香川生物(Kagawa Seibutsu)(19):41岬44,1992
香川県高給市女木島・男木島におけるヒキガエル
望 高松市立二番丁小学校 篠 原 〒760 高松市錦町2丁目14−1BufoiqponicusinMegiandOgiIslands,Takamatsu
NozomuSINOHARA,NibanchoPrimarySchool,Nisiki−maChi2141,
mゐαmα£古址760,Jdpα几 は じ め に 高松市女木島ほ別名「鬼ケ島」とも呼ばれ高 松港から船で20分の距離にある観光地である。 特に夏ほ海水浴・洞窟観光で観光客が多い。男 木島ほ女体島より北に船でさらに20分の距離に ある。女木島に比べ観光客ほ少なく,静かな漁 村である。 両島におけるヒキガエルの生息調査ほ太田正 臣氏(元女木小学校校長)によると約11年前に 松井(京都大学)が行っている。詳しいデータ の公表はなされていない(松井,1987)。その 後,両島におけるヒキガェルの生息環境ほ,た め池・水路・石垣のコソクリ・−・りとと家屋の近 代化で悪化する一∴方である。太田氏や島の住民 の話では10年くらい前までは人家の周りで多数 目撃できた,5年ほど前からほぼとんど姿を消 しているということであった。 そこで,これら絶滅状態にあると言われる両 島を今回調査し,その現況を報告する。 調査地域の概要 女木島ほ,瀬戸内海に浮かぶ周囲約8km,広 さ約2.7kⅡ戸,峰が3カ所ある。最高峰ほ216.3m で南北に.細長い島である。平地はわずかで,島 の北半分ほなだらかなだんだん畑になっている。 小さなため池が多数点在し,一・部水田が残って いる。集落は2カ所あり東側の東浦地区が大きい。 男木島ほ周囲約4.9km,広さ約1.4kⅡP,峰が 2カ所ある。最高蜂ほ213.2mで丸い島である。 集落が島の南側に.1カ所あり西側斜面がだんだ ん畑になっている。小さなため池が1カ所あり, 水田ほ限られた場所にしかない。調 査 方 法
調査ほ春・夏2回行った。春ほ女体・男木両 島で行った。日時は以下の通りである。女木島1991年3月5日(曇り時々小雨)
(8:30−10:00,14:30−17:00, 20:00−21:30)男木島1991年3月5日(曇り時々小雨)
(10:40−13:00) 昼間ほ女木・男木島のため池・泉水・畑の貯 水槽・沼地を中心に目視で成体の確認と産卵数 を調査した。夜間ほ女木島においてのみ行った。 昼間の調査で産卵が確認され,最も平坦な場所 が広い池で産卵他に集まった個体の体長と体重 を測定した。産卵行動後の帰路についても確認 した。民家の周りほ水路を中心に行動を調査し た。 夏ほ女木島のみで行った。日時ほ以下の通りである。1991年8月31日(暗)
(14:30−16:00,20:00−22:00) 9月1日(愕) (9:00−12:00,20:00−22:00) −41−OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
昼夜間とも産卵地の周りの畑,洞窟へ通じる 登山道,燈台に.通じる道,民家の周りで目視で 成体の確認を行った。 体10数匹を確認したという情報を高木教頭より 得た。 2.3月5日の夜間の調査(女木島) 産卵地Aの北側の畑で雄1個体(20:00)を採集 した。産卵地Aでほ雄22個体を採集L体長と体 重を測定した(20:00−21:30)。産卵後の帰路ほ2 結 1.3月5日の昼間の調査 産卵及び成体を確認した地点を図1に,概観 を図2に示す。女木島で抱接している雌雄1対 及び産卵後約2週間の卵の様子せ図3に示し, 各産卵地点での産卵数及び産卵環!昇を表1に示 した。 (1)女木島 これまでに知られていた産卵地(A)を含め3 カ所で産卵が確認された。A.B2カ所の池ほ 改修されていない土のみで作られた池で水深が 5∼30cmの浅瀬で卵を確認した。Cの産卵地ほ 土手がコンクリ・−ト化してこいたが,他の底は砂 地であった。 抱按中の雌雄ほA(8:40),C(16:00)2カ所で各 1対を確認した。抱接ほ水深5∼30cmの浅瀬で 行われていた。A池でほ卵長の短いものが2本 確認された。聞き込みに.よると業者による描獲 ではないかということであった。成体が産卵途 中で捕獲され持ち去られた可能性がある。 B池近くの野蛮で雄1個体(17:10)を採集Lた◇ (2)男木島
産卵地を1カ所(D)確認した。かつての産卵
地に.はプ・−ルができており,成体ほ確認できな かった。 卵ほD地点で卵長の短いものが1本確認され たのみである。ここでも成体が産卵途中で捕獲 され持ち去られた可能性がある。 男木島小・中学校の泉水及びプ・−ルで昨年成 図1 女木島・男木島の産卵場所及び成体確認 場所(1991.3.5) A,B,C,D:産卵場所 □:産卵場所以 外の成体確認場所 ▲:峰の位償 表1 産卵地点及び産卵環境 日 時 地点∴水深(00)卵長(00)卵数気塩(℃)水温(℃)地温(℃) 底 層 9 砂混じりの土 9 木の枝・砂地 11 砂混じりの土 11 砂 地 10 砂混じりの土 0 5 325一一30 2
﹁〇 5 A A B C D 50−100 2 10一5 多数 105 多数 12 1 12 1 11 9 9 0 0 0 1 1 1 1991.3.5,8:30 1991.3.5,8:30 1991.3.5,16:00 1991.3.5,17:00 1991.3.5,11:00 −42−OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
A
図2 産卵場所の概観(1991.3.5) A:A地点 B:B地点 C:C地点 D:D地点
1:C地点 2:A地点 上の個体である。 4.8月31日,9月1日の調査 2日間の昼夜にわたる調査では1個体も目撃 することはできなかった。夜間の気温は26℃ (20:00)まで下がっていたが,畑作業中の農家の 人からは,もう少し涼しくならないと出てこな い,10月頃ほ畑でときどき見るが家の方ではみ かけないという情報を得た。 図3 抱接中の雌雄と卵の様子(1991.3.5) 方向確認され,方向はどちらも山腹の畑であっ た。集落の路上では雄1個体(21:30)を確認し た。 3.女木島で3月6日に採集された個体の体長 と体重 昼夜の調査で確認された29個体の体長と体重 の関係を囲4に示した。目撃個体数ほ100個体 以上であったが,測定できた個体は29であった。 年齢ほ奥野(1984)より推定した。全て3歳以 一43−OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
男木島でほ最大の産卵場所にプ・−ルが建設さ れ,残り1カ所の蓮畑も水深が浅くなっている。 高木教頭からは男木小・中学校のプ・−・ル・泉水 の水深が深く,毎年10個体以上が水死していると いう情報も得た。今後生息数の減少が推察される。 謝 辞 調査に当たり女木島の詳しい情報を提供Lて くださった太田正臣氏(元女1木小学校校長)・浜 口修司氏(女木小学校教頭)に心から感謝する。 摘 要 高松市女木島・男木島のヒキガェルの生息状 況を1991年の春・夏2回調査Lた。 1)女木島で3カ所,男木島で1カ所産卵地を 確認した。 2)女木島の夜間の調査からヒキガユルの生息 範囲を推定した。 3)女木島で採集された個体の体長と体重の測 定から,安定した生息環境であることが確認さ れた。 4)男木島では生息環境が悪化している。 引 用 文 献 久居富夫.1987.日本のヒキガコニル,行動生態 学.浦野明央・石原勝敏(編),ヒキガエルの 生物学:44−52.裳華房,東京. 松井正文.1987.日本のヒキガェル,種類と分 布.浦野明央・石原勝敏(編),ヒキガェルの 生物学:5−11.裳華房,東京. 松井正文.1987.日本のヒキガエル,繁殖の地 理的変異とその要因.浦野明夫・石原勝敏 (編),ヒキガエルの生物学:19−23.裳華房, 東京. 奥野良之助.1984.ニホンヒキガェル β叫/0 メdpO7乙Zc乙‘SメdpO花王c揖の自然誌的研究Ⅳ.変 態後の成長と性成熟年令.日生態会誌 34: 445−455. 植松辰美・川田英則・篠原 望.1988.与島の ヒキガェル(4)1987年度の調査.昭和62年度 Dルート自然環境モニタリング調査報告書: 263−269. 5 10 体長(cm) 囲4 女木島で採集された個体の体長と体重の