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築城四百年の中の彦根の近代

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Academic year: 2021

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築城四百年の中の彦根の近代

今年は、国宝彦根城が築城されて 400 年目を迎え、彦根市では様々なイベントが企画されています。 しかし、「彦根は桜田門外の変で井伊直弼が暗殺されて以降すっかり沈滞し、明治維新以後も政府に 白眼視されてずっと停滞してきたんだ」という近代彦根沈滞論とでも言う歴史観によく出合うことがあり ます。 しかし事実は逆で、直弼以後彦根は見事に近代都市へと発展をとげていくのです。まず、直弼横死 以後、政敵であった水戸藩出身の一橋慶喜が将軍に就き尊皇攘夷派が勢力を盛り返すと、彦根藩で も長野主膳や宇津木六之丞らかつての直弼の側近が処刑されて勤皇派が実権を握ります。さらに 1867 年 10 月以降、大政奉還によって朝廷を頭に外様大名らも取り込んでふたたび幕府中心の政治再 編を目指す動きと、王政復古し幕府を打倒して中央集権的な国家を樹立しようとする薩長などの路線 が対立すると、彦根藩は激論の末、下級武士たちが主導権を握って倒幕派に与することに決定します。 幕府の譜代大名の雄で、西国大名を監視する役目を担い、かつて安政の大獄で多くの勤皇の志士達 を弾圧した彦根藩が倒幕派に転回したことは、幕府倒壊に決定的な影響を及ぼしたと思われます。 その後彦根藩は、鳥羽伏見の戦いから戊辰戦争に至るまで果敢に幕府諸藩と戦って戦功を立て、そ の過程で薩長の指導者たちとも緊密な信頼関係を培ってゆきます。廃城令が出され多くの城が取り壊 されていった中で、彦根城が解体を免れて残されたことも政府高官との密接な信頼関係の賜物でした。 その後彦根は、大久保利通や大隈重信ら政府指導者と緊密な協力関係を維持しながら、県営彦根製 糸場を開場して周辺地域を一大蚕糸業地帯に発展させたり、また現在の滋賀銀行の前身である第百 三十三国立銀行を創設して金融面での支援体制を整え、近江鉄道を開設し、バルブ産業や仏壇産業 を勃興・発展させたりして、みごとに近代都市へと脱皮していくのです。その延長線上に、大正期の近 江絹糸会社の創業があり、国立の高等商業学校の彦根への誘致が実現されていくのです。 築城四百年祭では、こうした彦根の近代化過程にも光が当てられていますが、史料館の春季企画展 でも彦根の近代商業の生き証人である「引札」を多数展示しています。ぜひ多くの方に、魅力ある彦根 の近代史のひとコマに触れていただきたいと思います。 (史料館長 筒井 正夫)

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