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(1)

第一章  宇宙の構造 

正距方位図法 

まずは左の図を見てほしい。これは日本を中心に据えた正距方位図である。

地球は球体だが、飛行機の運航などではその便べんからこの種の地図が用いられる。 

この地図の特徴を簡単に説明する。正距方位という言葉から分かるとおり、

中心である日本から任意の地点を見たとき、その距離と方角が正確に描かれて いる。地球が球体であることから、裏側を含めた全体の位置関係をイメージす るのは難しいのだが、この地図を見れば、例えば西欧へ行きたいのなら、西では なく北北西へ約八千

km

飛べばいいことがすぐに分かる。これは地球儀を見な ければ容易には分からないことであり、さらに距離については地球儀よりもこ ちらの方が簡便である。大陸を跨ぐような長距離の航行においては、もっとも 有効な地図となるのである。 

ただしこの図では、日本から見たときに正確と言うだけで、地図上の任意の 二点を結んでも、それは方向も距離も正しくはない。さらに周辺に目をやれば、

例えばアフリカや北米などその形は大きく歪んでいるし、また日本からもっとも離れた大陸、南米にいたっては、この 地図からその形を推測するのは不可能である。日本のちょうど真裏に位置する地点(西経

45

度南緯

35

度)は大きく引 き延ばされ、外周がすべてその地点を示すことになる。形と大きさに関しては地球の正確な描写とはとても言えない。 

確かにこれが地球の地図だと言われても我々にはピンと来ない。なぜか。それは我々が地球が球であることをすで に認識しているからである。もしその認識がなく、また日本から一歩も外に出られず、ただ、その世界を観測できるだ けと仮定したらどうだろう。北(上)方に目をやれば樺太があり北極海がある。さらに遠方を観測すればグリーンランド が見え、大西洋、続いて南米が見えてくる。今度は下の方に目を移そう。東南アジア、オーストラリア、そして南極、南米 と続く。右側には太平洋が延々と続き、かなたに南米が見える。左は中国が続く。ヒマラヤを越え、インド、インド洋、

アフリカ、大西洋、そして、その先に南米が見えてくる。 

「地球は丸いからそんなに遠くまでは見えない」 

確かにそうだが、電波を使えば観測可能になるらしい。結局、どの方向であっても行き着く先には南米が見える。観 測者はその南米をどのように解釈するだろうか。別々の異なる大陸と考えるのがもっともありそうだが、いずれにし ても、球というイメージがない者には地球の全体像は正確には把握できない。彼らにはこの歪曲した地形の集合が地 球そのものなのだ。つまり地球を平地と考え、日本からの観測のみに依存する限り、この地図はまさに地球全体を正確 に描いていると言えるのである。人間以外の動物にとって、地球儀と、この正距方位図と、どちらの方がより現実的で あろうか。 

地球が球であることが感覚的に理解できない動物を二次元生物と考えれば、これまでのことは次のように解釈でき る。 

二次元生物は三次元の構造物を、その展開図、または投影図でしか見ることができず、その全体像を正確に把握 することは不可能である 

アリに向かって、 

「どっちの方向に進んでもブラジルに行けるよ。またその先をずっと進んで行くとここに戻ってくるよ」 

と言っても、信じてもらえないのである。そして、アリと地球のこの関係が、人間と宇宙についても言える。次元はひ とつ増えるが、三次元生物の人間が宇宙の構造を理解する上で困難がつきまとうのは、これとよく似た事情がある。 

これを逆手にとって、アリと地球の類推から宇宙を考えてみれば、複雑な宇宙の構造も理解が可能になるのでは。こ のような発想からいくつかのアイデアが生まれてくる。 

四次元の理解とイメージ 

「オイ、そんな次元の低い話をするな」 

と、叱られそうだが、簡単に次元とは何かを説明する。日常の会話では先のように「レベル」とか「段階」を表すようだ が、ここでは幾何学上の意味のみを取り上げる。 

広がりのない「点」が

0

次元、横のみの「線」が一次元、タテ横のある「面」が二次元、タテ横に高さが加わる「立体」が三 次元である。理論上は四次元も五次元の考えられるのだが、我々が形をイメージできるのは三次元までである。座標で 表すと、次のようになる。図(2). (3). (4). (5). (6).   

図(1) 

(2)

  座標を出したついでに、ちょっと数式を使う。以後、二次元以上だけを扱う。 

x2+y2=r2  (7)    x2+y2+z2=r2  (8)    x2+y2+z2+w2=r2  (9)  これらの式が何を表すか分かるだろうか。(7)は原点を中

心とする半径

r

の円。(8)は原点を中心とする半径rの球を表 す。(9)は後述する。もう少し分かりやすいよう

r

3

を入れ て図示する。 

x2+y2=3 … 図(7)  x2+y2+z2=3 … 図(8)  x2+y2+z2+w2=3 … 図(9) 

表現を変えると、これらは原点から

3

の距離にある点の集合である。このように、定点から等距離にある点の集合を 強引に円と呼ばせてもらうと、左から二次元の円、三次元の円、四次元の円になる。

さて、ここで問題。四次元の円って何だろう。どんな形をしているのだろう。円と呼ぶより球と呼んだ方がいいかな。

では四次元球、これはいったい何を表しているのだろうか。これまでの定義から定点から等距離にある点の集合とな るのだが、こんな説明では分からない。タテ横高さの次にくる第四の次元を空間上に表せないから簡単には図示でき ない。工夫が必要になる。 

よく使われるのは最後の次元に時間を使う方法である。wを空間軸としてではなく、時間軸として、その定時間ごと に残りの次元を座標上に描いていくのである。w軸の-3,-2,-1 , 0 , 1 , 2 , 3を、それぞれ

3

秒前、2秒前、1秒前、現在、1 秒後、2秒後、2秒後と考え、その時ごとに残りの三つの座標のみを示していく。結果、以下のようになる。

 

x2+y2+z2+w2=32のwに-3を代入すれば、x2+y2+z2=0となり図(9a)となる。 

同様にw=-2では、x2+y2+z2=5で図(9b)である。以下も同じ要領で図(9c-9g)となる。 

このように数学上は問題なく処理できるが、この説明では図形のイメージが曖昧でどんな形かがよく分からないと 思う。そこで二次元と三次元の円も最後の座標を時間軸で取って、四次元のそれと並べて図示していく。次元のひとつ を時間軸に取るということだが、実際の形をどのように分けて(切断して)いるかを比較しながら見てほしい。 

 

0 次元 

図(2) 

w

?

z y

x

一次元 

図(3) 

x

二次元 

図(4)  三次元 

図(5)  四次元 

図(6) 

y

x

z y

x

-@5

-@5 @5 -@8

@8

-3 3 23

01 -3-2

-1

x y

0

図(11a)

z

x y

0

図(11b)

x y

0

図(11c)

x y

0

図(11d)

x y

0

図(11e)

x y

0

図(11f)

x y

0

図(11g)

@5 -@5

-@5 @5 -@8 @5

@8 -@8

@8 -@8

@8

-3 3

-@5

@5 3

x 0

図(10a)

x 0

図(10b)

x 0

図(10c)

x 0

図(10d)

x 0

図(10e)

x 0

図(10f)

x 0

図(10g)

-@5

@5 -@8

@8

-@8

@8 -3

3 2 1 0 -1 -2 -3

図(11) 図(10)

y

次元円  3 秒前  2 秒前  1 秒前  現在  1 秒後  2 秒後  3 秒後 

?

-@5 0

-@5 @5 -@8

@8

-3 3 x

y

0

図(12a)

x y

0

図(12b)

x y

0

図(12c) 

x y

0

図(12d)

x y

0

図(12e)

x y

図(12f)

x y

0

図(12g)

@5

-@5 -@5 @5

@5

@8 -@8

@8 -@8

@8

-3 3

図(12)

@5

@5

-@5 -@5

z z

z z z

z z

-@8 -@8

@8

@8 3

-3 -@8

x y 0

z

図(9a)

3 秒前 w=-3 2 秒前 w=-2 1 秒前 w=-1 現在w=0 1 秒後 w=1 2 秒後 w=2 3 秒後 w=3

x y 0

z

図(9g)

@5

@5

@5

-@5 -@5

-@5 x

y 0

z

図(9f)

@5

@5

@5

-@5 -@5

-@5 x

y 0

z

図(9b)

x y 0

z

図(9c)

@8 -@8

@8 -@8

@8

-@8 x

y 0

z

図(9e)

@8 -@8

@8 -@8

@8

-@8 -3

3

x y 0

z

図(9d)

3

3 -3

-3

?

図(9)  図(7) 

x y

-3

3 -3

3

二次元  四次元 

x y

-3

3 -3

3

図(8) 

z

-3 3

三次元 

x y

-3

3 -3

3 z

-3 3

0 0 0

(3)

図(10a-10g)は図(10)を

y

軸にそってスキャンし、図(11a-11g)は図(11)を

z

軸にそってスキャンしたものである。y軸 も

z

軸も空間上で座標を取ることができるので、わざわざ図を分解して表さなくともいいのだが、こうすることで四 次元の円がどのようなものなのか想像できるのではないだろうか。 

簡単に説明する。まず、図(10a-10g).(11a-11g).(12a-12g)は、複数の図に分かれているが、実際には各次元の座標上に 同時に存在する。それぞれを合わせて二次元円、三次元円、四次元円を作っている。また図は各七枚だが、これは時間軸 を一秒間隔に取ったためであり、実際には図と図の間には無数の図が存在する。二次元の円を

y

軸に垂直に切ってい くと図(10a-10g)となるが、切り方を細かくしていけばその間には無数の図が存在し、三次元の円では図(11)を

z

軸に 垂直に切っているわけだが、切り方によっては図(11a-11g)は無限に数を増やせることが分かると思う。そして、そう やってできた図(二次元では点、三次元では円)を重ねていけば元の形に戻るわけだが、四次元の円も同様に

w

軸に垂直 に切断したものが図(12a-12g)でその形は球、その球を重ねていけば元の形に戻ることになる。 

ただどう重ねていいか分からない。w軸に垂直にということは分かっているが、それがどこか分からない。仕方がな い。このままいくつかの球に分けておき、それが同時に重なったものとしておく。 

また、ここで図は重ねられないが、事実として分かることかあるので押さえておく。まず図(12a)の点と図(12g)の点の 距離である。これは図(10a)と図(10g)、または図(11a)と図(11g)を見れば分かるとおり、6(半径の2倍)である。そしてその ふたつの点の関係は、真ん中の図(12d)の右端と左端の点、または上端と下端の点との関係に等しい。これは、w軸を便 宜上の時間軸にしているからであり、実際にはすべての軸は同等であり、すべて四次元空間上の一座標軸である。 

宇宙の全体像 

これまでの説明で四次元円のイメージが掴めただろうか。この四次元円こそが宇宙の構造を理解する最大のキーワー ドである。 

ここで、これから使用する言葉の意味を整理しておく。二次元とはタテ横の世界を、三次元とはタテ横に高さが加わ る世界を表す。そして四次元とはこの三次元世界に第四の次元を加えたもの、これまでは便宜的に時間軸を使ったが、

これから四次元という場合、それはあくまで空間の次元を加えたもの、座標上のタテ、横、高さすべての軸に直交する 軸が加わる世界を四次元とする。そして二次元円を単に「円」と、三次元円を「球」と、そして四次元円を「超球」と呼ぶこ とにする。先の図で言えば、図(10a-10g)を重ねあわせたものが「円」、図(11a-11g)を重ねたものが「球」、そして図

(12a-12g)を重ねたものが「超球」となるわけである。 

以上の言葉を用いて宇宙を表現すれば、それは「超球の表面」という構造を持つ 

「えっ、超球って四次元じゃなかったの。我々の宇宙は三次元だよ」 

そう、この疑問が大切なのである。すべてはこの疑問から始まる。ここはしっかり説明しておこう。しっかり確認し てほしい。 

例によって次元をひとつ落として考えていく。まず、もう一度、図(11)および図(11a-11g)を見てほしい。円を何枚も 重ねていくと図(11)、つまり球になる。球は三次元の構造物である。しかしここで対象を限定する。図(11a-11g)の各円 の円全体ではなく、円の周りだけ、つまり円内は無視して円周のみを対象とする。その円周を重ねていくことで、外見 は同じく図(11)のような形になるが、しかし今度は中身が空っぽの球ができる。ピンポン玉のようなものを考えればい い。それ全体は確かに三次元的だが、面だけを考えるなら、それは二次元構造を持つと言える。地球上にいる我々が、

地球が球であると認識するのに時間がかかったように、それは大きければ大きいほど平面と変わらなくなる。地球く らいの大きさの風船があれば、その外皮は二次元であるといっても問題はない。 

さて、宇宙である。図(12a-12g)の各球の球面だけを着目し、重ねていってほしい。そうやってできるものは超球の表 面、三次元の空間となる。中身まで対象にしてしまうと我々には重ねあわせることはできない。我々の頭の中では四次 元の構造を描写できないからである。できなくていいのだ。ただ球面のみを考える

のなら可能であり、重ねあわせの結果、球状の三次元構造が作られる、それがまさに 宇宙の形である。 

閉じた三次元の宇宙 

「境界のない閉じた宇宙」という言葉を聞いたことがあるだろう。現代の宇宙論を 扱った本には必ず出てくる言葉である。これがどういう物であるか。超球の表面と いう構造はこの言葉を考えていく上で必然的に生じてくるのである。 

図(13)を見てほしい。平面をくるりと丸めて球状にした物、これを二次元の閉じ た境界のない宇宙と考える。ただそれは球面のみを指すのであって、その中身まで は対象にしていない。この宇宙には中心はない。境界もないし、面として閉じている。

そして大切なことは、これは二次元宇宙であるが、その全体像を把握するには、どう しても第三の次元、タテ、横に続くもうひとつの次元、高さが必要になるということ

二次元宇宙 

くるりと丸めて

三次元宇宙 

円を  球を 

図(13) 

(4)

だ。面に貼り付いているような二次元生物には、この二次元宇宙の全体像、その正確な形を頭の中ですら描写できない。 

閉じた二次元を描写するのには三つの次元が必要になるのと同じく、閉じた三次元を正確に描写するには四つの次 元が必要になる。四次元は数式上では簡単に表現できるので、そのためか現代の宇宙物理学者はそれの視覚的な描写 をあまり重視していない。絵には描けないがそうなっている、としか言ってくれない。彼らには数式上の四次元が簡単 にイメージできるのだろう。しかし実はここに問題がある。これらの適切な解説がないため、多くの人には宇宙全体の 感覚的な理解が伴わず、現代の宇宙論は難しいとか、あまりにも

SF

的だとか、しまいにはバカバカしいとさえ考えら れてしまうのである。 

確かにこの宇宙の鳥瞰図を書くことはできない。三次元上でも表現できない物を、紙面、つまり二次元上に書くこと などできるわけがない。理論上つまり数式では問題なく処理できるのだから無理に描写しなくてもいい、これがいま までの姿勢だった。図(13)の?の部分をさらりと流してきたのだ。 

完全には描写できない。しかし地球という三次元も今までに多くの人々の創意工夫で地図(二次元)上に表されてき ているわけだし、この宇宙も感覚的な理解が可能になるくらいの描写ができないものか。この本の主題である。まだ不 完全だと思われるところもあるが、そのイメージをなんとか分かりやすく伝えようと思う。便宜上、図を多用するがそ れらの図を見ながら説明を読んでほしい。 

次元のコンパクト化 

数学者は高次元の世界をよりよく理解するために様々な手法を用いてきた。そのひとつに次元数を減らす方法があ る。図(14)を見てほしい。上が見取り図、下が真横から見た図である。次元をひとつ 落とすために、次のような操作を行う。ここでは例として、「三次元の球」を「二次元 平面上」に投影する方法を示す。 

中心からもっとも離れた地点に基点を置き、そこから球面上の任意の点に直線を 引き、その延長線と、中心に接する平面との交点に印を付ける。空間上のすべての点 をこの要領で平面上に移し取っていくと、球は円として投影される。三次元から二 次元にひとつ次元を減らしたのである。これを次元のコンパクト化という。 

ただ図を見れば分かるとおり、この方法では基点となる最遠の場所は、平面上で は無限遠になってしまう。そこで中心からの角度のみをこの方法で取り、距離は球 面上の弧の長さを取る。このようにして投影したものが実は正距方位図なのである。三次元球面(x2

+y

2

+z

2

1

2

)上の任

意の点

(x,y,z)は、二次元円(x

2

+y

2≦π2

)上の (

 

x {asin(z)

 

x

 2  

+

 +π/2 

y

 2   

}

 

,

 

)

 

 

2  

x

 

y

 2 

y {asi n(z)

   +π/2   

}

+

   

に移る。(asin=

sin

-1

高次元になっても要領は同じである。こうして次元をひとつ落として見ることで、より理解を深めるのである。 

宇宙の正距方位図 

地球を正距方位図法で表したように、宇宙をそのように描いていくと、三次元上に表せるのではないか。宇宙の正距 方位図を考えてみる。 

図(15-1)がそれである。地球の正距方位図が円なら、三次元宇宙のそれ は球になる。この図では地球を中心に据えているが、宇宙の中で地球が特 別な場所ではなく、どこを中心に置いてもいいわけだが、これは、地球から 見た宇宙、と考えてほしい。図(15-2)が北極を中心に据えた地球の正距方 位図である。経線と緯線だけ

10

度間隔で示してある。 

図(15-2)の円周が南極点を表す。大きく引き延ばされているが、中心(北 極)から見た最遠の地点は回りを囲むように見える。図(15-1)の外殻つまり

球面は、地球からもっとも離れた地点を表す。宇宙の果てと考えてもいいが、その果てから見れば、地球が果てになる。 

ただこれは、何者も光速を超えることはできないという原理を無視し、宇宙の果てまでを瞬時に見渡せるものとし て描いてある。 

「そんなもの非現実的だ」 

確かにそうだが、現実的な描写は後にゆずるとして、とにかくまず、その構造を把握してもらいたいのである。境界 のない閉じた宇宙とはどんな形なのかをここでしっかり押さえておく。そうしないと、後述する現実的な宇宙がひど く非現実的になってしまう。 

   

中心 

図(14)  基点 

基点  中心 

北極 

南極  地球 

図(15-1)  図(15-2) 

最遠の地  最遠の地 

南極  南極 

南極  赤道 

赤道 

(5)

第二章  宇宙横断旅行 

アリ登場 

この本にはアリが何度か出てくる。実はモデルがいる。我が家に住みついている白い蟻、アリ・モハメドである。あえ て彼と呼ぼう。彼は人語を解し、水上をも歩くことができるスーパー蟻である。床下から出てきて、いつも僕を観察し ている。半透明の体には光沢があり、その荘厳な輝きはパールの美しさを思わせる。 

その彼がある日僕に尋ねた。 

「南極って、どこにあるんだ。どうすれば行けるんだ」 

きのう僕はビデオで、映画「復活の日」を見ていたのだが、それを覗いていたらしい。ここで、ちと、いや、かなり強引 で恐縮なのだが、僕の家は北極の氷上にあるものと諒解していただきたい。 

「なあ、南極だよ。知っているんだろ」 

難しい質問である。地球儀を見せた。 

「よく見えないぞ」 

スーパー蟻のアリだが、彼にはその小さな背丈に起因すると考えられる大きな欠点があった。宙に浮いているよう な構造物は見えないらしい。僕は彼を摘み上げ、地球儀の上に乗せてやった。北極の上に降ろし、ここが家のある場所 だと教えた。 

「どちらでも好きな方歩いていくんだ。南極が見えてくる」 

(馬鹿かこいつは) 

という顔で、僕を見たが、とりあえず彼は歩きだした。少しずつ進み、「まだかまだか」とうるさい。まだまだ、…、あれっ、

どこに行ったの。 

「ここだ」 

と、意外なところから声がした。で、どこだ。 

落ちていた。地球儀の台の横で、彼はひっくり返ったまま、恨めし気に僕を睨んでいた。 

仕方ない。僕は図(15-2)の地図を床に広げた。そして、仰向けの彼を指で拾い、北極の上に降ろし、 

「ここがウチだ」 

再び摘み上げ、 

「ここが南極だ」 

と、右下の南極(の文字)の上に置いた。 

「余計なことをするな。自分で歩かなければ分からん」 

と、ぶつぶつ言いながら、彼は凄まじいスピードで紙上を歩きまわった。 

「南極ってたくさんあるのか」 

難しい質問である。少しどもりながら、 

「ひとつだよ」 

と答えると、 

「ここにも、ここにも、ここにもあるじゃないか」 

と、彼は次々と南極の字の上を飛びまわった。 

「それ全部がひとつの南極なんだ」 

「人間だからって偉そうにするな。そんなこと誰が信じるか」 

「本当なんだ。信じてくれよ」 

この哀願が通じたか、彼はしばらく考えた。そして、 

「じゃこの目で見て来るからな」 

そう言うと、電光石火のごとく家を飛び出していった。と思ったら、すぐに戻ってきた。 

「忘れていた。距離を教えろ」 

二万キロという僕の言葉に、微塵の驚きも見せず、彼は再び、ブリザードが吹き荒れる氷上へ飛び出していった。 

アリの大旅行 

アリの無謀とも思える勇気に触発されたというわけではないが、我々も宇宙の旅に出ることにしよう。地球から最 遠の地まで行くことにする。ただ、現在の膨張宇宙では、光速で進んだとしても一周することはできない。この章は四 次元構造を理解するためと割り切って、宇宙の膨張を無視、さらに宇宙の大きさもかなり小さいものと仮定する。もち ろんは速度は、光速に準じ、相対論の時間の縮みも無視する。 

我々の宇宙旅行、アリの南極探検、それぞれの行程をしっかり確認してほしい。我々は図(16-1)の、アリは図(16-2)

(6)

BB B B B ZZZ

A A

EEE GG G

FF F DDD

CCC

ZZ Z CCC

DD D A A EEE

EE E EEE

EEE

EEE

EE E EEE

EEE EEE

図(19-1)  図(19-2)  図(19-3) 

の、中心AAAAAAからBB点を通り最遠のZZまで行く。それぞれの記号を簡単に説明すると、図(16-2)ではAAAが北極、BCDE が赤道上の点、Zが南極となり、図(16-1)ではAAAが地球、Zが最遠の 地、BCDEFGが地球と最遠の地との中間点となる。図(16-2)の BCDEを結んだものが赤道という線になるわけだが、図(16-1)では BCDEFGを結んだものは線ではなく面(球面)となる。宇宙の赤道面 と呼んでもいいが、あくまで「地球を中心」に置いたときの話であ る。また今後、地球とは図(16-1)の地球に限定し、混乱を避けるた め図(16-2)は地球と呼ばずに二次元宇宙と呼ぶことにする。そし て図(16-1)は三次元宇宙と呼ぶ。 

正距方位図では、中心から外れると正しく表すことができないため、以降の図はすべて旅人(アリ)を中心におき、そ の移動に応じて、まわりの風景が変化するように描いている。イメージがわきにくいので、二次元宇宙隣の立体図(16-3) でアリの位置を確認してほしい。三次元宇宙の場合は描けないので、二次元のそれから類推していくほかない。 

では旅を始めよう。全行程の六分の一進んだのが図(17)である。 

 

図(17-2)では北極から離れるに連れて、前方で南極Zが一点に集 結し、それがだんだんと近づいてくる。またアリがいくら進んでいっ ても、CD点の位置が変わらない。おかしな感じはするが、実際に北 極から南極へ進んでいく状況を頭の中で考えてみてほしい。進行方 向の垂直線上の赤道点は常に真右と真左に見えるのが分かるだろ う。 

 

同じような状況が図(17-1)に関しても言える。最遠の地Zは一点 に集結し近づいてくる。またCDFGの点は位置が変わらない。 

 

三分の一進んだが図(18)で 

 

ちょうど半分まで来たときが図(19)だ。その円周(球面)部を見てほ しい。図(19-2)の円周部はE点である。現在の中心点Bから見れば、

E点は最遠の地となるため、四方どこを向いても同じように見える。

大きく引き延ばされて円形になる。出発時の南極点と同じ位置取り になるわけだ。 

 

問題は図(19-1)だ。外殻が何を指すか想像できるだろうか。現在の 中心、B点の最遠の地、Bから見た宇宙の果て、つまりE点である。E 点が四方八方を囲んだ球面形になる。 

 

三分のニ進んだ状況が図(20)、 

 

六分の五が図(21)で、 

図(16-1)  図(16-2)  図(16-3) 

AA AA

B E

Z Z G

FF D

C

B C

D Z E

Z

Z Z

Z Z

Z Z

Z Z

Z Z ZZ

ZZ

A A A A

図(17-1)  図(17-2)  図(17-3)  BB B

EE E

ZZ Z GG G

FF F DDD

CCC

BBB CCC

DD D EEE

A A A A

BBB EEE

ZZZ GGG

FF F DD D

CCC

BB B CCC

DDD EE E

ZZZ

図(18-1)  図(18-2)  図(18-3) 

図(20-1)  図(20-2)  図(20-3) 

B B BB

ZZZ A A

EEE GG G

FFF DD D

CC C

ZZZ CCC

DDD 図

B B BB

ZZZ A A

EEE GGG

FF F DD D

CCC

ZZ Z CC C

DDD AA A

EE E

図(21-1)  図(21-2)  図(21-3) 

(7)

B

B B B

ZZZ

A A EE E

GGG

FFF DD D

CCC ZZZ CC C

DDD AA A EEE

図(27-1)  図(27-2)  図(27-3) 

 

全行程つまり目的地(ZZ)に達した状態が図(22)だ。 

二次元宇宙では南極に到達、三次元宇宙では地球AAAから見た宇宙 の果てに到達したことになり、それが中心(ZZ)となる。 

図(22-2)の円周部、および図(22-1)の外殻部が何になるか分かるだ ろうか。図(22-2)では北極が、図(22-1)では地球がそれに当たる。共 に大きく引き延ばされ回りを囲んだ形になる。イメージするのは困 難だが、正距方位図ではこうなるのだ。 

   

旅を再び続けよう。今来た道を引き返さず、そのまままっすぐ進む ことにする。 

 

同じように二次元、三次元の図を並べて書いていくが、説明は三次 元宇宙だけ取り上げる。宇宙の果てから地球に戻る旅となる。 

 

 

帰路についてまもなく地球AAAが前方に収縮する。図(23-1).(24-1) 

 

中間点Eに到着すると周囲はB点で囲まれる。図(25-1)  

 

さらに進んでいくとB点は前方で集結し、また上下右左の各点

CDFGは全く位置を変えない。図(26-1) 

 

地球AAAまであと少し。Zは後方遠くに見える。図(27-1) 

 

そして地球AAAに帰還した。外殻部がZになることはもう説明を要 しないだろう。図(28-1) 

ZZ Z ZZZ

BBB EEE

AA GG G

FFF DD D

CCC

EE E CCC

DDD BBB A A

AA A A

AA

A A

AA AA

A A A A

図(22-1)  図(22-2)  図(22-3) 

BBB BBB

ZZZ

AA EE E GGG

FF F DDD

CCC

ZZZ CCC

DDD EEE AA A

図(23-1)  図(23-2)  図(23-3) 

BBB BB B

ZZZ

A A EEE GGG

FF F DDD

CC C

ZZZ CCC

DD D AA EEE

図(24-1)  図(24-2)  図(24-3) 

BBB

BBB ZZ Z

A A EEE GGG

FF F DD D

CCC

ZZ Z CC C

DDD A A EE E BB B

BBB

BBB

BBB

BBB

BBB BB B

BBB

図(25-1)  図(25-2)  図(25-3) 

BB B BB B

ZZZ

A E A EE

GG G

FF F DDD

CCC ZZZ CC C

DDD A A EEE

図(26-1)  図(26-2)  図(26-3) 

図(28-1)  図(28-2)  図(28-3) 

AA A A A

BBB EEE

ZZZ GG G

FF F DD D

CCC

BBB CC C

DDD EEE ZZZ

ZZZ ZZZ

ZZZ

ZZZ

ZZZ ZZZ

ZZZ ZZZ

(8)

地球と宇宙横断の動画による説明 

  右の動画は上半分が二次元宇宙のアリの旅を、下半分が 三次元宇宙の旅人のそれを表している。二次元宇宙では、

白が北極、黒が南極、他の色は赤道上の点を表し、三次元宇 宙では、白が地球、黒が最果ての地、他は中間地点を表して いる。

まずは①と②を見てほしい。 前章の旅の図を動画にした ものである。周りの風景が旅人(アリ)の移動につれてどのように変化してい くかがよく分かる。前章で「地球が前方で集結する」という表現を用いたが、

それがどのような感じなのか、このアニメを見ればよく分かると思う。この アニメはエンドレスだが、どこがスタートかを押さえてほしい。白い点、上の 画では北極、下では地球が中心に来る時、つまり旅人(アリ)と白が重なったら スタートである。

次に③と④を見てほしい。③は北極上空から見下ろしたもの、④は南極上

空から見下ろしたものである。白と黒がこちらの方に盛り上がっているように感じられると思う。③と④を見るだけ で、我々にはそれが⑦のような立体的なものであることが分かる。

問題は⑤と⑥である。⑤は地球の側から見下ろしたもの、⑥は宇宙の果ての側から見下ろしたものである。

「日本語の使い方がおかしい?」

確かに、でも、四次元生物にはこれで通じるのである。また、図の奥行きが感じられるだろうか。

「えっ赤が手前でシアンが奥」

違う違う。そんなことを感じてほしいのではない。白と黒が、つまり地球とその果てがこちらに浮き出ているよう に感じてほしのである。四次元空間ではそうなっている。それが分からないのは我々が三次元しか視覚化できないか らである。

最期に⑧の図を見てほしい。見方を説明する。空っぽの空間の中央に小さい白い点がぽつんと見える時がスタート で、それが地球である、こちら側に突き出ていると思ってほしい。それがだんだんと大きくなるが、途中から白いもや がかかったようになり、その中を今度は球が小さくなっていく。それが点にまで小さくなった時が宇宙の果てへの到 着である。それは紙面の向こう側に沈んでいるものと見てほしい。移動する黄色い点が旅人である。どのように動いて いるか、また周りがどのように変化しているかを考えながら、目ではなく頭で見てほしい。そう、ヨーダのいう Force 理 力で見るのである。色々なことが見えてくるはずである。

8 6 5 2

① 3

① 7

(9)

第三章  続・宇宙の構造 

アリの憂鬱 

我が家に戻った僕を、憔悴しきった様子でアリが待っていた。彼は一足先に旅から戻ってきていた。僕を見たとたん、

彼は駆け寄ってきた。 

「やっぱりウチだったんだ。なあ、ここは俺のウチだよな。俺の生まれた所だよな」 

あの、日頃から傲慢とも思える態度の彼が、人(アリ)が変わったように弱々しい物腰で僕に尋ねてきた。 

「俺、もう何がなんだか分からなくなってきた。聞いてくれよ。こんなことってあるか。こんな馬鹿なことが」 

彼は今にも泣き出さんばかりに旅のことを話し始めた。彼の話しを右の図を使って説明する。 

彼は僕が先に説明した行程とは違って、まずC点を経由して南極Zへ行った。彼はアム ンゼン・スコット基地があったことで、それが南極であることを確認したという。ただ奇妙 なことに、この世界は南極で終わると考えていたのに、その先もずっと氷の大地が続いてい た。我々からすれば当たり前のことだが、彼はとても驚いたという。先に進みたいという誘 惑もあったが、いったん家に帰ろうと考えた。そして、大胆にも南極点に立つポールにオシッ コ(蟻酸)をひっかけ、来た道を引き返した。そして北極AAAに戻り、すぐに、今度はB点を経由 し、再び南極に向かった。見覚えのある建物、アムンゼン・スコット基地があった。そして極 点のポールには、間違いなく自分が放出した蟻酸の臭い、マーキングの跡が残っていた。 

(そんな馬鹿な。なぜ) 

彼はかなり動揺したらしい。あやうくアメリカ人のブーツに踏みつけられそうになったという。そして、そこにも、

地図にはない、南極より先の地面が続いていた。 

(ここを歩いていくとどうなるのだろう) 

不安はあったが、まっすぐ進んでいくことにした。氷原が途切れると、ずっと海が続いていた。太平洋なのであろう が、彼はとにかく先を急いだ。暑くなり、そしてまた寒くなり、氷の世界に戻った。前方に見慣れた建物があった。我が 家にそっくり、生活の跡も見える。間違いなく我が家だ。 

彼は北極AAAに帰ってきた。僕がいなかったので、はっきりと確認はできなかったのだが、ここが自分の家であること は間違いないと思った。とにかく僕と話したいと、ずっとここに居て、そしてやっと僕が帰ってきた、と、彼は言う。 

その話しを聞きながら、僕は顔の表情が緩んでくるのが分かった。あの偉そうなアリ・モハメドがこんなにも慌てふ ためき、必死に話しをしているのだ。これまで忘れかけていた人間としてのプライドが少しずつ蘇ってきた。 

二次元生物と二次元宇宙 

地球の地表に貼り付いて生きているような生物に、地球の立体構造を理解させるにはどうしたらいいだどうか。た だしアリのような微小な生物でも、我々と同じ高さそしてその概念を持っており、決して純粋な二次元生物ではない。

ここでは仮想上の二次元生物、つまり面の中で生きている、高さとういう概念を全く持たない生物を考える。彼らには タテと横の概念しかない。正距方位図で中心からの位置関係が分かったとしても、まっすぐ進んでいけば元の場所に 戻ってくることなどは分からない。高さのイメージがないわけだから、彼らに地球儀のような物をそのまま提示する こともできない。提示できるのは面だけである。 

「よーく分かった。モハメド君」 

僕の言い方にカチンときたのか、一瞬、顔が曇ったアリだが、何も言わず、僕の次の言葉を待った。 

「話しはよく分かった。ただひとつ、気になる言葉があるのだが、俺のウチっていったいなんだい」 

アリはきょとんとして、 

「えっ、ここのことじゃないか。そんなこと決まっているじゃないか」 

と、弱々しく言った。 

「ここは僕のうちだよ。勘違いしてもらっては困る」 

「…」 

余計なことだとは思ったが、アリの狼狽ぶりがあまりにもおかしいので、少しからかってみたくなった。黙り込み、

恨めしそうに僕を見ているアリ。モジモジと両方の前脚を擦り合わせている。僕は思わず吹き出しそうになったが、

あまりバカなことばかり言ってはいられない。彼の質問に答えるのは大変なのだ。自分が持ち出した話しだが、それを すぐに引っ込め、とにかく本題の説明のため、僕は図(29)ような絵を描き始めた。 

二次元宇宙の輪切り 

地球を緯線に沿って切断した、その断面図を用意する。北緯

90

度で切断すると点になる。これが現在地である。北緯

75

度で切断すると半径

1648km

の円になり、この円周部が現在地から

1667km

離れた地点の集合となる。同じく

60

AA A   D 

BBB    CCC    E 

ZZZ    

Z  Z 

ZZZ   

(10)

のそれは半径

3185km

の円になり、その円周部が現在地から

3335km

離れた地点の集合となる。このように繰り返して いき赤道(緯度

0)までくると、その断面は半径 6370km

の最大の円になりその円周部は現在地から約

1

km

離れた地 点の集合となる。 

ここまでで点がひとつ、円が六 個できたが、これで地球の約半分 を表したことになる。ただし、円の 内側には何の意味もないことを留 意してほしい。あくまで円の回り が地表を具現しているだけで、そ の中身は考えてはいけない。六個 の円は三次元上では小さい物から 順に積み重なった感じになってい るのだが、彼ら二次元生物にはそ れは分からない。円と円が少し間 延びしながらうまく繋がっている のだと言うしかない。 

次に南緯

15

度で切断する。半径

6153km

の円になり、円周部は現在地から

11673km

離れた地点の集合になる。南緯 が大きくなるにつれて円は小さくなる。南緯

30

度、これは現在地から

13341km

離れた地点の集合だが、その半径は

5516km

である。そして南緯

90

度、ついに大きさを持たない点となる。南極である。約

2

km

離れた地球の裏側、現在

地から見た最遠の地である。 

今は

15

度間隔で切っていったが、それをだんだん細かくしていけば、より詳しく表現できる。そして無限に細かく 切っていき、それによってできる無限個の円の集合が地球の全地表を表すことになる。点から始まりだんだんと円が 大きくなり、半径

6370km

で最大になる。その後、元に戻るように小さくなり、最後に点で終わる。 

この説明で二次元生物君は理解できただろうか。難しいだろうなと思うがそれが本来の目的ではない。我々の宇宙 理解が目的なのだから、後の宇宙の説明が実を結ぶよう、この地球の断面の意味をよく考えてほしい。北極、南極の二 点と無限個の大小円の集合が地表になることをしっかり認識してほしい。円の中は関係ない。あくまで円周の集合で ある。円周という線を重ねていきそれで面を作るということを確認してほしい。さらに、地球の正距方位図の外周部、

地図上では大きく描かれているが実際にはかなり小さい。特に円周部の南極は実際には一点なる、このことも大切で ある。 

三次元宇宙の断面 

四次元上でしか鳥瞰できないこの三次元宇宙を切断する。我々はそれを切る道具を持っていない。その切断の様子 をイメージすることすらできない。そこで先程の地球の切断を考える。北緯

75

度の線で切った面の円周部は北極点か

1667km

離れた地点の集合に

なった。そこで宇宙では逆に現在 地から

xkm

離れた地点の集合を考 える。現在地を地球とする。地球か ら

xkm

離れた地点の集合は球にな る。もちろん対象になるのは球の 外殻部(球面)だけで、内側は何も表 してはいない。前章の切断ではそ れは円であった。宇宙においては 球になる。ではどのように切るの か?僕には分からない。切るのじゃ なくて繰り抜く?いや、確かに切る。

切断だ。そしてそれが球になるこ とも確信を持って言える。 

「地球から

xkm

離れた地点の集 合が球になるのは当たり前」 

確かにそうだ。ただ、地球から

xkm

離れた地点の集合と

x-1km

離れた地点の集合の半径の違いが

1km

と考えては いけない。前章の状況と比較しながら、その意味を考えてほしい。 

ニ次元宇宙の切断 図(29) 

南極

赤道

北北極北極極 赤道

赤道

南極

南極

赤道

赤道 北極からの距離10006 km 南緯15北極からの距離11673 km 南緯30北極からの距離13341 km 南緯45北極からの距離15009 km 南緯60北極からの距離16676 km 南緯75北極からの距離18344 km 南極 北極からの距離20012 km 北緯15北極からの距離8338 km 北緯30北極からの距離6670 km 北緯45北極からの距離5003 km 北緯60北極からの距離3335 km 北緯75北極からの距離1667 km

南極

三次元宇宙の切断 図(30) 

最遠の地

中間点 地球からの距離90億光年 地球からの距離75億年 地球からの距離60億年 地球からの距離45億年 地球からの距離30億年 地球からの距離15億年

地球からの距離105億光年 地球からの距離120億光年 地球からの距離135億光年 地球からの距離150億光年 地球からの距離165億光年 地球

?

最遠の地

最遠の地 最遠の地

地球

最遠の地 地球からの距離 180 億光年

(11)

とりあえず

x

の値を徐々に大きくしていく。切断面の球はどんどん大きくなり、やがて最大になるが、その時の

x

は 地球から最遠の地までの距離の半分である。その後は小さくなる。ここが大切だ。地球からの距離が大きくなるのに切 断面は小さくなる。そして最遠の地で最小(点)になる。 

復習する。より分かりやすいように、地球とその最遠の地までの距離を

180

億光年とする。まず点(地球)から始まる。

地球から

15

億光年離れた地点の集合は球面になる。30億光年、45億光年と離れていくにしたがい、その球は大きくな る。そして

90

億光年離れた地点で最大になり、後は逆に小さくなる。そして最遠の地で、点になって終わる。球面と他 の球面は繋がっているのだがどのように繋がっているか分からない。図(29)の切断円と比較してほしい。どのように関 係しているのか漠然とながら理解できると思う。そして次に切断の間隔を限りなく小さくしていく。それによって大 小の球面が無限にできるが、それらとふたつの点が宇宙全体を表す。 

三次元宇宙の鳥瞰図 

正距方位図では確かに宇宙全体を表すことができるのだが、周辺部ではかなり拡大され、実際のイメージとは大き く異なってしまう。なんとか見取り図を作れないものか。今まで「?」で誤魔化してきたところに図を当てはめること ができないか。 

無理を承知で書くなら図(31)になる。もっとも一枚にするには少し 想像力が必要になる。この図を矢印の方、つまりこの紙面の向こう側 に折り曲げ、ふたつの図を重ね合わせたもの、それが宇宙の模型とな る。 

「これまでの説明をそのまま具現化しただけ。何枚かの球を重ねて いるだけじゃないか」 

と、がっかりした方も多いと思う。ただ、今後のことを考えると、現

時点では、大体こんな感じだと諒解してほしい。後でまたこれとは違ったアプローチからの模型を紹介する。 

宇宙の大きさ 

最近の宇宙論の本では宇宙の大きさを

180

億光年としている物が多い。しかしこれがよく分からない。地球の大き さはよく分かる。半径

6370km、体積 8.12E+11km

3、面積

5.099E+8km

2、直径

12756km、まわりの長さ 40024km

といろいろ 表すことができる。では、宇宙の

180

億光年っていったい何なのだ。光年は長さの単位だから考えられるのは半径、直 径(立方体なら辺の長さ)、まわりの長さ、などだが。 

宇宙はビッグバンで始まって、そして

180

億年の歳月が流れ、大きさが

180

億光年になった、とよく書かれている。

ほぼ光速で膨張を続けたから大きさが

180

億光年になった。この記述から考えると、図(30)の正距方位立体の球の半径 がそれに当たるようだ。地球の大きさを例に取れば、正距方位図の半径つまりこれは北極と南極の距離に相当する。

距離といっても地下に潜っていった最短距離(地球の直径)ではなく、半弧、つまり地球一周の半分に当たる。 

中途半端な値を取っている感じはするが、とにかく宇宙の大きさは、宇宙一周の半分、をいう。言い換えれば地球と その最遠の地までの道のりであり、地球を特別な物と考えないなら、宇宙の二点を取り、その道のりが最大となるとき の値である。図(30)の宇宙の切断球を考えると、大きさが最大になった球(中間点の集合)のまわりの長さの半分が宇宙 の大きさだ。ああ、めんどくさい。 

   

中間点

地球 最遠の地

図(31) 

(12)

第四章  宇宙模型の標準理論 

今、面白いぞ宇宙論 

宇宙は不変な存在ではない。この事実が宇宙論を面白くしている最大の要因である。もし宇宙というものが、無限に 大きく、無限に古く、その大きさや年齢を知ることは無理、それを考えること自体が意味のなさないような存在であれ ば、今日の宇宙ブームは決して起こらなかったであろう。僕自身、幼い時には、宇宙をそのような絶対的な存在と考え ていた。だから天文学と聞くと何やらヒマそうな、星座とかを覚えたり、星の分類をしたり、とにかく退屈な学問に違 いないと思っていた。 

「宇宙つーのは、ビッグバンで始まったんだなー」 

地球の構造を理解したアリは、次は宇宙だといわんばかりに、あれから毎日話しかけてくる。 

「俺、少し勉強したんだぜ。聞いてくれよ」 

彼のながーい話しが始まった。 

「空間も時間もなんにもないところで、量子の揺らぎがトンネル効果によって、無から有を生み出したって、すごい ねぇ。そしてだ、その時の相転移によって莫大なエネルギーが解放され、生まれたばかりの宇宙があっと言う間に、あっ と言うほど大きくなっちまった。これがインフレーションっぅやつだな。これがいかにすごいかは、…中略…後略」 

アリはどこで仕入れたのか、ビッグバン宇宙の概要を一気に話した。 

「こうして現在まで膨張を続け、大きな宇宙になったんだな」 

ビッグバン、経済の話しにも出てくるほどポピュラーになった言葉だ。僕は中学生のころに初めて知った。学校の廊 下によく張られている子供新聞などの掲示物のひとつに、黒い地の中心に爆発が描かれており、「宇宙はビッグバンと 呼ばれる大爆発で生まれたらしい」というコメントが付けられていた。 

(へー、宇宙って爆発で始まったのか) 

と、子供心に感心した記憶がある。しかし、すぐにハテナが頭をよぎった。何がハテナかよく分からない。なぜかしっ くりこないのだ。今、当時のことを考えてみると、あの新聞の絵のあの黒地の部分、あれって宇宙空間ではないのか、そ もそも宇宙が生まれるってどういうこと、と疑問を抱いたのだろう。 

さらに時が経て、高校時代のことだが、宇宙が膨張しているということを聞いた。しかも光速で膨張していると。そ れを聞いた僕は最初に大変だと思った。これじゃ永遠に宇宙全体を把握できないじゃないか。そしてまたハテナがよ ぎった。膨張ってどういうこと。なんで宇宙が大きくなるの。宇宙って大きさがあるのか。じゃその向こうって何。やっ ぱり宇宙じゃないのか。このあたりの記憶ははっきりしている。あの時の疑問が僕を宇宙論に導く最大の要因になっ ている。 

ここで、ビッグバン宇宙の概要をアリの話しから抜き出し、まとめてみよう。 

1. 宇宙開闢 何もない、空間も時間も存在しない状態から突然宇宙か生まれた。ミクロな状態で宇宙は始まった。

とっても小さいのね、最初は。 

2. インフレーション 文字どおり天文学的なスピードで宇宙は成長する。インフレだって、やっぱり経済と仲が いいんだね宇宙は。 

3. ビッグバン インフレーションは終わり、その後通常の膨張に移行する。これまでの事象を総称してビッグバ ンと呼ぶ。 

4. 晴れ上がり 膨張により温度が下がってくる。約30万年後、温度が数千度となる。このとき始めて原子が形成

される。電子によって進行を妨げられていた光が自由に飛びまわれるようになる。宇宙が晴れ上がる。 

5. 銀河形成 膨張により、宇宙の密度は小さくなるが、重力という悠久の力により、物質に偏りが生まれる。物が あると重力が生まれ、さらに物を引きつける。この繰り返しにより、宇宙には物のある所とない所ができてく る。この物のある所が銀河となる。 

6. 恒星形成 膨張は続くが、銀河のような物質密度の高いところでは、重力が優勢で、結果、太陽のような恒星が 形成される。物質の密度はさらに大きくなり、限界を超えると、そこに原子の灯が燈る。水素の核融合により恒 星は明るく輝く。 

7. 現在 宇宙は何もない所と物質が集まっている所に別れたまま膨張を続け、ビッグバンから約 180 億年後の

今日、その大きさは約180憶光年になった。 

アリの記憶力には恐れ入った。だが、こいつ解っているのか、こんな難しい話を。なんとなく分かった気になっては いけない。疑問は疑問、これをはっきりさせていくことがこの宇宙論の最大の面白さである。同時に捨てるところは捨 てる覚悟も必要だ。人間には決して分からないこと、例えば開闢以前の状態、これなど多くの仮説が提出されているが、

おそらくそれらは永遠に仮説であろう。実証不可能なことを追ってはいけない。ホーキングがどんなに偉大でも、虚時 間がどうであっても、いいじゃないか。とにかくある時点で宇宙は生まれた。始まりがある、それだけでいい。ここでは

(13)

哲学は要らない。 

標準理論理解のための基礎知識 

まず、下準備。必須の知識をまとめておく。事実としてこれからのことを把握してほしい。深くは考えない。理解でき るかどうかもここでは関係ない。あくまで事実、物の理はこうなっているのだとだけ押さえてほしい。 

電磁波 

長波、中波、短波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、これらはすべて電磁波である。波長の違いによ り名称、性質が変わる。図(32) 

人間の目に知覚されなくても、みんな光である。荷電粒子の移動によって発生する。光はどの波長であっても必ず光 速で飛ぶ。一秒間に

30

km

である。よって

3

m

を波長で割ったものが周波数となる。 

物質の三態+1 

すべての物質は、固体、液体、気体の三つの態を持つ。これは温度と圧力で決まり、その温度と圧力が物質によって異 なっている。鉄も高温では気体になる。ドライアイスも圧力をかければ液体になる。この他に、物質がさらに高温にな ると、原子から電子が遊離、つまり原子が壊れる。この状態をプラズマという。 

運動力学 

力と運動と質量の間には厳密な関係があり、ニュートンにより法則化されている。詳しく知る必要はない。ただ、地 球と月など、ふたつの星の相対運動が分かれば、その天体の質量比が確定する。また、例えば、火星にバネばかりを持ち 込み分銅の重さを測れば、火星の質量が分かる。人間の賢さが実感される分野である。 

これはどれだけ質量があればどれだけ重力を生むか、どれだけの力が作用すればどれだけの加速を得るかなどが正 確に分かっているからである。 

熱力学 

熱という物質はない。物質を構成する原子分子の振動が熱になる。振動が激しいと高温、弱いと低温、止まると絶対 温度零度(摂氏、約-273度)になる。記号で書くと、0K(-273℃)である。 

熱の伝わり方は、放射、対流、伝導がある。物質に触れると、その振動が伝わる。これが伝導。地球上では軽いものは上 へ重いものは下へ移動する。空気や水は温度が高いと軽く低いと重くなり、よって上下に流れが生じる。これが対流。

すべての物質は温度に相応する電磁波の放射を行う。温度は粒子の振動だった。電気を帯びた粒子(荷電粒子)、ここで は電子、それが振動すると電磁波が発生する。また電子は電磁波の吸収もする。アンテナと思えばいい。これに伴う熱 の出入りが放射。よって温度は電磁波の波長と関係がある。ゆっくり振動すれば長い波長、激しく震動すれば短い波長 となる。 

素朴な疑問 

「電磁波って光だろ。君の体は暖かいから振動している。これって体から光が出ているということになるのか」 

最近のアリはとにかくうるさい、と同時に少しずつ鋭くなっている。僕の説明に突っこみを入れてくる。 

「そう、もちろんおまえの身体からも出ている」 

僕の体からはかなりの赤外線が出ていると思われる。最近のテレビでよく見かける熱を感知するカメラ、あれはま さにこの電磁波(赤外線)を見ている。ただし、このとき、赤外線のみを出していると考えてはいけない。振動の強さはバ ラバラなのである。温度によってその上限だけが規定されているだけで、のんびり屋さんの電子はのんびりと振動す る。赤外線を出しているということは、それより波長の長い電磁波をわずかであってもすべて出している。 

さらに逆手を取れば、物質から放出される電磁波の波長と量を正確に測ることができれば、その物質の温度が分か る。 

「じゃこの白い紙は

1

万度か」 

素朴な疑問である。 

「違う。紙は光を反射しているだけであって、放射しているわけではない」 

光はエネルギーの固まりであり、熱を運ぶが、それ自身には熱はない。光は吸収されてその物質の振動に影響を与え、

10-15 10-14 10-13 10-12 10-11 10-10 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 1 101 102 103 104 105 10-16

1025 1024 1023 1022 1021 1020 1019 1018 1017 1016 1015 1014 1013 1012 1011 1010 109 108 107 106 105 104 103 マイクロ波 電波

紫外線 赤外線

γ線

波長 [m]

周波数 [Hz] サ 

ブ  ミ  リ 

センチ

超短波 短波 中波 長波 超長波 ミリ波 極超短

真空紫外線

 

光波長 図(32) 

波長 [nm]

400 435 485546578590670700

参照

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(平成 17 年1月 17 日東京都自然環境保全審議会答申).

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