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はじめに

脾損傷の治療は,かつては手術主体で,その多くは脾 臓摘出術(以下,脾摘)であった。その後 CT を中心とし た画像診断と,経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)の発達により治療の選択肢 が広がった。一方,種々の合併症や手術遅延が生じ,現在 も治療方針について一定のコンセンサスはない。本論文で は筆者の治療方針の変遷を,その経験,とくに問題を生じ た症例を中心に供覧し,さらにその経験を通じて至った, 温存のための早期開腹について報告する。

対象と方法

対象は 1988 年 1 月 1 日〜 2015 年 12 月 31 日の間に経験 した脾損傷で,来院時心停止を除外した 145 例。これを 治療方針の変遷に基づき,手術を主体とし TAE は行わな かったⅠ期(1988 〜 1995,40 例),TAE を積極的に行っ たⅡ期(1996 〜 2002,41 例),温存術のための早期開腹 を意識したⅢ期(2003 〜 2015,64 例)に分け,①その変 〔要旨〕【方法】過去 28 年間に経験した脾損傷 145 例を 3 期〔Ⅰ期(1988 〜 1995,手術主体 40 例),Ⅱ期(1996 〜 2002, TAE 主体 41 例),Ⅲ期(2003 〜 2015,早期開腹温存術を意識した 64 例)〕に分け,3 群間で治療の妥当性を比較し,30 歳 以下については別に温存率を検討した。 【結果】治療の途中変更が各期に 7/17/8%あった。Ⅱ期には手術が遅延すると脾摘を回避できないことを経験し,脾摘後感 染症も経験したため,Ⅲ期には温存を意図した早期開腹を意識した。Ⅰ期は最終的に脾摘 52%,温存術/経過観察が 23/25%,Ⅱ期は脾摘 48%,温存術 /TAE/ 経過観察が 12/15/24%,Ⅲ期は脾摘 23%,温存術 /TAE/ 経過観察が 16/20/41%であった。脾損傷の重症度はⅢ期で最も高かったが温存率は最も高く,若年者では 84%であった。 【結語】現行の治療方針で脾温存率を最も高められ,当方針は適切と考える。 〔キーワード〕脾破裂,経カテーテル動脈塞栓術,CT,脾縫合,脾部分切除 遷と,根拠となった症例を提示し,②各期間の治療の妥当 性を後視的に比較検討する。 患者の背景として年齢,性別,多発外傷〔Abbreviated Injury Scale(AIS)3 以上が 2 部位以上〕か否か,腹部に 他の臓器損傷(AIS 3 以上)があるか否か,New Injury Severity Score (NISS)1),脾損傷重症度を用いた。脾損傷

重症度については日本外傷学会臓器損傷分類 20082)を用 い,後述する理由で開腹症例にのみ適用した。2007 年以 前の症例については旧分類のⅢ a/ Ⅲ b,Ⅲ c/ Ⅲ d とⅣを, それぞれ 2008 年版のⅢ a,Ⅲ b に変更して扱った。また さらに 2008 年版のⅠ a/b,Ⅱ,Ⅲ a/ Ⅲ b,Ⅲ a/bHV を それぞれ 1 〜 5 点の点数に変えた。 治療の妥当性については,当初の治療方針のまま変更が なかった場合を適切(success)とした。また手術あるい は TAE で脾を温存した症例と,経過観察で治癒した症例 を温存(salvage)とした。温存率については各期間の症 例全体についてと,若年者(30 歳以下)についても検討 した。 統計学的検討は Scheffe’s test を用いて 3 群間を比較し, p< 0.05 で有意差とした。 所属:深谷赤十字病院 救命救急センター 著者連絡先:〒 366-0052 埼玉県深谷市上柴町西 5-8-1 深谷赤 十字病院 救命救急センター 受付日:2016 年 2 月 18 日/採用日:2016 年 5 月 25 日

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結 果

1.治療方針の変遷と経験症例 1)Ⅰ期 診断は主に超音波検査(以下,US)に基づき,CT は 18 例(45%)にしか行っていない。治療方針は受傷から 初療中のいずれかの時点でショック症状があったか,腹腔 内出血が中等量以上であれば,基本的には開腹術を行って いた。

症例経過を Figure 1 に flow chart で示す。緊急開腹は 脾摘 20 例,縫合 7 例,部分切除 2 例であった。脾摘のう ち 3 例が術中心停止したが 2 例は蘇生に成功し(腎動脈損 傷を伴う腎損傷と大腿骨開放骨折を合併→脾摘・腎摘・大 腿ターニケット遮断;Ⅲ b 型肝損傷合併→脾摘・肝ガー ゼパッキング),独歩退院した。他の 1 例は重症頭部外傷 と骨盤骨折で蘇生できなかった。術後出血で再開腹を要し た 2 例は,尾側膵損傷に膵縫合を行っていた症例と,十二 指腸損傷に縫合閉鎖を行っていた症例で,いずれも止血 に成功し経過に問題はなかった。なお脾縫合に際しては pledget を用いたが止血剤は用いていない。経過観察のう ち 1 例は翌日の US で液体量が増えたため開腹し脾摘を要 した。死亡は 4 例で,3 例は重症頭部外傷(全例 4 病日以内), 1 例は頸髄損傷に基づく気道トラブル(21 病日)による死 亡であった。 若年者は 22 例(55%)あり,脾摘 8 例,温存術 8 例, 経過観察 6 例で,温存率は 64%であった。脾摘のうち 2 例(16 歳,17 歳)で脾を粉砕して大網内に移植したが, follow-up CT(以下,f/u-CT)でそれは造影されず,本術 式が有用な印象はもてなかった。 2)Ⅱ期 Non-responder で CT 移動が不可能な場合以外,診断 には造影 CT を用い,37 例(90%)に CT を行った。治 療 に は TAE を 導 入 し,CT で 損 傷 が 高 度 な transient-responder のうち血圧の安定性が比較的高い症例に行っ た。TAE は全て放射線科専門医と共に行った。

症例経過を Figure 2 に flow chart で示す。緊急開腹は Figure 1  Flowchart of 40 patients with splenic trauma experienced between 1988 and 1995

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脾摘 14 例,縫合 5 例であった。縫合の 1 例において 3 週 目の f/u-CT で仮性動脈瘤が現れ TAE を行った。TAE の うち 5 例は循環動態不安定,貧血進行,腹腔内液体量が減 らないなどの理由で 3 病日以内に開腹術を行い,全例脾摘 となった。TAE で手術に移行しなかったうち 1 例は,疼 痛が強く 10 日間の持続硬膜外麻酔を要した。また他の 1 例では退院後 2 週目に発熱し,CT で脾梗塞に基づく横隔 膜下膿瘍・胸水と診断され退院 19 日目に再入院し,胸腔 ドレナージと抗菌薬投与で軽快するまで 22 日間の入院治 療を要した(Figure 3)。結局,初療で TAE を行った 11 例のうち 7 例でトラブルがあり,他の 4 例も,TAE 後に 生じた脾梗塞の範囲は想定したより広範囲であった。経過 観察のうち 1 例は当初の CT で腹腔内液体貯留はなかった が(Figure 4a),翌日突然ショックに陥り(Figure 4b), 脾摘を要した。損傷は脾門側の深い裂創で,脾動脈第 1 分 枝から出血していた(Ⅲ aHV)。手術所見と合わせて,最 初の CT(Fig 4a)において脾門部で低濃度に囲まれた領 域は contrast blush(CB)sign3)で,TAE を行っておく

べきであったと反省した。なお手術例を通して CT(Figure 5a)と実際の損傷形態(Figure 5b)に大きな差異がある と認識し,CT で損傷形態は判断しないことにした。死亡 は 6 例あり,重症頭部外傷が 4 例(全例 2 病日以内),ショッ クから離脱できず術後 24 時間以内死亡が 2 例(肝・門脈・ 両腎損傷合併と,肺門部損傷合併)であった。 若年者は 29 例(71%)あり,脾摘 12 例,脾温存術 3 例, TAE5 例,経過観察 9 例で,温存率は 58%であった。 Ⅱ期には脾摘後感染症を経験した。18 歳女性で脾損傷 Ⅲ a,左多発肋骨骨折・血胸,脳挫傷を負った患者は,頭 部外傷による出血傾向も考慮して脾摘を行ったが,リハビ リ期に溶血性尿毒症に陥り血漿交換を要した。治療に共同 で当たった内科と検討した結果,明確な因果関係は証明で きないが,脾摘を行っていなければ溶血性尿毒症は生じな かったと結論された。また 17 歳男性で脾損傷Ⅲ b,肝損 傷 Ib,両側肺挫傷を負った患者は,当初 TAE を選択した が翌日に脾摘となった。術後 3 週で退院したが,その 5 カ 月後と 9,12,24 カ月後にそれぞれ 40℃超の発熱を伴う Figure 3  A 71-year-old female suffered from subphrenic abscess and pleural effusion after

TAE of the spleen. The spleen was enlarged and the infarcted region was larger than having been predicted

Figure 4 A 24-year-old female of delayed splenic rupture

a: On primary CT, a semicircular low density(arrowheads)is observed in the spleen. No intraperitoneal fluid was detected. The region surrounded by the low density(arrow)was identified as ‘contrast blush’ after the splenic rupture

b: On the CT next day, splenic rupture with severe contrast extravasation(arrows)causes massive intraperitoneal hemorrhage

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扁桃炎で入退院を繰り返した。いずれも免疫学的検査に異 常は認められなかった。 Ⅱ期には偶然,突発的な敗血症患者で未成年期に脾摘 が行われていた死亡例も 3 例経験した。1 例は 44 歳男性, 細菌性髄膜炎・多臓器不全で 24 病日に死亡。もう 1 例は 43 歳男性,劇症型紫斑病・肺炎球菌肺炎で 4 カ月後に死亡。 もう 1 例は 65 歳男性,電撃性紫斑病・髄膜炎菌性髄膜炎 で発症同日に死亡した。 以上の経験から,脾温存を特に 30 歳以下においては強 く意識することとし,また開腹術が遅れた症例は全例脾摘 になったことから,温存術を行うには早期開腹が必要と 認識した。そこでⅠ・Ⅱ期に脾摘を行った 39 例の切除標 本写真を見直し,脾摘が真に適切であったかを検討した ところ,形態的には 12 例(31%)で温存できた可能性が あった。以後,non-responder,CT で腹腔内出血が多量 な transient-responder,造影剤の脾外漏出を認めるものに は積極的に開腹術を行うこととした。ただし輸液に対する 反応については,真に脾に原因があるか否かを慎重に判断 することとした。腹腔内出血が中等量以下で循環動態が比 較的安定し造影 CT で脾内 CB を認めるものと,肝損傷や 骨盤骨折など他に TAE の必要があるもの,さらに保存的 経過観察に不安を感じる症例では血管造影を行う方針とし た。 3)Ⅲ期

症例経過を Figure 6 に flow chart で示す。緊急開腹は 脾摘 13 例,縫合 7 例,部分または半切除 4 例であった。 縫合の 1 例において,2 週目の f/u-CT で仮性動脈瘤が現 れ TAE を行った。TAE のうち 1 例は,腹腔内出血が減 少しないまま 10 病日に破裂し,脾摘を要した(Ⅲ b)。経 過観察のうち 3 例で方針変更を要した。2 例はそれぞれ 5, 7 病日に破裂し,ショック症状が軽かったため TAE で止 血した。他の 1 例は初療時に循環動態は安定し,CT でも 脾内に低濃度域がみられるだけであったため経過観察した が,7 病日の f/u-CT で CB が出現し,翌日血管造影予定 とした。しかし同夜にショックに陥り CT を撮影したとこ ろ,CB の部分が破裂し大量の腹腔内出血をきたしていた。 開腹術で損傷形態はⅢ a であったが実質が露出して縫合糸 はかけられず,脾摘せざるを得なかった。これ以後,造影 Figure 5 Discrepancy of the splenic injury between CT and operative findings

a: On the initial CT, the spleen seemed fragmentated

b: At laparotomy, a deep laceration and several superficial lacerations were observed, and the spleen was preserved by splenorrhaphy

Figure 6  Flowchart of 64 patients with splenic trauma experienced between 2003 and 2015

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CT で CB を認めた場合は緊急血管造影の適応とした。死 亡は 7 例あり,肝硬変・脾腫大を伴っていたものが 3 例(全 て 1 病日死亡),血液疾患による脾腫大を伴っていたもの が 1 例(7 病日死亡),ショックから離脱できずに 2 病日 以内に死亡したものが 3 例(肝損傷Ⅲ b 合併,不安定骨盤 骨折合併,刺創による膵断裂・脾動静脈断裂合併)であった。 若年者は 32 例(50%)あり,脾摘 5 例,脾温存術 7 例, TAE6 例,経過観察 14 例で,温存率は 84%であった。 Ⅲ期の手術についてはfibrin-thrombin-aprotinin-collagen sheet (FTAC)を多用している。開腹後,脾を把持し圧 迫止血しながら循環の安定化を図る。次に損傷を確認し, 脾の厚みの半分以下の裂創であれば FTAC を貼付して止 血を図る。止血できればそれ以上の操作は行わない。止血 しきれない場合,縫合あるいは大網充填縫合を行う。部分 または半切除の場合は必要に応じ脾動脈枝を結紮切離し, 断面が小さければ FTAC 貼付,大きければ縫合を行う。 縫合には吸収糸を用いているが,Ⅰ期と異なり pledget は 異物と考え用いていない。 2.各期間の治療の比較検討 患者背景と治療結果を Table 1 に示す。各期で NISS・ 多発外傷率・腹部多臓器損傷率に差はなかったが,脾損傷 の程度はⅢ期が重く,しかし全体の中での脾温存率はⅢ期 が有意に高く,特に若年者では 84%であった。開腹術を 行った中での脾温存率は,統計学的に有意差はなかったが, やはり同様にⅢ期において最も高かった。初療で適切な治 療を選択できた率に有意差はなかったが,Ⅱ期に治療の変 更が多かった。死亡率に差はなかった。

考 察

脾損傷の最適な治療方針の選択は容易ではない。とく に近年,CT と TAE の発達により診断治療に幅が広がり, かえって複雑な状況を生み出した。また脾摘後重症感染症 (overwhelming post-splenectomy infection;OPSI)4)が注

目されて脾温存が強調され,治療法の選択にさらに複雑さ が増している。脾摘後感染症はあまり問題を生じないとす る論文も散見されるが,これらは比較的短期間の調査が多 く,長期観察では重篤な敗血症が発生しており5),筆者は 若年者で温存を強く意識するようになった。 現在,non-responder には緊急開腹,損傷が軽微で腹腔 内出血があっても少量で,循環動態が安定していれば経過 観察を行うことに異論はないであろう。しかしこれらのど ちらかに当てはまる頻度は比較的少ないのが実情である。 また実臨床で脾単独損傷であることは少なく,筆者の経験 でも腹部に他の臓器損傷があることはもちろん,8 割以上 で腹部以外にも重症外傷を伴っているため,全体の出血量 や出血傾向を十分に勘案しながら治療方針を決定する必要 がある。なお本研究では腹部に複数の臓器損傷があること が多いため,重症度としては NISS を用いた。近年,NISS の方が ISS より優れるとする論文が多い6) 診断については現在,multi-slice CT の発達により画 像の精度が格段に向上している。しかし脾は造影ムラ (mottled pattern)7)を呈しやすく,読影に慎重さが求めら れる。さらに低濃度領域が全て損傷を表すとは限らず,動 脈攣縮による虚血野も同等に表すため,肝8)や腎9)と同じ く過大評価に陥る危険がある。筆者は経験上,CT で損傷 形態を確定することはしておらず,そのため本研究の脾損 傷形態は開腹例にしか適用していない。造影 CT では代わ

Laparotomy cases only(n=30 in Ⅰ, 25 in Ⅱ, 26 in Ⅲ)

** Spleen salvage rate in the younger patients less than 30 years old(n=22 in Ⅰ, 29 in Ⅱ, 32 in Ⅲ) Abbreviations. yo.: years old, N.S.: not significant, NISS: New Injury Severity Score

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りに CB と脾外漏出所見を重要視し,それぞれ緊急 TAE と開腹術の適応としている。この評価法は海外の論文10) でも重要視されている。なお,造影剤の脾内貯留は一般的 に仮性動脈瘤や CB,脾内漏出,pooling などと呼ばれて いるが,筆者は CT 所見として表現するには CB と表すの が最も適切と考え,これを用いている。 TAE か開腹かという議論は,温存か摘出かと同等な議 論になることがある。しかしこれは適切ではなく,脾は手 拳大なので温存に努めやすい。重要なことは,脾を温存す る意識を強くもって手術に臨むことで,これにより温存率 が有意に上昇することは過去にも報告されている11) また脾は免疫臓器で,損傷を負うと時間単位で肥大する。 このため手術が遅れると脾は扱いにくくなり,さらに実質 は肥大するが被膜は伸展せず実質が露出し,縫合糸をかけ られずに摘出せざるを得なくなる。これは過去にも報告さ れており12),筆者の経験でも手術が遅れた症例全例で,同 様の理由で脾摘に至っている。したがって,TAE が奏効 しなかったら開腹術という流れでは,温存は困難になる。 TAE を行っても 24 時間以内に開腹すれば温存できる可能 性は高まるかもしれないが,TAE 後の早期にその判断を するのはかえって複雑と考える。初療においてどちらで温 存できるかを選択する意識が重要で,そのため筆者は,特 に若年者で損傷が高度なものについては開腹術を選択して いる。 脾温存術には大別して縫合と部分(または半)切除があ る。前者の場合,単なる縫合で止血できれば良いが,時に これに難渋し,操作に時間がかかり繰り返し縫合糸をかけ たりするとトラブルに陥りやすい。近年 FTAC が発明さ れ,これは生体親和性が高く止血力も非常に強い13)。筆者 はこれを多用し,時に大網充填も行っている14) 縫合を行った 19 例中 2 例(11%)で,術後に 2 〜 3 週 で仮性動脈瘤が生じ TAE を要した。同様の報告は検索し た限り渉猟し得なかったが,縫合の場合は 1 カ月間,週 1 回 US または CT で経過観察が必要と考える。 治療成績を振り返ると,脾損傷の重症度はⅢ期が最も高 かったが温存率は最も高く,特に 30 歳以下では 84%で温 存できていた。これには,保存的経過観察が増加したの と,来院時の緊急開腹術における温存率が増加した 2 つの 因子が関与している。前者については,脾損傷は以前考え ていたより多くの症例,特に若年者では経過観察で治癒で きる可能性が示唆され,海外の報告でも同様の傾向がみら れる15)。後者については早期開腹と,温存術を強く意識し た手術が功を奏していると考える。 本論文では筆者の臨床経験を通じ,問題症例を提示しな がら診断・治療方針の変遷を概説した。一個人の経験であ るため症例数は多くはなく,対象期間が長いためその間の 診療の質が一定とはいえない。また,早期開腹術を行った 症例の中で,TAE でも治療できたものがないかを検討す る必要があるが,これは容易ではない。本論文は脾温存に ついて筆者が熟考しながら行ってきた結果であり,諸先生 方の臨床の一助になれば幸いと考える。 文献

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40 cases in G-Ⅰ(1988-1995: principally laparotomized), 41 in G-Ⅱ(1996-2002: transcatheter arterial embolization. TAE:was introduced), and 64 in G-Ⅲ(2003-2015: early laparotomy for splenic salvage was intended). The validity of the management strategy in each group was judged. Additionally, the salvage rate in younger patients under 30 years old was compared.

Result:In G-Ⅰ, Ⅱ and Ⅲ, conversion of the management was required in 7, 17 and 8% , respectively. As the delayed laparotomy made the salvage hard, and the post-splenectomy severe infections were experienced, early laparotomy with the intention for salvage was adopted in G-Ⅲ. Finally, splenectomy rates were 52, 48 and 23% in G-Ⅰ, Ⅱ and Ⅲ; and operative salvage rates were 23, 12 and 17% , respectively. Close observation rates were 25, 24 and 41% , respectively. Salvage rates by TAE were 15% in G-Ⅱ and 19% in G-Ⅲ. In spite of the highest severity of splenic trauma in G-Ⅲ, the splenic salvage rate was the highest(77%), especially in the younger patients(84%).

Conclusion:The present strategy in G-Ⅲ is considered most appropriate since the splenic salvage rate is the highest. KeyWords:splenic rupture TAE, CT, splenorrhaphy, partial splenectomy

Figure 2  Flowchart of 41 patients with splenic trauma experienced between 1996 and 2002
Figure 4 A 24-year-old female of delayed splenic rupture
Figure 6  Flowchart of 64 patients with splenic trauma experienced between 2003 and 2015

参照

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