東日本大震災被災地の災害時要援護者対策と災害時 対応
著者 峯本 佳世子
雑誌名 同志社政策科学研究
巻 14
号 2
ページ 161‑174
発行年 2013‑03‑15
権利 同志社大学政策学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013096
あらまし
日本列島の地震活動が活発化する中で、2011 年3月11日に東日本大震災が起きた。近年、
全国で災害時対策が進められているが、災害時 に特別な支援や配慮を必要とする人々、災害時 要援護者への対策は防災部局だけではなく、福 祉部局や地域住民との連携を必要としている。
一方、改正介護保険制度で創設された地域包 括支援センターは、介護予防や地域見守り、孤 独死防止、日常的な地域の支え合いを強化する 地域ネットワークづくりを担う。災害時に救援・ 避難支援が必要な高齢者をおもに対象とする地 域包括支援センターは、その機能から災害時に 対応することも期待される。
東日本大震災の被災地では、高齢者等の災害 時要援護者の被災状況はどうだったか、在宅の 高齢者の把握が可能な地域包括支援センターが どのように活動したか、被災地の1つ仙台市を 取り上げて、これらを検証することにより、今 後の災害対策のあり方を具体的に進めることが できる。仙台市では、すでに近い将来の災害に 備えて地域包括支援センターでの災害時対応を 進めてきた。また、同様に地域住民による防災 活動を促進してきた。今回の東日本大震災によ る巨大津波は想定をはるかに超え、対策が盤石 だったとはいえないが、福祉機関が速やかに高 齢者の安否確認活動を行ったこと、また緊急時 には地域支援者が避難所誘導や支援を行ったこ となどがあきらかになった。
今後の災害に備えて、災害時要援護者支援の ために福祉行政と防災行政の連携、福祉機関と 地域支援者や地域組織との連携の強化が求めら
れると同時に、その一端を担うべく地域包括支 援センターに地域連携活動を含む減災機能を検 討することが今後の課題である。
1.はじめに
地域包括支援センターが設置されて5年を 迎える2011年3月11日に東日本大震災が起き た。マグニチュード9.0、震度5〜6強の震度 と巨大津波は東北沿岸部の広い範囲に予想を超 える甚大な被害を与え、全国に影響する深刻な 原子力発電事故をも引き起こした。災害が多発 する近年、各自治体が災害時対策を進めている さなか、また災害時要援護者に対して行政がど う対応するかを検討しているなかでの大災害で ある。自然災害は、現代の科学技術をもってし てもまだ正確な予測は難しく、災害時対策に限 界があることも確かであるが、東日本大震災後、
地震研究への関心や防災対策の検討は急速に高 まっている。同時に、防災科学の領域のみなら ず、日常生活にさまざまな問題を抱え福祉的援 助が必要な人々に対する災害時の援助対策の整 備が求められている。高齢化が進む中で、とく に一人暮らし高齢者、高齢者世帯等への災害支 援が喫緊の課題となっている。
2006年、内閣府、総務省、厚生労働省が策定 した「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」
では、災害時要援護者を「必要な情報を迅速か つ的確に把握し、災害から自らを守るために安 全な場所に避難するなどの災害時の一連の行動 をとるのに支援を要する人々」と定義している1。 一般的に高齢者、障害者、外国人、乳幼児、妊
地域包括支援センターにおける災害時支援の実態
―東日本大震災被災地の災害時要援護者対策と災害時対応―
峯 本 佳 世 子
1 内閣府防災担当、総務省消防庁、厚生労働省社会援護局『災害時要援護者の避難支援ガイドライン』2006年
婦等があげられるが、要援護者の多くは災害時 に移動等に不安を感じることや災害後の新しい 環境への適応能力が不十分であることが多いた め、避難行動、避難所での生活、災害による住 環境の変化への対処に困難を来す。しかし、必 要なときに必要な支援を適切に受けることがで きればこれまでの自立した生活を再び送ること が可能である。
前述の「災害時要援護者の避難支援ガイドラ イン」で、現在の市町村災害時対応の取り組み 状況に関して、対象者の考え方(範囲)を明ら かにし、重点的・優先的に進めていくことが重 要であるとしたうえで、災害時要援護者を以下 のように例示している。
① 介護保険の要介護:要介護3(重度の介護 を要する状態:立ち上がりや歩行などが自 力でできない等)以上の居宅で生活する者 を対象とする場合が多い。
② 障害程度:身体障害(1・2級)及び知的 障害(療育手帳A等)の者を対象としてい る場合が多い。
③ その他:一人暮らし高齢者、高齢者のみ世 帯を対象としている場合が多い。
以上のような対象を考慮して、災害時支援を 考えていくことが各自治体の災害時対策となっ ている。近い将来に起こると予想される大地震 に備えて対策を構築するために、今回の東日本 大震災被災地の災害時対策と対応を検証するこ とがまず重要である。
本研究では、高齢者への災害時対策に焦点を 当て、東日本大震災の被災地・仙台市の被災状 況と災害時対応の実態を地域包括支援センター の活動調査、職員への聞き取り調査をとおして 把握し、防災、減災のために講ずべき地域包括 支援センターの今後の課題を考察していく。
2.東日本大震災被災地の災害時対策
まず、被災地の一つである仙台市における災 害時対応をみていこう。仙台市は、人口約104 万人、高齢者人口約19万人、行政区5、中学 校区63の東北の大都市である。高齢化率は18.6%で、市内に地域包括支援センターが44
か所(すべて委託型)あり、介護サービス利用
者は26,000人である。(いずれも2011年3月
1日現在)今回の震災・津波で沿岸部は大きな 被害を受けた。ほとんどの行政諸機関が機能で きず、職員も被災する状況で、地域では災害時 要援護者に対してどのように避難、救援、支援 を行ってきたかを検証する。
2. 1 被災地仙台市の災害時対策
仙台市における災害時要援護者への具体的対 策(2011年8月現在、現地調査)は、仙台市 地域防災計画(2007年3月修正版)において、
「第13節 災害時要援護者対策の推進」に基本 的な考え方を「第19節 災害時要援護者への 対応計画」で示している2。
「1.在宅の高齢者及び障害者に対する災害 予防計画」において、《基本的な考え方》、災害 時要援護者支援に関しては、地域住民相互によ る「共助」を基本とし、地区社会福祉協議会等 の福祉関係者・団体や自主防災組織等の地域団 体(以下「地域支援者」という)が主体となり、
それぞれの地域の実情にあわせた「共助」のし くみを構築する。市は、その構築の支援を行う とともに、災害時に「共助」のしくみが十分機 能するための調整機能を担う。また、福祉サー ビス提供者との連携により、介護保険・障害者 福祉サービスの継続的な提供の確保に努める」
とあり、具体的に、(1)高齢者・障害者名簿 の整備、(2)地域支援者との連携強化、(3)
災害時要援護者の防災啓発、(4)緊急通報シ ステムの活用、(5)福祉サービスの継続、の 5項目が記載されている。
「2.社会福祉施設等に入所・通所する災害 時要援護者の災害予防計画」において、社会福 祉施設等は、平時の防災設備の整備点検及び非 常時・夜間の防災体制の整備、施設利用者情報 を把握するとともに、入所・通所者及び職員参 加による避難訓練や防災教育が求められてい る。市は、社会福祉施設等における防災対策の 充実強化の指導、災害時における施設と市の連 絡網の整備を行う、となっている。
2 仙台市消防局防災安全課「仙台市地域防災計画」、2007年、58−59ページ
「災害時要援護者への対応計画」については、
実施機関は市の企画市民部、健康福祉部、子供 未来部、区本部、となっており、とりわけ区本 部が要援護高齢者・障害者等の支援に係る連絡 調整に関することを担うことになっている。
在宅の高齢者及び障害者に対する応急対策と して、
(1) 災害時要援護者支援窓口の開設−要援護 者に関する情報収集、健康福祉部との連 絡調整。
(2) 緊急援護施設の指定及び入所調整等−健 康福祉部は、社会福祉施設等の状況調査 を行い、対応可能な施設を緊急援護施設 として指定し、各区本部と連携し、緊急 援護の必要な者の入所調整等を行う。
(3) 福祉関係者や地域関係団体(地域の支援 者)による支援−地域の支援者は、各地 区の在宅要援護者の状況把握に努め、援 護のニーズを把握した場合は、状況に応 じ避難援助を行い、対応が困難な場合は 区本部への支援要請を行う。
(4) 福祉サービスの継続−介護保険・障害福 祉サービス提供者は、特に配慮を要する サービス利用者の支援ニーズの把握や サービスの継続的な提供の確保に努め る。
このように仙台市は、地域防災計画を整備し、
行政、地域住民相互、福祉サービス提供者との 連携を明確化にしている。とくに在宅の要援護 者に対しては「共助」を基本にして、地元社会 福祉協議会等の福祉関係者・団体や自主防災組 織等を「地域支援者」と位置付けて災害時の支 援体制を図っている。
次に、以下の節において、福祉関係機関と地 域団体のそれぞれの現状をみていきたい。
2. 2 仙台市福祉部局の災害時要援護者対策
仙台市地域防災計画で示された「災害時要援 護者対策の推進」では、在宅高齢者のための地 域住民相互の「共助」が求められている。共助 のしくみに速やかに適切に福祉関係部局や福祉 サービス提供者が関わることにより減災につながるということから、2009年10月に「仙台市 地域包括支援センター災害時対応ガイドライ ン」を出し、各地域包括支援センターにセンター 独自の災害時対応マニュアルの作成を要請して いる。このガイドラインの(4)地域における 災害時要援護者支援への協力、の項でマニュア ルの具体的内容を以下のように簡単に示してい る3。
① センターで把握する要援護高齢者のリスト 作成
地域における「共助」の仕組みとして、「地 域で備える災害時要援護者支援の手引き」(2008 年3月、仙台市)を参考に、町内会(自主防災 組織)、民生委員、地区社会福祉協議会等を中 心に、在宅の災害時要援護者を対象とした支援 体制づくりが進められている。また、施設入所 者については、災害時も当該施設による安全確 保対策がなされることが想定される。各センター においては、把握する地域の高齢者のうち、そ れらの支援が及ばない可能性がある者をリスト 化し、安否確認を行うことができる体制を整え る。リスト作成にあたっては、個別に作成して もよいが、既存の利用者リストを活用するなど して効率的な作成方法をとっても差し支えない。
② 地域における災害時要援護者支援への協力 町内会(自主防災組織)、民生委員、地区社 会福祉協議会等を中心とした、地域における「共 助」の仕組みづくりと連携に努める。
これをうけて、仙台市内の地域包括支援セン ターは災害時対応マニュアル作成を行ってい る。仙台市健康福祉局総務課が担当している災 害時要援護者リスト作成についての現状は、同 意方式ではなく、健康福祉局が実施する3年に 一度の全数調査から在宅高齢者の要援護者リス トを町内会単位で民生委員に作成させ各区役所 のみ所有しているが、全市ですべてできていた わけではない。障害者に関しては、市が手上げ 方式(申請させるよう働きかけ)でリスト作成 を行っているが、障害者自身の理解が思うよう に進まずむしろ高齢者より支援が難しい状態と なっている。3年毎の全数調査に当たる年に大 震災が起きたため翌年実施予定であるが、この 機会に災害時要援護者リストへの登録を促すよ
3 仙台市高齢企画課「仙台市地域包括支援センター災害時対応ガイドライン」、2009年、3ページ
う申請用紙等を検討している。高齢者について は地域包括支援センターに独自に災害時対応マ ニュアルおよび民生委員による担当地域要援護 高齢者リスト作成を義務付けているが、市内 44ヶ所の地域包括支援センターのうち災害時 対応マニュアルがまだできていなかったところ もある。
いま、仙台市はこのマニュアルの基準づくり を検討し、すでに災害時要援護者対応の1つと して、地域包括支援センターの機能の活用と協 力体制づくりを進めている。
2. 3 仙台市の地域防災組織
歴史的にみてもこれまでたびたび大地震・大 津波に見舞われている東北では、災害研究や災 害時対策は進んでいる。吉原ら(2011年)は、
基本対策として行政による防災対策の確立が重 要であると同時に、コミュニティとしての対策 も重要であるとして東北6都市(青森市、秋田 市、盛岡市、山形市、仙台市、福島市)の町内 会を対象にした調査分析を行っている。平時に 近隣とどのように助け合って備えるか、また災 害時に住民自らがどのように避難するか町内会 活動をとおして事例検討している4。仙台市で は1978年の宮城県沖地震をきっかけに町内会 を母体とする市民活動として自主防災組織の結 成を進めてきた。災害を経験することによって 自主防災組織化の必要を意識するため、岩手県、
宮城県では組織率が比較的高いが、町内会の加 入率そのものは東北6都市の中で仙台市が最も 低い。他の5市に比べても大都市である。転出 入する世帯つまり転勤サラリーマンが多い都市 の特徴ともいえる。しかし一方で、仙台市の町 内会は「防災についての話し合いの有無」で
約70%が「話し合った」と回答している。大
震災等についての対策は、「避難場所の確立」
(65.3%)が最も多く、ついで「単身高齢者世 帯の把握」(53.4%)、「非常用品準備の呼びか け」(48.1%)となっている5。仙台市では、「自
主防災組織は『共助』の中核となるもので、町 内会など地域で生活環境を共有している住民等 により、市民活動として結成・運営されること を基本とするもの」と同市消防局2010年『自 主防災活動の手引き』で明記している。 災害時にはコミュニティの力が一次災害の予防 と二次被害の拡大防止に役立つことはこれまでの 災害経験から一般的に知られているが、実際の コミュニティの評価や地域防災力と被害との相関 を科学的に実証することはまだ十分確立していな い。佐藤健ら(2009年)は、「コミュニティ防災 計画支援のための地域防災力評価手法とその仙 台市への適用」で今回、被災した仙台市の自主 防災組織に関する調査研究を発表している6。当 該研究報告の2009年時点で、東北東部の周辺 地域において震度6強以上の地震を予測、とく に仙台市沿岸地域の2区全域を震度6弱の災 害リスクの地域と仮定して地域防災のあり方を 検討していた。今回の大震災において仙台市 内でもっとも津波被害が大きかったこれらの2 区の被災事実をみると、すでにさまざまに災害 対策の検討が重ねられていたことがうかがえる。
この研究では、「地震災害対応力」を尺度とし て地域防災力評価を行っている。地震災害対応 力は、高梨(2000)による地域防災力発揮のた めの4要素、「防災知識」「防災技能」「防災資 源」「防災組織」7と災害リスク等のデータから 出された尺度で、「地震災害対応力とは、自主 防災組織が災害発生直後から円滑かつ組織的に 活動することにより被害の拡大防止、二次被害 の軽減が可能となるような組織を持つ緊急事態 対応能力」と定義づけられている。仙台市の災 害対策の一つである自主防災組織は、市内全域 で920の組織がある中、研究グループによる地 震災害対応力測定では高い対応力をもつ組織は 7組織にとどまり全体の1%にすぎないと佐藤 らは報告している。しかし、前述の2区の地震 災害対応力は他の地域よりも若干高かった。災 害経験が多く、リスクの大きい地域において地 震災害対応力が高める傾向を示している。
4 吉原直樹編著『防災コミュニティの基層−東北6都市の町内会分析』、御茶ノ水書房、2011年、1−263ページ
5 庄司知恵子「第4章 町内会と自主防災組織」『防災コミュニティの基層―東北6都市の町内会分析―』、御茶ノ水書房、2011年、97
−100ページ
6 佐藤健、塩田哲生、増田聡他「コミュニティ防災計画支援のための地域防災力評価手法とその仙台市への適用」『自然災害科学』、2009 年、389−399ページ
7 高梨成子「地震に備えるための地域防災の課題」『地震に関するセミナー講演資料』2000年、85−89ページ
今回の市保健福祉局の調査では、被災地高齢 者の安否確認は地元町内会、民生委員はじめ住 民たちの協力で高齢者の避難が行われ、避難所 において福祉関係者が情報を収集できたことが あきらかになった。このことからも町内会等の 地縁組織、自主防災組織とコミュニティを基盤 にした防災計画が重要で、福祉関係者にとって はこのような地域ネットワークが災害時および 災害後の支援に大きくかかわってくるという示 唆を得ることができた。
3. 東日本大震災における地域包括支援 センターの支援実態
3. 1 仙台市内の地域包括支援センターの 活動実態
地域包括支援センターは、2006年の介護保 険制度改正によって創設された地域の高齢者の ための専門機関である。地域包括支援センター は、地域包括ケア<高齢者が住み慣れた地域で 継続して生活を送れるように支えるためには、
個々の高齢者の状況やその変化に応じて、適切 なサービス、多様な支援を提供>を実施する介 護保険法による中核機関で主任介護支援専門員 等、社会福祉士等、保健師等の3職種で構成さ れ、おおむね日常生活圏域を対象としている8。 地域包括ケアには、保健・福祉・医療の専門職 相互の連携、ボランティア等の住民活動などの インフォーマルな活動を含めた、地域のさまざ まな資源を統合、ネットワーク化し、これらに より高齢者を継続的、かつ包括的に支援するた めに協働することが必要である。老人福祉法に 基づく在宅介護支援センターを地域包括支援セ ンターに転換しているところが多い。
地域包括支援センターは、地域住民にとって 援護・介護に関する身近な相談機関であり、1 か所で相談からサービスの調整に至る機能を発 揮するワンストップサービスの窓口である。そ
のために地域各資源と連携や協働が求められる 重要な地域拠点でもある。要支援、要介護者 への支援や介護予防を目的としたこれらのセン ターに災害時の備えが必要となった背景は、高 齢化が進み高齢者を地域で支え合う仕組みやま ちづくりが検討され始めたことにある。高齢化 が進む地域においては、地域の医療機関や保健 機関、福祉施設など専門的な医療・福祉サービ ス事業者、とくに介護保険制度発足後、居宅介 護支援事業所や介護保険施設関係機関は、高齢 者把握と日常的な要援護高齢者との関わりから 身近な存在として緊急時に対応、各地の災害時 に安否確認等を行っているため、災害時支援を 担う機関の1つとしてしばしば検討対象に上げ られる。岡田ら(2006)は、中越地震の際の在 宅介護支援センターの介護支援専門員による安 否確認の活動を調査し、身近に高齢者の日常の 状態を把握している福祉機関と専門職が災害時 に果たす役割を実証している9。峯本(2010)は、
阪神淡路大震災後の復興住宅における高齢者の 孤独死防止対策として神戸市などで取り組まれ ている地域見守りシステムの研究において地域 包括支援センターに配置された見守り職員と住 民の地域ネットワーク活動の意義を検証してい る10。このようにこれらの福祉機関は住民の日 頃の安心・安全なまちづくりのための地域ネッ トワークにおいて重要な役割を担っている。
被災地・仙台市の地域包括支援センターは市 内44ヶ所あり、すべて民間法人委託である。
福祉担当部局による在宅高齢者の安否確認の状 況は、仙台市が調査したデータによると以下の とおりである。3月11日の大震災後、17日〜
31日の期間に地域包括支援センター、居宅介 護支援事業所、小規模多機能型居宅介護事業所、
訪問看護事業所合計361ヶ所に調査依頼した結 果、292ヶ所の回答があり、サービス提供先高
齢者21,480人のうち死亡13人、安否確認がと
れない高齢者7人であった11。この回答事業所 の結果のみでは被災高齢者の全容をあきらかに することはできない。とくに巨大津波による仙
8 地域包括支援センター運営の手引き編集委員会『地域包括支援センター運営の手引き』、中央法規出版、2008年、7−12ページ
9 岡田直人、白澤政和他「新潟県中越大震災における要支援・介護高齢者に対する危機管理の実態と課題」『老年社会科学』Vol .28、
No.1、2006年、58−65ページ
10 峯本佳世子「被災地における高齢者の孤独死防止と生活支援」『大阪人間科学大学紀要』第9号、2010年、171-178ページ
11 仙台市健康福祉局・保険高齢部調べ「介護保険事業者による利用者の安否確認」2011年11月7日、仙台市役所健康福祉局で高齢者安 否確認データを入手
台市の死亡者数685人、行方不明180人という 被害状況から高齢者の犠牲者数を推定すると、
この調査で把握しきれなかった福祉サービス利 用者以外の被災高齢者も数多い。しかし、各サー ビス機関がそれぞれの利用者の安否確認を速や かに行い、ほとんど全てを把握できたことは大 きい。
次に、仙台市の地域包括支援センター連絡協 議会は、大震災2週間後の3月24日現在付け で市内44ヶ所の地域包括支援センターに、災 害時に地域包括支援センターはどのような業務 をし、また同時にどのような課題があるかを緊 急アンケートしている12。調査当時、44ヶ所中 の41ヶ所が業務可能であり、センター稼働率
は93.2%、職員稼働率は85.9%で、40ヶ所か
ら災害時の業務についての回答を得ている。お もな業務は安否確認が36ヶ所、うち安否確認 終了は2ヶ所であった。その他の業務は、物資
(食料、飲料水、生活用品、医療品等)の配達 配給が25件、相談業務が8件という結果だっ た。その時点での業務における課題について は39ヶ所から回答があり、まずガソリン不足 が23件、緊急受け入れ施設や病院の情報不足、
ライフラインの情報不足が3件、その他、職員 の通勤の不便、高層住宅の高齢者の安否確認困 難、委託先法人の地域包括支援センター災害時 対応に混乱が生じるなど、さまざまな課題がみ られた。
仙台市が備えてきた災害時要援護者への対応 は、大きく「福祉関係団体」と「地域支援者」
であるが、これらは今回の巨大津波災害におい
て、安否確認を優先し、ついで食料・生活用品 配達を行い、災害支援の役割を果たしている。
それでもなお、予想を超える事態により計画 どおりの支援が困難となったことがあきらかに なった。被害の大きかった沿岸地域の地域包括 支援センターの実態はどうだったかを把握する ため、被災地域で調査可能な地域包括支援セン ター数ヶ所を対象にさらに聞き取りを実施した。
3. 2 仙台市内地域包括支援センターの聞 き取り調査から
2011年6月〜8月に地域包括支援センター の支援の状況を被災が大きかった仙台市の沿岸 部の6ヶ所の地域包括支援センターの職員に聞 き取り、被災時の状況と活動内容、問題、課題 をあきらかにした13。
調査をした地域包括支援センター6ヶ所のう ち、地域包括支援センター独自の要援護高齢 者のリスト作成ができていなかったところが1 か所あった(表1)。この要援護高齢者リスト は、地域防災のために作成する災害時要援護者 リストとは異なり、地域包括支援センターが自 治会や民生委員会の協力を得て情報を把握して 作成し、地域包括支援センターで保管するもの であって、防災部局、福祉局が保管する災害時 要援護者リストではない。個人情報保護法の問 題から市役所保管リストを共有できないため、
福祉サービス提供者の災害時活動として各セン ターに作成させている。
表2でみられるように、今回の災害では甚大
区 地域包括支援センター 被災状況 職員体制 予防プラン リスト 情報共有 連携
A区 Tセンター 周辺浸水 4人 140 ○ ○ ○
A区 Iセンター 4人 120 × × ○
B区 Aセンター 5人 188 ○ ○ ○
B区 Rセンター 津波被害 4人 140 ○ ○ ○
B区 Kセンター 5人 130 ○ ○ ○
C区 Hセンター 5人 243 ○ ○ ○
表1 仙台市沿岸部地域包括支援センター6ヶ所調査
12 仙台市地域包括支援センター連絡協議会「平成23年3月24日現在、東北地方太平洋沖地震による活動状況に関する緊急アンケート集 計結果」、仙台市社会福祉士会会員より提供、2011年6月30日
13 峯本佳世子「仙台市地域包括支援センター災害時対応の実態聞き取り調査まとめ」、市内6ヶ所の地域包括支援センターの職員に聞き 取り調査実施、2011年6月14日、8月20日
な津波被害でセンターが浸水したうえに、停電 のためコンピューターが作動せず最新データは 出せなかった。また、電話、ファックスも使用 できず、作成した要援護者リストの全てを生か すことが出来なかったセンターが多かったが、
リストを作成していた地域包括支援センターは リストやマニュアルが安否確認に役立ったと回 答している。さらに災害時マニュアルの最新 データの見直しから要援護者リストの点検と家 屋情報も台帳に記載し保管していたために安否 確認に役立ったと答えたところがあった。
6ヶ所のセンターの災害時対応をみると、セ ンターの災害時マニュアルが役立ったことがわ かる。また市の対策どおり地域支援者の安否確 認活動が速やかに行われていた。災害時要援護 者リストの作成ができていなかったIセンター においても、日頃の地域支援者との連携ができ ており、これまでの災害経験を生かした確認方 法を用いている。センター職員もそれぞれ専門 職が分担して対応していた。Rセンターは県外 の派遣専門職の力を活用して、さらに地域支援 者とセンター職員による医療、福祉、生活物資 等支援を適切に行っていたことがわかった。し かし全体として、区役所が所有している要援護 者リストを共有してなかったうえに、緊急時に 連絡もとれなかったことによる支援活動上の課 題も残された。
また、受託法人では併設する福祉施設が福祉 避難所(特別配慮が必要な被災者を避難し、必 要な医療福祉サービスが提供できる避難所)に 指定され、それを機能させるため、地域包括支 援センター職員は地域への活動から法人内の支 援員として業務転向され一部混乱もみられた。
しかしながら、地域では民生委員や自治会の自 主的活動により担当地域の要援護者の安否確認 がなされた。今回の巨大津波被害で地域包括支 援センター独自のマニュアルや要援護者リスト はセンター事務所が被災した状態では初期行動 に用いることができなかったが、居宅介護事業 所が利用者データのみならず日頃の関係から情 報を熟知しており自ら在宅および避難所に出向 いて担当高齢者の安否確認を行い、地域包括支
援センターに情報を寄せたことが多く報告され ている。
3. 3 被災地における地域包括支援セン ターの活動調査から
2011年12月から翌2012年1月にかけて白 澤、岡田、峯本による「東日本大震災における 地域包括支援センター・在宅介護支援センター の活動に関する調査」が実施された14。調査は、
岩手県、宮城県の地域包括支援センターを対 象としており、地域包括支援センターの所在地 については大きく沿岸市部、内陸市部、沿岸町 村部、内陸町村部の分類で統計分析しているた めに仙台市の実態とはいえないが、被害が大き かった沿岸部で見られる傾向を参考とすること ができる。
調査は両県の地域包括支援センター、在宅介 護支援センターあわせて288か所に質問紙によ る自記式郵送調査を行い、137か所から回答を 得た。沿岸部より被害が比較的少なかった内陸 部からの回答が多かったのは、この時期当然の 結果である。回答の多くを占める内陸部の地域 包括支援センターに限定してみると自治体直営
型は47.4%、行政委託型は52.6%とやや委託型
が多い、またその母体組織は社会福祉法人が
42.9%、社会福祉協議会が21.4%、地方公共団
体が19.0%、医療法人が14.3%である。両セン
ターの利用者の安否確認については、3月11 日当日に始めたセンターは内陸部が84.2%に比 べると沿岸部は30.2%で、津波被害による影響 が大きいことがわかる。沿岸部で大震災の即 日に安否確認ができなかった理由は、「津波・
火災による二次災害にあう危険があったから」
(31.0%)が最も多く、次に「津波で街全体が 被害にあい、街に入ることができなかったから」
(24.1%)となっている。その他の理由として、
「近くの町民の救護活動等優先すべき課題が多 かった」「ガソリン不足により」「同一法人の施 設支援に廻った」「余震がひどかった」「搬送、
避難してきた人への対応で追われた」等、危険 な状況に加えてセンター周辺で災害対応しなけ
14 白澤政和(研究代表)『東日本大震災における介護支援専門員および地域包括支援センター・在宅介護支援センターの活動に関する調 査報告書』平成23年度厚生労働省老人保健健康増進等事業『介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する調査報告書』、2012年、
121−210ページ
Tセンター(A区) Iセンター(A区) Aセンター(B区)
災 害 時 要 援 護 者 リ ス ト の保管・入手
リストはセンターで保管していたので、
即対応できた。 リスト作成できておらず リストは保管し、災害マニュアルを確認 した。
地 域 支 援 者 との連携
連合町内会長と住民間の信頼が厚い。災 害時に町内会館が避難所になり、自治会 長、民生委員と連携をとって対応した。
民生委員は地域によってばらつきがある が、民児協は組織として機能していた。
民生委員、自治会とすぐ連絡、連携がで きる体制はできていた。
地域ケア会議においても関係機関と話し 合いがされていた。
セ ン タ ー 災 害時対応
センターが福祉避難所になったため、セ ンター相談員と避難所支援者を担った。
住民に情報が入らないため、家族の安否 確認に直接来所する人の対応に追われた。
担当者の安否確認は、要援護者リストの 心身、家屋状況優先順位をもとに行った。
数年前の地震のとき、安否確認が重複し て無駄なことが多かったので、今回は、
ボードを設置して確認状況をチェックし、
職員間で情報を共有できるようにした。
社会福祉士は民生委員と、他の職員は回 れる範囲で各自地域の安否確認を行った。
災害対応マニュアルを利用できた。
こ れ ま で の 災 害 時 対 策 は ど う 役 立ったか
リストの見直し、優先順位を設定してい たので役立った。避難訓練を市民セン ター、老人福祉センター合同で行ってい たのですぐに対応できた。
平時から災害対策をしていた民児協は当 日、定例会を開催していたが、すぐ帰宅 し担当者の安否確認を行った。3月に特 別にもう一度定例会をもち、支援物資配 分方法や情報交換をし、その会にセン ター職員も出席し、役割分担をして安否 確認や支援活動ができた。
仙台市との連絡ができず孤立状態で情報 交換できず、独自に動いた。予防プラン 対象者はセンターで確認、他の高齢者の 安否確認は町会に任せ、センターはニー ズ把握のための調査シートを作成して、
地域の避難所に配布した。把握した要援 護者への福祉サービスコーディネート、
相談などを行った。
高 齢 者 の 安 否確認
まず民生委員の安否確認と支援体制の連 絡をしたが、連絡方法が遮断されていた ため、センター職員が避難所等につぶさ にまわって連絡をとった。すでに民生委 員と町内会長が住民の避難場所を把握 し、高齢者の安否確認を行っていた。
一般介護予防高齢者5人と、独居の予防 プラン対象者は、すみやかに安否確認し たが、総合相談の利用者全員の確認はで きなかった。その他は、ケアマネやヘル パーがセンターに立ち寄り、安否確認が できた人の照合をした。
地域内の学校長、町会、民児協、居宅支 援事業者などが連携し安否確認、医療福 祉ニーズを中心に把握を急いだ。避難所 巡回時に市職員に情報を伝え、行政との 連携が可能となった。3月14日に避難 所運営会議がスタート、3月19日に町 会長会議を開催、避難所の見通しなどを 検討した。
安 否 確 認 後 の援助
窓口相談の対応、訪問、家財道具片付け のボランティア依頼などセンターは、福祉 ニーズ把握、トリアージ、福祉サービス コーディネートを担当することになった。
家具に挟まれ動けなくなっていた認知症 高齢者を助けに行き、他区の福祉避難所 に移した。/家族への連絡を手助けした。
/避難所への送致をした。/転居先を探 している高齢者に不動産情報を収集して 一緒に検討した。
避難所での環境整備(発電機調達、トイ レ掃除、毛布調達、トイレ用水をプール から汲み上げ)、医療手伝い(けが人処置、
搬送、酸素ボンベ調達、医師、看護師と 怪我人処置、搬送、酸素ボンベ調達、感 染症、エコノミー症候群、生活不活発病 の予防、乳幼児、妊婦への対応)、訪問 により個別調査票作成、町会から利用者 の安否確認情報を収集、在宅高齢者への 食糧配給、避難所内の高齢者介護保険申 請代行、福祉避難所への移動支援、高齢 者専用住宅および施設の情報提供
災 害 時 の セ ン タ ー の 役 割と課題
当センターは、市民センター、老人福祉 センター、デイサービス、児童館、保健 福祉センター等が入る複合施設で、大勢 の住民が避難して来て、施設では最大時 800人、長期的には600人が避難していた。
市より福祉避難所開設を要請され、要介 護者約20名を受け入れた。福祉避難所は 途中から介護サービス事業扱いで利用料 不要のショートステイとして機能した。
緊急時対応の役割を担っているが、課題 が多かった。ガソリンの確保/電話がつ ながらないため来談者が多く対応が大変 だった/センターに職員が常駐しておれ ず十分に機能できなかった/要援護者リ ストができていなかった/市の既存デー タから更新できるよう検討の必要/避難 場所等の避難指示の共有ができておらず センターでは把握していなかった。
避難所での支援活動を行ったが、行政の 指示・命令がうまくいかず、避難者と支 援者に混乱を招いた。避難所数、避難者 が多く、センター職員だけでは対応でき ず居宅事業所、区役所保健師、他県から の救援保健師の応援を得た。学校教員の 負担軽減、介護サービス停止の問題で追 われた。また日中不在で所在確認に時間 を要した。
その他
周辺浸水によりライフラインが断たれ、
電話、インターネット、携帯メールも使 えず情報交換ができなかった。緊急時の 職員間、委託元の仙台市とどのように連 絡をとるか、伝言ダイアルの活用など検 討が必要である。道路が危険であるうえ に、ガソリンがなく職員は自転車で地域 の安否確認にまわった。
震災後のがれき撤去作業で空気が汚れ劣 悪な環境となった。この地域にこだわる 高齢者が多く、容易に他の地域へ移送す ることができなかった。震災後、認知症 発症および進行したという相談が増え た。震災をきかっけに新規利用者、介護 保険申請が増えた。認知症のため非常時 状態が理解できず、その対応に苦労した。
入所施設が不足した。震災ショックや不 安、環境変化により一時的な心身機能低 下を来した高齢者が多かった。家族介護 の負担が増し、家族からの訴えが多かっ た。区役所の福祉窓口が機能せず、介護 保険区分変更手続きができず不適切な サービス対応にならざるを得なかった。
電話、ガソリンが使えず物資の受け取り 場所が混乱した。
表2 仙台市沿岸部地域包括支援センター6ヶ所の災害時対応実態聞き取り調査
峯本による「東北大震災被災地における災害時の高齢者援助に関する実態調査」(2010年)の聞き取り結果をまとめ、筆者が作成
Rセンター(B区) Kセンター(B区) Hセンター(C区)
リストは保管していたが、センター利用でき なかった。
データ保管していたがプリントアウトしてい
なかった。 リストのデータを保管していた。
町会と民児協関係者と連携できた。
センター独自の災害時マニュアルをし、リス ト作成をしてくれた民生委員をはじめ自治会 とも連携ができる体制だった。
民児協の定例会に出席することもあり、平時 より民生委員からの相談が多い。町内会とも 連携よく、月1回、広報を配布してもらうた めに町会長に届けに行き、協力してもらって いる。
独自の災害対応マニュアルを作成し、地域ケ ア会議で連携を確認していた。
リストがあったにもかかわらず当日の災害状 況(電気、電話、使用不可)で肝心のデータ がプリントアウトできず活用できなかった。
センタースタッフは避難所を見回った。
要援護者リストに基づき、高齢者独居世帯を 中心に安否確認を行った。民生委員に安否の 連絡を入れてもらった。
センターが津波被害を受け、利用できなかっ たため、圏域内の避難所を巡回、町会や民児 協と話し合い、12ヶ所の避難所を徒歩、自転 車で回って避難状況の調査を行った。
センターでマニュアル作成をしていたが、セ ンター自体の被害でライフラインが途絶し、
コンピュータが使用できず、電話連絡もでき ず混乱した。民生委員とも連絡できなかった が、センターは避難所に行き、予防プラン対 象者の確認をした。一般介護予防高齢者で配 食対象者は事業所が確認した。その他、要介 護者も事業者がそれぞれ安否確認に回った。
予防プラン、一般介護予防高齢者についても 担当者が分担して安否確認を行った。
多くの避難所は、町会がリーダーシップをと る形で運営され、町会が避難所ごとの安否確 認を実施した。3月17日すべての避難所が参 加する避難所連絡会議がスタートし、そこに センターも参加する。避難所には他県からの 保健師が常駐し、彼らを通じて主管課との連 携がスムーズにとれた。
職員が手分けして6か所の避難所の対象者確 認をした、避難所に災害対策本部を設けてそ こに民生委員を配置して、全体の情報がわか るようにした。当日、1名が不明だったが、
後日、他の避難所にいることがわかった。
徒歩や自転車で安否確認できる地域をまわっ た。行政とは5日目にやっと連絡がとれた。
包括センターのマニュアルでは、行政から指 示が入る予定であったが、ライフラインも通 信も遮断された状況で混乱した。
他県からの派遣保健師、町会、センターが連 携してニーズ調査を続け、医療保健関連は保 健師が対応し、福祉ニーズはセンターが担当 した。他の生活ニーズ(支援物資、食料関連 など)は町会が担当した。センターとしては、
認知症高齢者の緊急ショート手配、他区の施 設利用手配などを行った。他県の応援により 医療支援として診療所の開設、車両による出 張郵便局設置、精神保健施設から移動相談所 が開設された。
認知症高齢者、透析患者、圏域外の利用者の 医療など、多様なニーズに関わった。支援物 資をとりに行って、リスト対象分をもらって きて、配達した。
民生委員と一緒に孤立している高齢者への食 料配布を4月中旬頃まで行った。ライフライ ンとガソリン不足のためヘルパーが来れず、
代わりに食料届をせざるを得なかった。家屋 片付けは社協ボランティアセンターに連絡し て手伝ってもらった。法人内の施設に一時的 な避難の受け入れをしてもらった。近隣の介 護事業所が稼働しているか確認を行った。
センターが被災する想定はしておらず、身元 確認情報の引き継ぎがなく、ケアマネが要援 護者を避難所に放置しておくケースが散見さ れ、平時から災害時のシミュレーション、対 応ノウハウを蓄積する必要があると感じた。
センターは行政委託事業の職員であり、また 地域の一員であるけれども、その地で生活す る者ではないため、自分たちの判断や行動が 難しかった。
センターの職員数が足りず、食料配布だけで 終わったような感じがする。民生委員、町会 長との連携ではコーディネーターの役割が果 たせた。電話、FAXが使用できないことは想 定外だった。仙台市はマニュアルの再検討を 行う予定である。電気が通じるまで安否確認 が困難で、けがや体調不良で寝込んでいる人、
凍死者等を民生委員が発見した。精神科通院 者にはその支援が必要である。
他県の保健師、センター、町会が本センター 作成の調査シートを利用して全戸調査を行っ た。町会が避難所運営を担当、避難所連絡会 議で避難所状況等の情報交換をして物資配分 を含めた対応を話し合った。学校内避難所に ついては、一定期間を経て、避難者が自宅復 帰や他の避難所へ移動するよう指導し、学校 機能の回復を手助けした。
災害時対策をしていたものの、電気、電話が 使えなかったこと、ガソリンが入手できなかっ たことにより、速やかな連絡や安否確認がで きなかった。最新データを入力するとともに 常に、プリントアウトして手元で確認できる ようにしておくべきだった。
被害が大きかった地域から緊急避難してきた 人が多いうえ生活保護世帯や独居世帯の高齢 者は、震災後に家族に連絡をとっても関わり たくない者が多く、無理やり一人暮らしに戻 された高齢者があって困った。脱水や栄養状 態が影響したのか認知症の相談が増えた。震 災後1か月くらい経ってから体調を崩す人が 多かった。
ればならなかった実態がうかがえる。安否確認 を始めたきっかけは、「センター長の判断」「セ ンター内関係者と打ち合わせて」が多く、その 他「2009年から災害時要援護者の安否確認体 制を作成していたから」がみられた。自治体直 営型のセンターでは災害マニュアルに基づいて 行ったと回答している。
安否確認は誰からの情報・連絡で最初に確認 したかについては、1位に「センター職員自身 が直接確認」、2位に「居宅介護支援事業所の 介護支援専門員」「ヘルパー」、3位に「利用者 同居家族」があげられた。安否確認の際、どの ようなケースから優先的に行ったかは、「独居 の人」「高齢者夫婦のみ世帯」「被害の大きかっ た地区の人」「医療ニーズが高い人」、さらに「近 隣とのつながりがない人」となっている。優先 的に安否確認を行った要支援者については、日 頃からあらかじめ緊急用対応策を決めていたか どうかは、「決めていた」「決めていなかった」
がほぼ同じであった。緊急対応策としては、「関 係者と口頭で申し合わせ」「センターで作成す るケアプランに明記」「災害時要援護者避難支 援プランに基づいて」等であった。
センターではなんらかの災害時対策をしてい たかの有無は、「有り」(53.8%)がやや多かっ た。その対策をしていた背景は、「センターが 自主的に対策整備をしていた」(56.3%)、「自 治体としての義務もしくは要請があったから」
(37.5%)で、「町内会単位等の地域住民の取 り組みで行われていたものと連携していた」
(6.3%)は僅かであった。具体的な対策は、「災 害時対応マニュアルを作成し、センターの行動 計画を作成していた」(58.8%)、「地域住民と 協力して災害時要援護高齢者リスト作成をして いた」(35.3%)である。その他の対策として、「安 否確認名簿とマップ作成」「法人としてマニュ アル作成」「居宅サービス事業者と協力して要 援護高齢者の安否確認リストを作成」等、組織 的になんらかの対策を準備していた。
本調査結果は仙台市の実態を示すものではな く沿岸部の回答結果をみたに過ぎないが、災害 が多い地域の福祉機関は、なんらかの災害時対 応を進めていたことがわかった。地域包括支援 センターと地域の自主防災組織等との連携や協 働はまだ十分とはいえないが、自治体それぞれ の災害対策がみられた。
4. 地域包括支援センターの災害時対応 の課題
4. 1 福祉行政と防災行政との連携の課題
仙台市の防災計画における災害時要援護者支 援については健康福祉局が担当し、福祉避難所 を指定しすみやかに福祉サービスの提供を行う こととしている。予想を超える被災者を出した今 回の津波災害では、指定福祉避難所だけでなく 特別福祉避難所を適宜設置することで要援護者 対応をした。それら福祉避難所の場所となった 法人は受託の地域包括支援センター職員がそこ でおもに活動することで高齢者支援をするかた ちとなった。このように度重なる地震、津波を経 験している東北では災害時対策を具体的に進め ており地域包括支援センターにおいても即対応 ができるよう整備していた。しかし、結果的には 役所そのものが被災し、東北県内の自治体直営 の地域包括支援センターでは所有する要援護者 リストがまったく活用できなかったのである。仙 台市では、委託している法人に地域包括支援セ ンターごとに災害時マニュアル作成を義務付け ていたが、まだ具体的な方法や書式を明示する に至らず、独自に作成するよう指導していたにと どまっていた。さらに今回の大津波では、そのリ ストのデータが使えなかった他、区役所のデー タを活用しようにも連絡手段がなかった現実を ふまえて、今後、災害時対応マニュアルの内容、リスト・データの管理のあり方、情報共有のあり 方をも見直す必要がある。
各自治体が取り組む地域防災計画と災害時要 援護者支援対策には、常に個人情報保護の問題 がつきまとう。「災害時要援護者の避難支援ガ イドライン」では、災害時要援護者情報の共有 として、①関係機関共有方式、②手上げ方式、
③同意方式、と分類して各自治体に災害時要援 護者の情報収集・共有を促している。それをも とに、2007年8月に、厚生労働省内各部門共 同の通知「要援護者に係る情報の把握・共有及 び安否確認等の円滑な実施について」が出され た。そのなかで、要援護者情報の共有について、
災害時に要援護者の避難支援等を行うため、日 頃から防災関係部局と連携して、要援護者情報 を自主防災組織や民生委員児童委員等からの 関係機関と共有しておくことが重要であると述
べ、その際の個人情報保護への配慮と3つの方 式それぞれの留意点を示している。
これらの問題を抱えながらもより安心・安全 なまちづくりのために独自の取り組みをしてい る自治体がある。行政主導型として、東京都渋 谷区は「関係機関共有方式」を15、板橋区は「手 上げ方式」と「同意方式」を併用し16、区民に 積極的にリストへの登録を呼びかけている。
新潟県長岡市では、市の条例により福祉部局の 情報は地域の福祉機関である地域包括支援セン ターにも共有できるようにしている17。担当分 野を超えて情報共有できる仕組みと住民側の災 害に備えた体制づくりの理解が必要である。ま た、住民主導型として、京都市春日学区18や神 戸市真野地区19などがあげられるように、住民 が主体となって地域の要援護者を把握し、災害 時の支援体制を作り上げているところもある。
これから起こると予測される巨大地震研究に より、今まで津波を経験しなかった地方にとっ ても津波災害対策の整備が急務となっている。
個人情報を守りつつ、担当分野を超えた連携体 制がますます重要となる。
4. 2 地域包括支援センターの減災機能の 課題
地域包括支援センターはいうまでもなく介護 保険事業の中核機関である。そこに防災活動や 災害時対応を求めるのは難しく、課題も多い。
しかし、前述の同ガイドラインでは、①避難所 における支援、②関係機関等との間の連携、③ 避難支援ガイドラインに沿った取組の更なる発 展、について記述している。具体的には関係機 関等との間の連携で、「介護保険制度における 地域包括支援センターの枠組みの活用・連携を
深めるとともに、障害者支援に関しては、障害 児(者)地域療育等のコーディネーター、知的 障害者生活支援ワーカー、精神障害者地域生活 支援センターの精神保健福祉士等の相談支援ス タッフ等との連携も重要になっている」として、
災害時における福祉サービス継続(BCP)のあ り方を示している。避難支援ガイドラインに 沿った取り組みの更なる発展では、「要援護者 を中心とした取り組みの促進として、介護保険 制度における地域包括支援センターの仕組みを 活用しつつ地域における人と人とのつながりを 深めていくことが重要となっている」と地域包 括支援センターの役割に期待している。
また、以下にみられるように福祉専門職自身 や地域支援者の災害への意識が高まっているこ とがあきらかである。
・ 2006年3月、民生委員制度90周年記念事業 として「民生委員・児童委員発 “災害時一人 も見逃さない運動” 実践の手引き」が出され た20。
・ 2008年3月、「第2次民生委員・児童委員発
“災害時一人も見逃さない運動”ハンドブック」
をまとめられた21。
・ 2006年4月、改正介護保険制度による地域包 括支援センターは地域のワンストップサービ スの機関であり、地域ネットワークを推進、
活用が明示された。
・ 2009年3月、(社)日本社会福祉士会は地域包 括支援センターネットワーク研究委員会の中間 報告書「地域包括支援センターにおける連携・
ネットワークの構築に関する研究研修事業」の 中に「防災から入る地域住民の支え合いの引 き出し〜地域の要援護者の避難体制づくりを きっかけにする〜」事例があげられた22。
・ 2009年3月、(社)日本介護支援専門員協会
15 柳澤信司「東京・渋谷区災害時要援護者対策」宇賀克也、鈴木庸夫編著『災害弱者の救援計画とプライバシー保護』地域科学研究会、2007年、
29−38ページ
16 鍵屋一「福祉と防災の連携による安全・安心なまちづくり」宇賀克也、鈴木庸夫編著 同書、3−19ページ
17 長岡市役所「すべての人に支援を届けるために―災害時における個人情報の共有と活用―」『月刊福祉2月号』、2011年、24−27ページ
18 NPO法人・春日住民福祉協議会「住民が創る自治・福祉・防災の地域づくり 春日からの発信ʻ8」、2006年
19 真野地区阪神淡路大震災15周年事業実行委員会、真野地区まちづくり推進会「過去に学び、未来を見つめ、人とまちを守ろう 事業 報告集」、2010年
20 全国民生児童委員連合会「民生委員・児童委員発 災害時一人も見逃さない運動 実践の手引き」、2006年、1−23ページ
21 全国民生児童委員連合会「災害時一人も見逃さない運動ハンドブック」、2008年、1−65ページ
22 日本社会福祉士ホームページjacsw.or.jp:2008年度補助金・助成金事業サイトPDF「防災から入る地域住民の支え合いの引き出し〜地 域の要援護者の避難体制づくりをきっかけにする〜」『地域包括支援センターにおける連携・ネットワークの構築に関する研究研修事業・ 地域包括支援センターネットワーク委員会中間報告書』、2009年3月、 64−75