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社会とのつながりと学業不正行為

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金沢大学外国語教育研究センター

『言語文化論叢』  第15号 2011年3月刊

―  社会的コントロール理論の分析的妥当性  ― 小 林 恵美子

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社会とのつながりと学業不正行為

― 社会的コントロール理論の分析的妥当性 ―

小 林 恵美子

1.問題の所在

犯罪社会学において,大学キャンパス内における学業不正は,取るに足らな い研究テーマとして見過ごされがちである.カンニングや剽窃など,学習に関 する一連の不正行為は,卒業と同時にたやすく決別できる「モラトリアム期間 限定の軽微な逸脱行動である」といった見解ゆえ,その発生メカニズムを解明 するための実証研究は非常に少ない.したがって,学業不正の抑制・促進要因 については,ほとんど明らかにされておらず,わが国はもとより,犯罪社会学 研究をリードする米国においてでさえも,有効な説明理論は確立していない.

しかし,学業不正を価値ある研究テーマとしないこの風潮は,犯罪社会学にお いて広く受け入れられている「逸脱行動」の定義づけ(Gottfredson and Hirschi, 1990: 15)と「犯罪性」についての記述(Hirschi and Gottfredson, 1994)を 否定するものである.Gottfredson & Hirschiは,「自分の利益を追求するため に行使する暴力や詐欺行為」は,研究テーマとして取り組むべき逸脱行動であ るとし,この定義にしたがえば,試験中に他人の解答を盗み見るといったカン ニング行為や,他人の文章や説を自分のものとして発表するといった剽窃行為 は,「第三者の知識を搾取する」といった詐欺行為に相当する.また,Hirschi &

Gottfredson は,「犯罪性」の特質の一つとして「逸脱行動の普遍性」を挙げ,

この記述にしたがえば,学習上の詐欺行為をしていた若者は犯罪性が高く,社 会人になった後も,種々の逸脱行動を行う可能性が高いことになる.事実Sims

(1993)は,学業不正を働いていた学生は社会人になった後,剽窃,偽造,虚

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偽陳述といった他の形態の詐欺・窃盗行為に走る傾向が強く,Sierles et al.

(1980)は,職務過程において,社会的地位を乱用したホワイトカラー犯罪に も手を染めやすいことを報告している.さらに,学業不正が大きな社会問題と して取り上げられている米国よりも,わが国においての方が学習上の不正は頻 繁に行われているという調査結果(Diekhoff et al., 1999)や,欧米の学生より も,アジア系学生の方が剽窃行為を悪行とみなす傾向が低いという調査結果も ある(Hayes and Introna, 2005).以上のことを踏まえれば,わが国における 学業不正は真摯に取り組むべき研究テーマであり(Callahan, 2004),その原 因の早期解明が要されることは論を待たない.

米国においては,Michaels &Miethe(1989)とVowell& Chen(2004)が 犯罪社会学諸理論を援用し,「なぜ,大学生は学業不正を行うのか」の問いに答 えるべく実証研究を行っている(Cochran et al., 1998; Crown and Spiller, 1998も参照).Michaels & Mietheは,試験,レポート,宿題に関する不正の 原因論として,制御理論,理性的選択理論,社会学習理論,社会的コントロー ル理論を検証し,仲間に対する愛着が強いほど学生は不正を働きやすい,と社 会的コントロール理論の命題に背反する結果を報告している.一方,Vowell &

Chen は,試験と宿題に関する不正の原因論として,緊張理論,分化的接触理 論,セルフ・コントロール理論,社会的コントロール理論を検証し,学校に対 する愛着が強いほど学生は不正を思いとどまるが,その一方で,親への愛着や コミットメント/巻き込みが強いからといって必ずしもこれら不正を思いとど まるわけではない,と社会的コントロール理論の命題を反証する結果を報告し ている.

このように,大学キャンパス内における学習上の不正行為に焦点をあて,犯 罪社会学諸理論を用いてその原因解明を試みた上記2つの先行研究のいずれに おいても,社会的コントロール理論の有効性は十分立証されていない.この傾 向は,非行や犯罪など,種々の逸脱行動に焦点をあてた先行研究においても然 りである(Akers and Sellers, 2008参照).しかし,Kempf(1993)も指摘す るように,先行研究の大半において,「社会とのつながり」を構成する 4 つの 要素,「愛着」「コミットメント」「巻き込み」「規範観念」は適切に尺度化され

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ておらず,なかでも,「愛着」を構成する 3 つの側面,「親への愛着」「仲間へ の愛着」「学校への愛着」のすべてをTravis Hirschi([1969] 2002)の定義に 沿って尺度化したもの,さらには,「親への愛着」を構成する3つの下位要素,

「愛情を伴う同一化」「コミュニケーションの親密さ」「監督状況」を適切に尺 度化し,その抑制効果を検証したものはほとんどない(例外については,

Fukushima et al., 2009を参照).

上記2つの先行研究に関して言えば,Michaels & Miethe(1989)は,「社 会とのつながり」を構成する「愛着」を「時折,試験,レポート,宿題に関す る不正をしていた調査対象者の友人の割合」と見なし尺度化している.しかし,

理論が意味するところの「愛着」とは,既存の秩序の枠組みに沿って生活して いる者に対する愛着であり,この定義にしたがえば,仲間に対する愛着は逸脱 行動発生に対してマイナスの効果,つまり,逸脱行動を抑制する働きをするは ずである.したがって,逸脱行動をしたことのある仲間,すなわち,学習上の 不正を働いたことのある友人への愛着が強いほど自身も同様の行為をする,と いったMichaels & Mietheの調査結果は,逸脱行動の抑制要因に焦点をあてた 社会的コントロール理論ではなく,むしろ,人は,規範に反する仲間と接触し,

彼・彼女たちとの相互作用を通じて同様の行為を学習する,と説いた社会学習 理論を支持していると言える.一方,Vowell & Chen(2004)は,「親への愛 着」を「愛情を伴う同一化」と「コミュニケーションの親密さ」と見なし,さ らには,「コミットメント」と「巻き込み」を「フルタイムの学生としての資格」

「宗教活動への参加の度合い」「キャンパス内の自治会やクラブの会員資格」と 見なし尺度化している.しかし,理論が意味するところの「親への愛着」は,

3つの下位要素,「愛情を伴う同一化」「コミュニケーションの親密さ」「監督状 況」から構成されており,また,両者の相互作用の可能性について言及しては いるものの,「コミットメント」と「巻きこみ」は,実質,独立した2 つの抑 制要因として逸脱行動に作用するはずである.したがって,これら2つの要因 を併せて1つの変数として分析に加えることは,それぞれがもつ効果を抑えて しまうことになりかねず,「親への愛着」と「コミットメント/巻き込み」が学 業不正に対して有意な抑制効果を持たないからと言って,社会的コントロール

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理論の有効性を棄却するのは時期尚早であると言える.さらには,日本の低犯 罪や低非効率の原因の一つには,インフォーマルな社会的コントロールが挙げ られるという見解を踏まえれば,Hirschi([1969] 2002)の社会的コントロー ル理論が日本人学生の学業不正の原因論として有効である可能性は十分ある.

本研究の目的は,理論の提唱する抑制要因を適切に操作,数量化し,わが国 の先行諸研究においては,全くと言っていいほど着目されてこなかった社会的 コントロール理論の学業不正に対する分析的妥当性を検証することにある.本 研究の意義は,理論で提唱されている概念と命題の是非を明らかにすることで,

理論のさらなる拡充と改良を図り,精良性を高めることにある(Krohn and

Massey, 1980参照).なお,本研究で言う「学業不正」とは,学校での嘘や不

正直,ごまかしなど「学習に関する一連の背徳行為」を意味するものであり,

「社会とのつながり」は「社会との絆」の同義語として扱う.

2.社会的コントロール理論

人は,生まれながらにして,欲求充足のためなら悪行でもいとわない動物で ある.したがって,非行や犯罪に代表される逸脱行動は,放っておけば,すべ ての人が犯しうる当然の行動である.こういった性悪説を前提に,Hirschi

([1969] 2002)が呈した疑問は,「なぜ,ある特定の人びとは逸脱行動に走ら

ないのか」であり,その問いに対する答えを「社会とのつながり」に見い出し,

「個人と社会とのつながりの糸の束が細かったり切れていれば,青少年は非行 に走る可能性が高く,反対に太ければ,それだけ非行に走る可能性が低い」

(Hirschi/森田・清水, 1995: 8)という基本定理のもと構築されたのが,1969 年に実証データとともに発表された社会的コントロール理論である.

理論の中核たる「社会とのつながり」は,大きく分けて4つの要素から構成 される.1 つめの要素は「愛着」であり,これは,既存の秩序の枠組みに沿っ て生活している人びとに対する「情緒的つながりの糸」(Hirschi/森田・清水,

1995: 8)を意味する.これら人びとに対する愛着が強いほど,人は,法に対立

するような行動,つまり,これらの人びとにとって当惑や厄介の種となるよう

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な行動をすると,相手の気持ちを害したり人間関係を危うくしてしまうのでは ないか,という気持ちが強くなるので,彼・彼女たちの願いや期待に相反する 形で行動する可能性は少なくなる.既存の社会秩序の中にさまざまな形で存在 する人びとへの愛着のうち,青少年・少女にとって重要なのは,親,学校,仲 間に対する愛着である.Hirschi([1969] 2002)は,「親に対する愛着」はさら に3つの下位要素から構成されると提唱する.1つめの下位要素は「愛情を伴 う同一化」であり,これは,子どもが親に対して抱く愛好と尊重とを併せ持つ,

情緒的つながりの糸を意味する.2 つめの下位要素は「コミュニケーションの 親密さ」であり,これは,子どもが自分の関心事や抱えている問題について親 と頻繁に話し合い,考え方や感じ方を分かち合っていることを意味する.3 つ めの下位要素は「監督状況」であり,これは,自分がどこで何をしているのか を両親は知っていると考えていること.つまり,非行や犯罪への誘惑が生じた ときに,親の姿が心理的な意味で存在している状況を意味する.

社会的コントロール理論の中で,既存の社会秩序が求める行為様式に同調す る人びとへの愛着として2つめに掲げられているのは,学校や教師に対する愛 着を意味する「学校への愛着」であり,3つめは,仲間に対する情緒的つなが りを意味する「仲間への愛着」である.

「社会とのつながり」を構成する2つめの要素は「コミットメント」である.

これは,社会が設定した中・長期的目標を達成しようという意欲を意味する

「価値や行為目標への功利的なつながりの糸である」(Hirschi/森田・清水,

1995: 8).社会におけるほとんどの行為目標は既存の社会秩序に沿ったもので

あり,そのもっとも顕著な例は,教育上,ならびに職業上のキャリアである.

社会秩序から逸脱する行動をすると,これら目標を達成する可能性がなくなる かもしれないので,コミットメントが強いほど,逸脱行動に走る可能性は低く なる.つまり,これら教育上,およびキャリア上の自分のチャンスを危険にさ らすと思われる行動は,多分に回避されるのである.

3つめの要素は「巻き込み」である.これは,日常の適切な諸活動への時間 やエネルギーの投入のことであり,「社会や集団とのつながりの糸」(Hirschi

/森田・清水, 1995: 9)を意味する.日常のさまざまな活動に参加するほど,

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人は,悪行とされることをしている時間もなければ,逸脱をする機会もない.

時間とエネルギーは元来限られたものであるので,社会の既存の枠組みに沿っ た事柄に忙殺されるほど人は忙しく,それだけ逸脱行動について思いを巡らす こともない.ましてや,その思いを実行に移すこともできない.したがって,

巻き込みが強いほど,逸脱行動に走る可能性も低くなる.

4つめの要素は「規範観念」である.これは,「社会や集団の規範的な枠組み を受け入れるという考え方」(Hirschi/森田・清水, 1995: 9-10)であり,社会 や集団とのつながりの糸を意味するものである.規範観念が強いほど,人は,

所属する社会や集団が設定する規範を自分の意識化に取り入れて行動するので,

自己の私益に則った行為準則に眼をくれなくなる.したがって,その分,逸脱 行動に走る可能性も低くなる.

以上,「愛着」「コミットメント」「巻き込み」「規範観念」から成る社会に対 する個人のつながりが強いほど,人は社会的コントロール下に置かれるので,

逸脱行動を犯す可能性は低くなる.一方,社会に対する個人のつながりが弱い ほど,人は社会的コントロールから解き放たれるので,逸脱行動を犯す可能性 は高くなる.これが,社会的コントロール理論が提唱する命題であり,本研究 では,この命題の是非を,日本人大学生から回収されたデータを使って明らか にする.

ところで,本研究では,4 つの要素から成る「社会とのつながり」が唯一無 二の抑制要因として学習上の不正行為に作用する,と言っているわけではなく,

有効な抑制要因の一つであろう,と提言しているにすぎないことを強調してお きたい.また,セルフ・コントロール理論(Gottfredson and Hirschi, 1990な ど)や合理的選択モデルに基づく拡大抑止理論(Grasmick and Bursik, 1990 など)など複数の犯罪社会学理論を援用して,「なぜ,ある特定の学生は学業不 正を犯さないのか」の問いに答えるべく,体系的に原因解明を試みるつもりも ない.あくまでも,「社会とのつながり」を構成する 4 つの要素,「愛着」「コ ミットメント」「巻き込み」「規範観念」をHirschi([1969] 2002)の定義にし たがって操作化し,その抑制効果の程を明らかにすること.具体的には,上記 4 要素の程度が高いほど大学生は学業不正を思いとどまるのか,という社会的

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コントロール理論の分析的妥当性を検証することが,本研究の目的であること を改めて記しておく.

3.仮説

本研究では,以下4つの仮説を立て,それぞれを検証していく.

(1) 親,学校,仲間に対する愛着が強いほど,大学生は学業不正を思いと どまる.

(2) コミットメントが強いほど,大学生は学業不正を思いとどまる.

(3) 巻き込みが強いほど,大学生は学業不正を思いとどまる.

(4) 規範観念が強いほど,大学生は学業不正を思いとどまる.

4.調査対象

今回の仮説検証に使用されたデータは,某総合大学(学生総数,約 16,500 名)に通う2年生を対象に,2003年4月に実施された無記名の自記式質問票 による調査結果の一部である.調査を4月に試みた理由については,年間を通 じて最も出席率が高く,欠席者によるバイアスを減らすことができるからであ る.また,総合大学で調査を実施した理由は,対象者の専攻分野に偏りが少な く,回答へのバイアスを最小限に抑えることができるからである.最後に,新 2年生を対象に調査を実施した理由については,彼・彼女たちの大半が,10代 という逸脱行動を犯しやすい年令層に相当し(Hirschi, [1969] 2002)),さらに は,大学に入学してからおよそ1年間,種々の学業不正を犯しうる環境下に置 かれていたであろうと予想されるからである.

2 年生主体の授業を担当する教員の承諾のもと,本調査の目的と概要を説明 し,以下4つの条件を口頭,および書面で教示した後,本調査への参加の意思 を示した8クラス,合計442名の学生に質問票が配布された:(1)調査への参 加は,個人の自由意志に基づくこと,(2)調査は,当大学とは関りのない本稿

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著者によって行われること,(3)調査票への記入は,全て匿名で行われること,

(4)回答を全て数字化し,コンピュータに入力した後,調査票は全て破棄さ れること.なお,各教室で実施された調査票の配布から回収に至る全行程(40 分程度)は,本稿筆者が全て執り行った.

回収された442の質問票のうち,自分は日本人でないと答えた7名,および 日本人であるか否かを明記しなかった 2 名分の回答は,分析から除外された.

その結果,本研究の分析対象となったのは,合計9学部433名の学生から寄せ られた回答である.対象者の性別は,当大学全体の男女比率と同じく,71%(s.d.

= .45)が男性であった.平均年令は19.37才(s.d. = .64)であり,対象者の

99.1%が,18才から21才の年令層に相当していた.

5.尺度

5.1. 従属変数:学業不正行為

本研究では,種類や形態の異なる合計6種類の学習に関わる不正行為を設定 し,これら行為をした経験についての自己報告を点数化したものを採用した(表 1参照).分析には,6種類の不正行為それぞれについて,「過去1年間,どの くらいの頻度で以下の行為をしましたか?」に対する回答(0~4)を合計した 得点(0~24点)を用いる.

項目* 平均値 標準偏差 因子負荷量**

試験中,他人の解答を見た. .799 1.022 .766 他人のレポートを自分のものとして提出した. .654 1.009 .695 他人の宿題を写し,自分のものとして提出した. 1.134 1.063 .739 試験中,カンニングペーパーを使った. .596 .950 .766 レポートを書く時,他人の考えを無断で使った. .787 .986 .620 試験前に,不正に問題を入手した. .236 .739 .489 * 回答選択肢: 0 = 一度もしなかった;1 = ほとんどしなかった;2 = 時々した;3 = しばしばした;

          4 = ほとんどいつもした.

** 主成分分析で算出された全固有値: 2.825, .928, .797, .573, .521, .355.

表1.「学業不正行為」についての記述的統計(n = 433)

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5.2. 独立変数:社会との絆

先にも述べたとおり,先行研究において,「社会とのつながり」を構成する4 つの要素(「愛着」「コミットメント」「巻き込み」「規範観念」)は一貫性を持っ て尺度化されていない.なかでも,「愛着」を構成する3つの側面(「親への愛 着」「仲間への愛着」「学校への愛着」),さらには,「親への愛着」を構成する3 つの下位要素(「愛情を伴う同一化」「コミュニケーションの親密さ」「監督状況」) のすべてを定義に沿って尺度化し,その抑制効果を検証したものはほとんどな い(例外については,Fukushima et al.,2009を参照).そこで,本研究では,

Hirschi([1969] 2002)が使用した尺度とできるだけ同一のものを採用するこ

とで「社会とのつながり」を適切に操作,数量化し,学業不正に対する抑制効 果の程を検証する.

「親への愛着」を構成する3つの下位要素は,合計7つの質問項目を用いて 測定した.各項目は,「父親に対する愛着」と「母親に対する愛着」から構成さ れており,変数作成に際しては,双方の愛着を加算した合計得点を用いた.

「愛情を伴う同一化」は,「母親(父親)のような人になりたいと思います か?」,「母親(父親)と,とても親しい間柄ですか?」,「あなたが望むすべて の愛情を母親(父親)から受けていますか?」)の回答(1~4)を合計した得 点(4~16点)を使用した.「コミュニケーションの親密さ」は,「しばしば母 親(父親)と余暇を過ごしますか?」に対する回答(1 ~ 4)と「母親(父親)

は,心配事や悩み事を親身になって聞いてくれますか?」)に対する回答(1 ~ 5)

を合計した得点(4~18点)を使用した.「監督状況」は,「母親(父親)は,

あなたの外出先をどの程度把握していましたか?」と「母親(父親)は,あな たが誰と外出していたかをどの程度把握していましたか?」の回答(1~3)を 合計した得点(4~12点)を使用した.

続いて,上記3つの下位要素から成る「親への愛着」を作成するため,因子 分析を行った.主成分分析から算出された固定値をスクリーテストに基づき解 釈した結果,1 因子構造であると判断した.しかし,信頼性分析の結果,3 つ の下位要素から成る尺度を作成することの正当性は示されなかったため,回帰 分析においては,「愛情を伴う同一化」と「コミュニケーションの親密さ」を併

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せて「親への愛着」,残されたもう一つの下位要因を「親の監督状況」として扱 い,それぞれの抑制効果を検証する.

「仲間への愛着」は,「仲の良い友達のような人になりたいですか?」と「人 生で大切だと思われることがらに関して,仲の良い友だちの意見を重視します か?」に対する回答(1~3)を合計した得点(2~6点)を分析に使用する.

「学校への愛着」は,「通っていた高校をどう思っていましたか」に対する回

答を1 ~ 3にコード化した.本研究においては,対象者の大半が新2年生であ

るため,大学に対して強い愛着をもつには時期尚早であると判断し,「大学」で はなく「高校」に対する好き・嫌いを質問した.

「コミットメント」については,多くの大学生が掲げるであろう4つの目標 を設定し,それぞれを達成することの大切さを質問した:(1)大学でよい成績 をおさめる,(2)大学を卒業する,(3)希望する職に就く,(4)卒業後,自分 の能力や努力に見合った額のお金を稼ぐ.回答は,以下のようにコード化した:

「目標としていない」「あまり大切でない」= 1,「どちらかというと大切」= 2,

「大切」= 3,「とても大切」= 4.分析には,各質問に対する回答(1~4)を合 計した得点(4~16点)を使用する.

「巻き込み」は,アルバイトやスポーツなど,合計7種類の活動それぞれに,

過去一年間どの程度時間を費やしたかを質問し,その数値を合計した得点を分 析に用いる.

「規範観念」は,「成功するためには,正しくないと思われることをしなくて はならないと思いますか?」,「捕まらないなら,法に反する行為をしても問題 ないと思いますか?」,「誰も傷つかないならば,たとえ法に反しても自分の望 むことをするべきだと思いますか?」)に対する回答(1~4)を合計した得点

(3~12点)を分析に使用する.

5.3. 統制変数

本研究では,逸脱行動との関連性が指摘される性別,年令,育った家族構成,

親の学歴を統制変数として分析に加える.通常,男性は女性の 3~5 倍の割合 で法規範を破るのが常であるとされるので,性別が必要不可欠な統制変数であ

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ることは言うまでもない.分析においては,男性を1,女性を0にコード化し た(以後,「男性」と表記).年令については,そのままの数字を使用した.家 族構成については,片親の家庭に育った子どもは逸脱行動を犯しやすい,とい う先行研究をもとに(Rankin and Kern, 1994; Rebellon, 2002など),成長す る過程においてどのような家庭環境で育ったかを尋ね,回答を以下のようにコ ード化した:大人2名(実父母,母親と義父,父親と義母,祖父母など)が存 在する家庭に育った = 1;大人2名がそろわない家庭に育った = 0.対象者 のうち,95.4%(s.d. = .21)が,成長する過程において大人2名が常に存在し ていたと回答した(以後,「家庭内大人2名の存在」と表記).親の学歴は,以 下のようにコード化した:少なくとも片親が学士号,もしくはそれ以上の学位 を取得している = 1; 両親のいずれも学士号を取得していない = 0.対象者の

うち,67.0%(s.d.= .47)が,少なくとも片親が学士号以上の学位を取得して

いると回答した(以後,「親の学歴」と表記).

6.結果と考察

仮説の是非は,最小二乗法による回帰分析から算出された標準回帰係数

(Beta)をもとに評価する.なお,本研究では,社会とのつながりを構成する 4 つの要素は学業不正に対して抑制効果をもたらす,という仮説を立て,独立 変数が及ぼす影響の方向(-)を特定しているので,片側有意検定の結果を報 告する.

表 2 にある数字を解釈する前に,「社会とのつながり」を構成する要素のそ れぞれが学業不正に及ぼす効果を特定するのは容易でないことを記しておく.

なぜなら,7つの独立変数の間には,概して,5%水準で有意なプラスの相関的 関係があり,互いが独立した存在ではないからである.これは,いずれか一つ の要素を強く持つほど他の要素も強くなることを意味しており,例えば,社会 の枠組みに沿って生活している人々に愛着を持っている人は,それだけ社会の 枠組みに沿った活動に巻き込まれ,望ましい行動に関する社会の枠組み沿った 見方を受け入れる傾向を示唆している.しかし,SPSS 重回帰分析結果を検証

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したところ,深刻な多重共線性の問題は存在しえないことが確認されたので

(Belsley, 1982),以下に,重回帰分析の結果を報告する.

まず,表 2 にある統制変数の効果を確認する.「男性」と「親の学歴」の独 自の効果が,5%水準で,学業不正に対して有意である.特に,女性よりも男 性の方が学習上の不正を働きやすい,という結果は注目に値する.と言うのも,

米国においては,非行や犯罪行為とは対照的に,学業不正の発生率の男女差は,

女性の社会進出など社会構造的な要因を背景に,現代では減少しつつあること が報告されているが(Whitley et al., 1999を参照),本研究で示された結果は,

そうした傾向が,日本においてはあてはまらないことを示唆するものだからで ある.

(n = 433; 片側有意検定)

独立変数 b Beta p

男性 .750 .086 .035

年令 -.117 -.019 .339

家庭内大人2名の存在 -.384 -.020 .328 親の学歴 .714 .085 .033 親への愛着 .023 .037 .228 親の監督状況 -.271 -.141 .002 仲間への愛着 -.009 -.002 .485 学校への愛着 -.024 -.004 .470 コミットメント .018 .010 .413 巻き込み .023 .074 .054

規範観念 -.779 -.316 <.001

(切片) 13.230

R2 .150

p <.001

表2. 社会とのつながりが学業不正行為に及ぼす影響

次に,独立変数の効果を確認する.重要な結果は2つ挙げられる.1つは,

「規範観念」が学業不正に対して有意な制御効果を持つという結果である

(Beta = -.316, p < .001).この結果は,Krohn & Massey(1980)やWang et

al.(2002)らの先行研究とも一致しており,さらには,「規範観念が強いほど

非行発生率は下がる」という,Hirschi([1969] 2002)の提言に基づいて本研 究で設定した仮説と整合的である.もう1つ注目すべきは,「親の監督状況」が

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学業不正に対して有意な抑制効果を持つという結果である(Beta = -.141; p

= .002).これは,逆に言うと,現代の大学生の学習上の不正行為は,親の監督

不行き届きを背景として生じている傾向が明瞭だと言える(Glueck and Glueck, 1959; Hill et al., 1999; Loeber and Stouthamer-Loeber, 1986; McCord and McCord, 1959を参照).

以上,重要な知見として,学業不正に関して言えば,その他の社会的コント ロールの諸変数を統制した上でも,「規範観念」と「親の監督状況」は有意な抑 制効果を持っている.この結果は,従来にはなかったものとは言え,とりわけ 軽視されやすい,学習上の不正行為という逸脱行動に対して,限定的ではある が,社会的コントロール理論が有効であることを示唆している.なお,これに 関連して,統計上,「規範観念」(Beta = -.316)は「親の監督状況」(Beta = -.141) の2倍以上の抑制効果を持つ,という結果も注目に値する.と言うのも,Hirschi

([1969] 2002)は言及していないが,この結果は,「社会とのつながり」には 多くの要素があるが,そのすべてが学業不正という逸脱行動を抑制する上で同 程度の重要性を持つわけではないことを示唆するものだからである.

一方,「親への愛着」は,5%水準で,学業不正に対して有意な抑制効果が確 認されなかった.ここで分析に用いた親への愛着尺度は,「愛情を伴う同一化」

と「親密なコミュニケーション」という2つの下位要素をHirschi([1969] 2002) の定義を元に測定したものであったが,Hirschi の研究では,これら各要素と 非行行動との相関分析を行っており,双方ともに,有意なマイナスの相関的な 傾向が示されている.したがって,本研究では十分な検証が行えなかった可能 性がある.そこで,「愛情を伴う同一化」と「親密なコミュニケーション」のそ れぞれが学業不正に対して抑制効果を及ぼすのかを検証したところ,いずれも,

5%水準で有意な抑制効果が確認されなかった.これは,両親のことを,自分の 社会・心理的な場の一部分と認知していようと,また,自分の心配事や悩みご とについて両親と話し合い,両親と考え方や感じ方を頻繁に分かち合っていよ うと,学業不正は起こり得る可能性を示唆しており,「親の監督状況」の検証結 果が,理論から予測される結果と整合的であることとは対照的である.

「学校への愛着」も,5%水準で,学業不正に対して有意な抑制効果が確認

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されなかった.ここで分析に用いた学校への愛着尺度は,「通っていた高校をど う思っていましたか?」という,Hirschi([1969] 2002)が使用した質問項目 と同じものであったが,Hirschi の研究では,非行行動に対し有意な抑制効果 を持つと報告されている(Zhang and Messner, 1996も参照).したがって,

今後,「学校への愛着」の検証は,学業面の能力や教師の意見を気にする程度な ど,新たに質問項目を加えることで,より適切な尺度を用いて検証することが 求められる.

「仲間への愛着」も,5%水準で,学業不正に対して有意な抑制効果が確認 されなかった.ここで分析に用いた仲間への愛着尺度は,「親友への同一視」と いう Hirschi([1969] 2002)の定義を元に測定した尺度であったが,Hirschi の研究では,「友人に対して最も愛着を感じたり,尊敬の念を持っている少年た ちは,最も非行から縁遠い存在である」という彼の主張を裏付ける有意な非行 抑制効果が示されたことを踏まえると,この結果は意外にも思える.しかし一 方で,アジア諸国の青少年・少女の非行や犯罪に対する社会的コントロール理 論の分析的妥当性を検証した研究においては,「思春期における仲間への愛着は,

既存の価値に沿わない行動に染まりやすい」というHirschiの主張を反証する 結果が報告されている(Fukushima et al., 2009; Hwang and Akers, 2003な ど).したがって,アジア諸国に限って言えば,仲間の考えに関心を持つという ことは,既存の社会に共有された価値から外れた価値観を受け入れ,学業不正 を含む種々の逸脱行動へと導かれやすい可能性を秘めていないのか,今後あら ためて問われるべきである.

「コミットメント」も,5%水準で,学業不正に対して有意な抑制効果が確 認されなかった.Hirschi([1969] 2002)の研究においては,コミットメント と非行の間に十分なマイナスの相関的な傾向が確認されていたことを踏まえる と,この結果は意外にも思える.しかし,本研究において,コミットメント尺 度は,一般に,現代の大学生が目標としていることを指標として用いるので,

測定方法については問題ない.事実,方法的に優れたFukushima et al.(2009)

とWang et al.(2002)の研究も,同様の結果を報告している.したがって,

学習上の不正を行った程度で,大学でよい成績をおさめられなくなることも,

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大学を卒業できなくなることも,希望する職に就けなくなることも,さらには,

卒業後,自分の能力や努力に見合った額のお金を稼げなくなることもないであ ろう,という楽観的な予測が,一連の学業不正を行いやすくさせている可能性 が十分に考えられる.

最後に,「巻き込み」も,5%水準で見ると,学業不正に対する有意な抑制効 果は確認されなかった.この結果は,「適切な社会的活動に時間を費やす青少年 ほど,非行に費やす時間がない」というHirschi([1969] 2002)の説明が,学 業不正に関して言えば,必ずしも妥当しないことを示唆しており,Akers &

Cochran(1985)やHwang & Akers(2003)らの先行研究にも反している.

7.結論

先に,本研究には方法論的な側面において制約があるため,上記結果を日本 人大学生一般にあてはめて論じる際には,細心の注意が必要であることを記し ておく.特に,調査対象者の大半が某総合大学に在籍する新2年生であるため,

年令や学歴において多様性を欠いている.したがって,「社会とのつながり」を 構成する要素が学業不正に及ぼす影響の程度にも偏りがある可能性を強調して おきたい.

続いて,本研究で得られた知見を整理する.第 1 に,「規範観念」と「親の 監督状況」は,他の要因とは独立して,学業不正を抑制する効果が確認された.

この結果から鑑みるに,規範観念の強い個人は,所属する社会や集団が設定す る規範を自分の意識化に取り入れて行動するので,自己の私益に則った行為準 則に眼をくれなくなる.また,自分の居場所に両親は気づいていると認識して いる,すなわち,両親のことを自分の社会・心理的な場の一部分と認知する個 人は,校則に反するような行為は両親にとって当惑や厄介の種となるであろう と考えるので,両親の願いや期待とは相反する形で行動する可能性は少なくな る,と推察される.このように,他者の意見に敏感になることで,大学生は学 習上の不正行為を思いとどまるようになることを本研究の知見は示唆している.

これとは対照的に,「親への愛着」の高低は学業不正に影響を及ぼさない,とい

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う結果が興味深い.と言うのも,Fukushima et al.(2009)は,米国のデータ から,親への愛着が強いほど大学生は種々の逸脱行動を自重する傾向にある,

という抑制効果を報告しているからである.これに対して,なぜわが国のデー タの場合は,親への愛着は大学生の学業不正に抑制効果をもたらさないのか.

その理由として,筆者の仮説を暫定的に示しておく.まず,親への愛着を測定 するために選定された質問項目中の「親しい間柄」や「愛情」といった概念が,

調査対象者にとっては非常に抽象的であり,対訳のattachmentとの整合性が とれていない可能性が考えられる.さらには,母子の依存関係が非常に高いわ が国において,思春期の子供たちは,真の意味での独立を果たすためには心身 ともに親から離別することが必須であり,したがって,親への愛着や親との親 しい関係といった概念が,プラスの特性ではなく,幼稚さや未熟性を象徴する,

むしろマイナスの特性を持つ概念としてとらえられている可能性が考えられる.

今後の研究では,こうした点について,さらに踏み込んだ検証がなされるべき である.

第2に,社会的コントロール理論の学業不正に対する分析的妥当性は,かな り限定的なものであることが明らかになった.日本人大学生を対象にした本研 究においては,「親への愛着」に加え,「学校への愛着」,「仲間への愛着」,「コ ミットメント」,「巻き込み」の抑制効果は,いずれも確認されなかった.この ことは,学業不正に対する「規範観念」と「親の監督状況」の検証結果が,理 論から予測される結果と整合的であることとは対照的であり,意外な結果であ ると言える.先にも述べたとおり,伝統的に,社会的コントロール理論は,「逸 脱行動への動機や欲求は,誰にでも存在し得る」という性悪説を前提に,「なぜ,

ある特定の人々は逸脱行動に走らないのか」を問うてきた.しかし,学業不正 に関して言えば,「規範観念」と「親の監督状況」の抑制効果が強い一方で,そ の他の要素の抑制効果は概して非常に弱く,有意性は認められなかった.この 結果を踏まえるのなら,今後,わが国独自の学業不正の説明理論を構築してい くためには,個人を学習上の不正行為へと導く動機や欲求に焦点を当て,その 促進効果を解明していくことが肝要となる(Tittle and Paternoster, 2000参 照).この意味で,本研究は,「なぜ,一部の大学生は学業不正を働くのか」と

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いう観点から,社会学習理論(Akers, 1985, 1998; Akers and Sellers, 2008な ど)や緊張理論(Agnew, 1985, 1992, 2001, 2006; Agnew and White 1992な ど)を使って,促進要因についての理論的知識を追加することの必要性を提示 している.さらには,「なぜ,一部の大学生は学業不正を働かないのか」という 疑問を追求するため,セルフ・コントロール理論(Gottfredson and Hirschi, 1990など)や拡大抑止理論(Grasmick and Bursik 1990など)の分析的妥当 性を検証し,コントロール・メカニズムの妥当性を追加,修正,補完すること の必要性をも提示している.また,社会的コントロール理論は,わが国におけ るその他諸般の逸脱行動をも十分説明しえないのか(Fukushima et al., 2009;

斉藤, 2002; Tanioka and Glaser, 1991など),それとも,この結果は,学業不 正に限ったものであるのかを明らかにするため,今後は,欧米諸国のデータと も比較しながら理論の有効性を実証研究していくことが,わが国の逸脱行動研 究のさらなる発展にとって枢要であることも追記しておく.

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[謝辞]

稿を終えるにあたり,調査にご協力いただきました学生,そして,教員のみ なさまに心より御礼申し上げます.また,調査票作成,および本稿執筆に際し,

オクラホマ大学社会学部教授Harold G. Grasmick氏に多大なる助言を賜りま した.記して感謝いたします.

[付記]

本稿は,科学研究費補助金による研究成果の一部です(若手研究B,課題番 号16730274).

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Social Bonds and Academic Cheating:

An Application of Hirschi’s Social Control Theory*

EMIKO KOBAYASHI

Abstract

Social control theory, which was first presented by Travis Hirschi in 1969 in Causes of Delinquency and is one of the most widely cited theories in criminology, argues that humans by nature are hedonistic and, thus, inclined to engage in any acts, including crime and other forms of deviance, in pursuit of their self-interest. The present study proposes that the four general elements identified in the theory comprise a social bond that, when present, serves as a constraint against academic cheating: attachment, commitment, involvement, and belief. First,attachment refers to an emotional bond to conventional others. Students who are so attached are less inclined to commit academic cheating for fear of hurting those to whom they are attached and/or jeopardizing their relationships with them. For students, relevant attachments are those to parents, peers, and school.

Attachment to, or caring about the feelings of parents has also three subcomponents: identification with and affection toward parents, intimate communication, and parental supervision. Second, commitment refers to the stakes in conformity the student has developed, such as investments in education and preparation for labor force participation. Students who have made such investments, the present study argues, are inclined to

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avoid violation of school rules because they have more to lose by taking the risk of getting into trouble. Third, involvement is a student’s investment of time in conventional activities, time that makes the student unavailable for academic cheating or exposure to opportunities for such misconduct. The theory assumes a finite amount of time available to an individual, so time spent in conventional activities reduces time available for academic cheating. Finally, belief refers to belief in the moral legitimacy of the law – the view that the law is binding on one’s own behavior and has legitimacy in prohibiting one’s pursuit of one’s self-interest through acts of force and fraud.

Students who acquire such a belief while growing up are more bonded to conventional society and, thus, less free to engage in academic cheating. In the research reported here, measures of social bond variables that resemble, and in many cases are identical to measures used by Hirschi, are developed.

The effects of these four elements on people’s experience to commit academic cheating are then examined in a sample of Japanese college students. The analysis provides rather limited support for the theory.

Parental supervision and belief function as constraints that prevent students, more or less, from engaging in acts of fraud (i.e., academic cheating) in pursuit of their self-interest, but the findings for the other elements of social bond appear less compatible with the theory.

Key words: social control theory, academic cheating, Japanese college students

* Research reported herein was supported by the Grants-in-Aid for Scientific Research from the Japanese Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology. I wish to thank Harold G. Grasmick for his invaluable inputs into earlier versions of the manuscript.

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