〔東京女讐會誌・第12巻・第4號頁359−363・昭和17年』11月)
二種の蓮動軍位の比較研究
(其の一)龍門衝撃の頻度と筋の螢生する張力と9問の關係
東京女子舌面竜門學校生理学教室(主任講師 吉
ヨシ (受付 昭和17年7月13日)第9章緒
言 冨田恒男教授)岡
オ町域
鎌》 最近田崎(2)は庭面知られてみる焼冷性紳経繊維の外にその国分位の直径を有する細い蓮動織維が あって,これに紳維衝撃を反覆:して逡:り込む時は筋に甚だ緩かな二心が認められることを報告し 允。在來知られてみる普通の神経繊維はそれを経て箪一曲経衝撃を逡砂込めば筋に認め得る牧縮が 起るものであったが,此の愉しく獲見された運動面維はそれに軍一の紳経衝撃を殴り込んだ丈では 認め一られる素焼縮は全然起って來な悟で,それに速かに反覆する紳繧衝撃を泊り込む時にだけ緩か な弱い筋牧縮が起って來ると云ふのである。 此の緩かな筋還動を起す蓮動繊維の置戸は著者に幾多の興味ある問題を捷供した。帥ち(1)此 の細い田崎の所謂邊運動繊維たどの程度の高頻度の紳経衝撃を邊り込んだならば始めて認め得る筋 牧緒が起るであらうか,(2)蓮動繊維に回り込む衝撃の頻度と筋の獲生する張力との聞の關係が 2種の蓮動繊維についてどのやうな差異があるであらうか,(3)所謂筋疲勢に際して之等2種の 蓮動織維によって起される筋牧縮は如何なる差異を示すであらうか,(4)艦内に於ける筋牧縮乃 至筋緊張に際して2種の運動繊維がどのやうな役割を演ずるであらうか,等。著者は之等の諸問題 .につhて詳細な實験的研究を行った。 本論:文に於ては,之等2種の蓮動繊維に筋の蓮絡してみるもの,自Pち2種の蓮動軍位の稜生する 張力が蓮動繊維に逡り込む紳経衝撃の頻度と共に如侮に攣化するかを追求する爲に行った實験の結 果について報告する。著者も今後田崎に徹って,太い鄭ち速蓮動繊維とそれによって支配されてゐ .る筋とを合せたものを「速蓮動軍位」と呼び,細い師ち遅運動織維とそれに連絡してみる筋とを「遅 ・蓮動輩位」と名付けて記載を進めることとした。第2章 實験材料及實験方法
360 實験材料は主として雄墓の腓腸筋,牛腱様筋,時に前脛骨筋,縫:匠筋を司る神経軍位を使用し た。 ラ 別出された所謂神経筋標本の聯経幹中より軍一の運動三三繊維を分離副出する方法は度々清水(1 Kato(4)Tasaki(5)等により既に記載されてるるから詳細は省略するが,著者は常に顯微鏡を使用し て溢出すべき織維の太さを検しながら手術を行った。 次で手術に.よって作製された箪一紳経織維筋標本を用ひて筋の画論を記録する方法は次の様な手 技によった。帥ち第1圖に示す様に筋の出端を縣で結び,其の一端を固定し,他端を等尺性面心 につけ,桓桿の運動をキモグラフイオンに記録したのである。此際箪一紳経繊維の分離してある 第1圖 紳緯部位は筋の表面に附着させセ置いて,其の 近心側の紳経幹を一封の白金電極の上に載せ た。此白金電極は「冨田式Thyratron刺戟装 置」(3)に蓮結されてみて,これによって任意の 頻度の春鳥を示幡繊維に與へ得る様にした。其 際筋に結びつけてある懸の弛みを豫め除いて置 く爲に筋を始めから5g程度の張力が現はれ る位引き伸して置いて筋の牧縮を起させた。箪 一偏経繊維を筋の表面に附着させた部位は結締 織や他の途中で切られてみる紳経歴維に覆はれ てるるのみでなく,更に充分にリンゲル液で潤 してあるので紳経繊維はその分離された部位で 等尺’注槙桿 興奮傳導が中断されることもなく・叉其他の面 直なことも此装置から起って來なかった○ 上述の實験準備の絡了と共に直ちに十目を開始する。玉壷に與べる感慮電撃の頻度は毎秒1・乃至 100向とし,それを作用させる持績は約10−三間とした。又キモグラフイオン上に時聞を記録する 爲に使用したJaquetの二時器は1秒1同とした。刺戟電撃の張度は速蓮動偏位では面一運動を起 し虫卵小の強嘩閾値とし,逞濁乱位では充分認め得る遅運動を起し得る程度の頻度窪防大鐙 20同の頻度を以て筋蓮動を襲生し得る最小Q強度を閾値と看話し,面喰位共閾値よりも充分強い 強度を用ひ,得られた實験結果が衝撃を生じさせる爲に使用した電撃の強慶には全く無關密なもの である事を絶えず確めながら冷語を行った。、 爾反覆刺戟電撃を與ふる爲に使用した既述冨田式刺戟装置は前以て正しく任意の希望する頻度の 電撃を出してみることを槍嘉した後に實験に使用した。
第3章 實 験 成.績
三品に使用した速運動箪位の標本の激は腓腸筋4例,縫匠筋1例,牛腱檬筋1例,計6例で,速 一一16一感動織維の直裡は凡そ’10 Pt前後であった。邊運動輩位では質験に供した標本の歎は腓腸筋3例, 前脛骨筋1例,孚腱様筋3例,計7例で,邊運動繊維の直径は纏て4μ乃至8μのものであった。 幽幽の運動輩位標本を用ひて得た結果を,、二種目運動軍位の機生する張力の時間的経過と筋の獲 生する最大張力と紳経衝撃の頻度とρ聞の關係とに分けて蓮べる。 (1) 2種の蓮動品位の嚢生する張力の時間的云過 速蓮動輩位の稜生する張力の時間的経過は論義第一圖に示した。これは腓腸筋につV・て得た1例 である。此の例及び他の實験例によって観察されることは,先づ頻慶が1秒1同乃至3同の時には 筋は箪一衝撃に封して夫々輩一牧縮を以て鷹じてるることが認められるのであるが,次第に頻度が 増すに從ひ所謂不完全強縮の維過をとり,更に與へる感恋電撃の頻度を話せば途には上昇∬勒認め 得る波動が湾失して滑かな曲線を描いて所謂完全強縮となることである。此檬な完全強縮を起した 頻度は室濫18DC乃至250Cに於て大晦毎秒10同以上であった○ かくて漸次頻度が増加して行けば速蓮動箪位の筋の獲生する張力も亦頻度と共に増大し,頻度毎 秒40同乃至60同で最大の張力が観察され,それ以上の頻度では筋の獲生する張力はむしち電撃 の頻度と共に減少の傾向を示すものである。第2圖の呼線は此の筋の蘇生する張力と神経に與へる 電撃の頻度との關係を示すものである◎腓腸筋では張縮時に護生する最大張力は309乃至磯9で あった。 次に弛媛に際しては,筋は速躍動織維に輿へる反覆電撃を停止するや否や全く急激に弛緩し完全 に基線にまで下降する。このことは次蓮の邊蓮動軍位が甚だ緩かに弛綾するのに比べて三昧深.いこ とである。省頻度が高い時或は比較的低い頻度でも長時間筋牧縮を繰返させた標本では,筋は最大 張力に達してすぐ下降することがある(筋疲勢の現象)が之に就ては次同の報告に述べる○ 次に邊蓮動軍位の獲生する張力の時聞的経過に就て蓮べる。附圖第二圖は勝心筋の遅蓮動軍位が 種々の頻度の瀞経衝撃によって嚢生する張力の時間的経過を示したものである。本例及び他の實験 例で観た結果邊蓮動主位にからうじて認め得る筋牧縮を起す頻度は毎秒5同乃至10同であった。 画面第二圖.A8CD避で見られる如く遅蓮動霊位では筋の張力は速蓮動山面のそれに比べ甚だしく 徐汝に増大する。例へば附圖第一圖Cの示す速蓮二軍位の牧縮曲線の孚上昇時(強縮刺戟開始後筋 に獲生する張力が最大値の山回に達する迄の時間)は1秒以内であるのに比して,附圖第二二圖:Bで は輿へる電撃の頻度は同一でありながら刺戟開始後10秒を維ても樹筋の張力は酒豪値に達せす, 三って牟上昇時は5秒よりは遙かに長いこと明かである。而して一般に逡聞込む熊鼠衝撃の頻度が 増加する程速かに筋牧縮曲線が上昇する傾向があることは速蓮三軍位の場合と同様であって,邊蓮 動忌詞の獲生する筋張力は頻度毎秒20同乃至40同で最大値を示した。而して頻度を更に増しで も遅暴動出面では筋り獲生する張力が頻度と共に著明に減少することはない。因に腓腸筋では逞蓮 動温位の稜生する最大張力は39乃至49で節つた。亦筋の韓緩に際しても・紳繧衝撃を渥志気鐡 維に漏り込むことを中止して後爾2秒乃至3.秒の聞筋牧縮は持論し,後始めは比較的急激に,次い で非常に徐々に弛緩が起って來る。筋の獲生した張力が電撃の作用中止後完全に零IC戻るのには少
362
くとも10秒,長きは1分以上を要する様であった。 .(2)筋の獲生する最大張力と紳経衝撃の頻度との關係 筋の嚢生する最大張力と紳経衝撃の頻度との二三を観る爲に,縦軸に張力を横軸に頻度をとって 描いた富者の關係を2種の蓮二軍位について比較する。第2圖は速二心箪位について得た張力と頻 度との間の關係を示す一一:pmJである。 第2圖 龍蓮動軍位(腓腸筋) 第3圓 逞遅動軍位(腓腸筋) 寧碗
茎2・
蓄,5的
雰 ’(2) /0 書 越 i 欺。 ;O. 8 1一 o.6 一a4 罎 方 宏 饗 肇 割 是・ 値 臭. 線 、薯α2 > 筋 暴 等 姦 易 三 盛 屈輕衝難の三島 努 鑑 豊 轟 墨。 20 40 so so iep
沸経衝撃の頻度 第2圖の實線で示される様に張力は頻度の壇加と共に増し毎秒25乃至50同で最大値に蓮し, それよの更に頻度が増加すると漸次張力は減少して行く。次に第3圖の三線は遅蓮動軍位について 得られた衝撃の頻度と筋の獲生する張力との關係を示すもので,速蓮動箪位の場合と同様に頻度の 増加するに俘ひ張力も増して行き毎秒50Bj位で極大に達する。而して更に頻度を増加しても張力 は速運動職位に於ける程著明には減少しない。 最後に筋の獲生した張力を,.之を稜生させるために使用した電撃の頻度で除して,、1つの運動輩 位の獲生する張力の1つの紳経衝二二の値を算出した結果を第2法高は第3.圖の二線を以って示し た。第2圖二線によれば,速蓮二二位では頻度と共に一つの衝撃宛の張力は増大し,・毎秒約20回 位で最:大値を示し,以後頻度と共に張力は著明に下降する。遅蓮動織維につV・て算出した一つの紳 維衝撃宛の張力曲線は第3圖三線の示す如く,毎秒15同位で最:大値を示し,次いで頻度の増加と 共に張力は減少するが速蓮;動輩位程著明℃はない。一18一
第4章 総
括 1) 2種の蓮動軍位翻ち速及び逞蓮動軍位について,筋の嚢生する張力と運動繊維に邊り込む紳 経衝撃の頻度との間の關係を追求した● 2)慕の邊蓮動箪位は反覆して與へらるる神経衝撃の頻度が5同以下では認め得べき筋牧縮を示 さ,ない。 3)遅,速蓮動箪位共に頻度の増加に從ひ張力を増加し,或頻度で最大値に達し,以後頻度を壌 すと速蓮動箪位も涯運動軍位も張力の下降の傾向があるが速蓮動軍位は殊に著明である。 4)最大張力を頻度で除して得た爾蓮動軍位の示す張力は頻度の増加と共に上昇し,最大値に蓬 した後急激に下降する,殊に遽蓮動軍位で著明である。 摺筆に臨み本硯究の爲に種々の御配慮塗賜はりましたる慶鷹生理輩激室加藤教授及び絶えず御鞭燵頂 きたる冨田教授並びに,終始御懇篤なる御指導と御校閲を賜はりたる慶鷹生理學教室田崎講肺に浦腔 の謝意を捧げる。 交 麟 1) 清水忠或…:慶躍簑選ぎ學,11巻,昭和6年0 2) 囲疇輔昌3條件反射㌧第5輯,昭和17年0 3) 上桂恒勢・其他:慶磨{署學,22名鋒,5號,昭手017年04) Kato : The microphysiology of nerve 1934.