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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC-POSの戦略的導入論--先進的百貨店における導入事例を捉えて---香川大学学術情報リポジトリ

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一見㌻−

次世代リテイルシステムの確立へ向けた

PC−POSの戦略的導入論1)

一先進的百貨店における導入事例を捉えて一

原 田

I PC−POS導入の戦略的意義

ⅠⅠカスタマーレディ指向の次世代リテイルシステム ⅠⅠIPCqPOSシステム導入へ向けた戦略思想

IV 先進的百貨店におけるPC−POSシステムの開発計画

Ⅴ 先進的百貨店における顧客指向営業へのPC−POS活用

ⅤⅠ先進的百貨店におけるPC−POSの売場への導入計画

Vllバリューネットワークを指向するPC−POS

Ⅰ 21世紀を直近に迎えた現在では,小売業のマーケテイング戦略はマス・マー ケテイングからパーソナル・マ、−ケティングヘ,そして小売,卸,メーか−を 結ぶ流通システムはBPR(BusinessProcessRe−engineering’)からEI(Enter− 1)これは,筆者が西武百貨店時代に実際に開発した流通CALSの導入事例から,とりわけ PC−POSにかかわる部分を抽出してとりまとめた論説である。なお,PC−POSについて は,各所で何度か言及しているが,本稿では,とりわけ流通ネットワークに連載された「流 通システムの革新へ向けた時代POSの戦略的導入論」と同友館から出版された「デジタ ル流通戦略」をベースに,新たな論説を付加させながらPC−POSの導入論として総合化 した論説である。なお,流通CALSについては,1996年には日刊工業新聞社主催の流通 システム大賞において日本商工会議所会頭賞,1997年には通商産業省の設定する情報化 月間において通商産業大臣賞を獲得したことを,ここに記しておく。

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香川大学経済学部 研究年報 37 ∬54− J997 priseIntegT・ation:企業統合)2)へと,かって経験したことのないような抜本的 な転換が要請されている。このような状況下で,今後の小売業に期待される中 心的な機能としては,顧客と流通システムとを連結するインターフェース機能 が重視される。すなわち,カスタマーレディ(CustomerReady:顧客起点)思

想に立脚した小売ECR(Efficiency Consumer・Response)3)の確立が必要にな

る。とりわけ,昨今,話題になっているCRM(ContinuousRelationshipMarket−

ing)の導入に向けたデータベース・マーケテイングの確立は,今後の流通産業全 般を捉えた製・配・販を貫く流通プロセスにかかわる競争戦略上の重点課題な のである。 このことは,また,小売情報システムを構築する際には,クライアント・サ

ーバー型のシステム開発とEUC(End User Computing)発想に基づくリテラ

シイの促進が,とりわけ重視されていることでもある。このような状況下で, 従来にも増して,ネットワークとデータベースにウエイトをおいたオープンで、 かつスケーラビリティのある統合分散型のシステム構築が必要とされている。 そして,このような開発政策の大幅な転換に伴って,小売業における次世代リ

テイルシステムの中核機能であるPOSシステムの抜本的な機能転換と,POS

システムのデータベース・マーケテイング戦略への組み込みが,ともに強く期 待されてくる。言い換えれば,脱レジスターマシーンとしての次世代POSの開 発と,これを戦略的に活用するためのカスタマーレディ発想に基づく次世代リ テイルシステムの構築が,ネットワークとコラボレーションを基軸とする今後 の流通産業におけるシステム問競争の決め手になる。 このような問題意識を前提にして,本稿では次世代リテイルシステムの確立 へ向けたPC−POSの戦略的導入論について,とりわけ以下の6点について論述 を行う。すなわち,具体的には,第1はカスタマーレディ指向の次世代リテイ 2)複数の企業がWin−Win思想に基づいて,パートナ・−シップを形成することで,企業 間の交流が深まり,結果として仮想的な企業統合が図られる。この延長線上に,バーチャ ル・コーポレーションが位置する。 3)ECRをより顧客指向を強めるためには,小売が顧客とメーか−卸とのインタ・−フェー ス機能を担うことが大切であるとする,筆者の提言するQRやECRの進化形態である。

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −5ふ−−− ルシステム,第2はPC−POSシステム導入へ向けた戦略思想,第3は先進百貨 店におけるPC−POSのシステム開発計画,第4は先進百貨店における顧客指向 営業へのPC−POS活用,第5は先進百貨店におけるPC−POSの売場への導入 計画,第6はバリュー・ネットワークを指向するPC−POS,についての各論述 である。 ⅠI l.POSを基軸にしたリテイル・ネットワーク マーケテイング戦略におけるマス・マーケテイングからパーソナル・パーソ ナル・マ、−ケティングヘの大きな転換に伴って,メーか−,卸,小売をネット ワークする流通システムは,個々の業種や業態内におけるBPRや単なるリテ イルサポートという戦略領域を,すでに超えはじめている。すなわち,流通シ ステムの構造は業種や業態間を有機的に結合したEIへと段階的に転換してい る。このことは,また,企業におけるビジネス戦略上の競争局面の企業間競争 やグループ間競争からシステム間競争への転換を意味している。そのため,各 システムの構成企業が競争優位性を獲得するには,それぞれのコア・コンビタ ンス4)の結集と,これに基づく業種や業態の壁を超越したパワフルなネットワ ーク形成が要請される。 このような状況下で,これからの小売に対しては,カスタマーレディに立脚 したEIの要として,まさにパーソナル志向のマーケテイングシステムとカス タマーレディー志向の流通システムの統合機能が期待される。そして,小売が, この期待される機能を充分果たすには,インタラクティブでシ、−ムレスな情報 ネットワークの形成が不可欠になる。このことは,小売と顧客とのリレーショ ンシップにおいて,不断のコミュニケーションが不可欠なことも示している。 したがって,コミュニケ、−ションの結果でもあるマーケテイングデータを迅速 に自社内に蓄積するネットワーク構築が強く要請される。また,小売,卸,メ 4)他社には提供できない利益を顧客にもたらす,企業内部に秘められた独自の技術やス キルの集合体である。

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香川大学経済学部 研究年報 37 −56− J997 −カー,が,それぞれカスタマーレディ志向のWin−Win思想5)に立脚して流通 プロセス全体の効率化を追求することも,EIの構築に向けた課題である。 昨今のように,システム間競争が激化している状況下で,小売の目指すべき 一つの方向としては,店舗に対する顧客からのディスティネーションの獲得が ある。そのためには,店舗には顧客にとって欲しいものがある,それが欲しい 価格で提供されている,また欲しい時に必ずある,という顧客価値の実現を可 能にするネットワークシステムの構築が要請される。そうなると,小売を基軸 としたインタラクティブなネットワークを形成して,ネットワークの経済にお ける生産性法則である収穫逓増の法則6)の実現が期待される。だからこそ,次世 代リテイルシステムを構築する際には,小売における適品・適量・適価・適所 を指向するバリューチェーンの実現へ向けた最適システムの確立が要請され る。 この次世代リテイルシステムにみる最大の特徴とは,いわばネットワークを 通じたPOSシステムとの直結である。すなわち,この次世代リテイルシステム

では,QR(QuickResponse)7)やECR…)そしてEC(ElectronicCommerce)9)や

5)従来の売り手と買い手の一・方通行によるWin(膠)−Lose(負)の関係でなく,パート ナーシップに基づき双方が利益・メリットを享受する関係である。 6)ブライアン・ア・−サーの提言。規模の経済から範囲の経済の転換に伴って,経済行動を 決めるメかニズムは逓減的なものから逓増的なものにシフトして,市場,ビジネスにおい て成功を勝ち取った者を更に強化するというポジティプ・フィードバックのメカニズム のことである。 7)生産,流通のすべてのプロセスから在庫と時間の無駄を排除する運動。−・般的に繊維・ 衣料品業界での取り組みを意味する。メーカーとリティラ・−のパートナーシップによっ て情報技術と経営技術を使いこなすことがQR実現の鍵となる。 8)顧客に対する価値創造を目指して,取引関係にある複数の企業がビジネスプロセスの 全般にわたって実施するエンタ・−プライズ・インテグレ−ションの−・種。/ト売サイドから POSの情報を特定のメーか一に提供し,メーカ−の判断で商品を補充するリティラ・−の 店頭と生産現場が直結した自動発注システム。加工食品・日用品類の商品領域で取組む場 合が多い。 9)電子商取引。インターネット等のネットワーク上で商取引を展開する新しいマーケ テイング手法で,情報システムによるバックアップが前提になる。

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −5声−

対企業関係

対顧客関係

舌;:宍ぢ≡:;::::錯:崇:さ::::::紬 図表1 統合データベースの繋ぎ手としてのPOS EDI(ElectronicDataInterchange)10)の領域まで,多様で戦略的なS/ステムが

POSシステムとインテグレートされている(図表1)。このPOSシステムのネ

ットワ・−クに対するハ・−モナイズ方法については,リテイルが包摂する各種ス キームを有機的に連動させるマルチファンクションのネットワーク化という構 想を提示できる。 2.POSによるリテイルプロセスの有機的な結合 POSシステムよるマルチファンクションのネットワーク化は,情報端末とし

てのPOSから,自動発注(EOS:ElectrIOnic Orderr・ing System)や自動補充

(CAO:ComputerAidedOrder)への連動,店頭から物流センターにいたる在

庫情報や顧客情報の管理への連動,さらには棚割り管理までも包摂した有機的

10)電子データ交換。受注や発注に関わって,企業の間で取り引きする見横罫,注文雷, 請求番等の伝送データを,ネットワ・−クを通じてペーパ・−レスで行うシステムである。

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ー5β− 香川大学経済学部 研究年報 37 J997 な連動なども意味している。そして,このマルチファンクションのネットワー ク化によって,EDI化の本格的な推進がはじめて効果性を発揮できる。すなわ ち,POSデータが卸やメーカーにリアルタイムに配信され,さらにはロジステ ィクスにも直結すると,納品業務の遂行精度の向上や効率的な迅速生産や的確 な商品開発へとイノベーションの輪が広がって,さらなるネットワークの充実 が期待できる。 POSシステムは,もともとは,ある意味でオフラインの活用に制限されたシ ステムであった。つまりPOSシステムは,あくまでも企業内のクローズなシス テムであって,売上管理とか商品管理への活用についても,ただ単なるハ、−ド ゥエアとしてのPOSシステムの範囲を超えていなかった。このようにクロー ズなシステムにおけるネットワーク活用という範囲では,せいぜい単純な業務 処理の効率化が実現できる程度にすぎない。しかしながら,これから期待が大 きい販促戦略なり顧客戦略の領域においてダイナミックな戦略展開を行うため には,標準プロトコルの普及を前提にしたオープンで,かつどこからでもアク セスができるネットワークが不可欠になる。 そもそも,1970年代前半におけるPOSシステムの導入期には,はじめに仕入 れありきであったのだが,1990年代後半に入ると,いよいよ,はじめに販売あ りきのシステム構築手法へと転換した。すなわち,これからは,確実に売れる 商品のみを仕入れられる戦略ツールとして,POSシステムが期待されてくる。 そうなると,POSシステムは,ネットワーク指向を強めることで,単なる売れ 筋管理のための業務系システムから戦略的マーケテイングのための情報系シス テムへと発展していく。また,価格破壊や規制緩和などの課題を背景として, 新しい競合企業の台頭や新規参入などがあって,今や業態間でのストラテジッ ク・アライアンスを軸としたEI視点での流通システムの高度化が強く要請さ れている。すなわち,いよいよマーケテイング・パラダイムの転換が不可欠に なって,カスタマーレディ志向によるデマンドチェーン形成が本格的に期待さ れている。 このような状況下では,情報システムのバックアップが小売のサバイバルの 決め手となり,POSシステムも,このような環境変化にフィットした形態への

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次世代リテイ)t/システムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 ,59一 変化が要請される。この時点において,POSシステムは,まさにワンウェイに 売上高を吸い上げる売上登録のための集計機から,インタラクティブに情報を 交流する情報端末へと転換する。言い換えれば,これからは,小売におけるシ

ステム基盤とも言うべきPOSシステムの抜本的な転換と,このPOSシステム

を基盤としたデータベース・マーケテイングヘの組み込みが,次世代リテイル システムの要諦になる。 ⅠⅠⅠ 前述のように,今後のPOSシステムに期待される最重点課題は,対顧客機能 への革新に向けたデータベースーマーケテイングを可能にするバックアップシス テムの確立である。そのためには,POSを単なるレジスター機能として捉えた のでは,このような役割を果たすのは不可能である。従来では,POSは販売管理 や会計管理のため機器とされていたが,今後は,このPOSを,単なるレジスタ ー機能から脱却させた,以下のような戦略的視点から展開することが必要になる。 第1は,商品情報システムと顧客情報システムとの一体化である。これは, いわば何が売れたかでなく,誰が,いつ,何を,また何と−・緒に買ったのかと いう,いわばパーソナル・マーケテイングの実践に向けて必要,かつ十分な販 売データの収集を意味している。第2は,顧客へのインターフェイス機能の高

度化である。このことは,顧客の顔が見えるECB(Electronic Client Book−

ing)11)機能のPOSへの組み込みや,顧客にとっては見やすく,かつわかり易い スピード印字によるレシートの発行によって,顧客サービスを向上させること を意味している。第3は,売場における情報ネットワーク端末としてのPOSの 機能拡充である。このことで,販売員やキャッシャーの操作が容易になり,同 時に,将来的には売場における各種伝票送達の電子化を目指したペーパーレス の業務運用が可能になる。具体的には,POSへの電子メ、−ル機能の付与や,電 子ジャーナルの導入,さらには無線LAN化の導入,などによる売場における販 11)電子顧客台帳。売場における顧客管理をPC−POSをつうじて,データベースと連動さ せたシステムであって,購買層歴などの動態情報を売場で使いこなし,店頭の販売力を強 化させるツールである。

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香川大学経済学部 研究年報 37 −6ロー− J.997 売付帯業務の合理化を意味している。 このような点を考慮するならば,今後POSシステムの構築のためには,従来 とは全く異なったシステム設計思想が必要になる。すなわち,まず,POSの売 場における顧客への総合情報端末としての位置づけが不可欠になる。言い換え れば,このPOSを,商品情報システム,顧客情報システム,販売情報システム によって構成される分散統合型のデータベースシステムの情報ネットワーク端 末としての機能性の獲得である。こうなると,今後は情報の共有化や組織間連 携の徹底的な追求こそが,まさに重要な課題になる。そして,これらの課題を

克服できるPOSとしては,現時点においては,無線LAN化によるPC機能も

兼ね備えているOLE−POSが最適と考えられる。 このOLE−POSとは,マルチメディア社会のリテイルシステム,およびソリ ューションに対応すべく開発された高度情報時代のPOSシステムであって,

OLE−POS技術協議会12)のOLE for RetailPOSに準拠した次世代POSであ

る。このOLE−POSとは,いわば今後の小売業の競争戦略を時空間の制約から 解き放つことを可能にする,きわめて戦略的なツールである。すなわち,OLE −POSにおいては,電子メールやECBの画面表示に代表されるようなハードウ エアのソフトウエア化が可能である。また,無線であることから,週単位での 催事場の設営や繁忙期や売場改装におけるコスト削減を可能にさせ,同時に, 売場における機器の設置性についても柔軟性を確保できる。 ⅠV l.PC−POSシステム導入の戦略的目標

ここでは,筆者が,次世代POSとしてのOLErPOSを活用して1997年に西

武百貨店に導入したPC−POSシステムの開発成果を参考にしながら,小売業, とりわけ百貨店におけるPC−POSシステムの開発計画の方法論について考察 する。ちなみに,西武百貨店では,現在29の店舗(グループ店舗を含む)を展 12)略称はOPOS−J。POSメ1−カー,周辺機器メ1−か−,ソフトウエアハウスなどとマイ クロソフト社で構成された任意団体で,現在では約150社以上の企業が参加している。

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −6ト一 関しているが,21世紀の百貨店として生き残るために,現在,経営のシステム 化を積極的に推進している。今後の百貨店のシステム化の主な狙いは,百貨店 型のチェ・−ン・オペレーションを導入によって経営のシステム化を実現して, これによって顧客の求める商品やサービスを,いつでも,どこでも効率的に提 供できるリテイルシステムを構築することである。 このように,先進的百貨店では,全店レベルでのPOSのリアルタイム・オン ラインシステムを構築して,日々の取引はすべてリアルタイム処理して,それ らが商品情報システムや顧客情報システムともリンクさせる必要がある。具体 的には,次世代リテイルシステムの構築にあたって,大規模百貨店においては,

その中核となるPC−POSは全店で数千台ベー

スの導入になるが,これらの導入 の目的は以下に述べるとおりである。まず,第1には売場オペレーションの抜 本的な刷新である。これは,次世代POSの導入を契機にして,POS周辺業務の 削減による業務の効率化とデータの精度アップという両視点から販売プロセス を見直しをもっと顧客サービスに専心できる体制へと売場を革新することであ る。第2には,統合分散データベースの効率的な活用である。このことは,パ ーソナル・マーケテイングを実践するために,POSの顧客情報と商品情報の収 集エントランス端末としての機能を強化させての,効果的な分析データのマー ケテイング部門への効率的な提供なのである。第3には,CS(Customer’Satis− faction:顧客満足)視点でのサービスの向上である。このことは,POSの操作 の簡素化や店頭情報端末としての機能性の付加による,接客時間の短縮化や密 度の高い接客の実現からの,顧客とのリレーションシップの高まりと顧客満足 の向上である。 このPC−POS導入の意味を確認するために,ここでは,情報ネットワーク端

末としての次世代POSの導入にいたる百貨店業界におけるPOSの発展過程

を総括して,そのうえで,PCrPOSの優れた機能についての確認を行う(図表 2)。ここで例示するPC−POSは,現在では最も先進的なターミナルであって,

従来,評判のよかったNCR製の2127POSの三代後の後継機のOLE−POSと

しての7452POS(商品名はWinPOS21)である。かっての2127POSは,レジ

スター機能に特化したPOSであり,これは,独自仕様のハードウエアやソフト

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エ997 香川大学経済学部 研究年報 37 −62− ′オペレーティング インターフェ、−ス アプリケ−ション 図表2 次世代POS導入にいたるPOS導入の経緯 ウエアを前提にした,いわば伝統的なレジスターなのであった。その後,7450

POSや7450Win−POSの登場によって,ハードウエアやソフトウエアのみな

らず通信にいたるまでの標準化が実現して,同時に,ソフトウエア開発の容易 性やPOS自身の運用の容易さも獲得できたのは,すでに周知の事実ではある。 そして,いよいよOLE−POSが登場することで,周辺機器も取り込んだイン ターフェースの標準化が実現できて,このことによって,Windowsの標準技術 や部品化したソフトウェア,さらにはインターフェースの利用なども可能にな った。また,同時に,情報ネットワーク端末としてのアプリケ、−ションの充実

に向けたWindowsのアプリケーションも備わり,また無線LAN化について

も本格的な実用段階へと進化した。 2.POSシステム開発の基本的な考え方 たとえば西武百貨店の事例では,店舗と情報センターとの間のネットワーク については,大型店においては,今後のマルチメディア時代を見据えた6Mbps

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −63−

のATM(AsynchronousTransferMode)13)スイッチの導入を,その他の店舗

には,スーパーデジタルの専用線で接続で対応を行っている。また,各店舗サ イドにおいては,POSを直接コントロールするセグメントサーバー,店舗POS システム全体を管理するPOSサーバー,メール・サーバーが設置されている。 一・方,情報センターサイドにおいては,POSのトランザクションをリアルタイ ムで処理する業務系の超並列サーバー(POSセンターサーバー)と,取引明細 を利用して商品情報,顧客情報,および販売情報を分析するデータウェアハウ スサーバー,全店の電子ジャーナルを管理するジャーナルサーバーを稼動させ ている。 こうして,POSは,ネットワークとPCアプリケーションを利用することで, 上位のデータウェアハウスやグループウエアサーバーと連繋でき,そのため売 場業務の効率化,顧客サービスの向上,マーケテイングカの向上,および市場変 化への迅速な対応,を実現するツー/レになった。すなわち,このPOSの優位点 を機能面から捉えれば,とりわけ売場業務の効率化面では以下の2点が考えら れる。すなわちPOSの操作の簡素化や教育の短縮化が実現するイージ、−づオペレ ーションと食品に代表される売場の特性にあわせたシステム導入による接客時 間の短縮である。また,顧客サービスの向上策としては,見やすくわかり易いレ シートの表示やレジ待ち時間の短縮が実現して,マーケテイングカの向上とし ては,顧客の囲い込みのためのポイントカードシステムとの連繋が可能なこと である。 このように,多大な業務革新が期待できるOLE−POSのシステム開発の基本

的な考え方は以下のとおりである。アプリケーションの開発理念は,現行の

POSのアプリケーションの単純な移行ではなく,POSを,いわばPCとして捉

えた情報ネットワーク端末の転換なのである。このような観点からは,以下の ような3点がとりわけ基本的な特徴である。第1は,メールサーバーとの間の インターフェースである。これは,各種通達の検索表示や売場で発生する定型 13)非同期転送モード。B−ISDNの核となる伝送,交換技術である。すべてのデータを53 Bの固定長のセルに分解して,それぞれのセルのヘッダーに音声,データ,画像,映像の 種類を識別する情報を含んでいる。

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J997 香川大学経済学部 研究年報 37 ー6各− 図表3 次世代POSシステムのネットワーク体系

の事務伝票の電子化が可能になることや,売上速報のメール化やPCキーボー

ドやマウス不要のGUI(GraphicalUserIInter・face)14)を指向することで,他社

のメールサーバーとの標準仕様で連繋されたインタ1−フェースを可能にするこ

とである。第2は,電子ジャーナルを導入することによって,ジャーナル保管

の電子化,再登録への応用,そして伝票の電子化を実現するジャーナルサーバ

ーの設置である。第3は,アプリケーションの統一やPOSの操作性の向上,そ

して無線LANの活用に向けて最新の通信情報技術ツールの導入を図ることで

ある。そして,これらの開発理念に基づいて,実際に,筆者が開発したシステ

ムの主な特徴は以下のとおりである(図表3)。

14)コンピューターのディスプレイとの接点で,グラフィックな見え方と操作方法を提供 するソフトウェアである。

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −65− (1)電子メールのインターフェイス 電子メールをインターフェースする目的は,POSの情報ネットワーク端末と しての位置付けの強化と,ペーパーレス化の本格的な推進である。そのために

は,次世代POSシステムの基本ソフトとしてWindows NTを標準装備すれ

ば,MS∼Exchangeの採用になるが,同時に,他社のメ、・−・・・ルサーバーとのインタ ーフェイスを十分配慮した対応も大切である。 西武百貨店では,MS−Exchangeによる電子メールシステムを全店に構築し ているが,同時に,POSに電子メールを搭載することによって,情報の共有化 の徹底,事務効率の向上,危機管理の充実などが図られている。具体的には, 電子メールの操作はすべてダイナキー上で行なわれて,メールが着信すると売 上登録中でさえもアイコンを表示することで,オペレーターに注意の喚起を行 っている。また,レシートの宣伝文や,企画セールスの通知,POSプログラム 変更時の依頼や指示などにも活用されるほか,盗難,事故などの緊急通知にも 利用されている。しかしながら,POSにおいては,日本語キーボードでの入力 が難しいため現在では着信専用であるが,これからは,定型的な業務(備品請 求,各種届けなど)に対しては,売場から直接担当セクションに発信するアプ リケ・−ションも検討すべき課題ではある。 (2)電子ジャーナルの導入 PC−POSの導入にあたっては,POSにレシ・−トや伝票一体型のサ・−マルプ リンターを搭載して,紙のジャーナルの廃止を目的にして電子ジャーナルヘの 置き換えが行われている(図表4)。そして,POSで登録されたジャーナルデー タは,取引明細データとともに店舗POSサーバーを経由して,センタ・−の業務 系超並列サーバー(POSセンターサーバー)へとリアルタイムに配信されてい る。−・方では,POSのディスクの中にもジャーナルデータを蓄積して,清算時 には,−・括してセンターへ伝送するシステムでもある。情報センターにおいて は,POSセンタ、−サーバーの夜間処理によって,日中のオンラインデータと清 算時のバッチデータをぶつけ合い,データの欠落がないようジャーナルサーバ ーに転送してデータベースへと格納する。このように,たとえサーバーやPOS のハードディスクに障害が発生しても,電子ジャーナルのデータは失われない

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香川大学経済学部 研究年報 37 J,997 −66− 図表4 電子ジャーナルシステム 仕組みである。なお,現状においては,POSには30日分,そしてジャーナルサ ーバー には6ケ月分のデータが保存されている。 電子ジャーナルは,売場のオペレ一夕ーがジャーナル用紙を扱う手間を省く とともに,清算時のジャーナルの回収などの売場における運用業務のスリム化 を促進させている。また,回収後ジャーナルの整理や保管という,経理に代表 される後方の管理業務についての簡素化も実現させた。このため,ペーパーや 運用コストが削減され,同時に保管スペー

スも不要にもなった。また,ジャー

ナルデータの長期保存用には,1枚にジャーナル3,200個,圧縮すれば約1万 個のデータを保存できるCD−ROMが利用されている。これは,書き込みデータ を消去できない追記型媒体なので,データの改窺はまったくできない仕組みで ある。実際に,西武百貨店では,実際に月に1度のタイミングでデータのCD− ROMの落とし込みを行っている。 ジャーナルの電子化は,多様なキーによる検索を可能にして,問い合わせへ

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC→POSの戦略的導入論 −67− の迅速な対応を可能にした。また,PC−POSの画面からは,ターミナル番号, 取引番号,取引種別,取引時刻,伝票番号,クレジット口座,取引合計額等の 条件での検索も可能になった。さらに,PC−POSでは,同時に,自身のディス ク内に保存されたデータに対する検索も行っている。この電子ジャーナルには 通常の取引だけでなく起動処理や売上照会操作も記録されるため,オペレータ ーの動きが−・目で分かるのである。そして,電子ジャーナルデータをPOSディ スク内へ取り込むことで,取り消しや返品の処理の自動化も可能になる。また, レシートには日付,店番号,取引き番号等がバーコードで印字されており,こ れをスキャナーで読み取ることによって,自動的に該当の番号のすべての買上 取引についての明細がPOS画面上に表示される。従来のPOSでは,取り消し,

再登録する処理が,POSl台につき月間240分も費やしたのだが,この電子ジ

ャーナルの採用によって,それらがまったく不要になった。 (3)無線LANの全館への導入 頻繁にレイアウト変更が起こる催事場においては,無線LANの有効性は,ま さに言うまでもなく多大なものである。しかしながら,今後は時代の変化に敏 感に対応するために,催事場以外の−・般売場においても,より柔軟なレイアウ ト変更が求められる。そのためには,無線LANの全社への導入がきわめて効果

的なのである。POSには,無線LANをキャッチするアンテナが接続され,ま

た天井には,バックボ、−ン・ネットワークのブリッジとなる通信機器が取り付 けられている。とりわけ,百貨店という環境を考慮するならば,天井に設置さ

れた通信機器のPOSのカバー範囲を20∼30メートルに設定することが望ま

れている。また,仮に通信中の機器が故障したとしても,ローミング機能があ るために,自動的に他の機器に通信が切り替わるため,POSオンラインは自動 的に継続できる。 4.基本アプリケーションの機能充実 また,このPC−POSの基本アプリケーション機能は以下のとおりである。当 然ながら,この基本アプリケーションは,店舗の負担の軽減を目的にすること が大切である。具体的には,操作性の向上,プリセレクトからポストセレクト

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香川大学経済学部 研究年報 37 −68−−−−− J997 によるオペレーションの簡素化,ターミナルプログラムの整理や統合による管 理や運用の効率化と開発費用の削減,および照会機能の強化による販売実績デ −タに基づいた素早い意思決定アクション,HELP機能の強化によるミスの防 止によるデータ精度の高維持が,それらの主たる機能である。 このような機能の中で,とりわけ利便的な基本的な機能は,ダイナキーによ る操作画面のアイコン化である。これは,オペレーターがファンクションキー に対応した表示エリアのアイコンを選択して操作することで,アイコンが登録 の場面によって自動的に切り替わり,次に行うべき操作を示すとともに不要な ものは全く表示しないため,オペレーションミスが大幅に減少する。たとえば, 西武百貨店の事例では,従来のPOS上のタッチヰーは66であったそうだが, このダイナキーの採用によって33キ・−へと半減させることができた。また,現 金,クレジット,未決処理等,商品登録に関わる取引種別コードは,従来では 約20種類もあったうえに,また,プリセレクト(前宣言)方式を利用していた ため,オペレーターはあらかじめ該当コードをすべて記憶していることが前提 であった。 しかしながら,PC−POSシステムの設計を行う際に,従来の約20種の取引種 別コードを整理統合して7種類ほどに集約した上で,ポストセレクト(後宣言) 方式に切り替えて,またこれらをダイナキー化したことで,オペレーターはコ ードを記憶しておく必要が無くなった。それに加えて,プリセレクト方式では, 支払い段階で,顧客が決済手段の変更を行う場合には再度最初から商品登録を 行う必要があったが,ポストセレクト方式ではその必要がまったくなくなった ため,月間1台当たり約210分もあった誤操作に関わる再登録処理が不要にな った。また,任意のタイミングでの適切なヘルプ情報も得られるために教育時 間の短縮が実現して,キャッシャーのパートヘの切り替えも容易になった。 レシートについても,電子スタンプ方式であるサーマルレシートに切り替え ることで,品名などの漢字対応が可能になった。また,その出力時間について も,従来に比較して,クレジット取引の場合には,商品4明細登録で従来では 約27秒要したものが,約3秒へと9分の1に短縮している。 また,POSの形態については,百貨店の多様な売場特性にあわせて,モジュ

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −69− レジ待ち行列の穏和・・取引登録の分散化・顧客待ち時間短縮 <顧客サービスの向上> 図表5 カウンター端末のオペレーション ラー型(組み込み型)とインテグレーション型(−・体型)の選択が可能になっ ている。通常では,売場のレジカウンターに組み込む場合はモジュラー型が, 顧客の目に触れない売場事務所や移動の多V)催事場ではインテグレーション型 が採用されている。また,セ)t/フサービス形式の食品売場では,PLU(Price LookUp)キーボードを付加しており,同時に,2人制のチェックアウト方式が採 用されている。 とりわけ,特筆すべき点は,家庭用品,婦人雑貨など客数が多く,かつラッ ピングを伴う売場で,接客のスピ、−ドアップやレジ待ち行列の解消を目的にし て導入したカウンター端末である。また,接客カウンターには複数台の子POS が並び,後方には親POSが設置される方式である。もちろん,両者ともOLE− POSなのだが,通常,子POSには,ドロアーとプリンターはつけてはいない。 販売員は,子POSで商品登録して,値下げや割引後の買い上げ額を顧客に提示

した後で代金やか−ドを預かって,あいている親POSのところへ行って子

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香川大学経済学部 研究年報 37 J997 一死)−

POSの取引きを呼び出した上で,預り金の処理やレシート発行を行うシステム

である。この間,もしラッピングなどがあれば,その作業を行うことになる。

また,ここでの親POSと子POSの関係は固定的ではなく,どの親POSでも

任意の子POSの取引を処理できるため,特定の親POSのみが混雑することは

ない。また,親POSと子POSは同じ機種であるため,新たなプログラム開発は

まったく不要で,当然ながら両機の操作も共通になっている。このカウンター

端末の利用によって,繁忙期時において約20%ほどのスピードアップが期待で

きる(図表5)。 V

l.店頭営業におけるアクションデータの戦略活用

PC−POSは,売場における情報ネットワーク端末であるため,多様なデータ

収集のエントランス端末として機能している。ここから収集される情報の中に

は,販売取引単位でモチベーション企画などにかかわるデータ登録が可能なも

のがある。たとえば,ブライダル,出産,中元歳暮などのシーズンギフト,母

の日,クリスマスなどのパーソナルギフト,進入学,リクルートなど,いくつ

かのモチベーション企画をコード化して取引毎にPOS登録を行うことで,各

種の戦略的な営業分析が可儲になる。これらのセールスプロモーション強化に

向けたデータリソースに加えて,顧客軸においては,ポイントカードのPOSス

キャンで入手できるリテンション・マーケテイングへの対応情報や,商品軸に

おいては,どのマーチャンダイジング・サイクルのプロセスで購買されたのか

という商品開発への対応情報などが,POSからデータウェアハウスへと蓄積さ

れていく。

また,POSから出力される各種売上照会レシートも,営業アクションにつな

がるデータとしての活用が可能である。とりわけ,店頭に軸足をおいたマネジ

メントへの転換を目指すためにも,唯一・の店頭情報端末であるPOSから出力

されるデータは,いつでも売場での照会が可能である。すなわち,売場の係長

と販売員が店頭で必要な情報をリアルタイムで適時取得できて,現時点からの

あるいは週単位で営業アクションに役立てられる。たとえば,西武百貨店にお

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 一刀− ける売上レシート照会機能では,単に売場コードや商品コード等の各種商品体 系コード別だけでなく,プロパー売上やマークダウン売上といった販売形態別 等の売上や客数実績が日々リアルタイムでの捕捉が可能である。また,予算比 や前年比だけではなく,発注への活用を目的として週累計の売上データも表示 しているため,この売上げレシート照会機能はきわめて精度の高いものでる。 そして,容易に時間帯別売上高が店頭から取得できるため,現時点から閉店時 間までの品揃えや商品出しへの対応にも役立っている。 また,後述するが,販売員コードをバーコード化した販売員カードをすべて の販売員に携帯させることで,このカードをPOSでスキャンすれば,個人別売 り上げについてもレシートの照会によって容易に捉えられる。こうして,各版 売貞が日々の売上目標をあらかじめ設定しておき,そして,自分自身における 本日の実績をレシートで確認することで,自らの責任で完全に売り切れるパワ フルな売場の構築が可能になる。 2.顧客最優先へ向けた販売員カードの導入 そこで,このような観点から,以下に顧客最優先へ向けた販売員カードの導 入とPC−POS活用の販売サポートシステムについての簡単な紹介を行う。ま ず,西武百貨店が1997年から導入している販売員カードの仕組みであるが,こ の仕組みの導入の真の狙いは,顧客最優先思想に基づいて,売場での接客販売 のあり方を顧客とのパーソナルな関係に転換するサポートシステムを構築する ことにある。しかしながら,この販売員カードは,−・方では,売場の係長にと っては販売員に対する販売目標管理というマーネージメントのツールとして も,また重要なものでもある。 すなわち,販売員が自ら自分の販売履歴を知ることができる販売員カードの 導入目的については,以下のように総括できる。第1は,顧客が望むことや欲 するものをくみとって,それらを何よりも優先させる顧客の立場に立った顧客 最優先の考え方であるカスタマーファーストを,販売員一人ひとりの販売力を 高めるために,毎日の接客や売場展開において貫くことである。第2は,販売 員の名前を顧客に知ってもらうことで,顧客とのパーソナルな関係をより深化

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J997 香川大学経済学部 研究年報 37 −Z2−−−−− させることである。第3は,販売成果をあげた社員や優秀な販売員を公平かつ 公正に評価して,そして彼らを処遇するためである。もちろん,これらのこと は,実は,米国の百貨店では,すでにあたりまえのように展開されている,い わば,普通の手法である。したがって,ここではノードストームが展開し大成 功を実現したカスタマー・サービス事例を紹介したうえで,百貨店が導入すべ き仕組みについて言及を行なう。 このノードストロームのカスタマーサービスを実現する仕組みの特徴は,以 下の4点に総括できる。第1は,マルチプルセールスの積極的な推進である。

これは,顧客の便宜性から,一人の顧客の買い物ニーズをひとりの販売員が−

度に解決するために,複数販売を基本として各売場別の達成目標を決定する仕 組みである。このマルチプルセールスとは,顧客の望む買い物に際して,同一 アイテムも含めて関連商品まで販売する複数販売である。こうして,ノードス トロームでは,結果として売場の垣根を越えたコーディネート販売までつなをデ ている。 第2は,販売成果の基準が時間当たり販売高という仕組みである。すなわち, 顧客に接して,販売する人が評価されるべきという視点から,パート社員も含 めて長時間店頭に立てる人と立てない人の不公平をなくし,公平,かつ公正な 評価を行うために,売場別に,それぞれ1時間当たりの販売実績をカウントす る仕組みである。 第3は,優秀販売員のみが加入できるクラブ組織のペースセッタークラブの 会員になれることである。会員になると,社員割引額の増大,認定の襟章の配 付,特別表彰などの特典が与えられて,また顧客に対しては,カスタマーサロ ンヘ写真が掲示されて,名刺にも会員であることを刷り込める。 第4は,販売員自身のことを顧客に知ってもらうことである。ノードストロ ームではレシートの−・番下に自分の名前をサインして商品渡しを行っている。 これはノ、−ドストロームの接客が,基本に忠実であることの証明でもある。こ の結果,顧客とのパーソナルな関係の深化も実現できることになる。 このようなノードストロームのカスタマーファーストの仕組みの,いわば日 本版として登場したのが西武百貨店における販売員カードの仕組みである。現

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −73一 在,この西武百貨店が推進している販売員カードの効果的なオペレーション方 法については,概括的に要約すれば以下のとおりである。まず最初に,売場の 係長は,各売場のメンバーの能力やキャリア,そして販売時間を考慮して,メ ンバーの一人ひとりに個人別の販売金額の目標を伝えて,同時に,それらの数 値をパソコンに過別,そして日別に登録する。その後に,販売員は,接客時に は顧客から預かった現金またはクレジットカードと販売員カードを,カルトン に乗せてキヤ 販売員カードをスキャンする。こうすることで,POSの売上照会レシートから, 当日,前日,月累計,前月実績が正確に把握することが可能になる。こうして, 売場の係長は,実績データをもとに一人ひとりの販売員に適切なアドバイスが でき,また,達成率の低い販売員に対してはその原因を考えて改善策の検討を 行うことも可俄になる。 こうして,顧客に繰り返し来店してもらって,その都度気持ちの良い接客を 受けることからおおいに満足をしてもらうことが,今後の店頭小売にはきわめ て大切なことである。そして,顧客を,いわば名前で呼んで接客ができること, 顧客に自分の名前を覚えてもらうこと,すなわち顔の見える顧客作りを行うこ とを目指さすことが大切なのである。また,販売員か−ドは,そのためのツー ルとしても,きわめて効果的なものである。また,販売員にとっては,各自が それぞれの売上実績を正確に把握することで,販売力を客観的に捉えることが でき,そのために,自らの弱点の補強も可能である。言い換えれば,販売員カ ードは自分を顧客に知らせて,同時に,自らの能力を向上させるツールといえる。 この西武百貨店における実験導入の結果からも,多大な成果があることがす でに証明されている。たとえば,以下に紹介するようなことが,売場の係長や 販売員に期待される成果イメージである。すなわち,第1は売場の緊張感につ ながり真剣な販売ができる,第2は正確な個人別販売実績がリアルタイムに把 握でき接客時間も拡大する,第3は販売実績に対する一人ひとりのいい意味で のライバル心が高まる,という3点である。このように,販売員かカードの導 入によって,売場の第1線のエンパワーメントが実現して,きめ細かな顧客サ ービスが実績に結びつき,いわばカスタマーフア、−ストの好循環が実現する。

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J997 香川大学経済学部 研究年報 37 −7を− このため販売重視,そして顧客最優先のカルチャーが再び百貨店に戻ることが 期待できる。 3.PC−POS活用の販売サポートシステム また,西武百貨店では,前述した営業アクションデータの戦略活用視点から, PC−POSの導入に伴って,同時にPOS売上照会システム,売上情報サボ・−トシ ステム,日割予算システム,という3つの販売サポートシステムを稼動させて いる(図表6)。 図表6 販売サポートシステムの主なメニュー

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 一乃− このシステムの導入によって,以下のような売場からの高い評価が獲得でき ている。すなわち,電卓片手の手作業から開放されるとか,販売や発注に専念 する時間が増えるという,いわば実務上の効果である。具体的には,従来のデ ータ収集や分析に使用していた時間が大幅に削減されるため,的確なデータに 基づくすばやい業務対応も可能になる。 第1のPOS売上照会システムでは,販売形態,時間帯,個人別売上実績も把 握も可能になる。すなわち,従来のアイテムコ・−ド別,細分コード別売上照会 レシートに,コードごとの小計や前年此も出るようになった。また,これまで 不可能であった販売形態別,個人別の各売上照会データも自動集計されて,必 要なときにその場で決済ができる。 第2の売上情報サポートシステムでは,アイテムカテゴリー別や週間,月間, 日別実績も翌日検索できる。これまで,情報を把握するためには手作業が必要 であったり何日も要した週報や月報が,日報と同様に翌日見ることができる。 その結果,週の実績をたとえば月曜日に分析して,必要商品の迅速な発注につ なげることが可能になる。さらに,これまで手作業で集計していた販売形態別 やカテゴリー別などの実績データが自動的に加工され,きわめて実務に役立つ 情報として売場へと提供される。そのうえ,欲しい人が欲しいデータを,標準 パソコンを通じて全社統一Lのフォーマットで見ることができ,これも大きな効 果を実現することが期待されている。もちろん,職務によっては,検索可能範 囲の制限は行われるが,少なくとも,店長や販売部長や商品部のバイヤーなど は,自らデータを把握しながら的確な指導やサポートが行える状況が入手でき る。また−・方,各売場サイドにおいても,他店の販売実績を迅速に知ることが でき,そのために他店との比較検討が容易にもなる。 第3の日割予算システムの導入は,従来では,売場の事務所のパソコンと POSレジとが連動していないと二重作業になる日割り予算の入力作業が,≠本 化されることでレジの手間がはぶけている。 このように,この販売サポートシステムとは,実は従来では手作業で行って いる仕事を削減するための仕組みである。このため,データ収集や分析や報告 業務に要する時間の約3分の1の削減が可能になった。その分,販売員が販売

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一刀← 香川大学経済学部 研究年報 37 J.997 や発注,買いやすい売場づくりに専念できる時間が拡大する。また,的確なデ ータ把握がリアルタイムで行なえるため,売場の係長や販売員による改善への すばやいアクションが可能にもなる。 そこで,販売サポートシステムの導入効果を売場の販売員の立場から統括す るとおおむね,以下の5点に要約できる。第1は,時間のかかるデータ収集と 訣別し,まさに生きた情報での変化の即時対応が可能である。日報,週報の作 成や,売場のフォーマット,所定の計画書や報告書にあったデータを集めるた めに,毎日,10数枚もある照会レシートをレジから打ち出してノートに分類し ながら貼ったり,電卓と定規を持って前年比や予算費を出すような作業を行な わなくてもよい。また,毎月の月初に行っていた日割予算のレジヘの入力作業 も解消する。さらに,週報作成のために,前々週のレシートをつき合わせなが ら行っていた引き算も,もうまったく必要がなくなる。その理由は,リアルタ イムに必要なデータが出力できる体制が構築されるからである。 第2は,時間帯別の売上照会が簡単になる。時間帯別の客数,売上をリアル タイムで知ろうと思うならば,多くの売場では,12時,14時,16時などの時刻 を決めて,そこまでの照会レシートをレジから打ち出して引き算を行っていた。 ところが,新しいシステムでは,レジ自体が自動集計を行なう。だからこそ, 必要な時には,いつでも,1時間単位の客数,販売数畳,売上高,前年・前週 実績に対する達成率が検索できる。 第3は,販売員別・担当商品領域別の売上集計を自動にできて,個人別目標 管理の精度が向上する。売場メンバーの担当商品領域をあらかじめパソコンに 登録しておくことで,これまで各自が手作業によって集計していた担当商品領 域別の客数,売上高,目標が,いつでもPOSレジで実績の把握が可能になる。 また,前述した販売員に配布される販売員カードのバーコードをPOSレジで スキャンすることで,個人別の日別目標をあらかじめ登録しておけば,当日や 週間累計,月間累計の実績に対する目標達成率が,いつでも容易に確認できる のである。正確で,かつ客観的なデータが自動的に把握できるようになって, これまで以上に一人ひとりの役割や責任と目標を明確化でき,販売員の販売へ の意識を高め,同時に,売場における予算達成へ向けた意欲の喚起が可能にな

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −77− る。 第4は,前週の実績データを月曜日に入手して適時適晶の発注ができる。売 場としては,前週の週次データが翌月曜日には検索できるため,売れ筋・死に 筋の確認や売場レイアウトの変更,週販会や取引先との打ち合わせなども,具 体的なデータに基づいて行える。このように,販売サポートシステムは,販売 面のシステム化で最も遅れている発注の定例化や適正化などを実現するきわめ て大きな武器になる。 第5は,全社が最新データを共有しているため,各売場に対する各上司や商 品部の支持や命令が従来より的確なことである。こうして,販売サポートシス テムの稼動によって,販売員はデータに基づいた,より正確な実態把握と適切 な改善策の入手が可儲になって,また実行のための大きな力をも獲得できる。 また,それぞれのデータは,パソコンのネットワークを介して,全社がリアル に共通の情報を得ることが可■能である。特に,店舗の幹部と商品部のバイヤー にとっては,必要なデータがもれなく検索することが可能なため,従来のよう に売場からの報告を待たずに,みずからがデータを読んですばやく売場をサポ ートできる。−・方,売場サイドでは,このシステムから他店の状況を知ること ができ,このことでより良い売場の構築へ向けた活用が可能になる。 ⅤI l.次世代POS導入の推進体制と機能別分担 POS導入に際しては,店頭における売場作業が中心になるため,慎重に,か つ万全を期して準備を進めることが大切である。たとえば,西武百貨店におい

ては,全店27店舗で2,000台のPOSを4ケ月という短期間で導入完了を行な

うという計画であったため,これはなおさらのことであった。当然ながら,多 くの困難が予想されたし,また些細なミスも許されないことが十分認識したう えでの売場への導入計画であった。とりわけ,顧客のフロントエンドに位置す る情報ネットワーク端末であるPOSは,その操作性の是非や多様な発生状況 の影響が顧客に直結するため,ほんの僅かなミスや予期せぬ障害からも百貨店 のイメージを損なってしまう。したがって,PC−POSの円滑な導入に当たって

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−:巧ト 香川大学経済学部 研究年報 37 エ997 は,まず,その推進体制の整備と機能別の役割分担を明確にして,それに応じ た綿密な進捗スケジュール設計が要請される。そこで,次世代DOS導入の推進 体制は,本部,店舗,メーカー間で,それぞれ機能別に縦横無尽に連繋される 必要が生じてくる。このような観点から,実際に,ある郊外店を実験店舗に設 定して,以下のような役割分担とスケジュール設定を行われた。 第1は,各店別の配置計画の確定である。現状のフロア別POS台数をベース にしながら,セルフ型,コンサルタント型などの売場特性に応じて設置基準を 見直して,セルフ塑売場では約50坪に1台,コンサルタント塾では約80坪に 1台,という顧客の回遊性を考慮した配置計画が立案された。また,POSl台 単位において,これらに付加する固定スキャナ・−,自動釣り銭機,レジ什器と いった周辺機器の有無も確認された。なお,これらの業務は,店舗の経理部門 において導入約8週前には確定されるべき事項である。 第2には,店舗内工事の敷設である。とりわけ無線LANの特性上,天井のア ンテナ取り付け位置に注意を払って,POSまでの壁や障害物などの点検は十分 に行う必要がある。この電源やLANを含めた店舗内工事は,店舗の営業中には 行えず,通常では夜間作業となるし,敷設業者,メーか一による店舗立ち入り 調査からエ事完了までは約8週間という長期間を必要なのである。したがって, 店舗経理部門と施設部門,敷設業者がフロア別図面をベースにして,その進捗 状況について,いつでも充分に把握しておくことが大切である。 第3は,とりわけ重要なのが教育研修計画の実施である。まず,店舗の経理

担当者や教育担当者等を1店舗,3∼4名を本部の集合研修に参加させ,POS

全体概要,基本操作演習,運用上の変更点をしっかりと理解させる。この本部 の集合研修は,各店舗の導入時期がそれぞれ臭っていても,すべての店舗にお

いて導入の約6∼8週前に実施できるように,1回につき約6から7店舗を対

象にすると最低5回は行う必要がある。本部の集合研修に参加した店舗の代表 者は,その後に店舗内では,自身が講師として教育を行う。すなわち,店舗内 において研修室を確保しての効率的な研修スケジュールの立案が要求される が,1回についての研修対象者数は,研修密度と効率性から最大20名程度が最 適なのである。また,標準店で約400から500人となる研修対象者を,講師が

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −79− 3,4名でコントロールするのは困難なため,各営業部門単位でPOSリーダー を任命して部門単位で簡易な研修ができるよう,店舗内の研修室だけでなく各 販売事務所にもPOSを最低1台設置するのも大切である。 店舗の教育カリキュラムでは,階層別にそれぞれの内容をメニュー化するこ とが効率的な研修を可能にする。すなわち,マネジメント層,販売主任,一腰 社員,専任キャッシャーなど,その職制によってパーツ化したカリキュラムを 随時必要に応じて組み替えて,職制毎に研修メニューを提供することが重要で ある。たとえば,専任キャッシャーは,百貨店特有の複雑な注文・代引,商品 移動,外商お廻しといった未決処理まで,すべての操作を習得する必要がある。 しかしながら,課長などのマネジメント層は,現金,クレジットの基本的取引 に加えて,売上照会業務,精算を受講しておけば,それで充分と思われる。PC −POS自体がイージー・オペレーションによって教育時間の短縮に寄与したこ ともあるが,このように効率的な店舗内研修を進めることで,約400∼500人の 教育さえも約5週間で完了できる。 以上,論述してきた配置計画,店舗内工事,教育研修計画以外にも,POS単 位で必要となるターミナル設定情報の管理,新しい伝票や販売員カードをはじ めとする用度品手配,電子ジャーナルソフトのPC−PCへのインストー)t/,稼動 前日のPOS搬入・搬出作業なども,それぞれ,店舗での実施担当者,またそれ をコントロ、−ルしていく本部での確認者,およびメ・−カー担当者が各々役割分 担に基づいて,慎重に準備することも大切である。そうでなければ,約4ケ月 の間に週単位で,順次店舗へ導入される約2,000台のPOSを支障なく稼動さ せるのは,とても困難なことである。 2.パイロット店への導入から全店展開へ このような大きなプロジェクトになると,全店展開の前には,少なくとも約 4ケ月前にパイロット店へ実験導入して,その作業手順,成功へのノウハウ, 導入効果などを十分見きわめるために検証を行なう必要がある。すなわち,パ イロット店へのPOS導入は失敗が許されないため,展開規模については,リス クを考慮して少しずつ拡大することが大切である。まず,最初は,特性が異な

(28)

香川大学経済学部 研究年報 37 J997 一一∫()一一

る売場に3,4台ずつ導入することで,POS操作の検証を行なう。具体的には,

コンサルタント型の売場としては,たとえば婦人服や,紳士服,セルフ型の売

場としては,たとえば家庭用品が適切それぞれである。ここで,1週間ほどオ

ペレーターの評価や顧客の反応を見ながら,より質の高いソリューションに向

けて細かな設計上の見直しを行うことが大切である。そして,この3,4台で

十分な評価を得られた段階で,次には,食品などの特殊な集中スルー方式を採

用している売場を除いて,各フロアにおいて半数のPOSの入れ替えるという

段取りになる。

これは,リスクマネジメントのひとつとして,仮に1台のPOSでシステム的

なトラブルが発生しても,近くのPOSで商品登録できる対応をとるためであ

る。ここで予期せぬ障害などの発生や操作的な戸惑いも生じなければ,残り半

数のPOSの切り替えを行って,その後に食品などの集中スルー方式の売場へ

POSを投下していく方法をとればよい。そのわけは,とりわけ食品雑貨系の売

場は,POS単体での稼動だけでなく,自動釣り銭機や固定スキャナーといった

周辺機器も組み込まれるため,一・般売場以上にその動作確認は細かくチェック

する必要があるからである。最初の3∼4台の稼動時から最後の食品や雑貨系

売場の稼動時までは,パイロット店での展開は最低でも約2ケ月間は必要であ

って,その間に問題点や改善点をすべて解決することが前提になる。さらに,

この後の約2ケ月間は,安定的な運用に向けて売場のオペレーターの要望は取

り込んで,可能な限り売場と顧客の双方が満足できるシステムを完成させるこ

とが大切である。

そして,パイロット店において100%保証された後に,POSを全店展開する

際には,店舗内での教育の徹底と前述した機能別分担に基づく周到な準備の2

点が重要な課題になる。たとえ完全なシステムであっても,それの操作教育が

不徹底であったり一つでも準備項目を怠ってしまうと,結果的にはシステム全

体が不当な評価を受けてしまう。したがって,各店舗ごとに,システム稼動の

約3過前に店舗へ出向いて,研修と事前準備の進捗度を確認することが必要で

ある。たとえば,配置計画の変更の有無はあるのか,店舗内工事はどの程度ま

で進んでいるのか,教育対象者の何割が完了しているのか,復習の機会はいつ

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次世代リテイルシステムの確立へ向けたPC−POSの戦略的導入論 −βノー 設けているのか,新しい用度品の手配は完了しているのか,POS毎に設定すべ

き情報は管理されているのか,稼働日前日の旧POS搬出・新POS搬入のタイ

ムスケジュールは確定しているのか,など細大漏らさず確認することが大切で ある。仮に,滞っている事前作業や業務があっても,3週前であれば,本部や メーカーからのフォロー支援で充分対応できる範囲である。また,全店展開し ていく過程で,店舗によっては,単純なケアレスミスを犯したり細かな設定作 業を漏らす場合もなくはない。 これらのことは,POSの稼動に当たって,店舗が注意すべきことで,具体的 には,それらの現象や内容,さらにはその防止策を要約して,これから導入し ていく店舗に,あらかじめ注意を促す文書を発信することが大切である。操作 についても,同様に通常のマニュアルではカバーできない注意事項についても, たとえばQ&Aとしてまとめ,これらを随時,更新しながら店舗の教育担当者 へ継続して送付するのも,円滑な全店展開の促進のための条件である。 ⅤⅠI l.データベース・マーケテイングヘのPC−POSの戦略活用 情報技術の発展が,小売と顧客との関係にも革命的な変化をもたらしたこと は,前述のとおりである。とりわけ,データベース技術の進歩によって,顧客 の−・人ひとりのニーズや属性を把握することが可能になり,顧客満足度の向上 や顧客の保持を継続させる素地も整ってきた。そこで,これからは,顧客情報 システムや商品情報システムとともに,このデータベース・マーケテイングの 元となるデータをピックアップする中心的な役割を,POS情報システムに担わ せることが期待される。 そこでまず,データベースの設計や構築のポイントについて考えることにす る。最も大切なことは,その膨大な畳の生データの山に埋没しないように,デ ータを整理したり統合したりすることである。また,データの運用に当たって も十分な留意が必要であって,とりわけ取引き実態の再現性とデータ運用の条 件をしっかり確定することが大切である。また,とりわけ膨大な量の販売デー タをハンドリングするデータベースには,そのデータの分析時の有用性から生

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