環 境 問題 と企業経営 会計
特 にiド
イ ツ企 業 の 対 応 を 中 心 と して
柳
田
仁
目 次 は じめ に 1現 代 に お け る環 境 問 題 の特 質 IIド イ ツ政 府 及 び企 業 の環 境 問題 へ の対 応 III企 業 会 計 と環 境 問 題 お わ りには
じ
め
に
この2,30年 間 に,消 費 者,企 業,地 方 自 治 体,国,国 際 社 会 等 に お い て 環 境 問 題 の 重 要 性 が 声 高 に 叫 ば れ る よ う に な っ た 。 大 き な 環 境 事 故 とな っ た も の と して イ タ リア ・セ ベ ソ の 化 学 工 場 事 故,イ ン ド ・ボ パ ー ル の 化 学 工 場 爆 発,旧 ソ連 ・チ ェ ル ノ ブ イ リ原 子 力 発 電 所 事 故,ス イ ス ・バ ー ゼ ル の 有 害 化 学 物 質 の 河 川 流 出,さ ら に は ア メ リ カ ・ア ラ ス カ 沖 の 原 油 流 出 事 故,最 近 で は イ ラ ク 湾 岸 戦 争 に よ る原 油 流 出 か ら生 じ た海 洋 汚 染 等 が あ る。 特 に1989年3月,ア ラ ス カ 沖 で エ ク ソ ン社 の タ ン カ ー 「バ ル デ ィ ー ズ 号 」 か ら流 出 し た 原 油 で,2,000kmに 及 ぶ 海 岸 線 が 汚 染 さ れ た 事 故 で は,同 社 は そ の 処 理 の た め に1,000億 円 の 費 用 と1年 以 上 の 期 間 を 要 し た 。 こ の 大 事 故 29を契 機 に,企 業 の守 るべ き環 境 原 則 を この タ ンカ ー の名 を とって 「バ ル デ ィ ー ズ原 則 」 として天 然 資 源 の持 続 的 な活 用,廃 棄 物 処 理 とそ の 削減,損 害 賠 償,情 報 公 開,監 査 の公 表 等10原 則 か ら成 る もの を定 め,企 業 の環 境 責任 を 問 う運 動 が起 こ って い る。 本 稿 で は,特 に企 業 経 営 と環 境 問題 に焦 点 を当 て検 討 す る。軽 油 を使 い黒 い排 気 ガ ス を大 量 に 出 して い る廃 品 回収 自動 車 で も 「地 球 に や さ し く」 「地 球 を大 切 に」 と書 い た ス テ ッカ ー を貼 りつ け街 を走 っ て い る。"Savethe earth"と い う文 字 も見 か け る。 こ ど も向 けか ら一 般 専 門書 まで4,288点 を75 項 目 に分 類 ・収 録 した,地 球 と人 類 を考 え る初 め て の 網 羅 的 環 境 図書 目録 「エ コ ブ ック ガ イ ド'92」等 も出版 され る まで に な り,書 店 に は環 境 問 題 に関 す る書 物 が あ ふ れ て い る。 環 境 問題 を単 な るか け声 だ け の広 報 宣伝 の た め の 流 行 語 に終 らせ て はな らな い 。 本 稿 で は,環 境 問題 が どの よ うな特 質 を もって い るか,具 体 的 に,環 境 先 進 国 ドイ ツ にお い て企 業 経 営 との 関 係 で どの よ うな規 制 が と られ,そ れ に た い して企 業 が どの よ う に対 応 して い るか,そ の よ うな環 境 問題 に企 業 会計 が どの よ う にか か わ り,ど の よ うに対 応 して い こ う と して い るか に関 し論 じる。
1現
代 に お け る環 境 問 題 の特 質
現 代 にお け る環 境 問題 は地 球 規 模 で あ り,人 類 及 び その 他 の全 生 物 にか か わ る問題 で あ る。 現 代 にお け る環 境 問題 を過 去 にお け る公害 問題 と対 比 しな が らその 特質 を 述 べ れ ば,以 下 の よ うで あ る。 第1に,従 来 の公 害 問題 で は,有 形 無 形 の有 害物 質 の周 辺 へ の拡 散 に よ っ て生 ず る こ とが 多 か った が,環 境 問題 にお い て は,問 題 とな る物 質 そ れ 自体 が 必 ず し も有 害 とは限 らな い。 第2に,過 去 の公 害 問題 にお い て は,そ の原 因 を解 明 す る こ とが そ の解 決策 に つ な が る こ とが 多 か っ た が,環 境 問題 にお い て は,加 害 者 と被 害 者 とが はっ き り と して い な い た め に,そ れ な りの対 応 が とれ な い。CO2の 排 出 源 は, 工 場 ばか りで な くs我 々 が 日常 生 活 で利 用 す る冷 暖 房 装 置,自 動 車 か ら も生 じ る。 第3に,環 境 問題 イ コー ル エ ネル ギ ー 問題 と言 わ れ る ほ ど両 者 は密 接 不 可 分 な関 係 にあ る。 過 去 の 公害 対 策 にお い て は,代 替 品 の 開発 を基 本 的 な対 策 法 として きた が,例 えば,CO2問 題 にお い て 直 接 的 なCO2の 排 出 規 制 は,エ ネ ル ギ ー の抑 制 につ な が る。 これ は人類 の生 活 水 準 の 向上 や産 業 活 動 の発 展 を ス トップ させ る こ とにな り,実 際 問題 と して は非 常 に 困難 な こ と とな る。 第4に,か つ て の公 害 問題 は,限 られ た地域 の問 題 で あ っ た が,現 代 にお け る環 境 問 題 は広 範 囲,か つ地 球 規 模 で あ る。 第5に,以 前 の公 害 問題 の よ うにあ る産 業 の特 定 の プ ロ セ ス を改 良 ・改 善 す れ ば問 題 が 解 決 す る とい う よ うな 単純 な もの で は な く,現 代 の環 境 問題 に 1) 関 して は科 学 的 に解 明 され な い部 分 が 多数 あ る。 工 業 化 地 域 の拡 大,人 口増 加,異 常 気 象 等 に よ っ て地 球 環境 は,ま す ます 悪化 して い る。 現 代 まで に注 目の 的 とな って い る地 球 環境 問 題 の主 な もの と して は,以 下 の ものが あ る。 (1)地 球 温 暖 化 現 象 人 間 の 活 動 の結 果,排 出 され る温 室 効 果 ガ ス に よ る温 暖 化 現 象 が 最 も深 刻 で あ り,エ ネ ル ギ ー 政 策,CFCそ の他 オ ゾ ン破 壊 物 質 の規 制 等 と大 い に か か わ って い る。 (2)オ ゾ ン層 の破 壊 CFCそ の他 ハ ロ カ ー ボ ン類 の生 産 と利 用 に よ っ て オ ゾ ン層 が 破 壊 され, 有 害 な紫外 線 の増 加 で 生物 の細 胞 内 の核 酸 が傷 つ け られ,病 気 ・障 害 が 頻 発 す る。 (3)酸 性 雨被 害 の 増加 環境問題と企業経営会計31
酸 性 度 の 強 い 降 雨(pH4以 上)に よ っ て 森 林,田 畑,建 造 物,水,人 体 に深刻 な被 害 を与 え る。 (4)海 洋 ・河 川 汚 染 人類 が 排 出 す る汚 染 物 質 が海 洋 ・河 川 に急 増 し,自 然 浄 化 作 用 が追 い つ か な くな っ た。 ⑤ 廃 棄 物 の爆 発 的 増 加 生 活 の多 様 化 に伴 う一 般 廃 棄 物 の増 加,活 発 な産 業 活 動 の結 果 生 ず る産 業 廃 棄物 の激 増 で,廃 棄 物 処 分 の場 所 の確 保 が 困難 とな り,い わ ゆ る 「ゴ ミ問 題 」 が 緊急 の課 題 とな って い る。 産 業 物 問題 に関 して は,こ の他 に有 害廃 棄 物 の処 理 ・越 境 移 転 の問 題 もあ る。 ⑥ そ の他 の地 球 環 境 問題 熱 帯 雨 林 の減 少,砂 漠 化 の進 行,野 生生 物 の減 少,人 口政策,南 北 問題, 東 欧 の環 境 再 生 等 の 問題 が 考 え られ る。 また更 に,環 境 問題 をむ ず か し くして い る の は,こ れ らの問題 が相 互 にか 2) か わ りあ って複 雑 な関係 を生 み出 して い る こ とで あ る。
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イ ツ政 府 及 び企 業 の環 境 問 題 へ の 対応
パ リG7ア ル シ ュ サ ミ ッ ト(1989年7月)は,環 境 問 題 に 焦 点 を 当 て た 画 期 的 な 経 済 宣 言 で あ っ た が,宣 言 だ け で 終 わ り,政 策 や 新 し い 取 組 み が な さ れ な い の で は な い か と い う懸 念 が あ っ た 。 そ こでG7ヶ 国 が 具 体 的 に ど の よ う な行 動 を と っ た か を評 価 す る 作 業 を共 同 で 行 っ た 。 まず,環 境 問 題 を6つ の 項 目 に分 け,す べ て の 項 目 に つ き,一 定 の 基 準 とな る 設 問 を 設 け 採 点 し た 。 こ れ ら は 「環 境 サ ミ ッ ト'90」 と 銘 打 ち,G7の リ ー ダ ー が ヒ ュ ー ス ト ン ・サ ミ ッ トで 顔 を合 わ せ る1日 前 に,記 者 会 見 で 発 表 され た 。 環 境 サ ミ ッ ト'90は,環 境 保 護 団 体 が 共 同 で 先 進7ヶ 国 の 環 境 政 策 と行 動 を 比 較 す る 作 3} 業 を 行 っ た 最 初 の 試 み で あ る 。この 試 み で トッ プ の成 績 を と っ た の は ドイ ツ で あ っ た 。 G7環 境 サ ミ ッ ト成 績 表(1990年) ウ ェイ ト 西 ドイ ツ フ ラ ンス イ ギ リス カナダ ア メ リカ 日 本 イ タ リア 地球温暖化 20 14 10 6 6 6 6 10 生物の多様性の保護 20 12 10 8 8 12 4 4 海洋汚染 15 9 fi 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5 人 口政策 Za 14 10 10 12 4 12 4 東欧の環境再生 1Q 8 6 5 2 s 4 」 南北問題 15 fi 6 6 6 s 6 3 100 63 48 42.5 41.5 41.5 39.5 33.5 注:最 終 的 な 個 々 の 問 題 と国 別 の ス コ ア は 各 ウ ェ イ トで 調 整 し た 上 で ,100点 満 点 で 評 価 さ れ た 。 全 体 の ス コ ア を計 算 す る 際 に,地 球 温 暖 化,生 物 の 多 様 性 の 保 護 ,人 口政 策 の そ れ ぞ れ に20%の ウ ェ イ トが 与 え られ,海 洋 汚 染 と南 北 問 題 に そ れ ぞ れ15%が , そ し て 東 欧 の 環 境 再 生 に10%が 与 え ら れ た 。
順位表
#1西 ド イ ツ ー 良 #2フ ラ ン ス ー 普 通 #3イ ギ リ ス ー 不 可 #4カ ナ ダ ー 不 可 #5ア メ リ カ ー一不 可 #6日 本 一 不 可 #7イ タ リ ア ー(最)不 可 出 所:地 球 の 友 編 「市 民 が 地 球 を 採 点 し たm境 サ ミ ッ ト'90-」 岩 波 ブ ック レ ッ トNo216 1.ド イ ツ 包 装廃 棄 物 回避 に関 す る政 令 (1)政 令 の概要 1991年6月21日 「包 装 廃 棄 物 回避 に関 す る政 令 」 が公 布 され た 。 同政 令 の 意 図 す る と こ ろ は,リ サ イ クル の 強 力 な推進,有 限 な資 源 の ム ダ遣 い を押 え, 環 境 保 護 を図 る点 に あ る。91年12月1日 か ら実施 され る輸 送 包 装 材 の再 利 用 と再 生 は公布 か ら発効 まで5ヶ 月 の猶 予 期 間 しか なか っ た。 同 政 令 は本 質 的 環境問題 と企業経営会計33に販 売,二 重,輸 送 包 装 の リサ イ クル に関 し ドイ ツ国 内 の業 者 を対 象 と して い るが,海 外 輸 出 企 業 も,ド イ ツ国 内 か らの要 請 に対 応 しな け れ ば,商 品 の 受取 りを拒 否 され る場 合 も想 定 され,ビ ジ ネ ス面 で の影 響 も大 きい。 我 々,日 常 生 活 に お い て購 入 商 品 や贈 り物 か ら中味 を取 り出 して み る とあ ま りに多 くの包 み紙 が使 用 され て い る の に驚 き,半 分 はゴ ミを購 入 した よ う な気 持 ち に さ え な る こ とが あ る。 ドイ ツ で の 調 査 の結 果,年 間 発 生 総 量 約 3,200万 トン とい わ れ る家 庭 廃 棄 物 と産 業 廃 棄 物 の う ち約3分 の1,ボ リュ ウム か らみ る と約 半 分 が 包 装 材 の廃 棄 物 で あ り,そ の処 理 が早 急 の課 題 で あ り,法 的 規 制 を強 化 す る こ とが 緊 急 の 問題 とされ る。 ゴ ミは,で きるだ け始 め か ら出 さ ない こ とだ が,製 品 の 包装 は流 通 過程 に お い て 品質 保 護 の た め欠 くこ とので きな い もの もあ るので,全 て の包 装 を禁 止 す るセ とは非現 実 的 で あ る。 ゴ ミ処 理活 動 の 目的 に合 う環 境 に優 しい資 源 の再 活 用 に寄 与 で き る よ うな 包 装 材 を生 産 す る必 要 が 生 じ るが,何 を基 準 にす るか に関 して ドイ ツ連 邦 参 院 は,1991年4月19口 に環 境 保 護 に有 害 で生 態 系破 壊 につ なが る疑 いの あ る 包 装 材 の リス トア ップ を要求 し,更 に,環 境 適 性 検 査 の設 置,ま た1991年12 月1日 まで に その よ うな不 良 包 装 材 の使 用 禁 止 項 目を現行 の包 装 材規 制 令 に 追 加 す る よ うに政 府 に要 請 して い る。 同時 に ゴ ミをで き るだ け少 な くす るた め に,包 装 の程 度 を製 品 保 護 の た め必 要 最 低 限 に抑 え るた め の規 制 も考 えな くて は な らな いが,こ の点 に関 して も基 準 の設 定 はむ ず か しい の で,実 際 に 法 律 が 施 行 され る ときの一 貫 性 が強 く望 まれ る。 具 体 的 に,将 来,ゴ ミの絶 対 量 を少 な くす る た め に容器 の重 複利 用 や包 装 材 の再 利 用 を ます ます促 進 させ る こ と,再 利 用 不 能 な場 合 に は,素 材 を利 用 して他 の 用途 の材 料 に再 生 す る こ とで あ る。 いず れ にせ よ,廃 棄 物 の焼 却 処 理 及 び 投 棄処 理 を制 限 して い く方 向性 を明 確 に打 ち 出 して い る。 この政 令 の適 用 対 象 者 とな るの は,ド イ ツ国 内企 業 で,(a)包 装 に直 接 使 用 され る資 材 の包 装 素 材 生 産 者 及 び包 装 材 料 生 産 者,(b)包 装 に直 接使 用 され る
資 材 の 包 装 され た製 品 の販 売 業 者(含 通 信 販 売 業 者),(c)輸 入 業 者,更 に, レ ス トラ ン,フ ァー ス トフー ドチ ェー ン,屋 台 等 も含 む。 同 政 令 第3条 で は,対 象 とな る包 装 材 を販 売,二 重,輸 送 の各 段 階 で使 用 され る もの に 区分 して,具 体 例 を挙 げて い る。 A.販 売 包 装 販 売 包装 材 は,1993年1月1日 以 降,そ の包 装 を使 用 す る商 品 の生 産 者 と 販 売 業 者 が 引 き取 る業務 が あ り,再 利 用 か,再 生 す るか いず れ か を選 択 す る 必 要 が あ る。 販 売 包 装 材 とは,最 終 消費 者 が 購 入 商 品 を輸 送 し,消 費 す るか,使 用 し始 め る こ とに よ って そ の機 能 を終 え る もの を指 し,例 えば,カ ップ,袋,缶, バ ケ ツ,樽,ビ ン,手 堤,袋 等 を い う。 これ は,最 終 消 費 者 に よ る輸 送 の た め の もの,購 入 商 品 の消 費 及 び使 用 開 始 まで の利 用 の た め の もの に分 け る こ とが で きる。 B.二 重 包 装 二重 包 装 は,1992年4月1日 か ら小 売 店 が準 備 した容 器 に よ る回 収 が 開始 され,ZDFニ ュ ー ス で もそ の様 子 が 紹 介 され た 。 流 通 業 者 は,二 重 包 装 材 を再 利 用 す るか,素 材 の再 生 を実 施 しな けれ ば な らな い。販 売 包 装 を含 む二 重 包 装 材 に は ブ リス ター,ホ イル,段 ボ ー ル,そ の他 類 似 の補 助 的 な包 装 材 が あ る。 二 重 包 装 は}(a)セ ル フサ ー ビス方 式 を可 能 に す る こ と,(b)盗 難 防 止,(c)宣 伝 の役 割 とい う機 能 を持 ち,商 品 の20%が 二 重 に包 まれ て い る な らば同包 装 材 と見 な され る。 これ らは飲 料 容 器 の よ うに 回収 義 務 の免 除 は ない 。 流 通 部 門 で は,で き るだ け二 重 包 装 を制 限 して い くこ とが急 務 とされ てい る。 C.輸 送 包 装 1991年12月1日 か ら は,生 産 者 も流通 業 者 も輸 送 包 装 材 を回収,再 利 用, 再 生 しな けれ ば な らな い。 以 後,輸 送 包 装 材 は公 共,民 間 の焼 却 シス テ ム を 環境問題 と企業経営会計35
利 用 し た り,投 棄 し て は な ら な い 。 輸 送 包 装 材 は,輸 送 中 の 商 品 を保 護 し, 商 品 の 落 下,横 転 に よ る人 的,物 的 損 害 の 発 生 を 防 止 す る 目 的 で 生 産 者 か ら 販 売 業 者 ま で の 区 間 に使 用 さ れ る。 例 え ば,樽,缶,箱,袋,パ レ ッ ト,段 ボ ー ル 箱,発 泡 プ ラ ス チ ッ ク梱 包 材,収 縮 シ ー トな い し類 似 の梱 包 材 等 が あ る。 輸 送 包 装 材 は,(a)流 通 業 者 まで の 包 装 材,(b)最 終 消 費 者 まで の 包 装 材 の2 種 類 が あ り,販 売 包 装 材 と の 明 確 な 区 分 境 界 を判 断 す る こ とが 難iし い 場 合 も あ る 。 D.デ ポ ジ ッ ト制 1993年1月1日 か ら使 い 捨 て の 飲 料 容 器,洗 濯 ・洗 浄 剤 容 器,ラ テ ッ ク ス ペ イ ン ト容 器 に つ い て,以 下 の よ う な 預 か り金 徴 収 義 務 が 課 せ られ る。 容 器0.2リ ッ トル 以 上 →0.5DM 容 器1.5〃 →1〃 容 器2キ ロ グ ラ ム 以 上 の ラ テ ッ ク ス ペ イ ン ト容 器 →2〃 最 終 消 費 者 に容 器 が 渡 る ま で の す べ て の 流 通 過 程 に お い て,販 売 業 者 は, こ の 預 か り金 を徴 収 し な け れ ば な ら な い 。 しか し,こ の デ ポ ジ ッ ト制 に つ い て は例 外 が あ る。 消 費 者 の 便 利 さ と企 業 の 効 率 性 を考 慮 し た場 合,そ れ ぞ れ の 小 売 店 で 容 器 を 回 収 す る こ と は ム ダ が 多 い 。 従 っ て,生 産 者 及 び 流 通 業 者 が デ ュ ア ル シ ス テ ム ドイ チ ュ ラ ン ド社 (DSD)の よ う な 回 収 シ ス テ ム に 参 加 し て い る な ら ば,デ ポ ジ ッ ト制 の 実 施 は免 除 さ れ る 。 (2)デ ュ アル シ ス テム ドイチ ェラ ン ド(DualesSystemDeutschland) 販 売 ・二 重 包 装 材 も い ず れ リサ イ ク ル して い く こ と に な る。 そ れ らの 包 装 材 を そ の 都 度,流 通 業 者 か ら生 産 業 者(ド イ ツ 国 内)に 返 送 し て い た の で は 非 効 率 で あ る。 こ こで 実 質 的 に リサ イ ク ル の 受 け皿 と な るDSD及 び 同 社 と 契 約 関 係 に あ る イ ン タ ー ゼm社 を は じ めOrganisationfurWertstoffen-sorgungGmbH;VGKGmbH;ReCartonGmbHと い っ た 関 連 組 織 が あ る 。
政 令施 行 に と もな い,消 費 材 産 業,包 装 材 製 造 業,食 品小 売 業 の 当該 産 業 部 門 で は 「デ ュ ア ル シス テ ム」 を新 た な コ ン セ プ トと して導 入 した。 こ の コ ンセ プ トに よ る と,包 装 材 は最終 消 費 者 の近 くで 回収 され た後,選 別,そ し て再 利 用 へ と振 り分 け られ る。 そ の 目的 は,特 に都 市 部 と地 方 で 深刻 な問 題 とな っ て い る包 装 廃 棄 物 の徹 底 的 な回避 ・抑 制 と減 量 化 で あ る。 問題 の解 決 にあ た って,常 に重 要 視 され る こ とは生 態 系上 ,高 い効 果 をあ げ るだ けで な く,経 済 的 に も採 算 の とれ る シス テ ム を つ く りだ す こ とで あ る。 ゴ ミの減 量 化 を根 本 か ら推 進 して い くに は,ま ず 消費 者 で あ る国 民 主 体 の生 活 に即 した リサ イ クル シ ス テ ム,す な わ ち 国民1人1人 が 環境 保 全 に取 り組 む こ とが で きる もの で,な お か つ簡 単 に参加 で き る シス テ ム で な けれ ば な らな い。 使 用 済 み の包 装 材 を小 売店 に持 ち込 む 回収 方法 で は,資 源 と して リサ イ ク ル 可 能 な ゴ ミを家 庭 で 回収 す る方 法 と比 べ る と,ゴ ミの減 量 化 に対 して効 果 的 で はな い。 そ こで 「デ ュ ア ル シ ス テ ム(並 行 シ ス テ ム)」 で は}家 庭 ゴ ミ に対 して 引 き取 り回収 用 ゴ ミ箱 と店 へ 持 っ て い く持 込 回収 用 ゴ ミ箱 の コ ン ビ 不 一 シ ョン シス テ ム に よ っ て ゴ ミの回 収 率 及 び分 別 率 を高 め る。 この回収 ・ 分 別 シ ス テ ム で は,回 収 ・分 別 され た もの を再 資 源 と して 可能 な 限 り利 用価 値 の高 い 原料 と して再 生 す る こ とが 前提 条 件 で あ る。 デ ュ ア ル シ ス テ ム を特 徴 づ け て い る の は,「 グ リ ュ ー ネ プ ン ク ト(Der GrUnePunkt)」 とい うマ ー クで あ る。 この マ ー クが 表 示 され た包 装 材 は 「デ ュ アル シ ス テ ム」 に属 して い る こ と を示 して い る。 この シ ス テ ムが 最 も重 視 す る こ とは,回 収 され た包 装 材 を責 任 を持 って リサ イ クル して い くこ と を参 加 会 員 企 業 に保 証 して い くこ とで あ る。 「グ リュー ネ プ ンク ト」 が表 示 され た商 品 を購 入 す る こ とは,消 費 者 が, ヨー ロ ッパ 全域 に及 ぶ 最 適 な 「デ ュ アル シ ス テ ム」 を よ り早 く確 立 して い く た め に貢 献 して い る こ と とな る。 包 装 材 に 「グ リュー ネ プ ン ク ト」 マ ー ク を使 用 す る際 は,デ ュ ア ル シス テ ム ドイ チ ュ ラ ン ド社 と使 用許 可 の 契 約 を結 び,使 用 料 を支払 わ な けれ ば な ら 環境 問題 と企 業 経 営 会 計37
騨凝
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難
製
麟
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、
灘
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弦
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"グ リ ュ ー ネ プ ン ク ト"表 示 の あ る リ サ イ ク ル 可 能 な 包 装 材 は,ゴ ミ の デ ュ ア ル シ ス テ ム の 基 本 で す 。 出 所:ド イ チ ャ ー マ ル ク ト('91,12,15号) な い 。 使 用 料 の 基 準 は,例 え ば 以 下 の 通 りで あ る。 包装容器 の内容量 1個 当 り(ペ ニ ヒ) 50ml以 下/3g以 下 0 50m1-一 一200m1 1 200m1-一 一31 2 31-一 一301 5 301以 上 20 こ の 使 用 料 収 入 は,全 ドイ ツ規 模 で の 家 庭 ゴ ミ回 収 シ ス テ ム 構 築 の 為 の 運営 資 金 とな る。 包 装 材 へ の 「グ リ ュ ー ネ プ ン ク ト」 の 使 用 申 請 人 は通 例 消 費 材 メ ー カ ー で あ り,特 に,ビ ー ル や 洗 剤 とい っ た よ う に容 器 を 必 要 とす る商 品 製 造 メ ー カ ー で あ る 。 な お,輸 入 品 に つ い て は,メ ー カ ー に代 わ り輸 入 業 者 が マ ー ク の 使 用 契 約 を結 ぶ こ とが で き る 。 と こ ろで,こ の 「デ ュ ア ル シ ス テ ム 」 導 入 に あ た り設 立 さ れ た デ ュ ア ル シ ス テ ム ドイ チ ェ ラ ン ド有 限 会 社(本 社 ・ボ ン)の 創 立 主 旨 は ,包 装 材 の 廃 棄 を や め,で き る 限 り再 利 用 及 び 再 生 を し て い こ う とす る もの で あ る。 こ の た め に 同 社 で は,4年 間 に70億 マ ル ク の 投 資 を 計 画 し て お り,こ れ は効 率 の よ い 処 理 シ ス テ ム と高 性 能 の 選 別 設 備 の 導 入 に 向 け られ る予 定 で あ る 。 「デ ュ ア ル シ ス テ ム 」 を機 能 さ せ て い くた め に は,資 金 面 で の 支 援 だ け で な く,各 個 人 同 シ ス テ ム に積 極 的 に 参 加 し よ う とす る堅 固 な意 志 と多 方 面 か ら の 精 神 的 な 支 援 が 重 要 で あ る。 す な わ ち ,使 用 済 の 包 装 材 を 回 収 容 器 に 投 棄 す る こ と を 要 求 さ れ て い る最 終 消 費 者,ま た政 治 家,市 町 村 自治 体,労 組, 業 界 団 体i企 業 及 び そ の 従 業 員 等 の 協 力 が 必 要 とな る 。 デ ュ ア ル シ ス テ ム は, リサ イ ク ル に よ っ て 包 装 材 廃 棄 物 の 回 避 を 行 う広 範 な プ ロ グ ラ ム を 世 界 で 唯 一 確 立 し た も の で あ る 。1991年6月 に 公 布 さ れ た 包 装 材 廃 棄 物 回 避 に 関 す る 政 令 を 実 現 さ せ て い くに は 同 シ ス テ ム は不 可 欠 で あ る 。 回 収 ・再 生(再 利 用)シ ス テ ム の 導 入 法 は包 装 材 の 原 材 料 に よ っ て 別 個 に 規 定 さ れ て い る。 液 体 飲 食 品 用 の ガ ラ ス ・ブ リキ 缶 ・紙 パ ッ ク の す べ て の 包 装 材 製 造 メ ー カ ー は こ の 回 収 ・再 生 シ ス テ ム の 利 用 が 可 能 で あ る。 紙 ・厚 紙 ・ダ ン ボ ー ル 類 の 包 装 材 は,InterserohAG社 が 回 収 ・再 生 を任 さ れ,こ れ ら紙 類 を50%以 上 含 む 包 装 材 に 適 用 さ れ る。 プ ラ ス チ ッ ク 及 び そ の 合 成 包 装 材 に つ い て は,プ ラ ス チ ッ ク加 工 製 造 業 と再 生 資 源 企 業 が 開 設 し たVer-wertungsgesellschaftgebrauchteKunststoffverpackungenmbH社(使 用 済 プ ラ ス チ ッ ク 包 装 再 生 有 限 会 社)が 多 品 種 の プ ラ ス チ ッ ク包 装 材 の 回 収 ・ 再 生 を数 品 種 に分 類 し て 行 う。 ア ル ミニ ウ ム 包 装 材 ・ア ル ミホ イ ル を含 む 包 環境問題 と企業経営会計39
DSDの リサ イ ク ル シ ス テ ム 品種 別 リサ イ クル シ ス テ ム 図 消 費 者
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デ ュ ア ル シ ス テ ム/ グ リ ュー ネプ ン ク ト 再 生 の 保 証 古 ビ ン コ ンテ ナ禽
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/1\ 分類 一一1 イ ンターゼロ㈱/ 製紙 工業 包装 材 用 ゴ ミ箱 プ ラxチ ッ ク再1竺
VGK 使 用 済 プ ラ スチ ッ ク包 装 再 生(有) 飲 料 一 紙 パ ッ ク ブ リキ ア ル ミニ ウ ム一
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リ ・ カ ー ト ン(有) 鉄鋼業 ドイツ ア ル ミニ ウ リサ イ ク ル(有) 出 所:ド イ チ ャ ー マ ル ク ト(前 掲 書) 装 材 は,DeutscheAluminiumVerpackungRecyclingGmbH社(ド イ ツ ア ル ミニ ウ ム 包 装 再 生 有 限 会 社)が,回 収 ・再 生 を行 う。 以 上 の よ う に,多 品 種 に 及 ぶ 包 装 材 の 回 収 ・再 生 が 行 わ れ て お り,ま た, これ ら の シ ス テ ム は海 外 か ら輸 入 商 品,包 装 材 に つ い て も適 用 さ れ る。 デ ュ ア ル シ ス テ ム 業 務 の 中 で 重 要 な 目標 の1つ は,消 費 者 の リサ イ ク ル 活 動 の 意uを 高 め る こ とで も あ る。 市 民1人1人 の 日 々 の協 力 な し に は,他 の ゴ ミ発 生 回 避 シ ス テ ム と同 様 に,こ の シ ス テ ム も機 能 し な い ・ 市 民 は環 境 保 護 活 動 に お い て も身 近 に 参 加 し や す い シ ス テ ム を選 ぶ 。 環 境 保 護i活動 に 何 ら か の 形 で 関 係 し て い く意 識 は す べ て の 人 間 が 潜 在 的 に持 っ て い る もの で,こ れ を基 礎 に ゴ ミ発 生 回 避 に有 効 な手 段 を い ろ い ろ な キ ャ ン ペ ー ン活 動 を通 し て 情 報 提 供 を し て い くの が デ ュ ア ル シ ス テ ム ドイ チ ェ ラ ン ド社 の 任 務 で も あ る 。 1991年5月15日 現 在,同 社 の 会 員 企 業 は約400社 で あ る。 こ の よ う な デ ュ ア ル シ ス テ ム に対 し て 批 判 も あ る が,そ の 多 く は同 シ ス テ ム に 関 す る情 報 不 足 に よ る も の が 大 半 で あ る。デ ュ アル シ ス テ ム 業務 分担 包装 材 利 用 者 (消 費材 メー カー) DSD有 限 会 社 参 加 企 業 包 装 材 資 材 メ ー カ ー 包 装 材 メ ー カ ー 消 費 材 メ ー カ ー 流 通 業 者 ラ イt.x貸 与"プ リ ュ ー ム ブ ン ク ズ
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鱗華
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自 治体ぐ協力〉
廃 棄 物 処 理 企 業 回 収,分 別,供 給, 分 別 後 の 不 必 要 な 廃棄 物 の 処 理〈協定〉
市民 原 材 料 原材料\ノ
一\ ノ
巌 業 包 装 材 資 材 メ ー カ ー 包 装 材 メ ー カ ー/
V ガ ラ ス回収 関 連 会 社\
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インターゼ ロー㈱ 販売 市場育成 保管 再生新技術の促進/
VGK 使 用 済 プ ラ ス チ ッ ク包 装 再 生 有 限 会 社 V V/
V リ ・ カ ー ト ン 有 限 会 社〉
G 回復 廃 棄 物 の 供 給 出 所 ドイ チ ャ ー マ ル ク ト(前 掲 書) 環 境 問 題 と企 業 経 営 会 計41ガ ラ ス再 生 シ ス テ ム デ ュ ア ル シ ス テ ム ド イ チ ュ ラ ン ド 廃 棄 物 処 理 企 業 ■ ブ リングシステム及び引き取 りシステムによる回収 保管 コンテナ/有 用素材用のゴ ミ容器 自,緑,茶 の色別の ビンの仕分け 最大許容混入率% 白色 ガラス 緑色ガ ラス1% 茶色ガ ラス2% 緑色 ガラス 白色ガ ラス15% 茶色ガラス10% 茶色 ガラス 白色 ガラス3% 緑色ガラ ス5% ■分別後の不必要な廃棄物処 理 ■発送準備 DSD/廃 棄 物 処 理 企業 と再 生 企業 の 接 点 ■ ガ ラ ス 工業或 い は 再 生 シ ステ ム に よる 廃 棄 物 の 受 け入 れ ■ ガ ラ ス1二業 との コ ンタ ク トセ ク シ ョン ■ 回収 廃 棄 物 の分 配 口 市場 育 成/市 場 開拓 ■ 在 庫 管 理 曝 再 生 新 技 術 の 促 進 出 所 ド イ チ ャ ー マ ル ク ト(前 掲 書)
同 シ ス テ ム は,む し ろ中期 的 な視 野 に立 って,包 装材 の使 用 を最 小 限度 ま で制 限 して い こ う とす る主 旨 を強 く打 ち 出 し,ま た,す べ て の分 野 に お い て, 競 争 に 中立 で あ り,経 済 的 に有 意義,そ して参 加 企 業 の承 認 に よ って業 務 を 遂 行 して い くこ とを前 提 条 件 として し、るの で 瀦 。 以 上 が,爆 発 的 に増 加 す る ゴ ミか ら環 境 を保 全 し,そ の減 量 化 ・再 利 用 ・ 再 生 を促 進 す るた め に ドイ ツで施 行 され,各 国 に影 響 を与 えつ つ あ る 「包 装 廃 棄物 回避 の た め の政 令 」 の紹 介 で あ る。 2.個 別 企 業 の 対 応 α)璽 化 学 工 業 ① ヘ キ ス ト社 ア ニ ュ ア ル ・レ ポ ー ト1991で は,「 環 境 保 全 」 に2頁 を 費 や し て い る 。 同 社 レ ポ ー トに よ れ ば,安 全 と環 境 保 護 に対 し,先 見 性 と責 任 を も っ て 活 動 す る こ とが 重 要 で あ る と確 信 し て い る。 同 社 の 環 境 保 全 に 関 し て は,1882 年 の 同 社 染 料 に 関 す る本 社 工 場 規 則 以 来,伝 統 が あ り,今 日 で は,ヘ キ ス ト の 環 境 保 全 サ ー ビス 部 門 だ け で も,世 界 中 で お よ そ600人 もの 人 々 が ,環 境 保 全 専 門 に 働 い て い る とい う。 同 社 で は,排 出 物 資 を 監 視 や 軽 減 す る だ け で な く,製 品 や 製 法 を 改 善 し て 汚 染 防 止 を 図 り,再 利 用 活 動 を 増 大 させ て い る。 例 え ば,ポ リエ チ レ ン と ポ リ プ ロ ビ レ ン の 生 産 段 階 で プ ロ セ ス ・エ ン ジ ニ ア リ ン グ 改 善 に よ っ て ,ご く わ ず か な 固 形 ・液 体 廃 棄 物 や 排 ガ ス を発 生 さ せ る に と ど ま っ て い る とい う 。 また,同 社 は,素 材 の リサ イ ク ル ・シ ス テ ム 制 度 の 創 設 に も着 手 し て い る 。 ポ リプ ロ ピ レ ン,塩 化 ビニ ル,ポ リエ ス テ ル 等 の リサ イ ク ル ・プ ロ ジ ェ ク ト も す で に ス タ ー トさ せ,冷 媒R134aで は 「回 収 」 保 証 付 き の パ ッ ケ ー ジ販 売 も予 定 し て い る と い う。 さ ら に,環 境 保 全 対 策 や リサ イ クル 計 画 を検 討 す る場 合 ,そ れ を助 け る た め の エ コ ロ ジ ー 面 で の バ ラ ン ス シ ー トを作 成 す る こ とが で き る。 こ の バ ラ ン 環境問題 と企業経営会計43
ス シー トに よ って,種 々 のパ ッケ ー ジ ・シ ス テ ム等 の選 択 肢 の長 所 と短 所 を エ コロ ジ ー面 か ら比 較 可 能 とな るが,同 社 は,こ の よ うな エ コ ・バ ラ ンス シ ー ト作 成 の た めの基 準 を専 門家 に よ る独 立組 織 で設 立 し,社 会 全体 の利 益 を 考 慮 に入 れ 作 成 す る こ とを提 唱 して い る。 後 半 は,同 社 の,(イ)水 質 汚 染 防止,(ロ)大 気 清 浄 化,の 廃 棄 物 処 理 に関 して 述 べ て い る。 水 質 汚染 防 止 に関 して,同 社 は,ド イ ツ 国 内 の プ ラ ン トだ けで も,22ユ ニ ッ トの大 規 模 な排 水 処 理 施 設 が稼 動 して お り,加 えて,そ れ ぞれ の排 水 の流 れ 予 備 浄 化,ま た は特 別 に浄 化 す る施 設 が573ユ ニ ッ トあ る。 そ れ故,同 社 の環境 保 全 の た め の支 出 の うち約5割 が 水 質 汚 染 防 止 に使 わ れ て い る とい う。 大 気 清 浄 化 に関 して もヘ キ ス ト本 社 工 場 で残 留物 焼 却 プ ラ ン トか ら排 ガ ス 浄 化 装 置 を追 加 設 置 し,1996年 施 行 ダ イ オ キ シ ン排 出規 制 よ りも2年 早 くこ れ に対 応 し よ う とす る積 極 的 な姿 勢 を示 して い る。 廃 棄 物 処 理 に関 して は,資 源 を節 約 す る た め に発 生 す る残 留物 を極 力 少 な くし,残 留 物 につ い て は再 利 用 に最大 限 努 力 した結 果,1991年 の ヘ キ ス ト社 にお け る再 生 率 は78%に 達 した とい う。 また,再 利 用 不 能 な残 留 物 の焼 却 プ ラ ン ト建 設 も計 画 して い る。 ②BASF社 アニ ュ アル ・レ ポー ト1991で は 「環境 保 全 と安 全 」 に2頁 を費 や して い る。 同 レポ ー トに よれ ば,「 環 境 保 全 と安 全 」 は同社 の 当面 の努 力 課 題 で あ る と同時 に経 常 的 な業 務 の一 つ で あ る と して い る。 同 レ ポー トで は,具 体 的 に,ル ー トヴ ィ ッ ヒスハ ー フ ェ ンで の環 境 対 策 と 安 全 対 策 の た め10億 マ ル クの大 規 模 投 資 計 画 が,ほ ぼ 完 了 した こ とを述 べ て い る。 この計 画 は,プ ラ ン ト事 故 に よ る環境 破壊 の リス ク を減 ら し,長 期 に わ た る廃 棄 物 の放 出 を削 減 し,安 全対 策 を講 じ る とい う もので あ る とい う。 汚 水 排 出量 に関 し,ル ー トヴ ィ ッ ヒハ ー フ ェ ンで の生 産 量 が1973年 か ら今 日 まで に40%増 加 した に もか か わ らず,同 社 が ラ イ ン川 に放 出 して い る排 水
量 は,廃 水 処 理 プ ラ ン トが 稼 動 を開始 す る前 の年 と比 べ て95%も 削減 され た とい う。 この よ うな環 境 保 全 対 策 や 資 源 の効 率 的 な利 用 の た め,環 境 保 全施 設 の運 営費 が 急 増 して い る よ うで あ る。 ③ バ イ エ ル社 アニ ュア ル ・レポー ト1991で は,同 社 もや は り 「環境 保 全 」 に2頁 を費 や して い る。 「責 任 感 を持 った包 括 的環 境 保 全 」 が,最 大 限 の安 全1生,製 品 の 高 品 質 性, 最 適 経 済 性 と同 じ水 準 の 目標 で あ る と し,1991年 度 に は環 境 保 全 分 野 の運 営 費 に14億3,000万 マ ル ク を費 や して い る。 同社 は,生 産 の上 昇 に か か わ らず,化 学 的酸 素 需 要 の総 量 をパ ラメ ー ター で計 測 して,排 水 中 の有 機 物 質 を1981年 以 降67%削 減 し,ド イ ツ ・バ イ エ ル 社 は全 工 場 の有 機 物 量 を過 去10年 間 で ほ ぼ3分 の2ま で に減 少 させ て い る。 この よ うな努 力 の結 果,同 社 は環境 保 全 の分 野 で は首 位 にな っ た とい う。 しか し,環 境 保 全 は経 費 の 面 か らみ れ ば,特 に工 業 関 連 事 業 分 野 にお け る同 社 の競 争 力 を後 々 まで も脅 か す こ とな く負 担 し うる限 界 に まで達 して い る と い う。 それ ゆ え に,同 社 はyド イ ツの み に対 す る現 行 の環境 税 の強 化 及 び追 加 導入 に強 く反 対 して い る。 環境 保 全 に関 す る法 律 の制 定 とそ の施 行 に つ い て,ド イ ツ の み が独 走 す る こ とな く,国 際 的 協 調 が優 先 され る よ う唱 え て, 世 界 で 最 も厳 しい ドイ ツの環 境 法 に関 して も批 判 して い る。 ② 自動車産業 ④ フ ォ ル ク ス ワ ー ゲ ン社 ア ニ ュア ル ・レポー ト1991の2頁 を費 や し,総 合 的 な環境 保 全 コ ンセ プ ト か ら製 品 ライ フサ イ クル 全体 を考 慮 した環 境 保 全 及 び それ に関 す るグ ローバ ル な課 題 まで論 じて い る。 同社 は,ヨ ー ロ ッパ 自動 車 産 業 の中 で 初 め て,1991年,取 締 役 会 に 「環境 と交通 」 部 門 を設 置 し た。 この部 門 の 設 立 は,環 境 保 全 対 策 の意 義 を強 調 し, 環境問題 と企業経営会計45
これ を企 業 経 営 か ら切 り離 す こ とので きな い 重 要 な分 野 と見倣 した こ とに あ る とい う。 同社 の環境 保 全 思 想 を実行 に移 す た め練 り上 げ た コ ンセ プ トに は,企 業 の 全 て の部 門 が 関 係 し,ま た一 つ の製 品が,研 究 ・開発 され,製 造 され,使 わ れ,最 後 に環 境 にや さ しい形 で再 利 用 され る まで の,製 品 の ライ フサ イ クル 全 体 が考 慮 され て い る。 先 ず,同 社 は長 年 にわ た り,エ ネル ギ ー消 費 量 を減 ら し,環 境 へ の影 響 を 少 な くす る 自動 車駆 動 技術 の研 究 に力 を注 いで きた とい う。 例 えば,1993年 か ら販 売 す るエ コ ・ゴル フ は,ア クセ ルペ ダ ル か ら足 を離 す と同時 に ク ラ ッチ が切 り替 え られ,自 動 制 御 で デ ィー ゼ ル ・エ ン ジ ンが停 止 され る よ う設 計 され て い る。 そ の結 果,市 街 地 走 行 テ ス トで は燃 費20%を 減 少 し,各 排 ガ ス成 分 に よ っ て は10%か ら50%ま で 抑制 され て い る とい う。 次 に,製 造 工程 で も資 源 を守 り,公 害 を防 ぐこ とあ るい は減 らす こ とが 必 要 不 可 欠 で あ る。 同社 で は,50年 以 上 も前 に国 内 で は例 を見 ない水 資 源 利 用 の基 本計 画 を策 定 し,そ れ は今 日で も模 範 的 で あ る との評 価 を受 けて い る とい う。 中央 浄 化 施 設 とその他 の工 場 内各 所 に設 置 され て い る浄 化 ・処 理 施 設 にお い て様 々 な 循 環 系 に工 夫 を こ ら し,工 業 用 水 の 内 の飲 料 に適 す る水 を使 用 す る割 合 を, 非 常 に低 く押 さ え る こ とに成 功 した。1991年 に利 用 した3億6,650万 ㎡ の用 水 の う ち,飲 料 水 は僅 か560万 ㎡ で,リ サ イ ク リン グ率 は98%に 達 した。 ま た,排 水 処 理 改 善 の結 果,循 環 利 用 も拡 大 し,1973年 以 降 ウ ォル フス ブル グ 工 場 で の飲 料 水 消 費 は40%節 約 され た とい う。 更 に,塗 装 面 で は新 しい設備 を導 入 し塗 装 工 程 で の汚 染 物 質 の総 排 出 量 削 減 に成 功 して い る。 また,完 成車 を デ ィー ラ ー に配 送 す る際 に施 され る コー テ ィ ング ワ ッ クス で も,現 在 で は無 溶 剤 の もの を使 用 して い る とい う。 同社 の 生 産 工 程 で はオ ゾ ン層 を破 壊 す る フ ロ ン ガ ス 含 有 冷 媒 の使 用 を, 1992年 半 ば か ら使 用 停 止 す る こ とに して い る。
最 後 に,有 害物 質排 出 の少 な い 自動 車 を開発 し,環 境 に配 慮 した生 産 を行 う こ と,並 び に使 用済 車 両 の再 利 用 が 同 社 の重 要 な課 題 とな って い る。 ドイ ツ 国 内 で は年 間200万 台 の車 両 が廃 棄 処 分 され て い る が,自 動 車 の 重 量 の75%は 鉄,銅,ア ル ミニ ュ ウム 等 の金 属 で 占め られ て お り,さ れ らの材 料 は,今 で は再 利 用 され て い る。 しか し,再 利 用 に は新 しい材 料 を使 用 す る よ り労 力 とコス トが か か る。 それ 故,ゴ ル フIIIでは,再 利 用 可 能 な構 成 部 品 の使 用 を,開 発 と材 料 選 択 の第1段 階 か ら考 慮 して い る。 具 体 的 に は,自 動 車 の 寿命 が尽 きた と きに解 体 しや す く,合 成 樹 脂 パ ー ツ と金 属 パ ー ツ を簡 単 に分 離 で き,最 終 的 に は ラ イ フサ イ クル を延 ば す よ うな,わ か りや す い設 計 を した。 そ の ため,リ サ イ クル 可能 な合 成 樹 脂 パ ー ツの使 用 を増 や し,今 で はフ ォル クス ワー ゲ ンで使 用 され て い る熱 可塑 性 合 成 樹 脂 の多 くは,再 利 用 可能 とな っ て い る とい う。 更 に,フ ォル ク ス ワー ゲ ン社 は,環 境 に適 した経 済 活 動 の た め の産 業構 想 を作 成 す る内外 の会 議 等 に積 極 的 に参加 して い る とい う。 ⑤ ダ イ ム ラ ー ・ベ ン ツ社 アニ ュ アル ・レポ ー ト1991で は 「環 境 保 全 」 に関 して特 別 に頁 を割 り当 て て い な い が,エ ッ ツ ア ル ト ・ロ イ タ ー 会 長 が 「株 主 な らび に支 持 者 の皆 様 へ」 の 中 で,こ れ に関連 して 批 判 的 に以 下 の よ うに述 べ て い る。 「最 近 で は, メ デ ィア が益 々 発 達 し,公 衆 に対 して政 治 上,経 済 上 また は環 境 上 の危 険 に つ い て膨 大 な報 道 を次 々 に投 げ つ け る こ とが 習 い とな っ て き ま した。 勿 論, 真 実 や真 剣 な問 題 を反 映 す る もの も多 数 あ り,そ れ らは,当 社 に とっ て も正 に直 接 的 な関 連 を有 して い ます 。 しか しな が ら,今 ,幾 分 ゆが ん だ描 写 が 提 示 され て お ります」 と環 境 対 策 等 はす で に実 施 して い るの に,更 に メ デ ィア か らの批判 が あ る こ とに苦 言 を呈 して い る。 こ こで は,ダ イム ラー ・ベ ン ツの総 売 上 高 の約70%を 占 め る基 幹 企 業 で あ る メル セ デ ス ・ベ ン ツが 環境 に最 も配 慮 した 「ニ ューSク ラ ス」 に つ い て紹 介 す る。 環境問題 と企業経営会計47
これ ま で 生 産 の 現 場 で 使 用 さ れ て き たCFCは 廃 止 さ れ て,発 泡 の 補 助 材 に は水 蒸 気 が 使 わ れ た 。 プ ラ ス チ ッ ク部 品 の 離 型 材 と し て 使 わ れ たCFCも 溶 接 時 のCFCも,新 し く水 分 を べ 一 ス と し た エ マ ル ジ ョ ンが と っ て 代 わ っ た 。 塗 料 の 中 か ら重 金 属 を 除 き,有 機 溶 剤 使 用 の ペ イ ン トか ら水 溶 性 ペ イ ン トに切 り替 え,イ ン テ リア に は熱 帯 林 に 代 え,カ リ フ ォ ル ニ ア 風 の く る み の 木 目 を使 う と い う。 「ニ ュ ーSク ラ ブ 」 の 特 徴 で も あ る トー タ ル ・リ サ イ ク リ ン グ ・プ ロ ジ ェ ク トに 基 づ き,100グ ラ ム 以 上 の プ ラ ス チ ッ ク部 品 に は素 材 マ ー ク を つ け, 同 じ 素 材 ご と に 回 収 しや す く配 慮 し て い る。 そ れ ま で に 冷 却 材,エ ア コ ン シ ス テ ム,エ ン ジ ン を トラ ン ス ミ ッ シ ョ ン の オ イ ル,バ ッ テ リー の 酸 な ど は す で に 回 収 さ れ て き た が,こ れ か ら は様 々 な プ ラ ス チ ッ ク,バ ッテ リー,カ タ ラ イ ザ ー,テ キ ス タ イ ル な ど も ま た,新 し い メ ル セ デ ス ・ベ ン ツ に 戻 っ て い く こ と に な る と い う。 以 上 の 個 々 の 環 境 保 全 対 策 は他 社 で も部 分 的 に 実 施 し て い る が,そ れ に もか か わ らず,メ ル セ デ ス ・ベ ン ツ の 環 境 対 策 車 「ニ ュ ー Sク ラ ス 」 は あ ら ゆ る意 味 に お い て 完 壁 で あ ろ う と して い る とい う。 こ の 「リサ イ ク ル を見 込 ん だ車 」 は,1991年3月7日 ジ ュ ネ ー ブ の シ ョー で 登 場 し,初 め て 本 格 的 に 使 用 す る車 に な る。 同 社 は,製 造 用 材 料 の 節 約 よ り も リサ イ クル で 廃 棄 物 汚 染 を ふ や さ な い 方 法 を選 択 す る こ とで 問 題 を解 決 し よ う と し て い る。 車 の リサ イ ク ル の た め の コ ス トは高 い が,そ れ に もか か わ ら ず,部 分 的 に は採 算 を度 外 視 し て も実 施 す る と い う。 「ニ ューSク ラ ス 」 の 特 徴 の1つ に ロ ン グ ・ラ イ フ ・カ ー とい う思 想 も あ る 。 す べ て の部 品 の 寿 命 を 長 くす れ ば,廃 棄 さ れ る 自動 車 の 数 も少 な くな る。 ボ デ ィ を 腐 食 か ら守 る メ ッ キ,ペ イ ン ト,コ ー テ ィ ン グ,ワ ッ ク ス な ど錆 び な い 素 材 の 研 究 は,ロ ン グ ・ラ イ フ の 一 環 と し て 取 り組 ま れ た 。 そ の た め に, 設 計 の 当 初 か ら腐 食 さ れ や す い部 分 の デ ザ イ ンが 問 題 に な っ た 。 これ ま で メ ッ キ処 理 さ れ て き た部 品 を総 点 検 し,希 少 な 亜 鉛 を節 約 す る た め に も,腐 食 の 心 配 が あ る と判 断 さ れ る 部 分 の み に メ ッ キ を 施 す こ と に な っ た 。 「ロ ン
グ1 )ラ イ フ.サ ー ビ ス は 間 接 的 に 資 源 を 鮪 し・ ス ク ラ ッ プ の 数 を 少 な く す る 」 と 同 社 は考 え て い る。
川
企業会計 と環境 問題
環 境 問 題 は前 章 で見 た よ うに,い まや ,企 業 経 営 にお い て 決 して避 け て通 る こ とので きな い問 題 とな って い る。 本 章 で は,こ の よ うな環 境 問題 に企 業 会 計 が どこ まで ア プ ロ ー チで きる か,企 業 に お け る環 境 情 報 デ ィス クロ ー ジ ュ ア,環 境 コス ト及 び環 境 監 査 にか か わ らせ て検 討 す る 。 1.環 境 情 報 の デ ィス ク ロー ジ ュア 企 業 経 営 上,環 境 問 題 とか か わ らな い もの は な い。 今 や,地 球 は無 限 の存 在 で はな く,単 な る こわ れ や す い宇 宙 船 に過 ぎな い。 狭 い宇 宙 船 の中 で は, か っ て の よ うに環 境 を犠 牲 に して経 済 合理 性 の み を追 求 す る こ とは許 され な い 。 それ 故 に,企 業 に よ り多 くの環境 情 報 の開 示 を求 め る声 が 高 ま りつ つ あ る 。 企 業 にお い て は経 営 運 営 上 ・ そ の企 業 を と り巻 く環境 と どの よ うに か か わ り , そ の環 境 に どの よ うな影 響 を与 え,そ れ を どの よ うに処 理 して 環境 保 全 に努 め て い るか に関 して情 報 を提 供 しな けれ ば な らな い。 例 えばyあ る企 業 で は 生 産 活 動 にお い て化 石 燃 料 をエ ネ ル ギ ー源 と して大 量 に使 用 して,大 気 温 暖 化 に影 響 を与 えて い る場 合,10年 前 に はそれ に関 して全 く考慮 して なか っ た が,現 在 で は排 気 を どの よ うな装 置 に よ って 冷 却 ・清 浄 化 して い るか ,そ の た め の コス トを どの程度 要 す るか,ま た,今 後 の 目標 と して どの程 度 まで大 気 の清 浄 化 が 可 能 で あ るか・ その た め に試験 ・研 究 設 備 装 置 に どの程 度 の 資 金 を要 し,そ れ が 企 業 経 営 に どの よ うな影 響 を与 え る か情 報 を開 示 す る必 要 が あ る。 1990年6月EC理 事 会 で採 択 され た 「環 境 へ の ア クセ ス の 自由」 とい う指 環境問題と企業経営会計49令 で は,水 質,大 気,土y動 植 物 等 の 「環 境 の状 態 や そ れ に影 響 を与 え る 行 為 お よび そ れ ら を保 護 す る措 置 」 な どにつ いて,国 や地 方 レベ ル の公 の機 関 が保 有 す る情 報 を,あ らゆ る法 人 に対 して,そ の求 め に応 じて公 開 す る制 度 を整 備 す る こ とが 加 盟 国 に要求 され,競 争 条件 を平 等 に し よ う と してい る。 イ ギ リス で はす で に90年 に成 立 した環境 保 護 法 に よっ て,企 業 が 公 共 機 関 に 許 可 申請 した環 境 汚 染 量 は公 開 され る よ う にな って い る。 同 国 の環 境 保 護 団 体 ・地 球 の友 は,こ の公 開情 報 に も とつ い て,公 共 下 水 道 へ の有 害 物 質 排 出 許 可 量 の 多 い上 位100社 を公 表 して い る。 ま た,ア メ リカ で も,各 工 場 が 排 出 した有 害 物 質 の量 を公 開 す る 「地 域 の知 る権 利 」 法 の成 立 で,企 業 の環 境 対 策 が格 段 に前 進 した(日 本 経 済 新 聞1992年10月5日)と 言 わ れ る。 現代 企 業 に お い て は,私 的経 済 利 益 の追 求 と同 時 に社 会 的貢 献 も要 請 され る。 企 業 の社 会 的貢 献 と して環 境 保 全 活 動 は最 も重 要 な もの の1つ で あ る。 現 代 社 会 にお い て は,こ の よ うな環 境 情 報 の開 示 が益 々 要請 され る よ うに な っ て きて い るが,こ の 開示 は企 業 の環 境 保 全活 動 の公 表 で もあ る。 そ の際, 開 示情 報 は,業 種,規 模,業 績 等 に よっ て異 な り,そ の情 報 が 必 ず し も適 正 に表 示 され な い こ とも考 え られ るの で,最 低 限 の開 示 を企 業 に促 す た め に も, また競 争条 件 を平 等化 す る た め に も環 境 情 報 開 示 に関 す る基 準 また は規 則 の よ うな ものが 欧 米 に限 らず,他 の 国 々 にお い て も必 要 とな ろ う。 2.環 境 コス トと原価 計 算 環 境 破 壊 に よ る損 害 は,誰 が 負担 す れ ば よい か,そ れ は環境 破壊 の加 害 者 で も被 害者 で もあ る企 業 ・消 費 者 が 最 終 的 に は負 担 しな けれ ば な らな い。 環 境 を保 全 す るた め の コス トは,最 終 販 売 価 格 に加 えて 回収 しな けれ ば な らな い 。例 え ば,缶 ジ ュー ス を飲 ん だ後 の空 缶 は,散 乱 して道 路,車 中等 を 汚 し,障 害 物 ともな る。 それ を清 掃 した り,処 分 した りす るた め の コス トは, そ れ を飲 ん だ人,そ れ を製造 した企 業 が 負担 しな けれ ば な らな い コス トで あ 6) る 。 こ の よ う な コ ス ト は 汚 染 者 負 担 の 原 則(Polluterpaysprinciple)に し
た が っ て 製 品 販 売 コ ス トの 中 に 算 入 して 回 収 す る 必 要 が あ る 。 これ を い わ ゆ る環 境 コ ス トの 内 部 化 と い う。 こ の よ う な 考 え 方 に した が っ て,環 境 保 全 の た め の コ ス トを製 品 企 画 ・設 計 段 階 か ら ラ イ フ サ イ クル コ ス ト(1ifecyclec・sts)と し て組 み 入 れ ,処 理, 廃 棄,リ サ イ ク ル を 前 提 と し た 原 価 の 管 理 を行 う こ とが 必 要 で あ る 。 こ の ラ イ フ サ イ ク ル コ ス トの 計 算 対 象 に は,製 品 の 完 成 に い た る ま で に発 生 し た原 価 と,そ の 後 に発 生 す る と予 想 され るす べ て の 原 価,お よ び処 分 価 値 お よ び そ の 他 計 量 可 能 な 便 益 が 含 ま れ る。 一 般 にsラ イ フ サ イ クル コ ス トへ の 考 慮 は,製 品 の企 画 ・設 計 段 階 で行 わ れ2 。 環 境 破 壊 に関 して あ る程 度,因 果 関係 が はっ き りし,個 別 的 に把i握可能 で 責任 の所 在 も明 確 な もの は よい が,大 気 ・海 洋 ・河 川 汚 染s酸 性 雨,砂 漠 化 等 の よ う に広 範 囲 で,加 害 者 に負 担 不 能 な もの,全 く因果 関係 が 不 明 確 な も の な ど は,汚 染 者 負担 原 則 通 りに はい か な い。 そ の よ うな もの に関 して は, 企 業 ・消 費 者 合 意 の上 で 環境 税 を導 入 し,そ の財 源 に よ っ て環境 の保 全 ・維 持 に努 め な けれ ばな らな い。 この場 合,環 境 税 も企 業 が産 出 す る財 貨 用 役 の 最終 販 売 コ ス トの一 部 を形 成 す る環 境 コス トと して算 入 され な けれ ば な らな い 。 3.環 境 監 査 q)経 営管理の用具 と しての環境監 査 消費 者 の地 球 環境 へ の関 心 が高 ま る に したが っ て,環 境 へ 多 大 な影 響 を及 ぼ す企 業 へ の監 視 の 目 も更 に厳 し くな っ て い る。 お よ そ あ らゆ る経 済 社 会 活 動 につ い て環 境 との係 わ りが 問 わ れ,環 境 保 全 へ の責 任 が求 め られ る よ うに な った 。 それ も単 に汚 染 物 質 の排 出行 為 だ けで な く,原 材 料 の選 択,購 買, 製 造,販 売 や輸 送,廃 棄 ・処 分 の方 法 とい っ た あ ら ゆ る側 面 が 環境 保 全 に係 わ りな く済 ます こ とが で きな くな っ た。 こ う した動 き は,も ち ろん行 政 に も 新 しい対 応 を迫 る もの とな っ て い る。 この よ うな必 要性 か ら新 しい経 営 管 理 環境問題 と企業経営会計51
8) の た め の 用具 の1つ として環 境 監 査 が誕 生 した 。 国 際商 業会 議 所(lnternationalChamberofCommerce)1989年 の環 境 監 査 に関 す る意 見 書 の定 義 に よれ ば,「 ① 環 境 に 関 す る経 営管 理 上 の コ ン トロ ー ル を促 進 し,② 会 社 が 定 め た環 境 に関 す る方 針(法 基 準 の充 足 を含 む)の 遵 守 状 況 を評 価 す る。 そ の こ とに よ り,環 境 保 護 に役 立 つ 目的 を持 つ組 織 ・ 管 理 ・設 備 が どの程 度,機 能 して い るか を組 織 的,実 証 的,定 期 的,客 観 的 に評 価 す る もの」 で あ る と して い る。 また,EC委 員 会 の提 案 の うち90年 末 に発 表 され た草 案 は,58業 種 の一 定 規 模 の企 業 に環 境 監 査 を義 務 づ け る とい う画期 的 な もの だ っ たが,産 業 界 か らの反発 が 強 く,91年6月 の修 正 案 で は 「義 務 づ け」 とい う文 章 が消 えた。 しか し,当 初 草 案 内容 の うち,環 境 報 告 の公 表,外 部 者 に よ る検 証 等 が 受 け 継 が れ て い る。 この 「検 証 」 は,実 施 され た環境 監 査 の信 頼 性 お よび公 表 さ 9) れ る環 境報 告 書 の妥 当性 を検 査 す る もの で あ る。 この環 境 検 証 人 は,EC加 盟 各 国 が 認 定 した もの で あ れ ば・ 内部 者'外 部 者 を 問 わ な い。 検 証 人 に よ る検 証 とい う面 で はICCよ り も更 に進 ん で い る が,環 境 監 査 を経 営 管 理 用具 と して そ の 内 容 を定 義 して い る点 で はICCの もの と同様 で あ る。 ② 企 業の環境 問題への対応 地 球 環 境 問題 へ の 国際 的対 応 に見 合 う国民 経 済 レベ ル で の対 応 と同 時 に個 別 企 業 レベ ル で の対 応 が 要請 され る。 企 業 の環境 問 題 へ の対 応 は,技 術 面 及 び経 営 管 理 面 で の対 応 が考 え られ る。 技 術 面 の対 応 で,炭 酸 ガ ス の排 出量 が環 境 基 準 や 自社 基 準 を遵 守 して い るか 否 か を調 べ,そ の結 果 を各 レベ ル の経 営 者 に フ ィー ドバ ッ ク して管 理 者 の意 思 決 定 に役 立 て る管 理 シス テ ム を構 築 す るの が経 営 管 理 面 で の対 応 で あ る。 経 営 管 理 者 が,最 初 にな す べ き こ とは,環 境 に いか に対 応 す るか を表 明 し た経 営 方 針 ・環境 方 針 を定 め,環 境 問 題 に専 念 す る組 織,例 えば,地 球 環 境 部,環 境 問題 対 策 部,環 境 保 全 部 等 の環 境 部 門 を設 置 す る こ とで あ る。環 境
部 門 に は環 境 に沿 っ た企業 の活 動 と環境 との調 和 を図 る役 割 が期 待 され る。 環 境 部 門 で は,環 境 情 報 シス テム を通 じて収 集 され た環 境 情 報 の 適確 性 の 保 持 及 び社 内 各部 門 に お け る環 境 管 理 活 動 の妥 当性 の 評価 等 の監 査 を必 要 と す る。 環境 部 門,環 境 情 報 シス テム お よび 内部 環境 監 査 等 か ら環 境 管 理 シス テム が定 着 し,環 境 情 報 の開 示 が な され るた め に はs第 三 者 に よ る監 査 が 必 要 と な る。 この監 査 に は,公 認会 計 士,税 理 士,経 営 診 断 士,経 営 コ ンサ ル タ ン トの よ うな会 計 経 営 専 門家 ばか りで な く,自 然 科 学,技 術 面 の知 識 を もっ た 作 業 環境 測定 士,公 害 防 止 管 理 者 等 の よ うな 専 門家 ,学 識 経 験 者 等 も加 わ る ユU) 必 要 が あ る。 そ うす る こ とに よっ て,初 め て経 営 管 理 ・技 術 面 か らの満 足 す べ き監 査 が 可 能 とな る。
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今 日ほ ど,環 境 問 題 が 緊急 で,注 目 を浴 び て い る時 代 はな い。 先 日のNA SAの 発 表 で は,オ ゾ ン層 が 昨 年 よ り も更 に15%破 壊 され た とい う。 この よ うな現 実 を直 視 して,現 在 の豊 か な生 活 を少 し ぐらい後 退 させ て も,環 境 問 題 と真 剣 に取 り組 む べ き時 で あ る。 環境 問題 を解 決 す るた め に は,企 業,消 費者,更 に は人 類 全 体 が存 亡 をか けて 闘 わ な けれ ば な らな い時 代 が す ぐそ こに来 て い る。 会 計 学 の分 野 で も,伝 統 的 な領 域 の み に そ の研 究 領 域 を限定 しな い で,現 代 企業 及 び社 会 に多 大 な影 響 を及 ぼ して い る環 境 問 題 に もそ の技 法 を利 用 す べ きで あ る。 資 本 主 義 の マ イ ナ ス面 を是 正 す る た め に もそ の役 割 を果 た さ な け れ ばな らな い。 そ の よ うな会 計 こそ がf真 に企 業 経 営 の た め の会 計 とな る で あ ろ う。 環境問題 と企業経営会計53注 1)拙 稿 「地 球 環=境問 題 と企 業 経 営 」 『原 価 管 理 士 だ よ り』 第253号(1),第254 号 ② 。 2)同 上 。 3)地 球 の友 編 『市 民 が 地 球 を採 点 した環 境 サ ミッ ト'90』(岩 波 ブ ッ ク レ ッ ト No.216)71頁 及 び最 終 頁 。 4)本 節 は,主 に 『ドイ チ ャー マ ル ク ト』1991年12月15日(臨 時増 刊)号 に よ った。 5)竹 原 あ き子 『環境 先 進 企 業 』 日本 経 済 新 聞 社,1991年,140頁 ∼152頁 。 6)OECD環 境 委 員会 編 「OECD環 境 白書 」 中央 法 規,1992年,301頁 。 1960年 代 終 わ り頃,汚 染 者 に汚染 の費 用 を支払 わ せ る とい う 「汚染 者 負 担 の 原 則(ppp)」 が 生 まれ た が,そ の 内 容 は時 代 と と もに徐 々 に変 化 して い る。 経 済 学 的 観 点 か ら は,pppの 基 本 的 な考 え方 は,品 物 や サ ー ビス の価 格 は, 生 産 コス トや環 境 資 源 を含 む使 用 され た資 源 の コ ス トを十 分 に反映 す べ きで あ る。 排 出,放 出,廃 棄物 保 管 の た め に空 気,水,ま た は土 地 を利 用 す る こ とは,そ の他 の 「伝 統 的 な」 生 産 要 素 で あ る労 働 や 物 質 の使 用 と同様 に資 源 の利 用 で あ る。 こ う した利 用 に対 し支 払 い が な され な い場 合 に は,こ れ らの 環 境 資 源 が 浪 費 され 劣化 し さ ら に は破 壊 さ え され る。pppは 汚 染 者 に環 境 資 源 の利 用 や 劣化 に対 す る コ ス トを 「内 部 化 させ る」 こ とに よ り,こ れ を修 正 しよ う とい う もので あ る。 しか し,こ の よ うな コス トは,因 果 関 係 を判 断 す る こ とが きわ め て 困難 な た め,実 際 に は しば し ば汚 染 防止 の コス トを負担 さ せ られ る。 PPPを 一 律 に 国 際 的 に適 用 す る こ とを奨 励 す る た め に・1972年 ・OECD 委 員会 は,一 部 例 外 を除 き,pppは 加 盟 諸 国 の汚 染 防止 の基 本 的原 則 とな る べ き こ と を明 文 化 して い る。 pppは 新 しい,ま た変化 しつ つ あ る環 境 問 題 につ いて対 応 す る た め に も, 引 き続 き改 善 され な くて はな らない 。 しか し,pppが 将 来 どの よ うに進 展 す るか にか か わ りな く,環 境 資 源 利 用 の コ ス トを経 済 的 価 格 メ カニ ズム に組 み 入 れ る こ と は,こ の よ うな資 源 が 未 来 の世 代 の た め に よ りよ く管 理 され る こ と を確 保 す るた め の,重 要 な ス テ ップ で あ る。
7)櫻 井 通 晴 『企 業 環 境 の変 化 と管 理 会 計 』 同文 舘,平 成3年 発 行e154頁 。 8)小 林 光 稿 「環境 行 政 の新 しい方 向 と環 境 監 査 へ の期 待 」 『JICPAジ ャー ナ
ル』Vo1.4No.6(1992年6月)17頁 。
9)倉 阪 智 子 稿 「環 境 監 査 と は 何 か 」 『JICPAジ ャ ー ナ ル』Vo1 .4No.1 (1992年1月)56頁 。
10)河 野 正 男 稿 「環 境 監 査 の動 向 と構 図」 『JICPAジ ャー ナ ル 』Vol .4No.6 (1992年6月)20,22頁 。 我 が 国 で は,東 京 電 力 に対 し320名 の株 主 か らそ の定 款 の一 部 を変 更 して 環 境 監 査 役 を設 け,環 境 監 査 を実施 す る よ う平 成4年6月 の株 主 総 会 で提 案 が な され た。 しか し,取 締 役 会 側 は,東 京 電 力 で は環 境 保 全 を経 営 の重 要 課 題 の一 つ として これ に対 しさ ま ざ まな施 策 を実 施 して お り,ま た監 査 役 に よ り,そ の重 要 性 を踏 ま え た適 切 な業 務 監 査 が 行 わ れ て い る。 した が っ て,取 締 役 会 と して は,新 た に環 境 監 査 役 を設 け る必 要 性 は な い と判 断 して お り, 今 後 も現行 の態 勢 の も とで全 社 一 丸 とな って環 境 保 全 に取 り組 ん で い く とし, 株 主側 の提 案 を否 決 した。 〈そ の 他,参 照 文 献 ・雑 誌 等 〉 (1)文 献 ・(ed)MeinolfDierkes&RaymondA .Bauer,CorporateSocialAccounting , 1973,PraegerPublishers.
・E .Callenbach,F.Capra&S.Marburg ,TheElmwoodguidetoeco-一 一一一 auditingandecologicallyconsciousmanagement ,1990,TheElmwood Institute. 繍 田 栄 作 訳 『エ コ ロ ジ カ ル ・マ ネ ジ メ ン ト 』 ダ イ ヤ モ ン ド社a1992年 。 ・J .ス ペ ス/J.マ シ ュ ー ズ 稿,黒 坂 三 和 子 編 訳 『地 球 環 境 安 全 保 障21 世 紀 へ の 提 言 』 岩 波 ブ ッ ク レ ッ トNo.220。 ・ 日 本 経 済 新 聞 社 編 『べ 一 シ ッ ク 地 球 環 境 問 題 入 門 』 日 本 経 済 新 聞 社 ,1992年 。 ・環 境 監 査 研 究 会 編 『環 境 監 査 入 門 』 日 本 経 済 新 聞 社 編 ,1992年 。 ・環 境 庁 編 『環 境 白 書 』 平 成4年 版 ,総 説 ・各 論,大 蔵 省 印 刷 局 。 ② 雑 誌 ・新 聞 ・Hans‐GeorgJender:ImplementingEnviromentalProtectionMeas ures, ZfBfil.Jg(1991)Nr,8/AugustS.853-858. 環境問題 と企業経営会計55
・合 崎 堅 二 稿 「環 境 問 題 と 会 計 」 『会 計 』 第140巻 第3号(1991年9月)森 山 書 店 。 ・松 尾 章 正 稿 「環 境1青 報 開 示 規 制 」 同 上 雑 誌 同 号 。 ・DerSpiegel ・Handelsblatt ・FrankfurterAllgemeine ・DieZeit {3)AnnualReport1991 ・HoechstAG ・BASFAG ・BayerAG ・VolkswagenAG ・DaimlerBenzAG等