20
(8)
氏名(生年月日)
本 籍
学位の種類
学位授与の・番号 学位授与の日付 学位授与の要件
学位四則題目 論文審査委員
矢島邦夫(昭和2
クニ オ医学博士
乙第401号昭和55年4月18日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
イヌのgloboid ce111eukodystrophy一初期の経時的神経病理所見一
(主査)教授 福山 幸夫
(副査)教授 今井 三喜,教授 梶田 昭
論文内容の要 冒
研究目的
ヒトのgloboid cell leukodystrophy(Krabbe病,以 下GLDと略)は,乳児早期に,脳白質と末梢神経系を 障害し,急速に進展する重篤な疾患である.イヌGLD は,ヒトGLDと同様の常染色体性劣性の遺伝形式と galactocerebrosideβ・galactosidase欠損を示し,神経病 理学的にも,galactocerebrosideの蓄積による特徴的 inclusionsを有するgloboid cellsが脳白質に出現し,
GLDの動物モデルと考えられている.イヌGLDの詳
細な神経病理学的観察は,ヒトGLDの発生メカニズム の解明,将来の治療法の検討・効果の判定等に必要な知 見を与えるものと考えられる.先に著老は,イヌGLDにおける特徴的病変部を電顕 的に観察し,(1) globoid cellsとオリゴデンドロダリ アとが形態学的に著しく相異すること,および両者の移 行を示唆する細胞の見い出されないこと,(2)間葉 系細胞に特徴的と考えられるsub-Plasmalemmaninear dens玉tyが910boid cellsに頻回に出現すること,(3)
Virchow・Robin腔にgloboid cellsが集籏しているこ と,(4)脳実質内とクモ膜下二間に明らかなgloboid cellsの移動が見られること等より,910boid cellsの間 葉系細胞由来説を論述した.
GLDにおけるもう一つの顕著な神経病理学的特徴は,
同病巣におけるオリゴデンドロダリアと髄鞘の消失であ る.従って,初期病巣におけるオ.リゴデンドログリアの 動態の観察は,GLDの病因解明の手がかりになると考 え,本研究を行なった.
研究対象および方法
白血球あるいは脳白質の酵素測定により診断された幼
若GLDイヌ5匹,および同腹の同胞イヌ4匹(正常コ
ントロール)を対象とした.これらのイヌの大脳白質の 種々の部位より得られた組織片を,最:終的に,光顕と電 顕で観察した.
研究結果
病初期には,比較的よく発達した髄鞘とオリゴデンド ロダリアが認められた,引き続く髄鞘の崩壊と急速なオ リゴデンドロダリアの消失とともに,globoid cellsの 著明な出現が見られた.電顕的に最初の特徴的変化は,
髄鞘崩壌やgl。bo三d ceUsの出現に先立って,あるいは これとと、もに,オリゴデンドロダリアの核周囲細胞体内 において,非特異的変性過程を示す微小細管の蓄積,遊 離ポリライボゾームの消失,小胞体に由来するmelnbr-
anous‘‘scrolls,,の出現に加えて, myelin figuresや各種 dense bodiesの出現,さらに一般的にgloboid cellsに特 徴とされているpolygonal crystalline tubular inclusions の軽度出現であった.これらの変化の後,オリゴデンド ロダリアは急速に変性壊死を示し,病巣より消失した,
同時にgloboid cellsの出現や星状細胞の増生が観察さ
れた.
考按ならびに結論
上記の結果は,次のような仮説とよく適含する.GLD においては,galactocerebrosideβ一ga工actosidaseの欠損 に加えて,微量で脳白質変性を起こすpsychQsine(正常 脳オリゴデンドロダリア内では,CleaVing enZymeによ
一892一
21
り急速に分解されるため,中毒作用を示さないと考えら れている)からgalact・seに分解する酵素の活性も欠 損していることが知られている.初期変化として,オ リゴデンドロダリア内にgalactocerebroside.のほ.か,
Psychosineなども蓄積するため, crystalline tubhlar-
inclusions(多:量のgalactocerebroside蓄積の産物)出現以 前にあるいは出現後間もなくオリゴデソドログリァがま ず変性壊死に陥って病巣より消失する.髄鞘の崩壊は,
支持細胞であるオリゴデソドログ..リアの変性とともに出
現し,その結果生じた変性産物等を取り除くため,問 葉系組織由来のマクロファー.ジが病巣に出現し,glob・id cellsとなる.neur・pilの修復の目的で星状細胞の増生も おとり,GLD特有の病巣が完成するのであろう..今回の.
観察ではまた,初期の髄鞘形成は良好であり,その後引 き続いてvesicular 4isruption等の変性が認められた.
従ってGLDにおげる髄鞘異常は,形成異常(d脚y・li nation)でなく,.オリゴ.デンドロダリア変性め結果とし
ておこる脱髄(demyelination)と考.え.られた,
論文審査.の要旨
本研究は,イヌglobbid cell..1脚。・dy$1τ・画γ..(Gエp!.に挙げる特徴的癖三部の経時的変化を電顕的
に観察し,オリゴデンドロダリアの変性壊死が初期変化として最も顕著な所見であることを明らかに
したもので,ヒト.GLDの発生病理の解明に重要な示唆を与え,学術上価値ある研究である。
主論文公表誌
イヌのgloboid ceU leukodystrophy一初期の経時的神 経病理所見一.
脳と発達.第12巻第2号153~162頁
(昭和55年3月1日発行)副論文公ii蔓誌
D 小児の神経疾患におけるRI診断一Radioisotope Cisternography,恥ntriculographyおよ.びMyelo一 .graphyについて一
小児科診療.38(3) 243一%2...(昭50)
2)小児の.Moya!noya病..
血液と脈管..6(12)965ん975・(昭50)
3)..Canihe..globoid cell leukodystroPhy. Part I. Fur-
th合r ultrastructural study of typical lesion..(イヌ のgloboid cell’:.leukodystrophy・L典型的病巣の 電顕的検索).
Jonrnal of the Neurologic続1 Sclences 33 179~197....(1977).
4) Sub-plasmalemmal. hnear density;Acommoロstr-
uctμre. ln.globqid gells and mesenchymql.¢ells。
(Sψ一plas皿alemηロa王linear density:globQid celIs と間葉系細胞に.しばしば見られる構造).
Acta Neuropathologica 3g I95~200 (1977)
.5♪.Nru「qnrl 4e琴ene「atio・in the b「a呵the b・i・dled mouse-A light.血ecr6scope study(brindledマウ ス脳における神経細胞の変性一光三目研究),.
Journal of Ne庶opathoiogy.and Eゆ6,imentaI Neurology 38135ん46・(1979)
一893義
6) Neuronal degeneration in the brain of the brindled m6鵬A・・lt…t・u・t…al・t・dy・f the ce・eb・・1 cortical.neurons.(brindled・マウス脳における神経 細胞の変性一大脳皮質神経細胞の電顕的研究).
Acta Neufopa出ologica 45 17ん25(1979) . 7) UltrastructuraL.changes of Qligodendroglia .and myelin sheaths.induced by ethidium.brQlnide.
(e£hidium bro1nide投与々こより誘起されたオ.リゴ .デンド.ロ.ダリアと髄鞘の超微細構造の変化う.,
Neuropathology翫nd斑)plied Neurobiology .5 49~62.(1979).
8) Demyelination and remyelination in the rat cenr ㌻・a1興・・u・.呂y・t・m f・11・w璽βthidi・m.b岬d・
1・jecti・n・.¢thi“ゆ肩「Omige注躯rより誘回れ たラット中枢神経系におけや厚薄と髄鞘㊧再形
成).
1凋aborεしtory Investigation 41 .1385ん392.(1979)
9) .Neuron玖l deg6heをatio血 in.th6 bゴaih.of the.b坐ihdled rnouse・.1.. Chronological恵t⑰dies.on…、毛he long乙suτvi_
ving grO11P.(brindleaマウス脳における神経細胞 .の変性).
1.長期生存グループにおける経時的観察)
Acta Neuropathologica 48.127~132 (1979)
10)Neuronal degeneration in the brain of the brin一 dled mouse. I I. Ultrastructure of neurona至inclu・
sions ih the cerebfal cortex.(brindledヤウス脳 における神経細胞の変性H,大脳皮質め神経細胞 体内封入体の超微細構造)。
.Aむta N6ufopathrogica.〆48..133ん137・.(1979)..