(1)顔面神経麻痺を呈した症例
~経過を追えた症例と構音機能と筋力の関係を追う~
佐藤病院 リハビリテーション科
理学療法士 土岐哲也
H27.11.2(月)
はじめに
• 当病院では年に3~4人ほど末梢性顔面神経麻痺を呈した症例が外
来に来られる。
• しかし、末梢性顔面神経麻痺は自然治癒をすることがほとんどで、
外来リハビリ中来なくなってしまうことが多い。
• 今回、末梢性顔面神経麻痺の患者様を担当させて頂き、復職まで
の経過をみることができた。
• また、表情筋麻痺、咀嚼筋麻痺による影響が構音機能に及ぼす関
係を探ってみた。
顔面神経の解剖
側頭骨内の顔面神経管は生体内で直径が1mm、長さ
35㎜と最も狭く長い円筒管である。
小脳橋角部は23~24㎜で、この部位では慢性圧迫脱
髄性神経障害による原発性片側顔面痙縮(HFS)が発
生する。
直角に曲がる部位を膝部と呼んでいる。第1、2膝部が
あり迷路部から鼓室部への移行部が第1膝部でこの部
位に膝神経節が位置している。第2膝部は鼓室部から
乳突部への移行部ある。
膝神経節部はBell麻痺やHunt症候群のウィルス(HS
V)Ⅰ型の再活性化でHunt症候群は水疱瘡帯状疱疹
ウィルス(HZV)の再活性化によっておこる。
顔面神経の機能
顔面神経
運動神経成分
感覚神経成分
副交感神経成分
顔面の表情筋
アブミ骨筋
舌の前2/3
外耳道・鼓膜の一部
耳介後部
涙腺、鼻線、顎下腺、舌下線
表情筋の運動
アブミ骨反射
舌の前2/3の味覚
外耳道・鼓膜などの温痛覚
涙・鼻汁・唾液の分泌
顔面神経路
顔面神経は内耳孔から内耳神経とともに内耳道に入り、途中で内耳神経と分かれて顔面神
経管と呼ばれる骨の管を通り、副交感神経成分などを出した後、茎乳突孔から皮下へでる。
顔面神経の回路
橋に存在する顔面神経核を支配する皮質延髄路は大脳皮質運
動野の1/3から始まり、内方膝部と大脳1/3を通過して顔面神経
核へ至る。顔面神経核は背側部と腹側部に分けられ、顔面上半
分の表情筋である前頭筋と眼輪筋の支配核が背側部から、下半
分の表情筋支配核が腹側部である。顔面神経核は背側部は両
側、腹側部は対側の皮質延髄路投射を受ける
(2)顔面神経麻痺
• 顔面神経麻痺は表情筋の運動障害を特徴とする神経障害である。
• Bell麻痺の頻度が最も高いが脳神経外科では脳卒中や脳腫瘍によ
る顔面神経麻痺を診察することが多い。
原因 末梢神経障害 中枢神経障害
片側性 ・Bell麻痺
・Hunt症候群
・腫瘍(耳下腺・小脳橋核腫瘍)
・外傷(頭蓋骨骨折)
・炎症
・脳血管障害
・多発性硬化症
・脳腫瘍
両側性 ・Guillain-Barre症候群
・Lyme病
・サルコイドーシス
末梢神経麻痺の原因と頻度
58%
15%
6% 4%
17%
末梢神経麻痺の原因と頻度
Bell麻痺 Hunt症候群 外傷 耳性 その他
Bell麻痺の85%は3週間以内に回復の徴候を示し最終的には71%は全く正常に回復、13%
で軽度の後遺症が残り16%で永続する機能障害が残存したとされている。
末梢性顔面神経麻痺の鑑別診断
末梢性顔面神経麻痺
疾患 原因 特徴
ベル麻痺 特発性 顔面神経麻痺の50~80% 性差なし
40歳代にピーク 危険因子:DM・妊娠
一側性の突発性発症
単純ヘルペスウイルスとの関連は非確定
中耳炎 細菌感染 亜急性・慢性経過 耳痛 発熱 感音性難聴
GuillainBarre症候群
サルコイドーシス
自己免疫疾患 多発ニューロパチー
両側発症あり
Ramsay Hunt症候群 水痘・帯状疱疹ウイルス 膝神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルス
の再活性化疼痛と耳介・外耳内の小水痘・帯状疱
疹
聴力喪失 顔面神経麻痺残存
外傷 側頭骨骨折 横骨折・縦骨折・混合骨折
腫瘍 小脳橋角部耳下腺腫瘍
中枢性顔面神経麻痺の鑑別診断
中枢性顔面神経麻痺
脳卒中 梗塞・出血 片麻痺
脳腫瘍 神経膠腫・転移性膿腫など 亜急性・慢性景経過
癌既往歴など
多発性硬化症 脱髄 両側突発あり
中枢性 末梢性
額のしわ寄せ 正常 障害
閉眼 正常(ときに障害) 障害
鼻唇溝形成 障害 障害
聴覚過敏 正常 ときに障害
味覚障害 正常 ときに障害
中枢性と末梢性顔面神経麻痺の鑑別
末梢神経障害の分類
• 1.機能的分類
①運動性ニューロパチー
②感覚性ニューロパチー
③自律神経ニューロパチー
• 2.解剖学的分類
①軸索変性型ニューロパチー
②脱髄性ニューロパチー
• 3.神経の分布による分類
①単神経炎
②多発性単神経炎
③多発性神経炎
• 4.原因による分類
①薬物、中毒
②代謝(DMなど)、ビタミン欠乏
③炎症性や感染後ニューロパチー
④外傷、圧迫
⑤リウマチ疾患、膠原病
⑥虚血性
⑦癌性
神経変性の種類
脱髄や逆行変性線維では迷入再生を生じないが、ワーラー変性に陥った神経断裂線維で
は迷入再生が生じる。この迷入再生繊維が表情筋に達して病的共同運動が顕在化する。
(3)再生突起の指向性
再生突起は収縮筋方向に向かっていく、強い筋収縮によって迷入再生が生じる。
迷入再生回路形成時間
逆行変性では求心性に軸索変性が生じる。
重症例では回復まで3カ月要する。
神経断裂線維では再生繊維の伝導遅延の他
に、病変部での再生形成時間によって表情筋
までの到達時間の遅延が生じる。最速で迷入
再生繊維は発症4カ月で表情筋に到達する。
過誤支配によって病的共同運動が顕在化す
る。3~4カ月で完治しない症例では、4カ月以
降に迷入再生繊維が順次到達して、病的共同
運動が顕在化する。
随意運動あるいは低周波刺激による表情筋
収縮を継続すると迷入再生回路が強化して病
的共同運動はますます増悪する
表情筋の拮抗関係
T:側頭枝、Z:頬骨枝、B:頬筋枝、M:下顎
緑枝、C:頸枝、Fro:前頭筋、Pro:鼻根
筋、Ocs:上眼輪筋、Nas:鼻筋、LLA:上
唇鼻翼挙筋LLS:上唇挙筋、Zym:小頬骨
筋、Ris:笑筋、Oori:下口輪筋、DLi:下唇
下制筋、Pla:広頸筋、Cor:皺眉筋、Ooi:
下眼輪筋、LAO:口角挙筋、Zym:大頬骨
筋、Oors:上口輪筋、DAO:口角下制筋、
Men:オトガイ筋
表情筋の拮抗関係は開口部を挟んで収縮と伸張が起こっている。
表情筋の役割
• 顔面の開口部を閉鎖することが第1の目的である。
‐目の保護が最も重要であり、突然の視覚、角膜、聴覚、平行刺激によって閉眼が生じる‐
• 感情を反映することが第2の役割である。
‐驚き、恐怖、嫌悪、怒り、幸福、悲しみの感情を映し出す‐
表情筋と咀嚼筋
咀嚼筋 側頭筋
咬筋
外側翼突筋
内側翼突筋
口蓋筋 口蓋帆張筋
口蓋帆挙筋
口蓋咽頭筋
口蓋舌筋
顔面筋 口輪筋
犬歯筋
笑筋
大頬骨筋
オトガイ三角筋
上唇方形筋
下唇方形筋
オトガイ筋
広頸筋
外舌筋 オトガイ舌筋
舌骨舌筋
茎突舌筋
内舌筋 浅従舌筋
深従舌筋
横舌筋
垂直舌筋
舌骨上筋 甲状舌骨筋
胸骨舌骨筋
肩甲舌骨筋
胸骨甲状筋
病的共同運動とスパズムの誘発
顔面神経麻痺が生じると、とにかくできるだけ早く開口部を閉鎖する生体反応が起こる。この
ために顔面神経核に興奮性亢進が生じ、表情筋が同時に収縮することが生体防衛反応として
合目的性である。神経束構造がなく神経線維が密接していることは、できるだけ早く開口部を
閉じるという役割と関連している。顔面神経麻痺後は表情筋は一塊となり病的共同運動が出
現する。また表情筋を強く収縮することによって病的共同運動やスパズムを誘発する。
(4)ワニの涙症候群
末梢性顔面神経麻痺の回復期に食事をすると涙が
出てくることがありこれをワニの涙症候群という。
神経再生の際に、唾液腺への線維が誤って涙腺に
連絡したためと考えられている。
その他症状
顔面拘縮:
患側の顔面が持続的に収縮した結果、鼻唇溝は深
く、眼裂は狭小化し、安静時も顔が非対称に見える
状態を顔面拘縮という。
アブミ骨筋性耳鳴り:
表情筋を再生するはずの再生神経線維が誤ってア
ブミ骨筋を支配したために起こる現象。
三叉神経麻痺
障害によって下顎は麻痺側に偏倚する
障害部位による症状の違い
中枢性(核上性)顔面神経麻痺
• A.中枢性顔面神経麻痺の特徴と病因
上位運動ニューロンである皮質延髄路の障害で発症するので核上性顔面神経麻
痺とも呼ばれる。しわ寄せができ眼輪筋麻痺も軽度。笑顔など感情変化による表
情形成を保たれることが多い。さらに味覚や涙腺分泌など知覚・自律神経は障害
されない。
• B.皮質延髄路の両側・片側支配
顔面神経の運動機能を支配する皮質脊髄路は両側の前頭筋・眼輪筋と対側下
半部の表情筋運動を支配している。
• C.情動性支配に関わる上位ニューロン
中枢性顔面神経麻痺の患者で口角を動かせないのに笑うと麻痺側の口角があ
がり笑顔となる。皮質延髄路以外の上位運動ニューロンが関与すると考えられ
る。
末梢性(核性・核下性)顔面神経麻痺
• A.核性顔面神経麻痺
橋にある顔面神経運動核とその繊維束の障害は核性顔面神経麻痺をきたす。ま
た顔面神経運動核の周囲には外転神経核・同繊維束、傍正中橋網様体、錐体
路、さらに三叉神経脊髄路核と脊髄視床路が存在するため、表情筋麻痺の他に
脳幹症状を合併することがある。
• B.核下性顔面神経麻痺
小脳橋角部より末梢の顔面神経麻痺をきたす。核下性顔面神経麻痺は障害部位
よって分類される。並走する内耳神経・中間神経、また大浅錐体神経、アブミ骨筋
神経、鼓索神経に含まれる機能の障害によって難聴、涙腺分泌障害、聴覚過敏、
唾液分泌障害、舌前2/3の味覚障害が表情筋麻痺に加わる。
中枢性・末梢性顔面神経麻痺の特徴
A:中枢性顔面神経麻痺
額のしわ寄せはできるが口角を動かすことはできない。
B:末梢性顔面神経麻痺
額のしわ寄せができず口角も動かすこともできない。
C:中枢性顔面神経麻痺での情動支配保持
随意的に麻痺側の口角を動かせないが笑うと麻痺した
口角が動く例がある。
D:線条体内方梗塞による情動性支配の障害
随意的に口角を動かせるが笑うと口角に麻痺を認め
る。
(5)顔面神経麻痺重症度評価法
House-Brackmannスケール
重症度 顔面神経機能
Ⅰ 正常 すべての神経枝で顔面神経機能は正常
Ⅱ 軽度麻痺 わずかな麻痺と共同運動、安静時正常対称性、額しわ寄せ良
好、完全開眼可能、口角軽度非対称
Ⅲ 中等度麻痺 明らかだが軽度の麻痺と共同運動、安静時ほぼ対称性、額し
わ寄せ中等度障害、努力すれば完全閉眼、口角運動は最大
限の努力でわずかな麻痺
Ⅳ やや高度麻痺 明らかな麻痺と非対称性、安静時非対称性、額しわ寄せ不可、
閉眼不完全、最大限の努力でも口角非対称
Ⅴ 高度麻痺 ごくわずかな動きのみ、安静時非対称、額しわ寄せ不可、閉
眼不完全、口角わずかな動き
Ⅵ 完全麻痺 完全な麻痺
顔面神経麻痺重症度評価法②
評価項目 評価点数
安静時対称性
目 正常:0.異常:1
鼻唇溝 正常:0.変化あり:1.消失:2
口 正常:0.異常:1
随意運動
しわ寄せ 完全麻痺:1~正常:5
軽い閉眼 完全麻痺:1~正常:5
開口微笑 完全麻痺:1~正常:5
上唇挙上 完全麻痺:1~正常:5
口すぼめ 完全麻痺:1~正常:5
病的共同運動
しわ寄せ なし:0.軽度:1.中等度:2.高度:3
軽い閉眼 なし:0.軽度:1.中等度:2.高度:3
開口微笑 なし:0.軽度:1.中等度:2.高度:3
上唇挙上 なし:0.軽度:1.中等度:2.高度:3
口すぼめ なし:0.軽度:1.中等度:2.高度:3
評価点数=随意運動合計点×4-安静時対称性合
計点×5-病的合計点(最高100点)
0:高度麻痺 2:部分麻痺 4:正常
1.安静時2.額しわ寄せ3.瞬き4.弱い閉眼5.強
い閉眼6.片目つぶり7.鼻しわ寄せ8.口笛9.歯
みせ10.への字
柳原40点法
Sunnnybrook 顔面神経評価法
予後診断
エレクトラニューログラフィー(ENoG)
患側と健側CMPAの振幅比ENoGが40%以上であれば病的共同運動は出現しない。ENoG
=15%の症例は(40‐EN0G)が神経断裂の可能性である。
臨床的予後診断
発症2週間で50%回復していれば3~4週間で完治する。4週間で50%回復していれば3か月で
完治する。20点に達していない症例では4ケ月以降に少し病的共同運動が出現する可能性が
あり、随意運動を回避して、表情筋のストレッチを行う必要がある。
量から質的回復
発症3か月までに完治していない症例は4カ月以降に病的共同運動が顕在化する。顔面拘
縮などによって筋力低下が再出現する。最重度の症例でも、表情筋の頻回なストレッチング
によって神経再生を抑制することによって12カ月後に納得いく表情が実現される。
リハビリテーション
1)粗大な百面相の随意運動や低周波刺激によ
る表情筋の収縮を制限する。
2)表情筋の頻回のマッサージあるいはストレッ
チングで筋短縮を制限する。
3)動眼神経支配である上眼瞼挙筋による開瞼
運動を行い眼輪筋のストレッチングを頻回に行
う。
急性期
1)認知行動療法
2)ボツリヌス療法
3)神経筋再教育
慢性期
矢印の方向にマッサージを行う。渦巻き印は縦、横、丸くマッサージを行う。皮膚は擦らないよ
うに手指を置いたところだけ動かす。
(6)安静時対称点と病的共同運動点
発症6カ月以降、伸張マッサージ群の方がSunnybrook法の安静時対称点および病的共同
運動点に有意差が生じる。随意運動群では、安静時対称点は有意に得点が高く、顔面拘縮
が著明なことを反映している。また運動時の病的共同運動もより高くなっている。
低周波刺激
患側全体の粗大で強力な筋収縮を誘発
するために、神経断裂線維の迷入再生
も促通し、病的共同運動の原因となる。
さらに顔面神経核の興奮性亢進を一層
促して、筋短縮による顔面拘縮を助長す
ることになる。
顔面神経核興奮性亢進しミオキミアやスパズムを
出現させる。筋短縮による顔面拘縮を助長する
ミラーフィードバック療法
A:ウーと口を尖らせるB:イーと歯を見せるC:プーと頬を膨らませるのを3種類の口運動時の瞼裂比、EN0G値が0%の高度な
神経障害をきたした末梢神経障害患者27例を対象とし、1年間ミラーフィードバック療法で予防する群と予防しない群に分け瞼
裂比を比較した。ミラーフィードバック療法により顔面神経麻痺後遺症の病的共同運動を予防できるこが明らかになった。
ミラーフィードバックとボツリヌス療法併用
ボツリヌス療法とミラーフィードバック療法を行い、瞼裂比を治療前と治療開始後10ケ月で比較した。ボツリヌス療法の効果が
消失した10カ月においても瞼裂比が高値であり、併用療法で発症した病的共同運動を治療できることが明らかになった。
薬物療法①
軽度麻痺(20点以上) 中等度麻痺(18‐10点) 高度麻痺(8点以下)
ステロイド
(PSL)
30㎎/日
内服
60㎎/日
内服
120~200㎎/日
点滴
抗ウィルス
薬
(VCV)
― 1000㎎/日×5日
内服
1000㎎/日×5日内服
(症例によって3000mg)
その他 ビタミンB12、ATP製剤、循環改善薬
薬物療法②
軽度麻痺(20点以上) 中等度麻痺(18‐10点) 高度麻痺(8点以下)
ステロイド
(PSL)
30㎎/日
内服
60㎎/日
内服
120~200㎎/日
点滴
抗ウィルス薬
(VCV)
VCV3000㎎/日あるいはFCV1500㎎/日×7日 ACV750㎎/日×7日
点滴
その他 ビタミンB12、ATP製剤、循環改善薬
(7)Hunt症候群の治療法と成績
論文 対象(スコア) ステロイド 抗ウィルス薬 治療率
Devriese pp,1988 全症例 ― ― 29%
Murakami S,1997 ≦22 PSL60㎎ ACV750㎎点滴or4000㎎経口 53%
Kinishi M,2001 ≦22 MP500㎎ ACV750㎎点滴or4000㎎経口 90%
稲村,2001 ≦8 PSL200㎎ ACV750㎎点滴 61%
著者ら,2013 ≦10 HC1000㎎ ACV750㎎点滴 79%
PSL:プレドニゾロン MP:メチルプレドニゾロン HC:ハイドロコーヂゾン ACV:アシクロビル
治療方針
Bell麻痺/Hunt症候群
スコア≧12
PSL60㎎+VCV3000㎎
スコア≧12
経過観察
スコア≧10
高用量併用
スコア≦10
HC1000㎎+VCV3000㎎(Bell)
orACV1500㎎(Hunt症候群)
ENoG<5%
経過観察
(リハビリテーション)
ENoG<5%
経乳突的減荷術
完全麻痺であればBell麻痺であってもPSL60㎎にVCV3000㎎を併用する。不全麻痺例でも、経過中に麻痺が進行した場合
は高用量点滴療法に切り替える
顔面神経減荷術
a)経乳突法b)経中頭蓋窩法c)経乳突法+経中頭蓋窩法
顔面神経減荷術の目的は顔面神経管を解放することで神経絞扼を解除し、神経変性進行
を防止することにある。
症例紹介
• 57歳 女性
【診断名】左顔面神経麻痺(Bell麻痺)
【既往歴】頸椎椎間板症、右肩関節周囲炎、急性上気道炎、中耳炎
【現病歴】平成27年5月13日に左顔面が動きが低下し、脳梗塞だと思
い、当院の翌日脳神経外科を受診。左顔面神経麻痺と診断。同日リ
ハビリテーションが開始となった。
【主訴】顔面が動かない、仕事に復帰したい
【職業】事務業務
【薬剤】プレドニゾロン、ビタミンB12製剤
【介入頻度】週3回外来リハビリ
MRI
顔面のアライメント
House‐Brackmannスケール:Ⅴ(高度麻痺)
柳原40点法:12点
Sunnybrook顔面神経評価法:
随意運動合計点(12点)×4-安静時対称点(15点)×
5-病的共同運動(10点)=17/100点
症状(ワニの涙、病的共同運動、顔面拘縮、味覚障害)
顔面アライメント:
右眉毛挙上、右眼球挙上、右口角挙上
左眉毛下制、左眼球下制、左口角下制
頸部右側屈、左回旋、右肩甲帯挙上
筋緊張:(右>左)
亢進:右肩甲帯周囲筋、右胸鎖乳突筋、右斜
角筋、左右前頭筋、左右眼輪筋、左右笑筋、左
右口輪筋、左右頬骨筋、左右口角挙筋
(8)障害部位
治療
・顔面のマッサージ・ストレッチング
・頸部周囲筋のストレッチ
・全身調整
病的共同運動を抑制するように行った。
顔面の動き(5月20日)
顔面の動き(6月1日)
顔面の動き(6月12日)
顔面神経麻痺の経過
0
20
40
60
80
100
麻痺の回復過程
House-Brackmann
柳原法
Sunnybrook
5月20日 6月1日 6月12日
(9)座位姿勢と歩行(6月22日 最終)
矢状面 前額面 歩行
まとめ
• Bell麻痺などの末梢性顔面神経麻痺は自然回復が主である。
• しかし病的共同運動や、神経再生の阻害、顔面拘縮など起こさない
ように自然回復をより早く行わせることが重要である。
• 顔面神経麻痺は良くなると外来リハビリに来なくなることがあり、経
過を追うのが難しい。
• そのため、今回は最後まで経過を追うことができた。予後予測や病
態を考え提供していくことが大事である。
• 末梢性顔面神経障害は構音機能や発声に関しては影響しなかっ
た。
中枢性顔面神経麻痺
開口動作 顔面の動き 開・閉口動作
PCF:210ml
言語中枢
形態認知や意味記憶が障害されると言語の出力・意味・構音が障害される。
発声時の筋活動と筋緊張
A:声帯
B:喉頭蓋
C:下咽頭
D:破裂部
E:破裂喉頭蓋ヒダ
F:仮声帯
外喉頭筋(舌骨上筋群)の筋緊張亢進により喉頭
の位置が高くなる。その結果声帯が他動的に引
き延ばされ仮声帯や喉頭蓋が閉じることもある。
運動性構音障害(パーキンソン病など)による筋
緊張亢進が構音機能には影響を与えると考え
る。
終わりに
• 中枢性の構音障害と筋力の関係は運動プログラムや意味記憶など
に影響される。そのため中枢性の構音障害は、言語中枢に左右さ
れやすい。
• 運動性構音障害などの筋緊張亢進や固縮は前頸部筋の筋緊張を
亢進させ、内喉頭筋緊張亢進や筋力低下により発声や構音機能に
影響を及ぼすことが考えられる。
ご清聴ありがとうございました。