労働時間の例外 緩和規定の立法論的検討
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(2) 早稲田法学 会 誌 第 三 十 四 巻 ︵ 一 九 八 三 ︶. 一二〇. 者の保護として︑労働運動の発展とともに次第に全労働者の生命・健康を保護するものとして労働時間の規制が創設. されるに至った︒また同時にこのような労働時間の規制は帝国主義段階における資本間︵国内的・国際的︶競争にお. ける公正競争条件の維持︑ひいては国際社会の平和と安定の目的をもつものであり︑現代国際社会の存立条件ともな. ってきている︒そして︑この労働者保護と国際的・国内的公正競争の維持はlLO条約・勧告として示される国際. 的・普遍的な基準の遵守によってこそ実現されるのである︒かかる観点から問題を検討していきたい︒. ︵2︶. わが国の労働基準法︵以下労基法と略称する︶の労働時間法制はILO一号条約︵一九一九年︶・三〇号条約︵一九三 ︵1︶ O年︶などの国際的労働時間基準を基礎に︑アメリカ公正労働基準法およびソビエト統一労働法典︵一九二二年︶を参. 考に創設された︒その際︑わが国が敗戦後の復興途上あることなどの社会経済事情を考慮して︑当時の先進資本主義. 諸国で志向されつつあつた週四〇時間労働制︵ILOではすでに一九三五年に﹁労働時間を一週四〇時間に短縮する ︵3︶. ︵4︶. ことに関する﹂四七号条約が採択されている︶ではなく週四八時間制を採用し︑さらにILO一号・三〇号両条約に. ︵7︶. 比べてより広範かつ大幅な各種の例外・緩和規定を設けた︒そして戦後三八年を経た今日︑未だ当時の法規制水準に ︵5︶ 止まっている︒現在わが国が経済大国を自認し︑経済規模と水準を誇るまでになったにもかかわらず︑先進資本主義 ︵6︶ 諸国の水準︵週三五時間を要求する段階にある︶はおろか︑中進・途上国も批准している一号条約・三〇号条約でさ ︵8︶. ︵9︶. ︵10︶. え批准することができないままである︒そしてこのような法規制水準の下では︑高度経済成長期を通じての︑相対的. には大幅な労働時間短縮の実現をみたものの︑七七年の中央労働基準審議会﹁建議﹂や七八年の労働次官通達も指摘. な長時間労働が続けられている︒さらに最近の﹁ME合理化﹂に伴う労働形態・質の. するように︑e過長な所定外労働時間の恒常化◎年次有給休暇の低水準・低消化率◎週休二日制普及の停滞などによ って︑先進国としては躍異常.
(3) ︵11︶ ︵12︶ 変化は︑新たな労働強化U健康破壊を生み出し︑また企業経営的﹁合理性﹂を動因とする連続操業下の交替制・深夜 ︵13︶ 労働が増大し労働者の重大な健康問題を生み出している︒. したがって︑このような状況にあって労働者の生命・健康を守り︑人たるに値する社会的・文化的生活の享受︵憲. 法二五条︑労基法一条一項︶を保障していくためには︑まず第一に︑労働時間総量の規制︵一日および週労働時間の短. 縮︑時間外労働の上限設定︑有給休暇日数の拡大︶︑第二に時間帯等規制︵深夜業規制︑交替制・変形制の規制︑週. 休日の︵日曜︶特定など︶の強化︑第三に労働密度による時間規制︵OA機器操作時間規制など︶︑がなされなけれ ︵14︶ ばならない︒また同時にこれらの規制措置は︑雇用拡大︑老齢化社会に向けての対応︑国際的公正競争条件の確保・ ︵15︶ 国際協調という現在的課題にも応えるものである︒ ︵16︶ ︵17︶. しかし労働時間規制ないし短縮の具体的方法についてはこれまで政府・労働省は省令改正による一部手直しおよび. 行政指導にとどめてきた︒前記次官通達によれば法的規制は﹁労働時間・週休制等の実態が産業・企業によってさま. ざまであること︑コストアンプになる労働時間短縮等を中小零細企業を無視して一律に強制することとなるなどの問. 題があり適当でない﹂との反対理由が示され︑労使の自主性に委ねらるべきだとしている︒. だがしかし︑このような態度では十全な労働時間短縮は不可能であろう︒まず第一に︑実態の問題として政府・労 ︵18︶ ︵19︶ 働省の行政指導の強化にもかかわらず総労働時間数は減少に向わず︑週休二日制の停滞︑依然として低い年休水準が. 続いていること︒第二に︑わが国の労働組合は企業内組合形態をとっているため産業別・職業別協約の形で全国規範. 化︵U実質的制度化︶することができず︑また労働組合自体が強力でないこと︒第三に︑従来の労働基準監督行政は. 違反にたいし体刑を含む罰則規定をもつ労基法の厳格な適用を差控えるなど消極的姿勢をとっている︒労基法にもと. コニ. づく是正勧告以下の強制ヵしかない行政指導では︑現在の企業の姿勢−違反のやり得的発想1を改めさせることは困 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(4) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 二一二. 難である︒したがって現在のわが国において前述の三規制を実効あらしめるためには︑労働時間制の立法的改革およ び基準監督行政の強化が不可欠であろう︒. ︵20︶. 本稿ではこの課題に応えるべく︑労働時間総量規制のうち時間外労務の上限設定にかかわる諸点を検討する︒その. ︵21︶. 際︑労働時間の中核部分を占める所定労働時間の規制と時間外・所定外労働時間規制とは相互に連関して規制されな. ければ実効性がないと考えるので︑一日八時間一週四〇時間︵完全週休二日︶および三労働週の年次有給休暇を前提 として論じる︒. 昭和二二年三月六日衆院本会議における労基法の政府提案理由に明らかである︒. ︵2︶松岡三郎﹁労働時間制の﹃改正﹄問題﹂季労一〇八号八一頁︒同﹃条解労働基準法﹄八頁以下. ︵1︶. 法四〇条の特例労働時間の原則的廃止︵昭和五六年二月六日労働省令五号︶が最大の変更である︒詳細については︑約仕憲一郎﹁労働時間. ︵3︶有泉亨﹃労働基準法﹄法律学全集三〇二頁の表参照︒ただし法四〇条関係は一部を除き基本的に廃止された︒ ︵4︶. 昭和五五年版経済白書によれば︑一九七九年の国富約二二〇兆円︑国民所得約二二〇兆円であり︑一九六〇年比国富七・三倍︑国民総生産. の特例の廃止について﹂学会誌労働法五八号一二六頁以下︑小池郁雄﹁労基法四〇条﹂現代労働法講座十一巻一七〇頁以下参照 ︵5︶. =一丁八倍である︒一人当たり国民所得では六七九七ドル︵約七八年︶であり︑スイスの約六割︑アメリカ︑西ドイツ︑カナダの約八〜九割で. 働きすぎ. 批判・不公正競争力批判は免かれえ. あるがイギリス︵四九六一ドル︶イタリア︵四一五四ドル︶を上回る︒現在ではさらにわが国経済が発展してきていることからみれば全体とし て労働時間短縮の経済的可能性を十分に有していると思われる︒この点からみても海外からの 一号条約は三八ヵ国︑三〇号条約は二六ヵ国が批准している︒︵一九七七年現在︶. ないだろう︒. ︵6︶. ︵8︶ 総労働時間は最高の水準を示した昭和三五年で年二四三二時間︵サービス業を除く︶であったが︑最低水準を示した昭和五〇年には二〇六. ︵7︶労働時間の変形の限度︑﹃時的例外における増加時間の最大限度などが条約に抵触する︵詳しくは後に検討する︶. ﹁労働時間対策の進め方についての建議﹂中央労働基準審議会︑昭和五二年一一月二九日. 四時間へと約三 七 〇 時 間 も の 短 縮 を み て い る ︒ ︵9︶.
(5) 発基五六号昭和五三年五月二五日. ︵11︶強度の精神疲労︑眼精疲労︑局所・局部的障害などが指摘されている. ︵10︶ ﹁労働時間対策の推進について﹂労働事務次官通達. 〇%以上の産業は繊維︑パルプ・紙︑化学︑石油化学︑ゴム︑非鉄金属︑輸送用機器︑運輸通信業︑電気・ガス・水道・熱供給業となってい. ︵12︶労働省﹁賃金労働時間制度総合調査﹂によれぽ七五年から七九年の間に交替制採用率がO・六%︑人員O・四%増となっており︑採用率三. る︒. 活上も無理なく適応をはかることは不可能である﹂との指摘がある︒. 3 ︵ 1︶日本産業衛生学会﹁夜勤・交替制勤務に関する意見書﹂一九七八年によれば﹁交替勤務︑とくに夜業を含む交替勤務には生理的にも社会生. 時間法制の改革をめざして﹂参照. ︵14︶ この問題についての総合的な提言として︑労働政策研究会報告書﹁民主的労働政策確立の方向﹂︵一九八三年九月︶の第二部第三章﹁労働. 5 ︵ 1︶前掲次官通達においては︑時短の推進理由として①﹁自由時間の増大による労働者生活の質の向上﹂および高齢化社会への対応条件として. 要求闘争について﹂一九八二年一月一三日でも﹁①労働者福祉の向上②雇用需給の適正化③急速にすすむ高齢化社会への対応④一層の国際協. ②働きすぎ批判に対する﹁国際経済社会の中での協調﹂をはかるるため③﹁雇用の場の確保﹂を示している︒また労働四団体﹁労働基準法改正. 調﹂を労働時間等規制強化の理由として掲げる︒さらに使用者代表を含む前掲労基審﹁建議﹂もほぽ同様の認識を示しており一般的な時短の必. 昭昭五三年一一月一〇日施則一七条様式九号改正︑昭和五七年六月三〇日施則一六条一項・一七条様式九号改正など︒. 要性の認識は一致しているようである︒ ︵16︶. 規制の行政指導など︒. ︵17︶昭和五五年二一月﹁週休二日制等労働時間対策推進計画﹂︑昭和五七年六月三〇日労働省告示六九号の﹁目安時間﹂にもとづく時間外労働. 四四・七%五六年四七・八%であり︑とくに五四年以降三年では一・七%の上昇にすぎない︒労働省﹁賃金労働時間制度総合調査﹂各年九月. ︵18︶完全週休二日制は五・八%︵昭和五六年︶であり︑昭和五三年五・六%以降ほぽ横ばいである︒何らかの週休二日制にしても︑昭和五三年. 化率は六割を前後している︒. 現在の国際水準としてのILO二一三号条約および一一六号勧告の内容である︒. 山本吉人﹃労働時間の実務と法理﹄一〇九頁参照. 一壬二. ︵19︶労働者一人あたり一年間新規付与日数一五・○日︑消化されるのは八・三目︑消化率五五・三%右記﹁調査﹂五六年九月︑ここ十数年の消. ︵21︶. ︵20︶. 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(6) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 第一節時間外・休目労働の実態と問題点 ー統計資料を中心としてー ω﹁総労働時間. ︵2︶. ︵3︶. 一二四. 年間総労働時間は八○年現在一二六二時間︵五人以上企業・製造業生産労働者︶であり︑西ドイッ・フランス・イ ︵1︶ ギリス・アメリカと比較して約四三〇〜二八○時間︵約十一〜七週︶余計に労働している︒労働省の昭和六〇年目標. 1887 フランス. 1782. および. 表二. 173.6. 175.5. 178.2. 177.0. 182。7. 183.8. 182.7. 特に長い産業建設業(189.3)鉱業(187.4)連輸・通 労働省r毎月勤労統計調査」1982年. 信業(179.9). (168.6)サービス(169。9). 81年. 9 G. 所定外労働時間. である︒︵表一・二︶ ︵4︶. つながっていないため. り︑雇用量の増大には. て調達される傾向にあ. での時間外労働によっ. に労働力需要は経営内. いる︒のちにみるよう. 期五・七%増となって. ・八%増︑製造業で同. 一年現在で七五年比一. 年間二〇〇〇時間に対しても約一六〇時間の超過である︒総労働時間は七五年以降わずかながら増加しており︑八. イギリス. 各国の総労働時間比較. 1728. ・日本﹁毎月勤労統計調査﹂. 出所. 西ドイツ. 吋ω件螢ユの該Oω︑.. (105.7) (104.6) (100). 1888 ︵五人以上事業所︶. い勢げO. 金融保険(160.9)電気・ガス・熱・供給. 短い産業. 174.5. 5人〜29人. 171.9. 99人〜30人. 174.1. 499人. 177.4. 175.6 167.8. 製造業. (比). 171.8. 100人〜. 175.1. (101.8) (100). (比). 166.6. 500人〜. 175.2. (101.9). 172.0. 全産業. アメリカ. ・ILO︑︑塑﹄ま 冨 冒 O ︷. 時間. 2162 i 本 日. 81年 78年 75年 月間労働. 表一.
(7) 総労働時間の増加の最大要因は所定外労働が七五年以降相当な割合で増加していることにある︒所定内労働時間が. 八一年現在︑七五年比○・二%増にとどまっているのに対して︑所定外労働時間は二六・四%増︑製造業では七五.. 一二五. 八%増となっている︒そして総労働時間の増加の約九割が所定外労働時間の増加に起因している︒規模の点では五〇. 〇人以上の大企業での所定外労働時間の増加率が高くなっている︒︵表三・四︶ ︵5︶. ㈹時間外労働. 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶. 八一年十一月の全国の労働基準監督機関実施の調査によれば︑時間外労働を行なっている労働者の割合は︑週五時. 表三. 月間所定内. 労働時間 全. 産. 業. 162.9. 161.4. (100.9). (100). (比). 製. 78年. 75年. 造. 業. 161.7 (100.2). 161.9. 161.4. (102.0). (101.7). 158.7 (100). (比). 81年. 39:54 上ヒ. 1000人〜. (100). 43二18. 100人〜. (108。5). 999人. 45:09. 30人〜99人. (113.2). 労統計調査」1982年 労働省r毎月勤労統計調 週当り,r賃金労働時間希 1働時間制度総合調査」. 81年の例(週当り) 長時間. 建設業(46:1 00),運輸・通信業(45:21),鉱業. のもの. (45:16). 短時間熱ガ郵39:58),保険・金融(40:09),不動 のもの. 産(41:00). 表四. 所定外 労働時間 全産業 (比). 製. 造. 75年 10.6 (100). 業. 9.1. (100). (比). 全産業 500人〜. 10.7. (9.7). 11.4. 499〜100人. (8.6). 99〜30人. (9.0). 10.4. 労働省r毎月勤労統計調査」1982年 下段の(. )内は製造業. 78年. 81年. 12.3. 13.4. (121.9). (126.4). 13.7 (147.5). 14.5. (15.0). 12.5 (13.2). 12.8 (12.7). 16.0 (175.8). 17.3. (19.5). 13.1. (15.1). 11.4 (13.1).
(8) 表五. 早稲田法学 会 誌 第 三 十 四 巻 ︵ 一 九 八 三 ︶. 高いもの 金融保険業98・7%運輸通信業97・9%菓蕊薦桑95・8%. 締結率. 80.5%. 92.2%. 97.1% 55.5% 計). 11.7%. 4.9% 25.0%. 労働時間 労働者数 割 合. 55.5%. (累. 15〜20h 10〜15h. 5〜10h. 〜5h. 週当時間外. サービス業88・7% 鉱業88.7% 不動産業80.4%. 低いもの. 7,3%. 無 92.7%. 有. 時間外労働 協 定. 全国労働基準監督機関によるr三六協定及び労働者の時間外休日労働の実態調査」季労125号 21〜23頁より作成. 一二六. 間を超える者四四・五%︑十時間を超える者も一九・五%に達し ︵6︶. ている︒つまり全労働者の半数近くが輔日平均一時間を超えて︑. 五人に一人が一日平均二時間を超えて労働している︒. ︵7︶. 同調査によれば時間外労働協定︵三六協定︶の締結率は全事業. 場の九二・七%にものぼり︑しばしば指摘されるように協定を締. 結せずに法定時間を超えて労働させる法三六条違反の存在︵一〇. 人未満の零細事業場に多いといわれるが︑それ以上の規模の場合. にもしばしばみられる︶を含めれば︑さらに多いことが推測でき. まとめ. る︒︵表五︶. ㈹. 以上のことから︑ほぼ全事業場において時間外労働が前提とさ. れて事業運営がなされていること︒女子を含む労働者の半数近く. 残業. と. が一日当り平均一時間を超えて時間外労働を行なっていることが 明らかになつた︒. そしてこの時間外労働を含む所定外労働時間︵通常. 称されている︶の増加は総労働時間の増加の大きな要因となって. いる︒こうした傾向は製造業および五〇〇人以上の大企業におい. て顕著である︒もっとも中小企業では所定内労働時間および総労.
(9) 働時間は大企業 よ り 長 く 重 大 な 問 題 で は あ る ︒. また統計上は時間外・所定外労働として現われない法四一条二号適用の管理職労働者の. 超過労働. の問題があ. る︒管理職労働者は︑先進国共通の現象としての業務内容の複雑化・労務管理業務細密化・時間管理の厳格化などに. もとづく管理職としての職務内容の濃密化・強度化により︑また︑長時間労働化することにより︑生命・健康を脅か. に労働時間規制を免かれようとする動きが存在している︒. 四〇時間労働制および三労週を上回る年次有給休暇などによって所. 脱法的. されてきている︒さらに法四一条二号の場合︑行政官庁の許可を受けないでも労働時間規制の適用を除外されること. を利用して︑少額二定の管理職手当と引換えに. こうした実態をふまえるならば︑週休二日制. 定労働時間の短縮をはかると同時に︑時間外労働および﹁法内超勤﹂を含めた恒常的過長な所定外労働の削減に向け. ︵1︶. 七五年は石油ショック後の不況で史上最も労働時間が減少した年であった︒. 年問所定 外 労 働 時 間 ま た は 約 四 労 働 週 に 相 当 す る ︒. 労働省﹁週休二日制等労働時問対策推進計画﹂一九八○年十二月. て具体的・実効的措置が講じられなければならない︒. ︵2︶. 労働協約・就業規則等に定められた労働時間を超過する労働時間. ︵3︶ ︵4︶. 労基法所 定 の 労 働 時 問 を 超 過 す る 労 働 時 間. 一二七. たとえば野沢浩﹁八時間労働制﹂現代労働法講座十一巻一三九頁は﹁三多摩における労働時間の実態﹂昭和五六年三月︒および﹁未組織事. ・準・拘束時間を加えると十四時問が労働関連の時間となる一 ︒〇時間が睡眠・食事を含めた私生活時間として残るにすぎない︒. 一日二時間の晦冊外労働をした場合︑法定の八時間および休憩一時間で一日当り十一時間の拘束時問となり︑大都市圏での一旦二時間の通. ︵5︶. ︵6︶. 勤. 業所における労働条件の実態﹂の両調査にもとづき同様の指摘を行っている︒. ︵7︶. 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(10) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 第二節現行法のしくみと問題点. 当然. 一二八. 視され許容される大きな要因として︑労働時. すでに指摘したように︑管理職労働者を含めたすべての労働者の恒常的かつ過長な労働時間が︑ ﹁青天井﹂といわ. れる無制限の所定外・時間外労働という形で存在し︑社会的に. 間原則の例外・緩和規定︵法四一条適用除外︑四〇条特例労働時間︑三三条.三六条一時的例外︶の存在があげられよう︒. 労働時間︵三二条︶・休日︵三条︶・休憩︵三四条︶に関する規定の全面的適用除外︵法四一条一.二.三号 施則二. 以下では適用除外・一時的例外について問題点を指摘する︒ OD. 三条︶本条の趣旨は︑これらの労働形態が監視︵督︶ないし断続的なもので︑労働密度が比較的低く︑労働時間等の ︵1︶ 保護規定を適用しなくても本条各号該当の労働者の具体的保護に欠けることがないとの判断から︑適用除外をしたも. のとされる︒そうでなければ︑この規定の合理性はない︒したがってこの観点から検討を加える︒. O法四一条一号 法八条六号︵農林等事業︶および七号︵畜・水産事業︶の事業に従事する者について︵行政官庁 の許可不要︶. 天候・季節等の自然条件に左右されやすく労働時間・休日・休憩を画一的に実施することが困難であること︑ま ︵2︶ た︑作業の中断・休業時に休憩・休息が十分にとれるとの理由で適用除外とされた︒たしかに自然条件との関係で一. ︵4︶. ︵5︶. 定の特殊性は認められる場合があろうが︑現在では技術的改良︑交通・流通などの社会的条件の変牝により自然条件 ︵3︶ に労働が左右されることが少なくなくなってきた︒たとえば︑清酒製造の醸造・精米部門などは醸造管理技術の発達. により合理性を失ってきている︒また従来の行政解釈・通達では︑農事・畜産試験場あるいは鯨解体処理業など本号. 適用を必要とする特殊性の存在自体が疑間視されるものもある︒したがつて︑機械化等にともない作業自体の強度..
(11) 密度が高まってきていること︑全社会的な社会的・文化的生活時間の重視の意識の高まりなどと合せて︑一律的全面. 的な適用除外の合理性は失なわれている︒労働時間原則を適用すべきである︒自然条件に応じて個別に特殊例外的に. 労働時間の変形とその手続︑一斉休憩の除外︑休日の振替・変更などの一定の緩和が︑個別具体的に許可される場合 を設ければよいであろう︒. 事業の種類のいかんにかかわらず管理・監督者および機密取扱者︵許可不要︶. ︵6︶. ○同二号. 初期の通達が示すように労働時間を自己管理しうる管理職等を想定して設けられたものであり︑これらの者は保護. しなくとも人間らしい生活ができるという趣旨であった︒世界的︑全社会的な企業間競争の激化・企業規模の拡大な ︵7︶ どにともなって︑管理職労働者の社会的地位︑労働環境・条件の変化が生じたため従来 優雅 であったこれらの管. 理職労働者の労働は量的・質的増大を余儀なくされ︑生命・健康︑個人生活が脅かされる事態が生じてきている︒ま ︵8︶ たこのことはわが国の銀行の例にみるように︑本来︑本号が適用さるべくもない範囲の管理職労働者への資本の手に. よる適用外除外範囲の拡大の企てともあいまって︑一層大きな問題を生み出した︒たとえば︑昭和五十二年通達以前. では︑ある銀行の男子従業員の六〇%が役付とされ適用を除外されていた︒したがって管理職労働者の生命・健康を ︵9︶ 守り︑社会的文化的生活の享受を保障する抜本的措置が必要である︒. また︑かかる状況を反映して国際的レベルでも︑ILO一一六号勧告︵一九六二年︶は︑ILO一号条約・同三十号 ︵10︶ 条約では設けられていた管理・監督者の適用除外はおろか︑例外規定さえ設けなかった︒しかも発展途上国を含め圧. 倒的多数が賛成した︵日本政府は反対−三壬二票対二二票の圧倒的少数派︶ことが重視されるべきであろう︒. 一二九. これらの情況にてらせば︑本号は廃止して一時的例外を適用すべきである︒なお三六協定当事者の自主性保障との. 関わりで︑管理職労働者を対象とする時間外労働協定が考えられるべきだろう︒後述する︒ 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(12) 行政官庁の許可を受けた監視・断続労働者について︵許可を要件︶. 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 〇同三号 ︵11︶. ︵11︶. 一三〇. 監視労働者は行政解釈では﹁原則として︑一定部署に在って監視するのを本来の業務とし常態として身体又は精神 ︵12︶. ︵13︶. 緊張の少ないもの﹂とされ︑断続労働者とは﹁休憩時間は少ないが手待時間が多い者﹂であって﹁手待時問と作業時. 間の折半程度まで﹂のものとされている︒また︑実際にかなり厳格な運用がなされており大きな問題を生じていない ともいわれている︒. しかし︑労働密度は低いといえ︑極端に長時間の拘束を許すべきでなく︑一日当りの最長拘束時間およびILO看. 護職員勧告三〇項⑥で示されている﹁不便な時間﹂のような深夜︑早朝にわたることが想定される場合の深夜・早朝 割増賃金などが設けられるべきであろう︒ ︵14︶. 労基法施行規則二三条︵許可を要件︶. 行政解釈によれば︑本務外の宿・日直勤務で断続的な業務について︑法四一条の規定の具体化として設けられたと ︵15︶ され︑宿日直労働の内容︑頻度についてかなり限定的に運用されている︒法四一条三号は本務としての監視断続労働. を許可するものであって︑本規則は四一条三号を根拠規定とすることはできないとして︑本務外の宿・日直について ︵16︶ 法律によらず施行規則で許容を規定していることなどに対する違憲性が指摘され︑あるいは条文で法三二条の特例で ︵17︶. あることだけ示されているにもかかわらず三四条・三五条までも適用除外する行政解釈の妥当性が疑問視されてい. る︒合憲︵その多くは限定解釈をしている︶説のなかにあっても︑将来的な廃止を示しているほどである︒これら. ㈹. 法三三条非常災害時の時間外・休日労働の許容. 法三二条︑三五条︑四〇条︵労働時間・休日︶についての一時的例外. は︑法三六条時間外労働︑法三二条の変形︑同三五条の振替などで処理が可能であり︑削除されるべきである︒. ω.
(13) 法はその要件として①﹁災害その他避けることのできない事由﹂②﹁臨時の必要がある場合③﹁その必要の限度に. おいて﹂④﹁行政官庁の許可を受けて﹂︵事態急迫の場合︑事後の屈出も可︶を設けており︑また非常の災害・不可. 抗力的なものにすべくかなり厳格な運用がなされているので実態上の問題は少ないといわれている︒しかし︑要件を. 安易かつ形式的に解することによって︑濫用される危険はある︒したがって︑より明確な要件とすることが好まし. い︒その際にはたとえば茨木市事件︵昭和四三年一月十八日大阪地決︶のように︑予見が可能であって当然対策を講じて. おくべき程度のものの場合は︑水道事業のように公益性が強く住民への影響がかなりあるとしても︑安易に適用され ︵18︶ るべきでないという姿勢が貫かれるべきであろう︒また公益性とかかわって国鉄荒尾駅事件︵昭三七︑八︑七︑福岡高判︶ ︵19︶ ︵日鉄法の問題ではあるが︶や昭和三四︑五︑二八基収三一〇三号の解釈は問題である︒鉄道という公共性︑公衆へ. の影響を理由にストライキ後の処理などに安易に適用を許すべきではなかろう︒原則的には労使紛争は不可抗力の部. 類には含めてはならない︒個別労働者の労働義務については︑この条項は免罰規定であり︑当然には発生しないので 個別的または集団的な合意が必要と考える︒. また︑この規定によって時間外・休日に︑おそらくは通常より困難ないし危険な労働を余儀なくされるであろうか. ら︑割増賃金のみならず健康・生活の回復を保障する観点から代休等が与えられるべきである︒. 同三項の規定は法八条一六号該当の非現業公務員について︑①﹁公務のために﹂②﹁臨時の必要のある場合﹂に時. 間外・休日労働をさせることができる旨を定めている︒﹁公務のため﹂という要件が緩いものであって︑一項の場合. に比して安易に時間外労働を行なわせる事態を生みだしている︒法三六条の規定によらず労働させることができる旨. の規定だとする解釈もみられる︒公益の保護の必要については一項の規定により対応しうるのであって︑かかる緩和. コ一二. 規定は合理性が認められない︒非常災害時以外については三六条の適用によって対応がなされるべきである︒ 労働時問の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(14) @. 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 三六条時間外・休日労働の許容. 一三二. 八時間労働制が人たるに値する最低条件を定立し︑すぺての労働者に保障するものであるのであれば︑三三条︵非. 常災害︶の場合はともかくも経営上の都合を考慮しなければならない理由は存在しないと考えるべきであろう︒しか. しILO一号条約以来国際基準において常に経営的配慮が置かれてきたこと︑などにみられるように現状では時間外. 労働が全社会的な制度として機能している側面を無視して法令のみで廃止しても実効性は疑わしいであろう︒. したがって法の趣旨は臨時に労働者を得ることが実際上困難ないし不可能な場合に対応しうるように労使協定締結. および届出を要件として時間外・休日労働を許容するものであって︑あくまで例外的︑一時的なもののみを許容する ものと解すべきである︒. しかし︑実態において指摘したように過長な時間外労働を無制限に許容するものとなっている点が最大の問題であ. る︒これを適正なものにするためには︑第一に延長時間の最大限度を設けること︑第二に労使協定手続を適正化し︑. 協定締結について労働者の自主性を担保にすること︑第三に時間外労働の補償として高率の割増賃金を労働者に与. ﹁公の機関﹂が﹁増加時間の最大限度﹂を定めるように規定している理由もこ. え︑使用者に対する経済的歯どめをかけること︑である︒とりわけ第一の措置が有効かつ重要である︒したがってI LO一号条約・三〇条約においても︑. こにある︒裏返して言えば︑わが国がこれらの条約を批准しえない最大の理由となっているこの規定が︑最も重要な ︵20︶ ポイントであるということである︒この点では昭和五七・六・三〇労告六九号別表により﹁目安時間﹂が設けられ ︵21︶ て︑過長な時間外労働に対し指導・助言がなされることになつたが︑①限度時間が長い②例外の存在③強制力に欠け. る等の問題があり十分なものではない︒ ︵22︶ また第二の点について︑協定締結者として労働者代表が﹁部長﹂等の労務管理上の使用者で占められる場合が非常.
(15) に多いとの調査をもとに︑昭五三年十一月十日施則一七条・様式九号改正により︑屈出の際に︑代表者の職・選出方. 法の監督が可能となつた︒しかし︑様式でなく︑少くとも︑施行規則本文に明確に規定さるべきものであろう︒. 第三の点については︑現在の二割五分以上の割増率は低すぎる︒と同時に重複の場合の加算を明確にすべきであろ. う︒基礎となる賃金についても一時金等が含まれない場合︑賃金体系によっては労働者に著しく不利であるので改善 ︵23︶. を要する︵この点は三七条にかかわる間題である︶. 第四に学説︑判例の争いがあるが︑労働時間の法的規制が労働者の人間らしい生活を保障するものであることから して︑時間外労働は個別労働者の自由な意思に委ねられるべきである︒. 坑内労働・危険有害労働については︑労働者保護の観点を徹底させて時間外労働は禁止さるべきである︒. の 法三七条 割増賃金. 現在の法制度では︑いわゆる法内超勤の賃金支払について全くの契約自由に委ねられると解される余地があり︑例. 外労働に対する補償および経済的抑制という趣旨からみて妥当ではない︒また︑法内超勤とはいえ内容を明確にし︑ 監督・指導していけるよう協定を結ぶことを義務づけるべきである︒. ︵2︶. ILO一一六号勧告G壬二項では﹁この勧告は︑農業︑海上輸送及び海上漁業には適用しない︒これらの経済活動の分野については︑侍別. ︵1︶松岡三郎﹁監視・断続労働﹂季労六九号九〜一〇頁. また︑船員労働に関するILO七六号条約二条二項⑥︑九三号条約二条二項⑥一〇九号条約二条二項⑥はいずれも﹁漁掛又はこれと直接関係. み規定な設かを噂ぎである︒﹂として特殊性を承認しているが野放しにする意図ではない︒. しかし農業については︑主要適用対象を﹁熱帯又は亜熱帯﹂のプランテーションに限定するものの︑ILO一一〇号︵農園︶勧告V二八項以. がある作業に従業する船舶﹂を適用除外している︒. 一三三. 下は一日八時間週四八時間を原則とする︒また交代制例外︵一一二項︶五六時間︑一時的例外等についても最大限度︵三二項︶割増賃金を義務づ. 労働時問の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(16) 早稲田法学 会 誌 第 三 十 四 巻 ︵ 一 九 八 三 ︶ け︵三三項︶ている︒.このことは農業については特殊性の考慮がこの程度にとどめうることを示唆している︒. ︵4︶. 昭和二五年卵二月一八日基発二〇八号. 昭和二三年 六 月 一 六 日 基 収 一 ︑ 九 三 三 号. ︵3︶昭和二八年五月四日基発三六嚇号および昭和二九年一一月九日基収五六壬二号 ︵5︶. いる︒. コニ四. ︵6︶昭和一三年九月ニニ日発基一三号︑管理・監督者およぴ機密事務取扱者とともに﹁出社・退社等について厳格な制限を受けない者﹂として. ︵7︶松岡三郎﹃合理化と労働基準法﹄六〇頁︑山本吉人﹃労働時間制の法理論﹄四八頁以下など参照. ている︒. ︵8︶ この点の指摘は多い︒やや古いが松岡前掲論文九頁ではある県の労基局の調査では法四一条二号違反は八○%にのぼっていることを紹介し. ズな管理職取扱の歯止め的役割は果した︒しかし前記注︵6︶引用の通達の立揚︵出退勤の制約の有無. 人間らしい生活の維持が可能か︶から. ︵9︶ ﹁金融機関における管理監督者の範囲について﹂昭和五二年二月二八日基発一〇五号および昭和五二年三月七日基発一一九号は従来のルー. ﹁重要な職務と責任を有し︑現実の勤務態様も︑労働時間等の規則になじまない﹂という立場に移ったことは見過すことはできない︒発想の根. この経過について石黒拓爾﹁第四五回I﹂0総会における労働時間短縮問題﹂昭和三六年八月﹃労働時報﹄︑松岡三郎﹁管理職手当と時間. 底において企業の人事管理上あるいは営業政策上の必要性・合理性に支配されている︒. 外賃金﹂労旬九四一号二一頁︒. ︵10︶. 2 ︵ 1︶. 昭和二三年四月五日基発五三五号. ︵11︶ 昭和二二年九月ニニ日発基一三号. 昭和二二年九月ニニ日発基一七号は﹁常態として殆んど労働する必要のない勤務のみを認める趣旨である﹂として許可基準を示している︒. 昭和二三年三月一七日基発四六四号. 四月五日基収一三七二号など. ︵13︶不許可となったものは次のようである︒新聞配達人昭和二三年二月二四日基発三五六号︑運転時閲五時間以上のタクシー運転手昭和壬二年. ︵14︶. また昭和二三年四月一七日基収一〇七七号は︑日直は月一回︵以内︶宿直は週一回︵以内︶を許可基準とする︒. ︵15︶. ︵16︶松岡三郎﹃条解労働基準法﹄五六五頁︑青木宗也﹃個別的労働関係法﹄一三九頁︑など. ﹁時間内職場大会の開催により国鉄列車の正常な運転に支障を来たす事態が予測された場合﹂には適用できる︒. 7︶蓼沼謙一﹃労働時間・残業・交替制﹄一九五頁 ︵1. ︵18︶.
(17) ︵20︶. 一週間一五時間︑二週二八時間︑三週三九時間︑四週四八時間︑一箇月五〇時問など︒. ︵19︶春闘時の闘争で運転関係業務の混乱が予想されたので非番職員に時間外の代替勤務命令の事後届出の疑義伺に対し容認した︒. ︵21︶①工作物建設の事業︑②自動車運転の業務︑③新技術・新商品等の研究開発の業務④季節的要因により事業活動若しくは業務量の変動の. 著しい事業若しくは業務上又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として労働省︑労働基準局長が指定するもの︒. ︵22︶同調査をもとに﹁労働時間短縮の行政指導について﹂基発三五五号昭和五三年六月壬二日はω使用者の一方的指名@親睦会代表者囚一定の. とえば︑会社の労務部長など︶の事例を指摘する. 役職者が自動的に目一定範囲の役職者の互選⁝囚選出された者が︑事業場全体の労働時間等労働条件の計画・管理に関する権限を有する者︵た. るが︶. ︵23︶就業規則又は労働協約に超過労働義務が明記されている場合であって三六協定が成立している揚合に残業義務を認める説︵細かな差異はあ ︒労働省労働基準局﹃改訂新版労働基準法﹄. ︒松岡三郎﹃条解労働基準法﹄など多数. ︒有泉亨﹃労働基準法﹄. ︒日立製作所事件︵東京高判昭和四六年一旦三日︑労民集二二ー一︶など ︒沼田稲次郎﹃労働法論﹄上. 労働者個人の同意を必要とする説. ︒明治乳業事件︵東京地判昭和四四年五旦三日労民集二〇ー三︶など. ︒山本吉人﹁三六協定と残業拒否闘争﹂野村教授還暦記念論文集など多数. 第三節法改正の方向. 全面的適用除外について. 実態および現行法の問題点をふまえて以下のように改正されるべきである︒. ω. 一三五. O法四一条八条六号・七号の事業であって﹁季節的および気候的制約等﹂ により 法三二条︑三四条︑三五条の 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(18) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 一三六. 労働時間・休憩・休日の規定を順守することが困難なものについては︑行政官庁の許可をえて一斉休憩の除外︑労. 働時間の変形︑休日の振替・変更の幅および手続を緩和することができる︒ ︵1︶ ︵a︶ 労働時間の変形の場合特定の日においても一四時間を超えて労働させることはできない ︵2︶ ︵b︶ 休日の振替について︑振替日の特定が困難な場合︑労働者のその都度の合意により労働させることができ る︒この場合速かに代休を与えなければならない︒. ○同二号 削除︵ただし法三六条の労使協定に︑管理者および機密事務取扱者と使用者との間の協定を設ける︒︶ ︵3︶ ○同三号 本号の労働は実労働時間が八時間以内のものとする︒一日当り最長拘束時間は十四時間をこえないもの とする︒深夜・休日労働については割増賃金の規定を適用する︒. 非常災害時. 一時的例外について. O施則二三条廃止する︒ ㈹. ④ ︵4︶. 〇三三条一項⑥﹁臨時の必要がある場合﹂を﹁人命・身体・健康等の公益又は事業の存続等財産を保全する臨時の 必要がある場合﹂とする︒ ︵5︶. ㈲労働者の個別的合意によらなければ労働義務は生じないものとする︒. ◎事由の終了後︑使用者は遅滞なく労働させた時間・休日に相当する労働時問の短縮または代休を与えなければ ならない︒. 廃止︵一項に統一させる︑同旨の日鉄法三三条等は廃止し︑一項に則して改正する︶. ○同二項廃止 ○同三項.
(19) ︵ロ︶ 労使協定にもとづく場合. ︵6︶ O法三六条@﹁一時的な業務繁忙等の事由により臨時の必要のある場合﹂に限り︑労使協定を締結し行政官庁に屈. 出する場合には︑三二条・三五条・︵四〇条︶の定める労働時間・休日の規定を超えて労働させることが許され る︒. ︵8︶. ︵7︶ ⑥最大延長時間限度は一日二時間︑四週二四時間︑年一五〇時間以内とする︒なお交替制であって作業態勢上不. 可欠の理由のある場合︑行政官庁の許可を得て︑一日二時間の限度を超えて時間外労働させることができる︒. ⑥労使協定は以下の二種とする︒労組法二条但書一号に該当しない労働者の過半数を組織した組合または過半数 ︵9︶ 代表者と使用者との協定︑および労組法二条但書一号該当の労働者の団体または過半数代表者と使用者との協定︒ ︵10︶. 労組法二条但書一号該当労働者に関する協定の場合は︑五年の経過期間を設け︑この間︑前記㈲の最大延長限度. ︵11︶. の規定を適用しない︒五年経過後︑一週一五時間︑四週四八時間︑年二五〇時問以内とする︒︵将来的には一致さ せる︒︶. ︵12︶. ⑥代表者の選出は原則として直接無記名投票により行う︒. ⑥協定期間は三ヶ月以内とする︒自動更新・自動延長規定は設けることができない︒︵将来監督機能の強化をま って一ヶ月以内とする︒︶. 一三七. ㈹行政官庁は時間外労働が恒常化している場合には︑該当事業場に対して必要な指導・助言を行うことができ る︒. 危険有害業務・抗内労働の時間外労働を禁止する︒. ⑧労働者のその都度の個別的合意によらなければ労働義務は生じない︒ O同条但書. 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(20) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 一三八. ○法三六条二項︵新設︶使用者は労働協約・就業規則等に定める労働時間を超えて労働させる場合には︑三二条︑. ︵13︶. 三五条︑四〇条に定められた労働時間︑休日の規定を超えない場合であっても︑三六条の協定を締結して届出なけ ればならない︒. ︵14︶. O法三七条一項 計算額の割増率を変更し︑労働時間を延長した場合には五割以上︑休日または深夜に労働させた 場合には十割以上とする︒各々の重複する場合には加算した率で計算する︒. ︵15︶. ○法三七条二項︵新設︶@三六条二項により労働させた場合︑通常の労働時間の計算額を下回らない賃金額を支払 わなければならない︒. ㈲労働者のその都度の個別的合意がなければ労働義務は生じない︒. O法三七条三項︵旧二項︶計算の基礎となる賃金について︑施則二一条三号・四号を削除する︒. ︵1︶農林・水産業が季節・天候に左右されるにしても特定の一日に労働しなければならない時間は︑多くの場合船員とりわけ漁船員の操業中の. に関する省令﹂昭昭四三年十月一日における操業期間中の休息時間︵第五条一項︶を参考に設定した︒なお︑ILO一一〇号︵農業労働者の雇. 労働時間以上に労働しなければならない理由は少ないと思われる︒したがって︑運輸省令四九号﹁指定漁船に乗り組む海員の労働時間及び休日. 用条件に関する︶勧告V二九項は一日八時間︑週四八時間を原則として︑変形による一時間延長を認めるにとどまる︒ ︵2︶個別労働者の意思にチェック機能を与えるために設ける︒. 十四時間以下に抑制すべきである︒第一節注︵6︶参照. ︵3︶従来の行政解釈︵昭和壬二年四月五日基発五三五号など︶によれば﹁手待時問と作業時問の折半程度まで﹂となっているが︑休憩を含めて. 緊急時を想定し︑かつ公益を擁護するという点から﹁その都度﹂に限定する必要はないと判断した︒. ︵4︶要件を厳しくするとともに︑公益上の必要性を満しうるようにした︒ ︵5︶.
(21) ︵6︶. 現行三六条が時間外労働の一時性・例外性を明確にしていない点を改めた︒. ILO四三号および四九号条約︵ガラスエ業に関する︶は三条一項bで﹁交替班の一人又は二人以上の班員の予見せられざる欠席を補ふ為. ︵7︶法六一条の女子の時間外労働限度を基礎に︑特定の繁忙な週での時間外労働の集中および休日労働を許容すべく緩和している︒. の場合﹂に﹁企業の通常の操業に対する重大な障藤を除去するに必要な限り﹂で時間外労働を許容している︒また一九三五年ドイツ労働時間令. ︵8︶. は七条二項では﹁作業態勢が重大な場合には労働協約により﹂八条二項では﹁作業態勢とか公共上の緊急的理由などにより延長が要求されると. まず第一に労働者なので﹁役員﹂等の経営者およびその代理人は除去される︒たとえば昭和二三年一月九日基発一四号・法人等の﹁代表者. きに限り︑営業監督局﹂が一日一〇時間以上の労働を許可できると定めている︒これら両者を参考に規定を設けた︒ ︵9︶. 第二に労組法二条但書一号のいわゆる使用者の利益代表者の範囲は︑組合の自主決定に委ねらるべき側面を有するので︑各個別具体的事例に. 又は執行機関たる者﹂あるいは昭和⁝二年三月一七日基発四六一号・﹁法人の所謂重役で業務執行権又は代表権を持﹂つ者は労働者ではない︒. おいて範囲が変動することも考えられる︒この場合労基法の構成要件明確化の要請と抵触するおそれもあるが︑同号該当者も非該当者も︑役員 うるが︑同号該 当 者 は 広 範 す ぎ る と 思 わ れ る ︒. を除いて協定締結対象者となるので不合理さは緩和されるであろう︒行政解釈の代表例としては昭和二四年二月二日発労四号︵内容略︶をあげ. 告示六九号︵昭和五七年六月三〇日︶二条別表の﹁目安時間﹂を参考とした︒. 昭和二七年改正前は﹁三ヵ月以内﹂︑二九年改正までは協約による揚合一年︑その他の揚合﹁三ヵ月﹂であった︒. 十人以下の事業揚では選挙以外の挙手等の方法をとることも許容されよう︒. 一時的・例外的との法趣. ︵10︶ ﹁労働基準法第三十六条の協定において定められている一日を超える一定期間についての延長することができる時間に関する指針﹂労働省. 1 ︵ 1︶. アメリカをはじめ多くの例がある︒. 旨をつらぬくには︑長期間は好ましくない︒. ︵12︶. ︵13︶. れないよう確認規定として﹁下回らない﹂を設けた︒. ︵14︶ 法内超勤に割増賃金を課した場合︑却って所定労働時間の短縮に使用者の抵抗が大きくなると思われる︒また低額の﹁手当﹂などで済まさ. 支払われるものなので︑当然﹁基礎賃金﹂とされるべきである︒. 一三九. ︵15︶ 三号﹁臨時に支払われた賃金﹂︑四号﹁一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金﹂は賞与・一時金・報償金等であり本来労働に対応して. 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(22) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. おわりに1実効性ある規制とするためにー 労働時間の規制方法について論じてきたが︑最後に二つの点にふれておきたい︒. 一四〇. まず第一に効果的な労働時間規制を通じて労働時間短縮を行うためには︑賃金条件の切下げを伴っては人間らしい. 生活の享受の保障とはならないので︑これを制約すべきである︒ILO四七号条約一条a項が﹁生活標準の低下を来. さざる様適用せらるべき﹂と示し︑同一一六号勧告が﹁労働時間の短縮が行なわれた時における労働者の賃金を減少 ︵1︶. させることなく﹂と示しているようにこの点は重要である︒詳しくはふれる余裕はないが︑労働時間法制に賃金水準. 切下げを禁じる旨を規定し︑さらに性差別規制・パート規制︑派遣事業規制を強化するとともに︑労働組合運動・労. 働者の自覚に支えられた賃金政策︑中小企業政策を含む産業民主化政策が実現されなければならないであろう︒この 点は極めて重要である︒. 労働基準監督署の役割は重要であった︒たとえば法四一. つぎに︑実効性のある労働時間規制実現のために︑極めて重要な位置を占める労働基準監督体制について指摘して おきたい︒本稿で検討した諸規制においても﹁行政官庁﹂. 条三号︑施則二三条︑法三三条一項本文などでは監督署の﹁許可﹂が必要であり︑法三三条一項但書・法三六条では. 屈出が要件である︒さらに法三三条・三六条等の違反については︑法一一九条・一二〇条による懲役または罰金が課. せられる︒監督官はこれらの指導・勧告を行い︑この法律違反の罪について﹁司法警察官﹂としての職務を行う地位. にある︒ところが︑現状では労働基準監督当局・官は十全にこの任務を果しえていないのである︒. その原因としてまず第一に︑労基法制定以来三六年間に労基法適用事業場が約六倍となったにもかかわらず︑労働. 基準監督署数は当初の三三六署から三四八署へと一二署の増加にとどまっていること︑また労働基準行政職員の定員.
(23) は昭和五〇年から五七年の間に都道府県労働基準局三︑二二五←三︑一〇八人︑労働基準監督署五︑三三九←五︑二. 五四人へと削減され︑監督官の定員は約三︑二〇〇人にとどめられていること︒したがって第二に︑年間監督実施率. が約六%にすぎないこと︒第三に︑定員削減を補うために委託契約による非常勤公務員でさえない﹁相談員﹂が基準. 関係︵局・署︶で構成率一一〜二〇%のところが四二・五%に達していることなど︑憲法二七条二項の趣旨およびI ︵2︶. LO八一号︵工業及び商業における労働監督に関する︶条約の原則︵年一回の臨検・監督を前提とした人的物的条件. の整備など︶に反するものとなっていることがあげられる︒さらに現在進行しつつある第二臨調答申にもとづく﹁行. 政改革﹂において︑機構改革の一環として︑﹁行政組織の減量化・合理化﹂11労働基準監督署三四八署のうち一五署 ︵3︶. 程度の整理・定員七%程度縮減がうちだされていることも無視できない︒これが実現されるとさらに一層監督体制は 弱化してしまうであろう︒. ︵1︶. 前掲労働政策研究会報告第三部﹁3︑労働基準監督署︑公共職業安定所の配置﹂. オースト ラ リ ア 一 九 七 〇 年 労 働 時 問 法 に み ら れ る ︒. 一四一. 労働時間規制を実効性あるものにし︑人間らしい生活の享受を実現する立場からは︑労働基準監督およぴその体制 ︵4︶ の強化こそが不可欠であって︑少くとも年間一回の監督・臨検が可能な人的・物的体制が保障される方向で改善され. ︵2︶. ひとつの財政的可能な改善案として︑右報告書第三部﹁4︑労働行政と財政﹂三一一二頁. 同右. るべきであろう︒. ︵3︶. 三二〇頁以下. ︵4︶. ︵付記︶. 労働時間の例外・緩和規定の立法論的検討︵松尾邦之︶.
(24) る︒. 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 一四二. 本稿は労働政策研究会︵座長︑江口英一中央大学教授︶ の労働時間制研究グループにおける報告を契機としてまとめたものであ.
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