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平 成 不 況 論 批 判

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1

〈論 説 〉

平 成 不 況 論 批 判

木 村 一 朗

目 次

1.大 型 不 況 の 到 来

II.平 成 不 況 は ど の よ う に 捉 え られ て い る か 1.「 複 合 不 況 」 説

a.宮 崎 『複 合 不 況 』 の 分 析 視 角 b.F複 合 不 況 」 論 の 問 題 点 2.「 バ ブ ル 崩 壊 歓 迎 」 説

a.「 バ ブ ル 性 悪=説」

b.野 口 『バ ブ ル の 経 済 学 』 の 問 題 点 3.「 ス ト ッ ク調 整 」 説

a.オ ー ソ ド ッ ク ス な 「ス ト ッ ク 調 整 」 説 b.武 富 『大 調 整 期 』 の 問 題 点

1.大 型 不 況 の 到 来

第 二 次 オ イル シ ョックを契機 とす る世 界不 況 で幕 を開 け,ソ 連 ・東 欧 の社 会 主 義 シ ステ ム崩 壊 と東 西 ドイ ッの平 和 的統 一 で 幕 を閉 じた1980年 代 は,政 治

的 に も経済 的 に も激動 の時 代 で あ った。

経 済 的側面 か らみ る と,そ こで は,た ん に社 会主 義 シス テ ムの解 体 に と どま らず,市 場 経 済 システ ム もまた,一 方 で は生 産性 上昇 を伴 う社 会 的生 産 力 の上 昇 によ って富 の増 大 が実 現 され るか たわ ら,国 内 にお け るあ るい は国 際 的 な不 均 衡 の拡 大 や環 境 問題,さ らに は経 済 問題 と政 治 問 題 との尖鋭 な緊 張 関係(経 済問題の政治問題化)の 高 ま りとい った深 刻 な諸 問題 に直面 す る こ とにな った。

旧来 の シ ステ ムや行 動規 範 が程 度 の差 はあ れ種 々 の 面で行 き詰 ま り,新 しい時 代 に即 応 した新 た な パ ラ ダイ ムが模 索 さ れ る時 代 が始 ま った とい って よか ろ

う。

(2)

2商 経 論 叢 第33巻 第3号

(303) 70年 代 以 降 顕 在 化 した 資 源 制 約 や,世 界 経 済 の 枠 組 み の 解 体,再 編 過 程 に お け る国 際 的 競 争 対 立激 化 の下 で 先 進 諸 国 が 低 成 長 に 陣 吟 す る な か

,日 本 経 済 は ひ と り良 好 な パ フ ォ ー マ ン ス を示 し続 け た。 第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク後 の70年 代(73〜80年)も 日本 は実 質3 .6%(GDP,年 平均),3年 に 亘 る 世 界 不 況 を 含 む80 年 代 前 半(80〜85年)に も年 平 均3 .7%の 成 長 を 遂 げ た 。

そ う した 中 で,85年9月 ,い わ ば そ れ ま で の 「日本 の 一 人勝 ち」 的 状 況 是 正 の 意 図 を 秘 め た 先 進 諸 国 間 の,特 に 日米 経 済 関 係 の政 治 的 調 整(プ ラザ合意)が 行 わ れ ・ 日本 経 済 は 急 激 な 円 高 に見 舞 わ れ る こ と に な っ た

。 輸 出 の 増 大 を 通 し て 日本 経 済 の 躍 進 を 支 え て き た リー デ ィ ング ・セ ク タ ー が 深 刻 な打 撃 を 受 け る こ とが 予 想 され,企,業 経 営 者,政 治 家,官 僚 官 民 エ コ ノ ミス ト,評 論 家 ,経 済 学 者 な ど の 大 多 数 の 人 々 が 日本 経 済 の 先 行 き に対 す る危 機 感 を もち

,マ ス.

メ デ ィア は そ う した 悲 観 的 論 調 で 溢 れ た。

しか し,大 方 の 予想 に反 して,日 本 経 済 は 「円 高 不 況 」 を 驚 くほ ど短 期 間 で 克 服 し,ほ とん ど誰 もが 予 期 しえ な か っ た よ うな 大 型 の 景 気 拡 大 へ と転 じた

。 多 くの 人 々 に 日本 経 済 の 没 落 や 恐 慌 の 到 来 を 予 感 さ せ た80年 代 後 半 は

,実 際 は,歴 史 に残 る 「繁 栄 の 時 代 」 と な っ た。 い わ ゆ る 「平 成 景 気 」 が そ れ で あ る。

昭 和 末 期 に 始 ま り平 成 初 期 に か け て 進 行 した こ の好 景 気 を 「平 成 景 気 」 と呼 ぶ こ と に つ い て は多 少 の 抵 抗 もあ るか も しれ な い が

,こ の い わ ゆ る 「平 成 景 気 」 は}企 業,金 融 機 関,個 人 を も巻 き込 ん だ投 機 的 狂 躁 を 伴 い な が ら拡 大 し

,か つ て の 「い ざ な ぎ景 気 」(65年10月 〜70年7月;57ヵ 月)を 超 え るか と い わ れ た 大 型 景 気 と な っ た(86年11月 〜91年2月;51ヵ 月)。

「平 成 景 気 」 は,91年2月 を ピ ー ク に,投 機 的 狂 躁 の 消 滅 暴 騰 した 株 価 や 地 価 な ど資 産 価 格 の崩 落 と相 前 後 して 深 刻 な 不 況 へ と落 ち込 ん で い っ た

。 90年 代 初 頭 に 勃 発 し2年 半 も続 い た こ の 激 し い下 降 局 面(「 平成不 況」;32カ 月)は,第 二 次 オ イ ル シ ョ ック後 の 戦 後 最 長 の 景 気 後 退(80年2月 〜83年2月;

36ヵ 月)に 次 ぐ もの で あ り,落 ち込 み の激 し さ は そ れ を は る か に 凌 ぎ,列 島 改 造 ブ ー ム と そ れ に 伴 う狂 乱 物 価 の 中 で 襲 っ た戦 後 最 大 と い わ れ る 第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク後 不 況(73年11月 〜75年3月;16カ 月)に 比 肩 す る大 型 不 況 と な

っ た。

(3)

0302) 平成不況論批判3

80年 代 後 半 の 活 況 期(87〜90年)に 年 平 均5%を 上 回 った 実 質GDP成 長 率 は,不 況 の ボ トム と な った93年 度 に は,第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク後 不 況 時(74年 度)の マ イ ナ ス0.6%に 次 ぐ,年 率 マ イ ナ ス0.2%(85年 基準)へ と激 し く落 ち込

ん だ 。

企 業 業 績 も,大 蔵 省 『法 人 企 業 統 計 季 報 』(平 成6年4〜6月)に よ れ ば,法 人 企 業(資 本 金1,000万F似 上,除 金 融 保険)の 全 産 業 ベ ー スで,92年 第2四 半 期 か ら93年 第4四 半 期 ま で(92H〜93N)7期 連 続 の減 収(売 上減),90皿 〜9411ま で16期 連 続 の 減 益(経 常 利益 減),あ わ せ て94年3月 期 ま で4年 連 続 の減 益 と

い う55年 に 調 査 を 開 始 して 以 来 最 悪 の 事 態 と な っ た(第1図 参照)。 野 村 総 合 研 究 所NRI(400社 ベ ース)に よ る と,第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク後(73〜75年 度)の

ピー クか ら ボ トム ま で の経 常 利 益(全 産業)の 落 ち 込 み が40%で あ っ た の に対 して,今 回 の平 成 不 況 時 に は ピ ー ク の89年 度 か ら92年 度 ま で 落 ち込 み は ほ ぼ 50%に も達 して い る。

投資 の状況 を大蔵省r法 人企業統計年報』でみ ると(第2図)誠 問論 投資

の 対 前 年 度 増 加 率 は,全 産 業 ベ ー スで90年 度 の22.1%か ら93年 度 の マ イ ナ ス 19.3%ま で(製 造 業 で は ピークの88年 度25。7%か ら93年 度 の マイナ ス21.9%)ま で 大 き く落 ち込 ん だ。

生 産 面 で 大 型 景 気 の リー デ ィ ン グ ・セ ク タ ー で あ っ た 自動 車 生 産 は,90年 (1,350万 台)を ピ ー ク に,以 後 史 上 初 の4年 連 続 マ イ ナ ス を 記 録 し,93年 に は 対 前 年 比 マ イ ナ ス10.2%(1,123万 台)と 過 去最 大 の 落 ち込 み を み せ た 。94年 に はつ い に15年 振 り に ア メ リカ に逆 転 さ れ る こ とに な っ た。消 費 を ・全 国 百 貨 店 売 上 高 で み る と,94年10月 ま で32ヵ 月 連 続 前 年 比 マ イ ナ ス と い う,65年 に統 計 を 開 始 して 以 来 初 め て と い う深 刻 な 状 況 に 陥 った ・94年11・ 月 に ほ ん の僅 か

な プ ラ ス(o.2%)を 記 録 した も の の,ふ た た び 水 面 下 に 沈 ん で しま った 。 金 融 面 で,投 機 的 狂 躁 の 陰 の 主 役 で あ っ た 銀 行,証 券 会 社 を み る と,投 機 的 狂 躁 の 崩 壊 と と も に 軒 並 み 深 刻 な業 績 悪 化 に 陥 っ た。

銀 行(都 長銀 信 託)が 抱 え た 非 公 開 分 も含 め た 実 質 的 な 不 良 債 権 は・ 一 説 で は80兆 円 と も100兆 円 と も い わ れ,昭 和 初 め の 金 融 恐 慌 以 来 の 困 難 な 状 況 に

(4)

4商 経 論 叢 第33巻 第3号

第1図 売上 高経常利 益率 の推移(%)

1全 産 業 製 造 業 非製造業

185年 2.0 3.2

1.5

86年 2.0 2.$

87年 2.5 3.7

‑一 1.6肝一̲ ̲

2.0

88年 2.8 4.5

2.2

…■ 脚̲̲一

89年 3.0 4.7 2.3

90年

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2.7 4.3 2.0

91年

} 2.3 3.4 1.8

一㎞̲̲

92年 1.8 2.fi 1.5

!93年 1.4 1.9

1.2 94年

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1.5 2.4

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1.2

95年 1.8 2.9

1.3

㎜剛一 一 一

85年

86年87年88年89年9・ 年91年92年93年94年95$

(出 所)大 蔵 省 『法 人 企 業 統 計 年 報 』 各 号(『 財 政 金 融 統 計 月 報 』N o.474, p.fi,No.532,p.6)よ り作 成

0301)

(5)

(300) 平成不況論批判5

第2図 設 備投資(対 前年 度比,%)

全 産 業1 製 造 業 非製造業

85年 12.8 9.0 15.7

86年 1.3 7.1 7.4

87年 9.8 一2 .1 17.1

88年 18.0 25.7 14.0

89年 22.1 23.E 21.5

90年 14.1 16.7 12.6

91年 11.7 4.9 15.7

92年 一10 .3 一一16 .0 7.3

93年 一19 .3 一21 .9 一18 .1

94年 一8 .7 一13 .O

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一6 .7

95年

3.9!7.6

2.2 1

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85館 86年

87年 88年

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91年 92年

93隼 94年

95年

(出 所)大 蔵 省 『法 人 企 業 統 計 年 報 』 各 号(『 財 政 金 融 統 計 月 報 』 No.474,p.8,No.532,p,8)よ り作 成

(6)

6商 経 論 叢 第33巻 第3号

0299) あ る。 全 国 銀 行 協 会 連 合 会 『全 国 銀 行151行93年3月 期 決 算 』 を み る と

,経 常 利 益 は前 年 度 比23.1%も 減 少 し,4年 連 続 の減 益 と な っ た

。預 金 金 利 低 下(利 鞘 拡 大)の お か げ で 業 務 純 益 が 大 幅 に伸 び た に もか か わ らず

,放 漫 経 営 の ッ ケ(不 良債繍 却 の ための貸倒 引当鎌 入 れ,貸 出金償却)を 払 わ ね ば な らな か っ た カ、らで あ る。預 金 残 高(93年3月 末)は ,前 年 同 月 末 比 マ イ ナ ス5.0%と48年(昭 和23 年)に 統 計 を と り は じめ て 以 来 最 大 の 減 少 幅 を記 録 し

,貸 出 金 残 高(93年3月 末)も 景 気 低 迷 に 伴 う企 業 の 資 金 需 要 の 伸 び悩 み か ら過 去 最 低 の伸 び(0

.9%) に と ど ま っ た 。 そ れ 以 後 も不 調 は っ づ き

,93年 度 末 の 都 市 銀 行 の 貸 出 金 残 高 は・ 前年 度 比 マ イ ナ スo .s%と54年 度(昭 和29)の 統 計 開 始 以 来 初 め て マ イ ナ ス を 記 録 した。

証 券 会 社 に っ い て も,株 価 が ボ トム に 達 した92年 度 の 業 績 は さ らに 悪 化 し た。93年3月 期 の 東 京 証 券 取 引 所 一 日平 均 売 買 代 金 は

,低 水 準 だ っ た前 期 を さ らに3割 も 下 回 り・15年 前 の77年 水 準(約2 ,5・・億FI)に まで 落 ち込 ん だ.そ の た あ,最 大 の 収 入 源 で あ る株 式 委 託 手 数 料(総 合証券47社 ベ ー ス)は33%減 の 5,501億 円 へ,全 体 と して の 営 業 利 益 も25%減 の1兆6

,836億 円 へ と 急 減 し た 。 上 場 証 券25社 を と っ て み て も,経 常 利 益 の 黒 字(そ れ も形 だけの ほんの僅 か な黒字)を 計 上 して い る の は野 村,日 興 等3社 の み で,経 常 利 益 か ら投 資 有 価 証 券 評 価 損 を 差 し引 い た修 正 経 常 利 益1ま全 社 す べ て 赤 字 に な って い(2)

.依 然 と し て 存 在 す る 巨額 の含 み 損,海 外 不 動 産 が らみ の あ る い は一 連 の 不 祥 事 に よ る損 失 な ど,証 券 会 社 も放 漫 経 営 の ッ ケ に 苦 しん で い る。

一 方・ 投 機 的 狂 躁 の 形 成 と崩 壊 の 「主 役 」 と な った 株 価 と地 価 に つ い て み る と,80年 代 に 入 って 急 上 昇 した 株 価 は,89年12月29日 に38,915円87銭 と い う史 上 最 高 値 を っ け た が,90年 以 後 雪 崩 を うっ よ う に急 落 し

,92年8月18日

(株価 ボ トム)の14,309円41銭 へ と63 .2%も 下 落 した 。 全 国 証 券 取 引 所 時 価 総 額 で み る と,ピ ー ク で あ っ た89年 末 の630兆 円 か ら92年 末 の299兆 円 ま で 52.5%も 激 減 した。 わ ず か3年 の 間 に,89年 の名 目GDP(396兆 円)の83 .6%

に 当 た る館 が 消 滅 した こ と に な(3)。

投 機 的 狂 躁 の も う一 方 の 主 役,地 価 を,国 土 庁 『地 価 公 示 』(93年1月1日)で

(7)

0298) 平成不況論批判7

み る と,東 京 都 区 部 の 商 業 地 は 前 年 比(一)22、5%,住 宅 地(一)22.2%と 過 去 最 大 の 下 落 を み せ た 。 ピ ー ク で あ った88年1月1日 と比 べ る と,僅 か5年 の 間 に,東 京 都 区 部(民 有地 ベ ース)だ け で お よ そ1,180兆 円(住 宅地180兆 円,商 業地 1,000兆 円),88年 の 名 目GDP(371兆 円)の3.2倍 に相 当 す る土 地 資 産 が 土 地 投 機 ブ ー ム の 崩 壊 と と も に消 え て しま っ た勘 定 に な る。

平 成 不 況 に お け る景 気 の 落 ち込 み を,景 気 の 振 幅 や そ の テ ンポ を み るの に 便 利 な 経 済 企 画 庁 「景 気 動 向 指 数 」の コ ン ポ ジ ッ ト ・イ ンデ ッ ク ス(CI)・ 一 致 指 数 で み る と,ピ ー ク の90年10月 か ら ボ トム の93年10月 ま で の36ヵ 月 間 に (一)27.7%と い う,第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク後 の(一)25.8%を 凌 ぐ激 しい もの で あ っ た(第3図)。 景 気 後 退 の 長 さ も,第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク後 不 況 の16ヵ 月 に 対 し て32ヵ 月 と い う長 期 に 亘 っ た こ と,前 者 が ど ち らか と い え ば 製 造 業 に 偏 っ て い た の に対 して 平 成 不 況 は金 融 を 含 む 非 製 造 業 に ま で 万 遍 な く及 ん だ こ と,か つ て な い ほ ど の 深 刻 な 消 費 低 迷 を 伴 っ た こ と等 を 考 え る と・ 平 成 不 況1ま 戦 後 最 大 の 不 況 で あ っ た と い っ て も過 言 で は な い 。

93年1月 の 政 府 「月 例 経 済 報 告 』 が 「我 が 国 経 済 は調 整 過 程 に あ り,引 き続 き低 迷 して い る」 と,昭 和31年 に 『経 済 白 書』 が発 表 さ れ る よ う に な って 以 来 初 め て 「低 迷 」 と い う表 現 を 公 式 に 用 い た の も,そ の よ う な感 覚 を 表 現 して い

る と い っ て よ か ろ う。

大 き な パ ニ ッ クや 不 況 が 生 じ る と,そ の 原 因 や 処 方 箋 を め ぐ って 種 々 の議 論 が 噴 出 しt学 界 や ジ ャ ー ナ リズ ム を 賑 わ す の が 常 で あ る。

1929年 の ア メ リカ に始 ま る大 不 況 に つ い て は,シ ュ ム ペ ー ター,ケ イ ン ズ か ら フ リー ドマ ン,サ ミュ エ ル ソ ン,キ ン ドル バ ー ガ ー に い た る ま で 幾 多 の 名 だ た る経 済 学 者 達 が 論 陣 を 張 っ た。 そ の 論 点 も,ア メ リカ 金 融 政 策 原 因 説(M Friedman),金 本 位 誤 用 説(LRobbins),デ フ レ失 策 説(J.M.Keynes),長 期 停 滞 説

(A.Hansen),構 造 的 不 均 衡 説(1.Svennilson),一 連 の 偶 発 事 件 説(P.Samuelson) か ら中 心 国 不 在 に よ る国 際 経 済 シ ス テ ム 不 安 定 説(C.P.Kindleberger)に い た る ま で 多 岐 に 亘 り,し か も そ れ ら は現 在 に い た る も は っ き り と した 決 着 はつ い て い な い。

(8)

8商 経 論 叢 第33巻 第3号

130

120

110

100

go

80

70

60

第3図 景 気 変 動 の 大 き さ

〜 コ ン ポ ジ ッ ト ・イ ンデ

ッ ク ス(C1)・ 一 致 指 数 〜 (85年 平 均=10U)

(297)

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(出 所)

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w畏 気 の 山 と谷 は 経 済 企 画 庁 「景 気 基

準 日付 」 に よ る.シ ャ ドウ は 景 気 後 退 期

平 成 不 況 が 大 型 の 景 気 後 退 で あ る こ と が 明 ら か に な る に つ れ て

,1929年 の ア メ リカ あ る い は 「昭 和 恐 慌 」 を例 に 引 い て

,大 不 況(あ る いは大 恐慌)の 到 来 を 示 唆 な い し懸 念 す る もの・ これ ま で み られ な か っ た 全 く新 しい 型 の不 況 とす る ものy(異 例 に大 型 で はあるが)基 本 的 に は従 来 か らみ られ た 循 環 的 な も の と す る

(9)

(296) 平成不況論批判9

説 な ど,様 々 な 反 応 が み られ た 。 これ らの議 論 の 背 景 に は,多 か れ 少 な か れ, 世 界 や 日本 の 市 場 構 造 や 競 争,競 合 関 係 の 大 き な変 容,市 場 経 済 の 現 代 的 変 貌

につ い て の あ る種 共 通 の現 状 認 識 が あ る よ うに 思 わ れ る。

まず 第1に あ げ られ る の は,現 代 経 済 は い ま や 資 本 移 動 為 替 レー ト,金 融 と い っ た シ ン ボ ル 経 済 が 実 物 経 済(財,サ ー ビス)を リ ー ドす る 新 し い 段 階 に 入 っ た とい う認 識 で あ る。 こ の 点 に っ い て は,ド ラ ッ カ ー[1986]が 明 快 に論 じて い(4)。彼 は さ ら に進 め て,「 世 界 経 済 に関 す る既 存 の理 論 は,い まだ に新 占 典 主 義 的 で あ って,財 とサ ー ビ ス の 貿 易 が 国 際 的 な 資 本 移 動 と為 替 レ ー トを決 定 す る と して い る」。 しか しな が ら 「… 世 界 経 済 は 根 本 的 に変 化 して しま っ

た。 財 と サ ー ビ ス の 実 物 経 済 と,資 本 と信 用 の シ ン ボ ル経 済 は,も は や相 互 に 密 接 に結 びつ い て は い な い」。 「資 本 移 動 と為 替 レー トは,貿 易 と は ほ と ん ど関 係 な く動 い て い る。 そ れ ど こ ろ か,1984年 か ら85年 に か けて の ドル 高 に見 ら

{5)

れ る よ うに,む しろ 逆 に動 い て い る」 と指 摘 して い る。

も う1つ は,必 ず し もす べ て の 人 が 認 あ て い る と い うわ けで は な い が,現 代 に お け る景 気 循 環 の 変 貌 に つ い て で あ る。 設 備 投 資 循 環,在 庫 循 環 と い っ た 旧 来 型 の景 気 循 環 は次 第 に そ の 姿 を 消 しつ つ あ り,景 気 循 環 パ タ ー ン も現 代 的 変

容 を 遂 げ っ つ あ る とい う の が そ れ で あ る。

この 点 に つ い て は,平 成 元 年 版 『経 済 白 書 」 の 分 析 が 非 常 に 興 味 深 い 。「平 成 経 済 の 門 出 と 日本 経 済 の 新 しい 潮 流 」 と い う副 題 を 持 っ こ の 『白 書 』 は,平 成 景 気 や 投 機 的 狂 躁 が 真 っ盛 りの 時 期 に お け る報 告 で あ り,日 本 経 済 の 長 期 拡 人 を 謁 い あ げ る(第1章)と と もに,そ の グ ロ ー一バ ル 化 を 論 じ(第3章),さ ら に初 め て 「日本 経 済 の ス ト ッ ク化 」(第4章)を 大 き く と り あ げ た もの と して 画 期 的 な もの と い って よ い が,わ れ わ れ に 格 別 興 味 深 い の は,分 析 の 締 め括 りで あ る 最 終 第5章 で 「成 長 と循 環 の 新 しい 姿 」 と して 「景 気 循 環 の変 貌 」 を説 い て い

る点 で あ る。

『白書 』 は ま ずY今 回 景 気 上 昇 局 面 の特 徴 と して,① 持 続 力,② 力 強 さ,③ 内 需 主 導 型,④ 全 員 参 加 型,⑤ 物 価 の安 定 の5つ を あ げ,そ れ らの 背 後 に,従 来

に は み られ な か っ た循 環 的 変 動 要 因 の 変 化 が あ る と指 摘 す る。

(10)

10商 経 論 叢 第33巻 第3号0

295)

ま ず 第1は,設 備 投 資 循 環 の 安 定 化 で あ る

製 造 業 で は・設 備 投 資(フ ・一)の 資 本 ス トッ ク1こ対 す る比 率 が 年 々 低 下 して

お り・ また独 椴 資や麟 代替 の動 き1こよって資本係籔帳 馳 吐 昇 して き

た た め・ 資本 ス トックが上 昇 した と して もそれ カ∫ス トレー トに生 産 能 力 の増 加 に結 びっ か な くな って い る・ した が って設 備 投資 ⇒ 資本 ス トックの増 加⇒ 生 産 能 力増 加 とい う関 係 酪 レベ ノレで弱 ま って い る.非 難 業 で は,元 々資本 装 解 が高 く・ 資 本 係数 も高 い ため,そ の成 長 に は よ り多 くの設 備投 資 が必 要 と な るが,現 状 で は設 備 投 資増 と内 需拡 大 の好循 環 が 生 じて お り

,先 行 きにっ い て もこの よ うな好 擁 が持 続 す る と思 われ る

.し たが って,製 造 業 非 製 造 業 を問 わ ず,設 備投 資 循環 は よ り波 長 の長 い かつ振 幅 の小 さい もの に変 わ

って き て い るた め・ 先 行 き設 備 ス トック面 で調 整 が生 じる 可能 性 は小 さい

,と 指 摘 し て い る。

第2は ・ 在庫 篠 の安定 化 で あ るr膳 」1ま,昭 和5・ 年代 以 降,在 畷 資 (GNPベ ー ス)の プ レは小 幅化 し,在 庫 投 資 水 準 お よ び在 庫 率 水準 は一 貫 して低 下 トレ ン ドを も って い る こ とか らr在 庫 投 資 循 環 は安 定 化 して い る と指 摘 す

る。 それ らの背 景 と して は}① 情 報技 術 革 新 に よ る在 庫管 理 技 術 の 向上

,② 生 産 工程 に お け る技 術 革新 の進 展 ③ 物 価 の安定,④ 在 庫 膿 採 算 の安定 化,⑤

サ ー ビス取 引 の拡 大,の5っ を あ げ,先 行 き在庫 投 資 循環 によ る景気 の反 転 は 可能 性 と して低 い と指摘 す る。

『白劃 は こ う して・設 備投 資,在 庫 投 資 の し・ず れ に お いて も循環 は安 定 化 し て お り・ ス トック謙 メカ ニ ズム は弱 ま り,そ れ らが起 点 とな って景 気 が 自律 的 に反転 す る 可能性 は低 く・ 外 的 シ ョックへ の抵抗 力 の強 ま り

,内 需 の強 さ, さ らに物 価 面,対 外 面 にお け る事 態 の推 移 に応 じた機動 的 な政 策運 営 な ど と相 俊 って・ 日本 の景 気 上 昇 の持続 力 は強 い,と 断 じて い る。

この よ うに,日 本経 済 の成 長 力 が 高 く,好 景気 の持 続力 が強 い とす れば,景 気 の大 きな反 転 を もた らす もの は常 軌 を逸 し節 ∫らか の大 きな原 因(糊 しえ ぬ大 きなショック,あ るいは異常な事態など)の 勃 発 しか な い

日本 繍 が・急 転 汰 型 不 況(い わゆる平成不況)へ 落 ち込 む と遭 ち に原 因 究

(11)

(294) 平成 不況 論 批 判11

明 が始 ま り,案 に 違 わ ず さ ま ざ ま な 「原 因 」 が 提 起 さ れ た 。外 的 要 因(金 融 自由 化,内 需拡大 圧力 な ど),政 策 の 失 敗(超 金 融緩和 政策,マ ネー ・コ ン トロー ルの失 敗 財 政政策 の遅 れな ど),企 業 活 動 の 失 敗(行 き過 ぎた過大 な投資,経 営戦 略 財務 戦略

の失敗 な ど),投 機 の暴 発 と崩 壊 に伴 う資 産 デ フ レ等 々,不 況 の 原 因 と され る も の は 多 岐 に 亘 って い る。

は た して 平 成 不 況 の 原 因 は何 で あ っ た の か 。 平 成 不 況 が 今 ま で に例 を 見 な い よ うな 広 い 範 囲 に及 び,著 し く深 刻 で あ り,か っ 非 常 に 長 引 い た の は何 故 か 。 外 的 要 因 か,市 場 構 造 の 変 化 が もた ら した も の か 。 政 府 の 誤 った 政 策 か,通 常 の企 業 活 動 に根 ざ す 循 環 的 要 因 か,あ る い は そ れ らの 複 合 した もの か 。 日本 や 世 界 の市 場 経 済 の 今 後 の あ り よ う,展 望 を 探 る うえ か らい っ て も,平 成 不 況 を 正 確 に 分 析,解 明 す る こ と は極 め て 重 要 で あ る。 本 小 論 は ・ 平 成 不 況 の 具 体 的 並 び に理 論 的 分 析 に 先 立 ち,そ の た め の 基 本 的 分 析 視 角 を 整 理 して お こ う とす

る も の で あ る。

以 下 で は,ま ず,平 成 不 況 が 現 実 に は どの よ う に捉 え られ て い るか,さ ま ざ ま な 説 の 中 か ら若 干 の特 徴 的 な もの を と りあ げ,そ れ らの 基 本 的 視 点 を 明 らか に しな が ら,平 成 不 況 を 解 明 す るた あ の 分 析 視 角 を 整 理 し,わ れ わ れ 自身 の 正 確 な 視 座 を 捉 え る手 掛 か り を 探 る こ と に した い。

(1)年4回 調 査 溌 表 さ れ る 前 出 のr季 報 』 が 金 融 ・保 険 を 除 く資 本 金1・000那 ヨ以 上 の 企 業 を 対 象 に し て い る の に 対 し て,『 年 報 』 は 資 本 金 の 全 階 層 を 対 象 と し て お

り,従 っ て 統 計 数 値 も 若F異 な っ て い る 。

(2)「93年3月 期 証 券 決 算 」(東 洋 経 済 『金 融 ビ ジ ネ ス』93年7月 号) (3)日 本 証 券 業 協 会 『証 券 会 社 の 決 算 概 況 と 証 券 市 場 の 動 向 ・1994』p.14

(4)P.F.Drucker,Tゐ θ.Fγoπ舵 γsoブMα ηαgθ耀 砿1986(上 田,佐 々 木 訳 『マ ネ ジ メ ン ト ・フ ロ ン テ ィ ア 』)の 第1章 「変 貌 し た 世 界 経 済 」(彼 の 論 文"TheChanged

WorldEconomy",ForeignAffairs,Springl986を 収 録 し た も の) (5)Drucker,前 掲 邦 訳,p.47

(6)こ こ で は,資 本 係 数 贋 本 ス ト ッ ク ÷ 生 産 能 力 と す る・ 資 本 係 数 を ト レ ン ド的 に 上 昇 さ せ て い る 要 因 は 様 々 で,互 い に 複 雑 に 絡 み 合 っ て い る が,① 研 究 開 発 投 資

(12)

12商 経 論 叢 第33巻 第3号

0293)

騰 織鯖 欝 平 欝震 撚 撒 撒 嚢 樽

形成 の高 ま りに加 え・④ 高伽 価 趨 品 への シフ ト

,⑤ 労 働 エ ネルギ 薄 の投 入 コ ス トを節 減す るための要素 代鯉 獺 の活 発化 な ど酵 生 産 に関 わ

る分 野 で も資 本 係数 を 貫 してaさ せ る よ うな方向雌 んで きた点 な どが儲 されて い る

.(平 成 元 年版 『経 済 白 書

』p.3fi4‑5)

n・ 平 成 不 況 は ど の よ う に 捉 え ら れ て い る か

周知 の よ うに・8・ 年 代 後 半 か ら9・ 年 代 初頭 にか け て

,非 常 に息 の長 い大 型 景気 が 到来 した・ この いわ ゆ る 「職 景 気」 の進 御

,長 期 繁 栄 を緻 す るカ、

の よ うに・ 今 回 の好景 気 は轍 綴 といわ れ る 「い ざ な ぎ景気(

57胡)」 を超 え るか・ こ帳 期 拡 大 は い った い角∫に よ って もた らされ た のか

,と い うよ うな 議論 が盛 行 し 甑 エ コノ ミス ト・学 界 の多 数 が 景気 の肪 に つ いて簾 的, あ るい は楽 観 的 な展 望 を示 した。

多 くの楽観 論 の中 か ら非 常 に ク リアー に そ の根 拠 を示 したi 'を 挙 げ る と , 竹 中雌[1988]は ・ す で に88年 の段 階 で,「 躰 繍 は 自律 的 螺 気 拡大 メ カ ニズ ム」 に乗 ってお り・「絶 欄 の 一 語 につ きる」 と現 状 を評価 し,次 い で予 想 され うる顯 撹 腰 因(ア メリカ繍 の動向fin.替 レー トの蜘 国内の財政鋤 政策灘 の(n])を 個 々 に検 討 した うえ で,こ れ らの旛L蛾 は 「全 く懸 念 に は 及 ばな い」・ また・設 搬 資 が増 加 した り,あ る い は礁 が ふ え て くる と泊 律 的 な灘 メカ ニ ズ ム(設 欄 整や在醐 整)カ ゴ働 き,景 気 は鷹 す る とい う見 方 もあ るが・ い まの景気 の強 さか ら判 断 す れ ば,そ のお そ れ は な い」.し たが っ て・ 「い ざ な ぎ景 気

(1)回 る長 期 的 な拡 大局 面 へ す で に入 った 公鄭 強 ま って い る」 と指摘

して い る。

政府 の公 式 見鱗r繍 白 書』等 でみ る と,昭 和63{甑r繍 鰭 』(1987年 度 の繍 動向分析)以 来 一貫 して 「持続 力 あ る長 期拡 大 」 を謳 いあ げて き たが

, 後 か らみ てす で に景気 は反 転(91年4‑6脚1)し

,景 気 後退 に入 って いた91年 8月9日 に発表 され 坪 成3年 版r繍 白書 』(9・鞭 の繍 動向分析)は

i燃 と して景 気 の腰 の強 さを糊 し・ 「躰 経 済 は5・ カ月 有余 の長 期 の拡 大過 程 を

(13)

平成不況論批判130292)

な お続 けて い る.最 近 にお いて は,一 時 の高 い成 長 に比 べ る と拡 大 の テ ンポ は 減 速 して きて い るとみ られ るが現 時 点 で得 られ る情 報 の糊 で は拡 大局 面 が 終 わ って い る と判 断 で き る材 料 が そ ろ った とい うこ とはな い・減 速 の過 程 酪

種 の景 気 関連 指 標 に変 調 を も妨 して い るが・ これ も景 気後 退 局面 入 りの しる し と読 むべ きで はな か ろ う・ とす れ ば・「い ざな ぎ景 気 」 とな らぶ{2)さ とな る日寺 期 が 目前 に迫 って い る こ とに な る」 と楽観 的 蜆 通 し̲.‑̲て て い る・ また・ 多

くの人 々 が深 刻 な不 況 の到 来 を実 感 しは じめ て お り・ 後述 の宮 崎 『b不 況 』 [1992a]が ほぼ書 き上 げ られて もい た92年2月25日 に撒 され 耀 済 領 庁 r平 成3年 経済 の回 顧 とa:』 は溜 頭 で 「日本経 済 は一"こ れ まで 蝸 い 成 長 か らイ ンフ レな き持続 的拡 大 が可 能 な成 長経 路 に移行 す る過 程 に あ る」 と

した うえで,「 現在 の移行 過 程 が景気 後 退 とな るカaどうか は誠 速 過 程 の期 間 ・ 経 済 の拡 大 テ ンポが緩 や か にな る程度 に よ るが ・①91年 後 半以 降 の金 融緩 和 の

プ ラス効果,② 物価 の錠 鞭 ③世界顯 の回復 の見込 みな どか ら・鱗 の

減 速 が か な り深 い落 ち込 み にっ なが る 可能性 は大 き くない 」 と指摘 して し'る・

と ころが,91年 以 降景 気 が 反転 し,陣 云深 刻 な不 況(い わゆる械 不況)へ 突 入 しっ っ あ る こ とが 明 らか にな りは じめ る と・ こん ど は・ 不況 を もた ら した犯 人探 しが始 ま った。

しか も,今 回 の循環,平 成 景気 か ら平 成 不況 へ の反転 過 程 につ いて は・ 資産 価 格 の急 騰 暴 落 が 同時 進 行 した.し たが って・(資産儲 の黙 あるいはそれに伴

う 「資産 デフレ」杯 況の原因であったか否かと〜・う点 はとりあえず措 くとして)平 成 不 況 の分 析,不 況 の行 方 や 暢 繍 の今 後 の:z"を 探 るに して も あ る い は最 近 の̲連 の変 動状 況 を理 論 的澄 史的 に位 置付 け るに して も いず れ に して も

資産 価 格 曝 騰 させ た と され る8・ 年 代後 半 以 後 の景 気 の長 期拡 大 過程 ・90年 代 初 頭 の 資産 価格T=と その後 に始 ま った深 刻 な景 気後 退 過 程 の礁 な分 析 を 欠 か す こ とはで きな い。

したが って,本 論 は まず,「 平 成 不況 」を め ぐる二腰 な論 点・特 に多様 な分 析 視 角 を整 理 す る こ とか ら始 め る。

平 成 不況 につ いて は,さ ま ざま な 立場 視 点 力・ら数 多 くの論 究 が み られ赦

(14)

14商 経 論 叢 第33巻 第3号

(291)

挙 に い と ま が な い が}宮 騒 一[1992a]は

,(議 論 の内容 その ものの 当否 はひ とま ず 措 いて お くと して)そ の 歴 史 的 視 点 論 理 郎J体 系 性

,こ と に 綿 密 な 実 翻 こ よ っ て 当 初 よ り 「平 成 不 況 」 を め ぐ る翻 を リー ド して き た と い って よ い.し た が っ て 以 下 で は ・ 騎 「複 合 不 況 」 論 を 軸 に

,代 表 的 な論 点 を 対 比 さ せ ,そ れ ぞ れ が 描 き 出 す 「平 成 不 況 」 像

・ そ れ ぞ れ の メ リ ッ ト,デ ィ メ リ ッ トな ど を 明 らか に しつ つ 澗 題 の 所 在 を 探 って し、く こ と に す る

多 くの 議 論 は そ れ ぞ 儲 綜 し・ 単 純 な鯉 や 区 分1ナ は 当然 の こ と な が ら働 て 騰 だ が ・ こ こ で は館 上・ 俗 に し、う 「バ ブ ル 」 の 評 伍 議 付 け と し、う点 か ら・ 宮 崎 「飴 不 況 輪 を 中 心1こ3つ に 分 類 し

,さ ら に髄 的 に そ れ ぞ れ を 代 表 す る顯 を 一 点 ず つ と りあ げ て 論 ず る こaこ す る

.そ の他 の研 究 議 論1こ つ い て は・ 必 要 に 応 じて そ の過 程 で と りあ げ る

。 3っ の 論 点 と は次 の通 りで あ る

① 「複 合 不 況 」 説

今 回 の 不 況 は・ 鑓 デ フ レの 結 果 生 じた 金 融 不 況 カゴ実 体 繍 の リセ ッ シ.

ンを 誘 発 した ・ ま った く新 しい 型 の 「ス ト ッ ク ・フ ・ 榎 合 リセ

ッ シ ョ ン」

で あ る と し・ 不 況 の行 方 に っ い て は極 め て 悲 観 的 で あ る

② 「バ ブ ル崩 壊 歓 迎 」 説

「資 産 デ フ レ」一 「ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ 」 の 関 連 を 疑 問 と し漸 型 不 況 だ とす る宮 崎 説 を 否 定 す る。特 長 は い わ ゆ る 「バ ブ ル 性 悪 説 」 に あ り,「 バ ブ ル 崩 壊 」 こ そ健 全 な成 長 を 導 く と して い る。

③ 「ス トッ ク調 整 」 説

景 気 分 析 論 と して は も っ と も か ソ ドッ ク ス で

,平 成 不 況 を基 本 的 に は景 気 拡 燗 嗜 榛 れ た ス トッ ク魏 圧 力 が 表 面 化 した も の と み る

.躰 型 ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ に は 否 定 的 だ が

,「バ ブ ル」の 発 生 → 崩 壊 → 資 産 デ フ レが 景 気 の 振 幅 を 拡 大 した と み る・ した が っ て

,不 況 の 行 方 に つ い て は か な り悲 観 的 で あ る。

以 下 で は,こ れ ら の分 析 視 角 を 順 次 と り あ げ,そ の 主 張 内 容,問 題 点 な ど を 探 っ て い く こ と に す る。

(15)

平 成 不 況 論 批 判15(290)

くの

H‑1.「 複 合 不 況 」 説

H4‑a.宮 崎 「複合 不況」説 の分析視角

い わ ゆ る 「複 合 不 況 」論 は,宮 崎[1992a]に 代 表 され る が ・ 後 の 議 論 との 関 わ り もあ り,こ こ で は そ の 説 く と こ ろ を 少 し詳 し くみ て お こ う。

宮 崎[1992a]は 「ま え が き」 で そ の 目 洋」を 「198・年 代 半 ば 以 降 世 界 の 先 進 国 に お い て 同 時 多 発 的 に起 き て い るバ ブ ル 現 象 の 背 影 明 らか に し・ と くに 日 本 に お け る バ ブ ル 発 生 と崩 壊 の メ カ ニ ズ ム に つ い て 実 証 的 に分 析 す る こ と」 と して い る.そ して そ の結 果 明 らか に な っ た の は,「 当 面 す る先 齢 国 の 景 気 後 退 に 樋 す る特 徴 は,ま ず 金 融 の 舳 化 の帰 結 と して 金 融 醒(ス トック)の 離 過 程 が 先 行 し,そ れ に よ って 額GNP(フ ・一)の マ イ ナ ス成 長 が 誘 発 さ れ て

い る」 と い う事 実 で あ り,こ れ は,「 ・ミブル ー根 資 産(ス トック)の 長 期 的 調 整 と フ 。 一 の繍 的 碑 謹 とが 勘 して進 行 す る・ い わ ば ス ト ッ ク'フ ロ ー複 合 リセ ッ シ ョ ン」 で あ る と い う.こ れ カa宮崎 「複 合 不 況 」 説 の骨 子 で あ る・

宮 崎[1992a]の 論 述 徽 は,背 景 の 分 析,ア メ リカ の事 例 分 析 を 経 て 旧 本 の 齢 不 況 の 具 体 的 分 析,そ の 臓 付 け,と い う四 部 構 成 に な って い る・ 以 下 順 を 追 って 簡 単 に そ の議 論 を 辿 って み よ う・

【「複 合 不 況 」 の 背 景 と ア メ リカ の 事 例 】

冒 頭 で は まず,「 新 しい経 済 現 象 」 と題 して ・ 「複 合 不 況 」 が 生 じた 背 景 につ い て の べ られ て い る。(第1章)

そ こで は,お カ ネの繍(シ ンボル翻 力泄 界経 酬 ケ デ ィング'フ ァク ター に な って き た とす る い わ ゆ る ドラ ッ カ ー の 「第 三 命 題 」や ・「70年 代 以 降 現 れ た世 界 経 済 最 大 の 変 化 は為 替 レー トを動 か す 力 が モ ノ の 貿 易 か らカ ネ の 流 れ に変 わ つた こ とで あ る」 と い う ・ ン ドンrエ コ ノ ミス ト』誌 の 論 窺 を 紹 介 し・

8。年 代以 降 世 界 的規 模 で開始 され た金 融 の 舳 化 以 降 と りわ けそれ が賭 に な った と指摘 す る.い まや 世界 の外 国 為替 市場 で の取 引 高 は・ 世 界 の実 需 取 引 高 の32倍(89年)に もの ぼ った とい われ て い るが・ これ が複 合不 況 の背 景 で あ

る。

(16)

16商 経 論 叢 第33巻 第3号

0289)

「複 合 不 況 」 の 典 型(モ デル)と して 「ア メ リカ の 顯 後 退 」 が と

りあ げ られ る。(第n竜)

宮 崎[1992a〕 は・91年 初 か ら始 ま っ た ア メ リカ の 顯 後 退 は 「従 来 と は異 な っ た 」 もの で・ 「そ れ に 先 立 っ 銀 行 不 況 に よ る と こ ろ大 」(p .21)で あ る とG、

う・ 吟 回 の 顯 悪 化 に先 立 って ボ トノレネ

ッ ク や生 産 能 力 不 足 は現 れ な か っ たJ し・ 「鱒 の 臥 な 積 み 増 し も起 こ らな か った 」 と い うrビ ジ ネ ス ・ウ ィー ク』

誌 の 記 欝 「今 回 の リセ ッ シ ョ ンは金 融 部 門 が 引 き起 こ した」 と い うあ

る銀 手テ 家 の鎗 粥 介 しな が ら冷 回 の ア メ リカ の景 気 後 退 は

,銀 行 の 礫 向 け貸 し 渋 り'信 用 逼 迫(ク レジ ッ ト ・クラ ンチ)力 難GNPの マ イ ナ ス成 長 を も た

ら し た もの でa従 来 と は 異 な る 「銀 行 部 門 樽 型 の 景 気 後 退 」 と

い う,「 ニ ユ ー.

フ ェ ー ス の リセ ッ シ ョ ン」 で あ る と し

,こ れ を 「複 合 不 況 」 と 名 付 け る

。 次 いで ・貯 蓄 貸 付 組 合(s&L)の 倒 産1こ始 ま 嫡 業 銀 行 の 罐 に ま

で 及 ん だ 金 融 危 機 の 中 で 巨 額 の 破 瀧 螺 積 され

,ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ を招 来 す る に い た っ た経 過 を 細 密 に 分 析 す る

・ こ 曙 物 の3分 の1の ス ペ ー ス を 割 い た

「ア メ リカ の ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ 」 の 分 析1ま

,躰 の 「飴 不 況 」の 雛 形 と し て 捉 え られ て い る と い って よ か ろ う

【日本 の 「複合 不 況 」】

「飴 不 況輪 の中心 を なす この部 分(第 臆)で は

,そ れ を もた ら した酸 的 要因 と して鍵 舳 化 の流 れ の中 で生 じた 「バ ブル」 の撫 と腰 を分 析 し

, そ の結 果 と して の 「ク レジ ッ ト ・クラ ンチ」 の発 生 を醐 しよ うとす

る。

1バ ブル 」の分 析 は・そ の形成 趨 張 潮 壊 の3っ の髄 に分 けて お こなわ れ る。

[第1局 面]

躰 の金 融 舳 化 が 本格 的 に鵬 した1983年 か らア メ リカ株式 市 騒 大 の 株篠 落 を記 録 した ブ ラ ック ・マ ンデー(87年1・ 月19日)を 経 た87年 末 ま

で が 「バ ブル の形成 期 」 とされ る。

「バ ブル」形成 に お いて 第1に あ1デられ る要 因 は

,鋤 の 舳 化 で あ る.83年

(17)

(288) 平 成 不況 論批 判17

秋 か ら本 格 化 した金 融 自 由 化 は,84年 の 為 替 管 理 制 度 に お け る 「実 需 原 則 」 の 撤 廃 と円 転 換 規 制 の全 面 撤 廃 に よ って 急 進 展 を み せ,先 物 為 替 取 引 の 開 始 や, 海 外 の投 機 資 金 の 国 内 流 入(円 転)あ る い は国 内 資 金 の 海 外 運 用(円 投)を 増 大

さ せ た 。第2の 要 因 は,「 プ ラザ 合 意 」 と そ の 後 の 金 融 緩 和 措 置 で あ る。85年9 月 の 「プ ラザ 合 意 」に も とつ く円 高 ・ ドル安 の 行 き過 ぎ を 懸 念 した 日銀 は86年 春 以 降"ド ル 買 い ・円売 り"に 転 じ る と と もに,相 次 い で 公 定 歩 合 を 引 き下 げ

る金 融 緩 和 政 策 を と っ た。 こ う して 低 金 利 政 策 と マ ネ ー サ プ ラ イ急 増 に よ って 生 じた過 剰 流 動 性 が 土 地 投 機 や 株 式 投 機 へ と向 か っ た 。 この よ う な 中 で 個 人 や 企 業 は,豊 富 な 資 金 お よ び調 達 手 段 を も と に,キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ンを 目 的 とす

る財 テ ク ・マ ネ ー ゲ ー ム に狂 奔 して い く こ と に な る。

[第2局 面]

円 高 や ブ ラ ック ・マ ンデ ー に よ って 生 じた 巨額 の 為 替 差 損 や 株 式 評 価 損 に 直 面 した1988年 初 か ら株 式 史 上 最 高 値 を記 録 した89年 末 ま で の2年 間 を 「バ ブ ル の 膨 張 期 」 と す る。

「バ ブ ル 」を 膨 張 させ た要 因 の 第1と して,大 蔵 省 の 会 計 処 理 緩 和 措 置 を と り あ げ る。 これ は,「 バ ブ ル に対 す る抜 本 的 な 対 策 と い う よ り,む し ろ … バ ブ ル の 崩 壊 を お そ れ 」(p.151)た も の で,「 ア メ リカ がS&Lに 対 して 実 施 した規 制 緩 和 策 と 同 様,政 府 の失 敗 」 で あ り,こ れ が 「そ の 後 の バ ブ ル 膨 張 へ の 軌 道 を 用 意 した」(p.152)と 断 ず る。

第2は,企 業 金 融 の変 化,と くに 「異 常 な」 資 金 調 達 で あ る。1986年 頃 か ら エ ク イ テ ィ ・フ ァ イ ナ ン ス を 主 流 と す る直 接 金 融 方 式 が 急 増 し は じあ,株 価 上 昇 期 待 や 株 式 持 ち 合 い に 支 え られ た ワ ラ ン ト債 転 換 社 債,株 式 等 の エ ク イ テ ィ ・フ ァイ ナ ン ス に よ る 巨額 の 低 利 資 金 調 達 と持 続 的 な 株 価 上 昇 の スパ イ ラ ル が 生 じた。 第3は,大 企 業 の 銀 行 離 れ に 直 面 した 銀 行 の 主 と して 中 小 企 業 向 け の 担 保 融 資 の 拡 大 で あ る。 第4は,証 券 市 場 の 効 率 化 と ア ナ リ ス トの 跳 梁 で あ る。

第5の 要 因 と して は,新 しい投 資 方 法 の登 場,と くに 株 式 先 物 取 引 の 拡 大 を 大 き く と り あ げて い る。88年9月 にTOPIXと 日経225を 対 象 と した 株 価 指 数

(18)

18商 経 論 叢 第33巻 第3号

C2$7) 先 物 取 引 が 始 ま っ た が,宮 崎[1992a]は 特 に 日経225先 物 指 数 取 引 を と り あ げ,「 裁 定 取 引 に と も な っ て 発 生 す る現 物 買 い が,異 常 に 日経 平 均 を 押 し上 げ る と い う『 種 の マ ジ ッ ク の よ うな バ ブ ル月彰張 現 象 」(P .193)が 生 じ る と して,89 年 末 に か け て の 「異 常 な 」 株 価 上 昇 に大 き な役 割 を 果 た した と説 明 す る

。 [第3局 面]

「バ ブ ル 崩 壊 」 過 程 と して1990年 以 降 を と り あ げ

,な ぜ 「バ ブ ル」 は崩 壊 し た か,「 バ ブ ル 崩 壊 」 は何 を もた ら した か を 明 らか に しよ う とす る

「バ ブ ル崩 壊 」 は こ こで は株 価 の 暴 落 と同 義 に扱 わ れ て い る が

,時 期 的 に は 90年2月21日 に 始 ま り 「日本 の ブ ラ ッ ク マ ン デ ー」 と い わ れ た10月1日 ま で が 分 析 の対 象 と な って い る。 そ こ で は,株 価 暴 落 を生 ぜ しめ た の は,高 金 利 や 円 高 と い っ た もの で は な く,ま た 日本 の 孟勝 会 社 の 「糧 売 り」 に よ る も の で も な く,「 裁 定 取 引 に 習 熟 して い た 外 資 系 証 券 業 者 に よ る大 量 の 「現 物 売 り」 に よ る裁 定 取 引 の解 消 で あ った 」(p .210)と 分 析 して い る。 さ らに そ れ らの売 却 で 得 た 資 金 は,円 安,株 式 安,債 券 安 と い う 「ト リプ ル 安 」 の 東 京 市場 か ら 「ト

リプ ル 高 」 の フ ラ ン ク フ ル ト市場 へ と向 か っ た と い う

。 そ して,こ の よ うな か た ち の 株 式 暴 落 は ・ 日本 の 株 式 市 場 が 初 め て 経 験 し た 「ア メ リカ型 急(s)」(P

. 209)で あ り,こ れ は 「金 融 の 自 由 化 の 帰 結 の 一 っ に ほ か な らな い」 と指 摘 す る

。 rバ ブ ル崩 壊 の 帰 結 」 は,「 度 重 な る株 価 低 落 」 が 「日本 経 済 の 戦 後 構 造 に ど の よ うな 影 響 を 与え た か 」 と い う視 点 か ら論 じ られ る

。 ま ず 第1に と り あ げ ら れ る の は,国 民 総 資 産 の伸 び の 鈍 化 で あ る。株 価 下 落 に よ って1990年 の国 民 総 資 産 の伸 び は,前 年 ま で の2桁 の 伸 び に 対 して3 .4%と 急 落 した 。 実 質GNP 成 長 率(フ ロー)が 低 下 す る以 前 に,国 民 総 資 産(ス トック)の 伸 び率 が 低 下 した と い う点 に 目 を っ け,こ れ が 「複 合 不 況 の 最 大 の特 徴 」(p .214)で あ る と い う。

帰 結 の 第2は,「 日本 型 ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ 」の 発 生 で あ る。企 業 が 株 価 低 迷 に よ る エ ク イ テ ィ ー ・フ ァ イ ナ ン ス の 困 難 や T未 転 換 社 債,未 行 使 ワ ラ ン ト 債 の 償 還(93年 が ピー ク)の 問 題 を 抱 え て 資 金 調 達 難 に 陥 って い るか た わ ら

,銀 行 は,「 バ ブ ル崩 壊 」 に よ る 巨額 の 不 良 債 権 を 抱 え ,大 幅 減 益 に 陥 り,加 え て, 93年3月 ま で に 総 資 産 に 占 め る 自 己 資 本 比 率 を8%以 上 に す る と い うBIS規

(19)

(286) 平 成 不 況 論 批 判19

制 に しば られ,さ ら に,ス タ ン ダ ー ド ・ア ン ド ・プ ア ー ズ(S&P)社 や ム ー デ ィ ー ズ社 に よ る そ れ ら銀 行 が 発 行 す る長 期 債 の 格 付 け引 き下 げ に 直 面 す る な ど,「 ア メ リカ の金 融 機 関 と同 様,ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ へ の 道 を 余 儀 な く」(p.

238)さ れ て し ま っ た。 「株 価 の低 迷 に よ っ て有 価 証 券 含 み 益 に不 安 を 感 じて い る 日本 の 銀 行 に と っ て は,中 央 銀 行 の 金 融 緩 和 措 置 に もか か わ らず(た とえ公定 歩合 の引 き ドげが実施 されて も)積 極 的 に貸 出金 の 増 大 にふ み き る こ と は困 難 」(p.

233)と な り,「 日本 型 ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ン チ」 が 発 生 した と い う。

【「バ ブ ル 崩 壊 」 の 実 体 経 済 へ の 波 及 】

「バ ブ ル 崩 壊 」が 日本 経 済 に どの よ う な 影 響 を 及 ぼ した か が,企 業 部 門,銀 行 部 門,家 計 部 門 に 大 別 して 要 約 さ れ る。

企 業 部 門 へ の影 響 と して は,資 金 面 か らみ た 「バ ブ ル 崩 壊 」 の 影 響 が と り あ げ られ て い る。 「バ ブ ル崩 壊 」 に よ って エ ク イ テ ィ ・フ ァイ ナ ン スが 困 難 に な り,未 転 換 ・未 行 使 エ ク イ テ ィ債 の償 還 を迫 られ る こ と に な る企 業 は,償 還 用 資 金 調 達 の た め,手 元 流 動 性 を取 り崩 した り,借 り換 え の た め 比 較 的 金 利 の 高 い普 通 債 を 発 行 した り,設 備 投 資 を 抑 制 した り しな け れ ば な ら な い ・ 巨額 の 不 良 債 権 やBIS規 制 と い う重 荷 を 負 っ た銀 行 は,資 金 調 達 も困 難 と な り,「 貸 付 金 の 圧 縮 が 不 可 避 と な る」。 こ う して 生 じた 「日本 型 ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ 」 が,企 業 の手 元 流 動 性 取 り崩 しや設 備 投 資 の 抑 制 を 余 儀 な くす る。 個 人 部 門 に あ って は,「 バ ブル 崩 壊 」が 「個 人 所 有 の 金 融 資 産 価 格 を 大 き く低 下 さ せ た 」(p.

245)。 こ れ が 逆 資 産 効 果 を 通 して,こ れ ま で 景 気 の 底 堅 い 下 支 え 要 因 と さ れ て きた 個 人 消 費 を 低 迷 さ せ る こ と と な っ た 。

以 上 が,実 体 経 済 へ の 波 及 プ ロ セ ス で あ る。 この よ う な プ ロ セ ス を 経 て,「 バ ブ ル の 崩 壊 を ス タ ー トラ イ ン と して,明 らか に 日本 の 景 気 が 下 降 局 面 に 突 入 し て い っ た 」。 い い か え る と,下 降 局 面 に 入 っ た 日 本 の 景 気 転 換 も,そ れ を 実 現 さ せ た最 も重 要 な要 因 が バ ブ ル の 崩 壊 で あ り,そ の 意 味 で,「 金 融 部 門 が ひ き お こ した 」景 気 の 転 換 で あ り,"複 合 不 況"に 導 か れ る プ ロセ ス の ス タ ー トで あ った と結 論 す る(p.259)。

(20)

20商 経 論 叢 第33巻 第3号0285)

「複 合 不 況 」 そ の もの に っ い て 宮 崎[1992a]は

,最 後 の 部 分 で 次 の よ う に ま と め て い る。

「バ ブル の 崩 壊 」は 「金 融 自 由 化 ・国 際 化 と い う新 しい フ レー ム ・ワー クへ の 移 行 に よ っ て 不 可避 的 に 生 ず る調 整 過 程 あ る い は再 編 成 過 程 で あ り

,金 融 自 由 化 の帰 結 に ほ か な らな い」。 「しか し … バ ブ ル の 崩 壊 は実 体 経 済 の 景 気 後 退 に波 及 して い くの で,し ば しば 金 融 上 の再 調 整 過 程 と実 体 経 済 の リセ

ッ シ ョ ン とが 未 分 離 の ま ま認 識 さ れ が ち で あ る。 しか し,現 在 ア メ リカ と 日本 を 襲 って い る マ イ ナ ス成 長 は・ い ず れ も金 融 自 由 化 の帰 結 と して の 調 整 過 程(金 融再編成 過程)と,バ ブル 崩 壊 か ら実 体 経 済 へ 波 及 して い っ た リセ

ッ シ ョ ンの"複 合 不 況"に ほ か な らな い 」。

皿一1‑b.「 複合不 況」論 の問題 点

1990年 代 初 頭 以 降,日 本 経 済 は未 曾 有 と い って も よ い大 型 不 況 に 陥

っ た 。 こ の 不 況(平 成 不況)を 解 明 す る に は,80年 代 後 半 に 現 出 した 長 期 繁 栄 と そ こで 生

じた と さ れ る い わ ゆ る 「バ ブル 」 の 膨 張,崩 壊 に つ い て の 分 析 を 欠 か す こ と は で き な い。 長 期 繁 栄 か ら不 況 へ の 転 落

,不 況 の 拡 大,深 化 に お い て,そ れ が ど の 程 度 に評 価 さ れ ・位 置付 け られ るか は と もか く と して

i「 バ ブ ル」 と称 せ られ る資 産 価 格 の 急 騰 と暴 落 の プ ロ セ ス,い わ ゆ る 「バ ブ ル 崩 壊 」 が 重 要 な 役 割 を 果 た した こ と は ま ち が い な い。

そ の よ う な 「バ ブ ル 」 の膨 張 と崩 壊 に 正 面 か ら取 り組 み

}し か も そ れ を 金 融 部 門 の・ あ る い は金 融 部 門 か らみ た 分 析 を 通 して,「 平 成 不 況 」 の 本 質 に 迫 ろ う

と した 点 に 「複 合 不 況 」 論 の ユ ニ ー ク さ が あ る

。80年 代 前 半 に 本 格 化 した 「金 融 の 自 由化 」 が 「バ ブ ル」 の 膨 脹 と崩 壊 を必 然 化 し

,そ の 結 果 生 じた 資 産 デ フ レが 金 融 部 門 で の ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ン チ を 惹 起 し

,そ れ が 実 体 経 済 の 不 況 を 誘 発 した,と い うの が 宮 崎[1992a]が 描 くス キ ー マ(schema)で あ る が

,そ れ を 一 貫 して 金 融 部 門 の分 析 を 通 して 説 き明 か そ う と した と

こ ろ に 最 大 の 特 徴 が あ る。

日本 経 済 が 不 況 の 深 み に落 ち込 み は じめ た 時,こ の よ うな タ イ ム リー な 研 究

(21)

(2S4) 平成不況論批判21

が,極 あ て 短 時 間 の うち に,そ れ も綿 密 な 実 証 分 析 に も とつ く ク リア ー な 結 論 を と もな っ て 発 表 さ れ た と い う こ と は一 驚 に値 す る。 本 書 が,洛 陽 の 紙 価 を 高 か ら しめ,「 バ ブ ル 崩 壊 」 と平 成 不 況 を あ ぐ る そ の 後 の研 究 や議 論 を終 始 リー ド

して き た 所 以 で あ る。

しか し宮 崎[1992a]に は,い わ ゆ る 「バ ブ ル 」 や 平 成 不 況 を 解 明 し よ う とす る もの に と って,質 さ な い わ け に は い か な い重 要 な 問 題 点,疑 問 点 も散 見 され る。 以 下,わ れ わ れ 自身 の以 後 の 展 開 に も関 わ る分 析 視 点,ス キ ー マ,論 理 展 開,実 証 面 に つ い て い くっ か の点 を 指 摘 して お く こ と に す る。

【問 題 点 ・そ の1】

宮 崎[1992a]は"ま え が き"に お い て,今 回 の 不 況 は 「単 に在 来 型 の有 効 需 要 不 足 に よ る フ ロ ー の リセ ッ シ ョ ン と把 握 す る に と ど ま らず,そ の 背 景 に 金 融 の 自 由 化 に よ る不 良 債 権 の 調 整 過 程(creditcrunch)が 先 行 し,や が て 重 な り合 い 連 動 す る複 合 不 況(combinedrecession)で あ る」 と規 定 して い る。 ま さ に そ の よ う な 「複 合 不 況 」 の 分 析 が 本 書 の 主 題 で あ った の だ が,本 書 で は も っ ぱ ら

"金 融 不 況"と 呼 ん で も よ い金 融 部 門 の 調 整 過 程 の 分 析 の み が 行 わ れ て お り,い わ ゆ る設 備,在 庫 等 の ス トッ ク調 整 を 含 む,実 体 経 済 の 不 況 転 落 の 分 析 は ほ と ん ど み られ な い。 ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ と 「重 な り合 い連 動 す る」 べ き も う一 方 の 実 体 経 済 の 分 析 が 欠 け て い る た め,実 質 的 に は"日 米 に お け る 「金 融 不 況 」 論 ・,に な って しま って い る と い う点 が 第1に 問 題 と され る と こ ろ だ ろ う。

【問 題 点 ・そ の2】

第2に 気 付 くの は,「 バ ブ ル崩 壊 」e株 価 暴 落 と さ れ,地 価 の 急 騰 暴 落 の分 析 が 欠 落 して い る点 で あ る。 全 体 の 分 析 を 通 じて 株 価 暴 落 が 「バ ブ ル 崩 壊 」 と 同 義 に 扱 わ れ て い る が,地 価 の 上 昇,下 落 に 伴 う キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ン あ る い は キ ャ ピ タル ・ロ ス は株 価 の そ れ を は る か に 上回 る し,金 融 部 門 との 関 わ り も含 め て,景 気 の 拡 大 過 程,不 況 深 化 の 過 程 に お い て 果 た した役 割 は無 視 で き な い。

株 価 と と もに地 価 の 分 析 が 行 わ れ て は じめ て,資 産 イ ン フ レ,資 産 デ フ レを語

(22)

22商 経 論 叢 第33巻 第3号

0283) る こ と が で き る の で は な か ろ うか。

【問 題 点 ・そ の3】

第3は,「 金 融 部 門 の 不 況 」→ 「実 体 経 済 の 不 況 」,い い か え る と,「 資 産 デ フ レ」→ 「ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ 」→ 「実 体 経 済 の不 況 」 と い う宮 崎[1992

a]の schemaが は た して 証 明 さ れ え て い る か と い う問 題 で あ る

【そ の1】 で 取 り 上 げ た よ う に 「実 体 経 済 の不 況 」 そ の もの の 分 析 が 欠 落 して い る た め,因 果 関 係 の 分 析 は難 しい が

,少 な く と も 「資 産 デ フ レ」 に も とつ く

「ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ」 が 「実 体Xの 不 況 」 を 「醗 」 した と い う点 は 醐 さ れ な け れ ば な らな い 。

時 間 的 前後 関 係 ・ す な わ ち 株 価 暴 落 が 景 気 後 退 に先 立 った か ら と い っ て 前 者 が 後 者 の 原 因 で あ っ た と は必 ず し も い え な い

。90年 初 頭 か ら株 価 が 暴 落 し始 め・91鷺2四 糊 あ た りか ら景気 カゴ腿 し始 め たわ けだ が

・地価 の下 落 は91 年 に始 ま り,そ の 後97年 まで 下 落 し続 け て い る こ と な ど を 考 え る と

,時 間 的 推 移 と い う点 で は,「 株 価 暴 落 」 → 「景 気 後 退 の 開 始 」→ 「地 価 急 落Jの 順 に な

っ て い る。 しか も,「 地 価 急 落 」→ 「膨 大 な 不 良 債 権 発 生 」→ 「金 融 機 関 行 動 の萎 縮 」 と い う連 鎖 も見 落 とせ な い。 【そ の2】 と も関 わ るが,「 資 産 デ フ レ」 にっ い て の よ り 立 ち入 っ た 具 体 的 分 析 が 必 要 と な ろ う

【問 題 点 ・そ の4】

第4は ・ 「複 合 不 況 」 論 のkeyw・rdと な っ て い るuク レ ジ ッ ト.ク ラ ンチ ・ の 存 在 を 日本 に お い て 証 明 で き るか と い う問 題 で あ る

ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ン チ に つ い て は,92年 版 「ア メ リカ大 統 領 経 済 報 告 』 に お い て 「現 行 の 市 場 利 子 率 や投 資 計 画 の収 益 性 か らみ て 通 常 な ら当 然 受 け られ る

(紳 以 下 に 飴 供 給 が 制 限 さ れ て い る 時 ・ ク レ ジ ッ ト ・ ク ラ ン チ が 生 じ て い る」 と簡 潔 に定 義 され て い る が,こ の よ うな ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ は

,日 本 で は具 体 的 に ど の よ うな か た ち で,い つ 発 生 した の だ ろ うか

。 宮 崎[1992a]が3

「ア メ  カ の ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ン チ」 に お し・て と り上 げ た 貸 出 金 利 と調 達 金 利

(23)

平 成 不 況 論 批 判230282)

の ギ ャ ッ プ,と くに銀 行 の 貸 し渋 り に よ っ て 金 融 緩 和 局 面 で も貸 出 金 利 が 高 い と こ ろで 下 げ止 ま る と い う事 態 は い つ 生 じた の か 。 そ して そ の よ う な ク レ ジ ッ

ト ・ク ラ ンチ が 実 体 経 済 の 景 気 後 退 の 「原 因 」 に な っ た と い う の は,ど の よ う に して 検 証 さ れ る の か 。 そ の 期 限 が93年3月 で あ っ たBIS規 制 に よ る バ ラ ンス.シ ー ト再 編 圧 力 を と って み て も,ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ を 惹 起 し,「景 気 後 退 の 原 因 に な った 」 と は考 え に くい ・

「バ ブル 期 」 に放 漫 貸 出 しを 続 け,「 バ ブ ル 崩 壊 」 に よ って 巨額 の 不 良 債 権 を 抱 え た 銀 行 が 貸 出 行 動 を慎 重 化 さ せ た と い う こ とが,不 況 下 で 大 きな 役 割 を 果 た した と は い え て も 不 況 そ の も の の 「原 因 」 で あ っ た と い う た め に は・ い ま ひ とっ 突 っ込 ん だ 分 析,証 明 が 必 要 で あ ろ う。 銀 行 の 貸 出金 増 加 率(対 前年比)

の低 下 に して も,い ち が い に ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ンチ に よ る もの と は い え ず,さ

くユ ラ

ま ざ ま な 要 因 に よ る も の と み る べ き で あ る。

【問 題 点、・そ の5】

第5は,宮 崎[1992a]の 議 論 が ⊥ 台 と な る"す べ て は 「金 融 の 自 由化 」 が も た ら した"と い うschema,と くに"金 融 自 由 化 が バ ブル の 発 生,崩 壊 を も た ら

した"と い う点 を ど の よ うな か た ち で 証 明 す る か と い う問 題 で あ る。

「バ ブ ル 」の 発 生,崩 壊 の 背 景 と して 金 融n由 化 の 進 展 が あ る と い う こ と は誰 し も認 あ る と こ ろ で あ るが,後 者 が前 者 の 原 因 で あ り,「 バ ブ ル」 の 発 生,崩 壊 が 金 融 自 由化 の 必 然 的 な 帰 結 で あ るか ど う か に つ い て は議 論 が 分 れ る。 外 資 取 引 が 自由 化 さ れ,国 内 金 利 の 自 由化 が 進 ん で 金 融 機 関 の 調 達 コ ス トの 上 昇 と競 争 激 化 が 進 み,企 業 や 家 計 の新 しい財 テ ク手 段 や 投 資 手 法 が 開 発 さ れ た と して も,必 ず 「バ ブル 」 が 生 じ る わ け で は な い。 さ らに,そ う した 状 況 の 中 で 金 融 緩 和 政 策 が と られ た と して もf必 ず し も今 回 の よ うな 「バ ブ ル 」 が 生 じ る と は 限 ら な い 。 「バ ブ ル 」 の 原 因 に っ い て は,金 融 自 由 化 と い っ た よ う な 背 景,環 境 の 中 で 実 体 経 済 に お い て醸 成 さ れ た 具 体 的 な 諸 要 因 の 分 析 が 必 要 だ ろ う。

「バ ブ ル の 崩 壊 」に つ い て 宮 崎[1992a]は,「 な ぜ バ ブ ル が 崩 壊 した か の 分 析 」 (p.197)が 重 要 と して い る が,事 実 上 の分 析 は,「 バ ブ ル が な ぜ か く も も ろ く も

(24)

24商 経 論 叢 第33巻 第3号(

281)

崩 壊 した の か 」の 分 析 に 視 点 が 移 っ て い る(P .198).フ ラ ンク フル ト市 場 へ の 資 金 流 出 や 躰 の 証 券 業 界 の 経 営 体 質 の 古 さ な ど が あ げ られ て い る が

,そ れ ら は

「原 因 」 と な り う る も の と は い え な い.ま た,「 バ ブル 」 の 膨 張 か 棚 輿 こか け て の分 析 で は・株 価 指 数 先 物 取 引(と くに 日経225)鍾 視 され

,そ の 分 析 に相 当 の ス ペ ー ス が 割 か れ て お り,株 価 暴 落(「 ア メ リカ型急 落」)に つ い て は裁 定 取 引 (先物売 り 覗 物買 い)の 解 消 に よ る糧 の 現 物 売 りを 大 き くと り上 げ て い る

.読 み よ うに よ って は 「バ ブル 」 の膨 張 と崩 壊(宮 崎[1992a]に あ

って は株 価急騰 と暴 落)の 元 凶 は,株 価 指 数 先 物 取 引 ,こ と に 日経225指 数 先 物 取 引 に お い て 巧 妙 に

、7ち回 っ た 外 資 系 証 券 業 者 で あ る と受 け と られ か ね な い

「バ プ ル崩 壊 」 に つ い て も 「韻 」,「 き っか け 」 と 「原 因 」 と は 区 別 さ れ な け れ ば な らな い。金 融 自 由 化 の進 行,制 度 的 変 化 な ど を 縷 々 述 べ た と して も,「 金 融 舳 化 が 原 因 」 だ と い う言 い加 ま一 舳 競 争r鵬 だ か ら不 況 や 倒 産 力S生 じ る"と い う の に似 た と こ ろが あ って,一 般 的 に は正 しい が,そ れ 以 上 の もの で はな い・ や は り・瀞 過程 と鋤 剖̀門両者 の躰 的分 析 をふ まえ た 「原 因 」 の 解 明 が必 要 で あ ろ う。

以 上,今 後 の議論 展 開 に関 わ る重要 な い くつ か の点 につ いて問 題点

,疑 問点 を指胤 たが・宮 崎[1992a]が ,通 常 曝 気循 環 論 的 分析 で は欠落 し力弍ちな金 融 部 門 の分 析 を,し か も今 回 は と くに無 視 しえ ぬ役 割 を 果 た した と思 わ れ る

「バ ブル」 の分 析 とか らめ て展 開 した こ とは,「 平 成 不 況Jを 分 析 しよ うとす る もの に と って一 つの 醸 な道 を示 して い る と い って よ い.履 合不 況 」と い 信 葉 がば た た くま に広 く人 ・ に撤 したの も 人 々が8・ 年 代 後半 の膿 醐 王躁 や そ の後 の 深刻 な不況 に対 して 強 い関 心t危 機 感 を持 って い た こ と と と もに, 宮 崎[1992a]が 実 体 過程 の あ る側面 を鋭 く衝 いて いたか らに ほか な らな い

■‑2.「 バ ブ ル 崩 壊 歓 迎 」 説(14)

II‑2‑a.「 バ ブル性悪 説」

野 口[1992b]は ・ い わ ゆ る 「バ ブ ノレ」 を 正 面 か ら と り上 げ

,そ れ と の 関 わ り で 「平 成 不 測 を 論 じよ う とす る もの で あ り

,一 見 宮 崎 「飴 不 況 」 説 と分 析

(25)

0280) 平成不況論批判25

視 点 が 似 通 って い る よ うに もみ え る。 しか し,平 成 不 況 に 関 して は,宮 崎[1992 a]が 金 融 自 由 化 と い う構 造 的 要 因 を伴 う新 型 の 「複 合 不 況 」 だ と した の に対 し て,野 口[1992bユ は設 備 投 資,在 庫 投 資 な ど の 循 環 的 要 因 を重 視 す る。 そ の 限

りで,野 口説 は宮 崎 説 の 対 極 に 立 っ もの で あ り,次 節 で 述 べ る 「ス トッ ク調 整 説 」 に含 ま れ る が,野 口説 の ユ ニ ー ク さ は"バ ブ ル の 評 価"に あ る。 野 口[92 b]は 冒 頭 で,み ず か ら 「偏 見 と い って よ い ほ ど の 大 き な予 断 」(p.1)を も っ て 本 書 を執 筆 した と述 べ て い る。 そ の 予 断 と は 「バ ブ ル 性 悪 説 」 で あ る。

「バ ブ ル 」 を"悪"と す る理 由 は2つ あ げ られ て い る。 第1は,「 バ ブ ル 」 が 人 々 の 価 値 観 を 狂 わ せ た こ とで あ る。「多 くの 企 業 が 財 テ ク に 熱 中 し,ま た 本 業 か ら離 れ て不 動 産 投 資 に 乗 り出 した。 占 くか ら土 地 や 株 を も って い る もの の 資 産 は,労 せ ず して 数 億 円 と い う規 模 に膨 れ 上 が っ た 。 他 方 で 特 別 な 資 産 を 持 た な い 一 般 の 勤 労 者 に と って は,一 生 働 い て も住 む た め の 家 が 手 に入 らな い状 態 が 生 じか け て い た 」(p.2)。 こ う した 見 方 の 背 後 に は,「 勤 勉 な 労 働 が 正 当 に報 わ れ な い 社 会 は間 違 っ た 社 会 だ 」(p.2)と い う野 口 氏 の 強 い倫 理 観 が あ る。 第 2は,「 バ ブ ル 」 に よ って 資 源 配 分 が 歪 あ られ,日 本 経 済 が 目 に 見 え な い大 き な 損 害 を 蒙 っ た とい う こ と で あ る。「バ ブル 」 な か りせ ば,わ れ わ れ は 増 大 した 経 済 力 を使 っ て も っ と多 くの こ とを 達 成 しえ た は ず だ,す な わ ち社 会 資 本 を 整 備

した り,よ り豊 か な 生 活 を手 に い れ る こ とが 出 来 た はず だ と い う。

野 口 説 に あ っ て は,し た が って,「 バ ブ ル の 崩 壊 」 は 望 ま しい こ とで あ り,正 しい道 へ の 回 帰 と い う こ と に な る。 そ の最 大 の 特 色 は,「 バ ブ ル性 悪 説 」 に も と つ く 「バ ブ ル 崩 壊 歓 迎 」説 に あ る。 この 点 が 野 口[1992b]の 議 論 の 清 新 さ と説 得 力 を 支 え て い る もの で あ る。 以 下,具 体 的 に み て い こ う。

【バ ブ ル の 定 義 】

野 口[92b]で は,「 バ ブ ル 」 と い う 言 葉 は 一 般 に 使 わ れ て い る よ う な 曖 昧 な 概 念 で は な く,「 少 な く と も形 式 的 に は,明 確 な定 義 の あ る もの 」 で あ り,「 バ

ブ ル の 意 味 を 正 確 に 理 解 す る こ と は,資 産 価 格 の 動 向 を 的 確 に把 握 した り,政 策 を 考 え る うえ で 重 要 で あ る」(p49)と い う。 そ こ で ま ず 資 産 価 格 が い か に し

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'di ltar śiṅ mthoṅ ba las byuṅ ba'i rnam par rtog pa gcig gis don ci 'dra ba sgro btags pa de 'dra bar gźan gyis kyaṅ yin pa'i phyir śiṅ mthoṅ bas byas pa'i rnam par rtog pa

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