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(ν e,ν µ,ν τ ) (ν α ) (ν j ) ν α >= U α j ν j > (4.1) j ν j ν α (t) >= U α j ν j > e ie jt, E j = p 2 + m 2 j p + m2 j j 2E (4.2) θ ν e

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(1)

4

講 ニュートリノ振動

4.1

ニュートリノ振動

 ニュートリノ(νe,νµ,ντ)は、弱い相互作用で荷電レプトンと対になって生産される状態で定義される。 これを弱相互作用もしくは香りの固有状態といい一般に質量固有状態と同一であるとは限らない。同一 でなく混合がある場合、香りの固有状態(να)は、質量固有状態(νj)の重ね合わせとなる。 |να>=

j Uαj|νj> (4.1) この場合生成されたニュートリノが伝播するとき、各質量固有状態は別々の時間発展をするので、混合 比が変わり別の香り状態が混入する。この現象はニュートリノ振動と呼ばれる。νjは安定であるとし、 質量が小さいことを考慮すると、香りの状態の時間発展は |να(t) >=

j Uαj|νj> e−iEjt, Ej= √ p2+ m2 j≃ p + m2j 2E (4.2) と表される。ニュートリノは3世代あるが、以下の議論では簡単のため2世代とする。この場合独立な 混合行列要素はただ1個のみとなるので、混合角θを使って次のように表すことができる。 |νe> = cosθ|ν1> + sinθ|ν2> |νµ> =−sinθ|ν1> + cosθ|ν2> (4.3) 従ってt = 0でνeであったものが、時刻tでνµに変化する確率は

P(νe→νµ;t) =| <νµ|νe(t) >|2=|sinθcosθ(1− e−i(E1−E2)t)|2 (4.4a) = sin22θsin2∆m 2 4E L = sin 22θsin21.27∆m2(eV )2 E(GeV ) L(km) (4.4b) ∆m2=|m2 1− m22|, L = ct (4.4c) νeが生き残る確率は P(νe→νe;t) = 1− P(νe→νµ;t) (4.5) 振動の波長λは λ(km) = 4πE ∆m2 = 2.5E(GeV ) ∆m2(eV )2 (4.6) 振動が生じる目安は、∆m2L/E∼ 1で与えられるので、E/Lを適切に選ぶことにより、広い範囲の∆m2 の探索が可能となる。 演習問題4.1. (4.4b)最初の式から最後の式を導け。

(2)

表4.1:ニュートリノ振動における∆m2領域 ニュートリノ源 エネルギーE(GeV) 距離L(km) ∆m2(eV )2 加速器 0.1∼ 100 1∼ 1000 10−3∼ 100 原子炉 ∼ 10−2 10−1∼ 100 10−1∼ 10−3 大気 1∼ 102 10∼ 104 10−4 太陽 ∼ 10−3 ∼ 108 10−11 地球の直径 表4.1にニュートリノ源の違いによる質量探索領域を示す。2000年代、加速器および原子炉を使う実験 でニュートリノ振動探索が精力的に行われたが、∆m2& 0.1eV2で振動の徴候は見つけられなかった。実 験データは通常sin22θと∆m2の2次元平面上にプロットする* 1) 。振動が見つからない場合、実験誤差 をPとして長波長領域では sin 2θ∆m2<E L P L≪λ (4.7) 逆に短波長領域では、Eが幅を持つこと、ニュートリノ源が広がっていることなどを考慮すると、振動 は平均化されるので P(νe→νµ) = sin22θ< sin21.27 ∆m2 E L >≃ 1 2sin 22θ< P Lλ (4.8) 加速器実験ではP∼ O(10−3∼ 10−4)まで可能であるが、他種の実験では、P≥ 10−2∼ 10−1である。図 4.1は、これまでの信号が検出できなかった実験例について、データから禁止される領域を示す。 図4.1: 2000年代の実験ではニュートリノ振動は見つからず、上記曲線の右上側が禁止領域として表示さ れる。ただし、Los Alamosは信号を見つけたと主張しており、現在(2006)検証が進行中である。 * 1) 後述の物質振動解ではθπ/2θの対称性が崩れるので、sin22θの代わりにtan2θを使うことが多い

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4.2

大気ニュートリノ振動

 ニュートリノ振動の最初の徴候は、大気ニュートリノ中のνµ成分がνe成分に比べて少ないというデー タであった(1988)* 2) 。次式に岐阜神岡鉱山に設置してカミオカンデ測定器(およびその後継機種スー パーカミオカンデ)による結果を示す。 R =µµ)/(νee)¯¯DATAµµ)/(νee)¯¯Monte Carlo = 0.61± 0.03(stat) ± 0.05(sys) (4.9) 大気ニュートリノは一次宇宙線(主成分は陽子)が大気と反応して生成されるπの崩壊から作られる。主 反応は p + A π±(K±) + X (4.10) π±(K±) µ±+<ν> µ (4.11) µ± → e±µ+<ν>e (4.12) であり、2GeV以下ではN(νµ)/N(νe)≃ 2が得られる。より一般的には、地表での宇宙線ミューオン強度 から逆算して大気ニュートリノのスペクトルを算出するが、不定性が大きく、νµ成分不足の原因をこの データだけからニュートリノ振動効果と確定することはできなかった。 ニュートリノ振動に対する確証は、スーパーカミオカンデ(SK)検出器により得られた。図4.2にSKの 概要を示す。 図4.2:神岡水チェレンコフ測定器(スーパーカミオカンデ)。 (東京大学宇宙線研究所提供) 岐阜県神岡鉱山地下1000mに設置。右側の写真は光電子増倍管を設置し他後注水しているところ。 スーパーカミオカンデは、岐阜県神岡鉱山の地下1000mに設置した測定器である。地下深く設置する 理由は、宇宙線による背景雑音を極力減らすためである。ニュートリノ自身は地球程度の物質量は自由 に通り抜けられるが、宇宙線の主成分のミューオンやガンマ線は、地下深く潜るほど急速に減らせる。 * 2) 1970年頃から存在した太陽ニュートリノの謎問題が、2002年にニュートリノ振動と確定されたので、結果的には太陽ニュー トリノの振動の徴候の方が時期が早かったことになる。

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ニュートリノ自身は、電気的に中性で検出できないが、ニュートリノ反応 νe+ e−→νe+ e− (4.13a) νe+ n → e−+ p (4.13b) νµ+ e−→νµ+ e− (4.13c) νµ+ n → µ−+ p (4.13d) により散乱もしくは生成された荷電粒子が、水の中で放射するチェレンコフ光を光電子増倍管で検出す る。チェレンコフ光は屈折率nで決まる特定の角度 cosθ=1 n (4.14) 方向に円錐状に放射されるので、エネルギーが低くてすぐに止まる粒子が作る短い軌跡から放射される 図4.3: ニュートリノ検出原理: ニュートリノにより跳ね飛ばされて電子の放射するチェレンコフ光を 水タンク壁面に設置した光電子増倍管で検出する。中図の事象は超新星ニュートリノにより散乱された 電子が図中の+点から矢印の方向に走った例。丸印が光った光電子増倍管を表し、丸の大きさが光量を表 す。リングパターンが見える。右図:ミューオン生成事象。検出器内の一点から眺めたリングパターン。 チェレンコフ光はリングを作る。エネルギーが高く検出器から突き出る粒子は、円を埋め尽くすパター ンとなる。電子は電磁シャワーを起こすので、ぼやけたリングになるが、ミューオンは縁のくっきりし たリングを作る ニュートリノ振動に対する確証は、ニュートリノの天頂角分布で得られた(1998:図4.4)。大気ニュート リノは地表何処でも一様に生産されるので* 3) 、ある一定の立体角内に入るニュートリノフラックスの 値は、天頂角にほとんど依存しない。ただし、地表からの距離が短く、大気層の厚さが無視できない時 は、横方向に生産されるフラックス量は大きくなる。従って天頂角分布は、cosθ≃ 0付近で大きくなり、 かつ左右(θπθ)対称性を持つ。地球物質内で相互作用するニュートリノ数はわずかで無視できるか ら、相違はニュートリノ発生源からの距離のみである(図4.4左図)。従って、上下非対称性が存在すれば それはニュートリノ振動効果と断定できる。電子ニュートリノには上下非対称が見られないが、ミュー * 3) Gev以下では、地球の磁石効果により南北異方性があるが補正可能である。

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図4.4:大気ニュートリノ天頂角分布。左図:天頂角と飛程距離の関係 中図:SKのνeデータ 右図:

SKのνµ データ。黒丸:観測値、赤線:振動がないとしたときのフラックス予想値、緑線:振動を仮定

したときの予想値(∆m2= 2.5× 10−3eV2, sin22θ= 1.0)

ニュートリノ角分布は明らかに非対称性を示し、これから、電子ニュートリノは振動しないが、ミュー ニュートリノは振動することが確立し

sin22θatm≃ 1, ∆m2atm≃ 2 × 10−3eV2 (4.15)

と決められた。 演習問題4.2. 大気ニュートリノが、地球表面の大気層で一様に生産されるとき、大気層の厚さを無視す れば、任意の天頂角θ方向(上から)とπθ方向(下から)の同一立体角内のニュートリノフラックスは 同じであることを示せ。

4.3

太陽ニュートリノ振動

4.3.1

ホームステイク実験

 太陽ニュートリノは、太陽中心付近での熱核融合反応 2e−+ 4p 4He + 2νe(26.73MeV ) (4.16) の反応により放出され、その正体は電子ニュートリノである。熱核融合反応は主としてppチェインと呼 ばれる様々の原子核反応の結果として起こり(図4.5左図)、CNOサイクルも少し入る。放出ニュートリ ノのエネルギースペクトルは図4.6のように表される。 最初に太陽ニュートリノフラックスを検出したのは、アメリカのホームステイク鉱山に設置した615ト ンの2塩化炭素(CCl2)ニュートリノ検出器であり1968年にまでさかのぼる(図)。検出反応は νe+37Cl 37Ar + e− Eν> 0.81MeV (4.17) である。この方法は、アルゴンを一定期間(アルゴンの半減期35日以上)貯めてから計数する方式なの で、ニュートリノのエネルギー、飛来方向は判らない* 4) 。ニュートリノ源も太陽以外には考えられない * 4) ガリウムを使う実験も同じ。

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図4.5:左図:太陽核融合反応pp-チェイン。右図:CNOサイクル。CNOサイクルは& 1.6×107Kで有効。 太陽中心温度∼ 1.4 × 107Kなので、1.6%の寄与しかないが。大質量星ではこちらが優勢。また、CNO サイクル2は1の0.04%しか寄与しない。 図4.6:左図:太陽ニュートリノスペクトル。上部にはガリウム、塩素を使った時とSK、SNO検出器の 敷居値を書いてある。右図:デイヴィス等の太陽ニュートリノ検出器。615トンの液体2塩化炭素(一種 の液体洗剤)をタンクに入れ、ホームステイク鉱山の地下1620mに設置した。宇宙線の背景雑音を防ぐ ため装置全体を水のプールに沈めた。

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という理由のみで太陽ニュートリノと見なすのである。塩素検出から得られた太陽ニュートリノフラック スは、星の進化などから総合的に決められる標準太陽モデルの予想値の1/3しかなく、最終的にはニュー トリノ振動効果と判明したが、長い間太陽ニュートリノの謎として天体物理学の未解決問題であった。 しかし、カミオカンデやその後継機のスーパーカミオカンデ検出器が、νe+ e−→νe+ e−の弾性散乱反 応を使って、太陽ニュートリノを検出して太陽ニュートリノの謎問題を確認し、ニュートリノ振動効果 として解析するようになった。弾性散乱を使う検出では、ニュートリノの飛来方向とエネルギースペク トルを知ることができるから、ニュートリノ望遠鏡としての資格を備えている。ただし、地中の放射性 同位元素の発する雑音が多いため、検出できるニュートリノのエネルギーは大体、5∼ 7 MeV以上に限 られた。 ガリウム実験 Davisの実験、神岡実験共に、エネルギーの高い部分にのみ感じ、有感領域はエネルギー スペクトルのごくわずかな部分である(図4.6)。8Bの寄与は全体の0.02%であり(図4.5)、太陽モデルの 不定性の最も大きい所である。そこで、ppチェインの主要な反応であるPPIからのニュートリノを検出 することが重要となる。 次のガリウム反応 νe+71Ga→71Ge + e− (4.18) を使うニュートリノ検出は、Davisの実験と同じく、化学的方法を使うのでオンラインではないが、エネ ルギーの敷居値が(Eth= 233KeV )と低く、ppチェインの主反応によるニュートリノ(E < 420KeV )を検出 できるので、SSMの理論的不定性が少ない部分を検証できる。イタリアのグランサッソ(Gran Sasso)にお

けるGALLEX/GNO、ソ連のバクサン(Baksan)におけるSAGEの3つの実験が行われた。GALLEX/GNO

の結果は

Gran Sasso観測値 :77.5± 6.2(stat) ± 4.5(sys) SNU (4.19a)

GNO観測値 :65.2± 6.4(stat) ± 3.0(sys) SNU (4.19b)

両者合計 :70.8± 4.5(stat) ± 3.8(sys) SNU ≃ 0.55 × SSM (4.19c)

SSM予想値 :129+8−6 SNU (4.19d)

SAGEの結果は

SAGEの観測値 :70.8+5.3−5.23.7−3.2 SNU ≃ 0.55 × SSM (4.20a)

SSM予想値 :128+9−7 SNU (4.20b) で、太陽ニュートリノの謎は、低エネルギーでも確認された。

4.3.2

SNO

データ

太陽ニュートリノの謎が、本当にニュートリノ振動効果であることを証明するには、νe,νµ,ντの全てを 検出し、νeの不足分がνµ,ντに変化していることを、示さなければならない。 カナダのサドベリーに設置したSNOは1000トンの重水検出器で次の3つの反応を測った(2002)。 νe+ D → e−+ p + p CC反応 (4.21a) νeµ,ντ) + e− νeµ,ντ) + e− ES反応 (4.21b) νe(νµ,ντ) + D νe(νµ,ντ) + p + n NC反応 (4.21c)

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それぞれの反応から得られたニュートリノフラックスをφe,φES,φNCとすると、 φe= (1.760.06−0.05± 0.09) ×106cm−2s−1 (4.22) φES= (2.39± 0.24 ± 0.12))×106cm−2s−1 (4.23) φNC= (5.09+0.44+0.46−0.43−0.43) ×106cm−2s−1 (4.24) φeは、νµ,ντを含むフラックスより小さく、νeがνµ,ντへ遷移したことを示す。νee弾性散乱断面積は、 νµe,ντe散乱断面積の6倍あり、NC反応による断面積は3種のニュートリノで同一であるから、上の3 つのフラックス値から、νµ,ντを合わせたフラックスφµτおよび、3種のニュートリノ全部合わせたフラッ クスφall は φµτ≃ 6 × (φES−φe)≃ 3.6 × 106cm−2s−1 φallNCeµτ≃ 5.4 × 106cm−2s−1 (4.25) と計算できる。φallは、確かに3種のニュートリノ全部のフラックス測定値φNCにほぼ等しい。この事 実は、νeが振動によりνµ,ντに遷移していること、それ以外の別種のニュートリノへは遷移していない ことを示す。 ) -1 s -2 cm 6 10 × ( e φ 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 ) -1 s -2 cm 6 10 × (τµ φ 0 1 2 3 4 5 6 68% C.L. CC SNO φ 68% C.L. NC SNO φ 68% C.L. ES SNO φ 68% C.L. ES SK φ 68% C.L. SSM BS05 φ 68%, 95%, 99% C.L. τ µ NC φ 図4.7: SNO 太陽ニュートリノフラックスを、CC : νe+ D→ e−+ p + p反応、ES : νe+ e−→νe+ e− 反応、NC : νe+ D→νe+ p + n反応で測定したときのフラックス値を示す。二つの点線に囲まれる帯は 標準太陽モデルの予想値φSSMを示す。なお、ES散乱データはSKデータをも示してある。 更に、φallは標準太陽モデルの予想 φSSM= 5.05+1.01−0.81× 106cm−2s−1 (4.26) とぴったり一致し、30年に及ぶ太陽ニュートリノの謎問題は解決した。図4.7にφe−φµτ平面上で、3つ のデータおよび標準太陽モデル予想値の許容範囲を示す。

4.4

物質振動

(MSW

解)

太陽ニュートリノは確かに振動していることは判明したが、ニュートリノ質量や混合角を決めるための 式(4.4)(4.5)をそのまま使うわけには行かない。電子ニュートリノは真空を伝播するのではなく、太陽表 面に出るまでは電子や核子による散乱の影響を考慮しなければならないからである。そこで、真空中で

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の関係式が物質中ではどう変更されるかを見てみよう。真空中でのニュートリノの質量固有状態と香り の固有状態の関係を Ψmass(t) = [ ν1(t) ν2(t) ] , Ψ(t) = [ να(t) νβ(t) ] Ψ(t) = UΨmass(t) (4.27) とする。Uは(4.3)で与えられている。シュレーディンガー方程式はm2> m1を仮定して i

∂tΨmass(t) = HdiagΨmass(t) = [ E +m21 2E 0 0 E +m22 2E ] Ψmass(t) (4.28a) i∂ ∂tΨ(t) = HΨ(t) = [ Hee Heµ Hµe Hµµ ] Ψ(t) (4.28b) H = U HdiagU= E + m21+ m22 4E + ∆m2 4E [ −cos2θ sin 2θ sin 2θ cos 2θ ] (4.28c) ただし、∆m2≡ m22− m21> 0 (4.28d) で与えられる。これから、香りの状態を対角化する混合角θは tan 2θ= 2Heµ Hµµ− Hee (4.29) で与えられることが判る。  物質中では、νe,νµ共に物質と相互作用をするので、式(4.28c)が変更される。中性カレント反応は、 νe,νµへ同じ影響を与えるので、対角項すなわち質量を同じだけ変えるが、質量差は変えないので振動 には影響を与えない。しかし、荷電カレント反応による弾性散乱(νe+ e→νe+ e)はνeにのみ有効であ り、従って振動に影響を与える。有限角散乱は物質による吸収を与えるが散乱断面積は小さいので無視 できる。前方散乱は光の物質中における進行波と同じく、元の入射波と干渉して波長を変える。この効 果は屈折率nで表すことができる。粒子の重心系では

ν(t) =ν(0)ei(px−Et)≈ν(0)e−iLm22E −−−−→物質中 ν(0)ei(npx−Et)≈ν(0)e−iL{−(n−1)p+

m2 2E} 対角化 −−−−→ ν(0)e−iLm22E˜ −p(n − 1) = −2πne p f (0) =± 2GFne (4.30) ˜ mは物質中での質量値、f (0)は前方散乱振幅で、GFはフェルミ結合定数、ne=ρNAZ/Aは物質中の電子 数密度、ρは物質密度、NAはアヴォガドロ数である。正負の符号はνe( ¯νe)に対応する。散乱は香りの固 有状態で行われるので、ハミルトニアンの行列要素が Hee → Hee+δm +δmee, Hµµ → Hµµ+δm (4.31a) δmee=± 2GFne (4.31b) と変わる。反ニュートリノの場合は負の符号を採用する。δmは、νe,νµに共通のエネルギー変化を表す。 neを定数とみなせば、物質解は真空解と同じようにして求められる。物質中の変数を˜を付けて表すこ

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とにすると E +m˜ 2 2E = E + m21+ m22 4E +δm + δmee 2 ± 1 2 √(∆m2 2E cos 2θδmee )2 + (∆m2 2E sin 2θ )2 (4.32a) tan 2 ˜θ= ˜2 ˜Heµ Hµµ− ˜Hee = ∆m2 2E sin 2θ ∆m2 2E cos 2θδmee (4.32b) この表式はたとえ真空中での混合角θが小さくても、物質中の混合角θ˜は大きくなり得ることを示して いる。分母がゼロになる所(共鳴点) ∆m2(eV )2cos 2θ= 2δm eeE = 1.50× 10−7 ( E MeV )( ρ gr/cm3 ) (4.33) 付近で、θ˜ =π/4となり最大混合が生じ得る。共鳴が生じるためには、(4.33)を充たす共鳴密度(ρr)が、 太陽内の最高密度nc(≃ 100gr/cm3)より小さくなければならない。E≤ 10MeV を考慮すると、∆m2を検 出できる有感領域は 10−11<∆m2(eV )2< 10−4 (4.34) と真空振動だけの場合に比べて大いに広がる。物質中におけるニュートリノ振動の取り扱いは、ウォル フェンシュタインが最初に定式化し、ミケエフとスミルノフが太陽ニュートリノの物質振動の可能性を 指摘したので、物質振動解はMSW解とも呼ばれる。 太陽ニュートリノへの適用  太陽中での電子数密度は次式で近似できる。 ne= nece−x/R0 nec≃ 98.6NA/cm3; NAはアヴォガドロ数 (4.35a) R0≃ R⊙/10≃ 7 × 104km R⊙は太陽半径 (4.35b) 図4.8は、太陽の中でニュートリノ質量(4.32)が電子密度の関数としてどう変わるかを定性的に描いた ものである。破線が、混合が存在しないとき(∆m2sin 2θ= 0)の解で、真空中(ne= 0)ではm(νe) < mµ) であるが、十分密度が高ければm(νe) > m(nµ)となり、レベル交叉が生じる。混合があるときは、物質内 の固有解ν˜1, ˜ν2は、νe,νµの混合状態であり、図4.8左の実線で表されて交わることはない。ν˜1は、密度 neの大きいところではほとんどνeであり、密度がゼロ(真空)ではほとんどνµである。図4.8右に、物質 内での混合角が電子密度と共に動変わるかを示した。二つの曲線が最も近くなるのは、共鳴条件(4.33) が充たされるときである。 断熱近似: 場所による密度変化が十分緩やかであるとすれば、断熱近似が成立する。断熱解はneを定 数として見なした解に密度の時間変化を入れることにより得られ、図(4.8)の電子密度-質量の関係がそ のまま成立する。太陽中心の電子密度が十分高ければ、生成されたνeは、図(4.8)の上の曲線上(固有解 ˜ ν2)にある。νeが太陽の外に向かって進むにつれ密度が減少するが、混合が生じていれば曲線は交叉し ないから、外に出たときはνµになっている。これをMSW(Mikheyev-Smirnov-Wolfenstein)効果という。  共鳴混合が起きるためには、共鳴を起こす電子密度(ner)が太陽中心密度(nec≃ 100NA/cm3)より小さ くなければならない。(4.33)に(4.35)を入れれば ∆m2(eV )2cos 2θ< 1.50× 10−4 ( E 10MeV ) (4.36)

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図4.8:左図:太陽内のニュートリノ質量m˜1,2を密度の関数として表す。固有解はν˜1, ˜ν2であるが、ne>> ne,r

では、ν˜1νe, ne<< ne,rでは、ν˜1νµである。右図:太陽内の混合角θ˜を数密度neの関数として表す。

 断熱条件が成立するのは、固有振動周期の間の密度変化によるエネルギー変化が、固有解のエネルギー 差∆Eに比べて小さいときである。密度変化に伴うエネルギー変化は、(4.31)よりδE = √2GFδneと書

ける。δE =∆Eとなる距離をLρと書けば、Lρが固有振動波長(̸λm≡λ/2π= 2E/m˜2)に比べ十分長い

ことが断熱条件となる。 2GF dne dxLρ=∆E = ∆m˜2 2E ∴ Lρ= ∆m˜2 2E 2GFdne dx (4.37) 条件はエネルギーレベル差の最も小さくなる共鳴点で最も厳しい。共鳴点での密度をnerとすれば ∆m˜2=∆m2sin 2θ, δmee= 2GFner= ∆m2 2E cos 2θ (4.38) であるので断熱条件は γm= Lρ ̸λm = (∆m˜ 2)2 4√2GFE2 dne dx ¯¯ ¯¯ ner 共鳴 −−−−−−→ ∆m2sin22θ 2E cos 2θd log ne dx ¯¯ ¯¯ ner >> 1 (4.39) (4.35)を使えば ( ∆m2 eV2 ) sin 2θtan 2θ>> 5× 10−8 ( E 10MeV ) (4.40) となる。 図4.9にニュートリノ生き残り確率を、tan2θ∆m2/2E平面に描く。線についている数字は 生き残り確率である。物質振動効果で確率が小さくなる領域は3角形の形をしており、MSW三角形と 呼ばれる。物質振動効果がなければ、消滅確率はtan2θ= 1を境に左右対称であるが、物質振動効果は tan< 1の領域でのみ大きい((4.32b)参照)。 この三角形の3辺は次の条件を充たすところである。  (1) 上辺:断熱解、(4.36)および断熱条件(4.40)を充たす領域 ∆m2≃ 10−4eV2 (4.41)

(12)

図4.9:左図:物質振動解による生き残り確率(hep-ph0202058)。右図:ホームステイク実験(緑)、ガリウ ム実験(淡青)の生き残り確率は二つの3角形を与える。SNO(黄)とSK(紫)は、エネルギースペクトル や日夜変化情報もあるのでより限定された領域を与える。太陽ニュートリノデータ解析の結果、LMA、 LOWの二つが生き残った。  (2) 下辺:断熱近似条件が崩れるところ(密度変化が激しく、振動波長よりずっと短い距離で共鳴混 合が生じる)。すなわち、式(4.39)のγm. 1になるところ。 (∆m2 eV2 ) sin 2θtan 2θ≃ 5 × 10−8 ( E 10MeV ) (4.42)  (3) 右辺:sin 2θ≃ 1 (θ>π/4では共鳴混合が起こらない(式4.32b)。)  太陽ニュートリノは、太陽内での物質振動、太陽から地球表面までの真空振動、地球表面から検出器 までの地球物質振動の重ね合わせである。地球物質振動は振動を一部元に戻す効果があるが、日夜の時 間変動を観測することにより分離できる。太陽ニュートリノの物質振動解による解析を図4.9に示す。ま ず、ホームステイク実験(緑)、ガリウム実験(淡青)の生き残り確率は二つの3角形を与える。3角形が ずれるのは、ガリウム実験が、ホームステイク実験より低エネルギーの領域を見ているためである。次 に、エネルギーや時間情報を合わせ持つSNO(黄)とSK(紫)は、領域をさらに絞り込み、LMA、LOWの 二つが生き残った* 5) 。  最終的には、原子炉の反電子ニュートリノ* 6) の振動を観測したKAMLANDLMA解を確定した( ??)。 なお、KAMLANDは日本に存在する数10基の原子炉のニュートリノを観測しており、ある原子炉が部分 的に運転停止すると平均的なL/Eが変化する。これを利用して、振動効果がないときの値を基準として 相対計数率をL/Eの関数として描いたのが、図4.11である。データは振動のパターンを再現している。 * 5) 後に太陽ニュートリノデータの精度が上がり、太陽ニュートリノデータのみでLMA解を特定できるようになった。 * 6) 原子炉から発生するニュートリノはν eであるが、CPTを仮定すれば消滅確率はνeと等しい。

(13)

図4.10:左図:線はLMA解の振動確率。点がデータ。KAMLANDは原子炉による地上実験で始めて太 陽ニュートリノ振動のLMA解を確認した。右図:色塗り領域はKAMデータ。∆m2= 7.9+0.6−0.5×10−5eV2。 黒線は太陽ニュートリノのLMA解。 20 30 40 50 60 70 80 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 (km/MeV) e ν /E 0 L Ratio 2.6 MeV prompt analysis threshold KamLAND data best-fit oscillation best-fit decay best-fit decoherence 図4.11: 原子炉は様々の距離にあり、運転のオンオフでL/Eの平均値が変わることを利用して、L/Eの関 数として描いた曲線。振動パターンがよく判る。振動しない特殊モデル(緑と赤線)は否定された。

(14)

結局太陽ニュートリノ観測から得られたデータはまとめると m2> m1 ∆m2 ⊙= 7.9+0.6−0.5× 10−5eV2, tan2θ= 0.40+0.10−0.07= 32.5◦+2.4−2.3) (4.43)

4.5

3

世代混合

 ニュートリノは3種あるので本来は3世代混合として解析しなければならない。    νe νµ ντ    = VPMNS    ν1 ν2 ν3    (4.44) VPMNS=    1 0 0 0 c23 s23 0 −s23 c23   I(δ)    c13 0 s13 0 1 0 −s13 0 c13   I−1(δ)    c12 s12 0 −s12 c12 0 0 0 1    (4.45a) =    c12c13 s12c13 s13e−iδ −s12c23− c12s23s13eiδ c12c23− s12s23s13eiδ s23c13 s12s23− c12c23s13eiδ −c12s23− s12c23s13eiδ c23c13    (4.45b) ただし、 I(δ) =    1 0 0 0 1 0 0 0 eiδ    (4.46) VPMNSは、レプトン混合に関するポンテコルボ-牧・中川・坂田行列と呼ばれる行列で、クォーク混合に おける小林-益川行列と全く同じ形をしている。δはレプトン反応におけるCP非保存効果を表す位相で ある* 7) 。 大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動を比べると、質量差 ∆m2 atm≃ 2 × 10−3eV2 ∆m2⊙≃ 7 × 10−5eV2 (4.47) 従って振動波長に大きな差がある。この結果、地上における振動実験では∆m2L/Eは無視して良く、太 陽ニュートリノ実験では∆m2atmL/E >> 1であるので振動が平均化される。さらにCHOOZの原子炉実 験から、νe→νµ,ντは非常に小さいことが言えるので(sinθ13≃ 0)、各振動チャネルが分離され、現時点 での実験精度では、2世代混合解析の結果をそのまま適用して差し支えない。まとめると                    θatm =θ23 π4 ∆m2 atm =|∆m223| ≃ |∆m213| ≃ 2 × 10−3eV2 θ =θ12= 32.5◦+2.4−2.3 ∆m2 =|∆m212| = 7.1 +1.2 −0.6× 10−5eV2 |s13| < 0.18 VMNS≃    c12 s12 s13e−iδ −s12 2 c12 2 1 2 s12 2 c12 2 1 2    (4.48) * 7) マヨラナニュートリノの場合は、CPを破る位相が更に二つ付け加わるが、振動実験には寄与しない。

(15)

ニュートリノ質量の推定: ニュートリノ振動は質量の自乗差を測るので、絶対値は判らないが、m1<< m2<< m3を仮定すれば、m3|∆m2 23| ∼ 0.05eV, m2|∆m2 21| ∼ 0.008eV, m1は不明となる(図4.12 左図)。これを正常階層(normal hierarchy)と言うが、これまでの実験精度では∆m2の絶対値しか判らな いの で、m3<< m1, m2であってもデータの解釈は同じ結論を出す。これを逆階層(inverted hierarchy)と 図4.12:ニュートリノ質量レベル:左が正常階層、右が逆階層。このほかに縮退(m1≃ m2≃ m3>>|m2|) の可能性がある。 いう(図4.12右図)。さらに質量が縮退(m1≃ m2≃ m3>>|∆mjk|)ている可能性もあり、この場合は表?? の宇宙論の制限を使えば mj≤ 0.42 3 = 0.14eV (4.49) 程度となり、大気ニュートリノデータから得られる0.05 eVよりほんの少し大きいだけである。なお、 (4.48)から混合行列のおおよその値が判るので、図(4.12)には、各ニュートリノの香りの成分比を色分 けしてある。∆m2の符号やCP非保存効果を見るには、より精度の良い実験を行わなければならない。

図 4.4: 大気ニュートリノ天頂角分布。左図:天頂角と飛程距離の関係 中図: SK の ν e データ 右図:
図 4.5: 左図:太陽核融合反応 pp- チェイン。右図: CNO サイクル。 CNO サイクルは &amp; 1.6×10 7 K で有効。 太陽中心温度 ∼ 1.4 × 10 7 K なので、 1.6% の寄与しかないが。大質量星ではこちらが優勢。また、 CNO サイクル 2 は 1 の 0.04% しか寄与しない。 図 4.6: 左図:太陽ニュートリノスペクトル。上部にはガリウム、塩素を使った時と SK 、 SNO 検出器の 敷居値を書いてある。右図:デイヴィス等の太陽ニュートリノ検出器。 615
図 4.8: 左図:太陽内のニュートリノ質量 m ˜ 1,2 を密度の関数として表す。固有解は ν ˜ 1 , ˜ ν 2 であるが、 n e &gt;&gt; n e,r
図 4.9: 左図:物質振動解による生き残り確率 (hep-ph0202058) 。右図:ホームステイク実験 ( 緑 ) 、ガリウ ム実験 ( 淡青 ) の生き残り確率は二つの3角形を与える。 SNO( 黄 ) と SK( 紫 ) は、エネルギースペクトル や日夜変化情報もあるのでより限定された領域を与える。太陽ニュートリノデータ解析の結果、 LMA 、 LOW の二つが生き残った。   (2)  下辺:断熱近似条件が崩れるところ ( 密度変化が激しく、振動波長よりずっと短い距離で共鳴混 合が生じる ) 。
+2

参照

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