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Japanese Psychological Review 2017, Vol. 60, No. 3, How can we capture the development of interest?: Review and integration of previou

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1.はじめに

学校教育において,児童生徒が教科の学習に 興味をもって取り組むことは,教師共通の願いと いってよいであろう。我が国の学校教育の基本 的教育課程を示した『学習指導要領』の中でも,

「興味・関心」を「高める」「生かす」「重視する」

といった表現が随所に使われてきた(文部科学 省,2008, 2009, 2010)。しかし, 実際には, 児童・

生徒の学習に対する興味の低さが長年に渡り問題 視され続けている。たとえば,Harter(1981)は,

横断研究において,小学3年生から中学3年生の 学習に対する興味について検討を行った。結果,

学年が高いほど興味が低いことが明らかとなっ た。また, Dotterer, MaHale, and Crouter (2009) は,

縦断研究においても7歳から18歳にかけて学習 への興味が低下することを示している。特に日本 においては,他の国と比べて学力は高いが,教科

への興味が低いことが指摘されている (小倉,

2008)。

教育心理学における先行研究は,学習場面に おいて,興味の高さが重要な変数であることを 明らかにしている (レビューとしてHidi, 1990;

Silvia, 2006な ど)。 た と え ば,興 味 は,成 績

(Ainley, Hidi, & Berndorff, 2002;Rotgans &

Schmidt, 2011),他の動機づけ変数(Harackiewicz et al., 2008),学習方略(Hidi & Ainley, 2008;Lee, Lee & Bong, 2014),学習行動の継続(Fulmer &

Frijters, 2011) に対し, 正の影響をもつことが示さ れている。

一方で,興味のような学習のおもしろさ自体に もとづく動機づけは,学習成果と直接的な関連が 見られないことを示す研究も存在する(e.g.,西 村・河村・櫻井,2011)。たしかに,興味を高め るための取り組みの中には,学習成果にはすぐに 結びつかないように思われるものもあげられる。

学習・教育場面における興味の深化をどう捉えるか

―鼎様相モデルによる諸研究の分析と統合―

田 中 瑛津子1・市 川 伸 一2

1名古屋大学

2東京大学

How can we capture the development of interest?:

Review and integration of previous research using a three-element model

Etsuko TANAKA1 and Shin’ichi ICHIKAWA2

1Nagoya University

2The University of Tokyo

Interest in learning has an important role in learning context. Recent research on interest focuses not only to how much interest there is but also on the extent that the interest develops. The less-developed and well-developed interests are established in different ways and have different functions. However, a unidi- mensional model proposed in previous studies does not clearly capture the differences in the development of these interests. This article proposes a model that identifies the level of development of interest based on three elements: continuity, inherence, and value. These three elements define the development of interest more clearly and make it possible to describe different psychological states of interest. Using this model, previous studies were reviewed and analyzed in an integrated manner. Finally, we discuss future research on both interest and insight for educational practice.

Key words: learning, development of interest, continuity, inherence, value キーワード:学習,興味の深化,時間的持続,内容本質性,価値随伴性

(2)

たとえば,授業の途中に教師が雑談を入れたり

(松原・庄司, 2005),教科書に吹き出しのついた キャラクターをイラストとして挿入したりするよ うな例も見られる。また,理科の授業に興味をも たせるために,実験や体験活動を増やす試みも見 られる (角谷,2008)。こういった工夫は,一時 的に生徒の注目を集め,浅い興味を生起させるこ とはできるが,持続的に学習に対する深い興味を 育むことはできない。つまり,興味を単に高い低 いという観点のみで捉えるのではなく,その深さ の違いに着目し,教育実践のあり方を考える必要 がある。

そこで本稿では,興味という概念に着目し,こ れまで教育心理学研究において興味がどのように 扱われてきたのか,そして近年の興味研究の知見 を概観する。その上で,興味の深さをより明確に 捉える新たな枠組みを提案し,先行研究の知見を 統合的に理解する。さらに教育実践への示唆と今 後求められる研究の展開について議論していき たい。

2.興味研究の歴史的展開

「興味(interest)」は,19世紀後半から心理学 的な変数としてデューイやピアジェなどの研究で 言及されている (Renninger & Hidi, 2011;Silvia, 2006;Wigfield & Cambria, 2010)。行動主義の台 頭により興味を扱う研究は1960年代まで少なく なった(Silvia, 2006)が,その後多くの心理学者 が様々な観点から研究を行った。これらの研究 は,興味を一時的な心理的状態として捉えた研 究と,持続的な個人的特性として捉えた研究の 大きく2つに分けられることが指摘されてい る

(Hidi, 1990;Krapp, 2002;Krapp, Hidi, & Renninger, 1992;Schiefele, 2009;Silivia, 2006)。研究者によっ て異なるラベルが用いられるが,一時的な心理 的状態としての興味は,状況的興味(Situational interest), インタレスト (Interest:単数形)と呼ば れ,それに対して持続的な個人的特性としての興 味は,個人的興味(Individual interest),特性興味

(Personal interest),インタレスツ (Interests:複数 形)と呼ばれる (Silivia, 2006)。本論文では,前 者の興味を状況的興味,後者を個人的興味と記述 する。

状況的興味を扱ったものとして,興味を感情の 一種として扱った一連の感情研究(e.g., Berlyne, 1960;Reeve, 1989;Tomkins, 1962),学習者の興 味を引き起こす教材文の特徴やその効果を検討 した文章に基づく興味(Text-based interest)研究

(e.g., Garner et al., 1991;Hidi & Baird, 1988;

Sadoski, Goetz, & Fritz, 1993;Schraw, 1997) などが あげられる。個人的興味を扱ったものとしては,

特定の集団における個人的興味の平均値の変化 や他の動機づけ変数との関連について検討した 一連の研究(e.g., Horn & Walberg, 1984;Köller, Baumert, & Schnabel, 2001),職業選択と個人的興 味との関連について検討した職業興味(Vocational interest) 研究 (e.g., Holland, 1997;Tracey & Rounds,

1993) などがあげられる。

3.興味の定義と概念的特徴

このように様々な観点から興味研究が行われて きたが,同じ「興味」という言葉を用いていても 研究によって扱っている概念が異なっていたり,

逆に異なる言葉を用いても同じ現象を扱ってい たりする場合が散見される。Renninger and Hidi

(2011)は,組織的に研究がなされるようになっ たのは,ここ30年ほどであり,未だに適切な理 論が示されていないと指摘する。「興味」という 言葉は日常において様々な意味を含んで使用され ているため,その意味するところが不明瞭である

(Valsiner, 1992) という指摘もある。

興味の定義について,Brophy (2004)は「興味 とは授業,テキスト,学習活動に注意を集中する ことである(大河内訳,2011, p. 247)」と述べて いる。Renninger (2009)は,興味は時間をこえて 対象に再度取り組もうとする心理的状態および傾 向性であると記述している。また,鹿毛(2013)

は「興味とは,ある特定の対象に注意を向け,そ れに対して積極的に関与しようとする心理的状態 を意味する用語である (p. 133)」と指摘している。

本論文では,Renninger(2009)と鹿毛(2013)の 定義に基づき,興味を「ある特定の対象に注意を 向け,それに対して積極的に関与しようとする心 理的状態および傾向性」であると定義する。

次に,興味の概念的特徴について述べる。多く の興味研究において共通する興味概念の中心的特

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けるような場合がこれに該当する。したがって,

興味はフローよりも幅広い心理状態を含む概念と いえる。

エンゲージメントは,「興味や楽しさを感じな がら気持ちを集中させ,注意を課題に向けて持 続的な努力をするような「熱中」する心理状態」

(鹿毛, 2013, p. 7)と定義される。エンゲージメ

ントは行動的側面,感情的側面,認知的側面の3 つの側面があると指摘されているが,興味と重な るのは感情的側面,認知的側面であると考えられ る。ただし,エンゲージメントも活動の表面的特 徴によって一時的に注意を向けるような場合は 含んでいないため,深い興味に該当する概念であ ると考えられる。また,エンゲージメントはその 場の心理状態のみを対象とし,個人の傾向性は含 まれないという点も,興味とは異なっている。

また期待×価値理論(Wigfield & Eccles, 2000)

の文脈では,課題の価値として「実用価値」「達 成価値」「興味価値」「コスト」の4つが指摘され て い る。 こ の う ち「興 味 価 値(intrinsic value)」

は,「活動遂行から得られる個人的な楽しさや課 題に対する個人的興味」(鹿毛, 2004)と定義さ れ,興味と同様の項目によって測定されることも ある。ただし,期待×価値理論の文脈では,課題 をどう認知しているかという観点から検討がなさ れ,他の価値との比較に焦点が当てられることが 多い。一方,興味研究では興味自体や興味を引き 起こす要因について検討されることが多いため,

研究のアプローチが異なるといえる。

以上のように,心理学においては興味と類似の 概念が多くあるが,近年の興味研究の大きな特徴 として,興味の深化という観点を取り入れている ことがあげられる。以下では,興味の深化が興味 研究においてどのように捉えられてきたか,興味 の深化という視点を取り入れることでどのような 示唆が得られるかについて述べる。

4.興味の「深化(development)」 という

視点の導入

Hidi(1990)は,それまでに行われてきた多様

な興味研究を概観し,個人的興味を中心に扱った アプローチと状況的興味を中心に扱ったアプロー チの大きく2つに分類できることを指摘した。こ 徴として,興味は人と環境との相互作用を通して

形成されるため特定の内容に対して生じるという ことが指摘されている (Krapp, 2002;Renninger &

Hidi, 2011;Renninger & Su, 2012)。したがって,

興味について論じる際には必ず,「理科に対する 興味」「この本に対する興味」など,特定の対象 が必要となる。また興味は,外発的な動機づけの ように賞罰によって引き起こされるものではない が,対象そのものだけではなく対象を取り巻く外 的要因(たとえばテキストや教師の特徴)によっ て引き起こされる場合もある。そして,状況的興 味のような一時的な心理的状態と個人的興味の ような持続的な傾向性の両方を含む概念である。

続いて,興味という概念の動機づけ研究におけ る位置づけを整理するため,類似の概念との関係 性について論じる。まず興味を包含する概念とし て内発的動機づけがあげられる。内発的動機づけ は,外発的動機づけとは対照的に,課題や活動そ のものに対する楽しさや関心によって動機づけ られ,自発性や目的性が特徴である(安藤・岡 田, 2007;Ryan & Deci, 2000)。鹿毛 (1994) がレ ビューしているように,内発的動機づけはコンピ テンスやイフェクタンス動機づけ等を含む包括的 な概念であるといえる。興味は,外的な目的のた めではなく,課題や活動そのものの特徴や性質に よって生じるため,内発的動機づけの一部である といえる。

興味と同じく内発的動機づけに内包される類 似概念として,好奇心,フロー,エンゲージメン トがあげられる。好奇心は「新奇な情報を得る ための探索的行動を誘発する,知りたい,見た い,経験したいという願望」として定義される

(Grossnickle, 2014;Litman, 2005)。興味は,ある 特定の対象に対する心理的状態や傾向性であるの に対し,好奇心は特定の文脈に依存しないため,

興味と好奇心は異なる概念であるといえる。

フロー(Csikszentmihalyi, 1991)は,「自己の没 入感覚をともなう楽しい経験」(浅川, 2012)と 定義され,活動の難しさと自身の能力が高いレベ ルでつり合っている時に生じる。フロー状態にあ る時には対象について積極的に関与するため,興 味が高い状態であるといえるが,興味はフロー以 外の多様な心理的状態も内包している。たとえ ば,活動の表面的特徴によって一時的に注意を向

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モデル(four-phase model of interest development)

を提起した。それぞれの局面は,感情,知識,価 値の量などの違いによって区別される。1つめの 局 面 で あ る 誘 発 さ れ た 状 況 的 興 味(triggered situational interest)は,環境や課題の特徴によっ て一時的に感情や認知プロセスに変化が引き起 こされることによって生じる興味である。2つめ の局面である維持された状況的興味(maintained situational interest)は,誘発された状況的興味に 後続する興味の局面であり,課題の意義を感じた り積極的参加を行うことを通じ,持続的に注意 が向けられたり,取り組んだりする状態のことで ある。3つめの局面である発現した個人的興味

(emerging individual interest)は,特定の内容の授 業に対し,くり返し取り組みたいと長期的に望む 初期の興味であり,ポジティブ感情,知識の蓄 積,価値の認知を伴う。4つめの局面である深化 した個人的興味 (well-developed individual interest)

は,より多くの知識や価値の認知を伴い,特定の 内容の授業に対して,くり返し取り組みたいとよ り長期的に望む興味である。このように興味深 化の四局面モデルでは,興味は深化するにつれ て,持続性が高まるだけではなく,価値の認知や れを受け,Mitchel (1993) は,高校生の数学に対

する興味について質問紙調査を行い,個人的興 味と状況的興味が別々の因子に分かれることを 示した。さらに状況的興味には,キャッチ型興 味(catching interest)とホールド型興味 (holding

interest)という2種類の興味があることを示唆し

た(図1参照)。キャッチ型興味には,グループ ワーク(group work)やパソコンの利用(com- puters),ウォーミングアップとしてのなぞなぞ

(puzzles)が授業で取り入れられるとおもしろさ を感じるというような内容の項目が分類された。

一方ホールド型興味には,数学を学習する重要 性を感じていること(meaningfulness)や,受け 身的でなく能動的に参加できる授業であること

(involvement)を示す項目が分類された。キャッ チ型興味に比べホールド型興味のほうが,授業に 対する興味を測定した項目との相関が高かったこ とから,ホールド型興味を高めることが,生徒の 興味を育む上で特に重要であると指摘した。

Krapp(2002)は,キャッチ型興味のように外

的な刺激によって初めて状況的興味が引き起こさ れる段階から,ホールド型興味のように状況的興 味が学習中にある程度持続する段階を経て,比較 的長期的に取り組む傾向を示す個人的興味へと,

段階的に興味が質的変化をとげることを指摘した

(図2参照)。すなわち,興味に「development」と いう視点を取り入れた。「development」の一般的 な訳語は「発達」であるが,発達という言葉を用 いると加齢による変化を指しているように誤解が 生まれる可能性が高いため,本稿では「深化」と いう訳語を用いる(田中,2015)。

さらにHidi and Renninger(2006) は,個人的興 味をさらに2つの段階に分け,興味深化の四局面

図1 数学の授業における状況的興味の構造(Mitchell, 1993, p. 426, Figure 2)

図2 興味深化の異なる3つのレベルと2つのステップ

(Krapp, 2002, p. 399, Figure 4)

(5)

点においては, 深い興味であると捉えることもで きる。

以上にあげた例のように,興味の深化を1次元 上に表す枠組みではそれぞれの種類の興味を明確 に位置づけることが難しい。そのため,数多く行 われている興味研究の知見が有効に蓄積されてい ない現状がある。実際,興味の深化の程度の違い に留意した研究は複数行われているものの,4つ の段階をそれぞれ弁別的に測定する尺度は作成さ れてこなかった(Renninger & Hidi, 2011)。した がって,興味の深化の意味を明確化し,それぞれ の興味を統合的に捉えられる枠組みが必要である といえる。

5.興味の深さを捉える鼎様相モデルの提案

以上の問題意識を踏まえ,本稿では興味の深さ を捉える枠組みとして,「鼎様相モデル」(tripartite

model of interest)を提案したい(図3)。先行研

究では,興味の深さを規定する要素として複数 の側面が指摘されてきた。たとえば,Hidi and Renninger (2006) の提案した4局面モデルにおい ては,それぞれの興味が,感情,知識の量,価値 の認知,持続性,問いの生成,生起要因などに よって特徴づけられている。また,湯・外山

(2016)は,興味を「感情」「価値」「対象関連の 知識」の3つの側面から捉えている。これらの要 素は全て興味の質を捉える上で重要な関連要因で あるといえるが,一部興味の要素とはみなしにく いものも含まれている。たとえば,対象に関連す る知識の量が,興味の原因となったり結果となっ たりすることはありうるだろうが,知識を多く有 しているからといって必ずしも深い興味を抱いて いるとはいえず,興味そのものとは考えにくい。

したがって,鼎様相モデルにおいては,対象に関 連する知識の量を興味の深さを捉える軸とはして いない。また,問いの生成についても,深い興味 の性質ではなく,深い興味をもった結果の行動を 指していると考えられる。

感情と価値については,感情の強さは興味の高 さを規定し,価値の認知の有無は興味の深さを規 定すると考えられる。したがって,本稿では興味 の深さを捉える軸として,感情ではなく価値の認 知の有無に着目する。先行研究においても,浅い 知識の蓄積が伴うことが指摘された。また,浅い

興味は,環境によって興味が維持されているのに 対し,深い興味は,外的な要因がなくても維持さ れる。

上記で述べた興味の深化という枠組みは,以下 の点で重要な示唆を含んでいる。まず,興味の高 さだけではなく,その深さの違いに着目すること が可能になった (e.g., Durik & Harackiewicz, 2007;

田中, 2015)。たとえば,教科書に載っているカ

ラフルな炎や花火の写真を見て説明文を読み始め た時の炎色反応に対する興味と,炎色反応の仕組 みやそれがどうやって花火に応用されているかを 深く理解し価値を認めた上で生じる興味とは,深 さが異なると考えられる。仮に,どちらも学習者 が炎色反応に対して高い興味を抱いている状態だ としても,前者は比較的浅い興味,後者は比較的 深い興味であるといえるであろう。つまり,興味 の「高さ」はその強度を,「深さ」は興味の種類 や質の違いを示す。深い興味の特徴として,より 持続的であること,教材や教具,教師などの環境 的要因に依存したものではなく学習内容そのもの によって生起させられること,知識や価値を含む ようになることが指摘されている。加えて,興味 が浅いものから深いものへ「深化」するという視 点をもちこんだことで,脆弱で衰滅しやすいが介 入しやすいものからはたらきかけを行い,介入し にくいがより頑健で持続的なものへと徐々に変容 させていくようサポートを行うというアプローチ を考えることが可能になる。

ただし,今までに示されてきたモデルでは,興 味の深化が1次元上に捉えられているため,興味 の深さの違いを十分に捉えられていないと考え られる。たとえば,理科の教師が生徒の要望に 応じて,毎回の授業で実験を取り入れたとする。

そうすると生徒は,「理科の学習は,いつも実験 でいろいろな機材をさわることができるのでおも しろい」と持続的に理科の授業に対して興味をも つようになるかもしれない。しかし,これは本当 に深い興味と呼べるものだろうか。一方,理科の 授業で慣性の法則について学んだ際に,電車が急 停車した時に身体が倒れそうになるのは慣性がは たらいているからとわかり,理科の興味を感じた 場合はどうだろうか。一時的に生じた興味ではあ るものの,理科のもつ価値に気づいているという

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「学習内容が理解できてうれしい」「学習内容の意 義を感じられておもしろい」など学習内容に取り 組むこと自体に基づいた興味の方が,より深いと 考えられる。興味尺度の因子分析を行った研究に おいて,「講義にくるのを楽しんでいる」「教師が 好きだ」という特定の学習環境に依存した興味を 測定する項目と,「学習内容がおもしろいと思っ ている」という学習内容自体の興味を測定する 項目が別の因子として抽出された(Linnenbrink-

Garcia et al., 2010)ことからも,内容本質性の違

いに着目し,その程度によって興味の種類を区別 することは意義があると考えられる。

最後に,「価値随伴性」の軸では,感情にのみ うったえる形で喚起される興味に比べ,学習内容 に内在する価値の認知を伴った興味の方がより深 い興味であるといえる。前述のように,先行研究 においても,学習内容の価値を認知することが興 味の深化にとって重要であると指摘されている。

Linnenbrick-Garcia et al. (2010)の 研 究 に お い て も,「学習内容を楽しんでいる」というような感 情に焦点化した項目と「学習内容は自分にとって 有用だ」「学習内容は日常生活に応用可能である」

というような価値の認知を伴う項目は,別の因子 として抽出されている。

これら3つの要素はそれぞれ内容的に別の次元 を表しているが,まったく独立なのではなく,強 い関連を有していると考えられる。たとえば,価 値随伴的興味は価値不随的興味に比べて,より持 続的で本質的な特徴をもつ可能性が高い。興味深 興味が感情のみによるものであるのに対して,深

い興味は感情のみならず価値の認知を伴うことが 指摘されている (Hidi & Renninger, 2006)。浅い興 味しか生起していない場合,興味はポジティブ感 情のみにもとづいて生起しているため,困難に直 面してポジティブ感情が生起しなくなった場合,

興味が消失し積極的姿勢が持続しない。一方で,

深い興味を抱いている場合には,たとえ困難に直 面しネガティブ感情が生起したとしても,課題に 取り組むこと自体に価値を感じているため,積極 的な取り組みが持続する。つまり,価値の認知を 伴う興味はより深い興味であるといえる。

以上を踏まえ,鼎様相モデルでは「時間的持 続」「内容本質性」「価値随伴性」という3つに着 目し,それぞれの軸の観点から興味の深さを捉え る。以下にそれぞれの軸について説明を加える。

まず,「時間的持続」の軸は,先行研究で指摘 されてきた状況的興味と個人的興味を区別する観 点と同一である。先行研究においても指摘されて いるように,一時的に生起するだけの興味より も,持続的に抱かれている興味の方がより深い興 味であると考えられる。

次に,「内容本質性」の軸では,興味を生起さ せた要因が学習環境によって変化しうるような表 面的な特徴である場合に比べ,その課題の本質的 特徴である場合に,より深い興味であるといえ る。たとえば,テキストにカラフルな写真やイラ ストを挿入したり,雑談を入れるなど,学習内容 とは直接関連のない要因に基づいた興味よりも,

図3 興味深化の鼎様相モデル

(7)

たですか」などの文言によって課題への取り組み の直後に測定される。一方で,持続的な興味は

「あなたは理科の学習に興味をもっていますか」

などのように,より持続的な個人の傾向性を問う 文言が用いられる。

先行研究では,各授業において測定された一 時的な興味が,より持続的な興味の変化を予測 することが示されている (Favero et al., 2007;

Linnenbrink-Garcia, Patall, & Messersmith, 2013)。

つまり,日々の授業の中でくり返し一時的な興味 を喚起することで,より持続的な興味を育むこと が可能であることを示唆している。また,持続的 な興味がその時々の興味に影響を与えることも示 されている (Ainley, Hidi, & Berndorff, 2002;Tapola, Veermans, & Niemivirta, 2013;Tsai et al., 2008)。す なわち,もともとその教科や領域に対して興味が 高い人は,環境が変化しても興味を高く持ちや すい。

以上のように,状態としての興味と持続的な興 味の関連性について検討した研究に加え,近年の 研究では,課題に取り組んでいる間に複数回興味 を測定し,その時々の興味の変化を詳細に検討す る方法も用いられている (e.g., Rotgans & Schmidt, 2011;Wu et al., 2013)。複数回興味を測定し,そ の安定性に着目することで,興味の深化について 時間的持続の軸によって評価することが可能に なる。

化のプロセスにおいても,それぞれの軸において 独立した次元で深まっていくのではなく,3つの 軸が相互に影響を与えながら変化していくと考え られる。そういった特徴を反映し,鼎様相モデル を表す図3では,それぞれの軸が平行でも直角で もない角度で3方向を向いている。

6.鼎様相モデルに基づいた

先行研究の知見の整理

本モデルでは,興味の深さの違いを「時間的持 続」「内容本質性」「価値随伴性」という3つの軸 から捉え,様々な種類の興味をより明確に表現す ることを提案している。それぞれの軸の2つの極 の組み合わせを考えた場合,8種類の興味を表す ことができる。各研究でどの興味を扱っているの かを明確にすることで,研究知見を整理すること が可能になる。現状においては,3つの軸のいず れかにのみ着目した研究がほとんどであるため,

以下ではそれぞれの軸に基づいて先行研究の知見 を整理する(表1)。

まず,時間的持続の軸に関わる研究を紹介す る。時間的持続の軸は,先行研究において測定の タイミングや項目の文言の違いによって区別され ている。たとえば,一時的な興味は「このテキス トの内容はおもしろかったですか/もっと読みた いとおもいますか」「今日の授業はおもしろかっ

表1 鼎様相モデルに基づく先行研究の例の分類

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識獲得型興味(色々なことについて知ることがで きるから)」「思考活性型興味(規則や法則の意味 を理解できるから)」「日常関連型興味(自分の生 活とつながっているから)」の因子を抽出した。

さらに,Tanaka(2017)では,価値不随的興味で はなく価値随伴的興味が深い学習方略の使用を予 測することが示されている。したがって,学習内 容の価値の認知を伴った興味を育むことが望ま れる。

Silvia (2006)は,感情の生起によって興味を

引き出す要因として,新規性,不確実性,対立,

複雑さをあげている。また,Rotgans and Schmidt

(2014)は,実験状況ではなくより普段の授業と 近い環境において,現在の知識では説明できない 課題を提示され,知識の欠如を自覚した時に興味 が高まり,説明可能な知識が獲得された後にはそ の内容に対する興味が低下することを示した。こ

れはSilvia (2006)があげた要因のうち,新規性

や対立と一致するだろう。

一方,価値を伴う興味を育む介入として,学 習内容に対する価値の認知を高める方法が提案 さ れ て い る (Hulleman et al., 2010;Hulleman &

Harackiewicz, 2009;Durik & Harackiewicz, 2007;

田中, 2013)。ただし,他のサポートなしに価値

を強調したり,重要性について文章で書かせたり してもその効果は得られず,まず浅い興味を喚起 したり,価値を認めるのに必要な知識を与えるな ど,価値の認知に介入するための下地づくりが不 可欠であることが示唆されている。

最後に,それぞれの軸の相互の関連について記 述する。前述のとおり,鼎様相モデルにおいて,

3つの軸は平行でも直角でもない角度で3方向を 向いている。つまり,3つの要素はそれぞれ内容 的に別の次元を表しているが,まったく独立なの ではなく,ある程度の相関を有していると考えら れる。先行研究においてこれらの3つの軸がひと くくりに1次元上に捉えられていたのは,その関 連性の高さに起因すると考えられる。たとえば,

本質的な特徴によって引き起こされた興味は,持 続しやすくまた価値の認知を伴いやすいだろう。

先行研究においても,持続的な興味を高めるた めには,学習内容の意味や価値を認識させるこ とが重要であることが示唆されている (Mitchell, 1993;Renninger & Su, 2012)。

次に,内容本質性の軸に関わる先行研究を概観 する。先行研究において, 課題の表面的特徴によっ て興味喚起する方法については様々提案され,

その効果が検討されてきた (e.g., Harp & Mayer, 1997;Matarazzo, Durick, & Delaney, 2010)。 教 師 の性格特性や雑談,教材のイラスト,教具として パソコンや実験器具を取り入れること,グループ 学習の導入や体験活動を増やすなど学習形態を工 夫することなどがあげられる。これらの工夫は実 践に取り入れやすく,生徒の注意をひきやすい。

しかし,このような表面的特徴によって喚起さ れた興味は効果が限定的で,むしろ学習を阻害す る場合もある。Durik and Harackiewicz (2007) は,

教科書をカラフルにすることで,もともと数学に 興味のない生徒の興味を生起させることができた ものの,もともと興味が高かった生徒に対しては むしろ興味を低める効果をもつことを示した。同 様に,多くの先行研究が,学習内容に関わりのな い部分の工夫で興味を高めた場合に,理解を阻害 することを示している (Magner et al., 2014;Mayer et al., 2008;Walkington, Petrosino, & Sherman, 2013)。したがって,児童・生徒の注意をひきつ けるためのきっかけとして,まずは表面的興味を 喚起することは可能だが,その後いかに課題の本 質的なおもしろさに気づかせていけるかが重要で ある。どのように課題の本質的な特徴による興味 へ移行していくのか,そのプロセスを促すために はどのような介入が有効か,さらなる検討が必要 とされる。

続いて,価値随伴性の軸に関わる先行研究を紹 介する。興味の深化において,学習内容の価値を 認知することの重要性が多々指摘されてきた

(e.g., Mitchell, 1993;Renninger & Hidi, 2002)。実 際に,感情のみに基づく興味ではなく,価値の認 知を伴った興味の高さが,その後に当該科目を専 門科目として選択するかを予測することが示さ れている (Harackiewicz et al., 2008)。また,田中

(2015)は理科の興味の種類を弁別する尺度を作 成し,因子分析を行った結果,価値不随的興味に あたるものとして「実験体験型興味(自分で実験 を実際にできるから)」「驚き発見型興味(実験の 結果に驚くことがあるから)」「達成感情型興味

(わかるようになった時うれしいから)」の因子を 抽出し,価値随伴的興味にあたるものとして「知

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らえる「鼎様相モデル」を提案して,それに沿っ て従来の研究を整理してきた。こうして展開され ている理論的・実証的研究は,近年の教育実践に 対してどのように関わりうるのだろうか。教育実 践における動きをいかに理解し示唆を与えること ができるかという視点と,逆に,教育実践からど のようなことをとりこめる可能性が開けるかとい う視点から考察していきたい。

冒頭から述べているように,学校教育では学習 に興味・関心をもたせることが教師の願いである にも拘わらず,必ずしもそれがうまくいっていな いことがかねてから指摘されてきた。とくに,理 数系教科については,国際学力調査でトップレベ ルの成績をおさめてはいるものの,「理科の勉強 は楽しい」「理科は生活の中で大切である」「将 来,科学に関する仕事につきたい」などと回答す る生徒の割合は,韓国と並んでほぼ最下位となっ

ている (市川, 2002)。その対処方法として,たと

えば,教科書をカラフルにしたり写真を入れたり することが一般的になり,かつての「味気ない」

教科書から見ると,いかにも興味を引きつけるよ うなものになっている。これが高じてマンガの キャラクターを登場させるようなものも小学校で は一時期現れた。学習内容とは直接関係のないこ うした引きつけ方は,興味の「内容本質性」を高 めることにならず,最近は減少傾向にある。

一方,最近とみに授業に対する興味を高める方 法として注目されているのは,小グループでの協 働学習の導入である。とりわけ,次の学習指導要 領の改訂にあたって中央教育審議会に出された また, Chen et al. (2016)は,潜在成長モデルを

用い,ゲーム要素のあるバーチャル空間を理科の 授業で用いることで生じた興味の持続性が,理科 自体に対する興味に影響を与えることを示してい る。この結果は,興味の時間的持続が内容本質性 と関連していることを示唆する。理科に対する興 味を弁別するための尺度を作成した田中(2015)

は,それぞれの種類の興味を図4のように図示し ている。図中の感情的興味と価値的興味の分類 は,本論文における「価値随伴性」の軸に対応 し,縦軸にある必要な知識の量は,「内容本質性」

に対応すると考えられる。感情的興味と価値的興 味の2つの円は上下にずれた形で表記され,斜め 方向に興味が深さの程度を示している。つまり,

鼎様相モデルにおいて,「価値随伴性」と「内容 本質性」の軸が平行でも直角でもない角度で異な る方向を向いていることと一致する。

以上のように部分的に3つの軸の関連性につい て示唆する研究は行われているものの,3つの軸 がどのように相互に影響を与えるのかについては 十分明らかになっていない。興味の深化を3つの 軸から捉え,それぞれの関連性や深化プロセスを 明らかにする実証的な研究を積み重ねていく必要 がある。

7.今後の展望:教育実践との交流と連携

本稿では,興味に関するこれまでの理論や知見 を概観し,さらに,興味の深化を「時間的持続」

「内容本質性」「価値随伴性」という3つの軸でと

図4 理科に対する興味尺度の構造(田中,2015, p. 31, Figure 2)

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れている。ただし,「おもしろい」ということは,

文脈によりいろいろな意味になる。その意味の 多様性を,「興味の深化」という概念から,より 整理・統合していくことができるのではないだ ろうか。

また,一方では,興味を深めるための具体的な 介入方法についても,学校教育のフィールドと連 携した実践的研究が望まれるところである。学習 に対して,より本質的で持続的な興味が生じるこ とを教師は期待するが,それは必ずしも一気にな されるものではない。

興味研究に比較的近い学習動機の分野におい て,「学習の功利性」と「学習内容の重要性」の 2つの軸から分類した「2要因モデル」を提案し た市川(2001)は,教育界では一般に望ましいと される内容関与的動機(充実志向,訓練志向,実 用志向)からいきなりはいることがつねに効果的 なわけではないという。一見,学習内容の本質と は関係ないように見える内容分離的動機(関係志 向,自尊志向,報酬志向)も,幼少期や学習不適 応に陥った児童・生徒には有効な入口であり,そ こから内容自体の意義に気づくような方向へと向 かわせる学習指導をすすめている。

これと同様の考え方は,興味の鼎様相モデルに おいても参考にすることができる。児童・生徒が 学習内容について全く知識や興味をもっていない 状況においては,まず一時的・表面的・価値不随 的興味を喚起し,授業参加を促すことが効果的で ある。その後,内容理解を伴わせながら,徐々に 授業内容の本質的なおもしろさに気づかせたり,

価値の認知を高めたりすることで,深い興味へと 移行させることが可能になると考えられる。

上述の協働学習の導入を例に考えてみると,授 業の中に協働学習を取り入れることによって,

「友人と話す機会があって楽しい」といった表面 的・価値不随的な興味を一時的に生起させること ができる。最初の協働学習への取っ掛かりは浅い 興味であったとしても,友人とのやり取りの中で 自分にはなかった観点や考え方を学んだり,深い 理解が達成されたり,既有知識と結びついたりす ることによって,より本質的・価値随伴的な興味 に移行していくと考えられる。協働学習によって 深い学び(deep active learning) を実現させるため には,上記のような認知プロセスを生起させるよ 文部科学大臣の諮問文(文部科学省,2014)で,

「アクティブ・ラーニング」が強調されたことに より,すでに教育委員会や学校に大きな影響を与 えている。これを受けて,中教審答申(文部科学

省, 2016) では,「主体的・対話的で深い学び」を

「アクティブ・ラーニングの視点」と呼び,学習 者が相互の関わりを通じて学び合う学習形態が次 期学習指導要領で推奨されることになっている。

一斉講義形式の授業のみでなく,体験活動,実 験・観察,協働学習などを積極的に導入すること は今後の教育の重要な方向であることは間違いな い。ただし,これらが興味を引きつけるきっかけ になることは確かであるが,どれくらい興味が深 化するかは,それぞれの実践に対する十分な検討 や見通しが必要である。内容本質性から離れた興 味が喚起され,一見,生徒の参加意識が高まった り,積極的に活動しているように見える場合があ りうるし,実際,そうした児童・生徒もいるであ ろう。また,それを見ている教師側も,本来ね らっていたような深い学び(deep active learning)

になったかどうかよりも,活発な活動があったこ とで満足してしまう場合があるということが指摘 されている(松下,2015)。

実際,児童・生徒は,授業後のふり返りで,し ばしば「実験がおもしろかった」「グループで学 習して楽しかった」と書いてくる。これらは,や やもすると,「座学やテストをする勉強よりも,

実験器具を操作したり,友人と話をするほうがお もしろい」という表層的な興味に陥ってしまって いる可能性がある。実験の目的や結果の解釈もあ いまいにしたまま,教示されたとおり操作して現 象観察しただけで「おもしろかった」と表現して くることは十分ありうるからである。

「時間的持続」という側面から見れば,生徒た ちは,授業後,あるいは,卒業後もどれだけ学習 に興味をもち続けているかが問われなくてはなら ない。「内容本質性」から見れば,授業での表面 的な活動よりも,学習内容そのものへの興味が湧 いたのかが問題となる。さらに,「価値随伴性」

という点でいえば,そこで学んだことで,「自分 の認識が高まった」「理解をすすめることになっ た」「何か役に立ちそうだ」などという意義づけ がなされることが望ましい。教育現場では,「お もしろい授業」として多くの優れた実践が蓄積さ

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より本質的で価値随伴的な興味へと深化したので はないかと分析できる。

また,学習課題の真正性が重要であるという指 摘(e.g., 鹿毛, 2013)も,興味の深化の観点から 捉えなおすことができる。すなわち,学習課題が 現実場面や社会的な文脈に位置づけられた場合,

学習の初期段階で興味を引きやすく,学習が進む につれて学ぶ意味や価値を実感し,価値随伴的な 興味へと深化すると考えられる。

このように,興味の鼎様相モデルを用いること で,これまで提案されてきた教育実践や介入方法 がなぜ効果を発揮するのか,深い興味へ移行する ためにはどのような工夫やサポートが必要なのか について分析することが可能となる。こうした移 行を考慮しつつ興味を深めていくという教育的介 入は,短期的な心理実験で効果を検証できるもの ではない。学校教育と連携しながら,ある程度長 期にわたる実践的研究が必要になるに違いない。

本稿で扱ってきたような理論的・実証的研究が,

学校現場を中心とする社会的なフィールドと交 流・連携することで,さらなる発展を見せること が今後期待される。

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