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米糠の油脂分解抑制について

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昭 和33年12月(1958) 一一47-一

米 糠 の油 脂 分解 抑 制 につ い て

西

曽 菅莞

白米 を 常 食 とす る我 国 に お い て は 精 白 の 際 に 副 産 す る糠 の 量 は 莫 大 な もの で あ る。米 糠 は 約20°oの 粗 脂 肪 を 含 み,糠 の 年 生 産 高 約590,000配 を 油 に 換 算 す る と 約80,000珀i1)に 相 当 し,重 要 な 食 用 油 脂 資源 で あ る。 従 つ て 製 油 工 業 資 源 と し て当 然 開発 せ らるべ き は ず に も拘 らず,糠 中 の 油 脂 は 精 米 後急 激 な酸 価 上 昇 を 示 し,い わ ゆ る 高 酸 油 と な り食 用 油 の 製 造 に は 適 さな い 。 若 し こ の 貯 蔵 中 の 酸 価 上 昇 を お さ え る こ とが 出 来 れ ば 年 間 約80.000妊 の 米 糠 油 の利 用 の 道 が 開 か れ,窮 迫 した 国 内 油 脂 事 情 の 緩 和 に 資す る所 大 で あ る。 米 糠 中 に は 油 脂 分 解 酵 素 米 糠 リパ ー ゼが 存 在 し,こ れ が 酸 価 上 昇 の 原 因 で あ る こ とはBrowne 2)に よ り 明 か に さ れ,更 に 同 氏 は糠 を90。Cに 加 熱 す る と 酸 価 上 昇 は 相 当 に 阻 止 され る と報 告 して い る。 星3)は リパ ー ゼ 作 用 は 玄 米 中 よ り も糠i中で著 し く活 発 とな り貯 蔵 中 酸 価 が 高 くな る と述 べ,川 合4)は 高 酸 価 米 糠 よ り製 した 脱 脂 糠 に 低 酸 価 米 糠 を 混 合 す る と酸 価 上 昇 が 促 進 され る とい つ て い る 。 高 橋5)は 漂 白 に よ り酸 価 上 昇 を 抑 制 し て い る 。 日 高6)は 糠 を 加 熱 処 理 して 酸 敗 阻 止 を 行 い,90。C,60分 で は不 十 分 で,100∼1100C,60分 で 遊 離 7°oの も の が30日 間 で12°oと な り,無 処 理 で は20%に 増 加 した と述 べ て い る。 また 深 川7)等 も加 熱 に よ る酸 敗 阻 止 実 験 を 行 い.120。C加 熱 では 試 料 酸 価 65.01が104日 後 に66.77を 示 した に過 ぎ な い と報 じて い る。 川 口8),Loeb9)は 乾 燥 に よ る酸 価 上 昇 阻 止 効 果 に つ い て 詳 細 な 実 験 を 行 つ て い る。 以 上 の諸 研 究 は 加 熱 乾 燥 処 理 に よつ て米 糠 の油 脂 分 解 を 抑 制 し よ う とす る も の で あ るが,リ パ ー ゼ 作 用 を 抑 制 す る方 法 は 他 に も考 え られ る。 例 え ば 水 素 イ オ ン 濃 度,重 金 属,酸 性 蛋 白沈 澱 剤,酸 化 剤,ア ミ ン試 薬,青 酸,硫 化 水 素 そ の 他 所 謂 酵 素 毒 を 適 用す る こ と で あ る。 著 者 等 は こ の こ とを 考 慮 して 加 熱 乾 燥 法 とは 異 な る見 地 か ら.揮 発 性 の ア ル デ ヒ ド類,ア ル コ ール 類 を適 用 して酸 価上昇 抑 制効果 を試みた のでその結果 につ き報 告す る。 実 験 の 部 1.試 料 試料 の米糠は 昭和32年7月 京 都府宇 治市五 ケ庄 にて 求 めた 山城 米の精 白直 後の糠 であ る。試料 の一般分析 結果 及び糠 脂肪 の0般 性 質は第1表,第2表 の通 りで あ る。 第1表 試料米 糠 の一般 分析結 果 区

00 水 粗 粗 蛋 灰 粗 脂

分 肪 白 質 分 維 可 溶 性 無 窒 素 物1 第2表 糠 油 の 一 般 性 質 11.91 21.21 12.31 9.62 7.22 37.73 区 分 測 定

鹸 化 価

沃 素 価(注)

酸 価

181.56 99.75 17.97 注 沃 素 価 はWijs法 に よ る。 2. ま印制 斉ll 抑 制 剤 と して 次 の 如 き ア ル デ ヒ ド類,ア ル コ ール 類 を 用 い,い ず れ も揮 発 性 の も の で あ る 。 第3表 使 用 抑 制 剤 抑 制剤 番号 試 薬 名 0 Control Aldehyde 1 Z 3 Benzaldehyde Salicylaldehyde Formaldehyde Alcohol 管 昭和32年 度本 学卒 業生 鞭 本学 助教授 4 5 6 7 8 9 10 Benzylalcohol Iso-butylalcohol Iso-amylalcohol N-butylalcohol Ethylalcohol Methylalcohol Iso-propylalcohol

(2)

.・ 第1表 Aldehyde類 に ょ る酸 価 上 昇 抑 制 効 果 第2表 Alcohol類 に よ る酸 価 上 昇 抑 制 効 果 3,実 験 方 法 及 び 結 果 糠 舗 通 過 の米 糠70gを 時 計 皿 に と り,こ れ を 約2.51・ の デ シ ケ ー タ中 の磁 製 孔 板 上 に 載 せ て置 き.デ シ ケ ー タ底 部 に10g.の 抑 制 剤 を 入 れ て,蓋 を密 着 し夏 季 室 温 に放 置 貯 蔵 した 。1週 間 ご とに 米 糠10g.を 取 り出 し, 食 物 学 会 誌 ・第5号 常 法 に よ り工 幽 テ ル 抽 出 を 行 い,抽 出物 に つ い て酸 価 を 測 定 し分 解 抑 制 効 果 を 検 討 し た 。 酸 価 測 定 結 果 を 図 示 す れ ば 第1図 及 び第2図 の 通 りで あ る。 4,考 察 Aldehydeの うちSalicylaldehydeの 抑 制 効 果 は 見 られ ず 反 つ て 促 進 的 で あ る が,Benzaldehyde, Formaldehydeは 抑 制 効 果 を 示 し特 にFormaldehyde は5週 間 の貯 蔵 に お い て対 照 区 の 酸 価 の 約 半 数 に 抑 え る こ とが で き た。 Alcoholを 抑 制 剤 と した 場 合, Benzylalcohol以 外 のAlcoho1は 酸 価 の 点 か らの み 抑 制 効 果 を見 る と き は 勝 れ た 抑 制 効 果 を 示 す が,貯 蔵 前 よ りも貯 蔵 した 方 が 酸 価 が 低 くな り,か か る現 象 を抑 制 効 果 と解 釈 す る こ とは 不 適 当 で あ り,何 らか の 原 因 に よ り酸 価 が 低 下 した も の と思 わ れ る。 こ の 原 因 に つ き予 想 され る こ と は 分 解 生 成 した 脂 肪 酸 が 共 存 す る他 の 物 質 と結 合 す る こ とで あ り,脂 肪 酸 が 脂 肪 酸 塩 とな るかAlcoholと Esterを 形 成 す るか で あ る と思 わ れ る。 著 者 等 は 抑 制 剤 のAlcoho1とEsterを 形 成 す る可 能 が 大 で あ る た め 此 の 点 さ らにご実 験 検 討 し,Esterを 生 成 す る こ と を 確 認 した 。 5.Ester生 成 の 確 認 a.試 験 方 法 及 び 結 果 糠 油 脂 肪 酸 の 主 成 分 は01eic acidで あ る た め,純 01eic acidを エ ー テ ル に 溶 か し て脱 脂 糠 に 噴 霧 し,で き る限 り均 一 に な る様 に よ く混 和 し,抑 制 効 果 試 験 時 と 同様 方 法 に て 底 部 にmethylalcoho1を 入れ た デ シ ケ ー タ孔 板 上 $'放置 して夏 季 室 温 で 貯 蔵 し,一一定 期 間 後 そ の 酸 価 を 測 定 した 。 測 定 結 果 を表 示 す れ ば第4表 の 如 くで あ る。 第4表 Oleic acid酸 価 下 降 度 貯 蔵 日 数

0 7 14 200.38 115.09 106.30 こ の 結 果 に よ り01eic acidを 脱 脂 糠 に 分 散 せ しめ てmethylalcohol蒸 気 中 に 放 置 す る 時 は,01eic acidの 酸 価 が 低 下 す る こ と を 知 つ た 。 こ の 原 因 は 糠 肪 酸 が メ チ ル エ ス テ ル と な つ た と予 想 さ れ る の で,こ れ を 明 らか に す る た め,ペ ー パ ー ク ロ マ ト グ ラ フY'よ

り01eic acid methylesterの 分 離 確 認 を 行 つ た 。 1). ぺ ・一 パ ー ク ロ マ ト グ ラ フ に よ る01eic acid methylesterの 分 離 確 認

(3)

昭 和33年12月(1958) 前 項 エ ス テ ル 生 成 実 験 に 使 用 し た 試 料 を30分 間 100。Cの 乾 燥 器 中 でmethylalcoholを 追 い 出 し, 常 法 に よ り脂 肪 酸 を エ ー テ ル 抽 出 しぺ 0.-ー ク ロマ ト 用 試 料 と した 。 脂 肪 酸 の ペ ーパ ー ク ロマ トグ ラ フ に は 種 々 の 方 法10-14)が あ るが,著 者等 は 酢 酸 第 二 水 銀 附 加 法15)に よ る一 次 元 上 昇 法 に よつ た 。 東 洋濾 紙No・50(40×2Cln)を 使 用 し,原 線 の 位 置 は 下 端 よ り5cmの 所 に とつ た。 固 定 溶 媒 と し て Tetralin を 用 い,90% methanol:acetic acid: Tetralin(10:5:2)を 移 動 溶 媒 と して 選 ん だ。 濾 紙 は 予 め 噴 霧 に よつ て 固 定 溶 媒 を充 分濾 紙 繊 維 に 滲透 飽 和 させ,乾 燥 濾 紙 間 に 挾 み10分 間 均一 に 約9kgの 荷 重 を か け て圧 し,更 に 新 しい 乾 燥 濾 紙 間 に 間 圧 す る。 後 原 点 に 試 料 の 酢 酸 水 銀 附 加 物 を つ け室 温 で 約30分 間 放 置 乾 燥 し,濾 紙 表 面 は 濾 紙 と殆 ど変 らな い が 透 し てみ る と試 料 液 の 滲 透 し て い るの が わ か る 程 度 に な つ た 時 展 開 容 器 中 に 入 れ 上 昇 法 で 展 開 した。 夏 季 室 温 で 原 線 上 約25cm展 開 させ た 後 濾 紙 を と り出 しi 80。Cで30分 間 暗 所 で乾 燥 し,0.2%Diphenyl carbazon溶 液 を 噴 霧 す る と不 飽 和 酸 エ ス テ ル の スポ ッ トは 紫 色 に 呈 色 す る。 試 料 脂 肪 酸 の 酢 酸 水 銀 附 加 方 法 は 簡 易 附 加 法 を 用 い,試 料 に 理 論 量 の 約20°o過 剰 の酢 酸 水 銀 と 少 量 の 無 水 メ タ ノ ー ル を 加 え,80。Cで30分 加 熱 還 流 した 後 反 応 液 に ベ ンゼ ンを 加 え 更 に 大 量 の 水 を 加 え て 振 崖 分 離 し,上 層 の ベ ン ゼ ン層 を供 試 溶 液 と した 。 対 照 と してOleic acidよ りメチ ル エ ス テ ル を 調 製 した も の に つ い て 上 昇 法 を 行 つ たv実 験 結 果 を 表 示 す る と第5表 の 通 りで あ るu 第5表 水 銀 附 加 物 オ レ イ ン 酸 オ レ イ ン 酸 メ チ ル エ ス テ ル Rf

料 対

0.68 0.22 1.・ 0.22 米 糠 を メチ ル アル コ ール 抑 制 剤 中 に貯 蔵 した 試 料 に つ い て も 同 様 オ レ イ ン酸 メ チ ル エ ス テ ル の ス ポ ッ トを 認 め た 。 以 上 の 実 験 結 果 に よ り米 糠 を アル コー ル 抑 制 剤 中 に て 貯 蔵 す る と きは,分 解 され た脂 肪 酸 は ア ル コー ル と エ ス テ ル を 生 成 し酸 価 を低 下 せ しめ る の で 酸 価 測 定 に よ る抑 制 効 果 は 判 定 で き な いc又 アル コ ー ル 類 を抑 制 一49一 剤 と して 使 用 す る こ とは 不 適 当 で あ る。 第2図 に 明 らか な 如 く 炭 素 数 の 少 い アル コ ール 程 酸 価 低 下 度 は 大 き くエ ス テ ル生 成 を 裏 づ け る もの で あ る 。

1) 米 糠 貯 蔵 中 の 油 脂 分 解 抑 制 の た め10種 の揮 発 性 ア ル コ ー ル,ア ル デ ヒ ドを抑 制 剤 と し て 用 い,抑 制 度 を酸 価 測 定 に よ り検 討 した 。 2)ア ル デ ヒ ド中Forrnaldehydeは 勝 れ た 抑 制 効 果 を 示 した。 3) ア ル コー ル 類 は 酸 価 測 定 か ら は 低 分 子 程 高 い抑 制 効 果 を 示 す が 貯 蔵 前 の酸 価 よ り 低 くな り 抑 制 効 果 とは 見 られ な い 。 4)酸 価 低 下 の 原 因 は 分 解 生 成 した 脂 肪 酸 と 抑 制 剤 ア ル コー ル と の エ ス テ ル 形 成 に あ る と予 想 し,ペ ー パ ー ク ロマ トグ ラ フ に よ りこれ を確 認 した 。 し た が つ て ア ル コ ール 類 は 抑 制 剤 と して不 適 当 で あ る 。

1)辻 野 喜 郎,北 市 健 二;油 脂 化 学 協 会 誌.2〔4〕, 139×1953) 2) C.A. Browne;J. A. C. S.25,948(1903) 3)星 忠 芳;工 化.11,223(1908) 4)川 合 純 一;油 脂 化 学 協 会 誌,3,205(1954) 5) 高 橋 克 己;特 許No.35263(大 正8年) 6) 日 高 梯;工 化,42,417,474(1930) 7)深 川 庫 造,李 相 泰;理 研 報,17,239,547 (1942) 8) 11i口 武 豊;選 き季寸ユニ業, 12 〔4〕 , 23 (1948)

9)J.R. Loeb;J. Am. Oil Chem. Soc,2fi,738

(1949)

10)井 上 吉 之,野 田 万 次 郎;農 化,26,634(1952)

11) 井 上 吉 之,野 田 万 次 郎;農 化,27,50(1953)

ユ2)Y.Inouye. M. Noda,0. Hirayama;J. Am.

Oil Chem. Soc.32,132 x].955)

13)Y.Inouye, M. Noda;Bull. Agr. Chem. S oc。

Japan, xs,214(1955)

14)井 上 吉 之,平 山 修,野 田 万 次 郎;油 化 学,5,16

(1956)

15) 野 田 万 次 郎,平lll修,井 上 古 之;農 化,30,106

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