ドライエッチングによる表面弾性波フィルタの製作
(昭和63年5月31日 原稿受付)
電気工学科黒石正宏
(電子コース)川上弘幸
遠 山 尚 武
Fabrication of Surface Acoustic Wave Filters Using a Dry Etching Technique
by Masahiro KUROISHI Hiroyuki KAWAKAMI Naotake TOYAMA
Abstmct
Surface acoustic wave(SAW)filters have been fabricated by a dry etching technique under va−
rious conditions, such as pressure and flow rate of gasses in etching chamber and incident rf power.
As a result, we have obtained the most suitable conditions for etching the samples.
It was found from electrical measurments by using a network analyzer, that the fillter with an evaporated−Al electrode has a better frequency responce than that of the filter with a sputtered−Al electrode, and that this frequency responce correspond well to the theory by W. Smith.
ライエッチングにより製作し,エッチング条件,アッシ 1・まえがき @ 、ング条件がフ,ルタ離,電極形状にどのような影響を
弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)フィルタ 及ぼすか調べ,ドライエッチングの最適な条件を求めた。
は入力側くし形電極により電気信号を表面波に変換して
2.弾性表面波フィルタ 圧電体表面を伝搬させ,出力側くし形電極で所望のフィ
ルタ特性を得るものである。このSAWフィルタはTV 圧電体上に図一1のようなくし形電極を二つ形成し,
映像中間周波数フィルタなどに実用化されており,さら 一方に高周波電圧を印加すると電極指間に電界を生じ,
に高周波化のための開発がすすめられている。この場合 圧電効果によって圧電体に歪を生じる。その歪が表面波 問題となるのは,フィルタ特性の中心周波数が表面波の として伝搬し,他方のくし形電極において逆に歪を電圧 伝搬速度と電極線幅によって決まるため,中心周波数が に変換して出力電圧を得る。この時電極指間隔を4とす
1GHzのとき電極線幅は1μm以下となり,電極の微 ると,∫o=U/2εとなる周波数∫oの信号が最も強く 細加工技術がフィルタ特性を左右するようになる。この 励振される。ここでγは表面波伝搬速度である。この 状況は化学薬品によるウェットエッチングよりも,IC ようなくし形電極によって励振される表面波を図一2に
の製造行程で使用されるドライエッチング技術が適して 示すような電極指の中心に生じたδ関数状の歪の例であ いる事を示唆する。しかし,ドライエッチングはエッチ ると考えると,このような表面波を同図B点で観測する ング条件やフォトリソグラフィ行程などの周辺技術に大 と,その周波数特性は(1)式で与えられる。
∴驚㌫蕊蕊隠㍑:熈 H(ω)一嘉一(一・ωx字) (1)
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0
入力側 出力側 入 くし形電極 くし形電極 力
信 _ 号 …自 o畑一50
〜 弾性 出 i軽
麺当 z・召 璽
U ロ
号
一100
≒グ 35 45 55
周波数(MH。)・
圧電セラミックス 図一3 (1)式による周波数特性
_』』」圭と_B 彊セ,,。ク
図一1 弾性表面波フィルタ
Al膜(1。m)↓↓↓↓↓光照射
酬1/く一 [越⊆座「副ク
iX〔…X。 IX計1−一…X 勺現像
・ 1 {
塑
レジスト剥離 @エッチングゼ
iA−1 A−A計「…一 [竺占⇔[当
1 l l コ コ
コ コl l l 図一4 SAWフィルタの製作手順 図一2 δ関数モデル
エッチング装置の概略図を図一5に示す。
本実験では電極指間隔4,電極指交差幅Wの一定な この装置を用いてCCI4とHeガスを導入しながら 正規形くし形電極を用いた。 ロータリーポンプによって反応室内を減圧しておく。こ このような電極を入出力電極に用いると,出力側で観 こで下部電極に高周波電力を印加すると,反応室内にグ 測される周波数特性は(1)式より図一3のようになる。 ロー放電が起こる。このとき,CCI4は(2)式のように解 離して化学的反応性の高い励起状態のC1*(塩素ラジカ 3.実験方法
ル)となっている。
3.1SAWフィルタの製作手順
CCI4===CCl∫十Cl*十e− (2)
試料製作手順を図一4に示す。
十分に洗浄した圧電セラミックス上に,厚さ1μmの このイオン,ラジカルと電子の質量の違い,また下部電 Alを蒸着法又はスパッタ法によって堆積させる。つづ 極側のブロッキングコンデンサのために下部電極は負に も
いて乾燥,レジスト塗布,プリベーキング,露光,現像, 帯電する。そのためCCI『イオンは加速されスパッタリン ポストベーキングを行った後,その試料をエッチング装 グ(物理反応)を行う。
置内にいれ,高真空中でプラスマによりドライエッチン 解離したCCl『やCl*とAlが次のような化学反応を起 グを行い,ひきつづき02プラスマによりレジスト剥離 こし,蒸気圧の高い物質になり試料表面から離脱する。
(アッシング)を行う。次に,微細加工精度に大きな影
CCl3十Al−AICI3↑十C 響を及ぼすドライエッチングについて詳しく述べる。
3Cl*十Al−AICI3↑
3.2 ドライエッチング
本実験では「反応性イオンエッチング」装置を用いた また,Al膜表面には500 A程度の非常にエッチング速
ので,反応性イオンエッチングについて述べる。 度の遅いAl203膜が存在している。この膜の除去には,
CCI∫が表面を衝撃し,還元して次のような反応が起こる。 ここでエッチング速度は次のように測定する。膜厚の異 なる二つの試料を用意し,それらを同時にエッチングす
Al・°・+2CClま2AlCl・↑+C°↑+C°・↑ @ る.薄い方のAlが消失してから厚い方のAlが消失す
このため,基本反応がイオンによるスパッタリングで るまでの時間を測定する。その時間で二つの試料の膜厚 ある「プラズマエッチング」では,Alのエッチングは 差を割った値をエッチング速度とする。このような方法 行われない。 をとったのはAl表面にあるAl203のエッチング時間を 以上がドライエッチングの基本的反応である。ここで 除くためである。
H.は(2)式で表される平衡状態を右側に進め,CClrやCl* この図より反応室内圧力が増加すると,ある値までは の発生を促す働きをする。 エッチング速度が増加する。これは圧力の増加にとも 3.302プラズマによるレジスト剥離 なってガス分子数が増加し,それにつれて活性化原子,
レジスト膜の剥離は次のように行う。ドライエッチン 例えばCl*,が増加してエッチングが進むためである。
グを行った後ひきつづき真空室内に酸素ガスを導入し, また,高圧域でエッチング速度が遅くなるのは・高周波 プラズマ状態にして酸素ラジカルを発生させる。この酸 電力が一定であるためにCCI4の解離する量が一定とな 素ラジカルによってレジスト膜は次式のようにCO2お り,相対的に電離度が低下するためである。この結果よ よびH20となり試料表面より離脱する。
CエHgOz十〇*−CO2↑十H20↑ 15
4.実験結果および考察 合 41 ドライエッチングの条件 ミ °票10
以上に述べたようにプラスマに試料を長時間さらすと, 自 スパ・タリングによって離に損傷を受けると考えられ 亘 る。そこで,もっとも速くエ・チングのできるエ・チン 饗 グ条件を決定する・ただし・ここで用いた言式料は蒸着に よ5
よってAlを堆積させた・ え
あらかじめエッチング条件は次のようにしておく。
反応室内圧力 8・OPa ・ 反応室内圧力(九)
高周波電力 200W 図一6 エッチング速度の圧力依存性 ガス流量 CCl4;75SCCM
He;5SCCM
まず,ガスの流量,高周波電力を一定にしたときの, 8 反応室内圧力とエッチング速度の関係を図一6に示す。
導入 ガス
盲 旦6 ロータリー 世
試料 ポ・プ 欝
14 H 高周波電源
〜 2
ζ繋;グま磁グ ・… 7・ 9・
全ガスに対するHe濃度(%)
図一5 ドライエッチング装置概略図 図一7 エッチングのガス流量比依存性
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り最もエッチング速度が大きいのは8.OPaの時である。 に示す。また電極のSEM写真を写真一1,写真一2に 次に,反応室内圧力を8.OPaとして,ガスの流量は変 示す。これらの写真を見ると,蒸着による電極の方は非 えずに高周波電力を変化させてエッチングの状態を観察 常にきれいにエッチングされているが,スパッタによる すると,高周波電力が200W未満の場合,エッチングが 方は表面がざらついておりエッヂも直線的でない。しか 行われないことが分かった。 し,フィルタ特性についてスパッタによる方が多少リブ そこで,反応室内圧力を8.OPa,高周波電力を200W ルが多いようであるがあまり違いは見られない。これは としたときの,CCI4とHeガスの流量とエッチングに スパソタによって堆積するAl粒子が蒸着によって堆積 要する総時間の関係を図一7に示す。ここでエッチング するAl粒子よりエネルギーが大きく均一な表面が得ら 総時間とはプラズマが発生してからエッチングが終了す れないためと考えられる。しかし本実験で製作した電極 るまでの時間のことである。この図より,CCI4 線幅一定の正規型電極フィルタではこの電極の損傷があ 50SCCMのHe濃度 28%,すなわちHe 20SCCMの まり影響しないということが分かる。
場合が最もエッチング時間が短いことが分かる。 以上のことよりSAWフィルタの製作には蒸着法によ 同様の実験をスパッタリングによりAlを堆積させた りAlを堆積させる方がよいことが分かる。
試料についても行い,最速のエッチング条件を得た。結 またアッシング時間,エッチング時間のフィルタ特性 果は蒸着によりAlを堆積させた場合と同じ値になった。 への影響を図一10,図一11に示す。
すなわちエッチング条件は,反応室内圧力8.OPa,高周 アソシング時間はフィルタ特性には特に影響を与えず,
波電力200W, CCI450SCCM, He 20SCCMとなっ 電極形状も表面が少しざらついているが特に大きな損傷 た。ただし,エッチング時間は少し蒸着の場合より長い。 はなかった。
4.2 フィルタ特性および電極形状への影響 また,エッチング時間が10分を過ぎると電極が消失し 蒸着・スパッタによってAlを堆積させ,それぞれの 始める。フィルタ特性は,10分では挿入損失は大きく 条件によって試料を製作しフィルタ特性および電極形状 なったが,通過域の波形はあまり変わらなかった。これ
を観測した。それぞれのフィルタ特性を図一8,図一9 はマスクパターンが重み付けのない正規型のくし形であ
0
命
)− T0 で
皿圃
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一100
4 0
37 41 45 49 53 37 41 45 49 53 一100
周波数(MH。) 周波数(MH。)
図一8蒸着によるフィルタの特性 図一9ス・v。タによるフ,ルタの特性
露鴻 息ぷご∴㌘ 雛義盤ノ露難鍵1
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滋 ○㌶ 議 ., ^ 輸 諺灘 ,⊇ … ・一 宏ノ: た灘 渋
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㌻.二 ・ ㌶ 。 彩
写真一1 蒸着による電極 写真一2 スパッタによる電極
0 0
リプル 3 硲『 °
@「挿撒
一10 _
−30 運一20 サイド。一フレベル 1
20 40 60 アッシング時間(min)
図一1・アッシング時間のフ・ルタ特性への影響 一8 。 8 16 °
サセプタンス(mS)
図一12電極のサセプタンスとフィルタ特性の 関係
硲一1° @「挿入損失
孟一,。
楚
一30 サイド。一ブレベル C・
0 4 6 8 10 エッチング時間(min)
図一11 エッチング時間のフィルタ特性への影響 図一13 並列表示等価回路
G。(ω)
り,トリプルトランジットエコー(TTE)など考慮し Y=G。(ω)+元{ωC T+B。(ω)}
ていないために多少電極が細くなっても電極ピッチさえ G。(ω)=G。 (sinエ/コc)2 変わらなければフィルタ特性は変化しないのであろう。 B。(ω)=Gα〃{(sin2コc−2コc)/2エ2}
4.3電極のインピーダンスとフィルタ特性の関係 ただし,Gご=(4/π)κ2ω。C。1V2 SAWフィルタに外部マッチング回路を取り付け入力 コc=1Vπ(ω一ω。)/ω。
側出力側にサセプタンスを同時に変化させ中心周波数 CT=NC、
45MHzでのメインローブリプル,挿入損失,サイド K:電気一機械結合係数 ローブレベルを測定した。(図一12) N:電極指数
挿入損失,サイドローブレベルはサセプタンスに依存 C、:電極指1対当りの静電容量 しないが,メインローブリプルは8mS付近で大きく減 と表せることが分かっている。
少するのが分かる。このことより,SAWフィルタはミ この理論式にCTとKを代入した理論値とネット スマッチング状態で使用する方が良いことが分かる。 ワークアナライザーを用いた実験値を比較する。その結 4.4等価回路による検討 果を図一14に示す。ただし,CTとKは別の方法で測 次に蒸着によってAlを堆積させて製作したくし形電 定し, Cτ一40.3pF, K2=2.6%であった。
極の電気的特性を調べる。 G。(ω)が中心周波数付近で少しずれているがこれは W.Smithらによると,くし形電極は図一13のような CTとKの測定値のバラつきによる誤差の影響と考え
電気的等価回路に表すことができる1)。正規形電極につ られる。このことを考慮すると理論値と実測値はほぼ一
いては,電極の電気的アドミタンスYは 致していると考えられる。つまり,蒸着によってAlを
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