九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Catalytically inactive Cas9 impairs DNA
replication fork progression to induce focal genomic instability
土井, 吾郎
http://hdl.handle.net/2324/4475019
出版情報:九州大学, 2020, 博士(医学), 課程博士 バージョン:
権利関係:(c)The Author(s)2021. Publishedby Oxford University Press on behalf of Nucleic Acids Research. This is an Open Access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License.
(別紙様式2)
氏 名 土井 吾郎 論 文 名
Catalytically inactive Cas9 impairs DNA replication fork progression to induce focal genomic instability 論文調査委員 主 査 九州大学 教授 中別府 雄作
副 査 九州大学 教授 林 哲也 副 査 九州大学 教授 住本 英樹
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
触媒不活性型Cas9(dCas9)は、標的遺伝子の転写活性化および不活性化、生細胞可視化、
そして塩基編集のツールとして、ますます普遍的に利用されるようになってきた。dCas 9が塩基置換や挿入・欠失を引き起こすことは報告されていたが、これまで反復配列の構 造変化とは関連づけられていなかった。本研究において申請者は、dCas9が出芽酵母にお いて複製フォークの進行を阻害し、縦列反復配列構造を不安定化させることを明らかに した。約16個の反復単位からなるCUP1反復配列をdCas9の標的にすると、ほとんどの細胞 でCUP1反復配列の短縮が誘導され、特にニコンチンアミド共存下でその短縮が顕著であ った。複製中間体の解析から、dCas9結合部位の近傍で複製フォークが停止していること が示された。遺伝学的解析の結果、dCas9によるゲノムの不安定化は、複製進行複合体の 構成要素であるCtf4とMrc1、またアクセサリーヘリカーゼであるRrm3によって抑えられ ているが、組換えを司るタンパク質であるRad52やRad59による一本鎖アニーリングに依 存していることが示唆された。dCas9による複製フォークの進行阻害は、従来のdCas9応 用においては潜在的なリスクであるが、ゲノム不安定性のメカニズム研究およびその操 作における新しいツールとしての有用性が期待される。
以上の成績はこの方面の研究の発展に重要な知見を加えた意義あるものと考えられる。
本論文についての試験はまず論文の研究目的、方法、実験成績などについて説明を求め、
各調査委員より専門的な観点から論文内容及びこれに関連した事項について種々質問を 行ったが概ね適切な回答を得た。
よって調査委員合議の結果、試験は合格と決定した。