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オタクビジネス

∼燃えと萌え∼

4gr

神尾 和宏

鷹見 理恵

寅川 奈緒

永井 和浩

山本 晶子

(2)

目次

第1章

まえがき(神尾)

P,2

第2章 オタク概論(神尾)

P,3~5

第3章 オタク市場の概要(永井)

P,6~10

第4章 オタク市場秋葉原戦略(鷹見)

P11~14

第5章 オタク市場の発展と衰退(山本)

P,15~18

第6章 オタク事業戦略論(寅川)

P,19~22

第7章 あとがき(寅川)

P,23

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第1章 まえがき

神尾 和宏 みなさんは“オタク”“アキバ系”と聞いて、どのようなイメージを持っているだろうか。 昨今では、いわゆる“オタク”“アキバ系”と呼ばれる人々の行動、生活スタイルにスポッ トが当たることも多くなった。テレビ等のマスコミ関係にもそのような人々が出演してい たり、特番が組まれたりしているのをしばしば見かけたりする。とりわけ昨年公開されヒ ットした映画“電車男”に代表されるように“オタク”“アキバ系”と称される人々に世間 の関心が少なからず集まっていることは、もはや否めない事実であろう。 このような社会現象になりつつある“オタク”“アキバ系”文化であるが、列記としたビ ジネスが成り立っている。そこで私達4班は、このビジネスに興味を持ち、掘り下げて考 察していきたいと考えた。 一概にオタクビジネスと言っても様々な視点から見ていくことが可能な訳であるが、私 達は、あまり細分化していってもキリがないと考え、大まかな分野に分け検証していくこ とにした。 まず 2 章において“オタク概論”と称し、簡単にオタクの定義付け及びその説明を図っ てみた。次に 3 章では、現代社会において億単位で動いているこのビジネス産業を、様々 なカテゴリー別に分類し、その概要をまとめてみた。4 章では、秋葉原の歴史から現代の秋 葉原とオタクとの関連を調べる。5 章では“オタク市場の発展と衰退”と題し 3 章、4 章で 考察した事を軸に、具体的な例を挙げてマーケティングの分野から説明している。そして6 章では、今度は、企業側の視点から“オタク”“アキバ系”文化を見ていくことになる。そ こには、どのような売れ筋商品があるのか。また、企業はどのような手法、戦略を用い商 品を世に送り出し、ヒット商品を生み出しているのか。を、検証することとなる。最後に7 章では、あとがきとして、企業と“おたく”の共存性にスポットを当てて、まとめとさせ てもらっている。ある意味特殊産業とも言えるテーマではあるが、逆手に取れば今しか出 来ないテーマであるとも思う。 “オタク”“アキバ系”ではないと言う人も、私達と一緒にその新文化、生態を垣間見て はいかがだろうか。

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2 章 オタク概論

神尾 和宏 今や年間4100 億円市場とも言われるオタク市場。この市場を賑わす“オタク”とは一体 何なのか。また“アキバ系”とは何なのか。知っているようで知らない。知りたいようで 深入りするのはチョット気が引ける…。実は僕、私は“オタク”なのでは。そもそも“オ タク”という言葉の語源は何なのか。という様々な“オタク”に関する基本的な疑問にメ スを入れ、鋭く切り裂くのが、この第1 章の“オタク概論”である。 ①“オタク”の語源 “オタク”は正しくは“おたく”と表記し、ある雑誌の1983 年 6 月号巻末のコラムから 生まれた。当時若手ライターだった中森明夫氏が1980 年代初頭の漫画専門店にたむろする 常連達が二人称に好んで使った「お宅は?」からヒントを得て造られた造語である。ここ で問題となるのは、最近よく耳にする“アキバ系”と“おたく”の違いである。一般的に “アキバ系”とは東京の秋葉原に好んで通う人々のうち独特なファッションをしている 人々のことを指すらしい。“おたく”と同じような意味合いで使われることも多いが、“お たく”には“アニメ系”“ゲーム系”など多種に渡る系統が存在するため一概に“アキバ系” =“おたく”とは言えない。 先程“おたく”には様々なジャンルが存在すると言ったが、一般人から見た一般的な“お たく”と呼ばれる人々の定義付けを次は図っていきたい。 ②“おたく”の定義 “おたく”と呼ばれるからにはそれなりの理由、要素が必ずあるはずである。その要素 的なものを独断と偏見で要約してみると、“萌えと言う”“声優の話をよくする”“アニメ、 漫画、ゲームに詳しく、セリフを言える”等が挙げられる。このような要素を多く持って いる人ほど“おたく”度が高い人だと言える。と、定義できよう。こう定義してしまえば、 当てはまる人も少なくないのではなかろうか。

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らず、その人々を際立てて“おたく”と呼ばない、若しくは呼んでいないのはなぜか。そ こには“マニア”という言葉が大きな理由の1 つとして挙げられる。 ③“マニア”と“おたく”の相違点 “マニア”と“おたく”では決定的に異なる点がある。“マニア”は対象物に対し、ただ 好きなだけでなく「専門的」「権威的」であろうとし、知識をひけらかす際、常に「自慢」 が付きまとう。また偶然対象物がブームになったりすると、対象物から離れていく傾向も 見られる。一方“おたく”には対象物に対する「無邪気さ」が感じられ、自分の好きなも の以外には全くと言っていいほど興味を示さない。故に自称“∼おたく”は言葉の意味を 履き違えているのである。自分は“∼おたく”だと周囲に言い放ち、その対象物に対し何 かしらの知識を自慢し、ひけらかそうとしている時点で、それは“マニア”に部類分けさ れるのである。 ④“おたく”と“一般人”の境界線 既に検証したように“おたく”は様々な要素から定義付けされることが明らかとなった。 一般的に想像されるような“おたく”とは上記でもしたが、おそらく“アキバ系”のファ ッションをしているような人々のことを指していると思われる。しかし世の中は広いもの で、“隠れおたく”なるものも存在するのである。このような人々は、ぱっと見た感じは全 く“おたく”っぽくなく、会話をしたり聞いていたりする中に、ひょっこりその本性が顔 を出したりするので、なかなか“おたく”であることが気付かれにくい。結論から言うと、 “おたく”と呼ばれる人種は外見からもそう思われ、決めつけられている要因が多々ある ということである。早い話、俳優の速水もこみちさんが、少女マンガについて熱く語った としても、彼のことを90%以上の人は“おたく”だ。とは言わないであろう。むしろ共感 を持てる彼の新たな一面として女性ファンがさらに増えるかもしれない。ここからは僕の 個人的な見解であるが、つまり、“おたく”は容姿、外面からも周囲から、そういう目で見 られている確立が極めて高いということだ。“おたく”と呼ばれる彼等がその周囲の目をど う感じているのかは別問題として…。 ⑤“おたく”は空気が読めない!?

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記でも述べたが、彼等の性質上自分の好きな事に没頭しているときの集中力は目覚しいも のがある。そのため、TPO を全くと言っていい程わきまえず、ドコであろうと、いつであ ろうと、どんな場合であろうと自分の世界に入り込んでしまう。その為、周りの空気など 一切彼等には関係がないのだ。その為、どうしても周りから浮いた存在になってしまうこ とも少なくなく、“おたく”だと見られてしまうのである。 以上で“おたく”に関する大まかな概要とさせて頂きたい。 最近では“おたく検定”なるものも存在するらしい。少しでも興味を持たれた方、実は 僕、私は“隠れおたく”なんだ。という方、この機会に1度受験なさってはいかがでしょ うか。

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第3章 現在のオタク市場の概要

永井 和浩 一昔前の“オタク”のイメージと言えば、家で引きこもり、人との関わりを持たないな ど悪いイメージがつきまとっていた。しかし、現在の“オタク”と呼ばれる人達はすべて がそういう人ではないと思われる。なぜなら、現在はパソコンのおかげで“オタク”の行 動が顕在化され、それによって“オタク”同士の交流がとりやすくなったという点が、大 きな原因ではないだろうか。 ではまず大きく5 つのグループに分けて見ようと思う。 ① 隠れオタク この5 つのオタクの中では最も多数派であり、組立PC、AV機器などの分野を中心に幅 広く分布している。人には、あまり趣味を伝えなく、家庭内でこっそりと小遣いをやりく りしながら趣味に没頭する人が多い。全体的にやや高齢であり、既婚率も高く、妻には、 趣味に関しては無視され、子供を趣味に人が多い。メカ系分野だけでなく、旅系にも多い。 支出、消費時間も比較的低い。比較的おとなしいタイプで、他人との和を大事にするがあ まり人には趣味を伝えない、隠れオタクタイプである。従来の典型的のオタクのイメージ であるように思える。 ② 自分の道を突き進むオタク 自分の価値観を持ち、インターネットを用いた情報収集および掲示板への批評活動をよく 行うタイプである。男性率が高く、組立PC、AV 機器、IT カジェット、クルマ、カメラな どメカ系の分野および芸能人分野を中心に分析しておりこのタイプが以前の「アニマ」、「コ レクター」層を受け継いでいると思われる。「アキバ系」と呼ばれるコミック、アニメキャ ラクターとも似ているようで微妙に違う。年齢層は20∼30 代が中心で男性比率が 5 つにう ち最も高い。その一方、他人との融和をそれほど重視せず、世間との距離を保つ傾向も強 く、特定のサイトのみに活動がとどまる傾向が強い。あまり人に趣味を伝えないという点 では、隠れオタクと似ているが消費時間、支出金額が多いのが大きな差である。

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③ 情報敏感なオタク 20∼30 代の若者が多く、男性も女性も割合はほぼ同じ。特に趣味の時間消費が多い。一方 支出額が少ない。いろいろなことに興味を持ち、インターネットやネットオークションの 活用度が高い。人と付き合いを重視し、カミングアウト率も高い。一方流行に流されやす い、そして周りを気にする。独自に価値観で世間の流行を敏感に感知する。「趣味がやめら れない」という人も多々いる。今の若者の象徴とも思えるオタクである。 ④ 社交派なオタク 男性が6 割を占め、年齢層は 20∼30 代が多い。消費時間は多いが、支出額が比較的少な い。独自の価値観を強く持ち、それをみんなにも知ってほしいと考え、他人を趣味に積極 的に巻きこもうとする人である。ただし、若干価値観が固定されてしまっている面もあり、 周囲に認めてもらう手段をみんなに伝えるという形しか見出せないものもいる。人へのカ ミングアウト率が高い。このタイプは世間の目を気にする。好きなマンガを友達などに伝 えている人がいい例である。 ⑤ アキバ系のオタク 女子比率が圧倒的に高く、20∼30 代が中心。支出額が最も多い。趣味も長く続く。この グループに属する男性が、いわゆる「アキバ系」、「萌え系」オタクに値する。同人誌な どの創作活動への参加率が高いのがこのタイプの特徴である。コミックやアニメに登場 するキャラクターへ固執が強く、友達に隠れて、ひそかに続けている女性もこのタイプ に含まれる。人との関係を気にする一方、独自の価値観を持つことを重視する。人にわ かってもらえなくてもいい、という微妙な世間との距離感も持つ。「創作欲求」が特に強 い。またインターネットを通じた情報発信活動もさかんに行う。 “オタク”はこの中のどれかに所属すると考えられる。“オタク”の割合は①が25%、② が23%、③が 22%、④が 18%、⑤が 12%である。 これをさらに細かく分けると、12 のグループに分けることができる。

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(a)コミックオタク 人口35 万人、市場規模 830 億円、12 グループの中で最も大きい。若年女性層が中心 である。単に暇つぶしのために読む人と、作品への愛を伴う内面的なこだわり要素が 強い人に分けられる。同人誌やコスプレなど「萌え」的要素へのこだわりを強く持つ 層が目立つようになり、典型的なオタク像として認知される。同人誌業界もあまり無 視できない。 (b) アニメオタク 人口11 万人、市場規模 200 億円。10∼40 代まで世代を超えて幅広い。どちらかと言 うと男性中心。他のオタクを兼ねている場合もある。TVアニメやOVA(オリジナル・ ビデオ・アニメ)、アニメ映画の視聴が日課になるほどアニメが好きな人。アニメに関 するコミック、声優イベントやコスプレ、フィギュアの収集などに興味をもつ人が多 い。 (c) 芸能人オタク 人口28 万人、市場規模 610 億円。現場に行くダイプ、つまり追っかけタイプとグッズ を集めるコレクタータイプの二つに分かれる。女性は幅広く分布していて、男性の方 コレクタータイプが多い。タレントに強い憧れを持ち、情報収集や応援活動を積極的 に行いこれらの活動に生活の中心にする人達である。 (d) ゲームオタク 人口16 万人、210 億円。家庭用ゲーム系、PCゲーム系、ネットゲーム系、アーケー ドゲーム系、カード・ボードゲーム系に分類される。昔は、攻略目的だったが、コミ ュニティー指向や萌え指向という新たなゲームへのこだわりも登場している。ゲーム 開発においても大きな役割を担う。余暇時間のほとんどをゲーム関連の行動に費やす。 10∼30 代が多い。PCオタクの中に萌え系などが含まれる。 (e) 組立PCオタク 人口19 万人、市場規模 360 億円。PCの自作による経済メリットが減少したため市場 は縮小気味。組み立てること自体に楽しみを見出す層はまだ存在する。資金の豊富な リッチ系と資金に乏しいジャンク系に分けえることができる。PCを自ら組み立てる 行為そのものが目的化している人々。主に男性が占め、最新のPC組み立てる人は主 に 18∼40歳に分布。余暇には秋葉原など電気街の裏街道を徘徊し、在庫処分や中古 の安価なパーツを収集する人は40 代が主であるが、少数ながら 15∼18 歳にも分布が 見られる。

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(f) クルマオタク 人口14 万人、市場規模 540 億円。クルマオタクはドリフトするなどの走り屋系、クル マを装飾するドレスアップ系、絶版になったクルマを改修、修復し乗り続けることを 志望する人々の3つに分けられる。規制緩和で簡単なカスタマイズは認められたが、 クルマを趣味にしている人が減少しているので、市場は停滞している。ネットで情報 を交換している。高性能・低価格スポーツカーとして、日本車は世界にも注目度が高 い。男性が95%、女性 5%の割合である。走り屋系が 47%、ドレスアップ系が 15%、 改装、修復する人々は15%、その他 11%という分布になる。 (g) AV 機器オタク 人口6 万人、市場規模 120 億円。男性の 30∼60 代が中心となる。音や映像などいくつ かの価値観をもち、ハードウェア分野とはいえ、自分の創造性を発揮できる分野も存 在している。AV機器に時間や金銭を積極的に投入する。 (h) IT機器オタク 人口7 万人、市場規模 80 億円。小型・高品質の電子機器は日本メーカーが得意とする 分野。新製品や製品知識をもっていることを他人に披露するIT機器オタクはマーケ ティングの有力な担い手。携帯電話への注目が高く市場は減少傾向。新しいIT機器 領域の発掘が市場拡大のポイント。性別は男性が圧倒的多数を占める。主に20∼30 代 に分布。 (i) 旅行オタク 人口25 万人、市場規模 810 億円。旅行の自由化、個人化の時代を迎え、旅行者がさま ざま旅のスタイルを、模索する中、その先行者である旅行オタクの動向に注目が集ま る。国内旅行は50 代以上、海外旅行は 20 代が中心である。全体的に女性比率が高く、 かつ50 代の出現率が突出している。 (j) ファッションオタク 人口4 万人、市場規模 130 億円。このオタクには、ブランドオタク、ショップオタク、 特定の装飾品を好むオタクが存在する。コレクターと異なる点はブランドの歴史や商 品化された背景などを知っている。そして独自の評価軸を持ち批評できる。ファッシ ョンオタクの男女比率は男性24%、女性 76%である。また、その 6 割近くが 20∼30 代である。単に着飾ることを目的とせず身に着けること以外でもファッションを十分

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(k) カメラオタク

人口5 万人、市場規模 180 億円。最も古くから存在するオタクマーケット。主に中古

商品とプロ向けの高級商品によって支えられてきた。フィルムを用いた銀塩カメラか らDSC(Digital Still Camera)への移行が急速に進んでおり、長期に渡って技術的 革新が起こらなかった停滞型オタクマーケットに対して、新技術が与えるインパクト を定性的に分析するにふさわしいマーケット。30∼40 代を中心として急速に増加して いる。 (l) 鉄道オタク 人口2 万人、市場規模 40 億円。成熟市場がインターネットで活性化。大手企業は鉄道 オタク市場に注目、相次いで参入。中高年オタクの復活が今度の市場拡大。子供時代 の鉄道好きが大人になってもそのまま継続し、鉄道関係の趣味活動に余暇時間の大半 を費やす人々。ほぼ100%男性。年齢は中学・高校生から 60 代まで幅広い層で構成さ れている。 5 つのグループに 12 のグループを割り当てると、①には、AV機器、アニメ、組立PCオ タク。②には芸能人、組立PC、AV機器、IT機器、クルマ、カメラオタク、鉄道。④ にはゲーム、芸能人、旅行、ファッションオタク。⑤には圧倒的にコミックオタクが多い。 芸能人、ゲーム、アニメなど。③は特に決まったオタクはいないが、(a)∼(l)までのオタク が併用している場合が多い。 このように現在は大きく5 グループ、細かく 12 グループに少なくとも分かれると思われ る。今オタクと一言でまとめる訳にはいかないようだ。しかし①∼⑤も(a)∼(l)もその商品 に対して短期的か長期的にせよ非常に強い興味を示しているという点では同じようである。

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第4章 オタク市場秋葉原戦略

鷹見理恵 「オタク市場」とは何なのか。なぜ企業が「オタク」「秋葉原」関連のことについて注目 しているのか。これらのことを考えていく。まず、秋葉原の歴史をみる。 ① 電気街への変化 オタクが集まる場所と言えばやはり「秋葉原」である。オタクに直結しているのは今や 秋葉原であると言っていいだろう。今から10年程前、秋葉原はまだ電気街の街であった。 そもそも秋葉原になぜ電気街ができたかというと、二つの大きい要因があった。一つは終 戦直後、近くに位置する現在の東京電機大学の学生がラジオの組み立て販売のアルバイト を大ヒットさせ、部品を供給する電器関係の露天商がそこに集まったこと。後にGHQが 露店整理令を施行し、そうした闇市がさらにガード下に凝集せしめられることによって、 現在の駅周辺の部品商区画が形成されたのである。もう一の要因は、戦前から店を構えて いた廣瀬商会という商店が地方にネットワークを持っており、遠方から仕入れに来る小売 業者などでにぎわったこと。結果、秋葉原は安いという評判が広まり、また交通の結節点 だったということもあって、一般客も集まるようになっていった。現在で言うと、「コジマ」 に家電を買いに行くような人たちが秋葉原の主要な客層になっていったのである。そして その後は「三種の神器」に代表される戦後の家電ブームに後押しされて、今の秋葉原に成 長していった。これは秋葉原にとって大変大きな変化だったと言える。 ② オタク街への変化 ラジオブームから高度成長期の家電、そしてパソコンへ主役は次々と交代していった。 その後に続き、90年代末から勢いを増しているのがフィギュアやゲームマンガなどを扱 う専門店である。このような店は現在100店舗以上にも達するとみられる。徐々にこの ころから「オタク」の存在が浮き彫りになり始めてきた。90年代以降、郊外型の家電量 販売店との競争が激化して、秋葉原のパソコン店などは大打撃を受け、閉店が相次いだ。 一方、アニメ「エヴァンゲリオン」などの大ヒットで、関連商品の人気が高まり、関連店 が秋葉原で売上を伸ばしていったのである。

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した、マニア向けの少量生産の模型のことである。いずれも、旧来の電器店の取り扱い品 目からは完全に外れる商品である。97年以降、ガレージキット専門店である大手の海洋 堂が、渋谷に展開していた二店を畳んで秋葉原に移転した。しかし、96年以前は秋葉原 には全くといっていいほどガレージキット専門店はなかった。90年代末からオタク街に おいては、それまでの電気街が扱ってきたものとは業種も流通経路も全く異なる商品群が、 既存の家電店と入れ替わる形で専門店ごと外から流入してきたのである。この海洋堂が秋 葉原に移転したのを皮切りに、イエローサブマリンやボークス、コトブキヤなどの店も次々 と秋葉原に進出し、重心をそこに移した。97年から2、3年間という短期間に、秋葉原 はいきなり日本で最もガレージキット店が集中する街になったのである。そしてアニメキ ャラクターグッツなど、マンガ・ゲームに関わるさまざまな商品の専門店に関しても、同 様な移転現象が併行して起こった。やはりそれまでは渋谷や池袋などに多く見受けられた 類の店であるという点も共通している。秋葉原移転ブームがこの時代起こっていた背景が 見受けられる。 ③電気街からオタク街へ 例えば、秋葉原の縮図になっているのが「ラジオ会館」という場所である。秋葉原駅電 気街口正面に位置するこのビルは家電からコンピューター関連まで、秋葉原中心的商品の さまざまな専門店が多く集合している。このラジオ会館には98年に至るまでマンガ・ア ニメ関連商品の専門店は一切入ってなかった。ところが98年3月以降、アニメ・ゲーム 関連の専門店がラジオ会館に進出してきた。これは約3年間のうちに起こった変化である。 ここで重要な点は、ラジオ会館の管理者が経営的意図でもってこのような入れかえを推進 したわけではないということである。ラジオ会館はそもそも月極方式なので、会館側で敢 えて元気な店を誘致したり、マーケティング戦略を執ったりするような必然性は薄い。実 体としては、家電などを扱う店が経営悪化で縮小・撤退するなかで、不本意ながらも、秋 葉原への進出に積極的なオタク関連の店に周旋せざるを得なかった。これが結果として、 あたかも意図されたものであるかのようなラジオ会館の急変をもたらしたものと推測され る。このように秋葉原は電気街からオタク街へと変化を遂げてきた。パソコンマニアにア ニメオタクが多かったことが、秋葉原に関連需要を集中させたと分析することができる。 ここで企業のマーケティング戦略にかかせないものとして、マーケティングフレームが ある。マーケティングフレームとは 1.Product:製品、2.Price:価格、3.Place:販売チャ ネル、4.Promotion:プロモーションである。これに加えてオタク層の消費特性をふまえた 新しいマーケティングフレームとして以下の新3C がある。 ☆Collection:収集 商品やサービスにコレクション要素を付加することにより、継続的 な消費を促す。

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において創造性を発揮する場を提供することにより、商品への愛着を強める。 ☆Community:コミュニティ 情報交換や情報発信、自己の創造活動を発表する場を提供す ることにより、消費活動を促す。 この新3C がオタク戦略を行う上でポイントとなってくる。最近で注目されているのは「メ イドカフェ」である。店員がメイドの服装をしていて、アニメやマンガの美少女をかもし だすメイド達のいるのがメイドカフェ。オタクにとってはアニメ世界の人たちと現実に接 することができる唯一の空間なのである。オタクの人たちは一般的に現実の女性から回避 される傾向がある。最近となっては「電車男」のヒットからオタクに対する考え方も変わ ってきているが、それまではオタク男は女性とは無縁と言っていいほどであっただろう。 なぜならオタクはアニメ・ゲームの美少女に魅了されているし、かつ、アニメ・ゲームの 世界ではオタクは人気者、ヒーローになれるからだ。現実と違い、美少女が自分に声をか けてくれたり自分がアニメを見たりゲームをしている間は、自分が一番になれるからだ。 メイドカフェが人気なのは、アニメ・ゲームの世界の人たちと現実に話ができるといった 魅力があるからである。メイドカフェでは女性がオタクに尽くしてくれる。まさにこのビ ジネスには3C があてはまっていると言える。 また企業が「オタク」に注目している要因 にオタクは高い商品でも次々に買う傾向にあることである。自分の欲求を満たすためには 値段は関係ないというほどに次々に消費していく。これはオタクの特性である。 次にアニメ・ゲームから象徴されるように、「キャラクタービジネス」に焦点を当ててい く。現在キャラクター関連メディアは産業的に大変な注目を世界に集めている。中でも韓 国では、アニメーションやゲームを未来指向高付加価値文化商品・輸出戦略型基幹産業と して21世紀における国の産業の柱の一つに位置づけ、アニメーションセンターや、ゲー ム総合支援センターをそれぞれ開館させた。同時に人材育成も図るべく、政府はいくつも の大学にアニメーション学科を設置させた。同様な動きはインドネシアやインドでも目だ ってきている。戦後日本が国策的に重工業や自動車などの輸出産業を支援してきたのと同 様なことが、アジア諸国を中心にキャラクター産業で行われつつある。輸出産業としてア ニメやゲームが注視される背景には、IT 革命後はいわゆるコンテンツ産業の要になるとい う常識的な予測と同時に言うまでもなく、日本というモデルが存在している。とりわけ米 国でも記録的な興収を叩き出した、「ポケモン」の世界的ブームの影響は極めて大きかった ようである。実際日本は世界に冠たるキャラクター産業国であり、韓国政府が行った調査 によると、世界で見られるアニメの7割弱が、ゲームに至っては9割が日本のもだという データがでている。世界的に見てもキャラクター産業の力は大きいようである。メイドカ フェもメイドというキャラクターを用いることで新3Cを満たし、顧客を集めている。 秋葉原に注目すると、秋葉原へのキャラクター関連商品の異様な集中が目立つ。漫画・

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④新秋葉原について オタク街の雰囲気を残しつつ、ここ最近企業が新しい戦略を秋葉原に持ちかけてきた。 ターゲットはオタク街にいるオタクそのものではないのが特徴である。秋葉原と茨城県の 筑波研究学園都市を最短45分で結ぶつくばエクスプレスが8月に開業する。東京都は開 業に合わせて、秋葉原を情報技術(IT)産業の産学連携拠点とする再開発計画「秋葉原ク ロスフィールド」を進めている。その拠点となるのが去年3月にオープンした巨大インテ リジェントビル「秋葉原ダイビル」と、その隣に開業する「秋葉原 UDX ビル」である。ダ イビルには東大の研究施設や日立製作所が入居し、IT 関連の技術発表会が連日開かれてい る。クロスフィールドを中心に、2007年までに官民合わせて10棟の大型高層ビルが 完成する予定で、ハイテク関連の頭脳が集積した研究開発の新フィールドに生まれ変わる。 秋葉原の特徴は、電気街の派手な看板やネオンと雑然とした雰囲気、そして低層ビルだっ た。大型高層の近代的なオフィスビル群の登場は、秋葉原の古さと新しさの融合とも言え る。千代田区は「再開発だけでも新たに3万人弱の就業人口が生まれる」と推計している。 来秋には、秋葉原を起点とする鉄道の新幹線「つばさエクスプレス」が開通して交通の便 も向上することから、事業者側は「六本木や他の都心再開発地区と十分競争できる」と強 気の構えだ。この秋葉原の変化はTVでも取り上げられるほどになってきている。しかし なぜダイビルのようなものが秋葉原にできたかというと、電気街の秋葉原で IT 事業を発展 させていこうという企業側の戦略があった。あくまでオタクに注目したのではなく、秋葉 原そのものに狙いを定めている。また東大以外の大学の研究室も集合している。このこと により、企業と大学の共同研究を行いやすい環境作りが整っているというわけだ。またこ れらのビルに、秋葉原には似合わないようなお洒落な飲食店が進出している。従来から秋 葉原にはお洒落な店はあまりなかった。ターゲットがオタクをほとんど占めていたからだ。 しかしこのビルにはオタクでない人をターゲットにした飲食店が進出している。これによ り、オタクとは違った客層が秋葉原に増えてきているとのことである。「秋葉原に行きやす くなった」との声も聞くことができた。これは企業の新たな戦略だととることができる。 敢えて駅近くのビルの中にお洒落な飲食店を取り込み、新たな客層を狙う。オタクをター ゲットにしたアニメやゲームといった商品開発に力を入れるのも戦略の一つであるが、新 しいターゲットに目を向けて新たな戦略を考えるのも利益拡大につながる。 秋葉原は電気街からオタク街へと、オタク街から IT 街へと進化してきている。その中心 にいるのは「オタク」そのものである。オタク系列の店ばかりだったので、敢えて一般人 向けの店を展開したり、敢えて秋葉原を IT 発展の地にしたりと、企業は経営戦略をオタク の集まる秋葉原にかけている。

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第5章 オタク市場の発展と衰退

山本 晶子 なぜ今オタクがここまで注目されているのか?今回このテーマについて調べたことでこの オタク市場の将来性と更なる広がりが期待できるであろうということを心から感じた。「オ タク」といえば、従来まではマイナスイメージの強いものでありただの変わった人、もっ といえば「変態」というレッテルを貼られる存在であった。しかし今その概念が変わりつ つある所にこのマーケットの未来がある。 ではなぜ従来のイメージが払拭されてきているのだろうか?一番分かり易い事例をあげ ると、電車男や鬼嫁日記などの流行である。これらの共通点はというと元はただの一般人 が日常をパソコンで公開していたという所だ。しかし、映画化やゴールデンタイムという 家族団欒の時間でのテレビ放映というところまで市民権を得た。「オタクの社会的な認知は なぜおこったのか?」この問いが今回オタク市場を探っていく上での一番重要なキーポイ ントになる。 冷たい目でみられてきたオタク。それが緩和されてきている原因はパソコンの普及にあ るといえる。数年前までは「パソコン=仕事で使う難しいもの」であった。そのために、 そんなパソコンを使いこなしてアニメを作ったりゲームに熱中する人たちを社会は変な人 という目で見てきた。しかし、パソコンが普及するにつれ100%「パソコン=仕事」ではな くなってきた。それが電車男以降、急速に認知される様になり、主婦のおとりよせブーム や若者達の間でのブログ、Mixi の流行からもパソコンの一般化が伺える。遊びでパソコン を使いこなせる一般人の進出により、一般人とオタクとの境界線が薄れた。 そのことでニーズが広がり、多種多様な層のオタクができたことにこれから先の発展が見 える。 ここでオタクの層を3つのタイプにわけてみたいと思う。①この流行以前よりのオタク(多 少このブームに嫌気を感じている)②流行によってオタクということを恥ずかしがらず言 えるようになったオタク(このブームに好意)③にわかオタク、興味本位でオタクを装う 要は一般人(ブーム以前はあまり何も知らない) ①の人は一般人が好きにならない様なものを好きになることに誇りを持つ人が多く「他 の誰よりも自分が一番早く情報を仕入れた」だとか、「まだ誰も知らない場所だが自分だけ、

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のオタクな人たちである。流行が①の人よりは遅れる。 ③の人は流行の終着地点である。ここで流行らなくなったものは流行として終わりとい うことが言える。 ここにオタクの流行ライフサイクルを見ることができる。実際に私は日本橋のメイドカ フェに行ってきたが、客層を見ると半分程は観光の冷やかしで①の人達はいなかった。 メイドカフェはもう流行としては一周したといえる。おでんの自動販売機やメイドによ るヘアカットなども②や③の人達を狙ったものだが、それももう衰退期に入っている。 今秋葉原や日本橋といったオタクの町ではオタクのためのフリーペーパーが配られてい る。これには町の地図やオススメのメイド喫茶、フィギュアの発売日から歩行者天国のコ スプレイベント(このイベントはとても人気が高く、韓国や台湾、アメリカなどからも参 加者がやってくる世界的なオタクのためのストリートイベント)の日付まで、初めてくる 観光客でも分かるように記載されている。 またメイドパークスというオタクの為の遊園地ができ、そこでは流行りのグッズショッ プやカフェはもちろん、プリクラや握手会などのできるイベント会場があり、広い層のオ タクをターゲットにしているといえる。 更には新しくオタクのためのオシャレなバーができたりもしている。ここでは店内に高 価なグラスが並ぶとともに精巧なフィギュアが飾られ、店員もフィギュアと同化する出で 立ちで出迎える。客層も広く、オタクでないファンも多い。

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オタクの定義は難しく、ここからがオタクでここからが違うという決まった点はない。 あえて共通項を出すとすれば、時間とお金の費やし方である。所得と時間のうち、対象物 に費やす割合が極端に高い人がオタク度も高いといえる。アニメやPC が好きな人だけがオ タクなのではなく、何かに熱中している人がオタクといえる。イチローなら野球オタクだ し、陶芸を愛する人もフィギュアを愛する人も根底は同じといえる。 オタクは「理想像を追求する情熱、消費、創造のスパイラル」と位置づけられる。「こう あるはずだ」と思う究極の商品(PC やフィギュアなど)を理想化し、探求する。そのため 理想追求の情熱が消費エネルギーになるので価格は二の次。高価だったり、限定された時 期・場所でしか手に入らないなど購入のハードルが高くても、惜しみなく投資する。理想 像に近づき思い入れが激しくなればなるほど消費のスピードも増す。 オタクの消費エネルギーは経済力ではなく情熱をベースにしているため、景気変動も受 けにくい。コンテンツやハード市場を下支えする安定した市場をオタクが形成していると いう。いまの日本の景気が上向いてきているのもオタク人口が増えた事が関係していると いっても過言ではないかもしれない。 しかし、オタク層を固定客として取り込み、高価な商品を継続的に買ってもらいたいと 思っても、オタク市場で発展を遂げるのは難しく、オタクでない人がオタクはこれでも買 うだろうと安易に作った商品は反感を買うことになる。逆にただオタク狙いの商品であっ ても同じオタクが手を抜かずに作った質の高い商品は尊敬され受け入れられる。 その例が、英単語集の「もえたん」やオタク漫画の「げんしけん」である。 もえたんは、英単語集に美少女アニメのイラストが描かれている。この異例な組み合わ せにより、アニメオタクの人・受験生のどちらからも支持を受け、英単語集としては絶大 な売り上げを誇る事となっている。 げんしけんとは、現代視覚研究所の略で大学でのオタクサークルのありのままを一切脚 色せず漫画化しているところにその人気が集まっている。オタク自身が「オタクってイタ イな….」と思いながらも自分と重ね合わせてついつい見てしまう、共感できるリアルとい うところにその人気がある。 オタク市場で成功して物を売りたければ、オタクになるかオタクのフリをして決してボ ロを見せないことが必要である。常に本物志向で流行に敏感、いいものにはいくらでも投 資するが少しでも気に入らないと削除するスピードも速い。商品購入にとても素直な態度

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オタク人口が増えて発展していくということ。それは日本経済が、更には日本人の国民 性が成長していくということに他ならないのである。

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第6章 オタク事業戦略論

寅川 奈緒 いまや、オタク市場 170 万人といわれており、オタクは企業にとって無視できない存在 になっている。 オタク市場の人口と市場規模↓ 分野 人口 市場規模 コミック 35 万人 830 億円 アニメ 11 万人 200 億円 芸能人 28 万人 610 億円 ゲーム 16 万人 210 億円 組立 PC 19 万人 360 億円 車 14 万人 540 億円 AV 機器 6 万人 120 億円 IT ガジェット 7 万人 80 億円 旅行 25 万人 810 億円 ファッション 4 万人 130 億円 カメラ 5 万人 180 億円 鉄道 2 万人 40 億円 合計 172 万人 4,110 億円 さて、170 万人いるオタクは企業戦略、事業戦略の中でどのように活かされるのだろうか。 また、「産業ライフサイクル」のそれぞれの段階に応じてオタク達がどのような影響を周囲 に与えているのだろうか。 「産業ライフサイクル」とは、産業にも寿命があり、市場規模や利益の変遷によって萌 芽期・成長期・成熟期・安定/衰退期の 4 つの段階に分かれ、企業戦略などに活用されて いる。 ①萌芽期

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ボット技術が、「ASIMO」や「AIBO」などの民生用のロボット技術へと転用されており、 現在のロボット産業は新たな市場として注目されている。経済産業省では、家事や育児、 介護を手伝うようなヒューマノイド型ロボットが広く普及すると見込んでおり、このヒュ ーマノイド型ロボット市場の立ち上がりを予見させる事例として、組立型ロボット市場を あげることができる。この組立型ロボットは、自分で組み立てプログラミングをしリモコ ンで操作するタイプのもので、ラジコンの延長戦として一部のオタクの間でブームとなっ ている。2 足歩行型ロボットによる「ロボワン」という格闘技大会が開催されたり、秋葉原 には組立型ロボットの専門コーナーもある。組立型ロボットのユーザーは決して安くはな いパーツ類を買い、足りないものは自作し、子供の頃に見た「鉄腕アトム」などのロボッ トの実現化を夢見ているのである。この組立型ロボットのオタク層は、ロボット市場とい う新しい市場の作り手であり、消費者でもある。 このように、「萌芽期」においてのオタクはこの段階の産業を支える存在であり、オタク層 をいかに取り込むことができるかが新しい産業の立ち上げのポイントとなる。 ②成長期 萌芽期が過ぎた産業が社会に浸透し、ユーザーが急速に増えるとともに、企業の売上も 急成長する段階。現在この段階にあたるのが、ハードディスクレコーダーやIC カード搭載 型の携帯電話などのIT 機器産業である。ここでのオタクの役割は、企業から発売される新 しいコンセプトや技術を利用した商品をいち早く購入・評価し、利用方法をいち早く開拓 する。そして、その結果を周囲の人に広めるのである。事例として、デジタルカメラ市場 があり、デジタルカメラの発売当初は画質があまり良くなかったためカメラオタクの間で は評判が悪かったが、PC(personal computer)に画像を取り込めることがアピールポイン トになり、だんだん市場に受け入れられるようになった。この時、最初にデジタルカメラ を受け入れたのがPC オタクであった。 周囲の人に商品の良さや使いやすさを伝えることは、この段階における市場の拡大に必要 不可欠である。最近はネットの掲示板やブログを利用する人が多くなってきていることに より、ネットが口コミの発信源として機能している。オタクたちはIT 機器などをいち早く 購入して使い込み、ネットによって他の人々に評価を伝えるのである。 ③成熟期 ユーザー数の増加が鈍化し、価格競争が始まることで利益率が低下し始める段階。利益 率を維持できる特定ターゲットを狙ったニッチ戦略が採用されている。例えば、アニメ産

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ある。しかし、子供の頃にアニメを見て育った20∼40 歳代をターゲットとした市場開拓に より、アニメ産業は新たな顧客を確保できた。象徴的な事例として、「機動戦士ガンダム」 が取り上げられる。現在30 歳代の人たちがガンダムを見て育ち、ガンダムはシリーズ化さ れアニメが放送されたり、初代シリーズの派生シナリオやキャラクター創造がアニメオタ クの間で行われている。こうした自作の作品はネットやアニメ専門誌などで公表され、フ ィギュアなどの商品化にも結びついている。 ここでのオタク層は、自分のその商品に対してのこだわりの深さを追求するようになり ユーザーの創造性がユーザー間で共鳴を始め、次々と新しい価値を生み出すのである。 ④安定/衰退期 新規ユーザーがいなくなり、企業の売上も利益も減少する段階。例えば、レンズ式カメ ラ市場があり、デジタルカメラの普及によりレンズ式カメラ市場は一部のカメラオタクに よって支えられており、カメラオタクは高度な商品知識と愛着を持っているので自分達で トラブルに対応できる。また、専門ショップやネットを通じて情報交換などが行われネッ トワークができ、メーカーに代わるサポート提供者になる。 ここでのオタクの役割は、サポート提供者であり、オタク層の熱心さやコレクターとし ての商品に対する深い思いは、この段階にある分野の市場を支えているのである。 このように、ライフサイクルのステップごとに応じてオタクの果たす役割があるので企 業側もこの動きにうまく対応していく必要があるだろう。 では、オタクの持つ特性を企業活動において活用する方法を考えてみよう。 (a)企業のエージェントとしてのオタク 商品の購入後の使い方や楽しみ方、商品・サービス間の比較評価など、オタクが利用 した上で得られた体験情報は、企業の広告・宣伝や販売店の店員からのセールストーク よりも消費者にとって役立つ情報であり、企業の営業担当としての役割が期待できる。 また、自社商品に対してのネット上の質問サイトやコミュニティなどのサービスのサポ ーターとしてヘルプデスク機能を代行してもらうこともできるだろう。 (b)商品・サービス企画のネタもととしてのオタク

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企業 (1)新しいコンセプトに基づく (4)一般ユーザー向けにアレ 商品・サービスを ンジを加えて投入 まず投入 (3)オタク層の消費の オタク層 仕方を観察し吸収 一般ユーザー (2)取捨選択や アレンジをする このように、オタク層を活かし、思いもかけない商品の使い方、カスタマイズ方法の 取り込みや企業側の視点にはない新しいコンセプト作りができるのではないだろうか。 (c)商品価値を創造するオタク 自らの志向に合ったクルマのチューンナップやパーツ類の自作まで行うクルマオタク、 オリジナルなモノやストーリーやキャラクターの創作を行うコミックオタクなど、オタ クは商品に関わる世界観を持っており、オリジナルなモノやコンテンツを付け加えてカ スタマイズしたり、まったく新しい視点での使い方や楽しみ方を生み出す場合もある。 この状況で企業側に必要となるのは、カスタマイズ改造可能なパソコンやクルマなど、 オタク層による創作活動を促すようなある程度の隙のある商品設計である。また、オタ ク層の創作活動を楽しむためのイベントや場所の設定も同時に重要になってくる。 自分の好みに合った商品を生み出し、自分で商品をオリジナルなものにすることによっ て商品の価値を高め、ブランド価値を上げ継続的な消費を促すことができるのではないだ ろうか。

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第7章 あとがき

寅川 奈緒 オタクというのは一昔前は「アニメや漫画など仮想性の高い対象を好み、それらに強い こだわりを持ち、ネガティブな人物像」として捉えられてきたが、今では「何か好きなこ とにこだわる人」という、もっと軽いニュアンスで使われるようになっている。こだわり を持つからこそ、ほかの人よりもある種のことで優れていたり、創造性や価値観を持って いる。この創造性や価値観をもったオタクと企業が手を結び産業界をより発展させていく だろう。これからの産業において欠かせないものになるのは間違いない。

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参考文献

オタク概論http://d.hatena.ne.jp/nagoya758/20041119 一般人から見たオタクhttp://d.hatena.ne.jp/keyword/%a5%aa%a5%bf%a5%af オタクとマニアhttp://www.geocities.jp/column_cafe/column15.html http://homepage1.nifty.com/straylight/main/cmfntxt_.html 野村総合研究所 オタク市場予測チーム 著 東洋経済新聞社「オタク市場の研究」2005 年発行 株式会社野村総合研究所http://www.nri.co.jp/news/2005/051006_1.html その他日本橋で配られていたパンフレットより

参照

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