Newsletter of The National Museum of Modern Art, Tokyo [Dec. 2014-Jan. 2015] │ 8
伝統 工 芸
の
最高
の ﹁ わざ ﹂ を
重要無形文化財保持者
・ 保持団体
の
代表的作品等
で
紹介
する
文化庁主
催
の ﹁
﹁ 日本
のわ ざと 美 ﹂ 展
│重要無形文化財
とそれを 支 える
人々
│﹂ が 始
ま っ
た の
は ︑ 筆者 が 文化庁伝統文化課在任中 の 平成 八 年 度 からであ っ た ︒
この 展覧会 は ︑ 年 に 二会 場 ︵ 平成 二 十 二 年 度 からは 一会 場 となる
︶ ︑ 各地 の 教育委員会等
との
共催
で
開催
され ︑
平成
二 十
五 年 度 で 三十二会 場 を 数 えた ︒ 全国 の 多 くの 人々 に ︑
伝統 工 芸 のす ばらしさを 鑑賞 し ︑ 楽 しんで い た だ くことで ︑ 我 が 国 の 伝統 工 芸 への 関心
と 理解 を 深 めていた だいている も の と 考 えてい る ︒ また ︑ 各会場 の 必 ずしも 工芸 を 専門
としな い 学芸員 の 方々 にも 伝統 工 芸 への 理解者 にな っ て い た だ い て い る こ とも ︑ ひじ ょ
うに 意義 ある ことと 思 って い る ︒
この 展覧会 では ︑ 昭和三 十 年 の 第一 次 認 定 から その 年度 までの 重要無形文化財保持
者 と 同保持団体 のすべ て の 作品 を 展示 する こ と を 基本 とした ︒ 因 みに ︑ 平成 八 年 度 は
保持者数 はの べ 一一 三 人 ︑ 保持団体 は 十三 ︒ 染織作品 は 展示替 えをするためそれぞれ 二
点用意 する こ と に し て ︑ 工 程見本 四点 を 含 めると 総数 一 六 四点 とな っ た ︒ 作品選定 にあ
た っ
て は
︑ 文化庁所蔵作品 の 活用 を 優先 したがとても 全 てとは い かず ︵ 八十三点
︶ ︑ 他 の
所蔵先 から 多数借用 しなけれ ばならな か っ た ︒ 中 でも 東京国立 近代美術館 工 芸館 から
は 三十 点 もの 多 くの 作品 をお 借 りす る こ と に な っ た ︒ これ は ︑ とりもなお さ ず 同館 が 多
くの 優 れた 作品 を 所蔵 してい る からに 他 ならな い ︵ 平成 二 十 五 年 度 は
︑保持者数 のべ 一六 九 人
︑保持団体数十 四 団 体
︑総点数 一 八 九 点
︑うち 文化庁所蔵作品九 十 一 点
︑東京国立 近代美術館
所蔵作品 四 十 五 点
︶ ︒
さて ︑ 昭和五 十 二 年 に 東京国立 近代美術館 工 芸館 が 開館 した 際 ︑ その コ レ ク シ ョ ン の
基礎 とな っ た のが ︑ 文化庁 からの 管理換 の 伝統 工 芸 の 作品 四 三 四点 である ︒
ここで ︑ 文化庁 が 文化財保護委員会時代 から 多年 にわた っ て 伝統 工 芸 の 作品 を 収集
して き た その 歩 みを 辿 って み る こ と に し よ う ︒
昭和二 十 五年文化財保護法 が 制定 され ︑ はじめて 無形文化財 ︵ 演劇
︑音楽
︑工芸技術
その 他 の
文化的所産
でわが 国 にと っ て
歴史上又
は
芸術上価値
の 高 いもの ︶ が
保護
の
対象
と
な っ
た の
で あ
る が
︑ 当初 は ﹁ 無形文化財 のうち 特 に 価値 の 高 いもので 国 が 保護 しなけれ
ば 衰亡 の 虞
おそれのあるものに つ い ては
﹂ ﹁ その 保存 に 当 ること を 適当 と 認 める 者 に 対 し ︑ 補
助金 を 交付 し ︑ 又 は 資材 のあ っ 旋 その 他適当 な 助成 の 措置 を 講 じなければならない ﹂
とするものであ っ た ︒ 昭和二 十 七年 から 行 われた ﹁ 助成 の 措置 を 講 ずべ き 無形文化財 ﹂
に 選定 されたのは
︑ ﹁ 志野 ゆ
﹂ ︵
荒川豊蔵
︶ ︑ ﹁
天目 ゆ
﹂ ︵
石黒宗麿
︶ ︑ ﹁
江戸小紋
﹂ ︵
小宮康助
︶ ︑
﹁
蒟醬
﹂ ︵ 磯井雪枝
︶ 等四十七件
︒ この 中 に
︑ ﹁ 色絵磁器
﹂ ︵ 富本憲吉
︶ や ﹁
蒔絵
﹂ ︵ 松田権六
︶
は 含 まれて い ない ︒ この
法律
のもとで 作品資料 の
収集
が 始 められたが ︑ 完成品 ︑ 文書
記録 ︵ 写真挿入 ︶ とともに ︑ 工程見本 ︑ 工具 見本 等 が 付 け 加 えられるものが 多 くあり ︑ と
にかく 衰亡 してはいけ な いので 記録資料 だけは 残 そうと い う 意向 が 強 く 働 いていたよ
うである ︒
昭和 二 十 九年文化財保護法 の 改正 が 行 われ ︑ それまで の 選定 は 白紙 に 戻 されて
︑ ﹁ 衰
亡 の 虞 ﹂ のあるなし に か か わら ず ︑ 歴史上 ・ 芸術上価値 の 高 いもの が 保護 の 対象 となり ︑
新 たにほぼ 現行 に 近 い 重要無形文化財 の 指定及 びそ の 保持者 の 認定制度 が 設 けられた ︒
翌三十 年 二 月 第 一 次 の 認定 を 受 けた のは
︑ ﹁ 色絵磁器 ﹂ の 富本憲吉
︑ ﹁ 鉄釉陶器 ﹂ の 石
黒宗麿
︑ ﹁ 瀬戸 黒
﹂ ﹁ 志野 ﹂ の 荒川豊蔵
︑ ﹁ 民芸陶器 ﹂ の 浜田庄司
︑ ﹁ 江 戸小紋 ﹂ の 小宮康助 ︑
﹁ 長板中形 ﹂ の 松原定吉 と 清水幸太郎
︑ ﹁ 伊勢型紙突彫 ﹂ の 南部芳松
︑ ﹁ 伊勢型紙道具彫 ﹂
の 中島秀吉 と 中村勇 二 郎
︑ ﹁
伊勢型紙錐彫 ﹂ の 六谷梅軒
︑ ﹁ 伊勢型紙縞彫 ﹂ の 児玉博
︑ ﹁
伊
勢型紙糸入 れ ﹂ の 城 ノ 口 みゑ
︑ ﹁ 蒔絵 ﹂ の 高野松山 と 松田権六
︑ ﹁
銅鑼 ﹂ の 魚住為楽
︑ ﹁ 衣
裳人形 ﹂ の 堀柳女 と 平田郷陽 の 十八人 であ っ た ︒
つぎに ︑ 第一 次 認 定 の 重要無形文化財保持者 ・ 松田権六 や 石黒宗麿等 が 牽引 し ︑ 作
品発表 の 舞台 とした 日本 伝統工芸展 の ︑ 授賞制度 を 採 り 始 めた 昭和三 十 年 の 第二 回 展
所蔵作品展
﹁
近代工芸案内
│
名 品 選 による
日 本の美
﹂
工芸 館
の コ レ ク シ ョ ン の 基礎
とな っ た
文化庁
から の
管理換作品
に 係
るこ と に つ い て
佐々木
正 直
会期二〇一四年十二月五日│二〇一五年二月十五日 会場工芸館
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から 四十 年 までの 主 な 受賞者 を 拾 い 出 してみよ う ︵
︵︶
内 は 重要無形文化財保持者認
定 の 年
︶ ︒
第二 回 展 磯井如真 ︵ 昭和三 十 一
︶ ・ 森口華 弘 ︵ 昭和 四 十 二
︶ ︑ 第三 回展 黒田辰 秋 ︵ 昭和 四
十五
︶ ・ 近藤悠三 ︵ 昭和五 十 二
︶ ︑ 第四回展 増村益城 ︵ 昭和五 十 三
︶ ・ 大場松魚 ︵ 昭和五 十 七
︶ ︑
第五 回展 角谷 一 圭 ︵ 昭和五 十 三
︶ ・ 佐々木 象 堂 ︵ 昭和三 十 五
︶ ・ 清水卯 一 ︵ 昭和六 十
︶ ・ 志村
ふく み ︵ 平成 二
︶ ・ 西出大三 ︵ 昭和六 十
︶ ︑ 第六 回展 長野垤志 ︵ 昭和三 十 八
︶ ・ 赤地友哉 ︵ 昭和
四十九
︶ ・ 氷見晃堂 ︵ 昭和 四 十 五
︶ ・ 斎田梅 亭 ︵ 昭和五 十 六
︶ ︑ 第七 回展 田村耕 一 ︵ 昭和六十
一 ︶ ︑
第八 回展 鈴木藏 ︵ 平成 六
︶ ・ 田口 善 国 ︵ 平成 元
︶ ︑ 第九 回展 三代 魚 住 為 楽 ︵ 平成十 四
︶ ・
増田三男 ︵ 平成 三
︶ ︑ 第十 回展 高橋敬典 ︵ 平成 八
︶ ・ 中䑓瑞真 ︵ 昭和五 十九
︶ ︑ 第十 一 回 展
小宮康孝 ︵ 昭和五 十 三
︶ ・ 鎌倉芳太 郎 ︵ 昭和 四 十 八
︶ ︑ 第十 二 回 展 関谷 四郎 ︵ 昭和五 十 二
︶ ・
十三代 今 泉 今 右 衛 門 ︵ 平成 元
︶ ・ 塚本
快示 ︵ 昭和五 十 八
︶ ︒
この
時期
︑ 松田権六
や
石黒宗麿 等日本 伝 統工芸展
の
初期
から
指導
的役割 を 果 たした 作家 たちの 名作 ︑
そし て 次 の
重要無形文化財保持者
の
第二 世 代
とも い え る
作家
たちの
意欲作
が
出品
され ︑
日本 伝統工芸
展 の
歴史
を 飾 る
作品
がつ ぎ つ ぎ と
生 み 出 されて い く ︒ 日本 伝統工芸展
草創期
の
熱気
が 伝 わっ て く る
作品
群 である ︒
文化庁
で 長 い
間無形文
化財 ︵ 工芸 技 術 ︶ を 担当 し ︑ 伝統 工 芸
を
見続
けてきた
柳橋眞
は
昭和三 十
年代 からこれに 続 く 四十 年 代 を ﹁ 伝
統工芸 の 黄金 時代 ﹂ と 呼 んだ ︒
文化財保護委員会 ・ 文化庁 は ︑ 昭
和三 十四年 度
から
購入予 算
を
大幅
に
増額
し ︑
年 々 重 要 無形文化財保 持者
の
作品及
び
日本 伝 統 工 芸展
の 受賞作品 など 有力作家 の 作品 を 多数購 入 して いく ︒ それらは ︑ 戦後 の 大 きな 伝統 工 芸
の 潮流 を 形成 する 主要 な 作品 の 数々 であ っ た ︒
この よ う な 経緯 で 収集 された 作品 の 中 から 選 ばれた 四三 四 点 が ︑ 東京国立 近代美術
館工芸館 のコ レ ク シ ョ ン の 中核 をなす こ と に な っ た の である ︒
今日 ︑ 伝統 工 芸 の 世界 は ︑ 父 ・ 森口華 弘 に
師事
した 森口邦 彦 ︑ そし て 松田権六 の 謦
咳 に 接 して 大 きな 影響 を 受 け ︑ その 後田 口善国 にも 師事 した 室瀬和 美 等日本 伝 統工芸
展 ︑ 重要無形文化財保持者 の 第三 世代 が 指導的立 場 にある ︒ 彼 らの 代表的作品 も 工芸
館 のコ レ ク シ ョ ン に 加 えられ つ つ あ る ︒ そし て ︑ 今年 の 第六十 一 回日本伝統工 芸展 では ︑
彼 らに 師事 した 若 い 世代 の 作家 の 何人 かが 受賞 を 果 たした ︒ 受賞作 がその 年 の 展覧会
を 代表 し ︑ そし てその 展覧会 を 語 り 得 る 作品 とするなら ば ︑ 将来
コ レ
ク シ
ョ ン
に
加 わる
ことは 十分考 えられる ︒ これから も 伝統 工 芸 の 作品 が 東京国立 近代美術館 工 芸館 のコ
レ ク
シ ョ
ン の
重要 な 柱 であり 続 ける に 違 いない ︒ ︵ 群馬県立館林美術館長 ︶
石黒宗麿《彩瓷柿文壺》昭和34年 東京国立近代美術館蔵(昭和52年度管理換)
稲垣稔次郎《結城紬地型絵染着物 竹林》
昭和33年 東京国立近代美術館蔵
(昭和52年度管理換) 撮影:米田太三郎