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アメリカ手話のプロソディクマーカーに関する一考察:「目」と「眉」の動き

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Academic year: 2021

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アメリカ手話のプロソディクマーカーに関する一考察:

「目」と「眉」の動き

A Study on Prosodic Markers of American Sign Language:

Movements of Eye and Eyebrow

田頭 未希

1

Miki TAGASHIRA

1

1

東海大学

国際教育センター

1

International Education Center, Tokai University 1

Abstract: Visual signals convey a large number of communicative messages in any language, both spoken

and signed. The forcus of this study is to examine two important prosodic markers in American Sign Language (ASL): Eye aperture and eyebrows. In spoken language such as English and Japanese, any combination of high tone, eye aperture and eyebrow raise occur at the end of yes/no question, while only the latter two are used in ASL. Use of eye aperture and eyebrow by native signers of ASL mainly expresses question types and sentence types. The results indicated that a combination of eye aperture and eyebrows or eye aperture itself expressed the degree of something such as emphasis, intentions and opinions, and that the combination of eye aperture and eyebrows were associated with discourse functions.

1 はじめに

1960 年に Stokoe によって手話が世界で初めて言 語学的に分析され、音声言語とは異なる文法構造を 持つことが明らかになり、様々な国で手話が言語学 的に研究されるようになった。音声言語と同様に、 手話言語に関しても、語句、文、談話さらには手形 やその動きといった色々な単位や要素で発話の研究 が行われている。 音声言語、手話言語に関わらず、全ての言語にお いて、韻律(Prosody)はその言語における発話の生 成と知覚を行ううえで、必要不可欠な役割を担って いる[1]。音声言語の韻律的特徴は、例えばイントネ ーション、リズム、ポーズ、音の強弱や高低、音の 長さなどがあげられる。一方、手話言語では頭や首、 体の傾斜、目や口の開き具合、鼻にしわを寄せるよ うな動き、頬を膨らませる動き、手話動作の速さや 長さ、その他の身体の動きによって、音声言語にみ られる韻律的要素が表され [2, 3, 4]、手指言語の韻 律研究は音声言語の研究に非常に影響を受けている [5]。

アメリカ手話(American Sign Language、以下 ASL) はアメリカやカナダの一部の地域のDeaf community で使用される言語である。本研究ではASL について、 そのプロソディクマーカーである「眉(Eyebrows)」 と「目の開き方(Eye aperture)」をとりあげ、発話内 の手指動作とともに伝達される意味用法との対応関 係について分析を行った。

2 先行研究と本研究の目的

手話言語の韻律構造は、基本的に、体の傾き、頭 の動き、目、頬、鼻の動き、手の重ね方やサインの 伸長など、多くの身体的動作によって構成されてい る。Nicodemus [5] は、21 の ASL のプロソディクマ ーカーを挙げ、それらを4 つの調音カテゴリーに分 類している(表1)。それぞれの調音カテゴリーの中 で最も表出頻度が高いのは、Hand カテゴリーでは Hand clasp(手を握る、重ねる)、Head & Neck では Head tilt(頭部の傾斜)、Eye, Nose & Mouth では Eye aperture(目の開き具合)、Body では Body lean(体の 傾斜)であると報告している。

人工知能学会研究会資料 SIG-SLUD-B506-02

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表1 ASL プロソディクマーカー Hand Head &

Neck Eyes, Nose & Mouth Body Held handshape

Head tilt Eyebrows Body lean Hand clasp Head tuen Eye gaze

shift

Body movement Fingers

wiggling

Head nod Eye aperture

Visible breath Hands drop Head shake Nose

wrinkling

Shoulders raise Signing

space

Side to side Mouth gestures Neck tensing Puffed cheeks ASL の韻律研究では、調音ジェスチャーのような ものを扱った研究もあり、ジェスチャーが行われる 身体の部位と空間を調べ、手指動作がprosodic phrase boundary で引き延ばされるあるいは減速されること が報告されている [4]。

Dachkovsky and Sandler [6] はイスラエル手話にお けるイントネーションシステムの一部を構成する視 覚的サインを分析し、主に顔の上部の動きによって イントネーションが伝達される点を指摘している。 眉の上昇は、基本的に音声言語における上昇調に匹 敵し、発話が継続する合図となっていること、肯否 疑問文(yes/no question)や条件節の特徴となってい ることなどが確認されている。 日本手話では、感情表現という観点から、目と眉 の動きの特徴を調べた研究がある [7, 8]。小林 [7] は、目の動きとマウスジェスチャーを組み合わせた 36 種類を日本手話ネイティヴサイナーに表現して もらい、内省による評価から、「目開・眉上」は「驚 き」の感情が、「目細・眉寄」の時は「不満」の感情 がより強く表されることを示唆している。末森・小 林 [8] は、日本手話単語「少ない」に呼応する情意 的非手指表出を意味論的に分類し、意味範疇の可視 化を行った。日本手話単語「少ない」について、「目 開・眉上」は「驚き」の意味範疇と、「目普・眉上」 は「疑問」と、「目細・眉寄」は「不満」とそれぞれ 関係があることを報告している。しかしながら、こ こでは「目」と「眉」が文法的、情意的イントネー ションに関連するという記述は見られるものの、そ れ以上の詳細な韻律的要素との関係については述べ られていない。 手話言語を対象にそれぞれの言語の韻律構造やプ ロソディクマーカーについては明らかになってきて いるものの、韻律と意味用法の関連性に関する分野 はまだ分かっていない点が多い。本稿では、ASL に おけるプロソディクマーカーと発話内の手指動作と ともに伝達される意味用法の対応関係について論じ る。

3 分析方法

3.1 分析資料

ASL のテキスト Signing Naturally 1 の DVD に収録 されている会話を分析資料として用いた。このテキ ストは、アメリカ国内はもちろん、日本などアメリ カ以外の国で ASL を学ぶ際に長年用いられている DVD 付きのテキストである。12 ユニットで構成さ れ、それぞれのユニットに収録された会話(2 人また は3 人会話)、合計 23 会話を分析に用いた。話者は 同性間、異性間の両方が含まれ、さらに友人同士、 教師と生徒など様々な設定が含まれている。会話内 容も自己紹介、家族について、行き先の確認、週末 の予定を尋ねるなど各ユニットで学ぶ語彙や表現を 考慮した短い会話となっている。 音声言語の学習用テキストの会話文や DVD に収 録された会話は、学習項目に主眼が置かれた構成で、 会話自体の不自然さが指摘されることもある。その ため、事前に、ASL のネイティヴサイナー1名(20 代)に、収録された手話会話の自然さについて、会 話のセッティング、手指動作の自然さ(位置、速度、 バリエーション)、手指動作以外の身体の動きの自然 さ(表情、ジェスチャー)について、聞き取り調査 を行った。手指動作の速度に関しては、ろう者同士 の会話よりも遅いと判断したが、会話として非常に 不自然さが感じられるほどではないという回答であ った。それ以外の項目については不自然さは特に感 じられないという判断が得られた。

3.2 分析手順

分析資料の会話の文字起こしと、発話のどの位置 で目と眉の動きに変化が見られるのかを記述した。 プロソディクマーカーとしての「目の開き具合(Eye aperture)」と「眉(Eyebrows)」について、Nicodemus [5] に従い、目を 3 種類、眉を 2 種類の動きに分類 し、ラベル付けを行った。ニュートラルな状態には 記号をつけていない。 目 見開く W: wide 窄める S: squinting 閉じる C: close

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眉 上げる R: rise 下げる L: lower 図1に肯否疑問文での表情と疑問詞疑問文での 表情の例を示す [9]。肯否疑問文での表情は、「目の 見開き(W)」と「眉上げ(R)」があり、疑問詞疑問 文の表情は「目の窄め(S)」と「眉下げ(L)」がみ られる。 図1 肯否疑問文での表情(左)と疑問 詞疑問文での表情(右)[9] ラベル付けはろう者1 名と健聴者 1 名(いずれも 日本人)で行い、判定が分かれたものは今回の分析 からは除外した。 疑問文の種類の判定については、肯否疑問文は yes/no を聞いていることが示される you の手指動作 が文末に挿入されているか、または返答の最初に yes/no が手指動作として含まれている文とし、疑問 詞疑問文はwhat、where、how などの疑問詞が手指動 作として示されている文とした。上記に当たらない ものは、それ以外として分類した。

4 結果と考察

4.1 疑問文の分類に関わるプロソディ

クマーカーと音調

表2 は、目と眉それぞれを組み合わせた 11 種類の 表出頻度を示す。また表3 と 4 には、その内訳を疑 問文の形式別に示す。目と眉の組み合わせに関して、 表2 より、「眉上げ(R)」と「目の見開き(W)」、「眉 下げ(L)」と「目の窄め(S)」はそれぞれ共起しや すいことが分かる。 ASL の非手指に関する文法規則のひとつに、肯否 疑問文の場合は(1)眉を上げる(2)頭を前方に 傾ける(3)最後の手指動作を保持する、また、疑 問視疑問文の場合は、(1)眉を下げる(2)頭を前 方に傾ける(3)最後の手指動作を保持するという ルールがある。両者の違いは眉で、上げるか下げる かによって、手指動作以外でも疑問文の種類を伝達 し、読み取っている。眉の上げ下げと疑問文の種類 の組み合わせが逆になると、基本的には文法的に不 自然な文となる。 肯否疑問文と疑問詞疑問文の非手指動作について はすでに多くの研究 [2, 10, 11] でも報告されてきた。 表3 と表 4 より、「眉上げ」は31 例中 28 例が肯否疑 問文で観察され、「眉下げ」は21 例中 18 例が疑問詞 疑問文で観察された。英語の音声言語では、一般的 に、肯否疑問文の文末は上昇調をとり、疑問詞疑問 文の文末では下降調となるように、文末の音調によ って疑問文の種類が区別されている。ASL での眉の 上げ下げを、英語の音声言語でいう文末の音調変化 ととらえ、肯否疑問文での「眉上げ」は上昇調を示 し、疑問詞疑問文の「眉下げ」は下降調に匹敵する と考えることができる。手話言語の「眉上げ」「眉下 げ」が音声言語の上昇調と下降調に相当するという 点はASL だけでなく、イスラエル手話など他の手話 言語でも報告されている [9]。音声言語でも、文末の 音調変化による言い分けは一般的なルールではある けれども、自発音声の中で常に当てはまるわけでは ない。今回の観察でASL の非手指の文法規則に当て はまらなかった例が数例あった。これはむしろ、ASL でのプロソディクマーカーが音声言語での音調と同 じように、ある程度のルールを保ちながら、談話の 中で様々な要因で変化しうるものであることを実証 しているとともに、分析データが発話として自然で あることも示していると考えられる。 次に、文法規則に当てはまらなかった肯否疑問文 での「眉下げ」2 例と、疑問詞疑問文の「眉上げ」3 例について検討する。まず、肯否疑問文で「眉下げ」 が観察された2 例は、「この近くに住んでいるのか?」 や「子供はいるのか?」など、形式的には相手が yse/no で答える質問形態であるため、文法通りであ れば「眉上げ」になるはずである。しかし、会話の 流れから、「相手はこの辺りには住んでいない」、「子 供はいない」という認識であった上での質問で、訝 しく思っている、あるいは疑ってかかっている様子 で表示されたと解釈できる。否定語やネガティブな 意味を持つ語は「眉下げ」の非手指動作と共起しや すい傾向があることから、ここでの例も、訝しいと いうネガティブな意味用法が加わったことで、「眉上 げ」よりむしろ「眉下げ」が表出したと考えられる。 ここで「目の開き具合」との関係にも注目してお きたい。表2 が示す通り、「眉上げ」は「目の見開き」 と、「眉下げ」は「目の窄め」と共起しやすい傾向が ある。しかし、この3 例ではすべて「眉下げ」にも 関わらず、「目の窄め」と共起せず、非手指動作は眉 だけの動きであった。これは同じ「眉下げ」でも、

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疑問詞疑問文の多くでみられた「目の窄め」を伴っ た場合とは明らかに異なる。音声言語で示される音 調変化にも、上昇下降の大きさや時間長、音の強弱 の違いといった程度の差があるように、手話言語で も共起する非手指動作の種類によって、手話言語の 韻律の違い、程度の違いがあることを示唆している 例と考えられる。音声言語の音調に置き換えるなら ば、下降の幅が緩やかか、あるいは平坦に近いよう な発話であることが推測される。 疑問詞疑問文で「眉上げ」が観察されたのは、2 例 が週末の予定を提案をする場面で、1 例は友人間で 手助けを申し出る場面であった。例えば、「(手伝う のは)いつがいい?」という流れで”when?”のみの手 指動作で投げかけた質問形式である。3 例はすべて、 when や what の一単語のみで非手指動作の眉の動き が完結しており、形式的には質問だが、その語を単 独で強調するような意味用法が加わることで、「眉上 げ」が現れたと考えられる。音声言語でも、会話の よ う な 状 況 で 、 一 単 語 で 質 問 す る よ う な 場 合 に は、”when?”を上昇調で発音する方がより自然な発話 であるといえる。音声言語で強調を伴う場合、音調 を変化させる以外にも、当該箇所を強い調子で言っ たり、声を高くしたり、リズムを変化させたりする 手法が取られる。 表2 目と眉の動き 眉 R L なし 目 W 41 0 2 S 0 44 7 C 0 0 0 なし 7 8 表3 肯否疑問文の内訳 眉 R L なし 目 W 25 0 0 S 0 0 0 C 0 0 0 なし 3 2 表4 疑問詞疑問文の内訳 眉 R L なし 目 W 3 0 0 S 0 18 3 C 0 0 0 なし 0 0

4.2 疑問文の分類以外に関わるプロソ

ディクマーカーと音調

前節では、肯否疑問文と疑問詞疑問文のプロソデ ィクマーカーの眉と目の動きと、音声言語でそれに 匹敵する音調について述べた。本節では、疑問文の 区別以外で観察された例について考察する。表5 に、 疑問文以外の文のタイプにおける目と眉の組み合わ の表出頻度を示す。 表5 疑問文以外の表出頻度 眉 R L なし 目 W 13 0 2 S 0 16 4 C 0 0 0 なし 4 6 「眉上げ」は、新しい談話トピック導入時にも使 用される [11, 12]。表 5 に示す「眉上げ」13 例中 4 例はこれにあたる。音声言語でも新しい談話トピッ クに移る際には、上昇調などの音調変化を持たせる ことがある。手話言語の「眉上げ」も音声言語の音 調変化も、聞き手の注意をこちらに向けるような働 きを持ってるといえる。 この他に、「眉上げ」の13 例中 5 例は、相手が理 解してるかどうかを確認している場面で観察された。 英語でも日本語でも音声言語では、相手に確認をす る際には、文の形であっても一単語であっても、文 末や語末で上昇調が使用される。「眉上げ」は上昇調 に匹敵するという解釈に基づくと、確認の意味用法 で「眉上げ」が使用されるのは発話の中の自然な韻 律だといえる。また、驚きを示す単語は「眉上げ」 と「目の見開き」が必ず伴って産出されることから、 驚きを示す場面での2 例の発話が「眉上げ」と「目 の見開き」を伴っていたのは必然的なものと説明で きる。 表5 における、目の動きを伴わない「眉上げ」 の4 例について論じる。これらは、非手指動作とし て、うなづきが観察された。うなづきは強調を示す 際に使われることが分かっている(Wilbur 2009)。こ の4 例はうなづきが伴っていること、さらにその発 話内容からも強調の用法と判断できる。ASL では感 情をはじめ、様々な物事の程度の違いを表現するた めに表情を用いる [9]。うなづきによって強調は示 されているが、さらに「眉上げ」によって強調の度 合いの違いを示しているのではないかと推測できる。

(5)

次に、「眉下げ」を扱う。「目の窄め」と共起する ものが16 例、目の動きを伴わないものが 6 例、観察 された。no や nothing のような否定語は文法規則と して「眉下げ」や「目の窄め」とともに使われるこ とが多く、分析データにも「眉下げ」や「目の窄め」 と共起する例が4 つみられた。また、渋滞にはまり、 車が進まない状況の説明で slow を繰り返し使う場 面など、ネガティブな意味を伴った発話での使用も 観察された。 強調を示す「眉上げ」の用法についてすでに述べ たが、「眉下げ」でも強調の用法と解釈できるものが 数例みられた。いずれも「眉下げ」と同時に「目の 窄め」が観察された。非常にお腹が空いているとい う場面での”hungry”や、本当に申し訳ないと伝える 場面での”I’m sorry”などの手指動作の開始とともに 表出していた。日本語手話の感情に関する研究では あるが、目を細めた方が不満の度合いがより強くな るという報告もある [7]。眉の動きに「目の窄め」が 加わることで程度の差を示している可能性は十分に 考えられる。 会話例1を以下に示す。男性が女性の友人に写真を みせながら自分の家族について説明をしている場面 である。A2 の‘Big family!’の発言のところで「眉下 げ」「目の窄め」がみられるが、写真に大勢の人が写 っていて、それがみんな家族だということにとても 驚いたという意味でBig が強調されていると考えら れる。B4 は母方の祖父が好きなんだという発話で、 like から「眉下げ」「目の窄め」の動きが開始され、 好きだという発話が強調されている。一方、B2 の ‘OK? ’は「(写真についてもっと)説明しようか?」 といった提案的な意味で用いられ、「眉上げ」「目の 見開き」が共起し、うなづきも同時に観察された。 音声言語に置き換え、「眉下げ」「目の窄め」を下降 調、「眉上げ」「目の見開き」を上昇調で発音したと しても不自然さは感じられない会話の流れである。 Conversation 5-1

A1: /THIS YOU FAMILY YOU/YNq

‘Is this your family?’

B1: YES++ MY BROTHER WEDDING ‘Yes, it’s my brother’s wedding.’ 1

⼿

話表記の代表的なものにはストーキー法がある が、本稿では手話の文法研究に一般的に利用される ルール [14] に従い、ASL での手指動作は大文字で 示し、下に音声言語の文法による翻訳を‘ ’で表 示する。++は同一の手指動作(単語)が繰り返され たことを示す。/ /YNqは肯否疑問文を示し、/ /WHq

A2: /BIG FAMILY/【眉下げ・目の窄め】 /HOW MANY

BROTHER SISTER【眉下げ・目の窄め】/WHq

‘Big family! How many brothers or sisters do you have?’

B2: I HAVE 3 BROTHER 2 SISTER I SHOW YOU OK【眉上げ・目の見開き】

‘I have 3 brothers and 2 sisters. I will show you, OK?’ B3: <showing the picture> I THIS

‘This is me.’

A3: YOU /HAIR/【眉下げ・目の窄め】

‘You had hair.’

B4: <pointing> AUNT UNCLE GRANDMOTHER GRANDFATHER I /LIKE MOTHER

FATHER/【眉下げ・目の窄め】 <pointing>

‘This is my aunt, this is my uncle, this is my grandmother and this is my grandfather. I like my mother’s father.’

… <continue pointing siblings on the photo > … A4: /ALL DEAF【眉上げ・目の見開き】/YNq

‘Are all your family deaf?’

B5: /NO/【眉下げ・目の窄め】 ALL HEARING ONLY I

DEAF

‘No, all of them are hearing, and only I am deaf.’ A5: I SEE /NICE PICTURE/【眉下げ・目の窄め】

‘I see. It’s a nice picture.’

疑問文以外の文脈での「眉下げ」の用法は非常に 様々で、「眉上げ」のようにある程度決まった意味用 法の中での使用がみられるというわけではなく、今 後「目」と「眉」以外のプロソディクマーカーとの 共起も含め、さらに詳細に検討する必要がある。

まとめと今後の課題

テキスト付随の会話を利用し、ASL のプロソディ クマーカーのひとつとされる「目の開き具合(Eye aperture)」と「眉(Eyebrows)」の動きに注目し、分 析を行った。すでに先行研究で報告されている疑問 文の形式の違いに伴う基本的な目と眉の動きをデー タから観察すると同時に、「目の開き具合」のマーカ ーが、発話内容に関する程度の違い(強調の度合い は疑問詞疑問文を示す。ただし複雑さを避けるた め、本稿での分析には直接必要のないラベル付けは 行っていない。また、/ /【 】は【 】内の非手指 動作が/ /区間で付加されていることを示し、本稿 でのみ使用されている記号である。

(6)

やネガティヴさの程度など)を言い分けている可能 性を示唆した。さらに、音声言語の音調と比較する ことで、ASL の「目の開き具合」と「眉」の動きが、 音声言語の音調と同様に、発話の韻律を決める重要 な役割を担っていることを確認した。 今後の課題として、音声言語での自発音声にあた るASL データの分析に取り掛かること、データの判 定基準の客観性向上のため、ASL ネイティヴサイナ ーの判断を加えることを考えている。また、疑問文 以外の文脈で「眉下げ」が使用される例の中でその 意味用法が「眉上げ」よりも多岐にわたっていると 思われるものが多くみられ、今回十分に検討できな かった点を明らかにしていきたいと考えている。

参考文献

[1] Culter, A., Dahan, D., and van Donselaar, W. : Prosody in the comprehension of spoken language: A literature review. Language and Speech, 40, pp.141-201, (1997)

[2] Liddell, S.K. : Normal signals and relative clauses in American Sign Language. In P. Siple (Ed.), Understanding language through sign language research, pp.59-90, (1978)

[3] Sandler, W. : The medium is the message: Prosodic interpretation of linguistic content in sign language. Sign Language and Linguistics, 2, pp.187-216. (1999)

[4] Tyrone, M., Nam, H., Saltzman, E., Mathur, G., and Goldstein, L. : Posody and movement in American Sign Language: A task-dynamics approach. Presented at the Prosody 2010 Comference, Chicago. (2010)

http://www.speechprosody2010.illinois.edu/papers/10095 7.pdf

[5] Nicodemus B. : Prosodic Markers and Utterance Boundaries in American Sign Language Interpretation. Gallaudet University Press. (2009)

[6] Dachkovsky, S. and Sandler, W. : Visual Intonation in the Prosody of a Sign Language. Lang Speech. Vol.52, pp.287-314. (2009) [7] 小林京子 : 「<少ない>の表出における NMM/NMS 共起の意味論的考察について」, 『2015 年度日本手話 教育研究大会予稿集』 (2015) [8] 末森明夫・小林京子「日本手話[少ない]呼応非手指表 出の意味地図:データ解析による非手指表出群にお ける意味範疇の動態様相の可視化」『日本手話学会第 41 回大会予稿集』, pp.22-23. (2015)

[9] Lazorisak, C. and Donohue, D. : The complete idiot’s guide to conversational sign language. (2004)

[10] Liddell, S. K. : American Sign Language syntax. The

Hague: Mouton. (1980)

[11] Klima, E. and Bellugi, U. : The sign of language. Harvard University Press. (1979)

[12] Janzen, T. : The grammaticization fo topics in American Sign Language. Studies in Language 23, pp.271-306. (1998)

[13] Wilbur, R. B. : Stress in ASL: Emprical evidence and linguistic issues. Language and Speech, 42. Pp.229-250. (1999)

[14] Baker-Shenk, C. and Cokely, D. : American Sign Language: A teacher’s resource text on grammar and culture. T.J. Publishers. (1980)

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