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1 variation 1.1 imension unit L m M kg T s Q C QT 1 A = C s 1 MKSA F = ma N N = kg m s 1.1 J E = 1 mv W = F x J = kg m s 1 = N m 1.

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Academic year: 2021

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(1)

解析力学 講義ノート

北里大学・理学部・物理学科  十河 清 目次 1 解析力学を学ぶ前に 1.1  次元と単位系 1.2  次元解析 1.3  微分・積分の復習 2 オイラー・ラグランジュの方程式 2.1  ニュートンの力学法則 2.2  運動方程式の「書き換え」 2.3  角運動量保存則 2.4  直角座標と極座標(ケプラー運動) 3 ハミルトンの変分原理 3.1  変分原理(最小作用の原理) 3.2  2粒子系、重心座標と相対座標 3.3  振り子の運動方程式を解く 4 正準形式の理論 4.1  ハミルトニアンと正準運動方程式 4.2  正準運動方程式を解く 4.3  電磁気学の方程式 5 正準変換 5.1  正準変数と変分原理 5.2  正準変換 5.3  無限小変換と保存則 6 ポアソン括弧 6.1  ポアソン括弧とその性質 6.2  正準運動方程式とポアソン括弧 6.3  ポアソン括弧の応用 7 位相空間 7.1  位相空間 7.2  リュウヴィルの定理 7.3  断熱不変量 問題略解 補充問題 補充問題略解

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1

解析力学を学ぶ前に

力学は17世紀のニュートンに始まるが、その後おもにフランスとドイツにおいて、ラグランジュやオ イラーなどによって、数学的整備がなされた。その際に、微分積分法の整備にとどまらず、新しい概念で ある「変分」(variation) という考え方が導入された(変分については、第3章で詳しく議論する)。「初め に運動方程式ありき」ではなくて、変分原理によって運動方程式が「導出される」のである。この新しい 装いをもった力学理論を総称して解析力学という。 古典力学のもうひとつの大きな分野に電磁気学があるが、解析力学によればいわゆる力学だけでなく電 磁気学も同様のやり方で定式化できることは、特筆すべき点である。この点については、第4章3節で詳 しく議論する。 「理論物理学」というのは、われわれの周りの この世界 を対象とする学問のひとつである。けれども、 「実験物理学」とは異なって、理論物理学は必ずしも現実世界のみを対象としているわけではない。現実 をより深く理解するために、現実には存在しない状況も考察の対象とするのである。例えば、万有引力は 距離の2乗に逆比例する力であるが、ラグランジュは「3乗であったらどうなるか?」などと考えて、太 陽系の安定性について研究したという。それゆえ、理論物理学は 仮想世界 もその研究対象としているとい える。最近のコンピュータの進歩によって、いろいろな計算機シミュレーションが容易になったことから、 理論物理学は「電脳世界」という新しい仮想世界も研究対象とするようにもなっている。 以下では「解析力学を学ぶ前に」の題の通り、物理および数学について前もって知っておくべき基礎知 識の復習をやっておこう。

1.1

次元と単位系

物理学が取り扱う量(物理量という)には色々なものがあるが、あらゆる物理量は必ず次元 (dimension)、 あるいは単位 (unit) を持っている。そして、すべての物理量は次の4つの基本的な次元・単位の組み合わ せで表わされる。 次元 記号 単位 長さ L m(メートル) 質量 M kg(キログラム) 時間 T s(秒) 電荷 Q C(クーロン) 最後の電荷の代りに電流(QT−1、単位はアンペア A = C · s−1)を用いて表わしてもよい:これを MKSA 単位系という。 物理に登場する式は、あるものが別のあるものに等しいという形式で書かれる。このとき、 両辺の次元は必ず一致していなければならない。 例えば、ニュートンの運動方程式は F = ma と書かれる。この式は、次元・単位について、左辺の「力」 が質量と加速度の積となることを主張している。力の単位は N(ニュートン)であるから、これは次の関 係を意味する。 N = kg · m · s−2 (1.1) また、エネルギーの単位は J(ジュール)であるが、運動エネルギーの式 E = 12mv2 あるいは仕事の式 W = F x によって以下の等式を得る。 J = kg ·¡m · s−1¢2= N · m (1.2)

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式 (1.1) を用いれば、右辺の等号が成り立つことがわかる(確かめよ)。 電磁気学の例を挙げておこう。電位の単位は V(ボルト)であるが、電荷 × 電位はエネルギーの次元を 持つ。これをエレクトロン・ボルト(電子ボルト)といい、 1 eV = 1.6 × 10−19 J の関係が成り立つ。右辺の数は単位電荷量 e = 1.6 × 10−19C から来ている。 問題 1.1  次の量の次元を  L、M 、T 、Q を用いて表わせ。またその単位は何とよばれるか? (1)振動数、(2)圧力、(3)電気抵抗、(4)誘電率

1.2

次元解析

すべての物理量が次元を持つことを利用すると、物理公式を「導出」できることがある。これを次元解 析(dimensional analysis)という。 例として、水平面上における「ばねの運動」を考えよう。つりあいの位置から少しずらせて手を離す と、物体は周期的運動(単振動)をすることはよく知られている。この運動を特徴づけている物理量は物 体の質量 m とばね定数 k および振幅 A である。よって、振動の周期 T はこれらによって表わされる はずである。そこで、T = mαkβAγ とおいて、両辺の次元を比べると、フックの法則(F = −kx)から [k] = M LT−2/L = M/T2であるから 左辺 = T, 右辺 = (M )α µ M T2 ¶β (L)γ= (M )α+β(T )−2β(L)γ となる。よって、連立方程式 α + β = 0, −2β = 1, γ = 0 を解いて、α = 1/2, β = −1/2, γ = 0 を得る。す なわち 周期  T = r m k × (無次元量) (1.3) となる。後にみるように、正確には T = 2πpm/k である。ここで角度(ラジアン)は「弧長と半径の比」 で、無次元であることに注意すること。またこの場合、周期が振幅 A に依存しないことは、単振動の持つ 著しい性質のひとつである。 問題 1.2(単振り子) (1)地上における重力加速度 g を計算で求めよ。 (2)「振り子」の周期 T がひもの長さ `、重力加速度 g、おもりの質量 m にどう依存するかを、次元解 析によって調べよ。 (3)月面上と地上とで振り子の周期はどれほど違うか、その比を計算せよ。 必要ならば、以下の数値を用いよ。 万有引力定数 G = 6.7 × 10−11m3kg−1s−2 地球の質量 M地= 6.0 × 1024kg、 地球の半径 R地= 6.4 × 106m 月の質量 M月= 7.3 × 1022kg、 月の半径 R月= 1.7 × 106m

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1.3

微分・積分の復習

ここでは解析力学で必要となる微分・積分の知識を復習しておこう。解析力学では運動を問題にする。す なわち、いろいろな物理量の時間変化を考えるのである。例えば、ある物体の運動を記述するには、物体 の座標を時間の関数として r(t) = (x(t), y(t), z(t)) を決めればよい。このとき、物体の速度 v および加速 度 a は微分を用いて v(t) = d dtr(t), a(t) = d dtv(t) = d2 dt2r(t) (1.4) と表わされる。ここでベクトルの時間微分は成分ごとの微分を意味することはいうまでもない。また、物 理では時間微分が頻出するので、簡単のために時間微分をドットで表わして v = ˙r = ( ˙x, ˙y, ˙z) などと書く。また上のように、時間変数をあらわに書かないこともあるので注意が必要だ。ドットが付い ている以上、時間の関数と考えているのである。これらは物理独特の慣習で、初めてのときは戸惑うかも 知れないが、便利な記法なので慣れてほしい。 (1)  微分の基本的性質 微分は「極限」を用いて d dtf (t) = limh→0 f (t + h) − f (t) h (1.5) で定義されるが、多くの場合は初等的な関数(tnや sin t など)の微分を知っていれば、次にあげる微分の 基本的性質から導くことができる。 和の微分 d dt(f + g) = df dt+ dg dt, 定数倍の微分  d dt(cf ) = c df dt (1.6) 積の微分 d dt(f g) = df dtg + f dg dt (1.7) この他に知っておくと便利な性質は、合成関数の微分と逆関数の微分である。 合成関数の微分 d dtf (x(t)) = dx dt · df (x) dx (1.8) 逆関数の微分 d dxf −1(x) = 1 d dyf (y) (1.9) ここで y = f−1(x) は x = f(y) の逆関数を意味する。これらは、次のように表わすとわかりやすい。 df dt = dx dt · df dx, dy dx = µ dx dy−1 例えば φ を時間 t の関数 φ = φ(t) とするとき、sin φ を時間微分すると d dtsin φ = dφ dt d sin φ dφ = ˙φ · cos φ となる。これをどう勘違いしたのか cos ˙φ などとする人がいるので、気をつけてほしい。規則は正確に運 用しなくてはいけない。

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問題 1.3(微分の諸性質) (1)微分の基本的性質を用いて、次の逆数関数の微分および商の微分の公式を導け。 d dt µ 1 f (t)= −f˙ f2, d dt µ g(t) f (t) ¶ = ˙gf − g ˙f f2 (2)微分に関するライプニッツの規則 dn dtnf (t)g(t) = n X r=0 µ n rf(r)(t)g(n−r)(t) を示せ。ここで f(r)(t) は f(t) の r 階微分、¡nr¢は2項係数 µ n r ¶ = n! r!(n − r)! を意味する。 (2)  対数関数と指数関数 以下の極限で定義される定数 e = 2.7182818 · · ·(ネピア定数ともいう) e = lim n→∞ µ 1 + 1 nn = ∞ X n=0 1 n! (1.10) を底とする自然対数は、定積分によって次のように定義される。 log t = Z t 1 du u ↔ d dtlog t = 1 t (1.11)

対数関数が log(xy) = log x + log y という性質を持つことを確かめよ。 指数関数は、対数関数の逆関数として定義される。

y = ex ↔ x = log y (1.12)

指数関数の性質 ex+y= exey が、対数関数の性質 log(XY ) = log X + log Y から出てくることを確かめよ。

問題 1.4  以下のことを、定義式 (1.11)、(1.12) から示せ。 d dtlog(1 + t) = 1 1 + t, d dte t= et これらから、次の展開公式が得られることを確かめよ。 log(1 + t) = t −t 2 2 + t3 3 − · · · = ∞ X n=1 (−1)n−1tn n (−1 < t ≤ 1) et = 1 + t +t 2 2!+ t3 3!+ · · · = ∞ X n=0 tn n! (3)  三角関数 三角関数の微分は有名であるから、よく知っているであろう。 d dtsin t = cos t, d dtcos t = − sin t, d dttan t = sec 2t

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もうひとつ知っておくと便利なものに、オイラーの公式がある。 eit= cos t + i sin t (1.13) ここで i =√−1 である。この公式によって、指数関数の性質 ei(x+y)= eix· eiy から、三角関数の加法公 式が導かれることを確かめよ。 注:オイラーの公式の導出 三角関数のテイラー展開の公式 sin t = t −t 3 3!+ t5 5!− · · · , cos t = 1 − t2 2!+ t4 4!− · · · (1.14) を、指数関数のテイラー展開の公式と比較すれば、オイラーの公式が導かれる。 et = 1 + t +t2 2!+ t3 3!+ · · · eit = 1 + (it) + (it) 2 2! + (it)3 3! + · · · = µ 1 −t 2 2!+ t4 4!− · · ·+ i µ t −t 3 3!+ t5 5!− · · ·= cos t + i sin t (4)  積分法の復習 「積分は微分の逆演算」であるから、既に見てきた微分についての知識があれば、たいていの積分は容 易に求まるであろう。解析力学に特有の問題は「微分方程式を解く」という形式の積分問題である。 例として、自由落下を取り上げよう。ニュートンの運動方程式は、重力加速度を g として m¨z = −mg  すなわち ¨z = −g (1.15) で与えられる。この2階常微分方程式は、初期条件 z(0) = z0, ˙z(0) = v0 のもとで、 z(t) = z0+ v0t −1 2gt 2 (1.16) と解ける。 等加速度運動は、力学の典型的な問題であるから、必ず解けるようにしておきたい。 問題 1.5  (等加速度運動) ある冬の朝、氷の張った湖面に跳び移ったところ、ある距離を滑ったのち停止した。氷面との間には、垂 直抗力と動摩擦力のみが働くとして、このときの運動を考える。 (1)湖面は水平として、人を質量 m の質点、重力加速度を g、動摩擦係数を µ として、運動方程式を 書け。 (2)跳び移った瞬間の初速度(水平)を v0 とするとき、時刻 t における速度 v(t) を求めよ。 (3)停止するまでの時間 T 、滑った距離 L の表式を求めよ。 問題 1.6  (終端速度) 速度に比例した抵抗力を受けながら落下する質量 m の粒子に対する運動方程式は、速度を v として、 m ˙v = −kv + mg で与えられる。 (1)初期条件を v(0) = v0として、この微分方程式を解け。 (2)limt→∞v(t) を求めよ。これを終端速度という。

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問題 1.7  (ケプラーの第3法則) ケプラーはティコ・ブラーエの後を受けて天文観測を続け、惑星運動に関する有名な3つの法則を発見し た。第1法則は惑星が太陽を焦点とする楕円軌道を描くこと、第2法則は面積速度が一定であること(角運 動量保存則に等価)、第3法則は公転周期 T と長半径 a との間に T2∝ a3の関係が成立することである。 (1)理科年表によれば 惑星 公転周期  T(太陽年) 長半径  a × 108km 離心率 ε 水星 0.24 0.58 0.21 金星 0.62 1.08 0.01 地球 1.00 1.50 0.02 火星 1.88 2.28 0.09 木星 11.9 7.78 0.05 土星 29.5 14.3 0.06 天王星 84.0 28.8 0.05 海王星 164.8 45.0 0.01 冥王星 247.8 59.2 0.25 となっている(適当に四捨五入してある)。両対数グラフ用紙に T と a の対応をプロットし、第3法則の 成立を確かめよ。 (2)重力が距離の2乗に逆比例すること f = GM m r2 (M = 太陽質量、m = 惑星質量) および、軌道が半径 a の円であることを仮定して、次元解析によりケプラーの第3法則を導け。

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(9)

2

オイラー・ラグランジュの方程式

2.1

ニュートンの力学法則

はじめに力学の復習として、ニュートンの運動法則をまとめておこう。 1. 慣性の法則 f = 0  ならば  a = 0 2. 運動の法則 ma = f 3. 作用・反作用の法則 f12= −f21 4. 重力の法則 f = Gm1m2 r2 ここで、力 f や加速度 a はベクトルで、向きと大きさを持つことに注意してほしい。それゆえ、等式 f12= −f21は、物体1が2に及ぼす力が、物体2が1に及ぼす力と大きさが同じで向きが反対であること を意味している。また、加速度 = 0 とは、静止または等速度運動の状態をいう。ガリレイ以前においては、 「動いている物体には必ず力が働いている」と、誤って信じられていた。慣性の法則は、「慣性系」の存在 を主張するものであって、「ガリレイの相対性原理」を法則化したものに他ならない。 湯川秀樹によれば、力学法則と初期条件の分離がニュートンのもっとも偉大な発見であるという。例え ば、ボールを投げると毎回違った軌跡を描くが、それは法則が複雑なためではなく、初期条件が異なるた めである。法則じたいは単純であり得ることの認識が、ニュートンの偉大な功績なのである。 したがって力学の問題とは、運動方程式を立てること、そしてそれを解くことである。運動方程式を解く とは「力を知って、運動を求める」あるいは逆に「運動を知って、力を求める」ということに他ならない。 例 ばねの運動 ばね定数を k とすれば、力は f = −kx (フックの法則、力の向きは変位の向きと逆)なので、運動方程 式は m¨x = −kx  すなわち ¨x = −ω2x (2.1) で与えられる(ω2= k/m)。この2階常微分方程式の一般解は x(t) = A cos(ωt) + B sin(ωt) (2.2) である(微分を実行してみればわかる)。初期条件を x(0) = x0, ˙x(0) = v0 とすれば、係数は A = x0, B = v0/ω と決定される。式 (2.2) は、次のようにして求めることもできる。微分方程式 (2.1) は µ d dt+ iω ¶ µ d dt− iωx(t) = 0 と「因数分解」される。それゆえ、一般解は µ d dt+ iωx(t) = 0, µ d dt− iωx(t) = 0 の解の重ね合わせ(線形結合)で与えられる。指数関数の微分公式 deat/dt = aeat に注意すれば、e±iωt がその解であることはすぐにわかる。さらにオイラーの公式によれば、これは sin(ωt) と cos(ωt) の重ね 合わせでもある。よって、式 (2.2) を得る。 ばねの運動におけるエネルギー保存則について述べておこう。よく知られているように、式 (2.1) の運 動のもとでは、運動エネルギー 12m ˙x2 と弾性エネルギー 1 2kx2= m2ω2x2 の和 E = m2( ˙x2+ ω2x2) が保存 (時間的に一定)する。このことは直接 E の時間微分をとってみればすぐにわかる(確かめよ)。

(10)

一般に、ポテンシャル V (x) によって力が決まるような場合(弾性力や重力など)には、全エネルギー E = m 2 ˙x2+ V (x) が保存する。この場合、運動方程式 m¨x = −V0(x) (2.3) の両辺に ˙x をかけると m ˙x¨x = −V0(x) ˙x  →  d dt µ 1 2m ˙x 2+ V (x)= 0   →   E = 1 2m ˙x 2+ V (x) = 一定 (2.4) のようにして、エネルギー保存則が導かれるのである。 問題 2.1 一定の外力 F を受けた調和振動子 (単振動)の運動方程式は m¨x = −mω2x + F で与えられる。 (1)初期条件 x(0) = 0, ˙x(0) = 0 のもとで、これを解け。 (2)全エネルギー E(t) = m2 ¡˙x2+ ω2x2¢の時間依存性を調べて、そのグラフを描け。

2.2

運動方程式の「書き換え」

ここで「書き換え」というのは、運動方程式を「質量・加速度 = 力」の形に書く代りに、もっと別の表 わしかたをしようというのである。もちろん、そうするにはそれなりの効用があるからだ。その中のいく つかを挙げると 1. 直角(デカルト)座標に限らず、一般の座標(極座標など)を用いて、運動方程式を簡単に書き下す ことができる。 2. その結果、方程式を解くのが容易になる(じつをいうと、簡単になるように書き換えるのである)。 3. 系の持つ対称性が見やすくなる。すなわち、対称性があれば保存量がある(ネーターの定理)。 などである。 ポテンシャル V (x) を持つ力学系を例にして、書き換えを示そう。少し天下り的であるが、次のような x と ˙x の関数 L(x, ˙x) を導入する(これをラグランジアン (Lagrangian) という)。 L(x, ˙x) = 1 2m ˙x 2− V (x) (2.5) 引き算である点に要注意してほしい。ラグランジアンはエネルギーの次元を持つが、エネルギーではない のである。このとき、運動方程式 (2.3) は d dt µ ∂L ∂ ˙x−∂L ∂x = 0 (2.6) と書き表わせる。これをオイラー・ラグランジュの方程式という。実際、上式は d dt(m ˙x) − (−V 0(x)) = 0   →   m¨x + V0(x) = 0  すなわち  m¨x = −V0(x) と変形され、運動方程式 (2.3) に一致する。

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以上、簡単のために1次元の場合で説明したが、3次元の場合も同様である。念のために書いておくと、 位置座標を r = (x1, x2, x3) とするとき、ラグランジアンを L(r, ˙r) として、オイラー・ラグランジュの方 程式は d dt µ ∂L ∂ ˙r−∂L ∂r = 0  すなわち  d dt µ ∂L ∂ ˙xj− ∂L ∂xj = 0 (j = 1, 2, 3) (2.7) のように、連立の微分方程式となる。 例えば、2次元調和振動子のラグランジアンは L = m 2 ¡ ˙x2+ ˙y2¢−mω 2 2 ¡ x2+ y2¢ で与えられる。よって、オイラー・ラグランジュの運動方程式は d dt µ ∂L ∂ ˙x−∂L ∂x = 0   →   m¨x + mω 2x = 0 d dt µ ∂L ∂ ˙y−∂L ∂y = 0   →   m¨y + mω 2y = 0 となる。力学変数を x, y とする2個の1次元調和振動子の問題と結果的に同じなのである。 本節を要約すれば、ニュートンからオイラー・ラグランジュへの移行は、「初めに運動方程式ありき」か ら「はじめにラグランジアンありき」への、発想の転換ということができる。 問題 2.2  (振り子のラグランジアン) 長さ ` のひもにつけられた質量 m の質点の、重力の下での運動を考える(単振り子)。ある鉛直平面内を 運動するとして、位置を角度変数 θ を用いて表わし、この系のラグランジアンが L =m 2` 2˙θ2− mg`(1 − cos θ) で与えられることを示せ。これから、θ に対するオイラー・ラグランジュの方程式 m`¨θ = −mg sin θ を導け。

2.3

角運動量保存則

3次元のポテンシャル運動を考える。ポテンシャルが r = |r| のみの関数であるとき、力 f は f = − ∂ ∂rV (r) = −V 0(r)ˆr (ˆr = r r = r 方向の単位ベクトル) (2.8) のように、原点の向きを持つ中心力となる。例えば弾性力、重力、静電気力などは中心力である。一般に、 中心力下の運動の場合においては、角運動量保存則が成り立つ。角運動量は次のベクトルで定義される。 L = r × p, (p = mv = m˙r) (2.9) ここで r × p はベクトル積を表わし、成分で書けば Lx= ypz− zpy, Ly= zpx− xpz, Lz= xpy− ypx (2.10) である。

(12)

中心力の場合に角運動量が保存することを証明しよう。L の時間微分 = 0 を示す。 d dtL = ˙r × p + r × ˙p = 0 (2.11) ここで、同じ向きのベクトル同士のベクトル積はゼロとなることを用いた( ˙r = p/m および、中心力ゆえ ˙p = f k r に注意せよ)。この証明をベクトルの成分で実行することを考えてみれば、ベクトル記法の威力 がよくわかる。 重力の場合の角運動量保存則は、ケプラーによって観測事実として知られていた(第2法則の面積速度 一定がそれである)。実際、面積速度は 12r × ˙r の大きさで与えられるので、角運動量に比例している。 角運動量保存則は、ベクトル L = r × p の、大きさと向きの両方が一定となることを意味する。とくに 「向きが一定」とは、軌道がある平面内に収まっていることを意味している点に注意してほしい。

2.4

直角座標と極座標(ケプラー運動)

重力の場合に、オイラー・ラグランジュ方程式を書き下そう。例えば、太陽のまわりの地球の運動(ケ プラー運動)を考える。それぞれの質量を M, m とし、重力定数を G とすれば、重力ポテンシャルは V (r) = −GM m/r であるから、ラグランジアンは L = m 2 ˙r 2+GM m r (2.12) である(符号に注意せよ)。 前節でみたように、いまの場合角運動量が保存するから、運動はある平面内に拘束される。その平面を xy 平面としよう。対称性から、直角座標より極座標のほうが便利であることが予想される。2次元極座標 を x = r cos φ, y = r sin φ とすれば、

˙x = ˙r cos φ − r ˙φ sin φ, ˙y = ˙r sin φ + r ˙φ cos φ (2.13)

であるから、

˙r2= ˙x2+ ˙y2= ( ˙r cos φ − r ˙φ sin φ)2+ ( ˙r sin φ + r ˙φ cos φ)2= ˙r2+ r2˙φ2 (2.14)

となり、ラグランジアンは L = m 2( ˙r 2+ r2˙φ2) +GM m r (2.15) と書き換えられる。 従って、オイラー・ラグランジュの方程式は、連立で d dt µ ∂L ∂ ˙r−∂L ∂r = 0, d dt µ ∂L ∂ ˙φ−∂L ∂φ = 0 (2.16) となる。極座標(および、他の座標)の場合にも、方程式が形式的に同じとなることが、オイラー・ラグ ランジュの方法の長所なのである。式 (2.15) の L を代入すれば、これらは m¨r − mr ˙φ2+GM m r2 = 0, d dt ³ mr2˙φ´= 0 (2.17) となる。後者は角運動量保存則に他ならない。r2˙φ = 一定 = h とおくと、前者は ¨ r = h 2 r3 − GM r2 (2.18)

(13)

と変形される。地球の質量 m が方程式から約分されてしまった(ただし、第3章2節「重心座標と相対座 標」を参照)。 惑星運動の軌道 r = r(φ) の表式を求めよう。そのため、時間変数 t を消去する。 dφ dt = h r2  →   d dt = h r2· d dφ (2.19) を用いれば、新しい変数 u = 1/r を導入して、式 (2.18) は d2 dφ2u = −u + GM h2 (2.20) となる(確かめよ)。これは φ を時間 t と読み替えれば、問題 2.1 と同様の一定外力の下での単振動 (ω = 1) の方程式であるから、その解は u = GM h2 + A cos φ  →   r = ` 1 + ε cos φ, (` = h2 GM, ε = Ah2 GM) (2.21) と求まる。` は通径、ε は離心率とよばれる。離心率 ε の値に応じて、軌道が楕円 (0 ≤ ε < 1)、放物線 (ε = 1)、双曲線 (ε > 1) となることを確かめよ。 問題 2.3  (ケプラー運動のエネルギー) ケプラー運動のエネルギー E は E = m 2( ˙r 2+ r2˙φ2) −GM m r と書ける。式 (2.21) の解で、軌道が楕円の場合(0 ≤ ε < 1)に、E を計算して、次式を導け。 E = −GM m 2` (1 − ε 2) 問題 2.4  (ケプラー運動の周期) ケプラー運動の周期 T を以下の手順で求めよ。 (1)式 (2.18) の両辺に ˙r をかけて、t に関して1回積分すれば、次式が得られることを確かめよ。 ˙r2 2 = C − h2 2r2+ GM r , (C = 積分定数) これは、近日点の距離 = rminと遠日点の距離 = rmax を用いれば µ dr dt ¶2 = h2 µ 1 rmin − 1 r ¶ µ 1 r − 1 rmax ¶ とも書ける。ここに rmin= `/(1 + ε), rmax= `/(1 − ε) である。 (2)(1)から周期 T は T =2 √ rmaxrmin h Z rmax rmin rdr p rmax− r)(r − rmin)

と表わされる。r = rmincos2θ + rmaxsin2θ と変数変換して積分を実行し、以下を導け。

T = 2π` 2 h(1 − ε2)3/2 = µ 4π2a3 GM1/2 ここで a = (rmin+ rmax)/2 = `/(1 − ε2) に注意。この結果はケプラーの第3法則に他ならない。

(14)

3

ハミルトンの変分原理

3.1

変分原理(最小作用の原理)

前章では、オイラー・ラグランジュの方程式を天下りに与えて、それがニュートンの運動方程式を再現 することをみてきた。ここでは、そのオイラー・ラグランジュの方程式を「導出する」ことを考える。ラ グランジアン L(x, ˙x) が与えられたとき、次の積分 I = Z t1 t0 L(x, ˙x)dt (3.1) を作用積分(あるいはハミルトンの第一主関数)という。時間の関数として x(t), ˙x(t) を与えると、定積分 I が決まるので、このような量を汎関数 (functional) という。汎関数とは、いわば「関数の関数」といって もよい。 さて、x(t) と ˙x(t) を少し変えると(x(t) → x(t) + δx(t), ˙x(t) → ˙x(t) + δ ˙x(t))、定積分 I も少し変るで あろう(I → I + δI)。その変化 δI を求める。

δI = Z t1 t0 (L(x + δx, ˙x + δ ˙x) − L(x, ˙x)) dt = Z t1 t0 µ ∂L ∂xδx + ∂L ∂ ˙xδ ˙xdt (3.2) そこで、δ ˙x =dtdδx を用いて、上式の第2項を部分積分する。ただし、端点は固定(δx(t0) = δx(t1) = 0) とする。このとき、 δI = Z t1 t0 dt µ ∂L ∂x − d dt µ ∂L ∂ ˙x ¶¶ δx(t) (3.3) を得る。括弧の中 = 0 はオイラー・ラグランジュの方程式になっている! すなわち、 オイラー・ラグランジュの方程式は作用積分 I の停留条件 なのである。式 (3.3) を δI δx(t) = ∂L ∂x − d dt µ ∂L ∂ ˙x ¶ (3.4) と書いて、これを汎関数微分とよぶことがある。普通の関数 f (x) の場合にその最小値を探すには、微分 f0(x) = 0 を解いて求める。同様に、汎関数 I の最小値を探すために、汎関数微分である、式 (3.4)=0 (す なわちオイラー・ラグランジュの方程式)を解くのである。そこで、これを最小作用の原理(principle of the least action)ということがある。

注 問題によっては、必ずしも「最小」にならないことがある。その意味でこれは、あくまでも「停留条 件」なのである。 問題 3.1  (作用積分の計算) 単振動の場合に、作用積分を求めよ。すなわち、 I = Z t1 t0 m 2 ¡ ˙x2− ω2x2¢dt として、境界条件が x(t0) = x0, x(t1) = x1 の場合に、オイラー・ラグランジュの方程式を解き、そのと きの I を計算せよ。

(15)

3.2

2粒子系、重心座標と相対座標

相互作用する2粒子系の運動を考えよう。粒子の質量を m1, m2とし、それぞれの座標を直角座標で r1, r2 とする。相互作用ポテンシャルを V (r1− r2) とおけば、ラグランジアンは L =1 2 ¡ m1˙r21+ m2˙r22 ¢ − V (r1− r2) (3.5) である。このとき、重心の座標 R と相対座標 r は R =m1r1+ m2r2 m1+ m2 , r = r1− r2 (3.6) で与えられる。これを r1, r2 について解きなおせば r1= R + m2 m1+ m2 r, r2= R − m1 m1+ m2 r (3.7) であるから、ラグランジアンは R, r を用いて L = m1+ m2 2 R˙ 2+ m1m2 2(m1+ m2) ˙r2− V (r) (3.8) と書き直される(確かめよ)。ここで µ = m1m2 m1+ m2 すなわち  1 µ = 1 m1 + 1 m2 (3.9) を換算質量 (reduced mass) という。 式 (3.8) によって、ラグランジアンが L = L重心+ L相対 に分離されることがわかる。とくに重心のラグ ランジアンは、自由粒子のそれであるから、重心は等速度運動をする。 質量 M, m の2粒子間の重力の場合に、以上の結果を適用すると、換算質量は µ = M m/(M + m) とな り、重力ポテンシャルは V (r) = −GM m/r であるから、 L相対=µ 2˙r 2+GM m r (3.10) となる。これを、式 (2.12) のラグランジアンと比べると、質量 m が換算質量 µ に置き換わっている。太 陽と地球のように、m/M = 3 × 10−6 ほどの質量差がある場合には、近似として µ = m としてもよいが、 一般には許されない。例えば、2重星(あるいは連星ともいう)などのように、似通った質量の星が互い の周りを回っているケプラー運動の場合には、換算質量(両者が等しい場合は µ = m/2)を用いる必要が ある。 問題 3.2  (2粒子系の運動方程式) 式 (3.8) のラグランジアンから、運動方程式が (m1+ m2) ¨R = 0, µ¨r = −∂ ∂rV (r) で与えられることを示せ。

3.3

振り子の運動方程式を解く

問題 2.2 で導いた、単振り子の運動方程式を解いてみよう。ω2= g/` とおけば、解くべき運動方程式は ¨ θ = −ω2sin θ (3.11)

(16)

となる。角度 θ が小さいとき(微小振動)は、sin θ ∼ θ であるから、¨θ = −ω2θ の単振動の方程式となり、 容易に解ける(高校の物理では、この近似を常用した)。 ここでは、これを厳密に解くことを考えてみたい。式 (3.11) の両辺に ˙θ をかけて、1回積分すると 1 2˙θ 2− ω2cos θ = 一定 = −ω2cos θ 0 (3.12) を得る。ここに θ0 は最大振れ角である。これは本質的にエネルギー保存則に他ならない。これを dθ/dt について解けば、 µ dθ dt ¶2 = 2ω2(cos θ − cos θ 0) = 4ω2 µ sin2θ0 2 − sin 2θ 2 ¶ (3.13) となる。いま時刻 t = 0 に θ(0) = θ0, ˙θ(0) = 0 の初期条件の場合(0 < θ0< π)を考えると、これから Z θ θ0 dθ q sin2 θ0 2 − sin 2 θ 2 = −2ω Z t 0 dt = −2ωt (3.14) を得る。左辺の積分は楕円関数とよばれる特殊関数を用いて表わされるのであるが、本論からは離れるの で省略して、ここでは周期 T を求めてみよう。周期 T は最大振れ角から鉛直下方まで移動する時間の4 倍であるから、式 (3.14) から T = 2 ω Z θ0 0 dθ q sin2 θ0 2 − sin 2 θ 2   変数変換  sin φ = sin(θ/2) sin(θ0/2) によって = 4 ω Z π 2 0 dφ p 1 − k2sin2φ  k = sin θ0 2 とおいた ≡ 4 ωK(k) (3.15) と求まる。ここに K(k) は第1種完全楕円積分とよばれる積分で、0 ≤ k < 1 に対して K(k) = Z π 2 0 dφ p 1 − k2sin2φ= π 2 Ã 1 + µ 1 2 ¶2 k2+ µ 1 · 3 2 · 4 ¶2 k4+ · · · ! (3.16) と展開される。とくに K(0) = π/2,   limk→1K(k) = ∞ である。初項はよく知られた T = 2π/ω = 2π p `/g を与える。最大振れ角が 60 度(θ0= π/3)のとき、k = sin(π/6) = 1/2 であるから、第2項=1/16 とな り、およそ 6 % の補正となる。 問題 3.3  (第1種完全楕円積分) 展開式 (3.16) の第2項までを、被積分関数に次の近似式を用いて導け。 1 √ 1 − x = 1 + 1 2x + · · · ,  一般に  (1 − x) α= 1 − αx + · · · (|x| < 1)

(17)

4

正準形式の理論

4.1

ハミルトニアンと正準運動方程式

これまで、ニュートンの運動方程式の書き換えとしての、オイラー・ラグランジュの方程式についてみてき た。この章では、もうひとつの「書き換え法」である、ハミルトンの正準形式の理論 (canonical formalism) について紹介する。 ニュートンの場合に、系を記述するのは、独立変数 x に関する2階の微分方程式であった。オイラー・ ラグランジュの場合には、2つの独立変数 x, ˙x の関数 L(x, ˙x) を用いる。このとき、オイラー・ラグラン ジュの方程式自身は時間について1階の微分方程式であるが、結局は x についての2階微分方程式に帰着 するのであった。これに対して、ハミルトンの正準形式の方法も、やはり2つの独立変数を用いるが、もっ と対称的にしようというのである。 正準形式の理論では(一般化された)座標 x と (一般化された)運動量 p を独立変数としてもつハミル トニアン H(x, p) を用いる。変数 x, p のことを正準変数 (canonical variables) とよぶ。以下では、ラグラ ンジアン L(x, ˙x) から出発して、正準形式の理論を構成していこう。 (1) (一般化された)運動量の定義 ラグランジアン L(x, ˙x) が与えられているとき、 p = ∂L ∂ ˙x (4.1) を x に共役な一般化された運動量という。「一般化された」とよぶのは、問題によっては、必ずしも p = m ˙x になるとは限らないからである。 (例1)   L = m2 ˙x2− V (x) のとき(1次元) p = ∂L ∂ ˙x = m ˙x (4.2) (例2)   L = m 2 ³ ˙r2+ r2˙φ2´− V (r) のとき(2次元) pr=∂L ∂ ˙r = m ˙r, pφ= ∂L ∂ ˙φ = mr 2˙φ (4.3) この場合 pφ は、確かに一般化された運動量とよぶにふさわしい。 (2)  ハミルトニアンの定義 一般化された運動量とラグランジアンを用いて定義される H(x, p) = ˙xp − L(x, ˙x) (4.4) をハミルトニアン (Hamiltonian) という。ここで、右辺の ˙x には、p = ∂L/∂ ˙x から ˙x を x, p によって表 わして、それを代入するものとする。 (例1)  式 (4.2) から H = ˙xp − L(x, ˙x) = p 2 m − µ m 2 ³ p m ´2 − V (x) ¶ = p 2 2m+ V (x) (4.5) (例2)  同様にして、式 (4.3) から H = ˙rpr+ ˙φpφ− L = p 2 r m+ p2 φ mr2 − m 2 µ³p r m ´2 + r2³ pφ mr2 ´2¶ = 1 2m à p2r+ p2 φ r2 ! + V (r) (4.6)

(18)

(3)  運動方程式の導出 こうして得られたハミルトニアンを用いて、x, p に対する運動方程式は次のように書かれる。 ˙x = ∂H ∂p, ˙p = − ∂H ∂x (4.7) 導出は以下の通り。 ˙x は ˙x = ˙x(x, p) と考えるので、定義 H(x, p) = ˙x(x, p)p − L(x, ˙x(x, p)) から、 ∂H ∂p = ∂ ˙x ∂pp + ˙x − ∂L ∂ ˙x ∂ ˙x ∂p = ˙x ∂H ∂x = ∂ ˙x ∂xp − µ ∂L ∂x + ∂L ∂ ˙x ∂ ˙x ∂x= −∂L ∂x = − d dt µ ∂L ∂ ˙x= − ˙p ここで、定義により ∂L/∂ ˙x = p、また x, p は互いに独立な変数なので ∂p/∂x = 0、およびオイラー・ラグ ランジュ方程式を用いた。証明のポイントは、「何を独立変数と考えているか?」に注意することである。 ちなみに、上の証明を覚える必要は全然ないが、ハミルトンの運動方程式 (4.7) の形は正確に覚えておい てほしい。後者にマイナス符号がつくことを忘れる人、逆に覚えている人を、よくみかけるのである。 (例1)  式 (4.5) から H = p 2 2m+ V (x) ゆえ、運動方程式は ˙x = ∂H ∂p = p m, ˙p = − ∂H ∂x = −V 0(x) (4.8) (例2)  同様にして、式 (4.6) から H = 1 2m à p2 r+ p2 φ r2 ! + V (r) であるから、運動方程式は ˙r = ∂H ∂pr = pr m, p˙r= − ∂H ∂r = p2 φ mr3 − V 0(r), (4.9) ˙φ = ∂H ∂pφ = pφ mr2, p˙φ= − ∂H ∂φ = 0 (4.10) 当然ながら、pr, pφを消去すれば、r, φ に対する運動方程式を再現することに注意してほしい。 ˙pφ= 0 は角運動量保存則(pφ= mr2˙φ = 一定)に他ならない。

4.2

正準運動方程式を解く

ハミルトンの運動方程式(あるいは正準運動方程式ともいう)の例をいくつか挙げ、これらを解くこと を考えてみよう。 (例1)  (単振動) 単振動(ばねの振動)のハミルトニアン、運動方程式は H = p2 2m+ mω2 2 x 2, ˙x = p m, ˙p = −mω 2x (4.11)

(19)

で与えられる。当然ながら p を消去すれば、おなじみの ¨x = −ω2x を得るので、その解はよく知っている であろう。ここでは別の解法を示そう。新しい変数 ξ = p + imωx を導入する(i =√−1)と、

˙ξ = ˙p + imω ˙x = −mω2x + iωp = iω (p + imωx) = iωξ を解いて ξ(t) = ξ(0) · eiωt (4.12)

を得る。よって、ξ(t) = p(t) + imωx(t), ξ(0) = p(0) + imωx(0) および eiωt= cos(ωt) + i sin(ωt) を代入 して、両辺の実部・虚部を比較すれば

p(t) = p(0) cos(ωt) − mωx(0) sin(ωt), x(t) = x(0) cos(ωt) + p(0)

mω sin(ωt) (4.13) と、解くことができる。x, p の両方が同時に求まってしまうところが、この解法の長所である。 (例2)  (連成振動) 相互作用する2つの単振動の問題、すなわちハミルトニアン H(x1, x2, p1, p2) = 1 2(p 2 1+ p22) + ω2 2 (x 2 1+ x22) + γx1x2 (4.14) で記述される運動を、連成振動という。ただし、簡単のため質量 m = 1 とした。運動方程式は ˙x1= ∂H ∂p1 = p1, ˙x2= ∂H ∂p2 = p2, ˙p1= − ∂H ∂x1 = −ω 2x 1− γx2, ˙p2= − ∂H ∂x2 = −ω 2x 2− γx1 であるから、p1, p2を消去して ¨ x1= −ω2x1− γx2, x¨2= −ω2x2− γx1 (4.15) という連立の微分方程式を得る。これを解くには、新しい変数 x = x1+ x2, y = x1− x2 を導入して、 上式を辺々加え、減じればよい。このとき ¨ x = −(ω2+ γ)x, y = −(ω¨ 2− γ)y であるから、ω2x= ω2+ γ, ωy2= ω2− γ とおいて x(t) = x(0) cos(ωxt) + ˙x(0)

ωx sin(ωxt), y(t) = y(0) cos(ωyt) +

˙y(0) ωy sin(ωyt), (4.16) と、解くことができる。もとの変数 x1, x2 に戻すのは、面倒ではあるが初等的であろう。

4.3

電磁気学の方程式

ここでは、電磁気学の方程式を解析力学によって定式化することを考える。まずは、電磁場中の荷電粒 子の運動について復習しておこう。 (1) 電磁場中の荷電粒子の運動 質量 m、電荷 q をもつ荷電粒子は、電場 E、磁場 B の下で、ローレンツ力を受けるので、運動方程式は m¨r = q (E + ˙r × B) (4.17) で与えられる。

(20)

問題 4.1  (静電磁場下の運動) 静電場 E = (E0, 0, 0)、静磁場 B = (0, 0, B0) の下での運動方程式 m ˙v = q (E + v × B) を解け。ただし、初期条件は v(0) = 0(静止状態)とする。まずは、運動方程式を成分で書いてみよ。 (2) ラグランジアン さて、運動方程式 (4.17) を導くようなラグランジアンはどんなものであろうか。そのためには、スカラー ポテンシャル φ とベクトルポテンシャル A を導入すると便利である。 E = −gradφ −∂A ∂t , B = rotA (4.18) これらを用いると、ラグランジアンは L(r, ˙r) = m 2 ˙r 2+ q ˙r · A − qφ (4.19) で与えられることが、以下のようにして確かめられる。 実際、オイラー・ラグランジュの方程式を書いてみると、 d dt µ ∂L ∂ ˙r ¶ = d dt(m˙r + qA) = m¨r + q µ ∂A ∂t + (˙r · ∇)A, ∂L ∂r = −q ∂φ ∂r + q ∂ ∂r(˙r · A) = −q ∂φ ∂r + q ((˙r · ∇)A + ˙r × rotA) であるから、 m¨r = q µ −∂A ∂t − gradφ+ q ˙r × rotA = q (E + ˙r × B) となって、確かにローレンツ力が出てくる。式変形の過程で、公式 d dtA(r, t) = ∂A

∂t + (˙r · ∇)A, grad(a · b) = (a · ∇)b + (b · ∇)a + a × rotb + b × rota (4.20)

を用いた。 問題 4.2  (ゲージ変換) 次の変換(ゲージ変換 (gauge transformation) とよばれる) φ → φ −∂χ ∂t, A → A + gradχ によって、式 (4.18) の電場 E と磁場 B が変わらないことを示せ。 問題 4.3  (ベクトル解析の公式) 式 (4.20) の2番目の等式を確かめよ。 (3) ハミルトニアン 式 (4.19) のラグランジアンからハミルトニアンを導こう。定義によって、一般化された運動量は p = ∂L ∂ ˙r = m˙r + qA (4.21)

(21)

で与えられる。電磁場があるときは p 6= m ˙r となることに注意すること。これから、ハミルトニアンは H(r, p) = ˙r · p − L = ˙r · (m˙r + qA) −³ m 2 ˙r 2+ q ˙r · A − qφ´= m 2 ˙r 2+ qφ = 1 2m(p − qA) 2 + qφ (4.22) となることがわかる。 問題 4.4  (運動方程式) 式 (4.22) のハミルトニアンから正準運動方程式をつくれば、ローレンツの運動方程式 (4.17) が得られるこ とを示せ。 (付録1) 電磁場の運動方程式とラグランジアン 電磁場の運動方程式とは、いわゆるマクスウェルの方程式 ∂D ∂t − rotH = −j, divE = ρ, ∂B ∂t + rotE = 0, divB = 0 (4.23) のことである。ここに、j は電流密度、ρ は電荷密度である。また D = ε0E, H = B/µ0で、ε0 は真空の 誘電率、µ0は真空の透磁率を表わし、光速度 c との間に c2= 1/ε0µ0の関係がある。 これらの方程式を出すようなラグランジアン密度はどんなものであろうか。詳細は省いて結果のみを書 いておくと、独立変数として E, B, φ, A の4つを用いたとき、 L = −1 2 µ ε0E2− 1 µ0B 2 ¶ − ε0E · (∇φ + ˙A) − 1 µ0B · rotA − ρφ + j · A (4.24) がそのラグランジアン密度となる。詳しくは、例えば高橋康「量子力学を学ぶための解析力学入門」(講談 社サイエンティフィク)などを読まれたい。 (付録2) 相対論的粒子に対するラグランジアン 理論物理学 で学ぶように、電磁場のマクスウェル方程式は、ガリレイの相対論ではなく、アインシュタ インの特殊相対論(ローレンツ共変性)に従う方程式である。そこで、粒子の方程式もアインシュタイン の相対論に従うように拡張しよう。相対論的な粒子に対する作用積分は I = −mc2 Z t1 t0 dt r 1 − ˙x2 c2 (4.25) で与えられる。簡単のため空間1次元の場合を書いたが、3次元の場合は ˙x を ˙r とすればよい。粒子速度 が光速度より十分小さい場合は、p1 − ˙x2/c2≈ 1 − ˙x2/2c2を用いて I = Z t1 t0 dt³ m 2 ˙x 2− mc2´ のように、自由粒子のラグランジアンを再現する。第2項は静止エネルギーぶんのシフトであり、運動方 程式には寄与しない。式 (4.25) の変分から d dt à m ˙x p 1 − ˙x2/c2 ! = 0 (4.26) なる相対論的運動方程式を得る。すなわち、運動量は p = m ˙x/p1 − ˙x2/c2 で与えられ、運動方程式は ˙p = 0 となる。

(22)

5

正準変換

5.1

正準変数と変分原理

ラグランジアンとハミルトニアンの間には、L = ˙xp − H の関係があるので、作用積分は I = Z t1 t0 Ldt = Z t1 t0 ( ˙xp − H(x, p)) dt (5.1) と書かれる。そこで、変分 x → x + δx, p → p + δp を行えば、 δI = Z t1 t0 dt ((( ˙x + δ ˙x)(p + δp) − H(x + δx, p + δp)) − ( ˙xp − H(x, p))) = Z t1 t0 dt µ δ ˙xp + ˙xδp −∂H ∂xδx − ∂H ∂pδp ¶  部分積分すると = Z t1 t0 dt µ δp µ ˙x −∂H ∂p− δx µ ˙p +∂H ∂x ¶¶ (5.2) を得る。いつものように、境界条件 δx(t0) = δx(t1) = 0 を用いた。よって、停留条件 δI = 0 を要請すれ ば、ハミルトンの正準運動方程式 ˙x = ∂H ∂p, ˙p = − ∂H ∂x (5.3) が導かれる。

5.2

正準変換

変数変換 (x, p) → (X, P ) によって、ハミルトニアンも変換 H(x, p) → H0(X, P ) を受けるが、このとき ˙ X = ∂H 0 ∂P , P = −˙ ∂H0 ∂X (5.4) が成り立つような変換を、正準変換 (canonical transformation) という。つまり、正準運動方程式が形式 的に変わらないものを、正準変換というのである。 正準変換を構成するには、母関数 (generating function) を用いるのが便利である。これは、 ラグランジアンに時間の全微分を加えても、作用積分の変分(従って運動方程式)は変わらない という性質を利用するものである。 L = ˙xp − H(x, p) = ˙XP − H0(X, P ) +dW dt (5.5) となるとき、W を(正準変換の)母関数という。 例えば、W (x, P, t) とするとき、 dW dt = ∂W ∂t + ∂W ∂x ˙x + ∂W ∂P P˙ を式 (5.5) に代入すると、 ˙xp − H = ˙XP − H0+∂W ∂t + ∂W ∂x ˙x + ∂W ∂P P˙

(23)

となるが、 ˙XP = d dt(XP ) − X ˙P に注意して、両辺を比較すれば p = ∂W ∂x , X = ∂W ∂P , H 0= H + ∂W ∂t (5.6) を得る。ここで、時間の全微分¡dtd(XP ) の項¢は無視できることを用いた。 (例)  回転座標系 座標系 (x, y) を、角速度 Ω で回転する回転座標系 (X, Y ) に移す変換は

x = X cos(Ωt) + Y sin(Ωt), y = −X sin(Ωt) + Y cos(Ωt) (5.7)

であるから、これを出すような母関数 W (x, y, PX, PY, t) は

W = PX(x cos(Ωt) − y sin(Ωt)) + PY (x sin(Ωt) + y cos(Ωt)) (5.8)

で与えられる。実際、このとき式 (5.6) から X = ∂W ∂PX = x cos(Ωt) − y sin(Ωt), Y = ∂W ∂PY = x sin(Ωt) + y cos(Ωt), (5.9) px = ∂W ∂x = PXcos(Ωt) + PY sin(Ωt), py = ∂W

∂y = −PXsin(Ωt) + PY cos(Ωt) (5.10)

となり、新しいハミルトニアンは、式 (5.6) によって ∂W/∂t を計算して H0 = H + Ω (XPY − Y PX) (5.11) となる。ただし、右辺の H には式 (5.7)、(5.10) を用いて、新しい変数に変換するものとする。右辺第2 項は角運動量の Z 成分 LZ を用いて、ΩLZ と書けることに注意せよ。 問題 5.1  (フーコーの振り子) 地球の自転(角振動数 Ω)が振り子の運動に及ぼす影響を調べよう。地球の回転とともに運動する座標系 に移るには、前述の例の正準変換を施せばよい。このとき、ハミルトニアン H(x, y, px, py) = 1 2m ¡ p2x+ p2y ¢ +mω 2 2 ¡ x2+ y2¢ は、どう変換されるか? また、新しい変数 X, Y に対する運動方程式をつくって、それを解け。

5.3

無限小変換と保存則

前節でみたように、正準変換 (x, p) → (X, P ) は、母関数 W (x, P, t) によって生成される。とくに、 W = xP  のときは  X = ∂W ∂P = x, p = ∂W ∂x = P (5.12) であるから、母関数 W = xP は恒等変換を生成することがわかる。 そこで、² を微小パラメータとして、恒等変換と少しだけ違う正準変換 W = xP + ²G(x, P ) (5.13) を考える。このような G を無限小変換の生成子 (generator) という。一般には、G の引数は ² のゼロ次を とって、G(x, p) と書くのが普通であるが、論理を明確にするため、しばらくの間 P を用いる。

(24)

式 (5.6) によって、このとき X = x + ²∂G ∂P, p = P + ² ∂G ∂x となる。従って、G による無限小の変数変換 X = x + ²∂G ∂p, P = p − ² ∂G ∂x (5.14) を得る。ここで、先ほど述べた理由で G の P 微分を p 微分に置き換えたことに注意してほしい。 無限小変換の典型的な例をいくつかあげておこう。 空間並進 空間並進 x → X = x + ² を生成する母関数は、W = xP + ²P である。実際、このとき X = ∂W ∂P = x + ², p = ∂W ∂x = P (5.15) となる。従って、空間並進の生成子は運動量である。 空間回転 空間回転の無限小変換は Ω ≡ ² を小さいとして、式 (5.9) から x → X = x − ²y, y → Y = y + ²x であ るが、G = xPY − yPX、すなわち W = xPX+ yPY + ²(xPY − yPX) とすれば X = ∂W ∂PX = x − ²y, Y = ∂W ∂PY = y + ²x, (5.16) px = ∂W ∂x = PX+ ²PY, py= ∂W ∂y = PY − ²PX (5.17) と再現できる。² の0次をとって、G = xpy− ypx= Lz すなわち、空間回転の生成子は角運動量である。 時間並進 時間並進 t → T = t + ² を生成する母関数は x(t + ²) − x(t) = ² ˙x = ²∂H ∂p, p(t + ²) − p(t) = ² ˙p = −² ∂H ∂x (5.18) であるから、時間並進の生成子はハミルトニアンである。 ネーターの定理 後に、第6章2節で示すように、 ハミルトニアンが無限小変換 G で不変ならば、G は保存する という定理(ネーターの定理)が成り立つ。従って、上にあげた例から 1.  空間が一様(空間並進対称)ならば、運動量が保存する。 2.  空間が等方的(空間回転対称)ならば、角運動量が保存する。 3.  時間が一様(時間並進対称)ならば、エネルギーが保存する。 が成り立つことがわかる。

(25)

6

ポアソン括弧

6.1

ポアソン括弧とその性質

正準変数を x, p とする。このとき x, p の任意関数 A(x, p), B(x, p) に対して、 {A, B} = ∂A ∂x ∂B ∂p − ∂A ∂p ∂B ∂x (6.1) を、ポアソン括弧 (Poisson bracket) という。 正準変数が x1, x2, · · · , xN, p1, p2, · · · , pN のように多自由度の場合には、 {A, B} = N X j=1 µ ∂A ∂xj ∂B ∂pj − ∂A ∂pj ∂B ∂xj ¶ (6.2) とすればよい。 (例)  次の結果は定義からすぐに出てくる。 {x, x} = 0, {x, p} = 1, {p, x} = −1, {p, p} = 0 (6.3) 同様にして、多自由度の場合は {xj, xk} = 0, {xj, pk} = δjk, {pj, xk} = −δjk, {pj, pk} = 0 (6.4) である。 ポアソン括弧は正準変換で変わらないことを示しておこう。無限小変換の生成子を G とすると、式 (5.14) から X = x + ²∂G ∂p, P = p − ² ∂G ∂x (6.5) であるから、 ∂ ∂x = ∂X ∂x ∂ ∂X + ∂P ∂x ∂ ∂P = µ 1 + ²∂ 2G ∂x∂p∂ ∂X − ² ∂2G ∂x2 ∂ ∂P, ∂ ∂p = ∂X ∂p ∂ ∂X + ∂P ∂p ∂ ∂P = ² ∂2G ∂p2 ∂ ∂X + µ 1 − ²∂2G ∂x∂p∂ ∂P を用いて、 ∂A ∂x ∂B ∂p − ∂A ∂p ∂B ∂x = µµ 1 + ²∂ 2G ∂x∂p∂A ∂X − ² ∂2G ∂x2 ∂A ∂P· µ ²∂ 2G ∂p2 ∂B ∂X + µ 1 − ²∂ 2G ∂x∂p∂B ∂P− µ ²∂ 2G ∂p2 ∂A ∂X + µ 1 − ²∂ 2G ∂x∂p∂A ∂P· µµ 1 + ²∂ 2G ∂x∂p∂B ∂X − ² ∂2G ∂x2 ∂B ∂P ¶ = ∂A ∂X ∂B ∂P − ∂A ∂P ∂B ∂X + O(² 2) (6.6) を得る。ここで、² の1次の項は打ち消し合うことを確認せよ。 ポアソン括弧の諸性質 ポアソン括弧は以下の性質をもつ。 1.   {A, B} = −{B, A}

(26)

3.   {A, {B, C}} + {B, {C, A}} + {C, {A, B}} = 0 例えば、1番目の性質は次のように示される。 {A, B} =∂A ∂x ∂B ∂p − ∂B ∂x ∂A ∂p = − µ ∂B ∂x ∂A ∂p − ∂A ∂x ∂B ∂p= −{B, A} 他の性質も同様にして示されることを確かめよ。 これらの性質を使えば、定義にまで遡らずに、ポアソン括弧が計算される。例えば、 {x2, p} = {x, p}x + x{x, p} = 2x,  一般に  {xn, p} = nxn−1 {x, p2} = {x, p}p + p{x, p} = 2p,  一般に  {x, pn} = npn−1 となる。ここで、式 (6.3) を用いた。一般の n の場合は数学的帰納法を用いればよい。 問題 6.1  (ポアソン括弧の分配則) ポアソン括弧の性質2(分配則)を証明せよ。また、それを利用して {x2, p2} を計算せよ。

6.2

正準運動方程式とポアソン括弧

x, p の任意関数 A(x, p, t) の時間発展は d dtA(x, p, t) = ∂A ∂t + ∂A ∂x ˙x + ∂A ∂p ˙p = ∂A ∂t + ∂A ∂x ∂H ∂p − ∂A ∂p ∂H ∂x = ∂A ∂t + {A, H} (6.7) と、ポアソン括弧を用いて表わすことができる。ここで、正準運動方程式を用いた。とくに、A が時間に あらわに (explicitly) 依存しない場合には、∂A/∂t = 0 ゆえ dA dt = {A, H} (6.8) と、簡単に表わされる。 問題 6.2  (正準変換とポアソン括弧) 正準変換 (x, p) → (X, P ) の無限小生成子を G とすると、式 (6.5) から X = x + ²∂G ∂p, P = p − ² ∂G ∂x である。このとき、以下のことを示せ。 F (X, P ) = F (x, p) + ²{F, G} ネーターの定理 問題 6.2 で、とくに、F として F = H (ハミルトニアン)とすれば、 H(X, P ) = H(x, p) + ²{H, G} = H(x, p) − ²dG dt が成り立つ(式 (6.8) を用いた)。よって、 無限小変換の生成子 G がハミルトニアンを変えないならば、G は保存量である。 これをネーターの定理という。例えば、中心力系のハミルトニアンは、空間回転について不変であるから、 その無限小演算子である角運動量は保存量になるのである。

(27)

6.3

ポアソン括弧の応用

ポアソン括弧を用いると議論が簡単になる。典型的な応用例をいくつかみておこう。 例1 単振動 質量 m = 1 の単振動のハミルトニアンは H = 1 2 ¡ p2+ ω2x2¢ (6.9) で与えられる。このとき、 a = √1 2ω(ωx + ip) , a ∗=√1 2ω(ωx − ip) (6.10) とおくと、これらの間のポアソン括弧は {a, a∗} = 1 2ω{ωx + ip, ωx − ip} = 1

2ω(−iω{x, p} + iω{p, x}) = −i, {a, a} = 0, {a

∗, a∗} = 0 となる。さらに、ハミルトニアンは H = ωa∗a (6.11) と表わされるので、a, a∗ の運動方程式は da dt = {a, H} = ω{a, a ∗a} = −iωa, da∗ dt = {a ∗, H} = ω{a∗, a∗a} = iωa∗ (6.12) となり、その解は容易に求まる。

a(t) = a(0)e−iωt, a∗(t) = a∗(0)eiωt (6.13)

第4章2節の例1と同様に、この式の実部・虚部を比較すれば、解が求まる。 例2 角運動量のポアソン括弧 角運動量 L = (Lx, Ly, Lz) は、 Lx= ypz− zpy, Ly= zpx− xpz, Lz= xpy− ypx (6.14) で定義される(式 (2.10) を参照)。これらの間のポアソン括弧を計算すると、 {Lx, Ly} = {ypz− zpy, zpx− xpz} = y{pz, z}px+ x{z, pz}py = xpy− ypx= Lz, {Ly, Lz} = {zpx− xpz, xpy− ypx} = z{px, x}py+ y{x, px}pz= ypz− zpy = Lx, (6.15) {Lz, Lx} = {xpy− ypx, ypz− zpy} = x{py, y}pz+ z{y, py}px= zpx− xpz= Ly, を得る。添え字がサイクリックになっている点に注意してほしい。 問題 6.3  (角運動量の代数) L±= Lx± iLy, L2= L2x+ L2y+ L2z とおくとき、 {L±, Lz} = ±iL±, {L+, L−} = −2iLz, {L2, Lx} = {L2, Ly} = {L2, Lz} = 0 を示せ。

(28)

7

位相空間

7.1

位相空間

一般化された座標 (x1, x2, · · · , xN)、および一般化された運動量 (p1, p2, · · · , pN) の組みで出来た空間 (x1, · · · , xN, p1, · · · , pN) を、自由度 N の位相空間 (phase space) という。従って、自由度 N の位相空間 の次元は 2N である。 例 単振動 単振動のハミルトニアンは H = p2 2m+ mω2 2 x 2 (7.1) である。よって、エネルギー保存則は p2 2m+ mω2 2 x 2= E (7.2) となる。これはこの力学系の軌道を表わし、位相空間 (x, p) 内の曲線(楕円)を描く。 一般に、自由度 N の正準力学系の等エネルギー面は、2N 次元の位相空間内で 2N − 1 次元の超曲面を 描くのである。

7.2

リュウヴィルの定理

定理 力学系 (x, p) の正準変換 (x, p) → (X, P ) によって、位相空間の体積要素は変わらない。 dXdP = dxdp  すなわち ∂(X, P ) ∂(x, p) = 1 (7.3) (証明) 正準変換を生成する無限小変換を G とすると、式 (6.5) から X − x = ²∂G ∂p, P − p = −² ∂G ∂x (7.4) であるから、 ∂(X, P ) ∂(x, p) = ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ∂X ∂x ∂X ∂p ∂P ∂x ∂P∂p ¯ ¯ ¯ ¯ ¯= ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ 1 + ²∂x∂p∂2G ²∂∂p2G2 −²∂2G ∂x2 1 − ²∂ 2G ∂p∂x ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ = 1 + ² µ ∂2G ∂x∂p− ∂2G ∂p∂x+ O(²2) = 1 + O(²2) (7.5) が成り立つ。よって、証明された。 とくに、(x, p) の時間発展は、ハミルトニアンによる正準変換に他ならないから、G = H として、定理 から任意の T に対して dx(t + T )dp(t + T ) = dx(t)dp(t) (7.6) が成り立つ。すなわち、 位相空間の体積は時間発展で変わらない。 これをリュウヴィルの定理という。これは統計力学を基礎づける重要な定理のひとつである(補充問題 [8] 参照)。

(29)

7.3

断熱不変量

前項のリュウヴィルの定理以外にも、位相空間はさまざまな不変性をもっている。例えば、周期運動す る系の場合、作用変数 (action variable) J = I pdx (7.7) は、正準変換に対して不変になる。ここで、積分H はエネルギー = 一定のもとで、周期系の1周期にわ たって積分することを意味する。すなわち、 H(x, p) = E (7.8) を p について解いて、p を x と E の関数として求めたものを、式 (7.7) に代入するのである。 例 単振動 単振動の場合、エネルギー保存則は p2 2m+ mω2 2 x 2= E (7.9)

であるから、この場合の作用積分 (7.7) は楕円の面積に等しく、J = π ·√2mE ·p2E/mω2= 2πE/ω と

なる。 前期量子論において、この量 J が作用の次元をもつプランク定数 h の整数倍(正確には (整数 +1/2) 倍)の値を取る、というボーアの量子化条件が重要な役割を果たした。 En= µ n +1 2 ¶ ¯hω, (¯h ≡ h/2π) (7.10) は、調和振動子の量子力学的エネルギー準位として有名な式である。 問題 7.1  (断熱不変量) 重力加速度 g の下での質量 m の振り子の運動(ひもの長さ `)を考える。振幅 A が微小であれば、これ は角振動数が ω =pg/` の単振動と等価である。ここで、ひもを ゆっくりと 引いてその長さを変化させ る(` → ` + δ`)と、角振動数 ω や振幅 A もそれに応じてゆっくりと変化するであろう(断熱変化)。こ のとき、エネルギー保存則はもはや成立していない(δE 6= 0)。それぞれの変化率、δω/ω、δA/A、δE/E を δ` の1次まで求めよ。その結果から、δ(E/ω) = 0 を示せ。これによって E/ω は時間的に不変に保た れることがわかる。これを断熱不変量 (adiabatic invariant) という。 この結果は、例で述べた作用変数 J = 2πE/ω の不変性の別証明となっている。

参照

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