VOG
高橋克昌・古墨信彦
シンポジウム 2 r平衡機能評価に応用できる最近の技術」
VOG
高橋克昌・古墨信彦
VOG
Katsumasa Takahashi, Nobuhiko Furuya Department01Otolaヮngology) Gunma Universìり
Video-oculography (VOG) is one of the newest techniques for recording eye moveュ ment ofthe horizontal, vertical and torsional components. In the basic confìguration, eyemovements are obtained by a CCD videosensor
,
input into a computer,
and simultaneously recorded for analysis. VOG facilitates the non-invasive measurement of eyetorsion,
online recording of eye movement and quantitative analysis of nystagュ mus. Special half-mirrored goggles enable measurement ofeye movement under visual stimulation, such as in the eye tracking test and optokineticnysta伊nus. The disadvanュ tages ofVOG areas follows: impossible to record when eyesare closed or when there are eyelashartifacts, di伍cult to record in those who have narrow eyes and cannot keep their eyeopen,
and inadequate for studying rapid eye movements such as saccades or fast phases ofnystagmus. Horizontal and verticaleye movement can be easily recorded,
so it is applicable to clinical use, whereas the recording ofeye torsion is under development This paper presents some examples of VOG recording.Key words: video-oculography, VOG, electro-nystamography, ENG, eye movement
はじめに Video-oculography(VOG) は, CCD カメラで 映した眼球の画像をコ ンビュ ータ処理して眼球運 動を記録する。 Electro-nystamography (ENG) にかわる, 新しい眼球運動記録法として注目 され ている l)-4)o ENG は,眼振を他覚的に記録し, 頭位変化や視覚刺激による誘発眼振検査にも適し てレるため,臨床検査装置として広く使われてい る。 しかし反面 p 汗で検査中に電極が剥がれた り,筋電図など眼球運動以外のノイズが混入した りすることもある。また,末梢性前庭障害で重要 L 眼球運動の回旋成分が記録できない欠点があ る。 VOG では電極を使用 Lないため, 電極に付 群馬犬学医学部耳鼻咽喉科学教室 随するこれらの問題を解決している。医療機器と して認可された製品もあり,今後は眼球運動記録 機器として汎用されると思われる。 VOG の原理 CCD カ メラから入力された眼球画像は,コン ピュータ上で虹彩と瞳孔との白黒コ ント ラストで 最適に 2 値化され,円としての瞳孔が捉えられ る。次に最大の径となる水平・垂直方向の直交す る 2 線から瞳孔中心点を求める。正円に近い瞳孔 を小さな点( ドット )の集まりと捉え,両方向で 最長の ドット を含む線を直径とみなL ている。眼 球運動時は瞳孔中心点が偏移し, 水平・垂直成分 の眼球運動として記録される (図 l 左)。 瞳孔径 を正し く 円として捉えているか検者が確認して, 最適な 2 値化がなされるよう徴調整を加える以外
Equilibrium Res Vol.62(3) 水平・垂直成分 回旋成分 図 1 眼球画像の認識方法 左水平・垂直成分は瞳孔中心を求める。 右:回旋成分は虹彩紋理のパターン偏移か ら求める。 は, コンピュータが自動的に瞳孔中心を決定す る。対して回旋成分の記録は多少煩雑で,検者の 意図が必要である。瞳孔の周辺には,虹彩紋理と 呼ばれる独特な紋様がある。この紋様の最も特徴 的な部分を検者が選び出して基準パター ンとす る。眼球運動時に,瞳孔中心を中心点として基準 パターンが回旋する角度を計算して,回旋成分を 記録する(図 l 右)。具体的には,瞳孔中心決定 までは前述の方法で行い,次に,瞳孔中心を中心 点として扇形の図形を選択する。扇形の弧の部分 に虹彩紋理が通るように,検者が意図的に作図す る。弧が通る部分の白黒コントラストをグラフ化 して,その強弱が十分に大きい場合,コンビュー タが基準パターンとして認識し,眼球運動中にそ の偏移を追跡することが可能になる。コン ト ラス ト差が少ないと,他の虹彩紋理の映像と区別がつ き難く,コンピュータが認識できない。 CCD カ メ ラからの映像を見て,最もコ ント ラスト差が出 そうな箇所で扇形図形を作図することが大切であ る。グラフ化されたコン ト ラストを確認しつつ, 納得するまで最適なパタ ンを探すと, ノイズの 少ないきれいな記録ができる。 回旋成分の記録方法は,上記 Scherer らめ の 方法の他にも幾っか報告されている。代表的なも のでは Yagi ち 2 ) のように,基準として選んだ 虹彩紋理の中心座標と瞳孔中心とがなす角度か ら, 回旋成分を求めるもの,池田ら 4 ) のよ うに虹 彩紋理全体のパターンを認識し,座標変換の原理 から回転軸座標を求めて,回旋角度を計算するも のなどがある。 また,眼球画像の取り扱い方として,本稿で説 明している よ うにリアルタイムで解析して,眼球 運動を記録する Scherer らめの方法の他にも, 一旦,眼球画像をビデオテープに記録後,改めて コンピュータに読み込んで解析する方法J) 2)4) が ある。私の考えでは,臨床使用にはリアルタイム の VOG が望ましいと思う。コンピュータ画面上 で眼球運動の実映像を確認しつつ,眼振波形を記 録でき,しかも直ちに解析結果が出ることは, ENG にはない魅力であると思われる。 VOG の利点と欠点 利点と欠点を表 l にまとめた。回旋成分の記録 が, VOG の最大の矛Ij点と言われている。回旋成 分の記録にはサーチコイルも使われるが,磁場発 生装置に頭部を置くための運動制限,コ ンタク ト レンズ装着による眼違和感などの欠点、がある。 VOG ではゴーク、ルを装着するのみであり,非侵 襲的で運動制限もない。良性発作性頭位眼振の 3 次元解析に威力を発揮している九しかし我々の 経験では,虹彩紋理の模様に濃淡差がなくて,ど う しても記録できない被検者がし、る。 黒い瞳の東 洋人と比較して,虹彩紋理の色が薄い西洋人の方 が,理想的なバターンが得られるようである。ま た験裂が狭い,すなわち細目の被検者の記録は困 難なことがある。験裂が極度に狭い被験者でも, 瞳孔中心までは隠れないので,水平・垂直方向は 記録できる。しかし記録中によりいっそ う験裂 が狭くなり,基準とした虹彩紋理部位を上下眼股 が覆って しまい,回旋成分の記録ができないこと もある。我々はテープで上眼験を吊り上げて対応 している。回旋成分の記録については,いまだ技 術的に改善の余地があると思われる。 普段,臨床で使用していて感じる利点は,記録 が電子化されることである。デジタル記録なの で,検査後に各項目のスケールを変更し,必要な 箇所を選んでプリン ト アウ トすることが可能で、あ る。 ペーパーレス環境にあり,データを患者 ID で整理してコ ンビュータ内に管理することができ る。アナロ グ記録の ENG につきものの,扱いに く く保管の大変な記録紙の束から解放される。 VOG の欠点と しては, 閉眼での記録ができな いこと, 急速眼球運動の記録がサーチコイルや
表 1 VOG の利点、と欠点、 利点 目旋成分の記録が可能 定量的解析が容易 リアルタイムでの解析が可能 記録の電子化 検査後にスケール変更が可能 ペーパーレス環境 眼位の較正が容易 被検者への侵襲がない 電極が不要 汗や筋電図の混入がない 検査時間の短縮 ENG の DC 記録に及ばないこ とが挙げられる。 多くのリアルタイム解析の VOG システムが,画 像の記録に 60 フレーム/秒 (fps ) 以下を採用して いる。 ヒ卜の目は残像のため, 10数 fps の頻度で 静止画を見せられると動いているように見えてし まう。実際,映画フィルムでは 24 fps を採用し ている。 60 fps あれば,我々の 目には滑らかな動 画と見えるが,しかし眼球の急速相は非常に速 く, 60 fps ではフレー ム落ちして記録されない眼 球運動もあると思われる。ビデオ記録後に解析す る VOG システムには,急速眼球運動を記録する ために 300 fps 程度を採用しているものもある。 装置の実際 我々が使用している機器は 2D-VOG ver.5, 3Dュ VOG ver. 2 ( SMI 社, ドイツ)で, 視覚刺激装 置と同期した解析装置からなる。視覚刺激の投影 には大画面のテレビモニタ←を使用し,両眼の赤 外線 CCD カメラからの画像は,専用 PCI ボー ドから解析装置に入力される (図 2 下段)。ゴー クソレは眼前にノ\ーフミラーが挿入され, CCD カ メラは外側に装着されることで,被検者は正面視 が可能になる。眼前のモニターで視覚刺激を受け つつ,眼球運動が記録できるようになっている (図 2 上段)。遮関すれば非注視下の記録ができ る。安定した記録にはゴーグルが頭部にしっかり 固定され,正確に瞳孔を捉えることが不可欠であ る。ゴーグノレがずれると,較正した眼位もずれて しまう。また上眼験の鹿毛が, 瞳孔中心を捉える 欠点 閉眼での記録が不可能 開眼を維持できない被検者は困難 (子供や痴呆老人) 捷毛によるアーチファクト (ビューラーによる対策) 験裂が狭い被検者では困難 人工水品体挿入患者でのずれ 回旋成分記録の不安定 急速眼球運動記録の限界 図 2 ゴーグ、ノレとシステム構成図 上段:ハー フミラー方式の ゴー グノレの原 理。 段. システム構成。
Equilibrium Res Vol.62(3) 際にノイズになるので,化粧用のアイラッシュ カーラー(ビューラー)で検者が鹿毛を上方にカー ルさせている。 ルーチンでは ENG と同様に水平・垂直方向の 眼球運動を記録している。検査のはじめに,視覚 刺激装置から較正点をモニター上に投影し被検 者に注視させることで較正を行う。左上方から右 下方へそれぞれ 15度の投影で,水平・垂直方向同 時に較正を済ませることができて,容易である。 注視下・非注視下での自発眼振,頭位・頭位変 換眼振を記録した後に,視標追跡検査, 2 点交互 注視検査 p 視運動性眼振検査,最後にカロリック 検査を行う手順をルーチンとしている。電極を貼 る手聞がなく,較正も容易なのに加え,各種視覚 刺激検査がコンビュータ制御で速やかに施行され るので, ENG と比較すると,検査の所要時聞が 大幅に短縮される。視標追跡検査ではモニター上 の点を,水平方向または斜行性に,当速度もしく は加速度をつけて振ることができる。 2 点交互注 視検査では視標の点を,モニター上で斜め方向に ランダムに急速に動かすことで,水平方向と垂直 方向との急速眼球運動を同時に記録することがで きる。視運動性眼振は水平方向もしくは垂直方向 に,当速度で刺激パター ンを提示する。我々は 15 度/秒, 30度/秒, 45度/秒の異なる 3 種の速度で, 左右(上下)方向各々に提示している。刺激パター ンは,一般的な格子模様の他に, Random dot pattern や子供の検査用に絵を一定方向に連続し て流すことができる。カロリック検査は,ゴーグ ルに遮閉板を取り付けて非注視下で行う。 当施設 では,事前に 20 0 C 冷水にてフレンツェル眼鏡下 にカロリック検査を受け,その持続時間や単位時 間あたりの眼振数に左右差がある患者が VOG 検 査を受けるので, VOG 下では 4 0 C 冷水で刺激を 与える。冷水注入で左右各々の最大緩徐相速度が 計算されるので,簡易検査としては温水注入は省 略している。 回旋成分がみられる患者は, 3D-VOG 用のマ スクに交換して前述のように虹彩紋理の基準パ ターンを選択してから,検査が始まる。 3D-VOG 記録は非注視下でのみ行われ,視覚刺激を与えな がらの回旋成分の記録はできない。 解析の例示 記録の実際を示す。脊髄小脳変性症の患者で, 神経内科より眼振の精査目的で紹介となった。水 平方向の自発眼振が認められ,検査する時によっ て眼振の方向が変化した。 VOG 下で自発眼振を 観察していると,当初は左向き水平性眼振であっ たが,その振幅が徐々に小さくなり,止り,今度 は右向き水平性眼振が始まった(図 3 上段)。グ ラフ第 1 段目は水平方向の眼位を表し, 2 段目は その緩徐相速度を表す。定期的に眼振の方向が変 わると考え,記録終了後に画面上の時間経過(横 軸)を 30秒から 5 分間に変更してみた。水平方向 の緩徐相速度をみると周期的に眼振の方向が変わ り, しかも速度は徐々に上がってピークを越すと 徐々に下がって停止する,いわゆる周期性方向交 代性眼振であると判明した(図 3 下段)。図 3 の 画面は視覚刺激を要しない注視眼振などの検査に 使用するモードであり,画面が右から左に動いて 図 3 自発眼振検査 上段:時間経過 (横軸) を 30秒,水平方向 の眼位と緩徐相速度のみ示した。 下段 :時間経過(横軸)を 5 分に延長し, 水平方向の限位,緩徐相速度, 垂直 方向の眼位,緩徐相速度を示した。
いき, ENG で紙送りしつつ記録するのに類似し ている。画面の最上段には,コンピュータが自動 計測した左右眼毎の平均緩徐相速度,最大緩徐相 速度,眼振の頻度,総眼振数がリアルタイムで示 される。 ENG と異なるのは図 3 のように,検査 後に振幅(縦軸) ,時間経過(横軸)を変化させ て解析を行えたり,希望する項目を希望のスケー ルで、印刷したりできることである。 以下は健常者での記録を示す。視標追跡検査で は,画面左に視標と実際の眼位,緩徐相速度が色 違いで表示される。 画面右には視標の動きに対す る実際の眼球の動きの利得 (Gain) が表示される (図 4 上段 )0 2 点交互注視検査では,画面左下に 視標と水平・垂直方向の実際の眼球の動きが示さ れ,左上に視標の動きに対する眼球の遅れ (Latency) や眼球運動速度の平均計測値が,画面 右には各項目が散布図として表示される (図 4 下 段)。 視運動性眼振検査でほ,画面左に各視覚刺 激に対する眼位が示され,画面右上に各視覚刺激 毎の平均緩徐相速度,利得 (Gain) が示され F 右 下にグラフ表示される(図 5 上段)。カロリック 検査では,画面左に実際の刺激に伴う眼位が示さ れF 画面右下に緩徐相速度がグラフ化される(図 5 下段)。図 5 下段の被検者は右前庭神経炎で右 の半規管麻痔のある方で,最上段の右耳冷水刺激 では眼振はほとんど描出されず,緩徐相速度グラ フで左上 (右耳冷水) の山型は右下 (左耳冷水) の山に比較して明らかに低い。コンピュータが計 算した最大緩徐相速度は画面右上に示され,右耳 が 5.97度/秒,左耳が24.25度/秒であった。 次に回旋成分の解析の 1 例を示す。水平性頭振 り眼振は,末梢前庭系の左右不均衡を示唆する。 両側の半規管に平等に加わった半規管刺激は,速 度蓄積機構に蓄えられ,刺激停止と共に急速に放 出される。その際,左右の不均衡が眼振として発
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.. "...・.. 掴墨 制 B h ・・ 2・圃圃剛・ ・ ・闘 ,~ 山 桐 帽、 ,,,、 -,'" し“司C Eミ -・叫 ..民 J h・h 図 5 図 4 上段視標遺跡検査。 下段 2 点交互注視検査。 崎舛 麻 管 規 半 耳 。右 査 検 査 振検 眼 ク る 性ツ れ 動リ ら 運 ロみ 視カ が 段段 上下62(3) 1 . Equilibrium Res Vo 図 6 頭振り眼振における回旋成分の記録 上段から,垂直成分,水平成分, 回旋成分。頭振り終了後,水平成分の眼振に加えて, 回旋成分の眼振が 記録されている。 現する 6 )0 CCD カメラ下で頭振り眼振を観察する と,水平成分のみならず回旋成分をみることがあ り,今回, VOG にて記録を試みた。末梢性の前 庭障害で片側に半規管麻痔があり,水平方向の頭 振り眼振で 10発以上の眼振を認める ものの,自発 眼振は認めない患者 9名に対し,頭振り眼振を行 った。被検者は椅子に座って頭部を 30度前屈し 水平方向に 2 回/秒の頻度で 30 回頭振 りを行い, 眼球運動を記録した。患者 9 名中 4 名に何らかの 回旋成分が記録された。図 6 に一例を示す。上段 から垂直方向,水平方向,下段が回旋成分の眼振 である。はじめの 15秒間の激しい波形は頭振り 中 である。刺激停止 5 秒後から水平方向の眼振が徐 徐に大きくなってレき, 45秒以上続いてレる。回 旋成分は 20秒後から 15秒間程度記録されてレる。 市販機器の紹介 我々はドイツの SMI 社 (http://www.smi.de!) が研究開発し,デンマーク の Interacoustic 社が 販売する 2D-VOG , 3D-VOG を日本代理店の (株)モンテ システム ( http://www. monte.co.jp ) を通して購入した。その他,調べ得た限り ではフ
ランス Bionic 社 (http://www.bionic . es/veonys.
htm ) の VEONYS ,フラ ンス METROVISION
社 (http://www.metrovision.fr!) の MON VOGlI
VOG2 ,アメリカ SYNAPSYS 社 ( http;//www. synapsysusa.com./products.html)の TORSIO , VIS IO などが挙げられる。日本のモリ タ製作所 はゴーグノレ内に加速度計を内蔵し,眼球運動と同 時に頭部運動の角速度を計測するニスタモ 21 を販 売している。 文献
1) Yamasobe S, Taira S, Morizono T , et al: Eye
movement analysissystem usingcomputerュ izedimage recognition. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 116:338-341 , 1990
2) Yagi T , Yamasobe S, Morizono T , etal:
Three components analysis ofeyemovement using computerized image recognition. Acta Otolaryngol Suppl (Stockh) 481: 460-462 ,
1991
3) SchererH, Teiwes