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軸方向ホールバーニングを考慮した

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 )木 下 順. 一

学 位 論 文 題 名

軸方向ホールバーニングを考慮したDFB レーザの    動的解析と位相シフトの最適化に関する研究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  DFBレーザは、高速大容量光通信用の単色光源として実用化されている。したがって、そ の高速応答特性(動特性)を解析することは応用上極めて重要である。なお、DFBレーザは光 フんイパの低分散低損失波長域である1.3弘m、1.55Um帯で発振できるInGaAsP/InP系の半 導体レーザとして実現されている。

  本研究は、Gbitを超える高速光通信に必要なDFBレーザの動特性を解析する方法を中心に 論じたものである。特に、著者らの提案した方法にもとづき、動特性に大きな影響を与え る 共 振 器 軸 方 向 の 空 間 ホ ー ル バ ー ニ ン グ を 考 慮 し て 議 論 し て い る 。   空間ホールパーニングは、共振器軸方向におけるフォトン密度の不均一により起こる。

フォトン密度の不均一がキャリア密度の不均一を、それがさらに実効屈折率の不均一を生 じる。実効屈折率の局所的を変化は等価的な位相シフトであり、発振の位相条件が変化す る。この現象が発振後の非線形な振る舞いの大きな原因と詮る。っまり、高速応答に大き な影響を与える。

  本論文では、最初にDFBレーザの解析と実用化の歴史的背景を述ベ、その中で本研究の位 置 づけ を 行 って い る 。本 研 究で 得られた 成果は主 として次 の5点にまと められる 。 1.先ず、通信用レーザとして用いられているInGaAsP/InP系材料のDFBレーザの製作方法に   ついて述ぺている。 DFBレーザの特性を決定づける重要な回折格子(コルゲーション)の   形状が高温の結晶成長工程中に容易に平坦化する。っまり、微細コルゲーション(1次の   回折格子の周期として約200nm―240nm)を刻み込んだInP基板は、コルゲーションの山の   Pの蒸気圧が高く谷のそれが低いため、熱力学的に平坦化の方向へ進む。これにAs圧を   加えると表面に保護膜が形成され平坦化を抑える。実際には、GaAs基板を対向して近付   けるだけの簡単な方法でAs圧を加えることができる。これにより、DFBレーザ越安定に   製作 可能となっ た。本論 文では、 特にこの 平坦化防 止技術に っいて述ぺ ている。

2.次に、結合波動方程式に基本を置いてDFBレーザの発振特性を理論解析している。前述   したように、軸方向空間ホールパーニングはフォトン密度とキャリア密度の軸方向の不   均一性が原因で発生する。そのため、軸方向を微小領域に分割した構造を仮定して近似   解析を行っている。っまり、微小領域を縦続接続してFーmatrixによって解析している。

  発振後の特性はパイアス点毎にF‐matrix解析を自己無撞着に収束させて解析している。

3.また、半導体レーザの動特性をレート方程式を用いて解析している。本研究では、軸方   向の不均一を考慮したレート方程式を導出している。このレート方程式はキャリア密度   の不均一関数の振幅をパラメータとして新たに加えている。したがって、フォトン密度、

  キャリア密度、キャリア密度の振幅の3変数に関する3本の方程式と詮る。空間ホールパ     ―152―

(2)

゛ー ニン グを 考Iし たF‑matrixの 自己 無撞 着 解析 とこ のレ ート 方程 式は 、キ ャリ ア密度の   振 幅で りン ク して いる 。こ のり ンク によ り、 自己 無撞着解析の結果を用い てレート方程   式 で動 特性 解 析が でき る。なお、汎用の解析方 法では、F−matrixとレート 方程式をすぺ   て 含ん で自 己 無撞 着解 析を 行う 。本 研究 の方 法は 汎用解析と比べて大幅に 解析を簡素化   で き る 。 本 論 文 で は 、 こ の 方 法 と そ の 計 算 結 果 と 有 効 性 を 議 論 し て い る 。 4.さら に、実効型位相シフト構造をもつInGaAsP/InP系DFBレ― ザの試作結果を示している。

  回 折格 子の 中 央の 位相 を1/4波 長分 だけ ず らし た位 相シ フト 型構 造を もち 、両 方のレー   ザ 端 面 の 反 射 を 抑さ えた 、い わ ゆるA/4位相 シフ ト型DFBレ ーザ は、 単一 縦モ ード で発   振 しや すく 、 有望 なDFBレ ーザ 構造 であ る 。し かし 、シ フト の一 点に 光が 集中 し空間ホ   ー ルパ ーニ ン グが 起こ りや すい 。導 波路 の幅 を徐 々に変化させ、ある領域 長をもって等   価 的に 位相 シ フト を構 成す る実 効型 位相 シフ ト構 造は、光の集中が緩和さ れて空間ホー   ル パー ニン グ を小 さく でき る。 この 構造 の素 子を 試作して空間ホールバー ニングの抑圧   効果を確認している丶。

5.ま た、2次 の 回折 格子 を用いたDFBレーザは、放射モード光が基板に垂直に 出射する。放   射 モー ドに 対 する 位相 シフ トの 影響 を論 じ、 適切 なシフトにより軸方向の 放射モード光   の 分布 を制 御 でき るこ とを 明ら かに して いる 。こ れにより新しい面発光レ ーザの可能性   を提示している。

  以上のように、こ の論文はDFBレーザの製作・ 設計法およぴ共振器軸方向の空間ホールバ ーニ ング を 考慮 した 動特 性の解析について論じ 、種々の特性を明らかにしたものである。

153―

以 上

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

学 位 論 文 題 名

軸 方 向 ホ ー ル バ ー ニ ン グ を 考 慮 し た DFB レ ー ザ の      |   I

   動 的 解 析 と 位 相 シ フ ト の 最 適 化 に 関 す る 研 究

  高速大容量光通信用の単色光源として実用化されているDFBレーザの軸方向空間ホールバ ーニングは,共振器軸方向における光子密度の不均一がキャリア密度の不均一を生ずるこ とによって起こる。これにより実効屈折率が不均一になり,発振の位相条件が変化する。

このため発振周波数等が変動し好ましくない。また,このホールパーニングの程度は位相 シフトの実現法に依存する。したがって動特性を軸方向空間ホールバーニングを考慮して 解析することおよぴ位相シフトの実現法を最適化することは実用上極めて重要である。

  本研究は,共振器軸方向の空間ホールバーニングを考慮したDFBレーザの動特性の解析と 位相シフ卜の最適化に関して述べたものである。

  本研究で得られた成果は主として次の4点にまとめられる。

@DFBレーザの特性を決定づける回折格子は高温の結晶成長工程中に平坦化しやすいが,微   細回折格子を刻み込んだInP基板にAs圧を加えると平坦化を抑えることが可能であること   を見いだしている。

@本研究では,軸方向の微小領域に分割する代わりに,キャリア密度の軸方向不均一関数   の振幅をパラメータとして含んだレート方程式を用いて動特性を解析する方法を考案し   ている。軸方向に分割した微小領域にF―matrixとレート方程式とを適用して自己無撞着   解析を行う汎用の解析方法と比較して,解析を大幅に簡素化することに成功している。

  また,解析を実行し,高速大容量光通信用光源として重要なモード安定性,大信号パル   ス応答,2次歪特性などの特性を明らかにしている。

◎,L/4位相シフト型DFBレーザは,単一縦モードで発振しやすいが,位相シフトの一点に光   が集中し空間ホールパーニングが起こりやすぃ。よって,導波路の幅を徐々に変化させ,

  ある領域長をもって等価的に位相シフトを実現する実効位相シフト構造の素子を試作し   て,空間ホールパーニングの抑圧効果を確認している。

@2次の回折格子を用いたDFBレーザは,放射モード光が基板に垂直に出射する。適切な位   相シフトによりこの光の分布を制御できることを明らかにし,新しい面発光レーザの可   能性を示している。

  以上のように,本論文は共振器軸方向の空間ホールパーニングを考慮したDFBレーザの動 特性の解析と位相シフトの最適化にっいて論じ,種々の有用詮知見を得たものであり,電 子情報通信工学の進歩に寄与するところ大である。

  よって,著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.

154 ‑

人 彦

則 夫

瑛 吉

正 幾

島 川

柴 宗

三 小

小 末

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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