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心身障害者施設のCaries Activity と口腔内状態に関する研究

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Academic year: 2021

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〔原著〕 松本歯学11:41∼53,1985     key WOrdS:酷蝕活動性一心身障害者一カリオスタットー蕗蝕重症度指数

心身障害者施設のCaries Activityと

口 腔 内 状 態 に 関 す る 研 究

吉川満里子 長野朱実 横山幸代 山本真也 橋口緯徳

松本歯科大学陶材センター(橋口紳徳博士)

Research on the Caries Activity and the Condition of Oral Cavity in the Handicapped

MARIKO YOSHIKAWA AKEMI NAGANO SACHIYO YOKOYAMA SHINYA YAMAMOTO and HIROYOSHI HASHIGUCHI

Porcelain Center, MatSumoto Dental College         (Dr. H. Hashiguchi)

Summary

   In the prevention and treatment of oral disease, the ora1 health guidance of the handicapped involves many more difficulties than that of the healthy patient, especia】Iy in regard to time and technical requirements.    Under current conditions, control of oral disease, in particular oral health guidance, is neglected.    Early treatment and continued guidance depends on early detection, therefore it is important that an exhaustive study of the oral cavity and the caries activity in the handicapped be carried out.    In this paper, we discuss the caries activity and the oral cavity, as well as other factors in the handicapped. Two hundred and thirty six handicapped patients between the ages of 6 and 64 years were examined. We studied the condition of the ent三re body, the oral cavity, and the caries activity.    The relationship between the Cariostat and other factors was analyzed statis’ tically in these patients. These results indicate an especially intimate relationship between these factors and the caries activity.  本論文の要旨は,第17回松本歯科大学学会総会(昭和58年11月26日)および第25回日本歯科医療管理学会総会(昭和59年6 月9日)において発表された.(1985年5月11日受理)

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42 緒 吉川他1心身障害老施設のCaries Activityと口腔内状態 言  心身障害者とは,肢体不自由,視覚障害,平衡 機能障害,音声機能障害もしくは言語機能障害, 心臓機能障害,呼吸器機能障害等の固定的臓器機 能障害又は精神薄弱等の精神的欠陥があるため, 長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限 を受けるものをいう.  つまり,心身障害者とは精神障害者,身体障害 者,両者の複合障害者の総称であり,知能が正常 であれば,身体障害者と呼ばれ,身体が正常であ れば,精神薄弱者と呼ばれる.心・身共に重度の 障害を合併する人を重症心身障害者と呼び,植物 人間と言われる人もこの範疇に属している.それ ら障害程度の差の組み合せによって,多くの分類 ができ,それぞれの対策が実施されている.  我々が対象とした心身障害者の疾患は,次のよ うなものであった.  全身的知的機能が平均より有意に低く,同時に 適応行動の障害を共存しているもので,それが発 育期中に現れたものであると定義されている 一「精神発達遅滞」.脳の発作性機能障害で,意識 障害,痙攣などの多様な症状を発作的に現わす疾 患である一「てんかん」.受胎から新生児(生後4 週以内)までの間に生じた,脳の非進行性病変に もとつく,永続的な,しかし変化しうる運動およ び姿勢の異常である一「脳性麻痺」.No.21の染色 体異常によって起こる先天性奇形である一「ダウ ン症候群」.分裂病者のうち,病勢がすすむにつれ, 家族や周囲の人々に対する関心や感情的反応がう すれ,社会との接触を断ち自己の殻に閉じこもる ようになる一「自閉症」.急性ウィルス性疾患で, 麻痺,あるいは死にいたる幅広い臨床像を有する 一「ポリオ」.聴覚の低下した状態である一「難聴」. 生来視力が不良であるものの総称である一「弱 視」.原因を問わず上下肢,体幹に生活に支障をき たす程度以上のなんらかの機能障害をもつものの 総称である一「肢体不自由」.話し手のことばが話 し手のおかれている社会,年齢,性から考えて妥 当あるいは必要と思われる言語能力から明らかに かけはなれている状態,および発声発語にさいし て不快な自覚症状を訴えるもの,話し手がことば のために心理的・社会的不適応に陥っている状態 である一「言語障害」,頭がきわめて小さい状態を 示す一「小頭症」.比較的軽い精神薄弱のうえに, 精神分裂病の加わったものである一「接技分裂 病」.運動失調を主症状とする変性疾患の総称であ る一「脊髄小脳変性」1).  これらの疾患が単独あるいは合併していたもの などである.  よって口腔疾患の予防,治療における心身障害 者のロ腔衛生指導は健常者のそれに比較し,技術 的時間的にも,またその他あらゆる面において多 くの困難を伴う.それゆえ現状においては,一部 の施設を除いて口腔疾患の管理が行き届かず,特 に口腔衛生指導がなおざりにされている.今後は 口腔疾患の早期発見,早期治療,予防とつきすす んで保健口腔衛生等の継続指導が待たれる.そこ でまず心身障害者における口腔内状態とCaries Activityについて窮めることが望まれてくる.  Caries Activityとは,ある観察時点における驕 蝕羅患性の方向を言う.これに関連した何かの指 標を用いて,個体又は踊蝕自体の活動性を具体的 に判定し,表現する方法が,Caries Activity Test である2).  Caries Activity Testを行う場合,顧蝕の発生 と再発の原因であると考えられる口腔内の要因 が,何であるかを診断するために行う.鶴蝕診断 においては,その理由付けを助け,また臨床にお いて,治療計画を立てる上で,有益な情報を提供 する.さらに患者に対する保健指導の効果を,一 層向上させたい時,動機付けのために,積極的に 利用する事が可能である.  心身障害者の口腔内所見については,多くの 人々によって報告されてきているa−16).しかし,心 身障害者のCaries Activityについては,今まで菊 間,鈴木17)と駒井18)及び鈴木らig)などの報告がみ られるにすぎず,菊間らは小児及び成人の精神薄 弱者を,同様に駒井は精神疾患入院患者を,そし て鈴木らは成人の身体障害者のみを対象としてお り,例数も少なく幅広い年齢層の心身障害者を対 象とした報告はほとんどみられない.  そこで今回我々は,6∼64歳の心身障害者にお けるCaries Activityとロ腔内状態及びその他の 因子について調査を実施してみたので報告する. 調査対象並びに実験方法 調査対象は心身障害者236名.心身障害者施設6

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松本歯学 11(1, 2) 1985 ヵ所.A園46名, B園44名, C園39名, D園34名, E園32名,F園41名について検討した.  心身障害者の全身状態を把握するために次の調 査を実施した.調査項目は(1)年齢,(2)主な疾患,(3) 向精神薬投与の有無,(4)1日のSugar摂取頻度に ついて,また口腔内の状態については,(1)歯牙の 状態,②咬合状態異常の有無,(3)歯肉炎の有無, (4)口腔清掃の程度を調査した.そして踊蝕活動性 試験であるCariostatも行った.さらに同一の被 検者を対象として,口腔刷掃指導後のCaries Activityの変化について検討した.  そしてこれらの調査結果からその関連を統計的 に観察した.

実験成績

 図1は,Caries Activity TestであるCariostat の踊蝕活性度の分布で,6施設の被検者数をあら わしている.培地の色調変化によりBlueを(一), Greenを(+), Green・Yellowを(什), Yellow を(冊)と判定した結果,(一)16例,(+)74例, (+)113例,(−H−1−)33例を示した.  図2は,6施設の年齢の分布をあらわしている. 5∼10歳未満が6例,10∼15歳未満が31例,15∼20 43 歳未満が48例,20∼25歳未満が31例,25∼30歳未 満が31例,30∼35歳未満が18例,35∼40歳未満が 18例,40∼45歳未満が18例,45∼50歳未満が11例, 50∼55歳未満が14例,55∼60歳未満が7例,60∼65 歳未満が3例であった。  図3は,6施設の疾患の分布をあらわしている. MRは精神発達遅滞, Epiはてんかん, CPは脳性 麻痺,DSはダウン症候群, Auは自閉症, Poはポ リナ,HHは難聴, PSは弱視, GSは接枝分裂病, OHは肢体不自由, Miは小頭症, SLDは言語障 cf:Ca−Caries Activity Test   図1:麟蝕活性度の分布 図2:年齢の度数分布

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44 MR MR Epi MR CP DS Au Po CP MR HH MRPS OH Mt SI.D

HH

PS SCD GS MR OH 吉川他:心身障害者施設のCaries Activityと口腔内状態 2 3 4 5 6 7 8 9 (%) 10 図3 疾患の度数分布

図4:C.S. Lの度数分布     cf:M一ロ腔清掃        1一 良 好        ll一概 良        皿一不 良 図5 口腔清掃の分布 害,SCDは脊髄小脳変性症と略語で示す.被検者 中MRは33.1%, MR・Epiは14%, MR・cPは 13.1%,DSは12.7%, Auは10.2%, Poは6.8%, CPは2.1%, MR・HH, MR・PSは1.4%, OH, Mi, SLD, HH, PSは0.8%, SCD, GS, MR・ OHは0.4%の百分率であった.

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松本歯学 11(1,2)1985 45      cf:O一咬合状態       +一有一一無 図6:咬合異常の分布 c{:T一歯肉炎   +一有 一一無 図7二歯肉炎の分布

  cf:+一有 一一無

図8 向精神薬投与の分布  図4は,踊蝕の重症度を表わすために下野ら2の が考察した踊蝕の程度に応じて点数を与え,数量 化を行った歯爵蝕重症度指数C.S. Lをあらわして いる.6施設のC.S.1.の分布は, C. S、1.0∼10 未満で54例,10∼20未満で105例,20∼30未満で60 例,30∼40未満で13例,40∼50未満で3例,90∼100 で1例であった.  図5は,6施設の口腔清掃の分布をあらわして いる.被検者中口腔清掃の良好な者は91例,概良 の者は63例,不良な者は82例であった.  図6は,6施設の咬合異常の有無の分布をあら わしている.被検者中咬合異常の無い者は189例, 有る老は47例であった.  図7は,6施設の歯肉炎の有無の分布をあらわ C    cf.Ce−Caries Activlty Test 図9:鶴蝕活性度とC.S.1.の関係 している.被検者中疾患の無い者は143例,有る者 は93例であった.  図8は,6施設の向精神薬投与の有無の分布を あらわしている.被検老中向精神薬投与の無い者 は180例,有る者は56例であった.  図9は,6施設の踊蝕活性度とC.S. Lの関係を あらわしている.踊蝕活性度が(一)の者の一人

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46 吉川他:心身障害者施設のCaries Activityと口腔内状態 cf:O一咬合状態 一.+,’H・.ve−C・・i・・A・tivity Te・t  図10:麟蝕活性度と咬合異常の関係        cf:A∼F−一・一施設 図12:1日のSugar摂取頻度分布 平均C.S.1.は12.8,(+)の者でC. S.1.は12.9, (十)の者でC.S. Lは18.5,(−fH−)の老でC. S.1、 は21.8であった.  図10は,6施設の鶴蝕活性度と咬合異常の関係 をあらわしている.踊蝕活性度が(一),(+),の 者で咬合異常を有する者は被検者の内36。1%, (什),(冊)の者で咬合異常を有する者は63.9% であった.  図11は,6施設の鶴蝕活性度と歯肉炎の関係を あらわしている.歯勇蝕活性度が(一),(+)の者 で歯肉炎を右する者は被検者の内33.3%,(→十), (計)の者で歯肉炎を有する者は66.7%であった.  図12は,施設別の1日のSugar摂取頻度をあら わしている.6施設平均1日のSugar摂取頻度は cf:T一歯肉炎 一,+,ff.冊一Caries Activity Test  図11:鯖蝕活性度と歯肉炎の関係 2.5回であった.  図13は,Caries Activity TestであるCariostat の顧蝕活性度の分布で,6施設の被検者数をあら わしている.口腔刷掃指導前の顧蝕活性度の分布 をFirst Test(昭和58年4月から実施),ロ腔刷掃 指導後の分布をSecond Test(昭和58年7月から 実施)とした.  First Testでは図1で述べたように,(一)16例, (十)74例,(廿)113例,(冊)33例だったが,Second Testでは(一)37例,(十)87例,(十)92例,(冊) 20例であった.  図14は,A園の鶴蝕活性度の分布をあらわして いる.顧蝕活性度(一)と(+)をあわせると, First Testでは90例, Second Testでは124例で あった.  図15は,B園の顧蝕活性度の分布をあらわして いる.願蝕活性度(一)と(+)をあわせると, First Testでは25例, Second Testでは27例で あった.  図16は,C園の踊蝕活性度の分布をあらわして いる.踊蝕活性度(一)と(+)をあわせると, First Testでは18例, Second Testでは29例で あった.  図17は,D園の踊蝕活性度の分布をあらわして いる.麟蝕活性度(一)と(+)をあわせると, First Testでは8例, Second Testでは13例で あった.  図18は,E園の麟蝕活性度の分布をあらわして いる.顧蝕活性度(一)と(+)をあわせると,

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松本歯学 11(1,2) 1985

First Test

冊(20)

(37’

Ca

→十 (92) (236)

[lu皿1 (87)

Seeond Test

47 図13:顧蝕活性度の分布 First Test      Second Test       図14:施設別麟蝕活性度の分布(A園) First Test      Second Test       図15:施設別麟蝕活性度の分布(B園)

(8)

48 吉川他:心身障害者施設のCaries Activityと口腔内状態 Fi工st Test 刊十(1) 十ト

(9)Ca

(39) 十(22)

Second Test

図16:施設別鶴蝕活性度の分布(C園) First Test      Second Test      図17:施設別麟蝕活性度の分布(D園) First Te8t      Second Test      図18:施設別鶴蝕活性度の分布(E園)

(9)

松本歯学 11(1,2) 1985 49 十トト  ・ @   パ (5)    遥

1川川

Ca

(9)1 (4D

(25)

First Test

Second Test

図19:施設別蠕蝕活性度の分布(F園) 00 図20:麟蝕活性度(一),(十)の分布 First Testでは8例, Second Testでは18例であっ た.  図19は,F園の歯禺蝕活性度の分布をあらわして いる.鶴蝕活性度(一)と(+)をあわせると, First Testでは11例, Second Testでは12例で あった.  図20は,口腔刷掃指導前後において,踊蝕活性 度が低い(一)と(+)をあわせた施設別の人数 を百分率であらわしている.A園はFirst Test 43.5%,Second Test 54.3%であった. B園は First Test 56.8%, Second Test 61.4%であった. C園はFirst Test 46.2%, Second Test 74.4% であった.D園はFirst Test 23.5%, Second Test 38.2%であった.E園はFirst Test 25.0%, Sec・ ond Test 56.3%であった. F園はFirst Test 26.8%,Second Test 29.3%であった.  表1は,施設別Caries Activity Testと年齢, C.S.1.,口腔清掃状態との関連を統計的に調べた 結果である.θ2はクラマーの関連係数をあらわし ている21).  Caries Activity Testによる踊蝕活性度の判定 結果と年齢においてθ2は,A園0.04, B園0.18,

(10)

50 吉川他:心身障害者施設のCaries Activityと口腔内状態 表1 施設別Caries Activity Testと年齢, C. S.1.,口腔清掃状態との関連係数

  施設

ニ2

A園

B園

C園

D園

E園

F園

a

0.04 0.18 0.25 0.10 0.21 0.17

Ca

C

0.04 0.12 0.05 0.09

0」3

0.08

m

0.09 0.12 0.12 0.06 0.09 0.05

cf:θ2一関連係数

   Ca−Caries Activity Test

    a一年齢

    c−C.S.1.

    m一ロ腔清掃状態

表2二First TestとSecond Testとの関連係数

  施設

ニ2

A園

B園

C園

D園

E園

F園

F

S

0.21 0.33 0.14 0.05 0.04

0.14

c{:θ2一関連係数

   F−First Test

   S− S econd Test

C園0.25,D園0.10, E園0.21, F園0.17であっ た.麟蝕活性度の判定結果とC.S. Lにおいてθ2 は,A園0.04, B園0.12, C園0.05, D園0.09, E園0.13,F園O.08であった.踊蝕活性度の判定 結果とロ腔清掃状態においてθ2は,A園0.09, B 園0.12,C園0.12, D園0.06, E園0.09, F園0.05 であった.  表2はFirst TestとSecond Testとの関連を 統計的に調べた結果である.  Caries Activity Testによる踊蝕活性度の判定 結果において,First TestとSecond Testとの間 では,クラマーの関連係数θ2は,A園0.21, B園 0.33,C園0.14, D園0.05, E園0.04, F園0.14 であった. 考 案  我々はすでに,Keyes22)の鶴蝕成立主要因子と Caries Activityとの関係を,健康児童について 種々の角度から検討し,Caries Activityと踊蝕成 立主要因子との関連性が統計的に得られた23)24}. 今回は,6歳∼64歳の心身障害者236名について, Caries Activityと口腔内状態及びその他の因子 について調査し,統計的処理を実施した.さらに 同一の被検者を対象として,口腔刷掃指導後の Caries Activityの変化についても統計的処理を 実施した.  今回の実験成績において,Cariostatの麟蝕活 性度別6施設の被検者数は,Cariostat(一)と(十) あわせて38.1%,(→+)と(計)あわせて61.9%で あり,鶴蝕活性度の高い者が,被検者全体の過半 数を占めていることが分った.  しかしこれを他の報告と対比した場合,駒井18) の報告では(什)と(什)とあわせて89。4%,ま た鈴木ら19)の報告では(+)と(−H−t−)あわせて93.9% であり,今回の我々の調査結果に比べてはるかに 鯖蝕活性度が高い者の分布が多い結果を示してい る.これによって本調査の対象者のロ腔衛生管理 状態が良いことが分かり,これは衛生学院の重度 心身障害者巡回臨床実習の成果と思われる.一方, 我々がすでに報告した鯖蝕罹患歯率の高い健康児

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松本歯学 11(1,2)1985 童を対象とした結果23}と対比すると,(什)と(冊) あわせて72.0%であり,今回の調査結果と大体同 様の結果を示している.さらに,口腔衛生管理を 充分に行っていると考えられる歯科衛生士学生に おいては(冊)の者は認められず,(壮)の者で 48.5%と低く,かつ(+)を示す老が42.4%を占 めている.これは本調査と比べて踊蝕活性度が低 いことを表している.よって心身障害者の口腔衛 生指導の必要性はまだまだ重要であると考えられ る.  口腔清掃状態の評価に関しては,報告者により 種々の方法3・6・7・9・15}が用いられている.今回の結果 では,61.4%の者は不良な状態を示し,38.6%は 良好な状態を示した.不良例をさらに概良と不良 に区分すると,その大半は不良(34.7%)であっ た.脳性小児麻痺患児を調べた上原ら6)の報告に よると,良好50.9%,概良37.7%,不良11.4%で あり,またWeisman9)は40%に不良な状態を認め ていて,歯肉炎の原因と関連づけている.今回の 結果と比べると,我々が調査した心身障害者の方 が口腔清掃状態が良い傾向だと言える.  心身障害者は咀噌機能の低下から比較的軟かい 食物を摂取しやすく,口腔内の唾液の停滞が多い ところから,このような食片は粘着性のものと なって歯面に付着しやすい.頬,舌の運動障害, 咀ロ爵機能の異常は自浄作用を低下せしめ,歯列不 正はさらに食片の停滞を助長させる.加えて知能 発達の障害,手肢の運動障害は刷掃を困難とし, このような条件は不良な口腔環境を作りあげてい る.  歯肉炎の有無については,歯肉炎を有する者は 39.4%,無い者は60.6%と今回の結果はなった. 上原ら6)の報告では,歯肉炎を有する者26.3%,無 い者73.7%であり,今回の調査とほぼ同様な値を 示している.  6施設の踊蝕活性度とC.S.1.の関係において は,踊蝕活性度が(一),(+),(杵),(冊)と高 くなるにつれて踊蝕重症度指数C.S.1.も高く なった.これは踊蝕重症度が高い者ほど踊蝕活性 度が高いことを示しており,Caries Activity Test の意義をみたしていると思われる.  6施設の踊蝕活性度と咬合異常の関係において は,踊蝕活性度が(一),(+)の者と,(+),(−i−H−) の者を比較すると,(+),(冊)の者の方が咬合異 51 常保有者が多かった.これは咬合異常を有する者 が刷掃困難であるため,鶴蝕活性度が高くなった のではないかと思われ,踊蝕病因論に基づいてい ると考えられる.  さらに6施設の踊蝕活性度と歯肉炎の関係にお いては,麟蝕活性度が(一),(十)の者と(十), (冊)の者を比較すると,(+),(肝)の者の方が 歯肉炎保有者が多かった.これは上記と同様に踊 蝕病因論に基づいていると考えられる.  6施設の口腔刷掃指導前後の麟蝕活性度の分布 では,踊蝕活性度(一)と(+)の者をあわせる とSecond Testの方が全体の14.4%増加を示し ている.つまり,Second Testの方がFirst Test よりも踊蝕活性度の低い者が多いことをあらわし ている.これはFirst Testの後,口腔刷掃指導を 念入りに行ったための成果であり,口腔刷掃指導 が心身障害老のCaries Activityにいかに影響し ているかを如実に物語っていることだと考える.  A園の踊蝕活性度の分布では,鶴蝕活性度(一) と(+)をあわせて,口腔刷掃指導前後で比較す ると,口腔刷掃指導後のSecond Testの方が,歯禺 蝕活性度の低い者が10.9%増加を示し,B園では Second Testの方が踊蝕活性度の低い者が4.6% 増加を示し,C園では28.2%増加を示し, D園で は14.7%増加を示し,E園では31.3%増加を示し, F園では2.3%増加を示している.すなわち,口腔 刷掃指導前後の踊蝕活性度の低い者の増加量は, E園が最も多く,F園が最も少ない結果を得たが その増加の多寡にかかわらず,全ての施設におい て口腔刷掃指導により鶴蝕活性度の低い老が増加 したことを示しており,心身障害者のCaries Activityに対して口腔刷掃指導が非常に重要で あることが明らかとなった.そこで施設別Caries Activity Testと年齢, C. S.1.,口腔清掃状態と の関連を統計的に調べるために,クラマーの関連 係数(θ2)を用いてみた.この関連係数とは, 1.0∼0.5以上でかはなり強い関連があり,0.5未満 ∼0.15以上でかなり関連があり,0.15未満∼0.05 以上でやや関連がある.さらに0.05未満∼0でほ とんど関連がないと規定している.  我々のデータにおいては, Caries Activity Test による踊蝕活性度の判定結果と年齢においてθ2 は,A園はθ2=0.05∼0の範囲であるためほとん ど関連がみられなかったが,しかしD園はθ2=

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52 吉川他:心身障害者施設のCaries Activityと口腔内状態 O.15−−O.05の範囲であるためやや関連がみられ た.さらにB園,C園,E園,F園はθ2;0.5∼0.15 の範囲であるためかなり関連がみられた.踊蝕活 性度の判定結果とC.S.1.においてθ2は, A園はほ とんど関連がみられなかったが,しかしB園,C 園,D園, E園, F園はやや関連がみられた.鶴 蝕活性度の判定結果と口腔清掃状態においてθ2 は,A園, B園, C園, D園, E園, F園すべての 施設においてやや関連がみられた.  すなわち,今回我々が実施したCaries Activity TestであるCariostatと,年齢,齪蝕重症度指数, 口腔清掃状態においては5ヶ所の施設で関連性が 得られた.  Caries Activity Testによる踊蝕活性度の判定 結果において,First TestとSecond Testとの間 では,クラマーの関連係数θ2はE園で関連係数 0.05未満∼0の範囲であるため関連がみられな かった.しかし,C園, D園, F園は関連係数0.15 未満∼0.05以上の範囲である為やや関連がみられ た.さらに,A園, B園は関連係数0.5未満∼0.15 以上の範囲であるためかなり関連がみられた.  すなわち,Cariostat判定結果において, First TestとSecond Testとの間では同様に5ヵ所の 施設で関連性が得られた. 総括および結論  6歳∼64歳の心身障害老236名について,Caries Activity TestであるCariostatの判定結果と口 腔内状態及びその他の因子との関係を検討し次の 結果を得た. 1)Cariostatの驕蝕活性度別6施設の被検者数 は,Cariostat(一)と(+)あわせて38.1%,(什) と(冊)あわせて61.9%であり,鶴蝕活性度の高 い者が,被検者全体の過半数を占めていることが 分った. 2)口腔清掃状態の評価に関しては,61.4%の者 は不良な状態を示し,38.6%は良好な状態を示し た.不良例をさらに概良と不良に区分すると,そ の大半は不良(34.7%)であった. 3)歯肉炎の有無については,歯肉炎を有する者 は39.4%,無い者は60.6%となった. 4)6施設の鶴蝕活性度とC.S.1.の関係におい ては,踊蝕活性度が(一),(十),(十),(柑)と 高くなるにつれて鶴蝕重症度指数C.S. Lも高く なり,これは鶴蝕重症度が高い者ほど鶴蝕活性度 が高いことを示していた. 5)・6施設の踊蝕活性度と咬合異常の関係におい ては,鶴蝕活性度が(一),(十)の老と,(什), (什)の者を比較すると,(廿),(−H.i−)の者の方が 咬合異常保有老が多かった. 6)6施設の踊蝕活性度と歯肉炎の関係において は,踊蝕活性度が(一),(+)の者の方が歯肉炎 保有者が多かった.      , 7)6施設の口腔刷掃指導前後の鶴蝕活性度の分 布では,鶴蝕活性度(一)と(+)の者をあわせ るとSecond Testの方がFirst Testよりも踊蝕 活性度の低い者が多いことをあらわしていた. 8)Cariostatによる鶴蝕活性度と年齢との間で は,クラマーの関連係数θ2について1施設のみ統 計上関連はみられなかったが,他の5施設におい ては統計上関連が得られた. 9)踊蝕活性度とC.S.1.との間では,上記と同様 クラマーの関連係数θ2について1施設のみ統計 上関連はみられなかったが,他の5施設において は統計上関連が得られた. 10)驕蝕活性度と口腔清掃状態との間では,クラ マーの関連係数θ2について6施設すべてにおい て統計上関連が得られた. 11)口腔刷掃指導前後では,クラマーの関連係数 θ2について1施設のみ統計上関連はみられなかっ たが,他の5施設においては統計上関連が得られた.  以上の結果より,心身障害者施設のCaries Activityと口腔内状態に関して,踊蝕活性度がロ 腔内状態を明確に表現していることが理解され, 心身障害者に対する歯科的管理にCaries Activ・ ity Testが必要であることが示唆された.  さらに,口腔刷掃指導後のCaries Activity Testが好結果を示したことにより, Caries Act− ivity Testによる心身障害老の口腔管理において の指標が重要であり,この示唆によって充分な口 腔内治療と予防処置,ロ腔内刷掃指導を強力に行 うことが必要であると考える.  稿を終るに臨み,本調査の便宜と協力を賜わっ た各施設の園長先生をはじめ,職員各位に深謝の 意を表わします.また調査の整理に多大の協力を 下さいました本学障害者歯科学教室笠原浩教授 ならびに,教室の諸先生に感謝します.

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松本歯学 11(1,2)1985 53 文 献 1)野間惟道(1982−3)医科学大事典.25:3−4.   27:69−70. 33:252−256. 37:242−244. 20:   174. 44:197−209● 35:247−248. 20:56−57.   14:137−139.22:115−116.28:110.28:8−11.   講談社,東京. 2)中尾俊一(1970)歯科ハンドブック.押鐘 篤.   2:770−773.文京書院,東京. 3)Shmarak, K. L, and Bemstein, J.E、(1961)   Caries incidence among cerebral palsy chil・   dren:apreliminary study. J. Dent. Child.28:   154−156. 4)Siege1, J.C.(1960)Dental findings in cerebral   palsy. J.Dent. Child.27:233−238. 5)Magnusson, B.(1963)Oral conditions in a   group of children with cerebral plasy. Odonto.   Revy.14:358−402. 6)上原 進,高橋 徹,岡田秀美(1966)某施設に   おける脳性小児麻痺患児の口腔所見について.小   児歯誌,4:90−94. 7)Fishman, S. R., Young, W.0., Haley, and   Sword, C.(1967)The status of oral health in   cerebral palsy children and their siblings. J.   Dent. child.34:219−227. 8)Swallow, J. N.(1968)Dental disease in cerebral   palsied children. Develop. Med. Child.10:180   −189. 9)Weisman, E. J.(1956)Diagnosis and treatment   of gingival and periodontal disorders in childer   with cerebral palsy. J. Dent. Child.23:73−80. 10)Album, M. M., Krogman, W. M., Baker, D.,   and Colwel1, E H.(1964)An evaluation of the   dental profile of neuromuscu】ar deficit   patients:apilot study. J. Dent. Child.31:204   −227. 11)Koster, S.(1956)The diagnosis of disorders of   occlusion in children with cerebraI palsy. J.   Dent. Child.23:81−83. 12)Rosenbaum, C. H., Mcdonald, R. E, and Levitt,   E.E.(1966)Occlusion of cerebral・palsied chil−   dren. J. dent. Res.45:1696−1700. 13)Isshiki, Y.(1968)Occlusion of cerebral・palsied   children. Bull. Tokyo dent.Coll.9:29−40. 14)Isshiki, Y.(1968)Caries incidence among   cerebral−palsied children。 BulL Tokyo dent.   Coll.9:168−182. 15)Sandler, E. S., Roberts, M. W., and Wojcicki, A.   M.(1974)Oral manifestation in a group of   mentally retarded patients. J. Dent。 Child.41:   207−21ユ. 16)金子信一郎,野坂久美子,尾崎 勇,甘利英一   (1976)障害児の口腔管理 第1報 口腔所見と   その衛生状態の改善に対する1つの試み.小児歯   誌, 14:124−135. 17)菊間洋子,鈴木順子(1979)精神薄弱者施設東京   都千葉福祉ホーム入寮者の実態と口腔状態(第1   報).口腔衛生会誌,28:119. 18)駒井 正(1975)う蝕活性抑制治療に関する研究   第1報 精神疾患入院患者のう蝕活性について.   米子医学雑誌,26:176−180. 19)鈴木俊行,野々村栄二,祖父江鎮雄(1977)身体   障害者の口腔内所見.小児歯誌,15:116−121. 20)下野 勉,水野 純,野々村栄二,森崎市治郎,   増田典男,松村誠士,祖父江鎮雄(1976)新しい   う蝕活性試験(カリオスタット)に関する研究一ス   ナイダーテストとの比較一.小児歯誌,14:6  ’ −18. 21)豊川裕之,柳井晴夫(1982)医学・保健学の例題   による統計学.1:75−77.現代数学社,京都. 22)Keyes, P. H.(1969)Present and future measures   for dental caries control. J. Amer. Dent. Ass 79:   1395−1404. 23)橋ロ縛徳,吉川満里子,伊比 篤,長野朱実,山   本真也,横山幸代,鈴木 稔(1983)Caries Activ・   ityに関する研究(1) 一地域におけるSnyder   Test及びCariostatの統計的観察.松本歯学,   9:151−157. 24)吉川満里子,長野朱実,鈴木 稔,横山幸代,橋   口縛徳(1983)Caries Activity Vこ関する研究(2)   一地域におけるCariostatと諸因子の関係につい   て.松本歯学,9:158−167. 25)佐藤水治,安保喜美子,栗山美子,橋口緯徳,遠   矢東城,青木富士彌(1955)結核患者のCariesと   Caries activityに就いて.口腔衛生学会雑誌,   4:12−18. 26)橋口緯徳,石塚達雄,畑 孝肇,田中勝雄,芦沢   悠,矢ヶ崎 康,西尾宏英,河江力男,田辺 明   (1957)血液および唾液のCO2抱容能とCaries   activityとの関係について.歯科学報,57:   83−87.

参照

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