Ⅰ 緒 言 ホウレンソウは,全国で 21 千 ha の面積で栽培さ れ,野菜 41 品目中 8 番目に栽培面積の多い16)重要 な野菜である.大阪府内ではハウス栽培が盛んであ り,夏季には播種後 1 カ月程度で収穫可能であるが, 冬季には 3 カ月程度かかることもあり,低コストな 栽培期間の短縮技術があれば農業所得向上等の経営 安定化につながると考えられる. ところで,長日植物であるホウレンソウ7)は,街 灯等の夜間照明でも抽だいしやすい15).抽だいの目 立つ植物には商品価値がないため,抽だいの発生は, 生産者にとっては出荷量減少に直結する問題とな る.しかし,成松(1996)9)が白熱ランプを用いた 2~3Lx 以上の補光試験を行い,延長部分を含む日 長が合計 13 時間程度であれば,ホウレンソウは抽 だいよりむしろ栄養生長が促進されることを見出し て以来,ホウレンソウ生育促進に効果的な光条件が 検討されるようになった.その一例として,福田ら (1993)1)は,600~700 nm の赤色ランプ下での生育 が優れることを報告しており,また Hamamoto ら (2003)2)は,深夜 2 時間の発光ダイオードを用いた 暗期中断により,ピーク波長 594 nm~655 nm の橙 ~赤色光でのホウレンソウ生育促進効果を示した. 著者は,このような電照処理による生育促進効果 をハウス栽培等の農業現場で活用し,冬季の生育遅 延の課題を解決したいと考えているが,前述の先行 研究は室内あるいはチャンバー内での試験結果であ る.ホウレンソウ生産への電照技術導入のためには, 大阪府内での主要な生産方式であるハウス栽培の環 境下における試験データの蓄積が重要だと考えられ る.ただし,白熱電球の入手が困難になりつつある 近年の状況に鑑み,また消費電力の節約の観点から も発光ダイオードを利用することが望ましい.浜本 ら(2003)3)は,赤色発光ダイオードを用いて 1~2 日間隔の光強度 0.5~1.8 µmol・m-2・sec-1,2 時間の暗 期中断により,ホウレンソウは生育促進することを 報告していることから,一般には弱い光強度でも生 育促進すると考えられる. そこで本研究では,光源の設置方向に平行な直線 上の範囲で均一な光環境が得やすく,入手が容易な 2018 年 7 月 31 日受領 2019 年 1 月 7 日 Correspondence: [email protected] 本研究の一部は,園芸学会近畿支部兵庫大会 (2016 年 8 月 31 日),日本生物環境工学会 2017 年松山大 会(2017 年 8 月 31 日)にて発表した. 〔原著論文〕
チューブ型赤色 LED を用いた電照による
施設ホウレンソウの栽培期間短縮化条件の探索
山崎基嘉
(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所Study of Conditions for Shortening the Growing Period of Spinach
(Spinacia oleracea L.) Cultivated in a Greenhouse
by Using Tube Type Red LED Lighting
Motoyoshi Yamasaki
南北方向に設置の幅 1 m ×長さ 20 m の隔離床(グ ラスファイバー製のドレンベッド:以下栽培ベッド) を用いたが,新たな試験開始にあたり,前作の残肥 の影響等を考慮して,約半量の土壌を更新の上使用 市販のチューブ型赤色 LED を用い,冬作を中心と した施設栽培ホウレンソウに対して生育促進効果の ある電照処理方法の明確化を目的とし,次の 3 つの 栽培試験を実施した.まず秋~春季の播種時期の異 なるホウレンソウ 4 作型における 12 時間電照とそ の強度が生育促進に与える効果を検証した(試験 1). 次に,異なる時間帯における 2 時間の電照処理が生 育促進に与える効果を検討した(試験 2).さらに電 照開始時期を変えて花茎伸長(抽だい)に反応する ホウレンソウの生育ステージについて検討した(試 験 3). Ⅱ 材料および方法 試験は大阪府立環境農林水産総合研究所(以下, 研究所)内の無加温ビニルハウス(以下,ハウス) で実施した.全ての試験にホウレンソウ品種‘ミラー ジュ’(㈱サカタのタネ)を供試した.過去の試験 において,生育の遅い冬季でも他品種より生育が早 く,周年栽培に向いていると判断したためである. 一方,試験に用いたチューブ型赤色 LED(商品名: ルミネチューブ,以下,LED)は,第 1 図,第 2 図 および第 1 表のような外観と光照射特性をもつ.な お本研究では,すべての試験において,ハウス内の 第 1 図 チューブ型赤色 LED の外観とその特性など 注)・商品名:ルミネチューブ ・メーカー:コロナ産業株式会社 ・光源:赤色 LED ・光源の波長ピーク:630~635 nm ・電源:AC100 V ・消費電流:1 セット 0.72 A ・消費電力:72 W ・サイズ:外径 13 mm,1.5 m あたり 54 球 ・主な用途:装飾など 第 2 図 チューブ型赤色 LED の分光分布 測定距離(cm) 0 1 6 10 20 30 光合成有効光量子束密度(µmol・m-2•sec-1) 20.0 5.0 0.7 0.3 0.2 0.2 第 1 表 チューブ型赤色 LED からの距離と光合成有効光量子束密度
翌 6 時の 12 時間に設定した.対照区は電照処理を せず,電照区と同様に栽培を行った. 2)栽培方法 基肥なしの栽培ベッドに種子を 2 粒ずつ点播し, 子葉展開後直ちに 1 本に間引きした.間引き完了と 同時に,綿実油粕 100 g/㎡,8-8-8 化成 100 g/㎡(以上, 合計 N: 13.5 kg/10 a,P2O5:10.0 kg/10 a,K2O:9.2 kg/10 a)を施与した. 3)調査方法 最も生育の早かった水平距離区の草丈が 20 cm 以 上となった時点で,すべての区から 5 株ずつを抜き 取り,各株の中で,葉柄基部から葉身の先端までの 長さが最長の葉について,その長さを最大葉長とし て計測した.その他,花茎長,葉色(SPAD 値),草 丈,株重を測定した. これらの生育調査結果は,測定項目ごとに Dunnett 法により検定(危険率 5%)し,対照区と有意差があっ た水平距離の範囲を電照影響距離と定義した.また, 花茎が 5 cm 以上に伸長した個体を抽だい株と定義 した.さらに,各試験期間を通じ,インターネット した. 1 異なる栽培時期での電照強度の影響(試験 1) 1)試験区の設定 本試験では,第 3 図のとおり,2013 年 9 月 24 日 ~2014 年 1 月 10 日にかけて播種する 4 作型で試験 栽培を実施した.栽培ベッド 4 等分の面積を各作型 に割り当て,反復無しの試験配置とした.第 4 図の ように条間 20 cm,各条につき株間 5 cm でホウレン ソウを栽培した. LED による電照は,光強度に勾配がつくように, 栽培ベッドの直上 30 cm の位置に長辺方向と直交し て設置し,直下の条を 0 cm として長辺方向に 0 cm から 240 cm までの 20 cm 間隔の条の並びを光源か らの水平距離(0~240 cm)とした.試験区の境界 には,大きさが 1.0 m × 0.3 m,厚さが 3 mm の光を 完全に遮ることができるゴム性シートで間仕切り し,光の漏出を遮断した.本試験期間において,日 長時間が 12 時間以内であった(第 3 図)ため,電 照は本葉 4 枚期から試験終了時まで,毎日 18 時~ 月/日 9/24 9/28 10/11 10/29 11/8 11/18 11/25 12/13 1/10 1/21 2/12 3/14 3/20 日長時間 12.1 12.0 11.5 10.9 10.6 10.3 10.1 9.9 10.0 10.2 10.9 11.9 12.1 2013/9/24 ○ 10/11 ●11/8 2013/10/29 ○ 11/18 ●12/13 2013/11/15 ○ 12/13 ●1/21 2014/1/10 ○ 2/12 ●3/20 播 種 日 (45) 17 20 28 33 28 25 47 36 (45) (75) (69) 第 3 図 実施した試験栽培の作型と日長との関連(試験 1) 注) ○は播種日,□は電照期間,●は生育調査日を示す.また,図中の数字は,播種~電照開始までの日数,電照期間の日数,(播 種~生育調査までの日数)を示す. チ ュ ー ブ 型 赤 色 L E D 第 4 図 チューブ型赤色 LED の吊り下げ点灯試験の概略図 断面図(左)と試験の全体写真(右)
種し,間引き・追肥などの栽培管理を試験 1 と同様 に実施した.3 ブロックを電照区に,残り 1 ブロッ クを対照区に当てた.電照区には試験 1 と同様に LED を栽培ベッドの長辺方向に直行して設置し,各 区,以下に定めた期間中毎日電照処理を実施した. なお,電照時刻は 19~21 時とした. (1) 初・中期電照区:出芽時~本区内の植物に花茎 伸長確認時まで電照 (2) 中期電照区:本葉 4 枚展開期~本区内の植物に 花茎伸長確認時まで電照 (3) 中・後期電照区:初・中期電照区の電照終了時 ~12 月 19 日まで電照 2)調査方法 播種後 23 日目の 10 月 31 日以降毎週 1 回,電照 区では LED 直下,対照区では同位置のホウレンソ ウをそれぞれ 4~6 株選び,立ち毛状態で最大葉長, 花茎長を測定した.なお中・後期電照区の最大葉長 は,12 月 5 日より調査を開始した. Ⅲ 結果および考察 1 異なる栽培時期での電照強度の影響(試験 1) 異なる 4 作型での試験栽培結果を対照区に対する 生育割合で示す(第 5 図).全般に,ホウレンソウ の生育は光源に近いほど優っており,電照強度が生 育に及ぼす影響は明らかであった.また,播種時期 による影響について,例えば最大葉長についてみる と,10 月 29 日播種では,電照 0 cm 区が 22.7 cm だっ たのに対し,対照区では 13.2 cm であり,すべての 水平距離で対照区より有意に長く,電照影響距離は 最長(240 cm)であった.しかし,播種がこれより 早くても,遅くてもその影響は小さく,電照影響距 離は短かった.草丈(電照 0 cm 区:22.7 cm,対照区: 13.2 cm)や株重(電照 0 cm 区:12.5 g,対照区:5.7 g)も類似した傾向であった.ただし,光源に近い ほど葉色(電照 0 cm 区:36.7,対照区:59.7)は薄かっ た.LED の光強度は発光部の直近で 20.0 µmol・m-2・ sec-1,30 cm 離れた箇所で 0.2 µmol・m-2・sec-1(第 1 表) であり,水平距離 240 cm ではさらに弱い.ホウレ ンソウの光合成量を高めるには 110 µmol・m-2・sec-1 程度の光強度が必要である9)ことから,本実験の生 育促進は電照による光合成の活発化とは考えられ 上の情報6)より,日の出時刻-日の入り時刻から日 長時間を算出した. 2 照射時刻の異なる電照の影響(試験 2) 1)試験区の設定・栽培方法 4 等分した栽培ベッドのうち 3 ブロックを毎日 19 ~21 時,23~1 時,3~5 時に点灯する電照区(以下, 19-21 区,23-1 区,3-5 区とする)に,残り 1 ブロッ クを対照区に当てた.各区の境界には,試験 1 と同 じゴム性シートで間仕切りし,隣のブロックからの 光の漏れを遮断した.電照区では,各ブロックの中 央部,高さ 30 cm の位置に,長さ 3.0 m の LED を南 北方向に吊り下げた. 2016年10月27日に,6 cmビニルポットに栽培ベッ ドの土壌を充填し,各ポットに種子を 2 粒ずつ播種 した.出芽後,適宜間引して 1 株 / ポットに仕立て, 各ポットに緑化専用粒状肥料(商品名:バーディー ラ ー ジ(20 kg 当 た り,N:2.0 kg,P2O5:2.0 kg, K2O:2.0 kg を含む),ジェイカムアグリ㈱)を 0.9 g ずつ(各ポット N:0.09 g,P2O5:0.09 g,K2O :0.09 g)施与した.それらのポット苗を 18 株ずつ LED 直下に 2 条配置して LED からポット内の土壌表面 までの距離が 30 cm となるように各ポットを土壌中 に埋め込んだ.対照区も同様に配置して栽培管理し た.播種後 22 日目の 2016 年 11 月 14 日に電照を開 始した. 2)調査方法 播種後 82 日目(電照開始 64 日目)の 1 月 17 日 には,最も生育の早かった区が収穫適期に達し,花 茎伸長が充分に進んだため,各区から 3 ポットずつ 採取し,最大葉長,花茎長,草丈,株重を測定した. また最大葉については葉柄長と葉身部の面積を計測 した.面積の計測では,コピー機により得た等倍画 像に対して,5 ㎜四方のマス目が印刷された透明板 を上に重ね合わせ,葉身上に存在するマス目の交点 数をカウントし,その交点数× 25(mm2)/100 によ り面積(cm2)を算出した. 3 照射期間の異なる電照が花茎伸長に及ぼす影響 (試験 3) 1)試験区の設定・栽培方法 4 等分した栽培ベッドに,2016 年 10 月 8 日に播
物の栄養生長から生殖生長への移行の過程で起こる ものと推測し,抽だいせずに葉の伸長を促進したの は,作物が完全に生殖生長に移行するのに時間がか かるためと考察している.本試験では,LED 直下で の光強度が強いため,より長日効果が明確となり生 殖生長へ移行したことを示す花茎伸長が顕在化し, 水平距離が長いほど光強度が小さくなり,生殖生長 へ完全には移行せず葉の伸長につながったと考えら ず,葉柄の伸長は徒長によるものと考えられた. 他方,花茎長に関しては,播種日が早いほど電照 影響距離は長い傾向があったが,対照区との差は 10 月 29 日播種が最少であり,それより早くても遅く ても影響が大きい傾向が認められ,最大葉長,草丈, 株重とは逆の傾向が認められた. 浜本ら(2003)3)は,1-2 日間隔の 2 時間の暗期 中断処理によるホウレンソウの葉の伸長促進は,作 第 5 図 生育調査結果(試験 1) 注) 図中に記載の播種月日で示す 4 つの異なる作型で試験栽培した.各作型では,本葉 4 枚期から試験終了時まで毎日 18 時~翌朝 6 時 の 12 時間,チューブ型赤色 LED による電照を実施した.生育の最も早かった区が草丈 20 cm 以上となった時点で生育調査を実施し, 各測定項目毎に Dunnett 法により多重検定(危険率 5%)した.各図は,対照区との生育割合の差を示し,有意差のあった水平距離 を両矢印により図下部に示した.ただし,花茎長は対照区の測定値が 0 cm であり,割合(%)で算出不可のため,実測値の差で示 した.
向があったことに触れる.群落の特性上,避陰反応5) により群落の中央にある植物ほど草丈が伸長する が,これは赤色光(R 光)に対して遠赤色光(FR 光) の割合が相対的に高い場合(低 R/FR 条件の場合) に起こる10).林田らも高 R/FR の条件下でチンゲン サイのセル成型苗の茎長が短くなり,低 R/FR の条 件下で長くなると報告している4).このことを踏ま えると,本試験では,第 4 図に示すように,電照強 度の最も高い群落の最外縁部の電照 0 cm 区は比較 的高 R/FR の条件下に,一方,群落内部に位置する 電照 20~60 cm 区は比較的低 R/FR の条件下に設定 された区であると考えられ,いずれの区も長日反応 により花茎伸長は見られたものの,より低 R/FR 比 の条件だった電照 20~60 cm 区での花茎伸長が顕著 であったと考えられた. 今後の試験設計では,電照 0 cm 区のさらに外側 に番外の株を設けるなど方法を工夫して,真に電照 の影響を検証できるようにする必要がある. 2 照射時刻の異なる電照の影響(試験 2) 電照処理により,最大葉長,葉柄長は対照よりも 長く,葉面積は広くなった(第 2 表).電照区間中 でも差がみられ,最大葉長は 23-1 区よりも 19-21 区, 3-5 区 の 方 が 長 か っ た. 一 方, 花 茎 長 は 23-1 区, 19-21 区の方が 3-5 区よりも長かった.本試験を行っ た 10 月 27 日~翌年 1 月 17 日について,大阪府の 最も早い日の出時刻は日 6 時 14 分,最も遅い日の 入り時刻は 17 時 10 分6)であり,本試験で設定した 23-1 区,19-21 区,3-5 区の電照時刻はすべて夜間の 暗期中断処理に当たる. 植物の電照への感受性は,暗期の中央で最も高 い13)とされてきたが,0 時を挟んだ真夜中よりも, れた. しかし,本試験における各作型栽培期間中の大阪 府の平均気温は,9 月 24 日播種:17.4℃,10 月 29 日播種:11.1℃,11 月 15 日播種:5.9℃,1 月 10 日 播種:5.9℃ であり,播種時期が遅いほど気温が低い. ホウレンソウは,長日高温により抽だいする7)こと を考慮すると,播種時期の早い順に花茎伸長が進む と思われるが実際にはそうならなかった. ここで,9 月播種と 10 月播種とは播種時期が 1 カ 月程度の違いだけであるのに,生育調査時点での花 茎長の結果が全く異なったことに焦点を絞り考察す る.電照後の平均日長は 9 月播種では 11.1 時間と, 10 月播種の 10.1 時間に比べて長かったため,9 月播 種の方が電照による長日効果を充足しやすく,花茎 伸長が促されたと推察された.一方,10 月播種では, 他の 3 作型と比較して最大葉長,草丈,株重がすべ て最大であり,花茎長 5cm 以上の抽だい株は少な かった(第 5 図)ことから,生殖生長への転換が進 まなかったと考えられた.また,ホウレンソウの生 育の最適温度は 15~20℃7)とされる.本試験にお けるハウス内のホウレンソウ群落の遭遇温度は,前 述した大阪府の平均気温より高く推移したと推定さ れることから,9 月播種では,30℃ を超えるような 生育に不適な高温への遭遇期間が長いため栄養生長 が充分進まず,そこへ電照による長日効果が加わり 生殖生長へ転換し花茎が伸長したと思われた.一方, 10 月播種では,最適温度条件に収まる期間の割合が 高く,播種直後から栄養生長が旺盛に進み,電照に よる長日条件下においても,花茎伸長への反応が鈍 かったのではないかと考えられた. また,花茎長について,最も光強度が高い電照 0 cm 区ではなく,20~60 cm 区で花茎長が大となる傾 処理区 19~21 28.2 a 14.1 a 32.5 ab 47.5 a 12.9 b 101.0 a 23~1 23.1 b 39.7 a 44.3 a 47.7 a 12.1 b 55.9 b 3~5 27.5 a 0.0 27.7 ab 34.0 a 14.7 a 71.4 ab 対照(無処理) 17.1 c 0.0 17.1 b 13.3 a 8.4 c 34.2 c 葉面積 (㎠) 最大葉長 (cm) 花茎長 (cm) 草丈 (cm) 株重 (g) 葉柄長 (cm) 注) 2016 年 10 月 27 日に播種,11 月 14 日から 64 日間電照処理し,翌年 1 月 17 日に生育調査(n = 3) した結果を示す.表中の同一アルファベット間には Tukey の多重検定により,危険率 5% で有意差 なしを示す.ただし花茎長については,19-21 区と 23-1 区のみを t 検定した(危険率 5%)結果を 示す. 第 2 表 生育調査結果(試験 2)
電照区が 10 月 13 日~11 月 15 日(33 日間),中期 電照区が 10 月 31 日~12 月 5 日(35 日間),中・後 期電照区が 11 月 15 日~12 月 19 日(34 日間)となっ た. 最大葉長について,初・中期電照区は 10 月 31 日(電 照開始 18 日目),中期電照区は 11 月 15 日(同 15 日目),中・後期電照区は 12 月 12 日(同 27 日目) から対照区よりも長くなった(第 6 図).また,花 茎について,初・中期電照区は 11 月 15 日(電照開 始 15 日目)から,中期電照区は 12 月 5 日(同 36 日目)から伸長がみられたが,中・後期電照区と対 照区は試験終了時まで花茎伸長はなかった(第 7 図).また,初・中期,中期電照区で確認された花 茎は,電照終了後も伸長し続けた. 最大葉長を指標とした場合,どの生育ステージに 電照を行っても電照効果があった.しかし花茎は 初・中期,中期電照処理では伸長したが,中・後期 電照処理では伸長しなかった.この要因は,電照処 理する生育ステージの違いによる可能性がある.ま た,試験 2 で考察したように,暗期中断前に充分な 長さの暗期があれば抽だい反応が鈍くなるという結 果に鑑みると,比較的日長時間の長い時期に電照処 理を開始した初・中期や中期の電照処理では抽だい し,電照前に充分な短日条件,つまり長期の栄養生 長期間を経過した中・後期電照処理では抽だいに至 その前後にずらした方が,植物の生育促進や花芽分 化への影響が大きいことが近年報告されている.例 えば,ワケギでは,真夜中よりも朝方の暗期中断の 方が鱗茎肥大しやすく8),真夜中を挟む暗期中断に よる花芽分化抑制が行われてきた短日性植物のキク でも,真夜中よりも午前中の暗期中断の方が花芽分 化抑制効果が高く,一定時間の暗期経過が花芽分化 抑制に効果的な条件だと推察されている11). これらの事例を考慮すれば,本試験結果は,一定 期間の暗期を経過しない 19-21 区では,充分な暗期 を経過する 3-5 区に比べて日長延長の意味合いが強 く長日条件に近かったことから,より花茎伸長が進 んだと考えられた.他方,最大葉長や草丈等は, 19-21 区,3-5 区による差はなかった.花茎伸長条件 に比較して葉の伸長促進等には電照処理時刻の影響 は小さいと考えられた. 3 照射期間の異なる電照が花茎伸長に及ぼす影響 (試験 3) 出芽は播種後 5 日目の 10 月 13 日に,本葉 4 枚の 展開は 10 月 31 日に確認された.花茎伸長は,初・ 中期電照区では 11 月 15 日(播種後 38 日目),中期 電照区では 12 月 5 日(同 58 日目)に観察され,中・ 後期電照区では,12 月 19 日(同 79 日目)まで花茎 伸長はなかった.これにより電照期間は,初・中期 第 6 図 電照処理期間が最大葉長に及ぼす影響(試験 3) 注)2016 年 10 月 8 日に播種し,図中に記載の期間電照処理した. 各調査時での異なるアルファベット間には,Tukey の多重検定で有意差あり(危険率 5%)を 示す(n = 4~6).
生育促進ではなく徒長だと考えられた.葉の伸長促 進効果は,短日時期に現れやすいが,電照の光強度 が強ければ花茎伸長の危険が増すと考えられた.ま た 2 時間の電照処理でも葉を伸長促進させ収穫期を 早めることが可能であり,早朝に実施することで抽 だいを抑制できた.ただし,一旦,花茎伸長状態に 入ったホウレンソウは,電照を停止しても花茎が伸 長し続けることが明らかになった. Ⅳ 摘 要 チューブ型赤色 LED を用いた施設ホウレンソウ 栽培への電照処理により,葉の伸長促進効果と花茎 の伸長性について,以下の 3 つの試験により検証し た. (試験 1)9 月~翌年 1 月までの 4 作型で,夜間に 12 時間電照した場合,冬至を含む作型では葉の伸長 効果が高く,電照の光強度が弱くてもその効果がみ られたが,電照近傍では花茎伸長もみられた. (試験 2)2 時間電照を 19 時(19-21 区),23 時(23-1 区),3 時(3-5 区)から毎日実施した場合,すべて の電照区で最大葉長と葉柄長が長くなり葉面積が広 くなったが,花茎伸長を抑制したのは 3-5 区のみで あった. (試験 3)出芽時から電照(初・中期電照区),本葉 らず,電照後の日長についても最も短日条件だった ことから抽だいには不適な条件が重なったと考えら れた.また,初・中期電照区,中期電照区,中・後 期電照区の各電照期間の研究所における平均気温 は,それぞれ 14.1℃,10.4℃,7.1℃ であったことか ら,中・後期電照区は,最も低温期間に電照処理さ れたこともあり,その影響で花茎伸長への反応が鈍 かったとも考えられた. さらに,今回の試験では,花茎伸長が始まると, 電照処理を停止しても伸長が継続することが分かっ た.ホウレンソウは長日処理によって抽だいと花成 が起こる.このとき,ジベレリン生合成阻害剤の処 理により,抽だいは阻害されるが花成は阻害されな い14).Suge(1984)12)は,ブラシカ属の低温要求 の少ない典型的な長日植物である中国品種(紅菜苔) では,開花しない 8 時間日長下において GA 処理を 施すと,花茎伸長・開花することを示した.これら を考慮すれば,長日下に置かれたホウレンソウは, ジベレリン活性により花茎伸長を起こし,内生ジベ レリンが充分量に到達した後は,抽だいに不向きな 短日条件下でも,花茎伸長継続が可能と考えられた. 4 結 論 秋~春季の施設栽培のホウレンソウへの赤色 LED 電照処理により,葉の伸長促進がみられた.これは 第 7 図 電照処理期間が花茎長に及ぼす影響(試験 3) 注) 2016 年 10 月 8 日に播種し,図中に記載の期間電照処理した. 各調査時での異なるアルファベット間には,Tukey の多重検定で有意差あり(危険率 5%)を 示す(n = 4~6).
7) 池田英男・川城英夫:野菜栽培の基礎,ホウレ ンソウ,228-229,農文協,東京,2014. 8) 川口岳芳・房尾一宏・尾崎行生:ワケギ初夏ど り栽培用種球生産における暗期中断の時間帯が 掘り上げ時の生育と鱗茎肥大に及ぼす影響,九 大農学芸誌,72,13-19,2017. 9) 成松次郎:ホウレンソウの補光栽培に関する研 究,神奈川研報,137,17-23,1996. 10) 農業新技術 2013―生産現場への普及に向けて― 農林水産省編 p12 11) 白山竜次・郡山啓作:キクの電照栽培における 暗期中断電照時間帯が花芽分化抑制に及ぼす影 響,園学研,12,427-432,2013.
12) Suge, H.: Re-examination on the role of vernalization and photoperiod in the flowering of Brassica crops under controlled environment, Japan. J. Breed, 34, 171-180, 1984. 13) 鈴木雅彦:園芸学の基礎,55,農文協,東京, 2012a. 14) 鈴木雅彦:園芸学の基礎,60,農文協,東京, 2012b. 15) 高尾保之:夜間照明の光質並びに消灯時刻がホ ウレンソウの抽だいに及ぼす影響,東京農研報, 1,9-13,2006. 16) 野菜調査,全国の作付面積,10a 当たり収量, 収穫量及び出荷量.https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500 215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20160& month=0&tclass1=000001032286&tclass2=0000010 3 2 9 3 3 & t c l a s s 3 = 0 0 0 0 0 1 1 0 9 0 3 5 & s t a t _ infid=000031645191 4 枚展開期から電照(中期電照区),充分生育してか ら電照(中・後期電照区)の 3 パターンで電照処理 した結果,初・中期,中期電照処理では,その処理 期間中に花茎伸長を開始し,電照停止後にも花茎は 伸長を続けた.中・後期電照では栽培期間を通して 花茎伸長しなかった. 引 用 文 献 1) 福田直也・池田英男・奈良 誠:光質が人工環 境下で栽培したレタスならびにホウレンソウの 生 育 に 及 ぼ す 影 響, 農 業 施 設,24,77-84, 1993.
2) Hamamoto, H., H. Shimaji and T. Higashide: Budding and bolting responses of horticultural plants to night-break treatments with LEDs of various colors, J. Agic. Meteorol., 59, 103-110, 2003. 3) 浜本 浩・嶋津光鑑・池田 敬:1-2 日間隔の 暗期中断処理が数種葉菜類の生育に及ぼす影 響,園学研,2(4):307-310,2003. 4) 林田達也・柴戸靖志・浜地勇次・大和陽一・山 崎博子・三浦周行:赤色光遠赤色光比の異なる 光環境が高温条件下で生育するチンゲンサイ成 型苗の伸長に及ぼす影,園学雑,70(6),774-776,2001. 5) 避陰反応:光合成辞典―日本光合成学会編, http://photosyn.jp/pwiki/index.php?% E9% 81% BF% E9% 99% B0% E5% 8F% 8D% E5% BF% 9C
6) 本日の大阪府の日の出・日の入時刻と方角. https://hinode.pics/state/code/27.