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関する探索的検討 : 短期大学生の防衛スタイル及 び愛着型との関連性の検討から

著者 松田 久美

雑誌名 北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin

of Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University

巻 12

ページ 1‑11

発行年 2020

URL http://doi.org/10.24794/00003264

(2)

研究論文

トドラーの顔表情からの感情読み取りの規定 要因に関する探索的検討

−短期大学生の防衛スタイル及び愛着型との関連性の検討から−

松田 久美

北翔大学短期大学部こども学科

本研究の目的は,「トドラーの顔表情に対する反応の個人差」(以下,「感情読み取り特性」)

と防衛スタイル,及び愛着型との関連性の検討を通して,「感情読み取り特性」の規定要因を 探ることであった。分析対象は,子どもを持つ学生を除いた 名であった。防衛スタイルと 愛着型との相関分析の結果,「成熟した防衛」と「安定」との間,「未熟な防衛」と「アンビバ レント」,「回避」のそれぞれとの間,「神経症的な防衛」と「アンビバレント」との間に正の 相関が示された。また,感情の読み取り特性と防衛スタイル,及び愛着型との相関分析の結 果,「明瞭な快表情からの快感情の読み取り」と,「神経症的な防衛」との間に正の相関が示さ れた。一方,「曖昧な顔表情」から「驚き」の感情を読み取る傾向と,「成熟した防衛」,「未熟 な防衛」,「回避」的な愛着型のそれぞれとの間に負の相関が示され,「曖昧な顔表情」から

「喜び」の感情を読み取る傾向と「神経症的な防衛」との間に負の相関が示された。これらの 結果から,トドラーの顔表情からの感情の読み取りが,防衛スタイルや愛着型に規定される可 能性が見出された。

キーワード:感情の読み取り,明瞭な顔表情,曖昧な顔表情,防衛スタイル,愛着型

Ⅰ.問 題 と 目 的

泣き顔,笑顔といった「明瞭な顔表情」からは,人種 を超えて,たとえ異なる文化圏であっても一致した感情 が読み取られることが明らかにされている(Ekman,

)。また,Emde and Sorce( )で は,「明瞭な顔表情」からは,写真の子どもの母親では ない母親も,写真の子どもの母親と同様に,表情が発す る情緒信号を他の感情とはっきりと区別して認識し,

「楽しさ」を読み取った場合には遊び相手をしてやる,

「苦悩」を読み取った場合にはなだめるといった同様の 養育行動をとろうとすることが示された。また,母親自 身の子どものものではない,別の子どもの顔表情を刺激 として用いた場合でも,それが明瞭な表情であるなら ば,「母親」という母集団に共通した感情の読み取り反 応を調べることが可能であることも実験結果から示唆さ れた。

一方,快・不快が「曖昧な顔表情」に対しては,見る 人によって解釈が分かれ,読み取り方には個人差があら わ れ や す い こ と が 報 告 さ れ て い る(Butterfield,

;平 野・森・井 上・濱 田・深 津・滝 口・小 此 木,

;向後・越川, ;小原, ;Pollak, Cicchetti, Homung, & Reed, 2000)。例えば,「虐待リスク」の高 い母親は,「曖昧な顔表情」から快感情を読み取りやす いとされる(Butterfield, 1993)。また,様々なパーソナ リティ特性や,精神疾患,過去の対人関係の経験よっ て,幼い子どもの感情や意図を歪曲した形で認知してし まう「認知のバイアス」との関連性も個々の事例を通し て確認されている(Forgas, 2000, 2001;濱田, 池 田, ;Izard, ;Magai & McFadden, Tomkins, )。濱田( )においては,子どもが 薄っすらと微笑んでいる写真から,健常群が「喜び」を 感じ取っているのに対して,統合失調症群は「ポーズ」

や「作り笑い」などと捉える例が多く,幼い子どもの笑 顔の下に別の意味が隠されているかのような過剰な解釈

(3)

が認められている。また,認知のバイアスは,過去の対 人的な経験からもたらされる記憶の想起とも関わるとさ れる(例えば,Forgas, 2000, 2001;Izard, 1991)。例え ば,Pollak et al. )は,身体的虐待を受けていた子 どもが大人のニュートラルな顔表情から「怒り」を読み 取る傾向に認知のバイアスを認め,それについて,養育 者が露呈する怒りの表情を目にする頻度が高いために,

他者が表出する顔表情に対する偏った認知の仕方を子ど もが学習した可能性があるとしている。「曖昧な顔表 情」はまた,ある種の感情状態が,「他者が発した情動 表出の知覚・認知にもたらす一定の選択性(以下,感情 認知の選択性)」(emotion-specific perceptual blindness

/readiness)(Malatesta & Wilson, 1988)とも関わるこ とも確認されている(Pollak et al., 2000;松田,2006,

2007,2008,2009a,2009b;Matsuda & Adachi,

2011)。それは,ネグレクトを受けていた子どもが大人 のニュートラルな顔表情を「悲しみ」として読み取る傾 向(Pollak et al., 2000)や,乳児の曖昧な顔表情から母 親 自 身 が 普 段 抱 え が ち な 感 情 を 読 み 取 る 傾 向(松 田, a, b;Matsuda & Ad- achi,2011)と し て 認 め ら れ て い る。Pollak et al.

)は,ネグレクトを受けた子どもが示した,大人 のニュートラルな顔表情から「悲しみ」を読み取る傾向 が,自分が抱え続けた感情経験の結果として生じた「感 情認知の選択性」である可能性を示唆している。また,

松 田( a, b)は,例 え ば,

怒りや苛立ちを感じている個人は,相対的に他者の怒り や不快といった表情に敏感になる一方で,ポジティブな 情 動 表 出 に あ ま り 注 意 を 向 け な く な る 可 能 性(遠 藤, ),あるいは,どのような感情としても解釈さ れる曖昧な顔表情への選択的な感情投影の結果として説 明している。

以上から,顔表情から感情を読み取る際に生じる個人 差(以下,感情読み取り特性)を捉えることは,その次 の行動が子どもの健全な成長を促すものとなりうるかど うかのスクリーニングにも役立つと考えられる。そこ で,被験者の負担が少なく,客観性の高いデータ処理過 程によって「感情読み取り特性」を測定する指標の作成 を目指し,よちよち歩きの時期の 歳代前半の乳幼児

(Toddlers:トドラー)の顔表情を採取,及び収集し た。「明瞭な顔表情を用いた刺激(以下,明瞭な刺激)」

の選定には,Ekman( )と向後・越川( を参考とし,「曖昧な顔表情を用いた刺激(以下,曖昧 な刺激)」の選定には,快としても不快感情としても読 み取られる顔表情であることを条件とした。トドラーの 様々な顔表情に対する反応を捉える実験を重ね,「トド ラーの感情認知検査(Interpretations of Toddlersʼ Facial

Expressions Test=ITFET)」を 作 成 し た(松 田,

,松 田・安 達, )。そ れ は,「明 瞭 な 刺 激」と「曖昧な刺激」から成り,「明瞭な刺激」は,快表 情・驚きの表情・不快表情が各 枚ずつの計 枚,「曖 昧な刺激」は,快・不快が曖昧な顔表情全 枚で構成さ れる(Figure )。「明瞭な刺激」は,「誰もが同じ感情 を読み取る顔表情から一般的な感情の読み取りをどのく らいするか(以下,感情読み取りの一般性)」の指標で あり,「曖昧な刺激」は,「快感情としても不快感情とし ても読み取られる顔表情から個人としてどのような感情 をどのくらい読み取るか(以下,感情読み取りの個別 性)」の指標である。また,明瞭な刺激が,感情読み取 りの「一般性」を,曖昧な刺激が感情読み取りの「個別 性」を測定し得るということを示す内的妥当性と,各指 標によって得られた反応傾向が一般化され得ることを示 す外的妥当性が確保されているかについても確認された

(松田・安達, )。

本研究の目的は,以上に述べた「感情読み取り特性」

と,心理状態の安定と関わる「防衛スタイル」,及び,

安全感と関わる「内的作業モデル」との関連性の検討を 通して,「感情読み取り特性」の規定要因を探ることで ある。

防衛機制とは,自分を脅かすような出来事や欲望や恐 れなど,心理状態を不安定にさせるものに対して,過度 な不安から自分を守るために,実際の知覚を変化させて 対処する無意識の過程である(Freud, )と される。また,どういった防衛機制を用いるかという個 人差を,Andrews, Singh, & Bond( )は「防衛ス タイル」と呼び,「未熟な防衛」,「神経症的な防衛」,

「成熟した防衛」の つの因子に分類した。「未熟な防 衛」には,不安や葛藤,衝動を身体症状として表現する

「身体化」や,「自閉的空想」,自分の中にある受け入れ たくない不都合な感情や衝動を,他人のものだと思う

「投影」,「解離」などが含まれ,不適応的な防衛機制と されている(例えば,江上, )。「神経症的な防衛」

は,「エセ愛他主義」や,無意識の中に抑圧されている 強い感情や衝動が,意識できる側面で正反対の傾向と なって行動などにあらわれる「反動形成」などを下位概 念とする。防衛機制は神経症の症状形成機制となる(例 えば,中西, )とされることから,「神経症的防衛」

を用いるほど,神経症の発症傾向が高まると考えられ る。「成熟した防衛」は,性的欲求や攻撃的欲求といっ た反社会的で認められない強い感情や欲求を,社会的・

道徳的に認められる形に転換する「昇華」,フロイトが 最も高度な自己防衛機制とした「ユーモア」,不快な体 験や考えを無意識に押し込み,忘れさせる「抑制」など を下位概念とし,適応的な防衛機制とされている(例え

(4)

ば,江上, )。

内的作業モデル(=Internal Working Model:IWM)

とは,安全感を設定目標とした愛着対象との持続的な相 互交渉を通して人の内部に形成される他者と自己の関係 に関する心的表象を指し,アタッチメント行動の個人差

(アタッチメント・スタイル)をもたらす個人特有の心 的ルールである(例えば,Bowlby,

;Collins & Read, ;久保,

;戸田, )。それは,発達に伴って出会う愛着 対象との愛着に関連した個々の出来事が個人の内部に体 制化され,対人関係のテンプレートとして適用されるよ うになるとされる(例えば,Bowlby,

;数井・遠藤・田中・坂上・菅沼, ;詫摩・

戸 田, ;戸 田, )。こ う し た 過 程 を,Bowlby

)は「IWM 仮説」として論じ,愛着対象 についてのモデルと自己についてのモデルは,実際には 相補的関係にあるとした。以上のように,「内的作業モ デル」は,構成概念であり,潜在変数であることから,

Experience in Close Relationships inventory scale の邦 訳(中尾・加藤, )の一般他者(General Others)

版(以下,ECR-GO 尺度とする)などの尺度により,観 測変数としての「アタッチメント・スタイル(以下,

『愛着型』と呼ぶ)」が測定されている。こうした中,

内的作業モデル尺度(以下,IWM 尺度とする)を用い て,「愛着型」を求め,一般大学生のアレキシサイミア 傾向と防衛スタイルと愛着型の三者間の関係を検討した 研究があり(津山・中山, ),「回避」的な愛着傾向 が高いほど,「未熟な防衛」を用い,「成熟した防衛」は 用いない傾向にあるという結果が得られている。このこ とから,本研究においても,愛着型が「回避」的である ほど,「未熟な防衛」スタイルを用い(仮説 ),「成熟 した防衛」スタイルを用いない(仮説 )という結果が 得られることが予測される。

他方,表情認知に関する研究の中には,IWM 尺度を 用いて測定した「愛着型」との関係を検討した研究は見 当たらないが,ECR-GO 尺度によって測定した「愛着 型」と成人の顔表情刺激に対する情報処理機能との関連 を検討した以下のような研究がある。金政( ),島

),島・福井・金政・野村・武儀山・鈴木( は,大学生を対象とした調査において,ECR-GO 尺度を 用いて測定した「愛着型」と,成人の顔表情による「明 瞭な刺激」と「曖昧な刺激」に対する反応との関係を検 討した。その中で,「見捨てられ不安」が低い人や「親 密性の回避」が低い人はネガティブ及びニュートラルな 顔表情を,よりポジティブな感情として評価する(金 政, ),「親密性の回避」傾向にあるほど,真顔や快 表情からさえネガティブな情動を読み取ってしまう」

(島, ;島ほか, )という結果が得られてい る。また,戸田( )では,ECR-GO 尺度の下位概念

「親密性の回避」と IWM 尺度の下位概念「回避」との 間,ECR-GO 尺度の下位概念「見捨てられ不安」と IWM 尺度の下位概念「アンビバレント」との間に,それぞれ 高い正の相関が示されている。以上の結果から,本研究 において,IWM 尺度を用いて求める「アンビバレン ト」傾向,及び「回避」傾向が低いほど,「不快表情」

及び「曖昧な表情」から「快感情」を読み取り(仮説

),「回避」傾向にあるほど,「快表情」及び「曖昧な 表情」から「不快感情」を読み取る(仮説 )ことが予 測される。さらに,津山・中山( )において示され た「回避」傾向と,「未熟な防衛」との正の関係,「成熟 した防衛」との負の関係,及び,金政( ),島( ),

島 ほ か( )に お け る,「親 密 性 の 回 避」と「ネ ガ ティブ及びニュートラルな顔表情に対する感情の評 価」,「真顔や快表情からの感情の読み取り」の関係か ら,「未熟な防衛」を用いる傾向にあるほど,快表情や 曖昧な表情から不快感情を読み取り(仮説 ),「未熟な 防衛」を用いない傾向にあるほど,また「成熟した防 衛」を用いる傾向にあるほど,「不快表情」及び「曖昧 な顔表情」を,「快感情」として評価する(仮説 )こ とが予測される。

以上の つの仮説の検証を通して,卒業後には,幼い 子どもの養育に深く関わる保育者になることを目指す学 生たちのトドラーの顔表情に対する「感情読み取り特 性」と,「防衛スタイル」と「愛着型」の関係を捉え,

「愛着型」や「防衛 ス タ イ ル」が,「感 情 読 み 取 り 特 性」を規定する可能性を検討していく。

Ⅱ.方 法

.分析対象者

教育実習,保育実習実施前の保育者志望の短期大学部 の学生のうち,回答欄に記入漏れのあった学生,及び子 どもを持つ学生を除外した 名(女子 名,男子 名)を分析対象とした。教育実習,保育実習実施前の学 生を対象としたのは,実習生としての「養護」や「教 育」の経験による「感情読み取り特性」への影響を排除 するためであり,子どもを持つ学生を除外したのは,母 親によるトドラーの顔表情からの感情の読み取りと,学 生によるそれとの間には差があることが示されている

(松田, ;松田・安達, )ためである。

平均年齢は, . 歳(SD= . )であった。

(5)

.材 料

乳幼児(トドラー)の感情認知検査(松田,

,松田・安達, ) 歳代前半の男児 人,女児 人から採取した表情写真 枚から成り,明瞭な表情刺 激 は 枚(快 表 情 枚,不 快 表 情 枚,驚 き 表 情 枚),曖昧な表情刺激は 枚であった。誰が見ても偶然 以上の確率で同じ感情として捉えられる「明瞭な表情刺 激」に対する反応から感情読み取りの「一般性」を測定 し,快感情と不快感情に評価が分かれる「曖昧な表情刺 激」に対する反応から感情読み取りの「個別性」を測定 する(Figure )。なお,表情写真の使用に関しては,

保護者からの承諾書と,実験者からの誓約書を交わして いる。

防衛スタイル尺度(中西, ) 項目から成る質問 への回答から, 種類の防衛機制を測定し,「未熟な防 衛」,「神経症的な防衛」,「成熟した防衛」の 因子に分 類される。

A)明瞭な表情の例 B)曖昧な表情の例 Figure 顔表情刺激

内的作業モデル尺度(詫摩・戸田, ) の質問項 目から成り,内的作業モデル(Internal Working Model

=IWM)の質を説明するために,「愛着型」を測定する 尺度であり,「安定型」,「回避型」,「アン ビ バ レ ン ト 型」の 因子に分類される。

.手続き

保育者養成を行う短期大学での授業の中で,学生に協 力を依頼して実験調査を実施した。実験は,以下の手順 で行われた。まず,スコアシートと質問紙(計 枚)を 配布し,その表紙に印字された同意文を読み上げ,口頭 で同意を得た。同意文には,「回答が他の人にわかるこ とはない」こと,「調査結果は,調査 者 の 論 文(報 告 書)の形にまとめられるためだけに用いられ,その他の

目的に使用されることはない」ことが明記されていた。

同意を得た後,同じく表紙にあるフェイスシートに,年 齢と性別を記入してもらった。次いで,スクリーンに説 明書きを映し出しながら,画像呈示方法について解説し た。スクリーンに最初に映し出されたのは,「この子 は、いまどんな気持ち?」という文字であり,スコア シートの初めの行にも,同じ言葉が他の行の文字よりも 大きく印刷されていた。画像呈示では,予鈴(チャイム 音)とともに画面に番号を映し出し,秒間呈示した後,

顔写真が一枚 秒間呈示され,続く 秒間のうちに直前 の表情が「うれしい」(喜び),「かなしい」(悲しみ),

「おこっている」(怒り),「いやだなぁ」(嫌悪),「びっ くり」(驚き),「こわいよぉ」(恐れ)のうちのどの感情 を表していると思うか,一つだけ選択して,スコアシー トの該当箇所に,「とてもそう思う」場合には◎を,「そ う思う」場合には○印を,「ややそう思う」場合には△

を付けてもらった。本試行に入る前に,練習として 試 行行い,手順を確認した。 試行 秒で,本試行では全 部で 試行行った。また,本試行では,明瞭な刺激と曖 昧な刺激を交互に呈示した。調査協力者の半数への呈示 順序と,もう半数への呈示順序を逆にすることにより,

カウンターバランスをとった。教示を含め,実験に費や した時間は約 分であった。続いて,「防衛スタイル尺 度」の質問項目に対しては, 件法によって回答を得,

「内的作業モデル尺度」の質問項目に対しては,件法に よって回答を得た。質問紙調査に要した時間は 分程で あった。

.データ処理

まず,明瞭な刺激(快表情 枚,不快表情 枚,驚き の表情 枚),曖昧な刺激(顔表情 枚)ともに,○印 が付けられた感情は「 」,それ以外の感情は「 」と して,反応分布を求め,明瞭な刺激に対する反応分布を Table に,曖昧な刺激から各感情として読み取った割 合を Figure に示した。

.得点化

続いて,分析対象である 名の「感情読み取り実 験」及び「質問紙調査」における回答は以下のように得 点化した。

Table 感情読み取り特性の記述統計量

一般性 個別性

不快 驚き 喜び 悲しみ 嫌悪 怒り 驚き 恐れ

平均値

標準偏差

(6)

0 5 10 15 20 25 30

႐ࡧ ᝒࡋࡳ ᎘ᝏ ᛣࡾ 㦫ࡁ ᜍࢀ

.感情読み取り特性の得点化

「感情読み取り特性」のうちの「一般性」は,「明瞭 な刺激」(快表情 ・不快表情 ・驚きの表情 )に対 して,「どれほど一般的な評価をするか」を意味した。

したがって,「一般性」得点は,明瞭な顔表情と「対応 する感情をどの程度の強さで読み取るか」により求め た。具体的には,基本的 感情のうちから選択されたそ れぞれの刺激に対する回答を,「快感情(喜び)」,「不快 感 情(悲 し み,嫌 悪,怒 り,恐 れ の い ず れ か)」,「驚 き」にコーディングし,特定されている感情に△印が付 け ら れ た 場 合 に は「 」,○印 に は「 」,◎印 に は

「 」を与えた。明瞭な刺激(快表情 ・不快表情 ・ 驚きの表情 )のそれぞれに対する最大得点は 点ずつ であった。一方,「個別性」得点は,「曖昧な刺激」から

「どのような感情を,どのくらい読み取る傾向にある か」を示した。例えば,「喜び」得点は,曖昧な顔表情 を「喜び」としての読み取り傾向を表し,「悲しみ」得 点は,「悲しみ」としての読み取り傾向を表した。各顔 表情について 感情から選択し,該当欄に記入した感情 が△印で記されている場合には 点が,○印で記されて いる場合には 点が,◎印が記されている場合には 点 が与えられた。計 枚の刺激に対する 感情の得点の分 布は,曖昧な顔表情に対する各々の学生の反応傾向(ど のような感情として読み取る傾向を持つのか)を表し た。各感情としての読み取り得点は ~ 点の間で変動 した。「感情読み取り特性」の「一般性」と「個別性」

の記述統計量を Table に示した。

.防衛スタイルの得点化

「 .私に全然あてはまらない」から「 .私に全く あてはまる」の 件法で求めた回答を, 〜 で得点化 した。逆転項目はないため,全ての項目についてそのま まの方向で加算して,「未熟な防衛」,「神経症的な防 衛」,「成熟した防衛」の つの因子(下位尺度)ごとの 合計得点を算出した。記述統計量を Table に示した。

また,各因子のα係数は,未熟な防衛が. ,神経症的 な防衛が. ,成熟した防衛が. であった。

.愛着型の得点化

「 .全くあてはまらない」から「 .非常によくあ てはまる」の 件法で求めた回答を, 〜 で得点化し た。逆転項目はないため,全ての項目についてそのまま の方向で加算して,「安定」,「回避」,「ア ン ビ バ レ ン ト」の つの因子(下位尺度)ごとの合計得点を算出し た。記述統計量を Table に示した。また,各因子のα 係数は,安定とアンビバレントはどちらも. であり,

回避が. であった。データ処理,得点化後の統計処理 には,IBM SPSS Statistics を使用した。

Table 明瞭な刺激に対する反応分布(N=

表情 感 情

不快 驚き

( )

( )

不快

( )

( )

驚き

( )

( )

注)数値の単位は%,( )内の数値は総得点であり,反応総度

数を示している。

Figure 曖昧な刺激を各感情として読み取った割合 注)誤差線は標準誤差,縦軸の単位は%を表す。反応総度数は

(7)

Ⅲ.結 果 と 考 察

まず,防衛スタイルと内的作業モデルとの関係を検討 した。その結果,「成熟した防衛」スタイルと「安定」

した愛着型との間には正の相関が示された( =. ,

<. )。また,「未熟な防衛」スタイルと「アンビバレ ント」な愛着型との間( =. , <. ),「回避」的な 愛着型との間( =. , <. )にも正の相関が示され た(Table )。これらの結果は,「回避」や「アンビバ レント」といった不安定な愛着型であるほど,「未熟な 防衛」を用いることを示しており,これにより,「回避 的な愛着型であるほど,『未熟な防衛』を用いる」とい う仮説 は支持された。一方,「愛着型が『回避』的で あるほど,『成熟した防衛』を用いない」という仮説 を直接支持する結果は得られなかったものの,「安定」

した愛着型であるほど「成熟した防衛」を用いることが 示され,「安定」した愛着型ではないほど「成熟した防 衛」を用いないということが示された。ことから,不安 定な「愛着型」であるほど,「成熟した防衛」を用いな いことが示唆されたと考えられる。また,「神経症的な 防衛」スタイルと「アンビバレント」な愛着型との間と の間に正の相関( =. , <. )が示され,愛着が,

自己に対しても他者に対しても信頼と不信を併せ持つ

「アンビバレント」な傾向にあるほど,神経症の発症傾 向が高まることが示唆された。さらに,対人関係のテン プレートとしての機能と関連する「愛着型」と,精神の 安定を図ろうとする無意識の方略パターンとしての「防 衛スタイル」との関係を示した以上の複数の結果は,力 動的な精神療法が奏功せず(Sifneos, 1973;Taylor,

),自分自身の感情状態の認知に困難さがある(例 えば,Taylor, 1994)アレキシサイミア傾向が高い大学 生ほど,「成熟した防衛」を用いず,「未熟な防衛」を用 いる(津山・中村, )という結果と「愛着型」との 関連,すなわち,「アレキシサイ ミ ア 傾 向」と「愛 着 型」との関連を予測させるものでもあると考えられる。

次に,感情の読み取り特性と愛着型との関連性を検討 し た。「感 情 読 み 取 り 特 性」の「一 般 性」及 び「個 別 性」の デ ー タ の 分 布 が 正 規 分 布 に 近 似 し な か っ た

(Shapiro-Wilk の正規性の検定)ため,相関分析にはス ピアマンの順位相関係数の検定が用いられた。その結 果,感情の読み取りの「一般性」と「愛着型」との間に は全く関係が示されなかった(Table )。一方,感情 読み取り特性の「個別性」と愛着型との間には,「驚 き」としての読み取りと「回避」との間に負の相関が示 された( =−. , <. )(Table )。これらの結果 からは,「『アンビバレント』傾向,及び『回避』傾向が 低いほど,『不快表情』及び『曖昧な表情』から『快感 情』を読み取る」という仮説 も,「『回避』傾向にある ほど,『快表情』及び『曖昧な表情』から『不快感情』

を読み取る」という仮説 も支持されなかった。しか し,快・不快感情のどちらにも分類される感情でもあ り,どちらにも属さない感情でもある「驚き」として読 み取らない傾向と,他者を拒否的な存在として捉え,自 己充足的である「回避型」との関係が示され,トドラー の曖昧な顔表情を,快感情としても,また「慰め」など の大人からの援助を必要とする不快な感情状態としても 特定しない傾向にあるほど,対人関係に関する回避的な 表象を持たないことが示唆された。

続いて,感情の読み取り特性と防衛スタイルとの関連 性を検討した。ここでも,相関分析にはスピアマンの順 位相関係数の検定を用いた。その結果,防衛スタイル と,感情の読み取りの「一般性」における「快表情から の快感情の読み取り」と「神経症的な防衛」スタイルと Table 各尺度の平均値( ),標準偏差( ),得点範囲(range),信頼性係数(α),項目数(items)

range α items 防衛スタイル

未熟な防衛 -

神経症的な防衛 -

成熟した防衛 -

愛着型

安定 -

回避 -

アンビバレント -

Table 防衛スタイルと愛着型の相関分析(Pearson)結果 防衛スタイル

未熟な防衛 神経症的な防衛 成熟した防衛 愛着型

安定 -. -. . *

アンビバレント . * . ** -.

回避 . ** -. -.

<. ** <. )

(8)

の間との間にのみ,正の相関( =. , <. )が示 され,「不快表情からの不快感情の読み取り」,「驚き表 情からの驚き感情の読み取り」との間には,全く関係が 認 め ら れ な か っ た(Table )。こ れ ら の 結 果 か ら,

「『未熟な防衛』を用いる傾向にあるほど,『快表情』や

『曖昧な表情』から『不快感情』を読み取る」という仮 説 ,及び「『未熟な防衛』を用いない傾向にあるほど,

また『成熟した防衛』を用いる傾向にあるほど,『不快 表情』及び『曖昧な顔表情』を,『快感情』として評価 する」という仮説 における防衛スタイルと感情読み取 りの「一般性」に関する仮説は支持されなかった。しか し,「『神経症的な防衛』を用いる傾向にあるほど,『明 瞭な快表情』から快感情を強く読み取る」ことが示され たことから,神経症傾向と快感情への敏感さとの関連が 示唆された。一方,「曖昧な表情」からの感情の読み取 り方の個人差である「個別性」と防衛スタイルとの間に は,「喜び」としての読み取りと「神経症的な防衛」ス タイルとの間に負の相関( =−. , <. )が示さ れ た(Table )。ま た,「驚 き」と し て の 読 み 取 り と

「未熟な防衛」ス タ イ ル( =−. , <. ),「成 熟 した防衛」スタイルとの間( =−. , <. )にも 負の相関が示された(Table )。

これらの結果から,「『未熟な防衛』を用いない傾向に あるほど,また『成熟した防衛』を用いる傾向にあるほ ど,『不快表情』及び『曖昧な顔表情』を,『快感情』と して評価する」という仮説 における防衛スタイルと感 情読み取りの「個別性」に関する仮説も支持されなかっ た。しかし,「神経症的な防衛」を用いるほど,唯一の 快感情である「喜び」を読み取らないことが示され,神 経症の発症傾向が高いほど,「快感情」としての読み取 りをしないという,「明瞭な快表情」に対して示された

「敏感さ」とは逆方向の相関関係が認められた。この結 果はまた,「虐待リスク」が高いほど,育児不安が高い ほど「曖昧な顔表情」から快感情を読み取りやすい(But- terfield, ;小原, )といった結果とも逆の相 関関係を示すものであった。

さらに,「曖昧な表情」からの「驚き」の感情として の読み取りと,不適応的な防衛機制とされている「未熟 な防衛」(例えば,江上, )との間,及び,適応的 な防衛機制とされている(例えば,江上, )「成熟 した防衛」との間に負の相関が示された。「未熟な防 衛」は,不安や葛藤,衝動を身体症状として表現した り,空想することで対処したり,自分の中にある受け入 れたくない不都合な感情や衝動を,他人のものとするこ とにより心の安定を図る方略であり,「成熟した防衛」

は,不道徳的な感情や欲求,不快な体験や考えを無意識 にコントロールすることにより心の安定を図る方略であ る(例えば,中西, )。したがって,この結果は,

問題と対峙しない,「すり替え」とも言える未熟な方略 を用いるほど,また,自らの感情や欲求,行動を無意識 に律する成熟した方略を用いるほど,快・不快のどちら にも分類される感情とも,どちらにも属さない独立した 感情とも言える「驚き」としての読み取りをしないこと を示唆するものであると考えられる。

Ⅳ.総 合 的 考 察

本研究において,トドラーの「曖昧な顔表情」からの

「驚き」としての読み取りは,「防衛スタイル」との間 にも,「愛着型」との間にも相関関係を示した。「驚き」

は,快・不快感情のどちらにも分類される感情とも,ど ちらにも属さない感情とも捉えられ,幼い子どもが「驚 き」の感情を抱いているとすることは,その子どもが快 感情に満たされているとも,不快な気持ちでいるとも特 定しないことを意味する。すなわち,「驚き」の感情と しての評価は,大人の側に即座の対応が求められるよう な読み取りではなく,「あら,びっくりしてる」とした きり,子どもとの距離を保っていたとしても,大人に罪 悪感などの心理的負担を生じさせない読み取り方とも言 える。松田( )における母親を対象とした研究にお いては,トドラーの曖昧な顔表情から「驚き」の感情を 読み取りやすい傾向と,情動知能の「自己対応」,「対人 Table 「感情読み取り特性」と「防衛スタイル」及び「愛着型」の相関分析(Spearman)結果

一般性 個別性

不快 驚き 喜び 悲しみ 怒り 嫌悪 驚き 恐れ

成熟した -. -. -. -. -. -. *

未熟な -. -. -. *

神経症的 . ** -. * -. -.

安定 -. -. -. -. -.

アンビバ -. -. -.

回避 -. -. -. -. -. * -.

<. ** <. )

(9)

対応」,「状況対応」という三つの下位概念のうちの「対 人 対 応」と「状 況 対 応」と の 間 に 正 の 有 意 傾 向(

=. , < .)が示され,他者に対応する能力が高 く,自分を含む集団が置かれた状況に臨機応変に対応す る能力が高いほど,「もう少し様子を見ましょう。対処 の仕方については,そのあとで判断しましょう」とでも 表現されるような,大人の側に精神的な余裕がもたらさ れた結果としての円滑な対処を期待した能動的な操作と しての読み取りをする可能性が示唆された。このこと と,本研究において得られた,トドラーの曖昧な顔表情 から「驚き」の感情を読み取りやすい傾向と,「未熟な 防衛」,「成熟した防衛」スタイル,及び「回避」的な愛 着型との関係性とを重ね合わせると,精神的な安定を図 るための防衛的方略を用いる傾向にあるほど,また,対 人関係に「回避」的であるほど,能動的な操作としての

「驚き」としての読み取りをしないことが示唆されたと 考えられる。

また,トドラーの「明瞭な快表情」から明確に,より 強く「快感情」を読み取るほど,「曖昧な顔表情」から

「快感情」を読み取らないほど,「神経症的な防衛」を 用いる傾向にあることが示された。このことは,「明瞭 な快表情」から発信される「快感情」に対する鋭敏さ と,「曖昧な表情」からの「快感情」の読み取りの乏し さの両方が,「神経症的な防衛」と関わることを意味し ていた。これらから示唆されるのは,「快感情」に対す る接近と回避とも言える両極端な反応と神経症の発症傾 向との関わりであると考えられる。さらに,以上に述べ た「感情読み取り特性」と「愛着型」,及び「防衛スタ イル」との間に示された複数の相関関係から,「愛着 型」と「防衛スタイル」は,「感情読み取り特性」の規 定要因である可能性が見出された。

一方,「『アンビバレント』傾向,及び『回避』傾向が 低いほど,『不快表情』及び『曖昧な表情』から『快感 情』を読み取る」という仮説 ,「『回避』傾向にあるほ ど,『快表情』及び『曖昧な表情』から『不快感情』を 読み取る」という仮説 ,「『未熟な防衛』スタイルを用 いる傾向にあるほど,快表情や曖昧な表情から不快感情 を読み取る」という仮説 ,「『成熟した防衛』スタイル を用いる傾向にあるほど,『不快表情』及び『曖昧な表 情』を『快感情』として評価する」という仮説 はどれ も支持されなかった。このことは,実験に用いた刺激 が,成人の顔表情ではなく,トドラーの顔表情であった ことに起因している可能性も考えられる。すなわち,成 人の顔表情を用いて検証した場合には,仮説 ,仮説

,仮説 ,仮説 を支持する結果が得られる可能性も 考えられ,これらを改めて検討することが今後の課題で ある。そしてまた,以上の仮説の再検討は,「成人の顔

表情」に対する反応と「トドラーの顔表情」に対する反 応とが異なるという予測に基づくものでもあるが,その 検証もまた,今後の課題である。

最後に,本研究における分析対象の学生は,教育実 習・保育実習を未経験の保育者志望の学生であった。今 後は,教育実習・保育実習を経験した後には,「感情読 み取り特性」に変化は生じるのか,生じるとしたなら ば,それはどのような変化であるのか,様々なパーソナ リティ特性との関連の仕方もまた,変わっていくのかと いった検討,並びに,養育者の「感情読み取り特性」と 保育者の「感情読み取り特性」との比較検討を予定して いる。そうした検討を重ねることにより,養育者として

「育児」や「子育て」を経験するということと,実習生 として,さらには保育者として「養護」や「教育」を経 験するということとの違いが生み出すいかなる変数が,

子どもの感情状態の読み取りにどのように関わるのかに ついて明らかにしていきたい。

Ⅴ.引 用 文 献

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An investigation of a determinant in the interpretations of toddlersʼ facial expressions:from the relevance between

college studentsʼ defense style and attachment style

Abstract

The purpose of this study was to investigate of a determinant in the interpretations of toddlersʼ facial expres- sions from the relevance between college studentsʼ defense style and attachment style. A total of 114 college stu- dents completed the experiment with ʻtoddlersʼ picturesʼ and two kinds of ʻquestionnaire surveyʼ. Results showed a positive correlation in each of the following relationships : ʻmature defenseʼ style and ʻsecureʼ attachment, ʻimmature defenseʼ style and ʻambivalentʼ, ʻavoidantʼ and each of the styles, and ʻneurotic defenseʼ style and ʻambivalentʼ attach- ment. Additionally the interpretations of toddlersʼ ʻclearly positive facial expressionsʼ were positively correlated with ʻneurotic defenseʼ style. On the other hand, the tendency to interpret toddlersʼ ʻambiguous facial expressionsʼ as surprise is negatively correlated with ʻmature defenseʼ style, ʻimmature defenseʼ style, and ʻavoidantʼ attachment.

And also the tendency to interpret toddlersʼ ʻambiguous facial expressionsʼ as joy is negatively correlated with ʻneu- rotic defenseʼ style. These results suggest the possibility that the interpretations of toddlersʼ facial expressions are determined by the relevance between defense style and attachment style.

Key word : interpretation, clear facial expressions, ambiguous facial expressions, defense style, attachment style

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