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社会的視点から保育を問い直す:社会保育学の試み

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社会的視点から保育を問い直す:社会保育学の試み

著者 三国 和子

抄録 本稿は、2016年5月に第69回日本保育学会で行った 自主シンポジウムをまとめたものであり、指定討論 者の中西新太郎氏にあらためて執筆いただいた。

2015年度から2016年度にかけて名寄市立大学特別枠 支援を受けて行った研究の一環である。

雑誌名 社会保育実践研究

号 1

ページ 1‑2

発行年 2017‑03‑24

出版者 名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科

論文ID(NAID) 120006342823

URL http://id.nii.ac.jp/1088/00001666/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

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彙報

第 69回日本保育学会自主シンポジウム

「社会的視点から保育を問い直す-社会保育学の試み」

本稿は、2016年5月に第 69回日本保育学会で行った自主シンポジウムをまとめたものであり、指 定討論者の中西新太郎氏にはあらためて執筆いただいた。2015年度から 2016年度にかけて名寄市立 大学特別枠支援を受けて行った研究の一環である。

趣旨説明 三国和子

(名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科)

2016年4月名寄市立大学保健福祉学部に社会保育学科が設置された。社会保育学科は「社会保育学」

という新しい学問領域の開拓を謳っている。発表者らは、社会保育学は保育学と全く別なものではな く、これまでの保育学よりも社会的視点を強調した保育学の一潮流であると考えている。もちろん保 育を対象とする学問であることにかわりはない。

まず「保育」についての概念をとりあえずは次のように規定したい。

「保育は 18歳未満の子どもを対象とした保護養育である」

今のところ学校教育とは区別し小学校以上の学校教育は含めないが、

その性質上幼稚園教育は含む。それは、乳幼児を対象とした保護養育の 中には教育的作用が含まれるからである。このような保育と学校教育と

の関係は右図のように表すことができる。なお、保育の対象を「18歳未満」とすることは、保育学会 が「乳幼児の」と限定していることとは整合しない。

さて、このように規定した保育をめぐる背景をごくごく大雑把に見てみると、少子化に対応する子 育て支援政策、保育士不足に対応する保育政策が敷かれ、昨年4月に子育て新制度がスタートしたと いう現状がある。これら一連の流れで浮かび上がるのは「転換期」というキーワードである。たとえ ば、平成 27年度全国保育士養成セミナー全国保育士養成協議会第 54回研究大会主題「新制度と保育 の「新」と「真」-保育の原点から考える 変わりゆくこと、変わらないことー」の設定理由では、

「2015年は、保育界の転換期・変革期に当たるといっても過言ではないと思います」と述べられてい る。また、本学会(日本保育学会第 69回大会)「乳幼児期の教育/保育の再構築 -研究と実践と政 策を越境するー」の案内には、「日本の幼児教育は転換期にあります。2015年度から開始された子ど も・子育て支援新制度は、我が国の 20世紀後半から 21世紀にかけての時代の何度目かの転換期であ りましょう」と書かれている。このように、多くの保育関係者は保育をめぐる昨今の状況を「転換期」

ととらえていることが分かる。

こうした「転換期」に際し、これもまた多くの関係者が指摘しているのは、保育の「量的拡大のみ ならず質的向上(保障)を」という課題である。またさらに、「そこでの課題は・・(中略)・・全ての 乳幼児に質の高学校教育/保育を提供することを目指して、その制度・法律・パラダイム、養成課程 やそれに基づく実践、研究等を問い直し、再構築していくこと」(前掲の保育学会案内)である。この 課題に対し、我々は保育を社会的視点から問い直したいのであり、「社会保育学」という新しい学問領 域の開拓を試みるのである。

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ところで、保育の転換期にかかわる議論の中には子どもの存在の見えない論調も散見するが、我々 は子どもの育ちを中心に置き「社会で育てる」ことの意味を追究するという立場をとる。もちろんこ れまでの保育学の歴史において社会的視点が欠落していたわけではない。たとえば、古くは戦前「社 会的教育学」1を著わしている城戸幡太郎が「社会中心主義」を唱えており、これに続く研究者も多く いた。その中の一人と言えるのが、本学の前身である市立名寄短期大学を最後の勤務先とした小出ま みである。小出は、「子育て支援」ということばがまだ一般的ではなかった 20年以上前に子育て支援 の先進国であるカナダをフィールドに研究し先駆的な役割を果たした。亡くなった直後に出版された

『地域から生まれる支えあいの子育て』2は保育学会の文献賞を受けている。社会保育学は、これら先 人たちの仕事を引き継ぎ発展させるものである。

こうした社会保育学の問題意識は特殊なものではない。昨年7月、東京大学に発達保育実践政策学 センターが設立されたが、このセンターの長は日本保育学会の現会長でもある秋田喜代美氏である。

氏はこの3月に出版されたばかりの『あらゆる学問は保育につながる 発達保育実践政策学の挑戦』3 の序章で「乳幼児期の保育のありかたは、保育者と子どもの関係性や各園のあり方の問題だけではな く、社会で向かうべき大きな課題である。待機児童の入所問題などに典型的にみられるように、自治 体や国、あるいはグローバルな国際社会の政治や政策というマクロな制度的環境やそのデザインが子 どもの発達のあり方を大きく方向付ける時代となってきている」と述べている。我々の問題意識と大 きく重なっていると言える。

ここで保育学研究の動向をみてみよう。下のグラフは保育学会での発表を分野ごとにま とめたものである。作成時に第 67回及び第 68回のデータがなかったため少し古くなってしまうが傾

向は大きく変わらない。

これによると、まずほとん どは「保育内容」「保育方 法」、乳児保育、障がい児保 育等、保育そのものに関する 分野であり、他に「保育者養 成」「子育て支援」が少しあ る。しかし、「保育制度・保 育行財政」「児童福祉・児童 の人権など」といった社会的 視点からの発表はごくわずか である。社会保育学を提唱す るのはこういったところを補 強したいためでもある。

そこで本シンポジウムでは「社会的視点から保育を問い直す」こととし、まず①子どもの育ちを阻 害するものは何か子どもの育ちの現状をとらえる。そして②子どもの育ちの課題についてどこに視点 を置くのかを提案し③子どもの育ちの保障を保育の質の保障から検討する。最後に④保育の新たなあ り方に関してひとつの提案をしていく。

1 城戸幡太郎「社会的教育学」『岩波講座 教育科学』第

20

冊,岩波書店、1933

2 小出まみ『地域から生まれる支えあいの子育て』,ひとなる書房,1999

3 秋田喜代美監修・山邉昭則/多賀厳太郎編『あらゆる学問は保育につながらる 発達保育実践政策学の挑戦』東京大 学出版会,2016年,3頁。

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