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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 小 川 涼 子      学位論文題名

Transient , seasonal and inter − annual gravity changes     from GRACE data: Geophysical modelings

     (衛星データを用いた地球重力場の一時的・季節的・経年的な      変化に関する地球物理学的研究)

学位論文内容の要旨

  地球の重力場は、地球の表層や内部における様カな質量の移動を反映し時々刻々変化してい る。これまで超伝導重力計や絶対重力計といった精密な地上重力観測によって、マントルの流 動、地下水の移動、マグマの動きなど、目に見えない質量の移動が点的に捉えてられてきた。

2002年3月17日 に 打 ち 上 げ ら れ た重 力 観 測衛 星GRACE (Gravity Recovery And Climate Experiment)は、双子衛星間の距離を計測することによって、全球的に均一な精度で地球の重力 場 を求め ることができる。GRACEでは重力場の決定に要する時間が短いため、重カのわずかな 時間変化をーケ月程度の時間分解能で観測することが可能となった。これによって、従来重カ の観測対象とされていなかった季節的な陸水変動等の時間スケールの短い現象がとらえられる ようになった。また全球の均一な観測が可能になったことから、地震に伴う重力変化のように 従 来 ほ と ん ど 観 測 デ ー タ が な か っ た 地 球 物 理 学 的 現 象 が 観 測 さ れ る よ う に な っ た 。   こ れまで 多くの研 究者に よって、 季節的・ 経年的 時間スケ ールの 様々な重力変化がGRACE データを用いて議論されてきた。低緯度地域では雨季・乾季の繰り返しに伴う陸水の季節変化 が顕著であり、高緯度地域では地球温暖化に伴う山岳氷河や大陸氷床の融解が経年的な重力減 少として観測されている。本研究では重カの時間変化という切り口による新たな地球物理学的 現象の解明を目指し、下記の三っのテーマに関して研究を行うた。以下にそれぞれの概要を述 べる。

(1) 2004年スマトラ・アンダマン地震の地震時・地震後の重力変化

  2004年12月の スマトラ ・アン ダマン地 震の際に、初めて衛星観測によって地震時重力変化 が検出された。本研究では、地震に伴う瞬時の重力変化だけでなく、地震後に重カがゆっくり と変動す る現象 を発見し、その地球物理学的な意義を議論した。GRACEデータが示すジオイド 高の時系列の詳細な解析から、地震時に生じたジオイドの凹みがゆっくりと回復していること を見 いだした 。地殻 変動など で知ら れる地震 の余効 変動は(a)粘性緩 和(b)アフター スリッ プ(c)間隙水 の拡散 の三種類 の現象 の組み合 わせで モデル化 されるこ とが多 いが、GRACEで 観測された地震後の変動は、1)地震時の変化と符号が逆で、2)時定数0.6年という短い時間スケ ールを持っことから、(c)間隙水の拡散が重要であることが示唆された。本研究では深部におけ る 水 の 含 有 量 や そ れ ら の 拡 散 係数 か ら 、そ の よ うな モ デ ルが 可 能 であ る か を論 じ た 。

(2)二次の成分を持った重カの経年変化

  陸地に おいて、GRACEが観測する重力変化は主に土壌水分を反映している。土壌水分は降水 量、蒸発散、河川等による流出といったフラックスの積分値であり、もし降水量等に長期的ぬ

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一 次変化 成分があれば、GRACEの重力変化には二次の変化成分が現れるはずである。これまで のGRACEの 研究では 、重カ の時間変 化は季 節変化と 一次関 数でモデル化すれぱ充分と考えら れていたが、打ち上げから九年を経過した今、気候変動を反映する二次変化成分に焦点を合わ せ た研究 は意義があると思われる。本研究では、GRACEによる重カの時間変化時系列を季節変 化と二次関数でモデル化し、重力変化の加速・減速にっいてその大きさや地理的分布を議論す る 。さら に陸水モ デルや 降水量デ ータか らも同様 の二次的 な変化 分を比較 した。 その結果 GRACEで得 られた加速・減速の変化は、降水量の直線的な時間変化を反映している可能性が高 いことを確認した。

(3)シベリア永久凍土帯における季節的・経年的な重力変化

  地球温暖化に伴って世界中の様女な地域の氷河・氷床が加速度的に融解し海面上昇に影響を 与えて いる。GRACEデー タによる 経年的 な重力変 化を見て みると 、永久凍土で覆われている 東シベ リアでは、年間約30.7 Gtという顕著な貯水量の増加が見られる。これはパタゴニアの 氷河の融解量に匹敵し、海面上昇を和らげる作用を持っ。永久凍土域では凍土の不透水性のた め地下水の酒養がなく、また余剰水が氷として冬越しできるため、一般的に土壌水分量の経年 変化が 温帯地域 に比べ て大きい 。本研究 ではGRACEデータ と降水 量や河川流量データといっ た地上観測データを比較することで、永久凍土における季節的および経年的な水収支を議論し た。その結果、降水量の増加が貯水量増加の直接的原因であるが、活動層(永久凍土帯で夏季に 融解する層)の厚化によって許容貯水量そのものが増大していることも間接的に貢献している 可能性が示唆された。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    日 置 幸 介 副 査    教 授    池 田 隆 司 副 査    教 授    蓬 田    清 副 査    准 教 授    古 屋 正 人 副 査    教 授    村 上    亮

     学位論文題名

Transient , seasonal and inter 一 annual gravity changes     from GRACE data: Geophysical modelings

     (衛星データを用いた地球重力場の一時的・季節的・経年的な      変化に関する地球物理学的研究)

地球の重力場は、地球の表層や内部における様々な質量の移動を反映し時々刻々変化して いる。これまで超伝導重力計や絶対重力計といった精密な地上重力観測によって、マン卜ル の流動、地下水の移動、マグマの動きなど、目に見えない質量の移動が点的に捉えてられて き た。2002年に 打ち 上げ られ た重 力観 測衛 星GRACE (Gravity Recovery And Climate Experiment)は、双子衛星間の距離を計測することによって、全球的に均一な精度で地球の 重力場を求めることができる。GRACEでは重力場の決定に要する時間が短いため、重カのわ ずかな時間変化をーケ月程度の時間分解能で観測することが可能となった。これによって、

従来重カの観測対象とされていなかった季節的な陸水変動等の時間スケールの短しゝ現象が とらえられるようになった。また全球の均一な観測が可能になったことから、地震に伴う重 力変化のように従来ほとんど観測データがなかった地球物理学的現象が観測されるように なった。

  これまで多くの研究者によって、季節的・経年的時間スケールの様々な重力変化がGRACE データを用しゝて議論されてきた。低緯度地域では雨季・乾季の繰り返しに伴う陸水の季節変 化が顕著であり、高緯度地域では地球温暖化に伴う山岳氷河や大陸氷床の融解が経年的な重 力減少として観測されている。本研究では重カの時間変化という切ルロによる新たな地球物 理 学 的 現 象 の 解 明 を 目 指 し 、 三 つ の テ ー マ に 関 し て 研 究 を 行 っ て い る 。   最初のテーマは2004年スマトラ・アンダマン地震の地震時・地震後の重力変化である。2004 年12月のスマトラ・アンダマン地震の際に、初めて衛星観測によって地震時重力変化が検出 された。本研究では、地震に伴う瞬時の重力変化だけでなく、地震後に重カがゆっくりと変 動する現象を発見し、その地球物理学的な意義を議論した。GRACEデータが示すジオイド高 の時系列の詳細な解析から、地震時に生じたジオイドの凹みがゆっくりと回復していること を見いだした。地殻変動などで知られる地震の余効変動は、粘性緩和、アフタースリップ、

間隙水の拡散の三種類の現象の組み合わせでモデル化されることが多いが、GRACEで観測さ

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れた地震後の変動は、地震時の変化と符号が逆で、時定数0.6年としゝう短い時間スケールを 持つことから 、間隙水の拡散が重要であることが示唆された。本研究では深部における水の 含 有 量 や そ れ ら の 拡 散 係 数 か ら 、 そ の よ う な モ デ ル が 可 能 で あ る か を 論 じ てい る。

  次のテーマ は二次の成分を持った重カの経年変化についてである。陸地において、GRACE が観測する重 力変化は主に土壌水分を反映している。土壌水分は降水量、蒸発散、河川等に いよる流出といったフラックスの積分値であり、もし降水量等に長期的な一次変化成分があれ ば、GRACEの重力変化には二次の変化成分が現れるはずである。これまでのGRACEの研究では、

重カの時間変 化は季節変化と一次関数でモデル化すれば充分と考えられていたが、打ち上げ から九年を経 過した今、気候変動を反映する二次変化成分に焦点を合わせた研究は意義があ ると思われる 。本研究では、GRACEによる 重カの時間変化時系列を季節変化と二次関数でモ デル化し、重 力変化の加速・減速についてその大きさや地理的分布を議論している。さらに 陸水モデルや 降水量データからも同様の二次的な変化分を比較した。その結果GRACEで得ら れた加速・減 速の変化は、降水量の直線的な時間変化を反映している可能性が高いことを確 認している。

  最後のテー マはシベリア永久凍土帯における季節的・経年的な重力変化である。地球温暖 化に伴って世 界中の様々な地域の氷河・氷床が加速度的に融解し海面上昇に影響を与えてい   る。GRACEデータによる経年的な重力変化を見てみると、永久凍土で覆われている東シベリ   アでは、年 間約30.7Gtという顕著な貯水量の増加が見られる。これはパタゴニアの氷河の 融解量に匹敵 し、海面上昇を和らげる作用を持つ。永久凍土域では凍土の不透水性のため地 下水の涵養が なく、また余剰水が氷として冬越しできるため、一般的に土壌水分量の経年変 化が温帯地域 に比べて大きい。本研究ではGRACEデータと降水量や河川流量データといった 地上観測デー タを比較することで、永久凍土における季節的および経年的な水収支を議論し た。その結果 、降水量の増加が貯水量増加の直接的原因であるが、活動層(永久凍土帯で夏 季に融解する 層)の厚化や地表の凹凸の発達によって許容貯水量そのものが増大しているこ   とも間接的に貢献している可能性が示唆された。

  これらはい ずれも重力観測による地球科学的研究の従来の枠を超えて、重カの時間変化を キーワードと して地震学、陸水学、雪氷学などの様々な分野へ応用したものであり、測地学   の新ししゝ可能性を広げるものである。よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与   される資格あるものと認める。

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