<論 文>
21 世紀に向けての韓国の国際物流戦略
― 光陽港開発を中心に ―
汪 正 仁
立命館アジア太平洋大学アジア太平洋マネジメント学部教授
Ⅰ はじめに
すでに 1991 年から釜山港のコンテナ取扱量は世界第5位になり、また、1992 年8月の中韓 国交樹立に伴う両国の「海運協定」の調印や貿易振興政策を契機に、1993 年には両国間の定期 航路が相次いで開設された。これによって、それまで神戸港を経て世界とつながっていた中国 の輸出入貨物が地理的に近く、コストの低い釜山港を主として利用するようになった。また、 1995 年1月の阪神・淡路大震災による神戸港の機能の低下を契機に、釜山港へのシフトに一層 拍車がかかり、中継貿易港としては同港が神戸港の代替港としてクローズアップされてきた。 2000 年には釜山港の接続コンテナ貨物はすでに同港が取り扱うコンテナ貨物全体の 32.2% に達 しており、さらに同年には釜山港のコンテナ取扱量も高雄港を追い抜けて世界第3位に躍進し、 世界的脚光を浴びている(図-1・図-2参照)。 しかし、韓国における輸出入コンテナ貨物の釜山港への「一港集中」や釜山港における港湾 インフラの整備不足などによって長期化する「船混み」状態は、同港の年々増加しつつある貨物量の取扱いに大きな影響を与えている。すでに「国連海洋法条約」(UN Convention on the
Law of Sea ; UNCLOS) および 「世界貿易機関」(World Trade Organization ; WTO) に 加入した韓国政府がこうした問題を解決し、しかも 21 世紀の海洋先進国を目指すために、
1994 年に「海運港湾庁(KMPA)」〔同庁は海運および水産関連部所の統合により、 1996 年8
月8日以降、 新組織 「韓国海洋水産部」(Ministry of Maritime Affairs and Fisheries in
Korea ; MOMAF)1)に機能を移行した〕はすでに「短期・中期・長期港湾整備・開発計画」
を策定した。
具体的には、①前例のない民間(船社)・政府の合資による釜山港第4期港湾開発計画 (1991 年∼ 1997 年)に当たる戡蠻コンテナターミナル(海浜埋立地)の開発と拡張計画(2001 年 12 月に完工)、②朝鮮半島の南西沖合いの離れ島「加徳島」(釜山新港)の開発、③光陽市
に位置する「光陽港」開発、④韓国の西側の仁川・南港にコンテナターミナルの建設などが挙 げられる2)。これらの港湾建設の完成は釜山港の一港集中の「港湾機能分散化」に大きな役割 を果たしている。特に光陽港開発計画が完了する時、東北アジアの国際コンテナ物流における 韓国の位地が一層高まると見られる。 0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 8,000,000 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 TEU 0.00% 5.00% 10.00% 15.00% 20.00% 25.00% 30.00% 35.00% Total=A Transhipment= B Ratio of Transhipment= % 図-1 釜山港における接続コンテナ貨物量およびシェアの推移(1985 年∼ 2000 年) 0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 16,000,000 18,000,000 20,000,000 1 985 1986 1987 1988 1989 199 0 1991 1992 199 3 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 TE U Hong Kong Singapore Kaohsiung Rott erdam Busan Long Beach Hamburg Los Angeles Antwerp Shanghai 図-2 世界のコンテナ取扱量上位 10 港湾における釜山港の位置づけ 資料:韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)。
資料:1)Containerisation International Yearbook,1988-2000. 2)Containerisation International, March 2001 に基づき作成。
Ⅱ 韓国の港湾運営政策
1.港湾の管理・運営方針 韓国のコンテナターミナル施設は主として釜山に集中している。釜山は朝鮮半島の南東端に 位置し、北港、南港, 甘川埠頭および多大浦埠頭からなる天然の良港である。 同港には、 年間 15,000 隻以上の外航船が入港している。 韓国ではコンテナターミナルを含む全ての港湾は政府によって管理・運営されている。タン カーが接岸するドルフィンなどの移動施設は民間企業が投資して保有・運営するが、これらの 施 設 を 除 い た 全 て の 固 定 港 湾 施 設 は 、 1 9 9 0 年 4 月 の 「 韓 国 コ ン テ ナ 埠 頭 公 団 」 ( K o r e a Container Terminal Authority: 以下 KCTA と呼称する)が設立されるまで KMPA が所有し、 直接管理・運営を行っていた。 民間企業がこれらの施設を整理した場合であっても、所有権は 国に帰属する。しかしこの場合には、20 年間の期間内で当該施設に対する投資を償却できるま で、投資した民間企業が無償で使用することができる(図-3参照)。 コンテナターミナルを借受けたターミナルオペレーターは当該ターミナル施設の専用使用権 を持ち、その他の船社に荷役サービスを提供する。また KCTA は毎年徴収する転貸料収入(タ ーミナルオペレーターから)と岸壁使用料(船社から)、および公的融資(公債や世界銀行、 外国からの融資)と「コンテナターミナル開発債券」の発行(韓国コンテナ埠頭公団法 25 条 Private Sector か ら の 融 資 コ ン テ ナ タ ー ミ ナ ル 開 発 債 券 運 営 収 入 ・ 現 代 釜 山 ・ 神 仙 台 ・ 戡 蛮 ・ 牛 岩 CT ・ 釜 山 港 No.3,4 P ier ・ 光 陽 港 第 1期 ・ 仁 川 港 第 No.4 Pier ・ 鎮 海 港 公 的 融 資 公 債 ・ 世 界 銀 行 ・ 外 国 か ら の 融 資 ・ ICD の 建 設・ EDI Network Project
戡 蛮 CTの 拡 張 計 画 ・ 光 陽 CTの 開 発 ・ 後 背 地 開 発 ・ フ ィ ー ダ ー 港 開 発 ・ 既 存 港 湾 施 設 の 改 善 ・
子 会 社 ・ 資 本 投 資
・ Korea Port Engineering ・ Pusan East Container Terminal ・ Yangsan Island Container Depot ・ Korea Logistic s Network Corp. ・ Pusan New Port Co. Ltd. ( 加 徳 島 )
K C T A 再 投 資 再 投 資 再 投 資 図-3 韓国の港湾開発における資金調達・運用 資料: KCTA の資料に基づき筆者作成。
項に基づく)で、新規コンテナターミナルの開発、子会社への投資、および内陸コンテナ基地 (ICD : Inland Container Depot)の開発に当たる。
釜山では、1978 年に国営企業として設立された 「釜山コンテナ埠頭運営会社」 (Busan Container Terminal Operation Corporation) と 1991 年6月に設立された「東釜山コンテナ 埠頭株式会社」(Pusan East Container Terminal Co. Ltd.) が主要なコンテナターミナルオ ペレーターである。しかし、1999 年に現代商船が当時韓国最大のターミナルオペレーターであ る BCTOC の民営化に際して同社を買収することによって、BCTOC は「現代釜山コンテナタ
ーミナル」(Hyundai Busan Container Terminal)に社名変更した。2002 年4月に同社が香
港の大手財閥「合記黄埔」の傘下企業 HPH(Hutchison Port Holdings)の韓国現地法人 Hutchison Korea Terminal(HKT)によって買収され、以降、釜山における主要なコンテナ ターミナルオペレーターは PECT と HKT となった。 一般埠頭 (公共埠頭) におけるバース・野積場・上屋の使用権も全て KMPA が有しており、 船社や荷主は KMPA の許可を得た上でこれらを使用することができる。KMPA がバースを指 定する一般埠頭はどの船社も使用できる。 使用に際して「先着順原則」を適用しているため、 特定船社が優先的に埠頭を指定することはできない。ただし、コンテナ貨物が釜山に集中する ことを避けるため、 例外的に馬山港と蔚山港にコンテナ船が入港した場合、バースを優先的 に指定することができる。 また、釜山では既存のコンテナターミナルで増加の一途を辿る貨物 を処理し切れないため、在来船用の埠頭においてもコンテナ貨物の取扱も行われている。 2.韓国の港湾運営組織 従来、韓国のコンテナターミナルの管理者は、国の交通部に属する KMPA であった。しか し、韓国政府は韓国の港湾におけるコンテナターミナル施設を充実整備するために、1989 年 12 月に 「韓国コンテナ埠頭公団法」を制定した。 続いて 1990 年4月には同法に基づき、KCTA が設立され、KMPA に代わってコンテナターミナルの建設と管理を行うようになった (日本 の「外貿埠頭公団」とほとんど同様の機能)。
KMPA が KCTA に施設を無償貸付けし、さらに KCTA はそれらの施設をコンテナターミナル オペレーター(光陽港第1期コンテナターミナルの場合は、HKT、韓進海運、大韓通運、世邦企 業)に転貸する。KCTA は船社から直接岸壁使用料を徴収しており、岸壁を除いた野積場、荷役 機械、CFS(Container Freight Station)などの施設をターミナルオペレーターに賃貸している。
Ⅲ 光陽港開発の背後要因
韓国における国際間の物資交流は一部航空輸送を除き、多くの貨物は海運を通じて行われて いるため、輸出入貨物の釜山港への「一港集中」現象による同港の長期化する「船混み」状態
は深刻な問題となっている(図-5・図-6参照)。これは、韓国政府が 1974 年から 1995 年にかけ て4期にわたる釜山港中・長期港湾開発計画に相当な投資額を投じたにもかかわらず、年々増 加しつつある輸出入コンテナ貨物に対する港湾開発計画の修正に遅れを取っていたと見られる。 また、釜山港の臨海部および後背地にはコンテナ貨物を処理する面積が不足しているため、 釜山市内に散在している 50 カ所のオフドック CY(OFF-DOCK-CY)を使用している。釜山港が 荷役・貨物操作から通関・検疫など、物流量処理の包括的機能を遂行できないため、港湾で揚荷 された貨物の通関・検疫などは OFF-DOCK-CY を中心に行うのが実態である。 そのため、OFF-DOCK-CY /コンテナターミナル間を往来するトレーラーとトラックは、釜山市内の交通渋滞を もたらす原因の一つにもなっている。また、OFF-DOCK-CY だけではなく、釜山市内には港湾 機能の不足分を補うために、141 カ所の保税蔵置所と 20 カ所を超える保税倉庫も乱立している。 釜山港は、急激なコンテナ貨物取扱量増大のため、コンテナ取扱いが飽和状態に達している。 また、インフラ整備の不足のため、ターミナルの混雑、船混みが頻繁に発生している。 釜山港 の長期にわたる船混み問題は、以上のような要因に加え、近年の韓国経済の急速な発展に伴い、 予測を上回る貨物量を取り扱わなければならない事実と深く関わっている。釜山港はこうした 問題を抱えているため、毎年 GDP の約 14 ∼ 15% に相当する莫大な物流経費が発生し、結局、 製品のコスト上昇につながり、国際競争力の向上を妨げている。 一方、韓国政府は今後、釜山港を中継するロシア極東地域南東部沿海のウラジオストク港、 図-4 北東アジアの国際物流における韓国・釜山港・光陽港の位置づけ 資料:韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)。
ボストチヌイ港や中国の WTO への加盟(2001 年 12 月)による東部海岸の中部と北部の諸港か らの接続貨物が増加しつつあることを見込んでいる。 これらの要因を背景に韓国政府は 21 世紀の北東アジアのハブ港を目指し、1994 年から KMPA (現 MOMAF) がすでに中期・長期港湾開発・整備計画などを立てている。 0 20 40 60 80 100 120 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
釜山港
仁川港
馬山港
蔚山港
光陽港
%
図-5 韓国の輸出貨物全体に占める釜山港の比重 資料:韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)の資料に基づき筆者作成。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 釜山港 仁川港 馬山港 蔚山港 光陽港 % 図-6 韓国の輸入貨物に占める釜山港の比重 資料:韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)の資料に基づき筆者作成。Ⅳ 光陽港開発計画の内訳
光陽港 (図-7参照) は釜山港から 170 キロメートル(車で南海高速道路を通れば約2時間) を離れる光陽市に位置している。光陽市が釜山港の「港湾機能分散化」による新港湾(光陽港) の開発を同市にさせるため、相当な力を入れている。 光陽港開発の経緯は表-1の通りであるが、コンテナターミナルの建設工事は4期に分けて 進められている(表-2参照)。同計画(すべて専用埠頭の形で運営を行う)は合計 33 バース、 岸壁総延長 11,700 メートルであり、これは横浜港南本牧埠頭で供用中の MC1、MC2 と今後完 成する MC3、MC4 と合わせて合計総延長 1500 メートルと比べれば約8倍となっており、光陽 港開発計画のスケールの大きさが窺える。 ここで特筆すべきは、同港の水路の入り口(水深 14 メートル、現在水深 15 メートルの浚渫 工事が行われ、2006 年に完工する予定)の突き当たりの左側に位置する「猫島」は1∼4期コ ンテナターミナルのいずれの真正面に位置し、天然の防波堤として大きな役割を果たしている。 ここで、韓国政府が釜山港の港湾機能の「分散化役」を光陽港に選定することに十分な調査を行 ったことが窺える。 第1期工事(敷地面積 84 万平方メートル)はすでに 1998 年7月に稼働しているが、第2期 港湾開発計画(敷地面積 1,102,500 万平方メートル)は2段階に分けて供用する。第1段階 (建設期間: 1996 年9月∼ 2001 年 12 月、建設費用1億 8,000 万米ドル)は 2002 年1月に稼働し たが、第2段階(建設期間: 1996 年9月∼ 2003 年 12 月、建設費用2億 1,400 万米ドル)は 図-7 光陽港開発計画全貌の鳥瞰図 資料:韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)の資料に基づき筆者作成。2004 年1月に稼動させる予定である。 光陽港の第 ÇP 期・第 ÇQ 期コンテナターミナルの建設工事の進展に合わせて現在、同港から後 背地へのアクセスに関わる幾つかの主要なインフラ建設計画も進行中である。 同建設が完了すると ともに ÅA 光陽港の後背地へのアクセスは一層便利となる。 それだけでなく、光陽港の周辺に位置 する「海龍工業団地」、「栗村工業団地」、「太仁工業団地」および「第2号光陽製鋼所」向け/から の輸出入貨物が同インフラを利用すれば、光陽港へのアクセスは一層速やかになると思われる3)。 また、光陽港の第1∼3期における後背地には物流センター、貨物組み立て・加工区、コン テナ供給区などのインフラ整備も設けられている。 光陽港開発計画の最も大きな特徴の一つは、コンテナターミナルごとにその代表的な機能を 特化し、施設を集中的に整備することである。特に第3期開発計画は最先端技術を導入した
「自動コンテナターミナル」(Automated Container Terminals ; ACT)として設計されるこ
とは注目されている。 表-1 光陽港第1期・2期開発の経緯 1985 年1月 コンテナターミナル(CT)の立地確定 1987 年 12 月 光陽港第1期 CT 建設工事の着工 (50,000DWT × 4) 1991 年8月 光陽港総合開発推進基本計画の樹立(1987-2011 年 50,000DWT × 24) 2001 年に計画変更につき、50,000DWT × 29+20,000DWT × 4=33 バース 1996 年9月 光陽港第2期 CT 建設工事の着工 1997 年 12 月 光陽港第1期 CT 建設工事竣工 1998 年7月 光陽港第1期 CT 運営開始 2001 年 12 月 光陽港第2期第1段階 CT 竣工 (50,000DWT × 2 ; 20,000DWT × 2) 2003 年 12 月 光陽港第2期第2段階 CT 竣工する予定(50,000DWT × 2 ; 20,000DWT × 2) 資料:筆者による韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)の聞き取り調査に基づき作成。 表-2 光陽港開発計画の概要 全体 第1期 第 2 期 第 3 期 第 4 期 工事期間 1987-2011 年 1987-1997 年 1996-2003 年 1999-2008 年 2002-2011 年 バース数 33 4 8 1999-2007 年(4) 14 2005-2008 年(3) 岸壁延長 11,700m 1,400m 2,300m 2,450m 5,500m 接岸能力 50,000 DWT × 29 50,000 DWT × 4 50,000 DWT × 4 50,000DWT × 7 50,000DWT × 14 20,000 DWT × 4 20,000 DWT × 4 水深 15m 15m 15m 15m 15m 年間コンテ
8,280,000 TEU 960,000 TEU 1,440,000 TEU 1,680,000 TEU 4,200,000 TEU ナ取扱能力
Ⅴ 資金調達
船社から見た光陽港開発計画の最大の魅力は、韓国で前例のない民間(船社)・政府の合資 による光陽港第1期工事 (海浜埋立地)の「専用コンテナバース」の開発である。 光陽港第1 期工事をめぐる資金調達(合計 6,206 億ウォン)の方法は、32% が民間資本 (2,000 億ウォン)、 68% が政府出資 (4,206 億ウォン) の形で行われている。 前者の内訳は、HKT、自国外航船社である韓進海運が各々 500 億ウォンずつ、および自国内 航船社である大韓通運と大手である陸運・倉庫会社である世邦企業(500 億ウォン) が各々 500 億ウォンずつ出資している。これは、KCTA が発行した 「コンテナ埠頭開発債券」 (Container Terminal Development Bond) を購入する形で、港湾開発を行うことになっている。完工後の 10 年間、上述した本国 4社に自社の専用バースとして運営権が与えられる。 また、必要に応じて、運営期間の延長も 可能である。 こうした出資によって、HKT、韓進海運、大韓通運および世邦企業がそれぞれ、 光陽港の第1期工事にバース各1カ所を自社の専用バースとして運営している。これに対して 光陽港第2期工事(海浜埋立地、建設費用3億 9,300 万米ドル)は、韓国の東部高速および KIT(Korea International Terminal)が運営権と開発権を獲得した。光陽港第2期コンテナ ターミナル開発計画の資金調達の内訳は表-3に示されている。 HPH は同コンテナターミナルへの出資による管理・運営の最大の狙いは、光陽港の将来性 を見込んでおり、同社が持つコンテナターミナル運営のノウハウで光陽港をワールドクラスの 港に押し上げる計画と見られる。 表-3 光陽港第2期コンテナターミナル開発計画の資金調達の内訳 注1):★ 2000 年 4 月に社名変更に付き、「東部建設」となる。
2):KIT は Hutchison Port Holdings ,韓進海運、現代商船からなったコンソシウムであり、それぞれ の出資率は 80%、10%、10% である。 資料:韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)。 管理・運営者 使用期間 資金 認可年月 運営開始 (百万米ドル) 1x50,000DWT 東部高速★ 10 年 10.6 1997.10 2002 年 3 月 19 日 G/C 2 基 2002 年 4 月 15 日 1x50,000DWT 3x50,000DWT Korea 2x20,000DWT 4x20,000DWT International 30 年 98.3 2001.04 2004 年1月 G/C 4 基 Terminal(KIT) 2x50,000DWT 2x20,000DWT
Ⅵ 船社誘致戦略
韓国政府は基幹航路に配船する船社の光陽港への寄港を誘致するために、船社に与える初期 の負担軽減策として、1998 年∼ 1999 年の港湾使用料の5年間分割払いの優遇措置を採ってい る。また、光陽市が鉄道、道路網の整備を進める他、トラック、鉄道輸送を問わず、コンテナ 税の免除のほかに、2002 年末まで、①入港料、岸壁使用料および入渠料の免除、②光陽港と釜 山港に双方寄港する場合、釜山港の入港料および入渠料の免除、③水先料および曳船使用料の 20% の減免、④輸出入・接続貨物に当たっての無料蔵置期間を 30 日まで延長するという Cost Effective Rate System 策も打ち出している。KCTA が船社の光陽港寄港を一層誘致するために、2002 年末まで船社が釜山港と光陽港を同 時寄港する場合には、港湾料金の二重計算を免除することができるという優遇措置も行ってい る。さらに、①釜山港および光陽港における最先端インフラの導入、②一般港湾におけるフィ ーダー専用埠頭の整備の強化、という長期港湾整備計画も立てられている。 1998 年7月に光陽港第1期コンテナターミナルが稼働開始して以来、コンテナ取扱量は年々 急増しつつあり、1998 年の 38,000TEU から 2000 年の 64 万 2,000TEU に達するに至った(図-8 参照)。これに対して韓国の輸出・輸入コンテナ貨物全体に占める釜山港のそれは 1999 年から 急減し、2000 年にはそれぞれ 79.9% と 77.7% となった(前掲図-5・図-6参照)。 このことは 韓国の輸出・輸入コンテナ貨物全体に占める光陽港の比重はそれぞれ 1998 年の 0.4% と 0.8% か ら 2000 年の 8.4% と 8.9% に急増してきたことも窺える 一方、光陽港第1期コンテナターミナルに寄港する船舶の状況(2002 年2月現在)は表-4 に示されている。同表で見られるように、外航船と内航船がそれぞれ週 46 便と6便、合計 52 便が寄港している。うち、アジア航路は週 35 便(67%)を占めており、ここでアジア航路にお ける光陽港の重要性の高まりが窺える。
Ⅶ 北東アジアの国際物流における光陽港の地位
北東アジアの中での地理的位置を見れば、光陽港は「世界三大基幹航路」 の中で最大の荷動 き量と収入額を持つアジア/北米航路上に位置する「中継ハブ港」である。 また、同港は、世 界三大基幹航路の一つであるアジア/欧州航路においても、東洋と西欧を結ぶ海上交通の要衝 という重要な位置にある。 光陽港は地理的優位性に恵まれているだけでなく、近年、船型の大型化や航海日数短縮化の 動きの中で、企業は物流コストの削減を図るため、基幹航路を運航するコンテナ母船を頻繁に 同港に寄港させている。 そこから同母船やフィーダー・サービスによって、日本の7大港 (2002 年1月現在、東京、横浜、清水、名古屋港、四日市、神戸港、大阪港のみ)と一部の地0 100 200 300 400 500 600 700 千 TEU 合 計 世 邦 企 業 韓 進 海 運 現 代 商 船 大 韓 通 運 1998 1999 2000 図-8 光陽港第1期コンテナターミナル取扱量の推移 資料:韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)の資料に基づき筆者作成。 表-4 光陽港第1期コンテナターミナルに寄港する船舶の状況(2002 年2月現在) 注:1)韓国船社8社、外国船社 17 社が寄港している(母船 12 隻、フィーダー船 40 隻)。 2)備考欄のイタリク体で示されている船社は母船寄港である。 3)光陽港に単独寄港する船社は、Maersk Sea-Land (週 2 便)、韓進海運(週1便)の 2 社のみで ある。 4)直接配船せず、他の船社のスペースを利用する船社は、Zim Line、Uniglory、Hapag-Lloyd、 COSCO、Sinotrans、FFTC、NYK の 7 社である。 資料:筆者による韓国コンテナ埠頭公団(KCTA)の聞き取り調査に基づき作成。 外 航 便数 アジア 北米 欧州 世界一周・ 内航 備考 /週 その他 大韓 Maersk Sea-Land 4 便(3便) 通運 9 5 2 2 − − CMA //Norasia / NSCSA 1 便
南星海運 3 便; COSCO 1 便 現代商船 3 便 (2 便) 現代
11 5 1 1 1 3 萬海 1 ;萬海/ OOCL 1 便
商船 (中東) 南星海運 2 便; 韓進海運 3 便
現代商船/ MOL / NYK / P&O 1 便 韓進海運/ Senator 3; PIL 1 便 韓進 1 長錦商船 5 便;東南亜海運 1 便 海運 17 10 3 − (中東) 3 興亜海運 1 便; CQH 1; 韓進海運 3 便 東南亜海運/興亜海運 1 便 東南亜海運/興亜海運/長錦商船 1 便; Maersk 1 便;興亜海運 1 便; APL 2 便 世邦 15 15 − − − − 韓星船舶 1 便; CNC / TSL 1 便 企業 陽明海運 1 便; 汎洋商船 5 便、 長錦商船 2 便; COSCO 1 便 合計 52 35 6 3 2 6
方港(細島など)、ロシア南東部海岸のボストチヌイ港や北朝鮮の羅津港、台湾の高雄港、台 中港、基隆港、さらに香港港、シンガポール港および東南アジアの支線港とを結び、北東アジ アにおける荷動き量の増大に大きな役割を果たしている。 また、欧州を目的地とする韓国や第三国からの輸出コンテナ貨物が、光陽港(あるいは釜山 港)を経てロシア東部沿海のボストチヌイ港まで海上輸送され、そこから 「シベリア横断鉄 道」(TSR) を利用し、ロッテルダムやアムステルダムなどへ陸送されている。 こうした光陽 港(あるいは釜山港)経由欧州向けの国際複合一貫輸送により、北東アジア地域の経済協力が 増大しているばかりでなく、北方の経済交流も促進している。また、韓国から中東や欧州向け 輸出コンテナ貨物は、光陽港経由で中国・江蘇省の連雲港まで海上輸送され、そこから「中国 大陸横断鉄道」(TCR)で、欧州まで陸送することも可能である。 さらに将来、北朝鮮との関係が正常化すれば、光陽港から鉄道を利用するソウル経由、北朝 鮮の新義州までの「京義線」と呼ばれる TKR (Trans-Korea Railway) を使って欧州までの ルートも形成可能である。光陽港は北東アジアにおける国際複合一貫輸送のハブ拠点として大 きな潜在力を有している4)。 <付 記> 本稿は立命館大学国際地域研究所第 10 回「21 世紀北東アジア専門家会議」(2002 年9月 27 日、「北東ア ジア地域協力研究プロジェクト」共催、末川記念会館)における報告をもとに作成したものである。 <注・参考文献> 1)MOMAF(本部:ソウル・江南区)は、韓国における今後の海洋政策の一貫性と効率性を図るため、 海運・港湾・水産・海上保安・海洋環境などの問題に関わる 10 大政府機関によって構成される。具体 的には、既存の「海運港湾庁」(KMPA)、水産庁、海上保安庁、水路局、海難審判院に、一部の科学 技術所、農林水産部、通商産業部、環境部、建設交通部などの機能を移してできたものである。 2)1999 年 12 月に PSA Corporation Ltd.が韓国の大手財閥である三星グループと合作し、韓国の西側の 仁川・南港にコンテナターミナルの建設に着手した。同プロジェクト(投資金額2億ドル)は4万ト ン級のコンテナ船が接岸可能な3つの深水コンテナバース(岸壁延長 900 メートル、)を建設し、バー ス当たりは通年、喫水 12 ∼ 13 メートルの船舶の接岸が可能である。同コンテナターミナルの建設が 完成するに伴い、仁川港は釜山港や光陽港に次ぐコンテナ航路のゲートウエイになる。第1期工事: 2001 年8年に工事開始し、年間コンテナ取扱能力は 45 万 TEU である。 3)詳細は、汪 正仁『東アジアの国際物流システム』文理閣、2000 年、74 ∼ 76 頁、 汪 正仁 「北東アジア における国際コンテナ物流の中継貿易港の観点から見た神戸港・釜山港の競争力比較 (中)」『海事産 業研究所報』 No.380、海事産業研究所、 1998 年2月、40 ∼ 42 頁を参照。 4)釜山港は定期船基幹航路から 157 海里離れているのに対して光陽港は 203 海里である。 しかし、ソウ ル/釜山港間の陸上距離は 442.7 キロメートルであるのに対して、ソウル/光陽港間の距離は 424.4 キ ロメートルであり、18.3 キロメートル短い。また、基幹航路において釜山港と比べれば、航行時間が 若干増加するが、ソウルまでの内陸輸送時間を短縮できる。