216 (75) 氏名(生年月日)
本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
シ ミズ ヒロ コ清水寛子(昭和2
医学博士 乙第1001号平成元年3月17日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者) 小児の過栄養性脂肪肝の検討 第1編 肥満児の脂肪肝の診断と減量に伴う検査値の変動について 第2編 小児の過栄養性脂肪肝とその他の肥満合併症との関連について (主査)教授 福山 幸夫 (副査)教授 高尾 篤良,教授 串田つゆ香論 文 内 容 の 要 旨
目的 単純性肥満の合併症である過栄養性脂肪肝は,小児 においても脂肪性肝炎や脂肪性肝硬変を来すことがあ り,早期診断,早期治療の重要性が強調されている. 脂肪肝の確定診断は肝生検によるが,侵襲が大ぎく小 児科臨床の標準的手段とはなっていない.それに代わ るものとして種々の非侵襲的検査が応用されつつある が,それらの診断的価値の評価はまだ充分なされてい ない.一方,減量に伴う検査値の変動,肥満の他の合 併症と脂肪肝との相関に関する研究は極めて少ない. 本研究は,これら諸問題に焦点をあて,三栄養性脂 肪肝の臨床的診断法および治療の意義を評価したもの である. 対象および方法 対象は5~15歳の単純性肥満児144人(男子119人, 女子25人)で,肥満度は60.1±21.8%であった.脂肪 肝の診断基準は,非侵襲性と簡便性の点から腹部CT 検査所見によった.すなわち,肝脾CT値を求め,同 比0.9以下を脂肪肝群,0.9より大なるものを非脂肪肝 群とした.各群について,GOT値, GPT値,オルニ チンカル・ミミルトランスフエラーゼ(OCT)値を比較 検討するとともに,両群各々において,OCTとGOT, GPT間の相関性を検討した.同様に,両群の肝脾CT値比とGOT, GPT,及びOCT間の相関性を検討し
た. 次に減量効果をみるため,減量に成功した25例につ いて減量前後のGOT, GPT, OCT及び肝脾CT値比 の変動をみた. 脂肪肝群,非脂肪肝群における耐糖能異常,高脂血 症,高血圧の合併頻度を算出し,各々について脂肪肝 との関連性をカイニ乗検定にて比較検討した. 結果 1.対象における脂肪肝の頻度は74.3%であった,2.検査値:脂肪肝群におけるGOT, GPT及び
OCTはいずれも非脂肪肝群のそれより有意に高値を 示した,肝への脂肪浸潤の程度と負の相関を示すとい われる肝脾CT値比と有意の相関を示したのは,脂肪 肝群のOCTのみであった.脂肪肝群ではGOT, GPT ともにOCTと有意の相関を示した. 3.減量効果:脂肪肝群で減量により肝脾CT値比, GOT, GPT及びOCTは改善された. 4.対象全体における脂肪肝以外の合併症の頻度は, 耐糖能異常26.7%,高脂血症76.2%,高血圧20.4%で あった. 5.合併症と脂肪肝との関係:1)耐糖能異常:脂肪 肝群では32.9%,非脂肪肝群では7.7%に耐糖能異常が みられ,脂肪肝群で有意に高頻度であった. 2)高脂血症:脂肪肝群77。8%,非脂肪肝群71.4%で 両群間に有意差はなかった. 3)高血圧:脂肪肝群22.3%,非脂肪肝群14.3%で脂 肪肝群に高血圧が多い傾向があったが,統計的有意差 はなかった. 一1106一217 考察及び結論 非侵襲性診断を目的として腹部CT検査を用いて脂 肪肝を診断した.生化学的診断では,GOT, GPTのみ では不十分な場合があり,OCTの測定は有用であった が,経過観察にはGOT, GPTも有用であった.脂肪 肝では肥満度が減少すると検査値が改善した. 脂肪肝を有する肥満児では,耐糖能異常,高血圧を 合併する頻度が高い傾向があり,脂肪肝を合併する肥 満では,肥満の是正が一層重:要な意味を持つことが明 示された.