満した人で は,第一斜位ないし横位で撮りますと,後壁の小 変化を発見し得る事があります.充満,あるいは 半充満程度のBaが大部分流出するのを待って立 位又は半立位で撮影しますと,大玉高位の病変を 適確に捉える事ができますので,時にこの方法を 用います.充盈後Trendelenburg体位(頭15。低 位)にいたしますと,ヘルニアを観察する事がで

きます.

 下部食道で生理的なものに,スライドの如き横 隔膜上膨大がありますが,辺縁がやわらかくよく 動きますし,食道潰瘍における硬さ,またヘルニ ア,短食道の如き太いレリーフもありません.入 口部の正常像は,このように一様の薄いBaの同 型のひろがり,又は1〜数条のひだを示す場合と 種々ありますが,硬さ,不連結的な屈曲のないの

が特徴であります.

 入口部の狙撃撮影の症例をおめにかけます.入 口部直下に半球状の陰影が見られますが,右スラ イドでポリープ様の陰影がはっきり出ておりま す.前壁寄りにある場合は第二斜位にするとはっ

きりします。

 本章は前壁高位の潰瘍でありますが,もう少し 上の病変も,存在すれば出るような気がいたしま す.これは腹臥位のDouble contrast像でありま

す.

 後壁の変化は,半立位の撮影で比較的良く出る ようであります.右の充盈像で小弩のstarreダブ ルコントラスト像で,悪性潰瘍性の病変がよく

出ております.

 一度,背臥位として冑患部にBaを付着させ立

位にしますと,祝部の二重造影が得られますが,

この時のフィルムでこのように思わぬ所に変化を

見る場合があります.

 肥った人で,透視しても良く見えないような場 合,食道を含めた胃の充盈像で,小蛮高位の病変

を捉える事ができます.高位小蛮にR.andstarreが

あり,病変部の大きさは,第一斜位の写真よりは

っきりしています.

 第一斜位ないし横位にいたしますと,このよう に後壁の変化を表わし得ます,この突出部が癌で あります.

 一度入ったBaが流れ出した後,大蛮部高位の変 化をダブルコントラストで撮ったものです.大 后のTumor Schattenがはっきりいたします.

Trendelenburg位でのHerniaの症例であります が,ただ稀に噴門癌を合併いたしますので,やば

り慎重に注意する事であります.

 以上で大体のルーチンの検査法を申上げて見ま したが,現在まで消化器病センターで手術いたし

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ました65例の下部食道噴門癌を見ますと,半数以 上は合併切除をいたしており,早期のものは皆無

の状態であります.

 陰影欠損が5C皿を越えますと,姑息切除ないし は合併切除となる可能性が大きいという結果であ

ります.最後に,主要食道疾患の症状が示します

ように,食道疾患の場合でも胃症状を訴え,時に は胃疾患の場合でも食道症状を訴える場合があり ますので,胃症状を呈する者でも必ず食道を,ま た逆に食道症状を呈する者でも必ず胃を精査する ように習慣づける事が,早い癌を見出すための第

一歩であると考えております.

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参照

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