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木村 大口 山本 河野 : 馬鈴薯由来残渣の給与が肉豚の発育と肉質に及ぼす影響 120 緒 言 食品資源の再生利用等の促進に関する法律 ( 平成 12 年法律第 116 号 : 略称 食品リサイクル法 ) の施行により 食品工場より排出される日切れ品 在庫調整品等の食品廃棄物は 食品循環資源として飼

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馬鈴薯由来残渣の給与が肉豚の発育と肉質に及ぼす影響

木村藤敬*・大口秀司・山本るみ子・河野建夫* 摘要:近年、パン屑、馬鈴薯等のでんぷん質飼料を給与することにより、筋肉内脂肪含量 の多い豚肉が生産され、食味性に優れた豚肉ができることが報告されている1,2,10)。今回、 馬鈴薯に由来する残渣を肥育豚に給与した場合の発育、と体成績及び肉質に及ぼす影響に ついて検討した。 試験は、系統三元肉豚48頭を用い、①対照区(対照飼料を給与)、②15%区(馬鈴薯由来 残渣を 15%と配合し た飼料を 給与)、③ 30%区(馬鈴薯由 来残渣を30%と配合 した飼料を 給 与)、④30%+リジン区(馬鈴薯由来残渣を30%とリジンを添加した配合飼料を給与)の4試 験区を設け、各区3反復とし、体重50∼110kg時までの間試験を行った。 1.発育成績は、試験区間で差は見られなかった。 2.枝肉成績は、背脂肪厚が30%区が厚くなり、15%区では薄くなる傾向が見られた。 3.肉質成績は、筋肉内脂肪含量が30%区で他の区より有意に多かった(P<0.05)。背脂肪 外層の融点は、30%区及び30%+リジン区で対照区より、有意に低かった(P<0.05)。ま た、背脂肪内層の融点も30%+リジン区で対照区より、有意に低かった(P<0.05)。 4.焼肉による食味官能検査は、30%区の豚肉は、対照区より有意に柔らかさ(P<0.05)、 多汁性、うま味及び総合評価(以上、P<0.01)でおいしいと評価された。 以上のことから、馬鈴薯由来残渣を配合することにより、筋肉内脂肪含量が多く、食味 に優れた高品質豚肉の生産が可能であることが示唆された。 キーワード:肉豚、馬鈴薯由来残渣、発育成績、枝肉成績、肉質成績、筋肉内脂肪含量、 背脂肪融点

Effect of Diet Including Potato By-product on Growing Performance,

Carcass Characteristics and Meat Quality in Growing-finishing Pig.

KIMURA Fujitaka, OHGUCHI Hideshi, YAMAMOTO Rumiko and KAWANO Tateo Abstract: In recent years,enriched starchness of breadcrumbs and diet including potato byproduct(PBP) produce pork of more Intramuscular fat content (IFC) and palatability. To clarify the effect on growing performance, carcass characteristics and meat quality, growing-finishing pigs were fed PBP. Forty-eight LW×D crossbred pigs weighing approximately 50kg were divided into four groups and fed one of the four diets as follows. As a control diet, corn-soybean meal based diet met all the macro and micro nutritious requirements was used. As experimental diets, 15% or 30% of the control diet replaced with PBP and 30% of the control diet replaced with PBP and added lysine was arranged. All the pigs were slaughtered at 110kg of body weight and examined those carcass characteristics and meat quality.

1. No significance was observed in growing performance.

2. The backfat thickness of pigs fed 30% PBP diet was higher than that of control. On the contrary, the backfat thickness of pigs fed 15% PBP diet was lower than that of control.

3. IFC in longissimus dorsi muscle of pigs fed the diet containing 30% PBP was significantly (P<0.05) higher than that of control group. Outer backfat melting point of pigs fed the diet containing 30% PBP were significantly (P<0.05) lower than that of control group. Furthermore, outer and inner backfat melting point of pigs fed 30% PBP added lysine diet was significantly (P<0.05) lower than that of control group. 4. The palatability test was conducted. Tenderness of the pork fed 30% PBP diet was

significantly (P<0.05) higher than that of control. Also, succulence, palatability, and comprehensive evaluation of the pork fed 30% PBP diet were significantly (P<0.01) higher than that of control.

These results suggest that pigs fed the diet including PBP get more intramuscular fat content and palatability.

Key Words: Growing-finishing pig, Potato by-product, Growing performance,

Carcass characteristics, Intramuscular fat content, Melting point of backfat

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食品資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12 年法律第116号:略称「食品リサイクル法」)の施行に より、食品工場より排出される日切れ品、在庫調整品 等の食品廃棄物は、食品循環資源として飼料等に有効 利用することが求められている。また、このような資 源を有効活用することは、食の大切さを認識したり、 地球温暖化を防ぐ循環型社会を構築するという観点に 加え、飼料自給率を向上させる大切な課題となってい る。 最近海外からのチルドでの豚肉の輸入が増加し、国 産豚肉と競合するようになりつつある。このため、豚 肉生産の低コスト化を一層推進するとともに、豚肉の 高品質化が重要と考えられる。 近年、食品残渣の一つであるパン屑や馬鈴薯を給与 することで、筋肉内脂肪含量の多い豚肉生産が可能で あることが明らかとなってきた。これは、必須アミノ 酸の一つであるリジンの含量が、低い飼料を給与する ことで、筋肉内脂肪合成が促進されるため筋肉内脂肪 含量が多くなると考えられている1,2,10) 今回、馬鈴薯に由来する残渣を肥育豚に給与し、発 育及び肉質に及ぼす影響について検討したので報告す る。

材料及び方法

1 供試豚 供試豚は愛知県で系統造成されたアイリスL2の雌に アイリスW2の雄を交配して生産されたF1母豚LWに、ア イリスナガラDを交配して2008年8月から9月に生産され た系統三元交雑種LWD48頭(雌24頭、去勢24頭)を用い た。腹、体重、性別を考慮し、雌2頭、去勢2頭の計4頭 を1群とし、4区3反復設けた。 2 試験区分 給与した飼料の組成及び成分値を表1に示した。対 照区に給与する対照飼料は、トウモロコシ─大豆粕主 体の飼料で、日本飼養標準(2005)を満たすように設 計した。試験区に給与する試験飼料は、対照飼料の重 量比それぞれ15%及び30%量を馬鈴薯由来残渣で代替し、 不足するアミノ酸(30%区で、リジンは除く)、ミネラ ル及びビタミンを日本飼養標準(2005)を満たすよう 表1 給与飼料の組成及び成分値 肥育前期(50∼70kg) 対 照 区 15%区 30%区 30%+リジン区 飼養標準(2005) 二種混 80.93 対 大豆粕 16.64 照 塩酸リジン 0.08 飼 食塩 0.25 84.50 68.90 68.60 料 第3リンカル 0.75 炭酸カルシウム 0.95 プレミックス 0.40 馬鈴薯残さ 15.00 30.00 30.00 添 第3リンカル 0.249 0.500 0.445 炭酸カルシウム 0.100 0.118 0.264 加 食塩 0.039 0.078 0.078 プレミックス 0.062 0.124 0.126 飼 塩酸リジン 0.050 − 0.207 DL-メチオニン − 0.150 0.150 料 L-トレオニン − 0.130 0.130 合計 100.00 100.00 100.00 100.00 CP(%) 15.08(104) 13.41(92) 11.78(81) 11.94(82) 14.5 TDN(%) 77.26(103) 79.17(106) 80.93(108) 80.90(108) 75.0 DE(Mcal/kg) 3.41(103) 3.48(105) 3.55(108) 3.55(108) 3.3 栄 EE(%) 3.38 3.98 4.57 4.56 養 Ca(%) 0.66(120) 0.67(122) 0.64(116) 0.67(122) 0.55 成 NPP(%) 0.28(122) 0.28(122) 0.28(122) 0.28(122) 0.23 分 Lys(%) 0.79(110) 0.74(103) 0.61(85) 0.81(112) 0.72 値 Met+Cys(%) 0.54(123) 0.47(106) 0.49(111) 0.49(111) 0.44 Thr(%) 0.57(121) 0.51(106) 0.53(113) 0.53(113) 0.47 Trp(%) 0.17(121) 0.16(114) 0.14(100) 0.14(100) 0.14 リノール酸(%) 1.60 1.62 1.63 1.63

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肥育後期(70∼110kg) 対 照 区 15%区 30%区 30%+リジン区 飼養標準(2005) 二種混 84.48 大豆粕 10.95 脱脂米ヌカ 2.42 対 コーングルテンフィード 1.80 照 塩酸リジン 0.01 84.46 69.20 69.05 飼 食塩 0.25 料 第3リンカル 0.49 炭酸カルシウム 1.00 プレミックス 0.40 馬鈴薯残さ 15.00 30.00 30.00 添 第3リンカル 0.247 0.479 0.470 加 炭酸カルシウム 0.152 0.141 0.149 飼 食塩 0.039 0.057 0.057 料 プレミックス 0.062 0.123 0.124 塩酸リジン 0.040 − 0.150 L-トレオニン − − − 合計 100.00 100.00 100.00 100.00 CP(%) 13.14(101) 11.74( 90) 10.30( 79) 10.42( 80) 13.0 TDN(%) 77.30(103) 79.07(105) 81.00(108) 81.02(108) 75.0 DE(Mcal/kg) 3.41(103) 3.48(105) 3.55(108) 3.55(108) 3.3 栄 EE(%) 3.49 4.07 4.66 4.65 養 Ca(%) 0.60(120) 0.63(126) 0.60(120) 0.60(120) 0.50 成 NPP(%) 0.24(120) 0.25(125) 0.25(125) 0.25(125) 0.20 分 Lys(%) 0.61(109) 0.58(104) 0.48(86) 0.60(107) 0.56 値 Met+Cys(%) 0.49(144) 0.43(126) 0.37(109) 0.37(109) 0.34 Thr(%) 0.49(136) 0.44(122) 0.39(108) 0.38(106) 0.36 Trp(%) 0.14(127) 0.13(118) 0.12(109) 0.12(109) 0.11 リノール酸(%) 1.63 1.64 1.65 1.65 注)二種混は、トウモロコシ98%+魚粉2%の混合飼料 ( )内は、充足率を示す に添加した。 なお、供試した馬鈴薯由来残渣の内容は、生馬鈴薯7: ポテトチップス1:コーンスターチ2を混合し、火力乾 燥させたものを使用した。 試験区は①対照区(対照飼料を給与)、②15%区(馬 鈴薯由来残渣を15%と配合した飼料を給与)、③30%区(馬 鈴薯由来残渣を30%と配合した飼料を給与)、④30%+リ ジン区(馬鈴薯由来残渣を30%とリジンを添加した配合 飼料を給与)の4区を設け、各区を3反復とした。 試験は各区の平均体重50kg時点で開始し、70kgで肥 育前期から肥育後期飼料に切り替え、110kgに到達する まで給与した。試験期間は、2008年12月上旬から2009 年2月下旬であった。 3 飼養管理方法 試験豚舎は開放式豚舎で、コンクリート平床式豚房 (一部スノコで有効床面積6.24㎡)に4頭を1群として 収容した。 各区とも不断給餌とし、飲水はニップルドリンカー による自由飲水とした。 4 調査項目 発育成績は体重、飼料摂取量を毎週1回調査し、1日 平均増体量、飼料摂取量及び飼料要求率を算出した。 と体成績は試験終了後、全頭と殺し、24時間冷蔵庫 内で冷蔵後、豚産肉能力検定のと体測定要領3) に基づい て、と体長、背腰長Ⅱ、背脂肪厚(肩、背、腰)、ロー ス断面積等を調査した。また、枝肉の評価は、社団法 人日本食肉格付協会の豚枝肉取引規格に従い格付けを 行った。 肉質は第5胸椎及び第6胸椎の2胸椎分の胸最長筋を用 い、加圧保水力、伸展率、加熱損失、圧搾肉汁率及び ドリップロスについて、豚肉の肉質改善に関する研究 実施要領4) により調査した。筋肉内脂肪含量は、牛肉の 品質評価のための理化学分析マニュアル11)に基づき、 ソックスレー法により測定した。肉色は第4、第5胸椎 間の胸最長筋を畜試式肉色標準模型(PCS)及び色差計 によりL値(明度)、a値(赤色度)、b値(黄色度)を測定 した。また、脂肪融点は背脂肪測定部位の皮下外層、 内層及び腎脂肪を採取し、上昇融点法により測定した。 食味官能検査は対照区及び30%区の豚肉(ロース)を 用い、焼肉により、かおり、柔らかさ、多汁性、うま

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味及び総合評価の各項目について評点法5)で実施した。 官能調査票を表2に示した。 5 統計処理 統計処理は一元配置法による分散分析で行い、試験 区間の差の検定はTukeyの多重検定により行った。 表2 食味官能調査票 1.性別、年齢の欄に○をつけて下さい。 男 女 20代 30代 40代 50代 60代 2.脂こい物は好きですか?5段階で評価し、該当するところに○をつけてください。 淡泊 やや淡泊 ふつう やや脂こい 脂こい 1点 2点 3点 4点 5点 悪い やや悪い ふつう やや良い 良い かたい ややかたい ふつう やや柔らかい 柔らかい パサパサ ややパサパサ ふつう ややジューシー ジューシー 少ない やや少ない ふつう やや多い 多い まずい ややまずい ふつう ややおいしい おいしい 悪い やや悪い ふつう やや良い 良い かたい ややかたい ふつう やや柔らかい 柔らかい パサパサ ややパサパサ ふつう ややジューシー ジューシー 少ない やや少ない ふつう やや多い 多い まずい ややまずい ふつう ややおいしい おいしい ご協力ありがとうございました。 うま味 柔らかさ 官能検査用紙(焼肉) かおり A B 総合評価 かおり 多汁性 多汁性 柔らかさ 3.A、Bの2つの試料について、ご自身の食経験に基づき、5段階で評価し、該当す るところに○をつけて下さい。 総合評価 うま味

試験結果

1 発育成績 発育成績を表3に示した。110kg到達日齢、1日平均 増体重、飼料摂取量及び飼料要求率は有意な差は見ら れなかった。 2 枝肉成績 枝肉成績を表4に示した。枝肉重量、と体長、背腰 長Ⅱ及びロース断面積はいずれも有意な差は見られな かった。背脂肪厚はいずれの部位も有意な差はなかっ たが、馬鈴薯由来残渣が30%配合された区が厚くなる傾 向が見られた。一方、15%区では、背脂肪は薄くなる傾 向が見られ、それに伴い、格付は上がる傾向が見られ た。なお、格落ち理由の多くは、厚脂によるものであ った。 3 肉質成績 肉質成績を表5に示した。加熱損失、圧搾肉汁率、 伸展率及びドリップロスについてはいずれも有意な差 は見られなかった。筋肉内脂肪含量については30%区で 他の区より有意に多かった(P<0.05)。背脂肪外層の融 点が30%区及び30%+リジン区で対照区より、有意に低 かった(P<0.05)。また、背脂肪内層の融点も30%+リ ジン区で対照区より、有意に低かった(P<0.05)。腎脂 肪は、有意な差は見られなかった。肉色は、有意な差 は見られなかったが、L値が30%区で高くなる傾向が見 られた。

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表3 発育成績(50∼110Kg) 区分 対照区 15%区 30%区 30%+リジン区 差の検定 開始時体重(Kg) 53.1±3.3 51.1±2.9 52.1±3.0 50.9±3.7 NS 開始日齢(日) 90.1±4.6 91.0±3.8 90.8±3.1 88.3±5.1 NS 終了時体重(Kg) 114.2±2.4 111.9±2.8 113.0±2.7 111.9±2.1 NS 110Kg到達日齢(日) 145.4±5.4 147.5±6.1 146.8±7.0 147.4±8.2 NS 1日平均増体重(g) 1022.0±0.2 1063.7±0.1 1061.7±0.1 1008.4±0.1 NS 飼料摂取量(Kg/日) 3.39±0.16 3.33±0.13 3.51±0.22 3.26±0.19 NS 飼料要求率 3.23±0.16 3.11±0.18 3.25±0.21 3.19±0.17 NS 表4 枝肉成績 区分 対照区 15%区 30%区 30%+リジン区 差の検定 と殺時体重(Kg) 114.2±2.4 111.9±2.8 113.0±2.7 111.9±2.1 NS 枝肉重量(Kg) 75.4±2.1 74.3±1.9 75.2±2.2 75.0±2.4 NS と体歩留(%) 66.0±0.8 66.4±1.1 66.3±1.4 67.0±1.3 NS と体長(㎝) 94.3±2.0 94.4±2.8 93.7±1.7 93.5±1.6 NS 背腰長Ⅱ(㎝) 69.2±2.5 69.0±3.1 68.4±2.1 68.5±1.8 NS ロース断面積(c㎡) 24.4±4.0 25.3±3.0 21.5±3.8 24.7±4.7 NS 背脂肪厚 肩(㎝) 3.8±0.4 3.7±0.3 4.0±0.3 4.0±0.3 NS 背(㎝) 2.1±0.4 1.9±0.4 2.2±0.3 2.2±0.3 NS 腰(㎝) 3.0±0.4 2.9±0.3 3.2±0.4 3.1±0.3 NS 3部位平均(㎝) 3.0±0.4 2.8±0.3 3.1±0.3 3.1±0.2 NS 格付 1.8±0.8 1.4±0.5 1.9±0.8 1.6±0.5 NS 注) 格付:上 1、中 2、並 3、等外 4 表5 肉質成績 区分 対照区 15%区 30%区 30%+リジン区 差の検定 筋肉内脂肪含量(%) 3.9±0,8a 4.3±0.7a 5.9±0.9b 4.0±0.8a * 加熱損失(%) 28.4±3.5 28.6±3.2 28.4±1.6 30.2±1.2 NS 圧搾肉汁率(%) 34.4±4.6 36.2±6.0 36.1±5.0 37.4±8.0 NS 伸展率(cm/g) 33.7±3.1 32.5±4.3 33.0±2.5 33.3±1.0 NS ドリップロス(%) 2.6±1.2 2.9±0.5 3.1±1.0 3.0±1.1 NS 背脂肪融点(℃) 外層脂肪 29.8±2.2a 28.2±1.2 27.9±1.6b 27.7±1.2b * 内層脂肪 38.1±2.6a 35.6±2.7 34.7±4.2 33.5±2.8 腎脂肪 41.8±1.4 41.6±1.1 40.4±1.9 40.1±1.2 NS 肉色 PCS 4.3±0.4 4.4±0.6 4.0±0.4 4.3±0.4 NS L値 47.0±1.8 48.0±2.1 50.6±4.1 50.0±4.0 NS a値 22.9±1.7 23.1±1.1 22.1±2.3 22.2±1.3 NS b値 6.3±1.1 6.6±1.0 6.6±0.7 7.3±1.9 NS 異符号間に有意差あり(P<0.05)

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4 食味官能検査成績 パネルの年齢構成を表6に、官能検査成績を表7に 示した。パネルは56名で、年齢構成は40代25名(45%) と最も多く、次いで50代12名(21%)、30代9名(16%) の順であった。また、性別では男性37名、女性19名で あった。30%区の豚肉は、対照区より有意に、柔らかさ (P<0.05)、多汁性、うま味及び総合評価(以上、P<0.01) でおいしいと評価された。 表6 パネルの構成 20才代 30才代 40才代 50才代 60才代 計 男 1 5 17 10 4 37 女 2 4 8 2 3 19 計 3 9 25 12 7 56 表7 焼肉による食味官能検査成績 区分 かおり 柔らかさ 多汁性 うま味 総合評価 対照区 3.18±0.73 3.32±0.87 3.04±0.49 3.27±0.49 3.38±0.91 30%区 3.27±0.67 3.64±1.11 3.59±0.88 3.70±0.72 3.86±0.89 差の検定 NS * ** ** ** *:P<0.05 **:P<0.01

発育試験成績では、110kg到達日齢、1日平均増体重、 飼料摂取量及び飼料要求率に有意な差は見られなかっ た。一般的に、肥育豚の増体は、飼料中のリジン含量 が少なくなると増体が劣り、結果として出荷日齢が延 びると報告されている2)。一方、最近では、低リジン飼 料を用いても増体に影響しないという報告もある6,7) 。 今回の結果は、後者であったが、本試験は12月∼2月下 旬の1回の試験であり、その他の季節や回数を重ねて総 合的に検討する必要があると思われた。 枝肉成績では、背脂肪厚はいずれの部位も有意な差 はなかったが、馬鈴薯由来残渣が15%区で薄く、30%区 が厚くなる傾向が見られた。これまで、肥育豚を低リ ジン飼料で飼育すると、筋肉内脂肪含量の増加に伴う 背脂肪厚の増大が懸念されていた2)。一方、Katsumata ら8) はエネルギー及びタンパク質含量を同じにした飼料 を用いて、リジン含量のみの影響を調査し、低リジン によって筋肉内脂肪は増加するが、背脂肪厚に有意な 差は認められないと報告している。今回の結果は、30% 区で厚くなる傾向が見られたが、これは、リジン含量 によるものではなく、馬鈴薯由来残渣中のポテトチッ プスに使用されている、米ぬか油が影響を及ぼした可 能性が考えられた。また、15%区で薄くなる傾向も見ら れたが、15%の配合では米ぬか油の影響を受けないこと が示唆され、今後例数を重ねて検討する必要があると 思われた。 肉質成績は、筋肉内脂肪含量が30%区で他の区より有 意に多かった。前述のように、低リジン飼料を給与す ることにより筋肉内脂肪が蓄積されることが証明され ており、今回の結果からも明らかになった。 背脂肪外層の融点が30%区及び30%+リジン区で対照 区より、有意に低かったが、これは、ポテトチップス 内の脂肪酸組成中にリノール酸やリノレン酸の多価不 飽和脂肪酸が多く含まれているために融点が低くなっ たと推察された。また、背脂肪内層の融点も30%+リジ ン区で対照区より、有意に低かったが、これも同様の 理由により融点が低くなったと考えられた。一般的に、 多価不飽和脂肪酸が多い飼料を給与すると脂肪の融点 が低くなり、軟脂になりやすいと言われている9)。軟脂 は通常、触感によって判断されるため主観的であり、 客観的で正確なものではないが、今回は軟脂ではなか ったため、多価不飽和脂肪酸が軟脂に至るほど含まれ ていなかったと考えられた。 肉色は、筋肉内脂肪含量が増加するとL値が高くなる という報告10 )があるが、今回の試験でも、同様の傾向 を示した。

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食味官能検査では、30%区の豚肉は、対照区より、柔 らかく、ジューシーで、うま味が強く、総合しておい しいと評価された。これまで、筋肉内脂肪含量が増加 すると、食味官能検査における柔らかさ、風味、多汁 性といった肉の食味が向上するといわれている1 0) こと から、今回の30%区の食味も筋肉内脂肪含量の高いこと が好ましい効果を及ぼしたものと考えられた。 以上のことから、馬鈴薯由来残渣を利用することに より筋肉内脂肪含量が高く、背脂肪の融点は低いが軟 脂ではない等の特徴を持つ、食味に優れる高品質豚肉 の生産が可能であることが示唆された。

引用文献

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参照

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