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諸種要約下急死の生前経過に件う血液性状の変化について : 2)血液ヨード酸値について

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(1)

(東京女医大姫第26巻第12号頁685−692昭和31年12月)

諸種要約下急死の生前経過に件う血液

性状の変化について

2) 血液ヨーード酸値について

東京女子医科大学法医学教室(主任吉成京子教授) 三

サカ

モト

セツ

ナガシ

(受付昭和31年10月31日)

二三においては諸種要約下における急死の生前

における血液水分含有量の消長を検索して急死の

メカニズムの一端を窺わんと試みた。今回はひき

つづいて蛋白中間代i謝の模様を血液ヨード酸値を

検索して前回の考察に対する知見を加えたいと思

う。

文献的考察

血清ヨード二値は1924年近野1)によってアドレナリ ン及びその近接体の定量方法として考案創始されたも のである。 以後多くの追試と研究が重ねられた結果ヨード酸に 反応する物質は必ずしもアドレナリン物質のみではな く一,二の尿成分等も反応するものであることがわか った。ちなみに古武(1931)2)によれば, ユ)アドレナリン及び其の近接体(ピ・カテヒン誘 導体) 2)一定の尿成分(尿酸,クvアチニン) 3)一定の蛋白中間代謝産物(ペプトン物質,トリ プトプアン,オキシフエニールピフレビン酸)等の3様 物質の消長を現わすものであると。しかし血清ヨード 酸値はひとり蛋白質分解産物にのみ関係を有し,他の 血中還元物質並に含水炭素及脂肪類には直接の関係を 有しないところに生理的,病的蛋白代謝検査法として 応用する価値を見出している。 市川(1948)5)の研究によれば血清沃度三値は蛋白中 間代謝物質でも1・リプトプアン,チスチン,チステイ ン等はそのままの形で,チロジン,フエニールアラニ ン等はその又中間代謝物質として,即ちアミノ酸及び そのケト酸が之に関与するところ大きな部分を占めて いるという。 田淵(1934)4)は健常動物の血清ヨード酸値は殆んど 一定の値を示し身体の異変あるに及んで動揺を来し殊 に蛋白の崩壊燃焼の不完全な時に.ヒ昇するものである と述べ,肝臓を劉出した動物の血清沃度三値を測定し たところ漸次に上昇しブドウ糖やインシ=・’リンを与え ても血清ヨ・・一ド二値上昇を防ぎ得なかったことを報告 している。山城は動物に諸種アミノ酸を経口投与した 場合アミノ酸の種類によって異る影響を与えることを 見た。即ちチロジン,グルタミン酸,ジォキシフェニ ールアラニンの経口投与は血清ヨード酸値を..ヒ昇せし めた。 以上の様に血清ヨード酸値は蛋白中閲代謝の状況を 窺知する一示標として多くの研究者によって用いられ て来た。 近野が考案創始した三法の繁雑さを改良した西垣 (1931)6)の変法が広く採用されるに至って更に研究は 数多く行われた。 即ち,各種臓器のヨード酸値を検索したものに,熊 村(1934)7),山本,西垣(1934)8)等があり,脳脊髄液 の沃度酸値に関する研究に山城(1933)9)があり,眼房 水沃度酸値を検索したものに西垣10)の業績がある。 血清ヨード酸値に及ぼす各種要素の影響を見たもの

Setsuko SAKAI and Nagashi NEMOTO (Dept. of Legal Med., Tokyo Women’s Medical College) :

Blood findings on rabbits following various intoxications and asphyxia which causes sudden dea’th. 2. Changes in the iodate reducing power of blood

(2)

は杉田(1928)1・1),清松(1928)12),小林(1929)15)等で ある。又血清ヨード酸値の各種薬物による影響につい ては要沢(1933)!4),山上,西壇(1934)15)等の研究が ある。猶臨床方面では精神科領域における患者血清ヨ rド酸値を測定したものは今泉(1951)ユ6)であり,伝 染病領域において血清ヨード酸値を検索したものは菅 野(1944)17)である。目路病との関係については田淵 (1934)ユ8)が研究を行った。その他先学の業績は枚挙 にいとまがない。 しかし近年再び血液中におけるヨード酸反応物質の 本質について検討が行われ正木(1953)ユ9)によれば血 液ヨFド酸値は血漿中のヨ・・ド酸反応物質と血球中の それとの和でなければならないこと。しかして血漿中 のヨード酸反応物質は大部分がアミノ酸尿酸系統物質 で全体の74.6%を占め,血球申のそれは大部分がアド レナリン物質でそれは全体の82.6%を占めていること を証した。猶血球内ヨード酸反応物質は非常に不安定 で血球内より血漿中に出た場合は速かに消失すると。 しかして此の破壊物質は今泉(礼治)20)の所謂アドレ ナリン脱水素酵素であろうかと述べている。 結局のところヨ・・一ド酸値の上昇は,ヨドド酸反応物 質の産生の増加叉はその分解消失或いは処理が緩慢に 行われたことを意昧し,その低下は上昇の逆を考える ことが出来る。即ち蛋白分解の質的,量的機能の過程 を推知し,したがって臨床的,又は諸種病態生理学的 に肝臓機能と結びつけて考えることが可能であること は諸家の意見の一致したところである。しかし本ヨe ド酸値を与える物質の詳細については未明の点が猶存 在する。

実験方法

実験動物は前書と同様に2kg前後の雄のウサギを使 用した。 血清ヨード酸値は西垣氏法を採用した。即ちウサギ の頸動脈より正確に1ccの血液を採りタングステン酸 混合液8m1を入れた100cc内容工7レレンマ/エル氏 フラスコに加え振蛋後4分以上放置してからN/3H2 SO.i 1. Om1を重盗しっっ加え直ち1こ遠沈,その上澄を 湧過した源液5.Omlを太形試験管にとり之にミク・ビ ュレットを使用して正確lc 2. OmlのN/200沃度酸カ リ溶液を加え試験管支持器を用いて水浴上に15分間煮 沸,ついで迅速ltlO%H2SO41・Omlを加え,蒸溜水 8.Omlを加えて冷水中にて冷却,冷却後5%沃度カリ 0.5mlを加え, N/200チオ硫酸ソFダ液にて澱粉溶液 を指示薬として滴定を行った。 動物の致死方法は,前帝と全く同様である。 即ち,1)青酸中毒死 2)窒息死 3) 失血死 4) ガス中毒死

5)火傷死

6) エrテノレ麻酔死

各実験は4乃至6匹つつ行った。

実験成績

各実験群の血液ヨード酸値の成績は第1表及び

第2表に一一覧表としてまとめた。

処置前のウサギ血液ヨード即値を第1表より通

覧すると最小値0.1175(失血処置前上1例),最大 値0.1708(麻酔処置前月2例)であった。各実験群

の平均値を見ると各群とも翌々同じ値を示した。

西垣のウサギ実験における平均値は0.109で之と

比較するとやや高値である。しかし山城(1934)9) 第1表 血液ヨード酸二一輩表 前 後1分

・分・分・∼・分1・分

青 酸 窒 息 失 血 ガ ス 火 傷 麻 酔 O. 163 0. 126 0. 150 0. 148 O. 139 0. 150 0. 140 0. 150 e. 160 0. ’128 O. 117 0. 120 0. 142 0. 154 0.132 O. 118 0. 130 0. Z22. O. 152 e. 148 0. 16no O. 125 0. 143 0. 133 O. 120 e. 170 , 0. 143 0. 168 0. 120 .O.142 O. 147 e. 175 0.ユ25 0. 132 O. 124 0.ユ38 0. 146 0. 190 0. 108 0. 141 O. 126 0. 124 0. 156 0. 188 0. 137 O. 146 0. 170 0. 126 0.ユ67 O. 130 0,150 0. 142 0. 100 0. 128 O. 172 0. 148 0. 148 0. 137 O. 144 0. 117 0. 170 0. 148 0. 188 0. 148 O.125 0. 126 0. 274 0. 326 0. 151 O. 172 0. 170 0. 138 0. lat 8 O. 168 0. 150 0. 156 0. 117 0. 120 O. 106 0. 190 0. [1.55 0. 160 0. 140 e. 166 O. 096 0. 156 0. 144 0. 149 0. 156 0. 115 O. 155 0. 146 0. 104 0. 127 O. 155 0. 130 0. 176 0. 140 0. 180 0. 146 O. 122 0. 137 0. 350 0. 178 0. 135 O. 126 0. 14.9. O. 130 0. 144 O. 161 0. 180 0. 150 0. 131 0. 100 O. 104 0. 162 0. 133 0. 177 0. 164 0. 055 O. 192 0. 165 0. 138 0. 140 O. 120 0. 130 0. 148 0. 183 0. 151 O. 124 0. 131 0. 308 0. 174 0. 166 O. 060 0. 116 0. 119 0. 141 O. 152 0. 155 0.ユ44 0. 106 0. 100 O. 122 0. 188 0. 133 0. 167 0. 189 0.116 O. 197 O. 150 O. 167 O. 119 一 686 一

(3)

第2表 平均値変化率一覧表

処置前

後・分轄‘

Q到後…3…5・.

後4∼5分 後6分1

青 酸 窒 息 失 血 ガ ス 火 傷 麻 酔

平均

変化率

平均

変化率

平均

変化率

平均

変化率

平均

変化率

平均

変化率 O. 146 100. 00 O. 144 100. 00 O. 133 100. 00 O. 130 100. 00 O. 143 100. 00 O.145 98. 726 O. 140 96. 940 O. 146 101. 983 O. 150 115. 095 O. 130 90. 938 O. 144 100. 00 O. 153 104. 606 O. 1.=0 102. 233 O. 152 105. 707・ O. 200 150. 450 O.133 1 O.1,5−9 go.760 1 lo’s.4s O. 154 107. 056 O. 146 101. 292 O. 173 118. 356 O. 184 138. 438 O. 157

1

120.306 1 O. 135 103. 831 O. 142 99. 456 O. 144 100. 85 o. 136 94. 583 O. 132 92. 081 O. 180 13F,. 585 O. 109 83. 524 O. 13一 0 90. 726 O. 153 105. 992 e. 143 99. 376

第1図a)青酸

e.3 O.2 o.j

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b) 平却値 gイヒ率 一一…一 % o 02140 卯 「20 , 0.1.「o……・___..._一,,・・…一’‘τ”’・ 「 「 , ミ’ δσ 、 拠 后 〃 〃 ∬ ノ’

置 1 2

3 ま

6 荊 分 分 分 秀 分

の健常ウサギ血液ヨード酸値の平均は0,149を示

している。古武(1932)は杉田の行った実験につい て健常ウサギの血清ヨード二値の最:小は0.092, 最大は0.190で就中0.11∼0.180のものが83%を占 めたと述べている。

1)青酸中毒死について

実験は4例行った。第1例は第1図a)に示す

様にヂグザグに上昇した。第2例は青酸注射後急

激に上昇して,2分及び3分時には下降を示した

が4∼5分で再度の上昇を示した。第3例はあま

り著明な変化を示すことなくヂグザグに下降し.

た。第4例はあまり顕著ではないが経過中やや下

降し死に接して再び上昇した。上等の二二の平均

値並びに変化率を図b)において見ると,青酸注

射後3分でやや著しい減少を示したが青酸中毒末

期には処置前の値よりも上昇した。その増加率は

約18%であった。 2)窒、二死について

実験6例の夫々は第2図a)の如くである。即

ち第1例は窒息3分までしか採血を為し得なかつ

(4)

第2図a)窒息

Q3 Q2 O.1

きζご磨∴麟

へ や\.・一/『”噛’’ …一 b) 処 置 前 后 E 分 2一 介 3 分

1

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たが窒息1分で減少し以後は漸増した。第2例は

窒息3分でやや上昇のカーブを描いたが全経過を

通じて漸減を示した。第3例は窒息3分まで増加

を示し殊に2分と3分との値は殆んど同値を示し

つづけ4∼5分で急激に減少した。第4例では窒

息の初期に著明に増加しその後は減少し再び窒息

第3図a)失血

O.3 O.2 O.1

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2

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平拘値 一

変化率

置 旧 1 分

2

分. 3 あ 丘 ら 分 一 688 一

(5)

終末期にやや上昇を示した。第5例は窒息ユ分で

激減し,2分以後は激増を続けて死に至った。第6

例はゆるやかな漸増するカーブを描いた。以上の

個々の例についての値を平均し,更にその変化率

を示したのがb)図である。即ち窒息初期には沃

度酸値はやや減少したが2分以後は増加を示し,

その終末期には窒息開始前の値よりもやや増加せ

るのみで終った。

3)失血死について

実験例の個々の値は第3図a)に示した如くで

ある。即ち第3例と第4例とは失血開始1分以後

激増し第4例では2分で,第3例では3分におい

て最高値を示した。第3例はその値が殆んど下降

することなく死に至った。第1例と第2例は前2

者に比しその変化は僅微であったが第2例は末期

においてやや僅か増加を示して終った。第5例は

2分でやや明らかな増加が認められたが3分で減

少し,4∼5分では再び増加を示しそのまま死に

至った。以上の個々の値を5例平均し,更に変化

率を見るとb)図の様である。

即ち失th1死に際しては2分時にその増加が顕著

で,その終末期においても:失血前の値よりも凡そ

35%の増加を示したままであった。

第4図a) ガス中毒 O.3 O.2 oi 1・プ 一\ 一’

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4)ガス中毒死について

実験4例の模様は第4図a)の如くである。第

1例はガス吸入後2分で著明な増加を示したけれ

ど3分以後は著明に減少した。第2例もガス吸入

後1分よりk昇を開始して2分においても略同様

の高値を示したが3分以後は著しく減少した。第

3例はなだらかに漸増してその増加の程度は僅か

であった。第4例はガス吸入後1分で第2例と略

同値にまで増加したが2分以後においては第3例

と略平行した変化を示した。以上の個々の値を平

均し,並びにその変化率を見るとb)図の様であ

る。

即ち失血に依る死に至る経過中においては沃度

酸反応物質の増加が認められたが死に接しては処

置前の17%減少であった。

5)火傷死について

実験5例の夫々の変化は第5図a)の如くであ

る。即ち第1例及び第3例は殆んど同様の変化を

示して処置後2分ではやや増加したがその後は処

置前の値との聞に大差が認められなかった。第2

例は1分乃至2分で減少を示し3分で増加し遂に

死に接するに至っては処置前の値との間に大差を

示さなかった。第4例は火傷開始後1分で減少を

b) 拠 置 前 后 G JJ

2

分 tt 3 分 匠 ぎ 分

平均値

層化率…一一一 一 一 、 ’ ’ 、 ’ , 一 、 @, ”

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(6)

第5図a)火傷

b) O.3 O.2 oJl 咳2 ” 一 ’”一’“’i 一一;一一一一”’

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31早 三 14

荊 分 分 分 寡

示したが3分野やや増加し4∼5分では再び減少

した。第5例は火傷3分に至るまで漸減を続けそ

の後はそのままの値を維持して死に至った。以上

の実験5例の平均値並びにその変化率はb)図に

示した。即ち火傷初期には一血液ヨード置旧減少を

第6図a)麻酔

示し,2分及び3分後には処置前の値との聞に差

異は認められず,4∼5分後には約10%の減少を

示して死んだ。

6)麻酔死について

実験6例の個々の変化は第6図a)の如くであ

b) Q3 oz O,1

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平灼値

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無篇ll蕩

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(7)

る。即ち第1例は死に至る経過中緩やかな谷を形

成し4∼5分後には殆んど旧値に恢復して死に至

った。第2例はエーテル吸入後1分で増加が認め

られたがその後の経過は第5例と略一致した変化

を示し漸増のまま死に至った。第3例はその初期

にやや増加を示したが2分以後は漸減して死ん

だ。第4例はその初期に減少し3分後にはやや著

明に増加し4∼5分並びに6分では麻酔前の値に

略々旧して終った。第6例は麻酔後1分で増加が

認められたが3分では激減し4∼5分並びに6分

時にはやや旧に復した。以上の個々の例における

変化を平均し,猶その変化率を見るとb)図の如

くである。即ち麻酔初期にはやや増加し2分及び

3分では谷を形成,4∼5分時には再び増加が認

められ,6分では処置前値に旧して終った。

実験成績の総括及び考按

th1液ヨード酸値の増加は.血液中におけるヨード

酸反応物質の産生の増加,或はその消失の減退を

意味し,ヨード酸値減少は血液中におけるヨード

酸反応物質の産生の減少叉は,その消失の促進が

考えられる。そもそも.血液ヨード酸反応物質とは

前述の如く先学の研究業績より蛋白質の中聞代謝

産物より与えられる。したがってその増加は蛋白

中歯代謝産物の血液中産生の増加若しくはその完

全処理渋滞が考えられ,ヨード酸値減少はその逆

が考えられる。

今回私共の行った実験の結果より健康ウサギの

血液中ヨーード酸値は先学の業績と殆んど一致し, 0.1175∼0.1708の間にあった。しかし各種の致死

的手立によってはウサギ動脈血中のヨード畑島は

著明な変動を示した。之等の処置による血中ヨー

ド酸値の変化は,明らかに急激なる致死的外因に

対する蛋白中間代謝に異変をもたらした事を推知

するに容易である。しかし致死手段の如何によっ

ておこる1血液ヨード酸値変化の特徴はあまり著明

ではなかった。同一手段においてもその変化の傾

向並びに時間的関係において各々の実験例におい

て全く一i致するということはなかった。したがっ

て急激なる致死的外因に対する体内蛋白中間代謝

の態度はデリケートなものが感じられる。

ところで実験成績を通覧するに各種致死経過の

最:苦境期と考えられる3分前後において」匡液ヨー ド酸値の増加を見たものは窒息死,失」血死,ガス

中毒死であった。又減少を示したものは青酸中毒

死,火傷死,麻酔死であった。死直前における血

液ヨード酸値即ち各種致死外因に対する疲気霜,

即ち4∼5分後における血液ヨード酸値が増加を

示したのは青酸中毒死,失血死であり,減少を示

したのは窒息死,ガス中毒死,火傷死,麻酔死に

おいてであった。

以上の笑験成績の総括は,前回の血液水分含有

量の変化との間に明らかな関連が見出し難い。即

ち』血液ヨード酸値の変化は,急激なる致死外因に

対し血液濃度の変化とは関連が見出し難くしたが

って此の事は,.齪夜濃縮或いは稀釈による相対的

変化とは認め難いことがわかる。猶此の事柄を直

ちに肝臓機能と結びつけることは差控えたいと思

う。同じ様にアドレナリン様物質産生機能とも関

連を見つけ出す事は危険である。只今回の実験に

わいてはアドレナリン及びその近接休,一定の尿

成分,並びに一定の蛋白中問代謝産物が急死時に

おいて明らかに健常動物のそれよりも変動(増減)

を示したことを把握するに止どめたい。その変動

は急死外因に対し如何なるメカニズムにより,如

何なるオルガンに機能変調を来したかの推察は本

実験結果からしては無理があると考えられるから

である。

む す び

青酸中毒死,窒息死,失血死,ガス中毒死,火

傷死,麻酔死について夫々4乃至6例つつ実験を

行って動脈血逐日にわけるヨード酸値を測定し

た。 その結果,

1)青酸中毒死,窒息死は減少後再び増加して

死亡した。 2):失血死は著明な増加を示した。

3) ガス中毒死は増加後再び減少して死亡し

た。

4)火傷死及び麻酔死は減少して増加し再び減

少して死亡した。

以上の各種致死条件下における急死時ウサギの

Iliff.液ヨード心止の変化は前報の血液水分含有量の

変化との間には明らかな相対的関連が認められな

かった。

本実験の結果からは急死時における動物体内の

所謂ヨード酸反応物質の血液中における収支に変

動が明らかに認められたが,そのメカニズムにつ

いて論ずる事は困難であった。

(8)

稿を終るに際し常に御懇篤なる御指導と御校閲,御 鞭燵を賜った恩師吉成京子教授に心からの謝意を捧げ ます。 ㌧ ,

参考文献

1)近野政次:アミノ酸の生理学的研究補遺(2),血 中アドレナリン物質点滴定量法,阪大医学会雑誌, 25(4),205(大15) 2)古武彌四郎:血清沃度酸値とその意義,日新医 学,20(9),1369(昭6),医海時報1671号。 3)市川慈子=動物体内におけるアミノ酸の代謝, 薬学,4(1),(1948) 4)田淵真佐三:肝臓捌出後及超生肝臓に於ける血 清沃度酸値,阪大医学会雑誌,35(9),3543(昭9) 5)山城角之助:脳脊髄液沃度酸値に関する研究, 阪大医学会雑誌,33(9),505(昭8) 6)西垣明治:血清沃度酸値測定の一変法,阪大医 ‘学会雑誌,30(3),807(昭6). 7)熊村正三’:臓器の沃度御薩(寒冷)に及ぼす2, 3生理的障害の影響,阪大医学会雑誌,35(7), 2921 (日召9) 8)山本正告,西垣明治:臓器沃度酸寒冷値測定法, 阪大医学会雑誌,33,1033(昭9) 9)山城角之助:脳脊髄液沃度酸値に関する研究, 阪大医学会雑誌,33,505(昭8) 10)西垣明治:2)より引用。 11)杉田貞之:飢餓血清沃度酸値に及ぼす葡萄糖並 に果糖の影響について,阪大医学会雑誌,28,585 (昭3) 12)清松辰夫:主要養素吸収時及び飢餓時に於ける 家兎血清沃度酸値の変化に就て,阪大医学会雑誌, 27, 1125 (日召3) 13)小林浩吉:白米食動物の新陳代謝に関する研究 補運(其2)・阪大医学会雑誌,28(7),2033(昭4) 14)安沢幹一・:血中沃度酸値知見補遺,阪大医学会 雑誌,35,(昭8) ユ)諸種解熱剤の健常家兎血中沃度酸値に及ぼす 影響について,同上誌,1049(昭8) 2)アンチピリン及びピラミドンの血中沃度酸値 に及ぼす作用機転,同上誌,1301(昭8) 3)諸種フェノール列化合体の健常家兎血清沃度 酸値に及ぼす影響,同上誌,1312(昭8) 4) アンチピリン,レ・ゾルチン,フロログ7レチン の」血中沃度酸値下降機転に関する研究,同上誌, 1329 (日召8) 15)山上茂,西垣明治:血清沃度酸値を下降せし める2,3の物質について,阪大医学会雑誌,33 (12), 4311 (日召9) 16)今泉恭=郎:精神分裂病者血清の沃度酸値,四 国医学雑誌,2(1),17(昭26) 17) 菅野 温:伝染病領域に於ける血清沃度酸値に ついて,阪大医学会雑誌,43(4),555(昭19) 18)田淵真佐三:家兎の実験的日射病と血清沃度酸 値,阪大医学会雑誌,35,3547(昭9) 19)正木英世:血球沃度面一と血漿沃度酸値との本 質的差異,四国医学雑誌,4(2),33及び41(昭28) 20)今泉糺治齢19)より引用,日本薬理学雑誌,47 (2), 21 (日曜26), 48 (3), 170(身固27) 一 692 “一

参照

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