平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
中国内蒙古自治区の麻黄大規模栽培農家での聞き取り調査
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教授
研究要旨 中国では1980年代からマオウの栽培を行っており、す でに様々な技術・経験を蓄積していると考えられる。マオウの日本国 内での栽培自給化に向けての参考とするため、2014年7月中旬に 内蒙古自治区の大規模な栽培地2カ所を訪問調査した。その結果、マ オウ栽培時に重要な事項は除草と灌水であることが再確認され、2カ 所ともに井戸を掘り、大型の撒水機を設置して定期的に灌水していた。
除草剤は早春の発芽前に1回使用するが、以後の除草は人力に頼って いた。肥料は尿素を春と収穫後にまく。収穫物麻黄の価格は上昇した が、覚醒剤原料となるマオウ栽培に関しては、中国政府の管理が年々 厳しくなっており、栽培面積は減少傾向にあるようだ。野生資源はま すます少なくなっている。
研究協力者 倪 斯然 東京農業大学農学部 博士研究員
A.研究目的
中国では1980年代から麻黄の栽培が始 まった。現在では、主として内蒙古自治 区、寧夏自治区、新疆ウイグル自治区な どで栽培が行われている。栽培は大規模 経営と小規模な個人栽培とがある。栽培 方法は様々で、各農家が独自に開発して いる状況である。本研究計画では今後マ オウの日本における自給を目指して大規 模な栽培を計画しているので、参考のた め大規模栽培地を訪問調査し、栽培者か ら聞き取り調査をすることにした。
B. 研究計画
平成26年7月13日に内蒙古自治区のオ ルドス地区の杭錦旗鍚尼鎮にある圃場、同 14日に鄂托克前旗にある圃場を訪問調査 し、それぞれ経営者から聞き取り調査を行 った。
C. 結果
7月13日: オルドス地区杭錦旗鍚尼鎮
○この基地でマオウを栽培する面積はお よそ1200ムー(1ムーは666㎡)であり、
昨年230トンのマオウ(生のもの)が収穫 でき、乾燥重量で100トン以上を得た。
○マオウの買い取り価格は毎年変化し、
一昨年は1キロあたり14元で、昨年は1 キロあたり18元であった。昨年マオウの 買い取り価格が少し上昇した理由は、東 北地方においてマオウの取り扱いが政府 に厳しく制限され、産量が著しく減少し たからである。
○昨年の9月から10月下旬にかけて収穫 し、その後乾燥調整し、今年の4月15日 に売った。政府の管理が厳しく、販売の 許可が公安部から下りるまで売れなかっ た。
○今年はマオウの生長状況がよく、産量 が上がる見込みである。産量を上げるた めに、水をたっぷり与えることと除草作 業を頻繁に行うことが重要であって、マ オウの栽培年数にも関係があるようだ。
今年は雨が多く、雑草がたくさん生えた。
除草には除草剤が使えないので、人を雇
ってやる。人件費は1ムーあたり180元 で、一人2日で1ムーをやれる。
○収穫は9月から10月にする。遅く採集 しても重さがあまり変わらないし、気温 が下がるとマオウの茎が赤くなって売れ なくなる。赤くなった地上茎はそのまま 置くと来年また緑に戻って成長する。
○11月頃収穫が終わると、まず元肥とし て(NH4)2HPO4を1ムーあたり20kgぐらい 撒いて、その上に(防寒のために)10cm ぐらいの砂をかける。砂より土の方がも っと効果的であるが、雑草(種子)も入 りやすくなるので、畑の全体ではなく一 部分ずつ毎年交代でかける。去年の冬も 例年通りマイナス20度であったが、乾燥 して雪が降らなかった。
○5月中旬頃(春)、マオウが既に10セ ンチくらいの高さになってから、尿素と 除草剤を混ぜて撒いて、十分水やりをす る。1ムーあたり尿素30kgを用いる。尿 素を播く時に粉末を散布し、水をたっぷ りかけると肥料焼けが発生しないが、水 やりしないと良くない。
○今年この畑でマオウを植えてから16年 目だが、儲けは最近の3年しかなかった。
それでも、今までの売上金は既に前期投 資額を超えた。うちの麻黄は全部天津の 会社に買われた。
○マオウは麻薬原料にもなるため、公安 部門は去年と今年、この栽培基地を見に 来た。
○畑に井戸が全部で三つある。静水位10 メートルで、動水位60メートルである。
○普段5、6人が水やりや除草等の管理 をしている。除草が大変な時にはさらに 人を雇って抜く。一番厄介な雑草は刺が あるアカザの仲間である。栽培基地の建 物は今年増築した。この建物は冬にはほ とんど人が住まず、一人の留守番しかい ない。冬に業者が来て砂をかける以外は、
あまり管理しない。
○ここは冬には風沙がかなり激しいの で、防風のために畑と畑の間に樹を植え た。
○今頃マオウの実が出来て、もうすぐ種 子が採れる。
○マオウに害虫は発生しにくい。ただ乾 燥している時期にアブラムシが来るが、
雨が降るといなくなる。また、マオウは 他の作物に比してヒョウやアラレに強 い。
○麻黄の種子は通遼/赤峰地方から買っ て、この畑に4トンを使った。2年間自 分の土地で苗を育ててから植えつけた。
種まきは6月から行った。理由はこの辺 は風と黄砂が強く、通常6月くらいには 止むからだ。
○苗を定植する時には地上部を切らず、
根もよほど長いものでないと切らない。
まずスコップを土に20cmくらい入れて隙 間を作って、苗を真っ直ぐ隙間に入れて、
土で埋めればよい。その後水をたっぷり やると定着率が92%以上であった。春4 月下旬から6月までに植えつけた。気温 は10度くらいであった。
○今杭錦旗錫尼鎮で麻黄を栽培している のはここだけである。昔この周辺に野生 のものがあったが、近年、乾燥が進んだ ため枯れた。
○マオウの苗を植えて3年目から収穫で きる。一度マオウの苗を植えると、以後 苗の追加はしない。
○この地域はマオウ以外に甘草も栽培し ている。また自生している甘草もある。
うちも7、8年前から甘草の苗を植えつ けたが、それ以後水やりや肥料等の管理 を行っておらず、掘り出しもしなかった。
甘草の苗は普通トラクターを用いて植え つける。甘草の栽培には水と肥料がたく さん必要らしい、普通2年栽培して収穫 できるが、肥料をたくさん施すと春に植 えつけたものが秋に収穫できる。
7月14日:鄂托克前旗
○(マオウの灌水)2、3日ごとにやる。
新しく買った潅水装置一台は26万元(約 500万円)ぐらいだった。今年は例年より 乾燥したため、雑草が少なかった。
○今年、栽培面積を増やすためマオウの 種子を購入したが、播いてみると発芽率 がわずか7%だった。栽培が始まった時 に少し残していた種子も試したが、発芽
率は30%だった。また、自分の畑の種子 を今年採集した。マオウは毎年地上部を 刈り取ると結実しないので、種子を採集 するために去年は一部のマオウを採集し なかった。また他の農家が採集しなかっ た畑から採集してきた。採集した毬果は 日干したほうが発芽率が良い。そうしな いとカビが生えるので発芽しても1年ぐ らいで枯れる。ちなみに種子が鳥に食べ られることもあり、中に虫が入っている こともある。野生の種子もそれほど発芽 しない。近日中に日干した実から種子を 取り出し、元々の菜園(自給用の野菜畑)
に播いて苗を育てる予定。種子をまく深 さは2cmくらい、小さい水流を出せる潅 水装置を使う。1年間苗を育て、来年の 7月に植えつける。
○マオウの管理はこれまで大変であっ た。特に今年は気温が高く、雨がほとん ど降らずに乾燥していたので、水やりを ちゃんとしないとマオウが枯れてしま う。もしマオウの茎の先端が黄色になっ たら既に手遅れで、その後にいくら水や りしても生き返らない。
○除草作業は大変なため、除草剤も使っ ている。4月に尿素と混ぜて1回まいた ので今年の雑草が例年より少なかった。
除草剤は何種類かを混ぜて使っている。
(散乱の瓶からグリホサートイソプロピ ルアミン塩、2,4‑ジクロロフェノキシ酢 酸とアセトクロールを確認し、殺虫剤の クロルピリホスも確認した。)肥料も除 草剤も水と混ぜて水やりの時に一緒に与 えても良い、特に除草剤は昼に播いた方 が良い。
○収穫は機械では出来ないので、人を雇 ってするしかない。大体3人で一日1ム ーの畑を収穫できる。
○冬の時、年を終える前に畑のマオウに 土を2、3センチぐらい覆ったほうが良 い、保温作用もあるし、マオウの根茎を も保護できる。ただ土を覆い過ぎるとマ オウの茎が生えない可能性もある。
○去年11月まで収穫作業を行なった。今 年の年明け後、(NH4)2HPO4を元肥として播
き、その後少し土を覆った。今後、追肥 として尿素を播く予定。
○今マオウの茎はもう伸び終わった。今 週の水やりが終わったら今年はもう水や りをしない、そうしないと茎が太く成長 し、エフェドリン含量が落ちて生薬とし ての質が悪くなる。
○潅水用の井戸は静水位15〜16メートル ぐらいで、深さは100メートル以上ある。
井戸水はアルカリ性で、塩辛いが、マオ ウにはあまり影響しない。
○潅水用の井戸は汲み上げて貯留するタ ンクがないので、直接地下からポンプで 吸い上げる。今まで沢山のアルカリ性の 水で水やりしてきたので、土地もアルカ リ性になり、表面が白くなった。飲料水 を汲むための浅い井戸もあり、水は潅水 用の井戸よりもおいしいが、水量が少な い。育苗あるいは野菜の栽培には飲水用 の井戸の水を使う。
○ここに栽培しているマオウは根が約 1.5メートル、しかも太いので、多分水や りしなくでも大丈夫だが、成長がやはり 良くないと思う。
○ここの畑は合わせて300ムーがある。移 動式潅水装置の半径は250メートルで、全 長500メートルである。栽培面積を増やし たいので、今年は他の人が放置している マオウ畑を年間10万元以上で借りたり、
他の農家の土地を借りたりして、総計400 ムー以上の畑でマオウを栽培したい。
○マオウの値段は去年1kg20元〜30元だ った。去年は政府の管理が厳しく、栽培 面積の少ない農家は取り扱い先が管理し にくいことを理由に、売ることを禁止さ れた。しかし栽培面積の広い農家は禁止 されていないので、栽培面積の少ない農 家から買収して売ることができる。
○現在、前旗でマオウを栽培している農 家は2、3戸しかない。
○ここの畑は全部1個人が経営してい て、今年は18年目である。去年の産量は 生のマオウが200トン以上、乾燥したもの では約130トンであり、収穫の時に30人ぐ らい雇った。利益は100万元以上だった。
○ 1ムー(666㎡)あたりの産量につい て、去年は1ムーあたり平均700キロが収 穫でき、今年の成長状況を見ると1ムー あたり900kg収穫できるかもしれない。1 ムーあたり1トンを収穫できる畑(区画)
もありそうだ。
○マオウの地上茎の長さとエフェドリン 含量は関係が無さそうだ。エフェドリン 含量が高いほど(枝の)密度が高いよう だ。栽培において一番重要なのはエフェ ドリン含量である。売り先(製薬会社)
の人はマオウを買う前にエフェドリン含 量をまず分析し、一定の基準を満たさな いと買ってくれない。ここは毎年合格だ が、ある場所で栽培生産されているマオ ウは含量が、低く買ってもらえないとい う噂もある。
○マオウの他にも野菜などを少し栽培し ている。トウモロコシはアルカリ性の水で 潅水しているのでなかなか成長せず背が 低い、羊の餌になる。もし本気で栽培する なら、酸性の肥料をあげないといけない。
ムラサキウマゴヤシも羊を飼うために栽 培したが、来年はやめる予定。ムラサキウ マゴヤシは単独ではなく、穀物と一緒に植 えた方がよい。いろいろな野菜も少し栽培 しているが、潅水は飲水用の井戸の水で行 う。しかし井戸の水量が少ないので面積を 増やせない。マオウを潅水する水(塩分を 含んでいる)で水やりすると枯れる。
D. 考察
マオウが覚醒剤原料植物であるため中 国政府の取り締まりが年々厳しくなって いるようで、とくに最近では販売が難し く規制されているようである。新疆省博 楽市では住民が覚醒剤を作ったため、栽 培そのものが禁止されたという情報を得 ている。中国でのマオウ栽培状況は毎年 変化しており、予断を許さない。日本に おける栽培も、大規模化する際には販売 ルートや量、栽培品のアルカロイド含量 などを厳格に把握しておく必要があろ う。
一方で、野生品は確実に減少しており、
今後栽培マオウの需要はさらに伸びるも のと考えられる。
E.結論
日本における麻黄の栽培においては、
収穫物(乾燥品)のアルカロイド含量が 日本薬局方の規定(0.7%)を超える必要 がある。今回の中国における栽培地の調 査でも、アルカロイド含量が低くて買い 取ってもらえない事例があるらしいとす る情報を得た。一方、調査した栽培地で は敢えてアルカロイド含量を高めるため の努力はしていないが、茎が太くなると アルカロイド含量が低下するので灌水の 調整が行われていた。この現象について は、今後検討の余地があると判断した。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
オルドスの栽培地
前旗の栽培圃場
人力で除草する人たち
移動式の撒水機
撒水設備の無い圃場(マオウ株は育っていない)
庭でマオウの毬果を干す
マオウの毬果
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
ロングポット苗と紙ポット苗の定植後の活着率
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 佐々木陽平 金沢大学医薬保健研究域薬学系 准教授 研究分担者 三宅 克典 金沢大学医薬保健研究域薬学系 助 教
研究要旨 代表者らは漢方生薬「マオウ」の国産化を目差して2013 年度から石川県下で Ephedra sinica Stapf の栽培を開始した。
当初の種苗はすべて種子からの発芽苗で、セルトレーなどで発芽させ た後にポリポットやロングポットに植え替えて生育させた苗を圃場に 定植したが、その後、約三分の一が枯死し活着率が悪かった。そこで、
ペーパーポットに直接播種し生育させた苗を定植したところ、きわめ て良好な活着率を得た。
研究協力者 倪 斯然、野村 行宏、御影 和子
A.研究目的
漢方生薬「マオウ」の国産化を目的とす る本研究事業計画では屋外の圃場での栽 培を目指している。これまでは管理する 薬用植物園内での鉢植えや狭い畑での栽 培であったが、2013年度から石川県下の 耕作放棄地などで実栽培を開始した。中 国内蒙古自治区では発芽3年苗を苗床か ら掘り起こして定植していたが、我々は 一株ずつ通常のポリポットやロングポッ トで栽培管理してきた苗をそのまま植え 付けることにした。植え付け株の枯死率 を下げる目的で、作付けの効率化をも考 慮して、紙ポット苗を圃場に直接植える ことを検討した。
B. 研究計画
石川県羽咋郡志賀町の砂質の圃場で、
2013年度に植え付けた株の活着率を調査 するとともに、マオウ苗を定植する際の 活着率を上げるための方策を調査する。
苗として、ポリポット苗、ロングポット 苗、ペーパーポット苗を準備して圃場に 植え付ける。苗は定植時のストレスを少 なくするため、根鉢を崩さずに植える。
定植後に十分な灌水を行い、その後は概 ね自然の雨水に任せる。
2013年10月28日に試験的に発芽後約 1ヶ月のペーパーポット苗20株を植え付 けた。翌春、すべての株が活着していた ので、さらに2014年4月5日に発芽後約 3ヶ月のペーパーポット苗52株を植え付 けた。
昨年度に植え付けた苗とともに、評価
(活着率)を随時行い、最終確認を2014 年8月14日に行った。
C. 結果
2014年5月23日に調査した結果、昨年 春に植え付けたポリポットやロングポッ ト苗227株の内、76株の枯死が確認された
(枯死率33%)。全株とも立ち枯れ状態 で、引き抜かれたような形跡など、外的要 因と考えられる枯死株は認められなかっ た。枯死株はすべて新たなロングポット苗 で補充した。
一方、ペーパーポット苗全72株はこの 時点ですべて活着していた。さらに、8月 14日に最終確認した結果、これらはすべ て活着したものと判断した。目視的には生 長の速さも従来の植え付け株よりも良好 であると判断された。
D. 考察
現時点ではポリポット苗やロングポッ ト苗の圃場での活着率が悪い原因の詳細 は不明であるが、植え替え時に根鉢を崩 さずに栽培用土のまま植え付けたことも 1原因として考えられる。また、植え替 えによるストレスも考えられるが、現時 点では詳細な原因は不明である。一方、
ペーパーポット苗も用土のまま植え付け ているが、すべてが活着したことは、移 植によるストレスが少ないことに加え、
用土の量が少量であることが幸いしてい ることも考えられる。
以前、ポリポット苗をワグネルポット に根鉢のまま植え付けた際、鹿沼土や山 砂では根が下に張らない現象が見られ た。これと同様の現象である可能性が考 えられる。よって今後、ロングポット苗 を植え付ける際には、根からできる限り 栽培用土を取り去って植えることを検討 したい。
E.結論
ポリポット苗やロングポット苗は圃場 での活着率が悪いので、今後の苗作りは ペーパーポット苗を中心にして行うのが 植え付け面でも、手間の削減の面からも 適切であると判断した。
なお、ポリポット苗やロングポット苗 を圃場に植える際にポットの栽培用土を 十分に落とすなど、今後の検討余地を残 している。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得
なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
2013年度に植え付けたロングポット苗(2〜3年生株)の約三分の一が枯死した。
(枯れた株の位置に補充のためのロングポット苗が置かれている: 2014年5月23日)
育苗中のロングポット苗(発芽後2年)
2013年10月28日に発芽後約1ヶ月のペーパーポット苗20株を植え付けた
2014年8月14日(20株すべてが活着)
2014年4月5日(ペーパーポット苗52株を植え付け)
2014年8月14日(52株はすべて活着した)
植え付け時のペーパーポット苗(発芽2年目)。2014年10月11日(志賀町圃場)
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
種子の生産に関する研究
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 佐々木陽平 金沢大学医薬保健研究域薬学系 准教授 研究分担者 三宅 克典 金沢大学医薬保健研究域薬学系 助 教
研究要旨 漢方生薬「麻黄」の国産化を目指す本研究計画では、これ までの研究結果から、マオウ種苗の生産は種子繁殖と草質茎の挿し木 によるのが適していると判断している。ここでは、種子繁殖のための 種子の国内生産を行う目的で、ガラス温室内で Ephedra sinica Stapf
の雌雄株を用いて種々の受粉を試みた。昨年度は気温が上昇して湿度 が下がった頃合いを見計らって通風したが、今年度は通常の果樹で行 われる花粉付けの手法を取り入れた結果よく結実した。屋外で栽培し ている他種についても同様に行った結果よく結実し、総計3323粒の種 子を得た。また、園内で得られた種子の発芽率は、花粉付けした本年 度産のものは過年度産に比して明らかに高かった。
研究協力者 金田 あい
研究協力者 御影 和子
A.研究目的
漢方生薬「麻黄」の国産化を目指す本研 究計画では、これまでの研究結果から、
種苗の生産は種子繁殖と草質茎の挿し木 によるのが適していると判断している。
中国は種子の海外への持ち出しを堅く禁 止しているので、中国産種子を導入して 利用することができないため、種子を国 産する必要がある。代表者らはこれまで に、開花株をビニールハウス内で管理す ることにより結実可能であることを見い だした。結実をより確実にするため、今 年度は新たに設置した中型温室を利用 し、人為的な受粉をも試みた。
B. 研究計画
B‑1.人工的な花粉づけ
新たに設置したガラス温室内の2段式 の棚に、Ephedra sinica Stapf 株の開花 した雌雄株の鉢(ワグネルポット株及び 10号駄温鉢株)を無作為に配置して、晴
天日中に温室窓を少し開けて花粉を散布 するために風を通した。さらに、受粉を 確実なものにするため、花粉を採取して、
果樹栽培時の受粉と同様の要領で積極的 に受粉を行った。また、Ephedra
pachyclada の開花雌株を温室内におい
て、結実するか否か試験した。
さらに、屋外で栽培している植物種(E.
pachyclada、E. likiangensis、E.
chilense)についても、同種間で花粉付け
を行った。
B‑2. 発芽率の検討
過去3年間に金沢大学の薬用植物園内 で得られた種子を播種した際の発芽率を 集計した。
C. 結果
C-1. 温室内に管理したEphedra sinica
(♀)23 株から合計 2294 粒の種子を得 た。1株あたりの最大種子数は 293 粒、
最小は5粒であった。同様に受粉を試み た E. pachyclada は、結実率は悪かった
が種子が得られた。一方、屋外で栽培し ている局外種について同種間で同様に受 粉した結果、E. pachyclada(ネパール産)
で 370 粒、E. likiangensisで 266 粒、
E. chilenseで383 粒を得た。
C-2. 過去3年間に得られた種子を播
種した際の発芽率を集計した結果、2011 年度産は 672 粒中 390 粒が発芽
(58.0%)、2012 年度産は 181 粒中 73 粒が発芽 (40.3%)、2013年度産は 611 粒中 167 粒が発芽 (27.3%) であったの に対し、積極的に花粉付けをした2014 年 度産は 897粒中 583 粒が発芽(65.0%)
し、過去3年間に比して明らかに発芽率 が高かった。
D. 考察
昨年はハウス内への通風による受粉の みで、人工的な受粉を行わなかったが、今 年は通常の果樹で行われている花粉付け に倣って積極的に行った。効果のほどは判 断できないが、自然の風に任せるよりは確 実性が上がるものと考えられる。
これまでは屋外での結実率は非常に悪 かったが、局外種であるが屋外で栽培して いる3種のマオウ属植物についても同様 に花粉付けを行った結果、多数の種子が得 られた。よって、今後も積極的な受粉が推 奨される。なお、同一種では屋外と温室内 では開花時期が異なるので、受粉させるに はそれに合わせた事前の準備が必要であ る。また、異種間でも交雑が起こることが 明らかになったので、今後種子採取のため に屋外で栽培する際には、他種と交雑しな いよう注意する必要がある。
また、積極的な花粉付けによって種子数 のみならず、発芽率が上がることも明らか になった。不稔性種子の割合が減少した結 果であると考察する。
なお、前年度に地上部を刈り取ると翌年 は開花しないので、雌株雌株ともに、種子 を得るための株の枝は収穫してはならな い。
E.結論
マオウ属植物の種子を得るためには、通 常の果樹栽培で行われている積極的な花 粉付け作業が、結実数の向上にも、発芽 率の向上にも有効であることが明らかに なった。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
マオウ種子生産用に新設した中型ガラス温室
受粉適期となった雌毬花(左)と雄毬花(右):Ephedra sinica
集めた花粉(左)と花粉付け作業(右)
雄株の下に雌株の鉢を置いて受粉を試みた
中型温室内で実った Ephedra sinica の毬果
屋外で花粉付けし、熟したE. chilense の毬果(本種は白熟する)
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
マオウ属植物種子の発芽に関する研究
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 佐々木陽平 金沢大学医薬保健研究域薬学系 准教授 研究分担者 三宅 克典 金沢大学医薬保健研究域薬学系 助 教
研究要旨 マオウの栽培において種子による種苗生産は欠かせな い方法である。播種する土壌や播種用の資材は発芽後の苗の生長 に影響を与える要因であると考え、播種する際に異なる土壌と資 材を用いて検討した。その結果、マオウ種子が発芽後、より順調 に生長するには、元肥が入った土壌が適しており、また播種用資 材としては、深型の紙ポットのような根が伸長しやすい深いもの が適していることが明らかになった。
研究協力者 金田あい
A.研究目的
マオウの種苗生産において、種子の播 種は最も重要な方法である。中国はマオ ウ種子の国外持ち出しを禁止しているの で、種子を日本で国内生産する必要があ り、我々はすでに効率的な生産方法を開 発した。一方、現時点では生産数が限ら れる種子はまだ貴重であり、有効に利用 するには効率的な発芽育成方法を検討す る必要がある。本研究では、マオウ種子 を播種する土壌と播種用資材のより適し た条件を検討することを目的とする。
B. 研究計画
B-1 播種する土壌
Ephedra sinica の種子を土壌条件が異 なる紙ポット(日本甜菜製糖株式会社 製:ワタ用、深さ150mm)に播種して草 質茎の伸長を観察した。
(土壌条件1)紙ポットの上部に赤玉土 細粒、下部は元肥料入りの市販園芸土(秋 本天産物:プランターの土)を詰めたも の。
(土壌条件2)紙ポットの上部に赤玉土 細粒、下部に赤玉土中粒を詰めたもの。
2014年5月2日に各条件ともに130粒 を1ポットに1粒ずつ播種した。その後、
1.5ヶ月後に草質茎の全長を測定した。
B-2 播種用資材(紙ポットとセルトレ イ)
E. sinica 種子を異なる播種用資材に播 種して草質茎の伸長を観察した。
(資材条件1)紙ポット(全長150mm) にプランターの土を詰めたもの。
(資材条件2)プラスチック製セルトレイ
(セルの深さ50mm)にプランターの土を 詰めたもの。
2014年4月24日に各条件ともに130粒 ずつ播種した。その後、1.5ヶ月後に草質 茎の全長を測定した。
C. 結果
C-1 播種する土壌の効果
土壌条件1(プランターの土)は130 粒中50粒(38.5%)が発芽し、条件2(赤 玉土のみ)は130粒中88粒(67.7%)が発 芽した。それぞれの草質茎の全長は土壌 条件1では10〜219mm(平均:69.5mm) で、条件2では10〜84mm(平均:
26.3mm)であった(表1、グラフ1)。
C-2 播種用資材
紙ポットは130粒中65粒(50%)発芽 し、セルトレイは130粒中59粒(45.4%)
発芽した。それぞれの草質茎の全長は、
紙ポットでは10〜295mm(平均:
100.5mm)で、セルトレイでは8〜156mm
(平均:54.5mm)であった(表2、グラ フ2)。
D. 考察
D-1 播種する土壌
草質茎の全長は市販培養土を下に詰めた 条件1の方が赤玉土のみの条件2の土壌 よりも良好で、前者の草質茎の全長は後 者の約2.5倍伸長した。赤玉土のみでは草 質茎の長さが100mmを超える苗はなか ったが、プランターの土では200mmを超 える苗もあった。発芽後の根は条件1の ような元肥が入った土壌から栄養を吸収 し、草質茎が伸長したと考える。
D-1 播種用資材
草質茎の全長は紙ポットの方が良好で、
セルトレイよりも約2倍伸長した。セルト レイでは草質茎の長さが160mmを超える 苗はなかったが、紙ポットでは290mmを 超える苗もあった。マオウはは土中深くに 根を伸ばす性質があるので、発芽後は紙ポ ットのような根が伸長しやすい深いもの の方が、草質茎が伸長すると考える。
E.結論
発芽後の苗の生育はその後の生育に大 きな影響を及ぼす。マオウ種子を播種する 場合は根が伸長しやすい紙ポットのよう な深いものに、プランターの土のような元 肥が入った土壌に播種すると発芽後の生 長が良いことが明らかになった。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表
なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし
(条件1)赤玉細粒(上部)+プランター の土(下部)
(条件1)赤玉細粒(上部)+プランター の土(下部)10ヶ月後の様子
(条件2)赤玉細粒(上部)+赤玉中粒(下 部)
(条件2)赤玉細粒(上部)+赤玉中粒(下 部)10ヶ月後の様子
条件1:赤玉細粒(上部)+プランターの土(下部)
苗 番 号
草質茎 全長
(mm)
苗 番 号
草質茎 全長
(mm)
1 39 31 13
2 24 32 31
3 218 33 68
4 91 34 51
5 10 35 40
6 64 36 68
7 25 37 183
8 59 38 119
9 41 39 22
10 12 40 108
11 105 41 49
12 89 42 147
13 30 43 77
14 190 44 138
15 100 45 76
16 40 46 30
17 25 47 38
18 19 48 45
19 20 49 176
20 219 50 45
21 43 平均 69.5
22 73
23 98
24 30
25 10
26 20
27 30
28 92
29 60
30 75
表1:条件1の土壌と条件2の土壌の違い による草質茎の全長(mm)
条件2:赤玉細粒(上部)+赤玉中粒(下部)
苗 番 号
草質茎 全長 (mm)
苗 番 号
草質茎 全長 (mm)
苗 番 号
草質茎 全長 (mm)
1 19 31 15 61 69
2 33 32 18 62 22
3 22 33 20 63 22
4 25 34 50 64 18
5 14 35 25 65 17
6 31 36 27 66 20
7 84 37 22 67 20
8 26 38 27 68 10
9 22 39 28 69 15
10 33 40 25 70 17
11 24 41 15 71 27
12 23 42 30 72 20
13 25 43 35 73 20
14 25 44 29 74 20
15 26 45 25 75 28
16 27 46 26 76 23
17 25 47 24 77 39
18 19 48 17 78 29
19 20 49 55 79 25
20 23 50 13 80 20
21 29 51 28 平均 26.3
22 24 52 35
23 20 53 35
24 30 54 24
25 29 55 24
26 27 56 10
27 27 57 25
28 20 58 25
29 25 59 19
30 25 60 18
紙ポット
苗 番号
草質茎 全長
(mm)
苗 番号
草質茎 全長
(mm)
1 160 36 95
2 115 37 163
3 100 38 295
4 15 39 112
5 112 40 130
6 90 41 135
7 45 42 65
8 40 43 203
9 80 44 55
10 100 45 85
11 195 46 240
12 110 47 10
13 145 48 120
14 20 49 20
15 25 50 75
16 45 51 40
17 175 52 85
18 140 53 193
19 190 54 20
20 10 55 50
21 115 56 175
22 150 57 70
23 195 58 15
24 145 59 45
25 130 60 90
26 185 61 93
27 160 62 45
28 108 63 60
29 110 64 20
30 86 65 30
31 60 平均 105.5
32 190
33 103
34 98
35 277
表2:紙ポットとセルトレイの草質茎の全長
セルトレイ
苗 番 号
草質茎 全長
(mm)
苗 番号
草質茎 全長
(mm)
1 27 36 20
2 41 37 40
3 8 38 35
4 155 39 55
5 95 40 10
6 156 41 110
7 135 42 90
8 60 43 22
9 28 44 50
10 55 45 55
11 50 46 58
12 30 47 8
13 10 48 102
14 60 49 120
15 75 50 50
16 59 51 22
17 15 52 35
18 25 53 65
19 75 54 80
20 68 55 60
21 49 56 50
22 38 57 75
23 91 58 75
24 20 59 25
25 80 平均 54.5
26 30
27 15
28 125
29 36
30 10
31 110
32 20
33 20
34 23
35 12
グラフ1:播種する土壌の違いによる草質茎の全長(mm)
グラフ2:播種する容器の違いによる草質茎の全長(mm)
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
Ephedra sinica Stapf と E. equisetina Bunge の人工交配 研究代表者 御影 雅幸 金沢大学医薬保健研究域薬学系 教 授
研究要旨 『日本薬局方』では生薬「マオウ」の品質として総アルカ ロイド含量(エフェドリンとプソイドエフェドリンの和)が0.7%
以上であることを規定している。現在中国で栽培品の Ephedra sinica
Stapf は野生品よりもアルカロイド含量が低いことが問題となっている。
一方、代表者らは同一場所で栽培された E. equisetina は E. sinica よりも アルカロイド含量が高いことを明らかにした。そこで新たな栽培品種を作 出することを目的に両種の人工交配を行ったところ、発芽苗を得ることがで きた。現在、育成中である。
研究協力者 金田 あい
A.研究目的
『第16改正日本薬局方』では漢方生薬
「麻黄」の原植物として、Ephedra sinica Stapf、Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer 又はEphedra equisetina Bunge(Ephedraceae)の3種を記載し、
また含有成分として、総アルカロイド〔エ フェドリン(C10H15NO:165.23)及びプ ソイドエフェドリン(C10H15NO:
165.23)〕を0.7% 以上を含むものとして いる。
中国では1980年代からマオウの栽培が開 始され、現在は E. sinica が栽培されて いる。代表者らも日局記載の3種の中で は E. sinica が栽培しやすいことを確認 し、日本での大規模栽培に着手した。一 方、3種の中では E. sinica のアルカロ イド含量が低く、中国では買い取り価格 が安くて栽培を中止する農家も多い。発 表者らは栽培マオウのアルカロイド含量 を高める研究を行ってきた。2013年に中 国新疆省博楽近郊にて、同一畑で栽培さ れている E. sinica と E. equisetina を 入手してアルカロイド含量を測定した結 果、後者の方が有意に含量が高かった。
E. equisetina は E. sinica に比して栽 培が困難で、中国でも内蒙古自治区や寧
夏自治区における栽培地で栽培を断念し ている。代表者らはすでに E. sinica 同 士の人工交配を行った経験がある。そこ で、栽培しやすくかつアルカロイド含量 が高い栽培品種の作出を目的に、両種の 人工交配を試みた。
B. 研究計画
金沢大学医薬保健研究域薬学系の附属薬 用植物園において、同園が保有する E.
sinica の雌株に E. equisetina の雄株の 花粉を受粉させ、種子を形成するかどう か検討することにした。ビニルハウス内 で、小型のガラスケースに開花した E.
sinica の雌株数鉢と E. equisetinaの雄 株1鉢を入れ、晴天日中にガラスケース 内に人工的に風を送り込んで花粉を散布 することを数日間繰り返した。実施日:5 月初旬の晴天日。
C. 結果
E. sinica 株の毬果数個が赤熟し、合計 8粒の種子が得られた。種子を赤玉土細 粒に播種したところ、5個が発芽し、現 在育成中である。
D. 考察
E. sinica(雌株)と E. equisetina(雄 株)の交配を試み、5個の発芽個体が得 られた。1年後にはかなりの大きさに育 つことが期待され、その時点でDNA塩基 配列を検査し、両種の交雑種であること を確認する必要がある。また、両種(異 種間)の交配が可能であったことから、
今後は E. sinica と E. inermediaとの 交配も検討したい。これらの交配により 栽培しやすい系統のみならず、高含量か つ任意のアルカロイド組成を有する系統 が作出できる可能性がある。
E.結論
マオウ属植物の異種間(共に日局収載 種)での交配が可能であることが明らか になった。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
Ephedra sinica の雌株と E. equisetina の雄株の交配実験
赤熟した Ephedra sinica の毬果 発芽した交配種子
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
マオウ挿し木時におけるミスト法の検討
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 宮本 太 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 三井 裕樹 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 准教授
研究要旨 漢方生薬「マオウ」の種苗生産を目的として、Ephedra sinica Stapf 、E. gerardiana Wall.、E. pachyclada Boiss. を主たる
実験材料とし、草質茎を用いて挿し木し、ガラス温室内に保管し、
45分ごとに1分間ミスト(霧)を噴霧した。その結果、株によって成 績が異なったが、概ね鹿沼土(細粒)、赤玉土(細粒)において良好 な発根を認めた。一方、バーミキュライトではきわめて成績が悪い株 があった。
研究協力者 倪 斯然 東京農業大学農学部博士研究員 嶋 美里 東京農業大学農学部事務員
金子 純基 東京農業大学農学部生
A.研究目的
漢方生薬「マオウ」の種苗生産研究の一 環として、草質茎の挿し木においてミス ト法を検討した。
一般に植物の挿し木においては発根する までに葉などからの水分の蒸散による悪 影響がある。ミスト法は挿し穂の保管室 にミスト(霧)を噴霧して室内の湿度を 上げ、植物体からの蒸散を防止する方法 であり、挿し木の際に多くの植物で有効 性が認められている。
B. 研究計画
漢方生薬「麻黄」の原植物として『第1 6改正日本薬局方』に収載されている Ephedra sinica Stapf を主たる実験材料 とし、さらに同属の他種をも実験材料と した。
E. sinica(8-1、9-1株)を用い、挿し 穂の長さを10〜15cmとし、節部を斜めに 切断した。ペーパーポット(日本甜菜製 糖株式会社製:No.2‑264及びソ‑1)に用 土としてバーミキュライト、鹿沼土(細 粒)、赤玉土(細粒)をそれぞれ単独に
詰め、挿し穂を3〜4cmの深さに挿した。
また別に、直径9cmの硬質ポリポットに 赤玉土(細粒)を入れ、E. sinica(1-1 株。12〜15本/ポット)、E. pachyclada
(2-1株。71本)を挿し木して同様にミ スト環境下に置いた。
挿し木したものは温度調節をしないガラ ス温室に保管し、温室内に45分間隔でミ ストを1分間噴霧した。
2014年6月中旬から7月上旬に挿し木を 行い、翌年の2月24日に発根(生存率)
を評価し、生育株をロングポットなどに 植え替えた。
C. 結果
ペーパーポットに挿したE. sinica(8−
1株)では、鹿沼土で良好な発根(140本 中67本。発根率48%)が見られたが、バ ーミキュライトでは136本中5本のみ発 根(発根率4%)し、成績が悪かった。一 方、E. sinica(9−1株)は、バーミキュ ライトでも良い発根率を示した。
硬質ポリポット(赤玉土細粒)に挿し たE. pachyclada(2−1株。無作為2〜
3節)の発根数は、71本中32本(発根率
45.1%)であったが、バーミキュライト(ペ ーパーポット)に挿したものは30本が全 て枯死した。
また、赤玉土細粒を入れた硬質ポリポ ットに挿したE. sinica(1−1株)は、全 116本中86本(74.1%)が発根した。
D. 考察
ペーパーポットを使用した際には、排 水性が良い鹿沼土での結果が良好で、一 方保水性が良いバーミキュライトでは成 績が悪い株があったことから、ミストに よる過湿が悪影響を及ぼしたことが考え られた。一方で、バーミキュライトでも 良好な成績が得られた株もあり、株間の 差が大きく認められた。
一方、これまでの経験から、赤玉土で 挿した場合には明らかにミスト法の方が 発根率が高いと判断された。また、本研 究結果ではペーパーポットに挿すよりも ポリポットに挿した方が成績が良かっ た。このことは保水性がある紙と保水性 のないポリエチレンとの相違であること も考えられる。ペーパーポットでうまく 発根しなかった株も、ポリポットで挿す と発根する可能性が考えられ、ミスト法 に関しては更なる実験研究が必要であ る。
E.結論
草質茎の挿し木においてミスト法が有 効で、その際の用土には鹿沼土あるいは 赤玉土が適していることが明らかになっ た。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
(1)ミストの散布状況
(2)ミスト散布直後の茎 (3)バーミキュライトより鹿沼土(右)の成績が良い
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
草質茎の挿し木時における採取部位と切り方の検討
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 佐々木 陽平 金沢大学医薬保健研究域薬学系 准教授
研究要旨 漢方生薬「マオウ」の種苗生産を目的として、Ephedra sinica Stapf(金沢大学保有:1−1株)及び E. gerardiana Stapf
(ネパール産:K-1株)の草質茎を用いて、挿し木する際の条件として、
挿し穂の採取部位(太さ)並びに切断方法の影響を調査した。その結 果、一本の茎の上部と下部では下部の方が発根率が高かった。また、
節直下を横切するよりも、節部を斜め切りする方が成績が良かった。
E. gerardiana はすべての挿し穂が発根した。
研究協力者 野村 行宏 研究協力者 金田 あい
A.研究目的
漢方生薬「マオウ」の国産化を目的とす る本研究事業の大きな目標に種苗の生産 があり、大量に生産する目的で草質茎の 挿し木法を検討してきた。これまでの実 験で比較的発根率が高い金沢大学保有の Ephedra sinica Stapf および Ephedra gerardiana Stapf の草質茎を用いて、挿 し穂を採取する位置並びに切断方法を検 討することを目的とする。
B. 研究計画
金沢大学が保有するEphedra sinica
Stapf(1−1株)の草質茎を用いて実験
し、比較を目的にこれまでの実験で E.
sinica より発根率が良いことがわかって
いる E. gerardiana Stapf (ネパール産:
K-1株)を同様に挿し木した。
E. sinica の同一茎の基部と上部からそ れぞれ長さ10〜15cmの挿し穂を採取を し、節部を斜め切りし、さらに基部から の挿し穂については節直下を水平切りし た挿し穂をも準備した。用土として砂と バーミキュライトの1:1混合品を用い た。用土を入れた直径9cmの硬質ポリポ ットに挿し穂を1ポットにつき10〜15本
を深さ3〜4cmに挿した。水の管理は深 さ約3cmの腰水とし、半日ガラス窓から 陽光が差し込む温度調節しない部屋に置 いた。
2014年6月28日に挿し木を行い、翌年 の2月21日(約8ヶ月後)に発根(生存 率)を評価し、生育株をロングポットに 植え替えた。
また、同様に処理したE. sinica Stapf
(1−1株)を温室内でミスト環境下(45 分ごとに1分間ミストを噴霧)において 調査した(6月24日挿し木、翌年2月25 日評価)。
C. 結果
E. sinica の草質茎の基部から得た挿 し穂を節で斜め切りしたものでは全15本 のうち12本(80%)が発根した。同じ茎 の上部から得た挿し穂を節で斜め切りし たものでは全25本中14本(56%)が発根 した。また、基部から得た挿し穂の節直 下を水平に切ったものでは全17本のうち 11本(65%)が発根した。一方、同時に 検討したE. gerardiana から得た挿し穂 を節で斜め切りした全18本はすべて発根 した。
また、温室内でミスト環境下で管理した E. sinica では、基部からの挿し穂では全 12本中11本(91.7%)が発根し、上部か らの挿し穂では12本中7本(58.3%)が 発根した。
D. 考察
1本の草質茎の上部と下部では、実験 株ではいずれも下部の茎の方が発根率が 高かった。マオウの発根は多く節の木質 部から発根するので、茎の基部の方が木 質部が上部よりも発達していることが影 響していると考えられる。また、節直下 を横切するよりも、節部を斜め切りする ほうが成績が良かったことも、切り口の 木質部の露出面積が大きくなることと関 連している可能性がある。また、本実験 においても E. gerardiana (K-1株)の 発根率が優れているという結果が得られ た。
E.結論
草質茎から挿し穂を得る場合は茎の基 部から採取し、節を斜め切りすることで 発根率を上昇させることができることが 明らかになった。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
図1:挿し穂の切り方(水平切りと斜め切り)
図2:挿し木実験の様子(腰水)
発根の評価(Ephedra sinica Stapf(1−1株)。草質茎の基部から得た挿し穂)
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
マオウ属植物挿し木時の温度環境と灌水方法に関する研究
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 宮本 太 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授 研究分担者 三井 裕樹 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 准教授
研究要旨 Ephedra sinica Stapf の地上部草質茎を用いた挿し木法に おいて、挿し木後の温度管理ならびに灌水方法について、人工気象器 を用いて検討した。その結果、35℃で管理することでカルス形成が促 進され、25℃で管理することにより発根率が高くなることが明らかに なった。灌水方法に関しては、上からの掛け流しのほうが腰水での管 理よりも成績が良かった。
研究協力者 月元 洋輔 東京農業大学農学部バイオセラピー学科生
A.研究目的
現在中国ではマオウを栽培するに際 し、主に種子繁殖で苗を確保している。
しかし薬用資源として利用するためには 優良形質の保持も重要であり、そのため には遺伝的形質が一定でない種子繁殖で は限界があることから、苗の確保には栄 養繁殖など別の手法を検討する必要があ る。そこで、本研究計画ではより大量の クローン苗が得られるマオウの草質茎の 挿し木法による種苗生産を検討してい る。代表者らのこれまでの研究により、
草茎質を用いて挿し木し、人工気象器内 で保管することで発根率が上がることを 明らかにしているので、本研究では挿し 木の際の最適温度条件を調査する目的 で、装置の温度条件を変えて発根率を調 査する。
B. 研究計画
Ephedra sinica Stapf(金沢大学保有の1 -1株、6-1株、9-1株)を実験株とし た。草質茎の挿し木は2014年10月24日に 行い、挿し穂は長さ8〜12 cm、切断部は 節直下で水平切りした。人工気象器内は
24時間全灯照射し、温度を25℃の区と 35℃の区で分けて設定した。硬質ポリポ ット(直径9cm, 深さ8cm)に、用土とし てバーミキュライト、赤玉細粒土、 鹿沼 細粒土の3種を準備した。灌水方法は、
腰水管理区と、 2〜3日に1回上から灌水 し、底から水が十分に流れるまで行うか け流し管理区とに分け、以下に示す4区 を設定した。
A区:25℃、かけ流し B区:25℃、腰水 C区:35℃、かけ流し D区:35℃、腰水
実験した異なる3株について、1ポット に15本挿し木したものを、1-1株では3 ポット(各土壌1ポット)、6-1株と9- 1株ではそれぞれ2ポット(鹿沼土およ びバーミキュライト1ポットずつ)、総 計420本を作成した。ポットはそれぞれプ ラスチック容器(縦40cm, 横28cm, 深さ 7cm)の中で管理した。80日後に挿し穂 の様子と発根率を調査した。
C. 結果
結果を表1に示す。
発根数は、A区では42/105本 (40%)、B 区では35/105本 (33.3%)、C区では 30/105本 (28.6%)、D区では15/105本 (14.2%) であった。発根には親株の違い による違いが大きく、E.sinica(1-1株)
では59.4%、(6-1株)では2.5%、(9 -1株)では10%であった。
保管温度を評価した結果、腰水区、かけ 流し区ともに25℃で発根率が高く、根長 や枝根の発達が優れていた。カルス形成 は35℃で多く, 枯死した挿し穂が少なか った。
灌水方法を評価した結果、25℃区、35℃
区ともに、かけ流し区の方が発根率や根 の生育が優れていた。カルス形成は腰水 区で大きくて団子状のものが観察され た。また35℃区ではカルスの色が白いも のが多く観察された。
用土の違いによる有意な差は認められな かった。
D. 考察
親株の栄養条件は挿し木の発根に大きく 関わる。本実験では、株によって発根率 が大幅に変わる結果になった。したがっ て、挿し木では同種でもその個体間で発 根能力が大きく異なると考えられる。さ らに親株から採穂する部位や熟度が、発 根に必要な穂木の内的条件に関与する要 因として、発根に大きく影響すると考え られる。また本研究では予備実験として E. sinica (1-1株)、E. pachyclada (2 -1株) を5月に採集し、腰水管理下で挿 し木研究を行ったが、発根したものは1 本もなく、すべて枯死した。この結果か ら挿し穂を挿す時期によっても挿し穂内 の発根誘因物質の量的な相違があると考 えられる。
適度なカルス形成は切り口の切傷面を 癒合し、挿し穂を腐敗から防ぎ、土壌から の水分吸収を促進させる。しかし過度のカ ルス形成は発根が遅延し、全く発根しない こともあるとされる(町田 1974)。また カルスは温度が高くなるにつれ、その形成 率は高くなる(土井 1981)。本試験では 発根の確認された挿し穂には全てカルス
の形成が確認された。35℃区ではカルス 形成率は高いが発根率が悪かったことか ら、カルスの形成と発根はそれぞれ独立し た現象であるといえる。また35℃では挿 し穂の発根能力が抑制されると考えられ る。しかし一方で35℃区に枯死した挿し 穂が少なかったのは、カルスが土壌との接 触面を拡大し、水分吸収力を促進させた結 果であると推察される。これらの観点から、
カルスが形成されるまで温度を高く保ち、
その後発根適温に温度を下げることで挿 し木の発根成績が良くなる可能性がある。
E.結論
マオウ属植物の草質茎を挿し木した後の 管理は、35℃ではカルス形成が促進され、
25℃では発根が促進されることが明らか になった。結果は植物種や株によっても 異なることが予測されることから、さら に詳細に検討する必要があるが、挿し木 時における温度管理により発根が促進さ れる可能性が示唆された。
灌水方法に関しては上からの掛け流しと 腰水では、前者の方が成績が良かった。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
表1:挿し穂の保管温度ならびに灌水方法の違いが発根に及ぼす影響
A区:25℃、かけ流し。
B区:25℃、腰水。
C区:35℃、かけ流し。
D区:35℃、腰水。
A区 B区 C区 D区
発根 カルス 発根 カルス 発根 カルス 発根 カルス
1-1株
赤玉 12 1 11 0 10 2 6 7
鹿沼 12 2 13 1 7 7 5 10
バーミキュライト 11 1 8 3 10 5 2 5
6-1株 鹿沼 0 0 0 0 0 2 0 2
バーミキュライト 0 0 1 0 1 0 1 2
9-1株 鹿沼 5 1 0 0 1 5 1 11
バーミキュライト 2 0 2 0 1 3 0 2
発根数合計 42 35 30 15
発根率 (%) 40.0 33.3 28.6 14.2
保管温度の違いによる発根の様子
左:E. sinica 1-1株 25℃鹿沼細粒土 かけ流し区 右:E. sinica 1-1株 35℃鹿沼細粒土 かけ流し区
灌水方法の違いによる発根の様子
左:E. sinica 1-1株 25℃鹿沼細粒土かけ流し区 右:E. sinica 1-1株 25℃鹿沼細粒土腰水区
平成26年度厚生労働省科学研究補助金(創薬基盤推進研究事業)
研究報告書
ペーパーポットへの挿し木
研究代表者 御影 雅幸 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 教 授
研究要旨 マオウ苗を圃場に植え付ける際には、通常のポット苗 やロングポット苗よりもペーパーポットで発芽育成した苗の方が 著しく活着率が優れていることが明らかになった。そこで、挿し 木法で苗を増殖する際に、直接ペーパーポットに挿し木して苗を 得る方法を検討した。その結果、ミスト法環境下で、植え付け可 能なペーパーポット苗が得られることが明らかになった。また、
1ポットに2本を挿して検討した結果、約半数のポットで2本と も活着した。一方、植物種や個体によって適切な挿し木用土が異 なることが明らかになった。ペーパーポットを利用する本法は、
挿し木後の管理方法に関してさらなる検討が必要である。
研究協力者 倪 斯然 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 博士研究員 嶋 美里 東京農業大学農学部バイオセラピー学科事務職員
金子 純基 東京農業大学農学部生
A.研究目的
中国におけるマオウ栽培地では、通常 苗床で育てた発芽苗を圃場に本植してい る。我々は発芽苗をポリポットに植え替 えて圃場に本植したところ、活着率がか なり悪かった。一方、ペーパーポットで 発芽育成した苗を圃場に植え付けたとこ ろ、活着率が著しく優れていた。そこで、
挿し木苗についてもペーパーポットで作 成して直接圃場に植え付けることを目的 に、挿し穂をペーパーポットに直接挿す 方法を検討した。
B. 研究計画
東京農業大学において、6月17日に実験を 開始し、金沢大学が保有するE. sinica (8-1株)、E. pachyclada (2-1株)、E.
gerardiana(10-2株)を実験材料とした。
用土はバーミキュライト (細粒および中 粒)、赤玉土 (細粒)、鹿沼土(細粒)を 用いた。ペーパーポットは口径が3cmで 高さ10cmのもの(日本甜菜製糖株式会社 製:No.2‑264)と、口径が1ランク細い
径1.9cmで高さ13cmのもの(同:ソ‑1)
を試用した。また、これまでの実験で発 根率が概ね50%であった一部の実験株に ついては、ポットを有効に利用して苗数 を増やす目的で、1ポットに2本挿すこ とも検討した。挿し穂の管理は45分に1 回噴霧するミスト環境下とした。
翌年の2月14日に発根率を評価し、発根 した苗についてはロングポットに植え替 えた。
C. 結果
E. sinica(8-1株)は、鹿沼土では140 本中67本、バーミキュライトでは136本中 5本が発根した。
E. pachyclada (2-1株)はバーミキ ュライトに挿した30本はすべて枯死した。
バーミキュライトで1ポットに2本ず つ挿し木したE. gerardiana(10-2株)で は、全140ポットから98ポット(70%)の 苗が得られた。その中で、2本とも発根し たポットは28ポットであった。
ペーパーポットの太さ(口径)の違いに よる発根率には差が認められなかった。
D. 考察
実験株により、同一種であっても用土 による発根率が大きく異なった。ミスト 環境下で管理したために、保水性が優れ たバーミキュライトでは過水状態となる 悪影響も考えられたが、現時点ではそれ よりも個体(株)による相違の方が大き く影響しているように考えられる。ペー パーポットを使用する本法については更 なる改善のための検討が必要である。
一方、発根した苗では、種子発芽苗と 同様にペーパーポットの側壁からの多数 の発根が認められたことから、ペーパー ポットのまま圃場に植え付けることが可 能であると考えられ、本法はマオウの圃 場栽培に向けての種苗生産に有効な手段 であると判断される。
加えて、1ポットに2本挿すことによ り、1本挿しよりも多くのペーパーポッ ト苗を得ることができた。挿し穂の数が 十分ある場合には、ポットやスペースの 有効利用が可能となる。また、2本挿し して2本とも活着した場合でも、親株が 同じであればクローン株であるので、遺 伝形質としての個体識別をする必要はな い。
また、口径が異なるペーパーポットで 試験した結果、発根率に有意な差が認め られなかったことから、スペース、ポッ ト、用土を有効利用するためには細いポ ット(本研究では、ソ‑1)を利用するの が効率的である。
なお、ペーパーポット苗を機械植えす る方法も開発されているが、発芽率や挿 し穂の発根率が100%に近くない現時点 では、欠株が多くなるため応用が困難で ある。
E.結論
挿し木の際に直接ペーパーポットに挿 すことにより、ペーパーポット苗が得ら れることが明らかになった。また、1ポ ットに2本挿すことにより、得られるポ ット苗数が増え、スペースやポットの有 効利用が図れる。一方、植物種や用土に
よって成績が著しく異なったため、本法 を活用するためには、用土や挿し木後の 管理方法などに関して更なる検討が必要 である。
F.健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表 なし。
2.学会発表 なし。
H.知的財産の出願・登録状況 (予定を含む)
特許取得 なし。
2.実用新案登録 なし。
その他 なし。
鹿沼土(細粒)を詰めたペーパーポット(日本甜菜製糖株式会社製:No.2‑264)に挿し 木した結果
1ランク細いペーパーポッ ト(ソ‑1)を使用しても、
同様の結果が得られた。
(ポットの下から根が出て いるのが観察できる。用土 は鹿沼土細粒)
バーミキュライトを詰めたペーパーポット(No.2‑264)に2本ずつ挿し木した結果
(概ね2ポットに一つが2本とも活着した。ポットの横から発根している様子が見える)
2本とも発根したペーパーポット苗をその ままロングポットに植え付けた状態。
(用土は市販園芸用土)