絵画における装飾的画面構成の研究
教科 ・領域教育専攻 芸術系(美術)コース 御 手 洗 朔
作品の要旨 1.はじめに
音楽や演劇、映像作品と違い絵画作品は 時間経過を含まない。時間経過を含まない 作品は時間経過を含む作品と比べて情報量 やアクセントなどの作中での表現の幅が少 なくなりがちでどうしても見劣りしてしま うのではないかという懸念が以前からあっ た。私は絵画制作に取り組むにあたってそ れらのことを考慮し、絵画作品といえども 上記の時間経過を含む表現作品と比較して も遜色の無いようなものに仕上げたいと考 えた。
2.制作にあたって
時間経過を含む表現作品に見劣りしない 作品を制作するうえで、細部の描き込みや 装飾性の高い画面構成などを積極的に取り 入れ制作することによって鑑賞者の目を引 くことのできる変化に富んだ作品を目指し た。作者の主観的、幻想的、空想的な世界 観を画面に持ち込むことで奇想美を作品に 取り入れることを試みた。作者の主観的な 世界観が鑑賞者にしっかりと伝えられるよ うにするために具象表現という手段を用い、
感覚的な形のないものを鑑賞者にも視認す ることができるように心がけた。
また「日常と非日常」の距離感を意識し て作中の世界観を設定してやることによっ て、繊細な美しさと奇想的な美しさを共存
指 導 教 員 鈴 木 久 人
させ、鑑賞者の目を引く仕掛けを織り込ん だ。
作品の主役となる人物、その人物を取り 巻く周囲の環境、有機的な曲線のフオノレム を持つ空想上の物体などを画面に構成する モチーフとして扱った。モチーフはその立 体感をある程度無視しアウトラインを重視 し平面的に扱った。モチーフを平面的に扱 うことによって、アウトラインによる画面 の構成そのものを強調した。現実の世界に 存在しないものをモチーフとして扱うこと によってアールヌーボーや琳派の作品に見 られるような装飾性や画面の賑やかさを演 出することができ、画面全体に奇想美が醸 し出されると考えた。
「赤ずきんJ(図1)は童話「赤頭巾」か ら着想を得て、赤ずきんに現代の日本の女 性像を投影した作品である。赤ずきんの周 囲をきのこや切り株のような実在するモチ ーフの他に、未知の生物の内襲を思わせる 有機的なフォルムを持つモチーフで構成し た。
3.制作過程
「時雨J(図2)は文字通り雨を題材にし た作品であるが、あえて雨粒そのものを措 かず、その代わりに「時雨」という言葉か ら私自身が連想する図像をモチーフとして
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描くことによって、奇想、かっ装飾的な画 面に構成にすることを目指した。
ここからは「時雨jの制作過程を段階別 に説明してし、く。
支持体については、細かな描き込みを行 うため支持体自体に強度があり、 また、描 線の描き消しが自在なものが好ましかった のでパネルに水彩紙を水張りしたものを用 いた。パネルの材料に用いたシナベニヤは 波打ちを起こしにくい 3ミリ厚のものを使 用した。
下描きとなる線画は鉛筆によって行なっ た。鉛筆は紙を傷めないような硬さのもの を使用した。下描きとなる線画を描き終え たら着彩の作業に移行した。
着色は線画のフオノレムを生かしつつ、繊 細かっ変化に富んだ表情に仕上げたかった ので、 主な画材として透明水彩絵の具を用 いた。 一度着色をすると下描きの線を消す ことができなくなるため必要のない線は着 彩を始める段階で全て消すことにした。着 彩には「にじみJの技法を用いた。水を含 ませた筆で着色を施したい箇所をなぞり、 その面が十分に濡れたら絵の具の付いた筆 で数回触れてやる。そうすることで水で濡 れた面に筆先からじわりと絵の具が広がっ ていき、手描きでは意図的に出すことので きない絵肌で着色することができる。着色 時は水や絵の具が下に垂れてこないように パネルを水平に寝かせて着色した。
「にじみJによる着彩が一通り終了した 後、顔料を磨水で溶いた塗料を用いて着色 を施した。使用した顔料は主に胡粉、ある いは金属系のものである。 透明水彩絵の具
と異なる画材をあえて使用した理由は、胡 粉を混ぜた塗料を使用することによって色
面に盛り上がりが生まれ、また金属系の顔 料を使用することによって色だけでなく金 属ならではの光の反射などが生まれ、 透明 水彩絵の具による
γ
にじみj とは異なる表 情を生み出すことができるからだ。一通り着色が終了したら画面全体の明暗 や色味を調整した。また、「にじみ
J
の技法 を用いたためモチーフの輪郭がはっきりと 見えない箇所も出てきたので、そういった 箇所にはもう一度筆を入れてやり輪郭を描 き出す作業を行なった。4 .
おわりに「にじみJの技法を用いて制作したが、
一度着色した後に塗り直しができないため 着色する前の段階で明確なビジョンをもっ て作業する必要があった。また絵肌が一緒 くたにならないような配癒が必要で白あった。
今研究のテーマである f装飾的画面構成
J
であるが、奇想的な世界感を演出するため 有機的なフォバ〆ムを積艦長命に取り入れ画面 を構成した。そのフオノレムを取り入れるた めに空想のモチーフを設定したのだが、空 想のものであるため稚拙な図柄になってし まう恐れがあったため、そのラインの一つ 一つに神経を集中させる必要があった。人 の目を引くことのできる形態を的確に穣画 として描き出すことのできる描画力を鍛え ることが今後の課題である。函 1 図2
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