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初年次教育の動向

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Academic year: 2021

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55 The Bulletin of Institute of Technologists, No. 1

2.初年次教育の成立背景

濱名と川嶋太津夫(神戸大学・初年次教育学会会長代行)の編著『初年次教育』は,副題である「歴 史・理論・実践と世界の動向」が示すように,初年次教育を概観するに至便である.この節では『初年 次教育』を紹介しつつ,初年次教育の成立背景を概観する.まずは『初年次教育』の章構成を確認して おきたい. 第1部「初年次教育の歴史と現状」は全6章で構成され,世界での展開と,日本での取り組みの概要 がまとめられている.手際よく整理された概論(第1章)を冒頭に,まずは初年次教育発祥の地である 合衆国での歴史(第2章),そして世界各地へと初年次教育が展開している動向(第3章),転じて日 本における初年次教育につき,学生アンケートからみたそのニーズと評価および早期に活動を開始した 初年次教育支援部署の事例(第4章),学部長調査からみた初年次教育の動向(第5章),学力の階層 差問題の大学版である第一世代問題(第6章)が取り上げられている. 第2部「日本における初年次教育の実践事例」では,国際基督教大学(第7章),関西国際大学(第 8章),京都文教大学(第9章),金沢工業大学(第 10 章),大阪女学院大学(第 11 章)の計 5 大学 における取り組みが紹介されている.ここで,いわゆる理工系が金沢工大のみであることは,注意して おきたい(後述). 第3部「海外における初年次教育の実践事例」では,合衆国のアパラチアン州立大学(第 12 章),オ ーストラリアのモナッシュ大学(第 13 章),イギリス・スコットランドの高等教育セクター(第 14 章) での取り組みが紹介されている. 第4部「初年次教育の評価と可能性」では,初年次教育の評価に着手するための具体的手順(第 15 章),および初年次教育の可能性と課題(第 16 章)が整理されている. さて本稿で注目する初年次教育は,そもそもが First-Year Experience の訳語であり,そのルーツは合衆 国にある.合衆国は,大学のマス化さらにはユニバーサル化を,世界で最初期に経験した国であった. 正確にはこの経験こそが,合衆国を初年次教育発祥の地にしたのである.すなわち,大学のマス化・ユ ニバーサル化による「不本意就学者」の増加,加えて親や家族に高等教育進学経験者のいない学生(い わゆる「第一世代 First-Generation」問題)等々,学生が大学から「疎外」され,学生たちには不安が広 がっていた.さらに追い打ちとして,キャンパスが暴動に巻き込まれる学生運動の波が押し寄せたのが, 1960 年代とくに後半のことである. この問題に対処すべく.サウスカロライナ大学が 1972 年に,University 101 なるコースを開設した. いわゆるフレッシュマン・セミナーFreshman Seminar と呼ばれるもので,新入生に対して学習面のみな らず生活面についても支援するコースである.ノートの取り方や図書館での資料の探し方など学習スキ ルの習得はもちろんのこと,履修届の提出先や心配事悩み事の相談先を情報提供するなど,学生生活全 般のオリエンテーションも含まれる.これは中退率の低下にも繋がり,1981 年にはサウスカロライナ大 学コロンビア校で,University 101 に類するコースについての全国集会が開催された.その後これを Freshman Year Experience と名付け,1998 年には First-Year Experience と改称され,現在に至る.なお 「First-Year Experience」は,サウスカロライナ大学に附置されている The National Resource Center for the First-Year Experience and Students in Transition の登録商標である.

ここであらためて初年次教育の定義を確認するならば,以下のとおりである.

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56 初年時教育の動向

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57 The Bulletin of Institute of Technologists, No. 1

参照

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