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チチュウカイミドリガニの日本への侵入と繁殖

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C A N C E R 6 (1997), p. 37-40 37

チチ ュウカイミ ドリガニの日本への侵入と繁殖

渡 過 精

近年,多くの外来種が日本に侵入し定者を果た の後,チチュウカイミドリガニはその分布域をさ している . 短尾類では侵入記録があるものは一例 らに広げつつあり ,各地 から発見の報告がなされ 報告があるイチョウガニ科のアメ リカイチョウガ 始め てい る( 図

2) .

ニ( ダンジネスクラブ) Cancer m agister (阿部, 1981), ときどき報告があるワタ リガニ 科 のブ ル ークラブC allinectes satidus (Sakai, 1976 ; 有 山, 1985 ; 長谷川,1992) すでに定着しているクモカ ニ科のイッカククモガニ Pyromia tuberculata (風 片田ら, 1988,風呂田 ,1990) がよく知られてい るカえチチュウカイミ ドリ ガニ Carcinus aesluarii (= mediterrane叫s) (図1) もごく最近日本に定着 した干重の 一つである . チチ ュウカ イ ミ ドリ ガニは ミ ドリ ガニ Caγn n u s m aenus に比較してやや小さ い稜でミド リガニ と同様に世界中に分布を広げつ つある . チチュウカイミド リガ ニは 日本に侵入して東山 湾では確固たる 個体群を形成し繁殖を繰り返し, 相当数が生息している . 前回の報告( 波法 ,1995) 図 ,. チチュウカイミ ドリガ二. 汽水域に多く (塩分 濃度の高いとこ ろにいないわけではない ) 生息 し,素手,手綱等で簡単に捕獲できる.

Sei ichi W A T A N A B E: N otes on the in vasion and growth of the Mediterranean green crab popula.

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図 2 . チチュウカイミド リガニの分布. アンケ ー 卜調 査と文献による分布域の現状. 東京湾では多数 の生息が確認さ れているが,相模湾ではまだわ ずかな数しか見いださ れていない. 大阪湾,洞 海湾でも分布が確認さ れた. 既往の文献の検証とアン ケート調査によりチチ ユウカイミドリガニが日本に侵入した時期 の初記 録とそれに続く発見記録を整理 した. 記録を年代 }II買にまとめると以下のようになる.

(2)

38 チチュウカイミドリガニの日本への侵入と繁殖 酒井 恒( 1984) 大洋を越えて日本の海岸に渡っ てきた蟹類について 日本甲殻類学会第22回大会講演( 日本甲殻類 学会ニュー ス8 を参照). (神奈川県立青少年 センターで開催

D

酒 井 恒 (1985) 大洋を越えて日本の海岸に渡っ てきた蟹類について 日本甲殻類学会ニュース

8: 4

千葉県の竹岡海岸で塵挨の中から得られた . 酒井 恒( 1986) 珍奇なる日本産蟹類の種と属に ついて 甲殻類の研究 15: 1-4 , Plate I -皿. 1959年│ 昭和59年 (1 984年) の間違いと 思わ れる│ に千葉県浦安海岸,地曳き網より池田 等氏が初めて採集した .

n

日和 59年横浜磯子海 岸に多くの磯の動物が這い上が った情報を神 奈川新聞社の江島氏が提供. 池田

(1989) 東京湾のチチュウカイミドリガ 神奈川自然史資料 10 : 83-85. 1984年に 初めて採集. 横浜illJの深度5- 10 メー トルに仕掛けられたコノシロ底刺し網( 千葉 県竹岡港水揚げ) に掛かったもの. 酒井の間 違いを指摘. 1985年 7 月以降東京湾各地での採集記録な

.

萩原清¥ ' iJ (1991) 横浜市野島周辺で、得られたカニ 類

2

希種の記録 神奈川自然史資料 12 : 45-47. 1990年 6 月に東京I巧野島で、ト1-1幅15.0mm の雌, 10月に甲幅38.7mmの雌を採集. 漁師からの聞き取り調査では蟹篭にしばしば かかる. 朝 倉 彰 ( 1 992) 東京湾の制化動物 千葉中央博自然、史研究報特 2 (1) : 1-14. 酒井を引用 . 1984 , 1985年に採集記録あり( 横 浜市公害局) . 国分高校生物部 (1994) 国分高校生物部報. 1990年市川, 1991年, 1992年には江戸 川放水 路で採集. 1993年ゾエアから稚ガニまでの飼 育. 武田正倫 ・細越伸行( 1 993) 東京湾に定着したチ チュウカイミドリガニ 海洋と生物 15 (2) : 121-124. 朝倉1992 を引用. 酒井によるとだけ記載 (1984 年に初記録とある) . 1985年12月多摩川河口で の記録あり . 1992年 多摩川河口 で採集後飼育. 渡遺精一( 1995) 外来種のチチュウカイミドリガ ニが東京湾に大発生 Cancer 4 : 9-10. 酒井を引用. 交尾行動を記載. 1994年には大 量発生.

工藤孝浩

(1995) 野 島 の 海 の 生 き 物 た ち pp . 37-61 横浜・野島の海と生き物たち

i

毎をつくる会 編,八月 書館 266pp . 野島での初記録は 1990年. 次第に地力

U.

田村俊一 ・鈴 木 博 ( 1995) 逗子市回越川で採集 された十脚甲殻類について 日本甲殻類学会第 33 回 大 会 講 演 要 日 (鳥羽 水族館で開催) 1994年 8 月に 1 個体, 1995年には咋i幅5 .8mm から 70 .8mm まで13個体が採集された. 村│音l健作 (1996) チチュウカイミドリガニが東京 湾で、発見されたのはいつか C ancer 5 : 29-30. 1984年11'1殻類学会大会で、酒井 恒氏口頭発表 ( 初記録は 1984年 3 月). 植田育男・萩原、清行l ・崎山南夫( 1997) 相模湾江 ノ烏で採集されたチチュウカイミドリガニ 神奈川自然史資料 18 : 57 -61. 1996年 6 月江ノ島雄 l 個 体 (叩幅 13. 2mm),

9

月に横須賀市長瀬の平作川河口から雄

4

, 雌

3

個体. 鍋 島 靖 信 ・日下部敬之 ・大 美 博H討・ 111下│ 後日

l

(1997) 大阪湾で見つか ったチチ ュ ウカイミ ドリガニ

N atu re Study in press

大阪湾での最初の記録は 1996年 7 月,堺市出 向漁港で甲幅 16 .5mm の個体が採集されたも の. その後 同年10月24 日までに 10個体が採集

されている

(3)

i度 透 精 一

39

D ramatic range expansion of the

nonin-digeneous M ed iterranean green crab. Carcinus aestuarii [=m editerraneω]. in Japan. 北九州洞海湾で

1995

年に多数の発生を確認. 以上のようにチチュウカイミドリガニの捕獲記 録は

1984

年に東京湾での採集が最初であり ,それ 以後しばらくの聞は採集されなか った.

1990

年に はしばしば採集されるようになり,

1994

年には多 くの個体が容易に採集できるようにな った. 個 体 群の定着とそれ以降の成長がロジステイ y ク式 (logistic equation), d N ( t) N ( t)

ーす 「

= γ( l -

K

一 )

N ( t) に従うようであればいずれ飽和密度に達する

(N

(

t)

は t 時における 個 体 数, バま内的成長率,K は環境収平等力) . それ以 降, 一般的には個体数は 個体群の内的あるいは外的要因によ って, ある宥 ! 支の範囲で振動することになろう( 図 3) . また , 移動や幼生の拡散に よって近接の水域に分布を広 げていくであろう. 各々の水域で繁殖条件がそろ えば (

r>

0

であれば) 東京湾で観察されたよう な個体数の増加が見られるだろう 大阪湾や洞海 湾で、の今後の調査が望まれる.

I

務緩しない地域へ の分布の拡大の原凶はいろいろあろうが想像の域 を出ず確たる証拠はそろ っていない. 侵入に成功 個体数 ある密度に遣した後どう 定着してからの時間 図3. 個体群の憎殖曲線. 定着初期の個体数の培加率 はそれほど高くないが時間と共に急速に個体数 を増やし,やがて飽和密度に達する . 内的成長 率rが高い ほど急激 に増殖する. 飽和密度に達 した後は多くの場合,様々な要因で個体数の振 動がおこる . して定着した個体群はその属する群集の構成員と なり ,群集の中でその種の特性にあった役割を果 た す こ と に な る . 近 縁 種 の ミ ドリ ガニは

1989-1990

年に太平洋に分布を広げカリフォル ニアに定 着し,繁殖力が強いうえにさ まざまな 生物を餌と していて,捕食一被捕食関係を通して在来種の生 物群集に変化 を与えるのではないかと 心配 されて し、る (Cohen et al..

1995:

Grosholz et al..

1995).

ま た , 東 京 湾 奥 の 東 京 水 産 大 学 隣 接 の 運 河 で

1994

年以降調査を進めているが,産卵,抱卵期は 冬であ ること ,交尾前ガー ドを行っている 個体は 5月か ら7月にかけて よ く観察され,雌の脱皮直 後 に交 尾 と な る こ と な どが 明らか に な っている (図 4 ) . ただし飼育していると夏以降も交尾行動 が見られる. 野外ではどうなっているかはまだ明 らかではない. 図4. チチ ュウカ イミドリガニの交尾の様子. 上の大 き な個体が雄,下が雌で,雄の交祭器が雌の生殖孔 に挿入されている. 交尾に先立ち雄は雌をガード し,雌が脱皮した直後に交尾する . 交尾中は持 ち 上げ ても離れ ない. 外来種の定者機構は明確 には判 っていないがチ チュウカイミド リガニでは近縁種のミドリガニ (U dekem d・A rcoz.

1993)

と同 じく,交j毛に際し て雄が雌 をガー ドす ることに より脱皮直後の雌 の 生存Zがを高めひいては繁殖 の成功を確実にするこ とで適応度を高め,新天地の群集への侵入が符易 であると考えられる. 原産地 での生態と侵l桁地で の生態を比較検討して侵略が可能となる条件 と過 程を明確にすることが今後の課題となろう.

(4)

40 チ チ ュ ウ カ イ ミ ド リ ガ ニ の 日本 へ の 侵 入 と 繁 殖

参考文献

│何者1¥晃治,1981. 日本初記録 のCallcer川αg isterD anaホ

クヨウ イ チョ ウガ ニ (新 称). Fj1 殺 鎖 の 研 究, 11: 13- 16.

;

(i山 伴 之 ,1985. 大 阪 湾 で と れ た ア オ ガ ニ C allinecles satidus Rathbunについて . 南 紀 生 物 ,27 (1) : 52. Cohen. A . N.. Carlton J. T . & Fountain. M . C.. 1995. Intro

duction. dispersal and potcntial impacts of the grecn crab Cαrcill us lIIaell US in San Francisco Bay. Califor.

ni a. M arine Biology. 122: 225-237

G rosholz. E. D .. & Ruiz G. M ., 1995. Spread and potential

impact of thc reccntly introduced European green crab, Carc口l1tS m aeuus, in central California. Marine

siology. 122: 239-247

!面¥:"",1王i平1])乙 1990. i東京 湾 奥古1¥にお け る イ ッカ ク ク モ

ガニPyrom ia 日本ベン トス

研 究会誌, 39 : J -7.

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U dekem d'A rcoz, C.d'. 1993. Acti vites reproductrices

saisonn icrcs dcs diffcrcntes classes de tailles d'une population dc crabes verts Ca rcI1lus n回 目日目

(Linnacus. 1758) dans Ic sud dc la m er du Nord. Cah s io.lM ar., 35: 1-13

渡溢 精 一 ,1995, 外来 種 の チ チ ュ ウ カ イ ミ ド リガ ニ が 東京湾に 大 発'1'.. Canccr, 4 : 9- 10.

参照

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