学校保健・特別支援教育分野における理学療法の現状と展望
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(2) 学校保健・特別支援教育分野における理学療法の現状と展望. 135. 理学療法士が考える学校保健への介入内容について. 5) 進んでいる 。この「チームとしての学校」の一員とし. は,理学療法士はおもに特別支援教育や部活動などの障. て,部活動に関する専門スタッフや特別支援教育のス. 害予防が中心となり,医学的知識を活かした専門的な分. タッフとして理学療法士の活用が検討されており,地域. 野でのかかわりが主体となる。しかしながら,少子化の. 自治体と教育委員会と連携・協力し,学校における体制. 流れを受け日本の財務省は教員削減の思案を出してお. 整備にかかわることが求められている。. り,専門家が学校に常勤として勤務することは難しい課 題となっている。実際に,学校保健に必要な要素につい. 2.理学療法士の学校保健にかかわる現状と課題. て俯瞰し,理学療法士が貢献できる部分の総量を増やし. 本会において実施された学校保健における理学療法士. て,児童・生徒の個人的な健康管理だけでなく,教職員. の活用環境整備の調査によって,会員 552 名の活動状況. も含めた学校全体の健康増進に関与していく視点が必要. が報告されている. である。. 活動を実施していたのは 283 名(51.3%)であった。現. 6). 。回答者のうち,学校保健に関する. 米国の学校保健においては,「調整的学校保健モデル. 在実施していないものでも,そのうちの 64.1% は今後実. (Coordinated School Health Model:CSH)が提唱され,. 施の予定がある,もしくは依頼があれば受ける,と回答. 学校保健スタッフが考えるべき分野の特質を捉えるモデ. している。また,活動事例の詳細においては,高等学校. ルが提示されている。1980 年代には 3 つの要素(学校. の生徒を中心に特定の部・クラブ活動に所属している生. 保健サービス,教育,環境)が中心に捉えられていた. 徒・児童の全例を対象にして,個別・集団介入,個別の. が,1987 年には多角化・細分化され 8 つの構成要素(学. 運動処方や予防プログラムを提供していることが多く,. 校保健教育,体育,栄養サービス,保健サービス,心理. 事業実施の目的は外傷・障害への対応・予防が多かっ. 社会サービス,学校環境,コミュニティの関与,学校. た。実際の理学療法士の活動を見ても,多くは部・クラ. スタッフの健康増進)のモデルが提唱された. 3). 。その. ブ活動でのかかわりであり,学校全体に定期的に介入し. 後,学校だけでなく,地域全体も含めて,子どもを包括. ているきわめて少ないのが現状である。. 的に捉える考え方へと発展しており,最新の学校保健. 平成 28 年度より実施された運動器検診は理学療法士. の展開システムとして,「学校全体・地域全体・子ども. が学校にかかわるうえで,ひとつの転機となると考えら. 全体モデル(Whole school, Whole Community, Whole. れている。運動器検診が開始されてから,徐々に実態. Children:WSCC)が提唱されている. 4). 。米国では米国. 調査の報告が行われており,課題が多く挙げられてい 7)8). 。課題として,挙げられているのは,1)運動器. 疾病予防対策センターとカリキュラム管理・開発協が一. る. 体となり,健康と学業成果の連携を改善するために,こ. 検診の必要性を学校現場が十分に理解できていないこ. の新しいモデルが開発されている。健康に影響を与える. と,2)学校医の多くが内科,小児科の医師であり整形. 要因について包括的に考え,体系的,統合的,協力的な. 外科医の関与が少なく専門的な対応ができないこと,3). アプローチの重要性を説いている。このような流れは,. 専門的知識を有さない養護教員が中心となって対応する. 日本の介護保険の現状が地域包括支援に移行してきた潮. ため,児童生徒の対応が困難であること,4)実施にあ. 流と類似しており,児童・生徒へのかかわりを中心に社. たり運動器検診に十分に時間を割くことができないこ. 会福祉を総合的に捉えていくモデルが理想的な形として. と,5)検診が必要な児童生徒はすでに受診済みである. 示されている。. ため検診の意義が少ない,などが報告されている。各種. こうしたモデルを参考に,本邦で理学療法士が学校保. の報告や現場の意見を集約すると,運動器検診が子ども. 健に参入するためには,教員免許を取得する方法を考え. の運動器障害の早期発見・早期予防につながっている状. るだけでなく,学校保健に求められる課題をどれだけ解. 況は少ないと考えられる。逆に,課題が多い取り組みで. 決できる存在として理学療法士が認知されるかが重要と. あるため,理学療法士の活用は学校保健への参入障壁の. なる。障害を有する児童・生徒に対する医療的ケアや部. 突破口となる可能性を秘めている。. 活動でのアスレティックリハビリテーションだけでな く,学校全体の身体活動量の増加や栄養指導など,学校. 3.運動器検診の支援モデルの活用. 保健に関する多くのニーズに応えられる人材の育成が必. 我々は,平成 26 年度より運動器検診の支援を理学療. 要となる。. 法士が実施するモデル事業を実施している. 実際に,平成 26 年に文部科学省における中央教育審. にかかわる足掛かりとして,現場が困難感を抱えている. 議会において「チームとしての学校・教職員の在り方に. 運動器検診への支援は重要である。運動器検診へのかか. 関する作業部会」が設置され,子どもを取り巻く状況の. わりについては,おもに 4 つ支援方法があり,1)問診. 複雑化・困難化した課題に的確に対応するため組織外の. 票の作成への関与,2)実施マニュアル作成への関与,3). 人材や資源を活用しつつ,組織の力を高める取り組みが. 検診の支援,4)事後措置(運動指導)の実施,が挙げ. 9). 。学校保健.
(3) 136. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. 図 1 運動器検診の支援に関する実践例. られる(図 1) 。山梨県において,平成 29 年度に公立高 等学校 3 校にて運動器検診の支援を実施した。各校の検 診の実状に応じてかかわり方は異なったが,上記の 4 つ のかかわりを実施した。3 校合わせて 1,853 名の生徒を. 野におけるエビデンス構築に必要である。. 教育的リハビリテーションにおける教育的理 学療法支援としての特別支援教育. 対象に行い,そのうち運動指導としての事後措置を行っ. 1.特別支援教育モデル. たものは 347 名(18.7%),受診勧告に至ったものは 12. 特別支援教育分野では,リハビリテーション医学にお. 名(0.6%)であった。運動指導としてのかかわりにおい. ける理学療法学の立場から「教育的理学療法支援モデ. ては,腰痛や足関節捻挫後の後遺症など部活動にかかわ. ル」を次のように定義した。ここでいう教育的支援モデ. るスポーツ障害への指導が多かった。一方で,しゃがみ. ルとは,文部科学省が示した特別支援教育の概念. こみができない,片足立ちでふらつくなどの運動機能の. 基づき,障害のある児童・生徒を対象として,自立や社. 問題に対しても指導を行い,予防としてのかかわりを実. 会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点. 施した。運動器検診の支援を理学療法士が実施していく. に立ち,児童・生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握. ためには,体系的に地域自治体および教育委員会,医師. し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善ま. 会との連携を構築していく必要がある。. たは克服することを目的とし,その方法はリハビリテー. 13). に. ション医学の知識に基づきその技術を応用し,適切な指 4.エビデンスの構築に向けて. 導および必要な支援を行うことと考えた。. エビデンスを蓄積していくためには,明確なアウトカ. 本協会では,上述した 2011 年度の調査報告に基づき,. ムを標準化して介入における効果を検証していく必要が. 理学療法士が特別支援教育においてリハ支援を実践して. ある。学校保健分野における蓄積されたデータのひとつ. いくために必要な方法論について検討してきた。図 2 の. として学校関連事故の件数が挙げられる。これは,日本. とおり,特別支援教育におけるリハ支援モデルを次のよ. スポーツ振興センターから発行されている「学校の管. うに 3 つにわけることができよう。①医療支援中心モデ. 理下の災害─基本統計─」が 1970 年から蓄積している. ルはおもに医療機関において,②医療・教育支援折衷モ. データである. 10). 。子どもの基本的運動能力の低下やス. デルは療育施設で,③教育支援中心モデルは教育機関に 14). (図 2)。. ポーツ活動によるオーバーユースによって,子どもの事. おいて展開されている. 故件数が増加傾向にあることを示している。このデータ. 特別支援学校等の教育機関におけるリハ支援には,次. を活用した一例としては,学校における体育関連事故の. のとおり 3 つの方法がある。外部専門家(リハセラピス. 件数の減少をめざした介入などが考えられる。他にも,. ト)が医療支援モデルとして訪問リハ事業所等外部から. 幼少期の運動発達に関する評価指標には,Gross Motor. 支援する場合と,内部専門家として教育現場に所属し内. Function Measure(GMFM),Test of Gross Motor. 部専門職として支援か理学療法士や作業療法士等リハセ. Development 2nd edition(TGMD-2) ,中村らの基本動. ラピストが教育職員免許状をもって教育職員として教育. 作様式の観察的評価などあり,基本的な運動能力のアウ. 支援モデルとして支援する場合がある。いずれにしても. 11)12). 。また,近年は身体. リハセラピストが教育機関において教育職員と同等に教. 活動量を使った研究が主流となっており,子どもの身体. 育的リハを実践するには,教員免許状を取得し教育職員. 活動量からの検討が多くなされている。統一されたアウ. として教育支援モデルとして支援することが望まれる。. トカムによって,効果を検証していくことが学校保健分. 教員免許状の取得には 2 つの方法があり,理学療法士等. トカムとして使用が望まれる.
(4) 学校保健・特別支援教育分野における理学療法の現状と展望. 137. 図 2 特別支援教育における就学児童生徒へのリハビリテーション支援モデル. の免許状取得後免除教科目のある「自立活動」の免許状. 3.特別支援教育分野の方向性の明確化. を取得する方法と在学中に理学療法士等国家試験を受験. 特別支援学校は,障害の種類に応じて視覚,聴覚,肢. し免許状を取得するとともに他の教員免許状をともに取. 体不自由等によって分けられ,年々その児童・生徒数は. 得しかかわる方法が考えられる. 15). 。. 重複障害者とともに増加している. 18). 。それぞれの学校. では,障害に応じて教科指導,生活指導,給食指導,運 2.特別支援教育におけるリハビリテーションの現状と 課題. 動指導を含め教育活動が展開されている。 最近の特別支援教育では,「障害者の権利に関する条. 特別支援教育におけるリハビリテーションの現状と課. 約」や障害者基本法等の趣旨を踏まえ,共生社会の形成. 題については,本協会が 2011 年度, 「リハビリテーショ. に向けたインクルーシブ教育システムの構築が推進され. 1). 」の一環として,障害児. ている。今後は「障害者の権利に関する条約」で挙げら. (者)へのリハ支援の在り方を検討するため,特別支援. れている「合理的配慮」の提供について整理され,医療. 学校の保護者および特別支援教育コーディネーター(以. と教育の側面から児童・生徒の障害像に応じたかかわり. 下,コーディネーター)を対象に調査した結果は次のと. が求められる。. おりであった。自立活動の一環である①身体への取り組. この合理的配慮に対して理学療法士は,障害のある児. みは「日常生活を充実させ生活活動範囲を拡大し,学校. 童・生徒の医療的ケアとともに,その能力や可能性を最. 生活への参加を促進する」と保護者およびコーディネー. 大限に伸ばし,社会参加および自立を図るよう医療・保. ターは受け止めている。②身体への取り組みの主目的. 健・福祉・労働等とのさらなる連携を強化し,社会全体. は,「ADL の維持・改善にあり,内容は基本的運動に留. の様々な機能を活用しながら十分な教育が受けられるよ. まるが,有益であり前向きな生活ができている」とコー. う支援することが求められている。. ディネーターは受け止めている。③調査対象の原因疾患. また,各学校では普通校との交流や共同学習等を通じ. のほとんどが脳性麻痺であり,医療的ケアを要しながら. て障害のない児童・生徒と対象児の交流等の実践がはじ. も学習支援をしなければならないという特殊性もあった. まっている。対象児や他の教職員を教育的理学療法学の. が,身体の取り組みの実施者のほとんどはリハ系免許を. 立場からリードするとともに,障害のない児童・生徒に. 有しない教育職員で占められていた。. 対し,障害の理解を促すかかわり「障害教育」の推進を. ン支援に関する調査研究事業. この調査結果は,文部科学省が 2003 年, 「今後の特 16). 図りつつ,これらの活動を全国の小中学校へ普及させる. 別支援教育の在り方について(最終報告) 」,2012 年,. ことも期待されている。. 中央教育審議会報告「共生社会の形成に向けたインク. 1)外部専門家としての活動. ルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進. 文部科学省は,2003 年の「今後の特別支援教育の在. 17). (報告) 」の両報告を裏づけるものであったこと,ま. り方について(最終報告)」,2012 年の中央教育審議会. た教育的リハとしてリハセラピストが身体への取り組み. 報告として「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教. を通して医学的側面からも学習を支援し,学校生活への. 育システム構築のための特別支援教育の推進(報告) 」. 参加を促進する可能性を示唆するものであったが,さら. の両報告. に教員免許状をもって支援することがその可能性を拡大. 対応を支える人材として,理学療法士および作業療法士. 深化させるものであったことを本協会が主催した第 52. 等の外部専門家を広く活用して障害に応じた適切な教育. 回大会において報告している. 14). 。. 16)17). の中で,特別支援教育は質の高い教育的. を行うことの必要性を提言している。.
(5) 138. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. 全国肢体不自由児の特別支援学校では,そのおよそ 3. 障害領域をも含めた活躍が期待される。. 割にすでに理学療法士および作業療法士等が入職支援し. 児童・生徒は日々成長しており,成長期の身体的活動. ており,また外部専門家としておよそその 3 割の学校に. はその後の人生に大きく影響を与えることとなる。教育. おいて理学療法士および作業療法士等が出向き,医療的. 的視点や医療的視点を持ち合わせた教育職員が,学校教. 2) ケアを中心にその知識・技術を提供している 。. 育においてよりよい運動経験や運動学習を提供すること. 特別支援学校の教諭やそこで学ぶ児童・生徒の保護者. で,こどもの学習効果をさらに向上させることは有効で. からは,リハ専門職による学習支援や社会参加支援への. あろう。リハ専門職である理学療法士が医学的な知識・. 2). 。しかしながら,学校生活全般への支援お. 技術を教育現場において有効活用するには,教育職員と. よび保護者との連携を考慮すると,医療的ケアを目的と. して教育に関する知識・技術の習得とさらなる向上が期. した外部専門家では児童・生徒の学校生活や学校運営へ. 待される。. 要望も高い. 直接関与する機会が少なく,教育的リハ支援の目的を達 成するには限界があることも本会による調査で報告され ている. 1). 。. 4.特別支援教育部門における事業計画について 特別支援教育部門では,特別支援教育におけるリハビ. 2)学校生活および教育の支援. リテーションの現状と課題を踏まえ,その方向性を明確. 学校教育において教育的リハビリテーションとして,. にするために次のような事業計画を立案している。. また一歩踏み込み教育的理学療法としてかかわる場合,. 1)特別支援学校支援モデルの検討. その教育的理学療法とは,理学療法士が障がい児・者に. ①特別支援教育分野にかかわる理学療法士の活動状況. 対し直接的に行う理学療法に加えて,学校においては. について,その支援モデル構築を目的とした実態調査を. 運動・動作能力の改善や行動学習を通じて適応を促した. 実施する。実態調査にあたっては,全国のモデル学校を. り,学習活動や課外活動への教育的理学療法支援を通じ. 指定して実施する。. て学校生活ならびに地域社会での自立を図っていくこと. ②特別支援教育分野の理学療法について,その支援モ. が考えられる。理学療法士は,教育職員として児童・生. デル構築を目的とした国内外の先行研究レビューと関. 徒の身体機能のみだけでなく,性格や成長も含め全人的. 連・学際分野の取り組みを調査研究する。. に評価し,学校生活や学習支援とともに医療的ケアの両. 2)特別支援教育に関する教育的理学療法学ガイドライ. 面一体的に支援することが求められている。すなわち障. ンを含むマニュアルの作成. 害の評価・支援と教育的支援を一体に支援することが必. 本部門の運営幹事および関連分野の有識者からなる. 要である。学校生活および学習支援への影響力を考慮す. ワーキンググループを組織し実施する予定である。すで. ると,職員会議等への出席など教員として学校教育全体. に本協会において教育的理学療法マニュアルの事業化が. へ教育的理学療法を反映させていくことが重要である。. 決定しており,基本的な骨子と執筆担当者は確定し,具. 児童・生徒の学校生活の自立を図り,地域社会への参加. 体的作業に入っている。平成 30 年度には完成予定である。. を促すうえで,理学療法士が教育職員として在職し,学. 3)特別支援教育分野の活動に関する啓発活動について. 校内部から支援することが求められよう。. 特別支援教育部門の活動について,教育的理学療法学. 3)教育職員としての課題. の理論と実際に関してその理解と普及を目的に,本会会. 特別支援学校では児童・生徒が学習上または生活上の. 員および特別支援教育にかかわる教育職員や保護者など. 困難を改善・克服できるよう,教育職員やリハ専門職な. へ啓発活動を実施する。. どの様々な職種が全人的支援の観点から有機的に連携す. 理学療法士養成高等教育機関において,在学学生を対. ることが求められる。障害のある児童・生徒は,学校に. 象とした特別支援教育関連の教員免許取得に向けたモデ. おいて学習に取り組み,生活の大部分は学校生活で占め. ル事業を実施することを検討している。. られる。そこで,理学療法士が教育職員としてその専門. 4)特別支援教育に関する活動支援について. 性を活かし,教育的観点からライフモデル(生命・生 活・人生)を基盤とした支援を学校生活から地域社会に. (1)特別支援教育免許状所得に向けての公開講座の企画 と実施. 向けて発信していく必要があろう。. 理学療法士を対象に特別支援教育関連の免許状取得に. 理学療法士は,発育発達の専門家として多種多様な障. 向けた研修会を企画し実施する予定である。すでに本協. 害のある児童・生徒を対象とし,知的障害領域に関して. 会では事業化が決定し,平成 30 年度 4 ∼ 7 月にかけて. も十分な知識を有する必要がある。知的発達と身体的発. 毎月 2 回予定されている。. 達は表裏一体的な関係にあり,理学療法士は教育現場に おいてリハ概念を活用し,障害のある児童・生徒の教育 支援の専門家として,また発達障害の専門家として知的. (2)特別支援教育内外専門家として介入するための公開 講座の企画と実施 外部・内部の専門家として特別支援教育に介入支援す.
(6) 学校保健・特別支援教育分野における理学療法の現状と展望. 139. る理学療法士を対象に研修会を企画し実施する予定であ. の確認,専門用語の活用困難性の低減,教師への個別の. る。本協会では平成 31 年度の事業化をめざして,研修. 指導計画と個別の教育計画の見直しの促進,活用の知見. 会の具体的内容を検討しているところである。. を共有する仕組みづくり」などの重要性が示唆されたこ. (3)高等教育機関における教員免許取得に向けたモデル 事業の企画と実施. とを明らかにし,さらに「教師との協働意識を持つこと や学校全体として自立活動の指導を充実させること,地. 理学療法士養成高等教育機関において,在学学生を対. 域の医療機関との連携の促進も果たすべき役割」である. 象とした特別支援教育関連の教員免許取得に向けたモデ. ことを指摘している. ル事業を企画し実施することを検討している。. おける理学療法士の活動について,肢体不自由児童生徒. 23). 。また吉田は,特別支援教育に. の「運動面」に関して,導入期,介入期,関係構築期の 5.エビデンスの構築に向けて. 3 段階に分け,3 つの観点(障害の状態,運動の発達段階,. 教育におけるエビデンスについて岩崎(2010)は,①. 障害の特性)から情報提供として指導・助言することの. 政策立案根拠,②予算獲得根拠,③説明責任根拠,④政. 有用性について言及している. 19). 24). 。. 。取り分け. 以上の先行研究調査結果から,特別支援教育と理学療. 理学療法士が新しい教育領域での活動をはじめるにあた. 法の理念は共通し,自立活動へは多くの理学療法士がか. り求められるのは教育効果について説明責任を果たすた. かわり,その場合医療職か教育職員としてかかわるのか. めのエビデンスとなる③説明責任根拠であろう。. 立場によって専門的なかかわりが異なり,教育免許状を. そこで③説明責任根拠の視点から特別支援教育にかか. もって支援することがその可能性を拡大深化させると眞. わる理学療法士の現状と課題について,特別支援教育と. 鍋は述べている。また理学療法士が特別支援教育コー. 理学療法士の 2 つのキーワードを用いて先行研究調査を. ディネーターと連携することの重要性や理学療法士が運. 実施し,おもな関連論文を抜粋した。. 動の発達段階や障害特性から情報提供することが有用で. 分藤は,本協会が主催する第 52 回学術大会(千葉). あることを報告している。. 日本小児理学療法学会の特別講演「特別支援教育が理学. 特別支援教育における教育的理学療法のエビデンスに. 療法に求めるもの」の中で「理学療法は,特別支援教育. ついては,その定義に基づいて考えると,①自立や社会. における自立活動の指導と障害のある者がそれぞれの障. 参加に向けた主体的な取り組みの支援,②幼児児童生徒. 害の状態や特性および心身の発達の段階等に応じて主体. 一人ひとりの教育的ニーズの把握,③その持てる力を高. 的に自己の力を可能な限り発揮し,よりよく生きていこ. め,生活や学習上の困難を改善または克服,④リハビリ. うとすることをめざした取り組みであるという理念は共. テーション医学に基づいた技術,適切な指導および必要. 策評価根拠の大きく 4 つに分類している. 通している」と述べている. 20). 。さらに中井らは,肢体. 不自由の特別支援学校を対象に,教育課程における自立 活動について実態調査した結果,理学療法士の参画が多 いこと,指導理論では動作法と理学療法一般が多いこと 21). な支援の以上の 4 つのキーワードでアウトカムを導出す ることが有益であろう。. ま と め. 。一方石倉らは,特別支援教育. 学校保健・特別支援教育分野における理学療法の現状. に勤務する理学療法士を対象に質問紙による調査した結. と展望について,教育的リハビリテーションにおける教. 果,医療職としてかかわる場合と教育職員としてかかわ. 育的理学療法支援としての学校保健と特別支援教育の 2. る場合,立場によって専門的なかかわりが異なることを. つの分野からそれぞれ支援モデルを提案し,またその現. 明らかにし,6 割の理学療法士が特別支援教育にかかわ. 状と課題について述べ,学校保健分野では運動器検診の. る業務を行う場合困難を感じていることを報告してい. 支援モデルの活用について,特別支援教育分野ではその. を明らかにしている. 22). 。それに対して眞鍋は,本協会が主催する第 52 回. 方向性を明確にし,また本協会当部門の事業計画につい. 学術大会(千葉)学校保健・特別支援教育理学療法部門. て述べた。さらに両分野において,統一されたアウトカ. の特別講演「学校保健・特別支援教育理学療法の現状と. ムによって,効果を検証していくことがエビデンス構築. 課題」において「教育的リハとしてリハセラピストが身. に必要であることを述べた。. る. 体への取り組みを通して医学的側面からも学習を支援 し,学校生活への参加を促進する可能性を示唆するもの であったが,さらに教育免許状をもって支援することが その可能性を拡大深化させるもの」と述べている. 17). 。. 他方藤川らは,特別支援学校における理学療法士と教 師をつなぐ特別支援教育コーディネーターの役割につい て実践的に検討した結果,「教師との協議や助言の活用. 文 献 1)吉井智晴,眞鍋克博,他:リハビリテーション支援に関す る調査研究事業報告.日本理学療法士協会,2011. 2)眞鍋克博:特別支援教育におけるリハビリテーションの現 状と課題.帝京大学紀要.2011; l7: 49‒53. 3)Allensworth DD, Kolbe LJ: The comprehensive school health program: exploring an expanded concept. J Sch.
(7) 140. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. Health. 1987; 57: 409‒412. 4)Lewallen TC, Hunt H, et al.: The Whole School, Whole Community, Whole Child Model: A New Approach for Improving Educational Attainment and Healthy Development for Students. J Sch Health. 2015; 85: 729‒ 439. doi: 10.1111/josh.12310. 5)中央教育審議会:チームとしての学校の在り方と今後の改 善方策について(答申) .2015.文部科学省.http://www. mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__ icsFiles/afieldfile/2016/02/05/1365657_00.pdf.(2017 年 11 月 28 日引用) 6)公益社団法人日本理学療法士協会政策企画業務執行委員 会:学校保健における理学療法士の活用環境整備調査報告 書.日本理学療法士協会,2015. 7)津島愛子,三村由香里,他:学校における運動器検診の 現状と課題─ A 県の養護教諭に対する質問紙調査より─. 学校保健研究.2017; 59: 195. 8)石川拓次:養護教諭における運動器検診・運動器疾患への 対応に関する一学校─年齢と経験年数の比較を中心にして ─.学校保健研究.2017; 59: 87. 9)粕山達也:学校保健・特別支援教育の現状と課題─学校保 健に参入するために必要な関係職種との連携─.理学療法 学.2017; 44: 125‒126. 10)独立行政法人日本スポーツ振興センター:学校の管理下の 災害─平成 28 年度─.2016. 11)Task Force on School-based Physical Therapy Performance Appraisals: Performance appraisal of schoolbased physical therapists: The link to student outcomes. American Physical Therapy Association, Section on Pediatrics, 2013. 12)中村和彦,武長理栄,他:観察的評価法による幼児の基本 的動作様式の発達.発育発達研究.2011; 51: 1‒18. 13)文部科学省ホームページ 特別支援教育について.2007. http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.. htm(2017 年 11 月 28 日引用) 14)眞鍋克博:学校保健・特別支援教育理学療法の現状と課 題.理学療法学.2017; 44: 128‒129. 15)特別支援学校自立活動教諭免許状認定試験受験資格取得教 育課程事業報告(事業番号:311).日本理学療法士協会. 2013. 16)文部科学省ホームページ 今後の特別支援教育の在り方 について(最終報告) .2003.http://www.mext.go.jp/b_ menu/shingi/chousa/shotou/054/shiryo/attach/1361204. htm(2017 年 11 月 28 日引用) 17)文部科学省ホームページ 共生社会の形成に向けたイン クルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推 進( 報 告 ) .2012.http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/ chukyo/chukyo3/044/houkoku/1321667.htm(2017 年 11 月 28 日引用) 18)文部科学省ホームページ 特別支援教育について.2016. http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/ material/1386910.htm(2017 年 11 月 28 日引用) 19)岩崎久美子:教育研究におけるエビデンスとは.文部科学 時報.2010; 11: 76‒77. 20)分藤賢之:特別支援教育が理学療法に求めるもの.理学療 法学.2017; 44: 71‒74. 21)中井 滋,髙野 清:特別支援学校(肢体不自由)におけ る自立活動の現状と課題(I).宮城教育大学紀要.2011; 46: 173‒183. 22)石倉健二,足立道久,他:特別支援教育に関わる理学療法 士の実情と課題.兵庫教育大学研究紀要.2017; 50: 21‒28. 23)藤川雅人,笠原芳隆:特別支援学校における理学療法士と 教師をつなぐコーディネーターの役割について実践的に 検討.上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要. 2015; 21: 21‒26. 24)吉田忠義:特別支援教育における理学療法士の活動.理学 療法の歩み.2015; 26: 46‒53..
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