活用にあたって
平成 7 年 (1995 年 ) におこなわれた前回調査から 10 年たった 平成 17 年 (2005 年 ) に、「同和問題等人権問題に関する市民意識 調査」が行われました。この冊子は、その報告書の中からいくつ かのポイントを抽出し、作成したものです。 気づくこと、学ぶこと、行動すること、そして、ともに生きる 豊かな関係づくりについて、一緒に考えていきましょう。 今後の啓発活動にお役立てください。「市民意識調査」自由記述から
人と違うことをするのは、とても勇気がいることで、世間の目を
気にしてしまう。一人一人は、とても弱い人間なので他の人や周り
を見て、差別とはわかっているけれど、自分の家、婿、嫁にはそうあっ
てほしくないと、どこかで思っている。自分が一番でなくてもよい
が、一番下はいやだという気持ちがいろいろな差別を生み出すと思
う。体の不自由な子が子どもの嫁さんにこられたら、もっと他に女
の子がいないのと、言ってしまうと思う。
いけないとこととは思いながら、みんな自分の家、子どもが幸せ
であってほしいから。何が幸せなのかは、わからないけど…。
(40 ∼ 45 才女性)
こんなことがありました・・・。
2004年2月、鳥取市内での出来事です。
乗客 M 「近いけどいいですか ?」「○○まで。」 運転手 「○○かー、あんなところまでタクシー使うだか ?」 乗客 M 「歩けない事情があるので ...」 運転手 「歩けん事情があるのに飲みに行くだか ?」 乗客 M,N 運転手の言葉と態度に気分を害し、 二人で小声で会話をする。 この時点で、発車。 運転手 「他のタクシー会社だったら行ってくれんで。」 乗客 M 「他のタクシー会社さんは快く引き受けてくれます。」 運転手 ため息のような声 ○○に到着し、乗客 M が身体障害者手帳をだす。 乗客 M 「これでお願いします。」 運転手は無言で受け取りメモをする。 運転手 「じゃいいです。」 乗客 N 「ありがとうございました。」 運転手は無言で走り去った。これって「差別」!? あなたは、どう思いますか?
あなたなら、どうしますか?
気づくこと、そこからはじまります。
日常生活の中にある差別を、「ある」と気づき、認識することから、取り組みは
はじまります。
市民は、どんな差別があると思っているのでしょうか。調査結果をみてみると…。
表 1 「あなたは日本において結婚や就職等社会生活の中で、次のような差別があると思いますか」 差別が「ある」と答えているのは、一番多いもので、「障害者に対する差別」の 67.1% です。 見ようとしなければ気づかない差別の存在について、もう一度みつめなおしてみませんか。自由記述から
このようなアンケートに答えることで、案外と自分自身 の行動と言動等を見つめるよい機会でした。 (70 歳以上 女性 )タクシー運転手 (1 ページの事例 ) は、研修を受けていませんでした。
あなたの学ぶ機会は…。
図 1「障害者問題についての教育や研修を今までに受けたことがありますか」 全体で「受けたことがある」人は 25.8% で、4 人に 1 人しかいません。 職業別にみると、「ある」が 5 割を超えているのは、公務員・教員と学生だけです。 教育・研修の機会があること、そして、参加してみること、それが大切ではないでしょうか。 タクシー運転手は差別をしようと思ってしたわけではありませんでした。 それは、意図せずに行なった無自覚な差別行為でした。 しかし、被害者は…。自由記述から
過去のことでも、今あることでも、その事実は知っておくべきだと思い ます。事実に目をそらさず受け止め、よい答えを見つけるまで学ぶことが 大事だと思います。私が障害者問題にしても、エイズ問題にしても偏見を もってしまうのは、よく理解していないから。自信がないから。話題に することを避けてしまう。問題なのは、やっぱり知らないことだと思う。 (25 ∼ 29 歳 女性 ) あると思う どちらともいえない ないと思う わからない 無回答 計 女性に対する差別 (59.7)59.9 (18.7)21.4 (12.3)12.8 (2.3)3.3 (6.9)2.6 100.0 障害者に対する差別 (64.4)67.1 (15.3)14.9 (10.0)11.7 (3.4)3.8 (7.0)2.5 100.0 アイヌ民族に対する差別 (33.4)26.1 (12.1)18.5 (11.9)16.8 (34.6)34.8 (8.0)3.7 100.0 同和地区住民に対する差別 (58.3)50.9 (18.2)21.3 (11.2)15.7 (6.7)9.6 (5.7)2.6 100.0 在日韓国・朝鮮人に対する差別 (59.1)58.2 (12.8)17.9 (8.3)8.8 (12.5)12.3 (7.4)2.7 100.0 その他の外国人に対する差別 44.2 24.9 12.7 15.3 3.0 100.0 エイズウイルス感染者に対する差別 53.6 16.2 7.2 20.2 2.9 100.0 ハンセン病回復者に対する差別 43.8 17.9 11.1 24.3 2.9 100.0 性同一性障害者に対する差別 42.6 20.6 9.0 24.8 3.0 100.0 ( )はH7年調査の数値 (%)“人権 ”って、なんでしょうか…?
1 ページの事例から、考えてみましょう。
運転手が発した「歩けん事情があるのに飲みに行くだか ?」 “せめて、身体障害者手帳を出した時点で、差別発言であったことに気づき、 謝罪して欲しかった”とMさん。 “人権”は、日常生活のなかにある「自由に移動する」権利や「文化的な生活をおくる ことができる」権利、「レクリエーション・余暇等に参加する」権利など具体的なもの です。それを尊重されなかっただけでなく、人間として対等に接客されませんでした。 こういう差別、人権侵害でした。あ な た が 考 え て い る 人 権 と は ? !
表 2 「あなたの人権は、保障されていると思いますか」 「保障されている」というあなたの“人権”とは ? 「保障されていない」というあなたの“人権”とは ? 表 3 「あなたは、他人の人権を侵害したり、人を差別していると思いますか」 あなたが考えている“人権侵害”とは ? あなたが考えている“差別”とは ? 「人が生まれながらに持っていて誰からも侵されない権利」? それは、「衣・食・住」「健康的で文化的な暮らしをする権利」「自由」「平等」 「差別を受けないこと」...? (%) 十分に保障 されている 十分には保障されていない 保障されていない わからない 無回答 平成7年度 39.9 33.0 4.7 20.6 1.8 平成17年度 29.7 35.6 6.5 26.3 1.9 (%) していると思う そうは思わない わからない 無回答 平成7年度 11.2 73.9 13.7 1.2 平成17年度 12.3 69.4 17.5 0.8 自分の人権についての 保障意識 調査年度 他人の人権への侵害 意識の有無 調査年度“人権”、あなたの言葉で表現してみてください。
夢はヨーロッパ旅行。お金さえあれば行ける ? そのお金はどうやって稼ぐ ? 高校は行けるのか ? ましてや就職口はあるのか ? 障害者の自己実現のための福祉サービスの選択権の保障、苦情の解決を確保す ることなど。 名前は「ハート・プラス」 このマークは身体内部に障害があ ることを表現しています。 Mさんには内部障害がありました。身体障害者手帳を出した M さんに、無言で対処し 去って行った運転手。2 次被害が…。みなさんにとって、人権とは何ですか。
医療では… 病院の経営方針で「患者の人権を尊重しま しょう」と唱えることは大切です。しかし、 大事なことは、インフォームド・コンセン トの実行、貧富や社会的地位に関係のな い最善の医療を提供することなど。 ある知的障害者の場合… ( 注 ) インフォームド・コンセント : 十分な説明をした上で同意を得ること(納得診療) “障害者は自由に飲食に行くこともできないのでしょうか ?!”とMさん。 「思いやりや優しさ」? これは、人間としてとても大切なものです。しかし、一般的、抽象的な人権はあ りません。英語では humanrights。この“s”は、具体的に数えられる名詞につ く複数形を表します。 毎日の生活、毎日の移動、毎日の仕事といったような、生きていくための生活の 問題につながっており、実体に根ざしているものです。思いをはせる
被差別当事者や人権侵害を受けた人は、いったいどのような思いでいるので
しょうか。差別の現実や当事者の思いは、聴き、知り、
学ばなければわかりません。
●何日も前から体調に注意して…●
今回のことに対し事実を認め、謝罪の言葉や、具体的に何がどんな風にいけ なかったのかを聞かせて欲しいと思っていました。終始敬語なしの怒鳴り口調、 ため息のような不愉快な声、身障者だと分かっても何の言葉もないし、「あり がとうございました」とは一度も言われませんでした。 帰宅した娘は、すぐにタクシーの運転手さんとのやりとりを私に話しました。 なかったことを、わざわざつくり話す訳はありません。身体に障害をもっている ため、いつでも自由に外出することができる訳ではないので、友達に心配かけな いように何日も前から体調にも注意して、出かけていきました。運転手さんの言 動によって、楽しい気持ちが一変して心が傷つき、気分がとても悪くなったこと を理解していただきたいと思います。 ( 乗客 M さん親子の手記 ) 表 4 「鳥取市では小学校、中学校で同和教育が行われていますが、あなたはどのようにお考えですか」 約半数の人が「やるべきだ」と答えています。 図 2 「鳥取市では小学校、中学校で同和教育が行われていますが、あなたはどのようにお考えですか」 同和教育を受けてきたと思われる世代の人(図の 15 ∼ 49 歳までの人)は、「やる べきだ」と多くの人が考えています。しかし、「現在の進め方には問題がある」など、 これからの進め方についての課題も提起されており、その進め方に等ついては、改 善や工夫をしていくことが大切ではないでしょうか。 では、差別の現実は…。●こんな気持ちを味わうことになろうとは●
あるハンセン病療養所で聞いた言葉が忘れられません。「自分の療友は、予防 法廃止の前年に亡くなった。最初はなんとかわいそうなと思った。でも、いまは そうは思わない。法が廃止されても何も変わらない現実をみなくてすんだのだか ら。」また、別の入所者は、「法が廃止されて、久しぶりに兄貴から電話がかかっ てきた。しかしそこで言われたことは、まさかお前帰ってくる気でないだろうな、 という言葉だった。そんなつもりはないから安心しろと言ったが、法が廃止され てこんな気持ちを味わうことになろうとは、思いもよらなかった」と語られた。 …いくら法が廃止されても、社会が変わっていない即ち私たち一人ひとりが、 法廃止前と後とで何も変わっていないからです。隔離してきた側が変わらないの だから、隔離の現実が変わらないのは当然といえるでしょう。 ( 鳥取市人権情報センター機関誌「架橋」15 号より ) (%) ぜひともや るべきだと 思う やるべきだ が、現在の 進め方には 問題がある 特に必要と は思わない むしろやら ない方がよ い わからない 無回答 平成7年度 33.4 10.5 23.9 16.6 11.5 4.0 平成17年度 32.6 12.7 22.0 15.6 13.7 3.5 小・中学校での同和教育 の必要性 調査年度 聴き、知り、学ぶ、この実態は…。今でも、部落差別はあるのですか?
差別は、身近なところに存在しています
表 5 「あなたは、最近同和地区の人々に対する差別的な発言や行動・落書きを直接見聞き されたことがありますか」 前回調査より「見聞きした」が減っています。 しかし、この14.9%というのは少ないようですが、鳥取市民の 2 万5千人余りにあたります。 あなたは、これをどう思いますか。 「部落差別がある」と答えた人は 50.9%(P2・表 1) ですが、図 3 を みると、差別は身近なところで起きていることがわかります。 「一人ひとりを大切にする」と言われます。 それは、どういうことでしょうか。結婚問題にみる差別の現実
図 4「もし、あなたが結婚の時、被差別部落を理由に反対されたらどうしますか」●こんな差別も…●
ある日、友人と喫茶店で雑談をしていたときのこと。「ところで、同和問題のことだ けどな、お前どう思う ?」と質問をしたところ、突然何を言い出すのかという感じの友 人に、大学の「人権論」での課題について話し始めると、友人は急に声を沈めて、「大 きな声で同和、同和と言うな。間違われるやないか」「こんな話聞かれたら、自分たち も部落と思われる」と言って、話をさえぎった。 …部落差別は自分たちの世代にも存在していること、そして、それは、「喫茶店での普 通の会話」からも排除されるべきものとしての取り扱いを受けるという厳しさであった。 部落出身者も登場しない、「部落に対する」侮辱や見下しも登場しない、“差別の現実” がここにある。 ( ビデオ「今でも部落差別はあるのですか」手引書より ) (%) 見聞きした ことがある 見聞きしたことがない 無回答 平成7年度 20.6 75.3 4.2 平成17年度 14.9 82.1 2.9 差別的な発言や行動、落書きを 直接見聞きしたことが あるか 調査年度 平成17年度 平成7年度 「自分の意志を貫いて結婚する」と考えてい る人は 25.7% で、4 人に 1 人です。また、「反 対が強ければ考え直す」と答えている人が、 今でも、10 人に 1 人の割合でいます。 図 3「最近、見聞きしたもので、同和地区に対する差別的な言動をしたのは 誰ですか」 図 5 「もし、あなたの子どもが結婚しようとする相手が被差別部落の人であると わかったとき、あなたは、どうすると思いますか」 図 5 を み る と、「 結 婚 を 祝 福 す る」は前回調査より約 10% 増え て 50.9% です。「両性の合意にも とづく」結婚を祝福する私たちに なりたいと思いませんか。それでも、そっとしておけば差別はなくなりますか ?
差別の現実、そのなかで生きている被差別当事者の思いは…
こんな差別事象が…
誰が同和地区出身者なのかを、なぜ調べる のでしょうか。 差別身元調査、あいつぐ戸籍不正入手事件や いまも繰り返される部落地名総鑑事件…。 それでも、そっとしておけば差別はなくな りますか。こういう状況のなかで被差別当 事者があじわう苦悩や悲しみ、怒り、葛藤 を考えてみたことがありますか。●見ようとしなければ見えないストーリー、私の部落●
ひたすら部落を隠して結婚し、遠くの地で生活している二人の姉妹。自殺した父親の 通夜に帰ってきた二人。連れあいも子どもも一緒にではなく、葬式にも出席せずに帰っ ていくその姿。なんとも辛く切ない。「これを差別に負けた姿」と言えるだろうか。そ こまでして隠すもの、守らなければならないものは何か。“命をかけて命を守る”、それ は自らの命だけではない。 「ずっと差別されているのは知ってるさ」「人と交わるから、く ( 気 ) になるんで、交 わらなければ、人が差別しようが気にならねえさ」とつぶやいた、ある村で一世帯だけ で暮らす部落のおばあちゃん。だが、長い間手を合わせてきた先祖の墓碑が「差別戒名」 だと知って、何も言わずじっと私をにらみ続け、その大きな瞳から落ちた涙。私が伝え なければならない、大切なおばあちゃんにとっての“ふるさと”がここにある。 私にとって「部落」とは、「プラスもマイナスもまるごと含めて」いつもにぎやかで、 なつかしい大切なもの。 その部落を隠すことは、このにぎやかで、いつもなつかしい「ふるさと」を隠すこと であり、父母を隠すことであり、自分を認めないこと。 「差別」とはその大切な“ふるさと”部落を否定することであり、「絶対に許せないも の」。だが差別は命を奪う。時にはその差別から命を守るために、「逃げ、隠す」ことは 必然だと思う。 「許さない」とは、奪われたものを奪い返していくこと、自分自身が「部落をじゃまもの」 として奪ってしまっているものを含め奪い返していくことだと思う。 図 6「あなたは、同和問題の解決のためには、どうしたらよいとお考えですか」 前回調査に比べて、「このままそっとしておけば自然になくなる」とする考え の人が増えています。「そっとしておく」ということは、被差別当事者に「差 別がなくなるまで我慢しなさい」と言っていることになりませんか。 また、「同和地区の人が差別されないようにすることが大切」と考えている人 がいますが、いじめ問題でも言われるように、いじめられている者や差別さ れる側に、その原因は一切ありません。被 差 別 体 験
表 6 同和地区であるということで差別を受けたのは「どのような社会関係や場面での体験ですか」 ( 複数回答可 ) 「2005 年鳥取県同和地区生活実態把握等調査」によると、約 3 割の人が被差別体験 があると答えています。「ある」と答えた人にその場面等を尋ねた結果が表 6 です。 日常生活の場や結婚などさまざまな場面で差別が存在していることがわかります。 同和地区出身かどうかの聞き合せ事象 い つ 2005年5月26日(木) ど こ で 鳥取県東京事務所 だ れ が 不明(一般市民と名乗る) 内 容 一般市民を名のる者から、ある鳥 取県職員が同和地区出身者かどう かを問う電話があった。「お答え できない」と答えたところで、電 話を切られた。 (%) 区分 結婚 就職 学校生活 職場や職業上の付 き合い 日常の地 域生活 その他 不明 平成17年 鳥取県調査 鳥取県 23.4 5.2 21.2 27.6 39.4 9.9 1.9 (ヒューマンライツトーク (2006 年 12 月) 『ふるさと∼もうひとつのストーリー∼』に寄せられたメッセージより )(%) 同和地区の 人たちの問 題なので、 直接関係な い 差別意識を もっていな いので、関 係ない 同和問題はすべての人 に関わりのある人権問 題であり、自分自身の 問題としてその解決に 努力していく 差別意識は もっている が、解決に 努めていな い 無回答 計 昔はあったが 今はない 2.8 66.0 24.1 4.2 3.0 100.0 残されているのは 結婚問題だけ 7.5 31.2 41.4 15.5 4.4 100.0 教育・就労の面で 差別あり 3.3 25.6 53.3 13.3 4.4 100.0 部落の人々に対する 根強い差別 意識が あると思う 2.8 17.7 57.2 19.0 3.2 100.0 わからない 4.9 47.4 28.0 10.7 9.0 100.0
「カンケイナイ」
差別を残しているのは…。
「愛の対義語は、憎しみではなくて無関心。憎しみは愛に変えられるが、
無関心からはなにも生まれない」( マザー・テレサ )
図 7 「現在でも部落差別が存在していますが、それは、どのような意識だと思いますか。 あなた自身の意識に一番近いものをお選びください」 関わりたくない、避けたいと考えている人があわせて 2 割あります。また、「部落の人 の問題なので関係ない」は 2.4% ですが、「差別意識を持っていない」とする 39.1% は、 「だから関係ない」ということに結びつきはしないでしょうか。 知ろうとしない「積極的無関心」、 知らなかったという「消極的無関心」、 こんな言葉をご存知でしょうか。自分の問題として考える。気づく、学ぶ、行動する…
表 7 「部落差別実態の現状認識」と「同和問題と自分自身とのかかわり」との関連性 差別の存在および実態を認識することが、自分自身とのかかわりを認識することにつながって くるのではないでしょうか。 表 8 「同和問題の講演会・研修会への参加の有無」と「同和問題と自分自身のかかわり」 との関連性 参加したことがある人は、「自分自身の問題として」とらえ、参加したことがない人は「関 係ない」ととらえている人が多いようです。まず、参加してみましょう。 県外から来た人で、「私は被差別部落、同和問題などという言葉さえ聞いたこ とがなく、まったく知らない。だから差別したことがない」と PTA( 小学校 ) の会合などで言われる方がいます。人権問題として大変なことだのに地域に よってこんな格差があるのかと驚きました。無知であること、無関心であるこ と、これがいつまでも差別がなくならない原因だと誰かが言われました。まっ たくそのとおりだと思います。まず、差別は自分の問題だととらえることが大 事だと思います。子どもたちにも同和教育というのは必要なことだと考えます。 (40 ∼ 45 歳 女性 ) 同和問題と自分自身との関わり 現在の部落差別の実態認識 (%) 同和地区の 人たちの問 題なので、 直接関係な い 差別意識を もっていな いので、関 係ない 同和問題はすべての人 に関わりのある人権問 題であり、自分自身の 問題としてその解決に 努力していく 差別意識は もっている が、解決に 努めていな い 無回答 計 参加したことがある 3.2 28.4 50.4 12.0 6.0 100.0 参加したことがない 5.6 49.4 23.3 14.7 7.0 100.0 同和問題の講演会・研修会へ の参加の有無 図 8 「あなたは、今まで同和教育の講演会・研修会に、 なぜ参加しなかったのですか」 同和問題と自分自身との関わり自由記述から
学びの場、そして自分との出会い
「自分は差別していないから何もしなくてもいい」
そう思っていたAさん、それを変えたものは…
・研修への参加 ・中学校時代の同級生の思いにふれ、自分のことだと思い愕然としたこと ・わが子、先生、周りの人々の反響 ・行動することで自分が変わり、新たな関係づくりがはじまる学ぶことで得るもの
図 9 これまで学校で同和問題をはじめさまざまな人権問題の学習をして「どんな印象をもちましたか」 (2 つ以内で選択 ) 表 9 「同和問題シリーズを読んだことがあるか」と「同和問題と自分自身とのかかわり」との関連性 読んだことがある人は、自分の問題としてとらえている人が多いことがわかります。 学ぶことの大切さを現しているのではないでしょうか。 小学校時代は、ほとんど同和教育を受けて いません。一度映画を見たくらいです。「部落 差別」って昔のことだと思っていたけど、今で もあるのかな?」と思い親に話すと、「そうい うことには関わらんでいい。黙っとればいい」 と言われて、学校で習ったことより、その言葉 の方が印象に残ってしまったんです。 中学校時代は、同和地区の生徒と友だちとし てつきあっても、部落差別の話になると、私は知 らないふりをしたり、逃げたりしていました。 その後、部落差別の厳しさを実感する出来事 に何度か出会いましたが、「自分は差別していな いから何もしなくてもいい」と思っていました。 そんな気持ちを変えたのは十数年前、中学 校時代の同級生で同和地区出身のBさんとの 再会でした。 私が参加した保護者研修会の講師がBさん だったんです。 「中学校の時、友だちが部落差別の話にな ると逃げていくのがつらかった。そういう人は 自分でも気づかないうちに心の中で差別して いると思う…」 その言葉を聞き、自分のことだと思いまし た。「私は差別をしていたんだ…」と思い、愕 然としました。 後日、勇気を出してBさんに会いに行きまし た。Bさんからいろいろな話を聞き、知ろうと しないことも差別意識の表れだとわかりまし た。それまで気づかなかった自分を情けなく 思いました。 その気持ちをBさんに伝えると 「気づいてくれただけでうれしい。これか らは一緒にがんばろう」と言ってくれたんで す。Bさんの心の広さに胸が熱くなりました。 その出来事を小学校のクラス懇談で話す と、先生から「その話を子どもたちにしてもら えないだろうか」と頼まれました。初めてのこ とで自信もなく、わが子の立場も心配でした が、「お母さんが話したいならいいで」と背中 を押され、引き受けることにしたのです。 当日は研究発表会でもあり、大勢の人が訪れ ました。「差別を受けたという話はよくあるが、 差別をしていたという話は初めて聞いた」と、 大きな反響があったようです。そこで、「なぜ、 差別する側は何もしないんだろう」という疑問 が浮かび、だんだんと怒りがわいてきました。 差別を受けている人が状況を変えるのは難 しい。差別している人や、それを見過ごしてい る周りの人が変わらなければ差別はなくならな い。そのことに気づける人を増やしていきたい という思いで、現在まで活動を続けてきました。 私は、先生でもなければ専門家でもありま せん。自分が経験したことしか話せません。 でもそうやって行動していくことで何かが変 わっていくと信じています。私自身、まだまだ 気づいていないこともたくさんあると思いま す。気づけるように、これからも学習を積み重 ねていきたいと考えています。そうすれば、ま た新たな気づきが生まれて、行動へとつなが るはずです。差別する立場の人が変わらなけ れば差別はなくなりません。 (とっとり市報 「同和問題シリーズ」2007年2月号より)『私を変えた出会い』
(%) 同和地区の 人たちの問 題なので、 直接関係な い 差別意識を もっていな いので、関 係ない 同和問題はすべての人 に関わりのある人権問 題であり、自分自身の 問題としてその解決に 努力していく 差別意識は もっている が、解決に 努めていな い 無回答 計 いつも読んでいる 1.6 19.8 66.0 8.2 4.4 100.0 たまに読むことがある 3.9 32.7 44.0 12.7 6.7 100.0 読んだことはない 5.0 48.3 25.9 15.3 5.6 100.0 市報自体をあまり読まない 5.7 35.0 38.8 12.6 7.9 100.0 同和問題と自分自身とのかかわり 市報「同和問題シリーズ」を 読んだことがあるか 学校で同和問題をはじめとする 人権問題の学習をしたことがあ る人は 59.5% でした。 図9にあるように、学習を受けた 人は、肯定的な印象をもってい る人が多くいます。 次ページの『私を変えた出会い』(A さんの手記)を読んでみてください。「自分の問題」として取り組むことが大事だといわれます。
では、その「自分の問題」とは、どんなことなのでしょうか。
自分の頭で考えていくことが大切だと思います。講演会などで話を聞いてわかっ たつもりになるのが怖いです。話を聞いて、「じゃあ、自分はどうなのかな」とか「自 分の周りに似たことはなかったな」と振り返り、見つめていくことで、次に自分 ができそうなことが見つかる気がします。「私は将来、結婚するときに反対され るかもしれません」と大勢の人の前で話をした 16 歳の部落の子の発言は、たっ た 16 歳の子にここまで言わせてしまっているこの差別の現状に怒りを覚えまし た。私がこうやって言わせている一人なんだと悔しく思いました。簡単な問題で はないですが、でも取り組んでいかないといけない大切なことだと考えます。 (40 ∼ 44 歳 女性 ) 自分の問題とできているかどうかは、差別に出会ったときにとるあなたの行動か らもみることができます。「誤りを指摘した」人は 23.4% で、「説得までした人は」 わずか 2.2% しかありません。誤りを指摘するだけでなく説得できるようになるこ とが大切です。「見過ごした」人は、他人の差別行為を差別だと気づいていないと いうだけでなく、自分自身の差別行為にも気づいていないことが考えられます。ま た、「誤りを指摘できなかった」人が約半数います。 指摘できなかったのはなぜでしょうか。 この調査の別の質問で、4 割の人が「同和問題を自分の問題として考える」と答えてい ますが、図 10 をみると、今一度「自分の問題」とはどんなことかを考えてみる必要が あるのではないでしょうか。●“おまえ自身はどう向きあうんや ?”●
「障害者」介護。なんだかいい響きだし、 かっこいいかも ...。大学生になったぼ くが「障害」者介護を始めたのは、そん な軽薄な理由からでした。でも、それは ぼくの人生が変わってしまったといって いいくらいの出会いだったのです。 ぼくが介護に入った、脳性マヒ「障 害」である彼は「ぼくら「障害」者に対 する差別とおまえ自身はどう向きあうん や ?」とぼくにつきつけてきました。そ んなこと考えたこともなかったぼくは、 偏見のかたまりみたいなもの。介護を通 してぼくの差別的な価値観が表に出てく るわけで、そのたびに「おまえ、それが どういうことかわかってるのか !」って。 もちろん、ぼくにとっては、きつい言葉 でしたが、彼だってぼくの差別的な価値 観や偏見につきあうのですから、大変な はずです。それでも彼はぼくと向きあっ てくれるのです。 彼とは 5 年のつきあいになりますが、 正直、何回かはやめたくなりました。 「ひょっとしたら、おまえの介護でオレ は殺されるかもしれへん !」なんて言わ れたときには、「なんでそこまで言われ なあかんねん !」って気持ちになりまし た。でも彼にしたら「生きるか死ぬか」。 彼は「障害」者でぼくは「健全」者。立 場的に、ぼくは差別する側にあるのだ、 そういう関係性からも考えさせられるこ とがたくさんありました。 彼は『青い芝』などで活躍したバリバ リの運動家。あたっちゃったっていうか、 めぐりあっちゃったんですよね。( 笑 )。 「オレとどう向きあうんだ」と問いかけ てくれる人に。だから、自分自身が納得 できるまでやりたいし、今、まさに差別 をうけている「障害」者が目の前にいる という、その事実と向きあいたいし、重 みというか、そんなことや、先輩やなか またちからの影響もあって、ここまで来 ました。 「障害」者とつきあうと彼らにはどう いう差別の歴史があり、それとどうたた かってきたのかということを知りたくな ります。その人を知りたくなるんですよ ね。今、ここに、ぼくのすぐそばで生き ている、この人のことを何も知らないで はすまされないだろうっていう気持ちに なるんです。「自分の問題」とは…
(子ども情報研究センター機関誌「はらっぱ」269 号より)自由記述から
図 10 「見聞きした差別事象。そのときあなたはどうされましたか」つながりを求めて
人は人との関係の中で幸せを感じたり、不幸せを感じたりします。
差別は人と人との関係を断ち切るものです。
人が人として生きていくことは、自分であることに安心し、他者と
認め合いながら共に生きていくということではないでしょうか。
●私を選んで打ち明けてくれたということ●
私にとって、生涯忘れることのできない友達と出会うことになりました。彼は、血 友病の患者でありまして、草伏村生というペンネームを持っておりました。その彼と知 り合って一年くらいたったとき、今でも忘れるとこはできないのですが、1987 年 9 月 28 日に、私の友人である彼から、「実は自分はエイズウイルスに感染しているのだ」と いうことを打ち明けられたわけです。そのときの衝撃といいますか、自分の友人がエイ ズウイルスに感染しているということ自体も重かったのですが、“彼が私を選んで打ち 明けた”そのことをどう受けとめたらいいのかということを、深く考えさせられまし た。... そのあたりから私の人生が少しずつ変わってきたような気がします。 (「架橋」15 号より )●身近で大切な存在になっていた●
どうして、私はハンセン病問題を追い求めるのだろう、この原稿を書きながら何度と なく自問自答した。その度に思い浮かんできたのが、これまで出会ってきた、ハンセン 病問題をはじめ様々な差別解消のために自分の命を削るかのように今なお闘っている人 達の姿であった。この方達と出会い、おつきあいさせていただく中で、どこか、遠くの 出来事であったことが、いつの間にか、身近なことへと変わっていったのである。/ そ の姿勢からは、人間らしく生きること、こころ豊かに生きることを問いかけられ、自分 の在り様を考えずにはいられなかった。対話を重ねる中、かまえていた壁が少しずつ低 くなり、気がつくと、自分の弱さをさらけ出すようになっていた。世間のしがらみにが んじがらめになり苦しんでいた私を助けてくれたのは、ハンセン病回復者の方だった。 いつのまにか、私の中で、ハンセン病回復者の方は、身近で大切な存在になっていた。 そして、誰だって、身近で大切な存在である人が苦しんでいたり、困っていたりすれば、 何か力になれないかと思うであろう。私がハンセン病問題を追い求めるのも、それと同 じであった。/ 私がハンセン病問題を通して学んだことは、つきなみな言葉かもしれな いが、やはり「こころ豊かに生きる」ことを自分自身に問うていくことだと思う。そし て、問いかける仲間を増やしていくことだと思う。 (「架橋」15 号より ) 私は 21 歳で結婚して、今おなかに赤ちゃんがい ます。その赤ちゃんの父親は、同和地区の出身です。 高校のときから付き合っていました。最初彼と付き 合いだして彼が同和地区の人だとはまわりから聞いて 知っていましたが、2 人でそれについて話すこともなく、 彼から話してくることもありませんでした。 高校卒業間近になって彼が友人から部落差別を受けま した。彼は、それでも何も言ってきませんでした。でも、 学校に来ない、いつもとちがい変だと思ったので、担任の 先生に相談しました。大好きな人が苦しんでいるのに何 もしてあげられないのがくやしい気持ちでいっぱいでし た。すると担任の先生は、彼は今あなたに話すことを 苦しんでいるから、あなたから手をかしてあげれば彼 は心を開いてくれるよと教えてくれました。それで、 私から彼に自分の思っていることをすべて伝えた ら彼はとても喜んでくれました。それから 2 人 でいろいろ話をして私は生まれてはじめて真 剣に差別について考えるようになりました。 人は実際に自分で経験したりしなければわ かりません。学校の紙の上での授業やテレ ビの中のことを書いてあったって生徒には 通じてないです。現に私がそうでした。 私はこの事で、少しでも役に立てたらと思 い、卒業してから自分の高校で担任の先生が 受け持ちの1年生のクラスで自分の経験を話 しました。私とは3つか4つ年下の子達でした。 授業が終わって書いてくれた感想文を見て、私は やっぱり今まで学校でしていた差別問題が、統一さ れていないなと思いました。みんな書くことは似てい ますが、その感想文の裏側 (心の中) は、私の話をダイレク トにうけとめてくれた子、表面できいてくれた人とさまざまで した。結局はその人の意識のもちようで、どんなに熱心に授業し ても生徒の受身で変わってきます。どれだけ、生徒の心と一緒に考え ていけるかではないでしょうか。家庭も大事だと思います。 私の両親は、私たちの知らないところで部落差別について勉強したり 考えたりしています。今まで部落出身者だと反対していたのに、今は、誰 よりも彼を守ってあげたい気持ちでいっぱいだそうです。 (20 ∼ 24 歳女性 )自由記述から
Human rights
み
つ
め
て
く
だ
さ
い
あ
な
た
を
この冊子の作成のもとになった「同和問題等人権問題に関する市民意識調査」 は、平成 17 年に、鳥取市における、同和問題等をはじめとするさまざまな人権 問題について、市民の意識の現状とその傾向を把握することにより、今後の人権 行政を推進する上での検討資料とするため、併せて、条例に基づく第 4 次鳥取 市同和対策総合計画策定にあたっての参考資料とすることを目的に実施されたも のです。そして、その「報告書」が平成 18 年 3 月に作成されました。 調査は、合併後の鳥取市全域の市民で、満 15 歳以上の者を母集団(170,957 人)とする標本調査で、住民基本台帳から 18 の中学校区単位で 5 歳区分の年代 別に無作為抽出を行い、3% にあたる 5,200 人の標本抽出を行いました。 手順については、平成 16 年度に調査項目検討委員会 を設置し、協議によって作成 された調査票を郵送する方 法で行いました。回収率は 53.4%、有効回答数は 2,778 件ありました。回答者の構 成は、以下のとおりです。 性 別 割合(%) 回答者数(人) 男 性 37.2 1,033 女 性 49.3 1,369 不 明 13.5 376 総 数 100.0 2,778