全文

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果  

一 日

一大学 開設 ―

濱 田美 和 ・後 藤 寛 樹 ・深 澤 の ぞ み

要 旨

富 山大 学 留 学 生 セ ンタ ー で は, 留 学 生 へ の 日本 語 学 習 支 援 の一 環 と して 「T I S C 日 本 語 学 習 支 援 サ イ ト R A I C H O 」 を開設 した。 留学生 セ ンターで開講 して い る 日本語 コー ス及 び 日本語教育 に関す る各種活動 を補完 す ることを 目指 し,「 日本語 自己学習」 「授業 サ ポー ト」 「日本語相談 (小論文 の書 き方 コース)」「日本語 ボラ ンテ ィ ア」 「開発教材」 「情報提供」 の 6つ の コ ンテ ンツを作成 した。 サイ トその ものを 日本語学習支援体制 の中に組 み込 み, 日本語 の コースや授業,個 人指導等 の活動 を総合的 にサポー トしよ うとす るのは新 しい試 み と思 われ る。本稿 は,RAICHOサ イ トの内容,特 徴及 びその効果 につ いて,大 学 における 日本語学習支援体制 との関係 か ら報告 す る ものである。

キー ワー ド】 日本語学習支援体制,留 学生,Webサ イ ト,イ ンターネット

1 日 本 語 学 習 支 援 サ イ ト開 設 の 背 景 1.1 富 山大 学 にお け る 日本 語 学 習 支 援 体 制

富 山大学 には2003年12月現在,280人 の外 国人留学生 が在籍 してい る。留学生 セ ンター 日本語教育部 門では,彼 らのために 3つ の 日本語 コース,す なわち,大 学院入学前予備教育である 「日本語研修 コー ス」 (日韓共 同理工系学部留学生 プログラムの予備教育生 も日本語研修 コースの 日本語科 目を受講 して い る),全 学 の外国人学生及 び外国人研究者 を対象 とした 「日本語課外補講」,学 部正規留学生 のための 教養教育科 目である 「日本語」 「日本事情」 を提供 してい る。2003年度 につ いて は,全 学 の留学生 の半 数近 くが上記 の 日本語 コースのいずれかを利用 しているё留学生 に対す る 日本語学習支援 の一番の柱 は この 日本語 コースの開講であ り,留 学生 セ ンター 日本語教育部 門の主要業務 で もあ る。 しか しなが ら, 日本語 コースの開講 だけで,留 学生への 日本語学習支援 が十分 に行 え るわけではない。

では,留 学生 セ ンターでは, 日本語 コースの開講以外 に どのような 日本語学習支援がで きるのだろう か。 これを考 え るためには,ま ず留学生 セ ンターで提供す る日本語教育を大 きい 1つ の教育 システムと 捉 え,留 学生 のニーズ,教 育方略,使 用 メデ ィア等の要素 を組 み合わせなが ら,総 合的なデザイ ンをす る必要 があ る。ISD(Instructional System Design)と呼ばれ る方法論 であ る (赤堀2002など)が , ここではサイ ト開設 の背景 と して,留 学生 セ ンターにおける日本語教育 に必要 とされ る種 々の要素や各 要素間の関連 な どを俯腋 してみ ることにす る。

1.1.1 留 学 生 の ニ ー ズ

これ まで 日本語 コースで普通 に行われて きたのは,基 本 的に複数 の学生 を対象 と した教室での一斉授 業 であ る。一斉授業 においては必ず クラス内に個人差が生 じる。個人差が生 じることは 日本語教育 に限 ることではないが,学 生 の母語,母 文化,専 門,年 齢等が様 々であるため, 日本人学生 を対象 と した ク ラスよ りも個人差 の生 じる度合 いが高 く,加 えて,個 人差 の格差が広 が る可能性 が大 きい。 また, 日本 語 コースには,全 学部 の留学生 を対象 と した クラスが大半 を 占め るDため,様 々な専門,身 分の学生が お り,大 学での学習 ・研究活動,あ るいは大学生活 において必要 な 日本語 の習得 を 目指 している点では 一致 しているが,専 門あるいは身分 ごとにニーズ も異なる。 さらに,専 門によっては,学 生 自身は日本

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語の必要性を強 く感 じていて も,実 験や専F]の授業等で時間的余裕がな く日本語 コースを受講 した くて もできないという留学生 もいる。大学において留学生に必要 と想定 される日本語 と各留学生によるニ ズの違いをまとめたのが表 1で ある。

表 1を 見 ると,留 学生 にとって必要な 日本語が極めて多様で,ま た各留学生 によって三ニズが異なる ことが明 らかになる。 この多様なニーズに,一 斉授業だけで応えようとするのは不可能である。

昨今では学習者の多様化に従い,学 習の主役は教師ではな く,学 習を経験 している学習者であり,学 習者が潜在的に持 っている学習能力や可能性を引き出すべきだという学習者中心の言語教育観が主流 と な ってきた (岡崎他2001など)。また,学 習は授業 という活動の中にだけ起 こるものではないと捉える 学習観 も取 り入れ られるようにな り (西日2001),IT機器の発達やIT環境の整備などによって学習メディ アにも大 きい変化が現れてきている (井上1999など)。日本語の教育 システムを検討する場合, これ ら のような日本語教育をめ ぐる新 しい要素を既存の教育の枠組みに加えて, システム全体の根本的な見直

しをはかる必要がある。

以上によ り,富 山大学留学生セ ンター 日本語教育部門では,学 習者の多様化に応えるため日本語教育 システムの再検討を行 った結果,2003年春より,授 業期間中の毎週水曜 日の昼休み時間を利用 して,専 任教員が 自本語 に関する各種相談を受 ける 「日本語相談」 という活動を開始 し,加 えて,富 山大学の外 国人留学生を対象 とした 「日本語学習支援サイ ト RAICHO」 を開設す るという改善を行 うに至 った。

この改善 プロセスを示 したのが図 1で ある。

1.1.2 新たな 日本語 学習支 援体制 の構築

図 1で 示 した改善 プロセスにより,2003年度現在,富 山大学留学生セ ンタTの 日本語学習支援体制は 図 2の ような体制 となっている。留学生セ ンターで開講 している日本語 コースを柱 として,2003年 より

表 1 留 学生 に とって必要 な 日本語 と各留学生 のニーズの違 い

①一般基礎 日本語 :

基本 的な文法知識 と,聴 解,読 解,会 話, 作文 の各能力

日本語学習者全員 に共通 して必要

大学 に入 るまでの学習環境 が様 々で あ るため,留 学生 によ って習得状況 が異 な る部分 があ る。

② 日本での生活に必要な日本語 :

周 囲 の人 との 日常会 話, 買 い物 , 病 院, 住 居 な どに関す る 日本語, 諸 手続 き, 公 共 料 金 の支払 いな どに関す る 日本語

日本で生活す る場 合に必要

家族 の有無,住 環境 の違 い,ア ルバ イ トの内容,宗 教 の種類等 によ って異 な る部分 がある。

③大学生活に必要な日本語 :

履 修手続 き, 単 位 , 成 績 , 奨 学金等 の申請

に関す る 日本語 日本 の大学 で留学

生活 を送 る場合 に 必要

留学生 の身分, 所 属 によ って異 な る部 分 がある。

④ 大 学 で の研 究 ・学 習 に必 要 な 日本 語 : 講 義 を聴 く,専 門書等 を読 む, レ ポー ト・

答案 ・論 文 を書 く,研 究会等 で 口頭発表す る ときな どに必要 とな る日本語

留 学 生 の専 門 に よ って異 な る部 分 が あ る。

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TISCの 日本語 コース

:

学生の レベルの多様化

l

学習 メデ ィアの多様化

̲1 多 様化  ‐ ̲ 響l厠 岬 饉

日本語教育観の変化

図 1 富 山大学留学生 セ ンター (TISC)日 本語教育の教育方略の改善のプロセス

新 しく始 めた 「日本語相談」 と 「日本語学習支援 サイ トRAICHO」 の他 に,従 来 か ら行 って いる教材 開発,そ して,「 日本語相談」 の活動 のサ ポー トを主 たる目的 として募集 した 日本人学生 による 「日本 語 ボラ ンテ ィア」 があ り,相 互 に関連 を持 ちなが ら大 きい 1つ の教育 システムを形作 ってい る。 「日本 語 ボラ ンテ ィア」 は 「日本語相談」 での教員 のサポー トの他 に,留 学生の 「会話パー トナー」 として も 活動 を行 っている。

2003年よ り始 めた 「日本語相談」 「RAICHOサ イ ト」「日本語 ボラ ンテ ィア」, これ らによ り, 日本語 コースにおける一斉授業で扱 いづ らい部分 を複数 の手段 で補足 できる体制 とな った。 よ り良 い体制作 り には 1つ の手段 だけではな く,複 数 の手段 を準備す る必要があ るとはよ く言 われ ることであるが,富 山 大学留学生 セ ンターでの支援体制 も複数 の方略 を準備す ることによ り,多 様化 している留学生 のニーズ に応 え ることが可能 とな ったのである。

本稿 では, これ らの支援体制 の うち,「 日本語学習支援 サイ トRAICHO」 に焦点 を当て,サ イ トの運 営が どのような形 で大学 における日本語学習支援体制の充実 に関わ るか,そ して どのよ うな効果があ る かにつ いて報告す る。

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日本語相談

日本 語 に関 す る質 問 に個 別 に対 応 卜 般基礎 日本調 :日本語 の個人指導, 学習方法についてア ドバイス 1大学で必要な 日本調 :レ ポー トや論文 の添削 と書き方の指導,専門語等の漢字 の読みの説明,教員 との接 し方等のア ド バイス

生活で必要な 日本語 :手紙の書 き方の 指導,請 求書等の書類の内容の説明

授 業 で 扱 え な い部分の補 い

・ コー ス の 内容 に即 した教材 の開発

・ 授 業 で扱 えな い部 分 の補 い

。 授 業 に参加 で きな い学生 のサポー ト

テ キス トの オ ン ライ ン化 自律学 習用 コンテ ンツの作成 丁I S C   R A I G H O サ イ ト運 営

日本 語 学 習 の た め の 独 自サ イ ト 自律学 習 用 コンテ ンツ : 日 本語 学 習 の ための練習 ドリル及び解説 授 業等 のサ ポー ト : 日 本語 コー ス等 の 内容 の補足, 課 題 の提供 情 報提 鯛 : 日 本語 学 習 のた めのテ キ

ス トや サイ トの紹介, 「 日本語相談」

「日本語 ボ ランテ ィアJ の 活動 スケ ジ ュール等の紹介

教 材 開 発

留 学 生 の た め の 独 自教 材 の 作 成 留学生のための 日本語 コンピュー タ : 留学生の コン ピュー タ リテ ラシー習得 を 目的 として開発 したテキス ト 留学生のための コン ピュー タ用語集 : 日本語の コンピュー タ用語の英訳 と中 国語訳 を調べ ることがで きる用語集

リズムで学ぶ 白本語発音あい うえお : 日本語の発 音練習のためのテキス ト 漢字教材用デー タベー ス : 漢字の学習 支援のためのデー タベース 2 )

日本語ボランテ ィア

日本 人学 生 に よ る 留 学 生 へ の 日本 語 支 援 活 動 日本語相談 : 日本語相談で教員をサポ ー トする

会話パー トナー : 希望す る留学生の会 話パー トナー となる

※教員は, ・i n 2 学生 と日本人学生の橋渡 し をす る。あるいは, 日 本人学生に 日本語 の指導法等をア ドバイスする。

一 斉授 業 で扱 え な い部分 の補 い

コー スや 授 業 内 容 のサポー ト

授 業 に 参 加 で き な い学 生のサ ポー ト

。 一 斉授 業 で は 扱 えない部分の

。 コー ス に参加補い で きない学生の サポー ト

図 2 富 山大学留学生セ ンターの日本語学習支援体制

日本 語 相 談 で のサポー ト

活 動 のサ ポー ト

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2 独 自サ イ ト開設 の意味

「日本語学習支援サイ トRAICHO」 を紹介する前 に, コンピュータを 日本語学習に利用する意義, そ して独 自サイ トを開設す るに至 った理由について述べることにしたい6

2.1 日 本 語 学 習 にお け る コ ン ピ ュー タ の 有 効 性

コ ンピュー タ利用教育 の利点 と欠点 につ いては,池 田(2003),井上編(1999),清水編(1993),鄭(2003) な どの先行研究 で既 に指摘 されているが,本 稿では富 山大学の留学生 が置かれている状況 と特 に関係す る点を見ていきたい。

まず, コ ンピュータ利用教育 を一斉授業 による学習 と比較 した場合 の利点 と しては,好 きな時間 に好 きな場所で学習 できることと,学 生 が各 自のニーズに合 わせて学習 内容を選択 で き, 自分 のペースで学 習を進 めていけることが挙 げ られる。次 に,印 刷 された教材 と比較 した場合 の利点 としては,コ ンピュー タは正誤判定等 の即時 フィー ドバ ックが可能であ ること,文 字 と音声 と映像 (動画)を 同時 に扱 え るこ と,書 籍や ビデオでの映像 は初めか ら終わ りへ と一定方向に流れてい く直線的構造 であるが,コ ンピュー タは リンクによ り利用者 の興味がある箇所へのアクセスが容易 にで きる,つ ま り,利 用者 の興味 に応 じ て流れの向きを変えた り,複 数の流れの中か ら自分 に合 った流れを選 んだ りで きる複線 的構造 にあるこ と, これ らの特性 を利用 してゲTム 性 を有 した教材 を作 りやす い ことがあ り,ま た,ラ ンダムアクセス ができ繰 り返 し練習 が可能 であることか ら,学 生 の学習への動機付 けにつなが りやす い ことも大 きな特 長 と言 え る。

さらに,Webを 利用 した学習 になると,坂 野他(2003)も述べているように,新 しくソフ トをイ ンス ト ル しな くもコンピュータがイ ンターネ ッ トにつなが って さえいれば利用す ることがで きるので, この こ とによ り,次 のよ うな利点が プラスされ る。 まず,イ ンターネ ッ トにつなが るコンピュータであればど の コンピュー タで も使 うことがで きるので,時 間的空 間的な制約 か らさ らに 自由にな る。 次 に,Web 教材 は更新が容易 にで きるため最新 の情報 が得 られ る。 そ して,新 しい ソフ トを購入 しな くていいため 費用面 での負担 も少 な くな る。 また,OSの バー ジ ョンな どの影響 もあま り受 けることがない。

逆 に,コ ンピュニタ利用学習 の欠点 と しては,コ ンピュータ及びイ ンターネ ッ トが利用可能な環境が 必要であ ること,学 生 が コ ンピュータスキルを習得す る必要があること,学 生が 自発的に学習を行 う必 要があること,語 学学習 において重要 とな る生 の コ ミュニケー シ ョン練習等が難 しいことな どが挙げ ら れ る。

最初 に挙 げた コンピュータ環境 に関す る問題̀点は,富 山大学では総合情報基盤セ ンターを初めとして, 図書館 や各学部,研 究室等で学生 が 自由に使 うことがで きるコンピュータが数多 く設置 されてお り,管 理上, ソ フ トのイ ンス トールは 自由にで きない ことが多 いが,イ ンターネ ッ トヘの接続 はできるように な っている。次 の学生 の コンピュァタスキル につ いて は,2.2で 詳 しく述べ るが,現 在,富 山大学 の留 学生 の大半 は,ホ ームペー ジを開覧す るスキルを有 している。残 りの問題 については, コ ンピュータだ けで全 ての教育 を行 う完全 な遠隔教育 の体制では, これ らを解消す るために コンピュータの専門家の協 力 を得 なが ら,高 度 な システムを用 いた教材 を開発す ることが必要 とな るが,RAICHOサ イ トはあ く

まで 日本語 ヨースを基盤 と した 日本語学習支援体制 の一部を担 うものであ り, これ らコンピュータ利用 教育 における弱点 については,授 業等で扱 うことができる。 また,学 生 の 自発性の喚起 については,種 々 の手段 でのPRだ けでな く授業 内や個人指導 の中で具体 的 に指示等 を行 うことによ り,実 現 している。

よって,い ずれの問題 も富 山大学 に在籍す る留学生 を対象 とす る場合 には重大 な問題 とはな らない。

以上 か ら, コ ンピュータは一斉授業等で扱えない部分を補 う目的で利用す るには大変適 したツールで あ ると言 え る。

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2.2 留 学生 の コ ン ピュー タスキル

サイ トを 日本語学習 に利用す る場合,留 学生のコンピュータスキルが問題 となるL富 山大学留学生セ ンターでは,各 日本語 コース内で留学生のコンピュータ リテラシーを養成するために,「コンピュータ」

や 「コンピュータによる作文」 といった授業科 目を設 けた り,通 常の 日本語及び日本事情 に関する一部 の授業の中で も必要に応 じてコンピュータを利用 した授業を行 っている。富山大学に留学生セ ンターが 設置 された1999年か ら2003年まで 5年 近 く,筆 者 らは留学生 に直接 コンピュータを指導する中で,留 学 生のコンピュータスキルがわずか数年の間に格段 に向上 したことを実感 している。1999年〜2000年にか けてはコンピュータを全 く使用 したことがないという留学生がいたが,2001年以降はコンピュータの使 用経験が全 くない学生 は見 られな くな った。2003年度 に教養教育 「日本事情 I」 で受講者 (学部 1年 生 と日本語 。日本文化研修留学生)に 行 ったコンピュータ使用歴調査では,回 答者32人全員がインター ネ ッ トでのホームページ閲覧やメールの送受信,そ してワープロソフ トの使用ができると答えている。

さらに, 日本語未習で来 日す る学生が多 くいる日本語研修 コースや 日本語課外補講では日本語入力の経 験がない学生の占める割合 も高 くなるが, 日本語能力試験1級レベルの学生が大半を占める 「日本事情 I」 では, 日本語入力の経験が全 くないという学生 も 1人 だけであった。 日本語入力や 日本語環境での 複雑な操作, 日本語での情報検索や情報発信のための教育 は今後 も必要であるが,必 要 となる教育内容 は 5年 前 と明 らかに変わってきている。 これには,留 学生の母国でのコンピュータの普及,そ して,地 球規模でイ ンターネ ッ ト環境が加速度的に整備 されていること,ま た, コンピュータ自体の性能 もよ く な り, ソフ トもより使いやすいものへ と改善 されていることが理 由として考え られる。

このように,イ ンターネ ッ トでの学習にも十分対応できる ぐらいに留学生のコンピュータスキルは向 上 してお り,今 後 もさらに向上 してい くことが予想 される。

2.3 独 自サ イ トの必要性

地球規模でのイ ンターネ ッ ト環境の加速度的な整備 に伴い,イ ンターネ ッ ト上の情報は益 々充実 して きている。 日本語学習用のコンテ ンツも増えているので,学 生は自分にあった教材を選べるようになっ てきた。情報の増加は,そ れだけ利用者の選択の幅が増えるということにつながるが,逆 に,情 報量が 多 くなればなるほど, 自分 に必要な, しか も信頼できる正 しい情報を見つけ出すのが困難になるという マイナス面 もある。 インターネ ッ ト上の膨大な情報は,よ く 「情報の洪水」 とたとえ られる (井上編 1999など)が ,そ の膨大な情報の中か ら自分がほしい情報を入手するには,技 術や時間を要する。 日本 語母語者であって も,イ ンターネ ッ ト上でキーヮー ド検索を して, 目指す情報が掲載 されたページを探 すのは容易ではな く,留 学生 にとってはかな り大きな負担 となる。

そこで,筆 者 らは,富 山大学の留学生が 日本語学習をするときに必要 となる情報のみを提供する独 自 サイ ト 「TISC日本語学習支援サイ トRAICHO」 を開設 し,留 学年の日本語学習を支援することにした。

ターゲ ッ トを富山大学の留学生 に限定す ることにより掲載する情報を絞 り込め,そ の結果,学 生は必要 な情報を楽 に探す ことができるようになる。

また,RAICHOサ イ ト開設の 目的は,富 山大学留学生セ ンターの日本語学習支援体制の強化にある ため,富 山大学での教育内容に即 したコンテンツが必要であ り,既 存のサイ トだけでは対応できないこ とも独 自サイ トを開設 した理由として挙げられる。 日本語学習用には画像,音 声,動 画,辞 書ツールな どを利用 した非常にす ぐれたコンテ ンツが既 にい くつか開発 されている。が,あ る教育機関における日 本語学習に関する活動全体を総合的に支援す る目的で,サ イ トを運営するというのは新 しい試みで,か つ,こ の点がRAICHOサ イ トの最 も大きな特徴であると言える。

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3   R A ! C H O サ イ ト

R A I C H O サ イ トのU R L は h t t p : / / w w w . i s c . t o y a m a ―u . a c . j p / 〜r a i c h o / で, 富 山大学留学生 セ ンターの

サ ーバ上 に設 置 して あ る。 富 山大学留学生 セ ンターの ホー ムペ ー ジ ( h t t p : / / w w w . i s c . t o y a m a ― u . a c . j p / ) からもリンクしてある。

3.l RAiCHOサ イ トの コ ンテ ンツ

RAICHOサ イ トは,「日本語 自己学習」「TISC授業サポー ト」「日本語相談」「TISC日本語ボランティ ア」「TISC開発教材」「情報提供」の 6つ のコンテ ンツか ら成 り立 っている。図 3は RAICHOサ イ トの

トップページである。以下,3。1では,RAICHOサ イ トの各 コンテンツを詳細に紹介す る。

ひ らがな、カタカナ、漢字や文法が学べます。

Vou can studソHiragana′Katakana,Kanii and 6rammars

授業担当者からの連絡など、T I S C で開設 している授業のサボー トベージです。

Japanese lesson suppOrtiinformation fronn the lecturer,and 50 0n

T I S C 『日本語相談」のベージです。

TISC Japlanese Langu‐dge Consultation Hour

日本語ボランティアのためのベージです。

Pages for TISC l・lihon9o Volunteers

T l S C で開発 した教材のH T M L 版. P D F 版 のベージです。

Textbooks developed by TiSC(as HTttL/PDF Format)

日本語学習者、日本語数師のための便利な情報です。

Useful info「m‐dtion foFlearners and teacher3 0f」apanese

図 3 RAICHOサ イ トトップペー ジ

3.1.1 日 本 語 自 己 学 習

この コ´ンテ ンツは コース開始前 の導入教育,及 び コース開始後の補習教育 のために作成 した ものであ る。具体 的には,文 字や語彙,文 法 に関す る解説 とクイズか ら成 り立 っている。2003年12月現在提供 し ているのは,ひ らがな ・カタカナの クイズ,『Basic Kanji Book』Vol.1と2に 基づ く漢字 クイズ励,初 級前半 レベルの助詞 を扱 った クイズ,テ 形 クイズである°。 問題 は実際の出題数 よ りも多 く用意 されて

いて,毎 回 ラ ンダムに出題 され るようにな っているので,繰 り返 し利用す ることが可能 である。 この ラ ンダムに出題 され,か つ繰 り返 し利用 で きるとい う要素 は,鄭 (2003)も述べているように, コ ンピュニ タによるマルチメデ ィア教材が語学学習 に有効 であ ることの要素 の 1つ とな るものであ る。

3.1.2 丁lSC授 業 サ ポ ー ト

この コ ンテ ンツは,富 山大学留学生 セ ンターで開講 しているい くつかの授業 のサポー トをす るために 作成 した ものである。現在 の ところ,大 学院入学前 の予備教育である 日本語研修 コースの コンピュータ 授業,全 学の留学生 を対象 とした 日本語課外補講 の中上級 向け聴解 の授業,そ れか ら,学 部留学生 の教 養科 目である 日本語A, 日 本語B, 日 本事情 Iの 各科 目につ いてペー ジを作成 している。各ペー ジの機

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K a t a t t m 炒 サ

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かんじクイズ レベル4‑2

ただしい かtt/をえらんでください。

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◇侍 って      ◇ 持 って      ○ 待つて      ● 詩 って

輻漑Ⅲ Ⅲ111年│‐0■¨■ⅢIVII ■ │‐■‐■■

0時 ご│まん     ○ 映ご1まん     0晴 だ 1まん     ● 夜ご│ま

│ │ ' キ l t 梓│ ア) ■ I Ⅲ煮F l l l l ソ │ │ 〜 │   ‐ │ .   ■ │ ‐│ ‐‐‐│ │ │ │ ‐ ■ │ │   │ o お 酢       O お 西      G お 酒       ( 3 お

聰昴‐す●││■やヽ■│ツIⅢIギ│て,トー■│ ■│‐■■│‐■│‐│

◇売 り場      ◇ 壼 り場      o 読 り場      0 壱 り場

輻 │││1年■│"10●,押望て│■││││ ‐■■■│■│■││‐

◇二通間       ○ 二週間       c l 二 追間       0 二 迫間

聰 雛 Ⅲ ヽIⅢ

│ 〜り ■ ■ │IⅢ I■  ‐ │■ ││■ │■

◇雪話       0電 籠       0電 話       O雷

靱聰 │,ⅢⅢⅢ lll'ヽ││││(│̀■聾│か│■`■│‐■■│ ■ │‐■│

図 4 日 本語 自己学習 トップペー ジとコンテ ンツの一部

能 は,そ れぞれの科 目によ り多少異 な るが,授 業 スケ ジュールの提示や変更の案 内,授 業 内容 の補足, 課題 の提示,そ して関連情報や資料 の提供 な どである。科 目によ っては,授 業 中にサイ トにアクセス し, 該 当のぺTジ をそのまま使用 して学生 が活動 を行 うもの もある。 また,授 業 で用 いるファイルをダウ ン

ロー ドできるように してあ るペー ジもある。

3.1.3 日 本 語 相 談 (小論 文 の 書 き方 コー ス )

1.1.2で取 り上 げた 「日本語相談」 ともRAICHOサ イ トは関連があ る。 「日本語相談」 は,授 業期間中 の水 曜 日昼休 みに,学 生 が 日本語教育部 門の専任教員 にアポイ ン トな しで 日本語 に関す る相談ができる とい うサポー トである。手紙 の書 き方,書 類 の内容確認, レポー トの添 削, 日本語学習 の方法のア ドバ イスな ど, 日本語 に関す る様 々な質 問を受 けている。 この 「日本語相談」の中で,大 学院受験 を控 えた 留学生 か ら 「小論 文 の書 き方 を効 果 的 に学 びた い」 とい う要望 が あ ったので, こ れ に応 え るた め, RAICHOサ イ ト内に 「小論文 の書 き方 コース」 を設 け,学 生への課題 をWeb上 で提供す ることに した。

これは,大 学院受験 を 目指す留学生 は学部 に所属 してお り,学 部での授業や研究活動で多忙 なため,頻 繁 に留学生 セ ンターに来 ることがで きない とい うことが大 きな理 由である。

日本語相談 で 「小論文 の書 き方 コース」 に登録す ると,RAICHOサ イ トに掲載 されて いる課題 を見 るためのパ ス ワー ドを得 ることがで きる。 学生 は時間があ るときにWeb上 の課題 を見 て,そ の課題 を 仕上 げておき,翌 週 の 「日本語相談」 の ときに担 当教員か ら添削 ・ア ドバ イスを して もらうとい う流れ にな っている。

課題 は 「経済」「社会」 「科学」 「文化」 「教育」の 5分 野 につ いて,難 易度 は 3レ ベル,全 部で18題, 用意 してある。小論文 の書 き方 についての一般 的な注意事項 を最初 に記 し,課 題 ごとに も作文す るとき の注意点 を記 してある。課題 の大半が新聞記事,論 説文,過 去の入学試験問題等をそのまま引用 した も のなので,著 作権 の ことを考慮 し,パ スワー ドでアクセス制限をかけている。

3.1.4 丁:SC日 本 語 ボ ラ ンテ ィア

1.1.2で述 べ た 「日本語相談」 の時間 には, 日本語教育 に関心 を持 ってい る 日本人学生 に も日本語 ボ ラ ンテ ィア と して参加 して も らって い る。 その ボ ラ ンテ ィアの学生 に対す るサポー トを行 うのが, TISC日 本語 ボラ ンテ ィアのペニ ジであ る。具体 的 には,活 動 内容 の説明,留 学生 と接す る際の心得, 活動 スケ ジュールが掲載 してあ る。

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Webの 利点 の 1つ と して,情 報が双方 向にや り取 りで きるとい うことが挙 げ られ るが,現 在 は教員 側 か ら学生へ と一方 向の情報提供 がな されているだけなので, これを双方向にや りとりができ, 日本人 学生 に対 して効果的な フィー ドバ ックな どが行え る体制 に していきたい と考えている。

3.1.5 丁:SC開 発 教 材

この コ ンテ ンツは,富 山大学留学生 セ ンターで開発 した教材 をWeb化 して提供 した り,PDFフ ァイ ル形式 で提供す ることを 目的 と している。現在,『留学生 のための コンピュータ用語集』 のWeb版 が公 開 されているつ。富山大学留学生セ ンタ=独 自開発教材 (テキス ト)と しては,『留学生のための コンピュー タ用語集』 の他 に,『留学生 のための 日本語 コ ンピュータ』『リズムで学ぶ 日本語発音 あい うえお』があ るが, これ らにつ いて も,順 次,Web版 またはPDF版 と して提供 してい く計画 であ る。 テキス ト版 は 基本 的 に授業 内での使用 を中心 と してい るが,そ の内容 をWeb版 ,PDF版 で提供す ることによ り,教 室外での利用 が可能 とな り,研 究等で忙 しく留学生 セ ンターの 日本語 コースに参加 できない学生 も, こ れ らの開発教材 を利用 できることにな る。

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図 5『 留学生のためのコンピュータ用語集』Web版 トップページ

311.6 情 報 提 供

この コンテ ンツには, 日本語学習者 に とって有用 と思 われ る情報 を掲載 している。 まず,富 山大学 で 学んでい る留学生 のために,留 学生 セ ンターで開講 している日本語の授業で使用 しているテキス トにつ いて,そ のテキス ト名 と表紙 の写真 を提示 している。 また,留 学生 向けの 日本語 の辞書 につ いて も同様 の情報 と簡単 な特徴の説明を掲載 している。 さらに,便 利な リンク集 として,留 学生が日頭発表や レポT

卜作成 の際に参考 にで きそ うな,国 や文化 を扱 ったサイ ト及 び新 聞やニ ュースの情報を得 るためのサイ ト,サ イ トの漢字 に 自動的 に=ゝりがなをつ けて くれ る子供 向けのサイ ト,漢 字 の書 き順 が動画 で見 られ るサイ ト,検 索サイ トな どの情報 も紹介 している。 その他, 日本語 コースを担当 している教員や 日本語 ボラ ンテ ィア と して活動 している日本人学生のための情報 も載せてい る。

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◆留学生のための辞書紹介

図 6 情 報提供 の コンテ ンツの下部

3.2 サ イ ト開 発 の 際 の 留 意 点

一般 に,Webサ イ トを構築す る際には, コ ンテ ンツのみな らず,そ の表示方法やデザイ ンな ど,多 くの ことを検討 しなけれ ばな らないが,RAICHOサ イ トも開発 にあた って様 々な点 を考慮 してい る。

ここでは,サ イ トの開発 にあた って重視 した点 について触れておきたい。

まず, こ のRAICHOサ イ ト開設 の大 きな 目的の 1つ は,富 山大学で学 んでい る留学生 の 日本語学習 を支援す ることにある。 そ こで, コ ンテ ンツと しては,留 学生 セ ンターで開講 している 日本語授業 の予 習や復習,あ るいは授業 中の補助 と して使 え る内容 を提供 し,授 業 と有機 的に連動 させ ることを心が け た。特 に 「日本語 自己学習」 や 「TISC授 業 サポー ト」 の内容 が これ に当た り,「情報提供」 の コンテ ン ツで も留学生 セ ンターで開講 している 日本語 の コースの使用 テキス トが提示 してある。

また,技 術的な面 では,学 生が常 に最新 のイ ンターネ ッ ト環境 で このサイ トにアクセスで きるとは限 らないため,転 送量 の負担 を小 さ くし,画 面 も小 さめのサイズに してあ る。 さらに,「 日本語 自己学習」

の コンテ ンツにあ るひ らがな クイズ,カ タカナクイズは,ま だ 日本語入力 に習熟 していない学生 に配慮 し,マ ウス ク リックだけで処理 がで き,キ ーボー ドか らの入力の必要がない処理方法 を採用 している。

3.3 サ イ ト利 用 によ る効 果

RAICHOサ イ トを用 い ることによ って,教 員,学 生双方 にとって,様 々な利点があ った。 まず,頻 繁 に留学生 セ ンターを訪れ ることがで きない忙 しい学生 にとっては, 自宅 や研究室な どか らサイ トにア

クセスすれば,課 題や指示 を見 ることができ,ま た,教 員 にとって も,課 題や指示の内容をサイ トにア ッ プロー ドさえ しておけばいいので,授 業 の運営が しやす くな った といぅことが挙 げ られ る。 さらに,電 子 フ ァイルを学生 に受 け渡す必要がある場合 で も,サ イ トか らダウ ンロー ドすればいいので,電 子媒体 を介す る必要 がな くな り,受 け渡 しが容易 にな った。 ファイルが開 けない とい うような問題 も,電 子媒 体 による受 け渡 しと比べ ると起 こ りに くくな っている。

また,他 の教員 が出 した課題 の確認等 も,サ イ トにアクセスす るだけで可能 にな り,連 携が しやす く な った とい うことも特筆すべ きであろう。 この他,過 去 の教材 も, 自動的に蓄積 されてい くので,学 生 が復習 した り,教 員 が授業 内容 を確認す る際 に役立 っている。

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4 RA:CHOサ イ トの 役 割 と今 後 の 課 題

3.3でも見 た よ うに,RAICHOサ イ トの利用 によ って,様 々な効果 があ った と言え るが,サ イ ト全体 と して,あ るいは個 々の コンテ ンツそれぞれに,改 善すべ き点や今後検討 していかなければな らない点 が残 されてい る。4。1で,ま ずRAICHOサ イ トが留学生 セ ンターの 日本語学習支援体制 の中で担 う役割 につ いて見 た上 で,4.2で RAICHOサ イ トの今後の課題 について述べ る。

4.l RAICHOサ イ トの 担 う役 割

1.1.1で述 べ た よ うに, 日本 の大学 で学ぶ留学生 は,基 礎 的な 日本語力 だ けでな く, 日常生活 で必要 な 日本語力,大 学生活 を送 る上 で必要な 日本語力,大 学 での研究 ・学習活動 を進 める上で必要 となる日 本語力 とい うよ うに,様 々な種類 の 日本語力 を必要 と しているが,具 体 的 に必要 とされ る内容 について は,専 門や身分等 によ って違 いが出て くる。 さらに,母 語,母 文化,年 齢等 の多様性 によって個人差 が 生 じやすい ことも既 に述べた通 りであ る。 こうした多様性 を もった留学生 に対 して,教 室での一斉授業 による 日本語教育 のみで対応 してい くことには限界がある。一斉授業 では扱 いきれない残 された部分 を 補 う手立て と してはい くつかの方法が考 え られ,既 に富 山大学留学生 セ ンターで も日本語相談 や 日本語 ボランテ ィアによるサポー トな どの活動 を通 して学習支援 を進 めているが,そ れ らと並んで大 きな役割 を担 うのが このRAICHOサ イ トであ る。

例えば,自 己学習のための教材をオ ンライ ンで提供す ることで,留 学生 は余裕があるときに個 々のペー スに合 わせて学習 を進 め ることがで き, 自律学習 の促進 にうなが ってい く。鄭(2003)も述べているよ う に,マ ルチメデ ィア教材 は 自律学習用が望 ま しく, しか もそれ 自体 で完結す るものではな く,教 科課程 の本教材 (つま り,教 室での学習)と 連動 した,宿 題 や 自習,練 習 のための補助教材 と しての 自律学習 教材 の ほ ぅが ょ り学習効果 が高 い。 この意 味で もRAICHOサ イ トは一斉授業 で扱 いきれない部分 を う ま く補完す る もの と して位置付 け られ るだろう。 そ して, この 自己学習 コンテ ンツを利用す ることによ り,富 山大学 の学生 とな るまでの学習環境 の違 いによ って生 じた習得状況 の差 や,ク ラス内で生 じた個 人差 な どもあ る程度解消でき,個 人指導 や 日本語相談等 によるサポー トと合わせて活用す ることで,よ

リー層 の効果が期待 できる。

その他 の コンテ ンツにつ いて も,通 常 の教室での一斉授業や個人指導, 日本語相談 と組み合わせ るこ とによ り,留 学生が必要 とす る様 々な種類 の 日本語 の習得 に効果を もた らす と考 え られ る。今後 開発 を 進 め るコンテ ンツ も含 め,RAICHOサ イ トが1.1.1の表 1で 示 した留学生が必要 とす る種 々の 日本語 を,

どのよ うにサ ポー トしてい くかをま とめた ものが図 7で ある。

4.2 RA:CHOサ イ トの 今 後 の 課 題

まず,図 7を 見 て もわか るよ うに,現 在 は未提供 とな っているコ ンテ ンツが多 く,今 後, コ ンテ ンツ を充実 させてい くことが課題 であると言 え る。既 に提供 を開始 してい るコンテ ンツにつ いては実際 に学 生 に も使 わせているが,質 的 に も量 的に もまだ十分 な ものが提供 されているとは言 えない状態である。

例 えば,「 日本語 自已学習」 の コ ンテ ンツでは,文 字 や文法 に関す る多肢選択式 あ るいは解答入力式 の クイ ズを提供 して い る。 この部分 は, い わ ゆ るCAI(Computer Assisted lnstruction)も し くは CALL(Computer Assisted Language Learning)に 相 当す る ものであ り, このよ うに コンピュー タ を教育 に活用 した場合 の メ リッ トの 1つ と して,2.1で も述べた よ うに, フ ィー ドバ ックが即時的に行 え ることが挙 げ られ る (池田2003など)。 フ ィー ドバ ックによ り与 え られ る情報 につ いて,池 田(2003) は,テ ス トと しての利用以外 は学習者 の学習 を援助す る ものでなければな らないため,単 に学習者が正

しいか間違 っているかを提示す るだけでな く,学 習者 が間違 った場合 には, ど う して間違 いなのか, ど

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*は未提供の内容 既 に提供 してい る内容 の役割

――――――――:> 未 提 供 の内容 の役割

図 7 RAICHOサ イ トの果 たす役割

こが間違 っているのか に加 え,正 しい解答を入力す るために必要な情報 を提示 したほ うがいいと述べて いる助。 「日本語 自己学習」 で提供 しているクイズでは,解 答 の正誤 につ いての情報 は得 られ るが, どう して間違 いなのか, どうすれば正 しい答え にた どり着 けるかな どの情報 は得 られない。 また,内 容的に もひ らがな,カ タカナ,漢 字 に関す るクイズ,テ 形 クイズ,助 詞 クイズのみが提供 されているだけで, 量 的に も不十分 と言 わ ざるを得 ない。 したが って,質 ・量 ともに十分 な コンテ ンツが提供 で きるよ うに

していかなければな らない。

次 に,コ ンテ ンツを多言語 で提供す るという課題がある。基本的には富 山大学で学ぶ留学生をターゲ ッ トと しているので,学 内で利用 している限 りは 日本語環境 での閲覧が可能であると考え られ るが, 日本 語環境 を実装 していない コンピュータを国か ら持参 した場合 や,来 日前 の学生への導入教育 な どに関 し ては, 日本語 でペー ジを表示 できない ことも考 え られ るので,そ れを考慮 しなければな らない。 これに は技術面で文字 コー ドの ことな ど複雑 な問題 が絡んで くるので,今 後,留 学生 の主な出身国 ・地域での コンピュータ環境 を調査す るな どして,十 分 に検討 していきたい。

3番 目に,311.4でも触 れたが,現 在 の ところこのサイ トで は教員 か ら留学生 や 日本人学生への一方 向の情報発信 しかできていない。 イ ンターネ ッ トを利用す る利点の 1つ に情報が双方 向にや りとりで き るとい うことがあるが,将 来的には,留 学生 や 日本人学生 か ら教員へ も情報 を発信で きるよ うに し,効 果的にフィー ドバ ックが行え るよ うに,CGIプ ログラムを設置す るな どの技術的な改良を検討 している。

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4番 目の課題 と して,教 員 向けにサイ ト利用のためのマニ ュアルを作成す ることが挙 げ られ る。現在 は一部 の教員 が このサイ トを利用 してい るにとどまっているが,授 業担当者 であれば,誰 で も問題 を作 成 した り,学 生 に指示 を出せ るとい ったよ うに, このサイ トを有効 に利用で きるようなマニ ュアル も作 りたい と考 えている。 ただ し,デ ータのサーバヘのア ップデー トについては,セ キ ュ リテ ィの問題 もあ り,授 業担 当者全員 が作業 を行 え るよ うにす るには問題 があるので,そ れを解決できるような体制の整 備 も必要である。

最後 に,2.2で 富 山大学 の留学生 の ほ とん どは コ ンピュータの使用経験 が あ ると述べ たが,使 用経験 が あ って もコンピュータ (あるいはイ ンタニネ ッ ト)を 利用す ることに消極的な学生 も中にはいる9。

その背景 には, コ ンピュータ自体 が苦手 であるとか,留 学生特有の問題 として普段 自分が使用 している 他言語環境では使 えるが 日本語環境 では使 えないとい ったよ うに,い ろいろな事情があると思 われ るが, こうした学生 を どの ようにサポー トしてい くか,そ のサポー ト体制 を整備す ることも合 わせて考えてい かなければな らない。

教材 の開発 には,(1)初期設計,(2)設計実施,(3)試行,(4)実用化 の 4つ の段 階が ある (清水編 1993) が,RAICHOサ イ トはまだ試行 の段 階 にある と言 え るだ ろ う。以上 の課題 に取 り組 みなが ら,利 用者 による評価 をア ンケー トな どの形 で実施 した り,ア クセス解析 を実施 して利用状況 を分析す るな どして, 見直 しと改善 を進 めていきたい。

(1)教 養教育 「日本語A」 につ いては学部別 に クラスを開講 している。

(2)詳 細 につ いては,加 藤他(2004)を参照 されたい。

(3)深 澤他(2003)に,学 部 1年の留学生 を対象 と した 「日本事情 I」 で行 った コ ンピュー タ使用歴調査の結果 (2000 年 〜2002年)を 掲載 して あ る。

に)「 4コ マ漫画 日本語教材 (http://www.akocradleotitech.ac.jp/Rise/top.htm)」,「 日本語読解 学習支援 システ ム :リ ーデ ィングチ ュウ太 (http://1anguage.tiu.ac.ip/)」,「初級 日本語 げん き (http://www.genki―online.

com/index.html)」な どが あ る。 いず れ も,RAICHOサ イ トの 「情報提供」 のペ ー ジにおいて も紹介 して い る。

(5)漢 字 クイズの作成 には,漢 字教材用 デー タベース作成 プロジェク トの協力 を得 た (加藤他2004)。

(6)い ず れ も 「Web問 題作成 ツール」 とい うサイ ト (http://wwW.iwai―h.ed.jp/〜irie/javascript/webquiz/)を 用 して作成 して い る。

(7)公 開 中の 『留学生 のための コ ンピュー タ用語集 Web版 』 は,冊 子版 をhtml化 しただけの ものであ り,用 語 の検索機能 な どは付加 されていない。将来的 には,検 索機能 を付加 して,よ り効率的 に用語 を調べ られ るよう にす る計画 であ る。

池 田(2003)はフ ィー ドバ ックによる情報 を次 の 3種 類 に分類 してい る。

1)KOR(Knowledge of Response):学 習者 に学習者 の解答 が正 しいか間違 って い るかを知 らせ る もの 2)KCR(Knowledge of Correct Response):学 習者 に学習者 の解答 が正 しい ことを知 らせ る もの 3)付 随的 フ ィー ドバ ック (Contingent feedback):KORや KCRに なぜ その解答が正 しいか,な ぜ その解

答 が間違 って い るか につ いての情報 を プラス した もの

この ように,様 々な理 由で コンピュータに対 して消極的な態度 を とる現象 は 「コンピュータ不安」 と呼ばれ る もので, コ ンピュー タに対す る過度 の緊張感 や 自信 のな さか ら,そ の利用 を回避す る傾 向がみ られ る (井上編 1 9 9 9 ) 。

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参 考 文 献

(1)赤 堀侃 司 (2002)『教育工学への招待 一教育 の問題解決 の方法論』 ジャス トシステム出版部 (2)池 田伸子 (2003)『CALL導 入 と開発 と実践  日 本語教育 での コンピュータの活用』 くろ しお出版 (3)井 上智義編 (1999)『視聴覚 メデ ィア と教育方法』北大路書房

に)岡 崎眸 ・岡崎敏雄 (2001)『日本語教育 にお ける学習 の分析 とデザ イ ン 言 語習得過程 の視 点 か ら見 た 日本語 教育』凡人社

(5)加 藤扶久美 ・出原節子 ・深澤 のぞみ 。濱 田美和 ・後藤寛樹 (2003)「留学生 セ ンターにおける情報化への取 り組 み 一現状 と展望 ―」『富 山大学総合情報処理 セ ンター広報』Vol.7,pp.2‑6

(6)加 藤扶久美 ・岩本阿 由美 ・遠藤祥子 ・小西香織 ・横堀慶子 (2004)「漢 字教 材用 デー タベ ー ス作成 に向 けて」

『富 山大学留学生 セ ンター紀要』第3号,pp.22‑31

仔)後 藤寛樹 ・深澤 のぞみ ・濱 田美和 (2001)「留学生 向 け コ ンピュー タ教材 の開発 とその使用」『日本語教育』 110 号, pp.150‑159

侶)小 西光子 ・後藤寛樹 0松 岡裕見子 ・要門美規 (2002)『リズムで学ぶ 日本語発音 あい うえお』 (富山大学留学生 セ ンター独 自開発教材)

D)清 水康敬編 (1993)『教育 システムエ学2 教 育情報 メデ ィアの活用』第一法規 aO 鄭 起永 (2003)『マル チメデ ィア と日本語教育 一その理論的背景 と教材評価 ―』凡人社

QD 西 口光一 (2001)「状況的学習論 の視点」『日本語教育 を学ぶ人 のために』 (青木他編)世 界思想社

Ca 濱 田美和 ・深澤 のぞみ ・後藤寛樹 ・楊峰 (2003)『留学生 のための コ ンピュー タ用語集』 (富山大学留学生 セ ン ター独 自開発教材)

 濱 田美和 ・後藤寛樹 ・深澤 のぞみ (2003)「留学生 のた めの総 合 的 日本語学習支援 サイ トの開設 一TISC日 本語 学習支援 サイ トRAICHO一 」平成 15年度 日本語教育学会研究集会 一第9回 富 山一,日 頭発表資料

00 坂 野永理 ・大野裕 (2003)「ウェブ上 で稼働す る 日本語教材 の開発」『岡山大学留学生 セ ンター紀要』 第10号, pp.35‑44

αD   深 澤 のぞみ ・濱 田美和 0後 藤寛樹 (2002)『留学生 のための 日本語 コ ンピュータ』 (富山大学留学生 セ ンター独 自開発教材)

0 0   深 澤 のぞみ ・濱 田美和 ・後藤寛樹 (2003)「『留学生 のための 日本語 コ ンピュータ用語集』 の開発」『専 門 日本語 教育研究』第5 号, 専 門 日本語教育研究会,pp.45‑50

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参照

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