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1.はじめに

既に本誌でも数回紹介したように、ICAO (International Civil Aviation Organization)が 「Aviation System Block Upgrades(ASBU)」

構想を発表し、各国が次世代航空交通管理 (ATM:Air Traffic Management)システムの 構築を行っている。しかし、ICAOの構想は 細部まで細かく規定しているわけではないの で、実際に各国がATMシステムを構築する際 には差異が生じることが懸念され、システム 構築の世界的な協調(Global Harmonization) が課題となっている。 ICAOはシステム構築における差異を解消 し、円滑に構築が進められるように多くの関 連者(ステークホルダ)との調整を進めてい る。今般、SJACが所属するICCAIA(International Coordinating Council of Aerospace Industries Associations)とICAOとの間で平成25年9月22 日及び23日にモントリオール(カナダ)の ICAO本部他で開催された意見交換の場に参 加する機会を得たので、ICAOの活動内容・ トピックスについて報告する。また、同時期 に行われていた第38回ICAO総会の技術委員 会にも参加したので、その状況などについて も併せて報告する。 2.ICAO活動の背景及び概要 近年の航空交通量は飛躍的に増大し、1990 年代からは約15年間隔で2倍に膨れ上がってい る。2012年における全世界の旅客数は約29億 人、貨物輸送量(金額)は約5.3兆ドルとなり、 15年後にはさらに2倍に増大し、航空機数も 30,000機以上(現状の約2倍)が必要とされて いる。ICAOは将来の民間航空機の増大に鑑み 航空管制の改善(安全性向上、取扱い機数増等) を行っており、「航空機運航者が計画した通り の出発・到着時刻で、希望する通りの飛行経 路を最少の制約で規定された安全レベルを満 足しつつ運航できるようなシームレスな世界 規模のATM(Air Traffic Management:航空交 通管理)システムの構築」を提唱した。

その後、ICAOの構想に基づき、米国では 「NextGen:Next Generation」、欧州では「SESAR:

Single European Sky ATM Research」、日本では 「CARATS:Collaborative Actions for Renovation

of Traffic System」などが発表されているが、 各国(地域)が独自のシステムを検討してい るためシステム間の整合がとりにくく、世界 的な協調(Global Harmonization)が図れな い 状 況 に 陥 っ て い た。そ の た め、ICAO は NextGenとSESARなど進行中のシステムの相 違点を調査するとともに、「シームレスな世 界規模のATMシステム」を構築するための

次世代航空交通管理システム構築に向けた

ICAOの活動状況について

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「Aviation System Block Upgrades(ASBU)」構 想を発表した。 さらに、ICAOはASBUに基づき各国のシス テム開発計画を整合させるために、産業界を 含めた世界規模のシンポジウム開催等の諸活 動を行うなど、国の行政機関(航空当局)以 外のステークホルダとの連携も行っている。 その活動の一つとして、ACI(Airports Council International:空港の運営及び施設管理を行う企 業等の国際組織)、CANSO(Civil Air Navigation Service Organization:航空管制を行う団体等の 国際組織)、IATA(International Air Transport Association:航空機を運航する航空会社の国 際組織)及びICCAIA(航空機の製造を行う 企業等の国際組織)などの主要なステークホ ルダとの意見交換・調整を積極的に行うため に、「FACT High Level Group Meeting」が創設 された。今般、第38回ICAO総会に合わせて、 ICAO/ICCAIAの意見交換会、ICAO幹部への

表敬訪問などが行われた。 3.ICAOの活動状況

ICCAIA/ICAOの意見交換会において、ICAO のNancy J. Graham氏(Director, Air Navigation Bureau)からICAOの推進方針と重要課題につ いての紹介があったので報告する。 (1)推進方針 ICAOでは加盟する191ヵ国(地域)がICAOの 推進する次世代航空交通管理システムを実現 可能とするために、図1に示すような推進方針 「計画策定 実行 分析 評価 次計画への反映 (いわゆるPDCAサイクル)」を策定している。 図1に示すように、ICAOは基本構想(Global Plan)と し て GASP(Global Aviation Safety Plan)とGANP(Global Air Navigation Plan) を制定し、次に、GASP及びGANPを補足する 文書(手順・標準などを記載した文書)とし て SARPs(Standards and Recommended

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Practices)及 び PANS(Procedures for Air Navigation Service)を制定(改訂)している。 (図中の 部)

次にICAOが行うのは図中に点線で示され ている「Implementation」と「Assess & Measure」 である。「Implementation」は各国が自国にお ける規則作りを行い、必要な設備を準備し、 的確に運用できるようにすることである。 ICAOは各国がこれらの活動を実行しやすく なるように訓練(Training)及び助言・指導 (Guidance)を行うことを考えている。訓練、 助言・指導に対応するために、ICAOは2013 年から2016年にかけてシンポジウム(説明会) 等を多数計画している。 2013-2014年には、次の6つの世界規模のイ ベントをICAOが計画しており、さらに2015 年には6件、2016年には5件の世界規模のイベ ントを計画している。

・ Advanced ATM Techniques Symposium and Workshop(2013.10.4-6)

・ Multi-crew Pilot Licence Symposium (2013.12.10-12)

・ Symposium on the Next Generation of

Aviation Professionals(2014.4月頃) ・ Loss of Control In-flight Symposium

(2014.5.20-22)

・ 2014 Meteorology Divisional Meeting (2014.7.7-18) ・ R e m o t e l y P i l o t e d A i r c r a f t S y s t e m Symposium(2014.11.17-19) また、ICAOには、メキシコシティ(担当: 北米及び中米)、リマ(南米)、ダカール(西 部及び中央アフリカ)、パリ(欧州及び北ア フリカ)、カイロ(中東)、ナイロビ(東部及 び南アフリカ)及びバンコク(アジア及び大 洋州)の7箇所に地域事務所が存在する。こ れらの地域事務所もそれぞれの地域にある 国々に対して地域単位のシンポジウム等を開 催することになっており、各地域事務所は5 ∼6件/年間のシンポジウム等を計画している。

「Assess & Measure」では、ICAOが進捗状況 を纏めるためのテンプレートを作成し、各国 がテンプレートに従って作業することを求め ている。図2はICAOが作成したテンプレート の一例であるが、システム構築に必要な400

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以上の項目について本テンプレートに従って 整理することによって、各国のレポートが均 一化されるのでICAOの指導(査察)がやり やすくなる。 さらに、各地域事務所は、各国の進捗状況 等を確認するために、7∼10日/国の期間をか けて、約30ヵ国/年間の指導を行う計画も立て ている。 (2)重要課題 ICAO は 前 述 し た ACI、CANSO、IATA、 ICCAIAの他にUS(米国)及びEUR(欧州) の航空当局とも調整会議を行い、これら関係 者の考える重要課題を整理したが、表1のよ うにそれぞれの立場の違いによって重要と考 える課題が異なっている。Graham氏からは項 目の紹介のみに止まり、個別のコメントは無 かったが、この差異は重要な問題点であると 認識した。 最上段の「Runway Safety」はすべての団体 が重要と考えているが、その他の項目は意見 が分かれている。「ATFM/CDM」、「PBN」の ように航空機運航上の規則的要素が強い項目 は、運航に関連する団体及び規則を作る側は 重要な課題と認識しているが、ICCAIAのよ うに航空機製造業としては特に新しい機材が 必要となるわけではないので重要度は低いと 考えている。 ATFM :Air Traffic Flow Management PBN :Performance Based Navigation CFIT :Controlled Flight Into terrain UAS :Unmanned Aircraft System CDO :Continuous Climb Operation CDM :Collaborative Decision Making LOC-I :Loss of Control in-Flight RPAS :Remotely Piloted Aircraft System CCO :Continuous Descent Operation GNSS :Global Navigation Satellite System 表1 航空関連団体の優先課題

PRIORITY ICAO ACI CANSO IATA ICCAIA US EUR

Runway Safety(7) ATFM /CDM(6) PBN(6)

ASBU Implementation(5) Safety Culture/Information Sharing and Exchange(5) Safety Management(5) LOC-I(5) Emissions Reduction(5) CFIT(4) RPAS/UAS(4) Cyber Security(4) Service Priority(3) CCO/CDO(3)

Checkpoint of the Future/Next Gen Passenger Screening(3) GNSS Policy(1)

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また、「Cyber Security」のように、実際に システムを使う運航者とシステムの機材を製 造する側は重要な課題と認識しているが、シ ステムの基本を考えるICAO、米国・欧州の 航空当局の意識が低いことは危惧すべきこと である。ASBUでは「音声通信のディジタル 通信化」、「データの統合活用」などが盛り込 まれており、コンピュータ活用の度合いが大 きくなるため、セキュリティは非常に重要な 課題と認識しなければならない。 さらに、「GNSS Policy」についてはICCAIA のみ重要性を指摘しているが、その他の団体 は重要性をあまり認識していない。ASBUの 大きなポイントの一つは「GPSの活用」であり、 従来のレーダ等に変わって航空機の位置情報 等を決定する唯一の情報源となるものである ため、その重要性は大きいと考えられる。し かし、運航者(利用者)側からみれば、出来 上がったシステムを使うだけであり、その重 要性が感じられていないものと思われる。 このように、各ステークホルダが重要視す る課題が異なることは、システム構築時にお ける時間軸(達成時期)に齟齬が発生する可 能性を秘めることになると考えられる。 4.ICAO幹部への表敬訪問 9月23日、ICCAIAのピア会長以下専務会議 メンバーはICAO理事会議長、事務局長、委 員会議長等を表敬訪問した。その概要を以下 に記す。

(1)Roberto Kobeh 理事会議長およびRaymond Benjamin 事務局長 Kobeh議長は産業界が参加しないICAO総会 は無意味であるとして、ICCAIAの積極的な 協力を多とした。航空安全の向上にとって製 造者の意見は貴重。なぜならスタンダードは 製造者が開発して所有する技術の上に作られ るものであり、その製造者が技術を向上でき るよう、航空機オペレータ、管制官、空港な ど関係産業がパートナーとして協力していく ことが重要。 Benjamin事務局長はKobeh議長が年内に退 任することにふれ、最後まで業務に万全を期 すと述べた。 (2)Christian Schleifer-Heingartner 航空運送委 員長 委員長から以下の発言があった。 ATMの現状はまだ赤ん坊のような状態。15 年先の将来を見越してブロックごとに計画を 立て、アップグレードしているところ。技術 陣 は よ く や っ て い る が、DATA リ ン ク や GNSS、system-wide information management (SWIM)など、まだ多くの課題が未解決であ る。産業界からは新たなシステムの導入コス トが高すぎるとの声を聴くが、制度の調和に よる外部効果を理解されたい。

その他、Safety Management System(安全情 報の共有システム)の構築に当たり、製造事 業者からのDATA提供に協力願いたい旨の発 言があった。 (3)Jim Marriott 航空運輸局航空安全チーフ 産業界がインボルブされる仕組みを作るべ きとの意見に対して、Marriott氏から以下の発 言があった。 ICAOのセキュリティコミュニティは、長 いこと手荷物や身体のスクリーニングを重視 してきた。しかし今起こっていることは、個 別の技術を重視するほど空港での処理に時間 がかかり、フラストレーションがたまること である。最近では規制当局との連携が進み始 め た 。 T S A ( T r a n s p o r t a t i o n S e c u r i t y Administration)が典型だが、規制当局がサー ビス提供者としても登場してきた。その結果、

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合理化が進み、すべての人や荷物をフォーカ スするのではなく、リーズナブルなコストで セキュリティレベルを高められるようになっ た。これまでの成果を関係者と情報共有する ことで、さらにレベルを向上させていきたい。 (4)Jane Hupe 航空運輸局環境チーフ Hupe氏から以下の発言があった。 CO2スタンダードができたことは大きな成 功だった。その他のイシューも90%は成功 裏 に 達 成 し て き た が、こ こ に 至 っ て MBM (Market-Based Measures)が大きな障害となり つ つ あ る。欧 州 ETS(Emissions Trading System)の実施が先送りされたが、MBMもや るのかやらないのかで大議論となっている。 次の理事会でMBMのオプションの選択がで きるよう、どの方法がコスト的に合理的か比 較した数字を示していきたい。こうした議論 が出てくるのは政治的な意思が背景にあるた めで、気持ちの良いものではないが、2年前 と比べればずっとましといえる。我々はコン センサス形成を目指すが、最後は多数決で決 める。大変だが最後には何とかなると思って いる。 5.第38回 ICAO総会(技術委員会) ICAO総会は9月24日から10月4日まで開催 されたが、ICCAIA耐空性員会が関連する6つ の議題は、26日午前9時から12時の間に技 術委員会で討議されることになっていた。 ICCAIAからはICCAIA耐空性員会の議長であ るClaude Schmitt氏(エアバス社OB)、Todd Sigler氏(ボーイング社)、とMarinus Heijl氏 (ICAO駐在)、Maxime Ricordeau氏(ASD)が 参加した。 議長は事前にマレーシア、当日議場にて副 議長がポーランドとボリビアに決まった。議 事は議題に関して各国代表またはObserverが あらかじめ提出したWorking Paper(WP)に 基づき提案者が簡単に説明し、それに対して 各国代表またはObserverが意見を述べる形で 進行する。 技術委員会 会議風景

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議長によれば技術委員会のWPの総数は150 件(HP上は170件)を超えるとのことであった。 WPについては以下のサイトを参照のこと。 ( http://www.icao.int/Meetings/a38/Pages/ documentation-wp-presentations.aspx) なお、総会のため各WPは国連の公用語に 訳されるので6種類のWPが用意され、さらに 通訳が6ヵ国語に翻訳を行っている。

初 め の 議 題 は、Air Navigation Bureau の DirectorであるNancy Graham女史から3年間 の 活 動 報 告 が、行 わ れ た。そ の 後 Aviation Safety Policy(WP11 件)と Aviation Safety Standardization(WP15件)の2つの議題が討議 されたが、12時で打ち切られ、他の議題に関 しては27日朝から再開とすることになった。 上記2件の議案に関しては、安全性に関する 議論のため対立点はなくスムーズに進行して いたがWPの数と発言国が多いため時間を要 していた。 また、技術委員会の会場では、偶然台湾の 沈啓航空局長(女性)と机を並べることになっ た。台湾は特別ゲストの待遇でObserver席の 隣に席が指定されていた。局長はとてもフレ ンドリーな方で、現在の台湾と日本の関係は 非常に良好であり、日台における運航協力(路 線拡張、整備協力等)などのお話をすること ができた。また、局長退席後は、昨年のクリー ブランドでのFAA/EASA国際航空安全会議で 面識のある担当者が席に着き、雑談も含め会 話することもできた。 尚、台湾に関しては以下の報道があった。 (帰国後ネットにて取得) 「カナダのモントリオールで24日、国連の 専門機関である国際民間航空機関(ICAO)の 総会が始まり、台湾の代表団が1971年の国連 脱退後初めて「特別ゲスト」として参加した。 沈啓・民用航空局長ら台湾の代表団は、10月 4日まで開かれる同総会に「中華台北」(チャ イニーズタイペイ)の名義で参加した。」 SJACではICCAIA(International Coordinating Council of Aerospace Industry Association)を通 じて国連機関であるICAOの活動に連携し、 ICCAIA ANEEC(航空騒音・エミッション委 員会)とAirworthiness Committee(耐空性員会) に参画しており、前者はICAO CAEP(航空 環 境 保 全 委 員 会)の 活 動、後 者 は ICAO 各 Working Groupおよび毎年開催されるFAA/ EASA国際航空安全会議などで活動している。 6.所感 各国ではICAOの指針に基づく次世代航空 交通管理システム構築へ向けた活動を行って いるが、本誌(平成25年10月号)の「次世代 航空交通管理システムにおける欧米の協調活 動 に つ い て」で も 紹 介 し た よ う に、米 国 (NextGen)及び欧州(SESAR)のシステム構 築においては依然として差異があり、両者は 懸命に相互運用性を確保するための検討を 行っているが、課題も多く残っている。 本稿で紹介したように、適切なシステム構 築と新システムへの円滑な移行が可能となる ように、ICAOが幅広いステークホルダを対 象として、啓蒙、調整、指導などの活動を行っ ているので、我が国もICAOの推進方針に協 力して活動する必要があると考えられる。ま た、ステークホルダ間での重要課題の認識に 差異があるため、システム構築の障害となる 可能性がある。この状況を解消するためにス テークホルダ間の整合作業が必要であり、今 後の状況によっては一部の方向性が修正され る可能性も残っている。 日本の航空機産業の発展のためには海外の ルールを順守する必要があるが、前述のよう に海外の状況も刻々と変わりつつあるのが現

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状であり、日本企業においては十分にその状 況が把握されている状態ではないと感じら れ、今後海外の動向について熟知することが 不可欠であろうと感じられた。 また、航空(機)産業においては、業務に 関する直接・間接を問わず海外で活動するこ とによる利点が多くあると思う。海外の企業 や当局では担当者は長くその役職にとどまる ことから、我々も現在の国際的な活動を継続 することで、人脈を広げ、背景を含めたより 幅広い情報・知識を得ることが可能となると 考える。会員企業の一部の皆様にはICCAIA の活動を通じて活動にご協力をいただいてい るが、今回の海外調査なども含め、いろいろ な機会を通じて情報収集と会員への周知に努 め、今後の更なる活動や参加を促して行きた い。 〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部部長 杉田 明広、飯島 澄〕

参照

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